説明

ポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム

【課題】 0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性の優れた、ポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムの提供。
【解決手段】 少なくとも3層構成で成り、80℃における熱収縮率が20%〜50%であるポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムにおいて、以下の(1)〜(3)を特徴とするポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム。
(1)フィルムの動的粘弾性測定によるtanδのピーク温度が−10〜2℃であること。
(2)フィルムの示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動において、少なくとも155℃±15℃の範囲にピークがあり、かつ、125℃以上の結晶融解熱量が10〜20J/gであること。
(3)フィルムの引裂強度として、少なくとも縦方向が0.05N以上であり、かつ、縦と横の引裂強度比が縦/横=1.2〜5.0倍であること。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シュリンク包装用のポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムに関するもので、特に突上型や直線型等の自動包装機によるストレッチシュリンク包装及びピロー型の自動包装機によるシュリンク包装に適した延伸フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シュリンク包装は、その特長として、被包装物の形状や大きさに依らず、また同時に複数個の製品を迅速かつタイトに包装することが出来、得られた包装物は外観が美しく、ディスプレイ効果を発揮し、商品価値を高め、また内容物を衛生的に保ち、視覚による品質確認が容易なことから食品、雑貨等の包装に多用されている。
【0003】かかる収縮包装には、フィルムに少し余裕を持たせて内容物を一次包装した後、熱風等によりフィルムを熱収縮させる方法、例えばピローシュリンク包装がその代表例であるが、この方法は一般的には容器やトレーに収納された食品等の被包装物をフィルムで筒状に覆い、次ぎに回転ローラー式等のセンターシール装置にて被包装物の裏面にシール線がくるように合掌ヒートシールし、続いて該筒状フィルムの両開放端をヒートシールして袋状とし、これを加熱収縮させる。このピローシュリンク包装には上記以外の三方シール、および四方シールした袋状フィルムを加熱収縮する方法等がある。
【0004】また、従来のストレッチ包装のようにフィルムをある程度緊張状態で包装し、フィルムの端を被包装物の底部に折り込んで、該折り込み部をフィルム同士の自己密着力または熱融着により一次包装した後、同様に加熱収縮処理を施して局部的なフィルムのタルミやシワを除去するストレッチシュリンク等の方法があり、いずれもタイトで美しい仕上がりが得られる。一方、近年自動包装機による包装速度の高速化や被包装物の多様化が進み、更には商品としての包装体への要求品質もますます高度なものになってきており、包装用フィルムに対する要求は、高性能化、高機能化の一途を辿っている。
【0005】従来、シュリンク包装用フィルムに適したフィルムとして、特開平10−34848号公報に、エチレンα−オレフィン共重合体樹脂を50重量%以上含有する表面層(A)と、内部層としてプロピレン系重合体とポリブテン−1系樹脂の特定混合樹脂層(B)、表面層と密度が異なり、かつ特定のMFRを有するエチレンα−オレフィン共重合体樹脂を50重量%以上含有する層(C)を含む各層の厚み比率が特定された多層シュリンクフィルムが開示されている。
【0006】上記公報によれば、表面層(A)は、多層フィルムの表面に透明性、光沢、(低温)ヒートシール性、防曇性等を発揮させるためのものであり、線状低密度ポリエチレン等のエチレンα−オレフィン共重合体樹脂を50重量%以上含有し、混合する樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(以後、EVA)等の樹脂の使用が例示されている。また、層(C)は、フィルムに高い突き刺し強度を付与する効果を有しており、表面層(A)より密度の高い線状低密度ポリエチレン等のエチレンα−オレフィン共重合体樹脂を50重量%以上含有し、混合する樹脂としてEVA等の樹脂の使用が例示されている。
【0007】また、層(B)は主に多層フィルム全体に耐熱性や変形回復性を付与する役割を持ち、プロピレン系重合体とポリブテン−1との混合組成物が例示されている。そして層(A)、層(B)、層(C)の4層以上からなる多層フィルム原反を40〜120℃の温度下で、面積延伸倍率3〜50倍に延伸し、その結果、耐熱性、低温収縮性、耐突き破れ性、耐引き裂き性、変形回復性に優れた厚み7〜20μmの高強度フィルムが得られるものである。
【0008】しかしながら、上記特開平10−34848号公報に開示されているフィルムは0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が劣るという特性を有していた。このため冷凍物を0℃前後で解凍した時、内容物の体積変化現象にフィルムが追随して行けずフィルムが弛み、見た目が良くないという問題があった。また包装品を冷蔵輸送した時、振動そのもの、または振動で内容物が移動することで同様にフィルムに弛みやしわが生じ、見た目の商品性を著しく低下させるといった問題があった。更に、店舗で冷蔵オープンショーケースに陳列されているトレー包装物のフィルムが指で押し込まれた場合、フィルムが追随して行けず指跡が残りフィルムがくぼんだままで外観を損ねるといった問題も有していた。
【0009】また、冷凍やチルド状態で鋭利な突起やエッジを有する被包装物においては、包装時に一旦生じたフィルム破れが縦方向(フィルム製膜時の流れ方向。以後MDと記す。)に伝播し、包装機を停止してのフィルムの再セット、再起動等の手間が必要であったり、包装機によってはフィルムのカット性が安定せず、カットされたフィルム端が引きちぎられたような状態になって、その後のフィルムの折りこみ性不良や包装体の外観を損ねたりするといった問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性の優れた、ポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムの提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課題を解決すべく検討した結果、フィルムの動的粘弾性測定によるtanδおよび融解挙動、さらにフィルムの引裂強度特性をある特定の範囲に調整することにより従来のフィルムが有する耐熱性、収縮性、光学特性、耐突き破れ性を保持しつつ、包装時のフィルムのカット性が著しく向上し、且つ0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が格段に優れたシュリンクフィルムが得られることを見出した。
【0012】すなわち、本発明は、下記の通りである。1.少なくとも3層構成で成り、80℃における熱収縮率が20%〜50%であるポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムにおいて、以下の(1)〜(3)を特徴とするポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム。
(1)フィルムの動的粘弾性測定によるtanδのピーク温度が−10〜2℃であること。
(2)フィルムの示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動において、少なくとも155℃±15℃の範囲にピークがあり、かつ、125℃以上の結晶融解熱量が10〜20J/gであること。
(3)フィルムの引裂強度として、少なくとも縦方向が0.05N以上であり、かつ、縦と横の引裂強度比が縦/横=1.2〜5.0倍であること。
【0013】2.プロピレン系重合体(a)20重量%〜60重量%と、ビカット軟化点が80℃未満のポリオレフィン系エラストマー(b)10重量%〜50重量%と、ポリブテン−1系樹脂(c)10重量%〜40重量%とから成る内部層を少なくとも1層有することを特徴とする1.に記載のポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明、特にその好ましい態様を詳細に説明する。本発明が従来技術と相違する点は、少なくとも3層構成で成り、80℃における熱収縮率が20%〜50%であるポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムにおいて、フィルムの動的粘弾性測定によるtanδ、示差走査型熱量計(DSC)測定による融解挙動、更にはフィルムの引裂強度特性が特定された点にある。
【0015】そして、上記を満たす好ましい態様として、内部層に特定のビカット軟化点を有するポリオレフィン系エラストマーを含む、特定の樹脂組成物層を少なくとも1層有することを特徴とする点にある。まず、本発明のフィルムは動的粘弾性測定によるtanδのピーク温度が−10〜2℃のものである。フィルムの動的粘弾性測定によるtanδのピーク温度が2℃を超えると、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が悪くなる。一方、tanδのピーク温度が−10℃未満ではフィルムが柔軟になりすぎて、タイトに拘束出来ずユルミ、タルミの原因になる。
【0016】次に本発明のフィルムは示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動において、少なくとも155℃±15℃の範囲にピークがあり、かつ、125℃以上の結晶融解熱量が10〜20J/gの範囲のものである。フィルムの示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動でピークが140℃未満ではヒートシール時に穴が開きやすくなる等のトラブルが発生しやすくなる。一方、ピークが170℃を超えると、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が悪くなる。
【0017】また、フィルムの示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動において、125℃以上の融解熱量が10J/g未満だと耐熱性が不十分になり、その為包装時にフィルムの走行が不安定になったり、折り込みが不良になったり、ヒートシール時に穴が開き易くなる等のトラブルが生じやすくなる。一方、125℃以上の融解熱量が20J/gを超えるとフィルムのtanδのピーク温度が2℃を超えてしまい、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が悪くなる。
【0018】また、本発明のフィルムは引裂強度として、少なくとも縦方向が0.05N以上であり、かつ、縦と横の引裂強度比が縦/横=1.2〜5.0倍の範囲のものである。縦方向の引裂強度が0.05N未満では、包装時に破れが起こりやすくなる。また、縦方向の引裂強度は易開封性の観点から、1.0N未満が望ましい。
【0019】また、本フィルムを用いて包装を行う場合、用いられる包装機としては直線型包装機や突き上げ式包装機が挙げられるが、特に高速タイプの直線型包装機の例として、大森機械工業製「STC−IIB」(商標)を説明すると、フィルム供給部において、サイドベルトでフィルムを5〜10%横方向に引っ張りながら、フィルムを筒状にし、被包装物を載せたトレーにフィルムを被せながら、トレーの前(進行方向側)をカッターで切断し、トレー底面へフィルムを折込む機構になっているが、MD/TDの引き裂き強度の比が1.2倍未満では、冷凍やチルド状態で鋭利な突起やエッジを有する被包装物を包装する際に生じた微小な破れが、フィルム供給部まで、MDに伝播しやすくなり、フィルムの再セットや再起動等の手間が必要であり、包装ロスの大きな原因となる。一方、MD/TDの引き裂き強度の比が5.0倍を超えると包装時に被包装物の突起等により、発生した破れが、極端に横方向に伝播し、包装ロスの原因となる。
【0020】本発明のフィルムの好ましい態様としては、その内部層にプロピレン系重合体(a)、ビカット軟化点が80℃未満のポリオレフィン系エラストマー(b)と、ポリブテン−1系樹脂(c)から構成される特定の樹脂組成物層(以下D層とする)を少なくとも1層有するものである。上記プロピレン系重合体(a)は好ましくは、プロピレン単独重合体(ホモタイプ)、プロピレンと、エチレン、ブテン等の少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体(ランダムタイプ、ブロックタイプ)である。このプロピレン系重合体のより好ましいものは、耐熱性の観点から、プロピレン単独重合体及び、融点が150℃以上のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。該プロピレン系重合体はメルトフローレート(以下MFRとする)が0.2〜15g/10分のものである。MFRとはJIS−K−7210−1995に従って測定される値であり、上記プロピレン系重合体のMFRは230℃、2.16kgfの条件で測定されたものである。プロピレン系重合体(a)のMFRが0.2g/10分未満では、押出成形時の押出動力が上昇し押し出された原反の表面平滑性が低下したり、MDに配向が強く掛かり、MDの引裂強度が弱くなり包装時にフィルムが破れやすくなる。またMFRが15g/10分を越えると、延伸性が低下し、フィルムが得られても変形回復性や突き刺し強度等の機械的特性に劣ったものしか得られない傾向にある。
【0021】上記プロピレン系重合体(a)がD層中に占める割合は20重量%〜60重量%である。その量が60重量%を超えると0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が悪くなり、20重量%未満ではMDの引き裂き強度が低下し、MD/TDの引き裂き強度の比が1.2倍未満となり、冷凍やチルド状態で鋭利な突起やエッジを有する被包装物を包装する際に生じた微小な破れがMDに伝播しやすくなり好ましくない。更にはフィルムが柔軟化しすぎて、腰がなくなる他、耐熱性が不十分になる為、ヒートシール時に穴が開き易くなる等のトラブルが生じやすくなる。
【0022】次にビカット軟化点が80℃未満のポリオレフィン系エラストマー(b)はMFR0.2〜15g/10分のものである。本発明でいうビカット軟化点は、JIS−K−7206(試験荷重1kg、昇温速度50℃/時間)で測定される値である。ビカット軟化点が80℃以上ではプロピレン系重合体の柔軟化が不十分となり延伸製膜安定性が悪くなる他、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が低下する。また、該ポリオレフィン系エラストマー(b)のビカット軟化点は好ましくは80℃未満、より好ましくは60℃未満のものであるが、その下限は前記した測定法では数値の特定が困難であるが、通常は常温(23℃)で固体である。
【0023】上記ポリオレフィン系エラストマー(b)のMFRはJIS−K−7210−1995(230℃、2.16kgf)に従って測定されたものである。該ポリオレフィン系エラストマー(b)のMFRが0.2g/10分未満では、押出成形時の押出動力が上昇し押し出された原反の表面平滑性が低下したり、MDに配向が強く掛かり、MDの引裂強度が弱くなり包装時にフィルムが破れやすくなる。またMFRが15g/10分を越えると、延伸性が低下し、フィルムが得られても変形回復性や突き刺し強度等の機械的特性に劣ったものしか得られない。
【0024】該ポリオレフィン系エラストマー(b)の密度は0.860〜0.910g/cm3のものである。本発明でいう密度とは、JIS−K−7112に従って測定される23℃の値である。密度が0.860g/cm3未満では樹脂がブロッキングし易くなるため保管温度を制御しなければならず取り扱いに支障がある。また密度が0.910g/cm3を越えるとホモPPの柔軟化が不十分となり延伸が不安定になる他、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が低下する。
【0025】次に該ポリオレフィン系エラストマー(b)のD層中に占める割合は10重量%〜50重量%である。50重量%を越えるとMDの引き裂き強度が低下し、MD/TDの引き裂き強度の比が1.2倍未満となり、突起のある商品を包装する際、縦に引き裂き伝播が発生しやすくなり好ましくない。更にはフィルムが柔軟化しすぎて、腰がなくなる他、耐熱性が不十分になり、ヒートシール時に穴が開き易くなる等のトラブルが生じやすくなる。10重量%未満ではフィルムのtanδのピーク温度が2℃を超えてしまい、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性が悪くなる。
【0026】該ポリオレフィン系エラストマー(b)の具体例としては、プロピレンと1種または2種類以上のα−オレフィン(エチレンの他、炭素数4〜8のもの)との共重合体であって、チーグラー・ナッタ触媒のような従来の触媒により重合されたもの以外に、メタロセン系触媒等で重合されたものも含まれ、更に70重量%程度までの高濃度のゴム成分を均一分散したもの、および非晶質ポリαオレフィンやエチレン−ブチレン共重合体であっても良く、これらの内少なくとも1種が用いられ、2種以上ブレンドしたものでもよい。
【0027】あるいは、エチレンと炭素数が3〜18のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種類の単量体とのランダム共重合体で、α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1等が挙げられ、これにポリエン構造を有する炭化水素、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ノルボルネン系単量体(例えば、エチリデンノルボルネン)等を共重合しても良い。共重合体中のエチレン含量は、通常40〜95重量%、好ましくは50〜90重量%、より好ましくは60〜85重量%のものである。該樹脂はマルチサイト触媒あるいはシングルサイト触媒のいずれで重合されたものでも良い。
【0028】また、このポリオレフィン系エラストマー(b)は、単体でも溶融押出加工によってフィルムやペレット形成が可能な程度のものである。たとえば、D層で用いられるプロピレンと1種または2種類以上のα−オレフィン(エチレンの他、炭素数4〜8のもの)との共重合体は以下のような多段重合法により製造される。まず第一段階として、チタン化合物触媒およびアルミニウム化合物触媒の存在下においてプロピレンモノマーおよび必要に応じてエチレンモノマーまたはα−オレフィンモノマーを用いて重合を行い、第一のプロピレン系樹脂を得る。この第一のプロピレン系樹脂はプロピレン系重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等であり得る。
【0029】第二段階として、前記のチタン化合物触媒およびアルミニウム化合物触媒を含有したままの上記第一のプロピレン系樹脂と、オレフィンモノマー(例えば、エチレン、プロピレン、またはα−オレフィン)とを共重合させて、第二のポリオレフィン系樹脂を得る。この二段階反応により得られる第二のポリオレフィン系樹脂は、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、またはエチレン−α−オレフィン共重合体であり得る。この製造方法の特徴は、重合を一段階で終了するのではなく、二段階以上の多段重合を行うことにある。
【0030】このことより、複数の種類のポリマーを続けて作り上げることが可能であり、通常のポリマーブレンドとは全く異なる分子レベルでのブレンドタイプの共重合体が生成され、樹脂の特徴としては、高柔軟性等が挙げられる。実際の樹脂としては、サンアロマー社の「ADFLEX」(商標)等が挙げられる。次にポリブテン−1系樹脂(c)はMFR0.2〜10g/10分のものが好ましく、上記ポリブテン−1系樹脂(c)のMFRはJIS−K−7210−1995(190℃、2.16kg)に従って測定されたものである。
【0031】MFRが0.2g/10分未満では、プロピレン系重合体(a)との相溶性が悪化しやすく、フィルムが白化したり、押し出された原反の表面平滑性が低下する傾向がある。また、MFRが10g/10分を越えると、延伸性が低下しやすく、フィルムが得られても変形回復性や突き刺し強度等の機械的特性が十分でない場合がある。また、ポリブテン−1系樹脂(c)としては、ホモブテン−1、ブテン−1含有量が70重量%以上のブテン−1とエチレンないしプロピレンとの共重合体を用いることができる。ポリブテン−1系樹脂(c)のD層中に占める割合は10重量%〜40重量%である。40重量%を越えるとフィルムが柔軟化しすぎて、腰がなくなる他、耐熱性が不十分になり、ヒートシール時に穴が開き易くなる等のトラブルが生じやすくなる。また、10重量%未満では延伸性及び引裂強度が低下する。
【0032】また、本発明のフィルムには目的に応じ、D層以外に両表面層(E層)と更に積層される、その他の内部層(F層)を設けることが出来る。以下、E層、F層について説明する。E層は、ヒートシールや密着等による包装体としての気密性を確保するとともに、透明性や光沢の他、添加剤としての防曇剤、帯電防止剤、滑剤等を内部添加法によりブリードさせて、フィルムとして必要な表面特性を発揮する層である。E層に用いられる樹脂としてはエチレンα−オレフィン共重合体樹脂、EVA、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体等のポリエチレン系樹脂の中から少なくとも1種、又は2種以上の組成物を用いることができる。エチレンα−オレフィン共重合体樹脂の場合は引き裂き強度や突き刺し強度、変形回復性および延伸安定性の点から、α−オレフィンとしては4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1が好ましい。
【0033】F層は延伸補助層として、エチレンα−オレフィン共重合体樹脂、EVA、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体等のポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられ、更には延伸製膜したフィルムを粉砕処理し、再溶融後にペレット化したリサイクル樹脂も使用可能であるが、引き裂き強度や突き刺し強度および変形回復性と延伸製膜安定性の確保のため、エチレンα−オレフィン共重合体が20〜60%の範囲のものが好ましい。
【0034】次に、本発明の多層フィルムは、ヒートシール性や機械的強度、変形回復性、耐熱性等より、全層に占める各層の厚み比率は、E層が20〜60%、F層が20〜70%、D層が10〜40%の範囲が好ましく、また多層フィルムの厚みは、通常5〜60μm、好ましくは6〜40μm特に本発明の効果がより一層発揮されるのは、7〜20μmの薄肉の領域である。本発明のフィルムは、表層を形成するE層及び内部層であるD層、F層の合計少なくとも3層から構成されるが、層の配置としては、例えば3層の場合:E/D/E、4層の場合:E/F/D/E、5層の場合:E/F/D/F/E、E/D/F/D/E、7層の場合:E/F/D/F/D/F/E、E/D/F/D/F/D/E等が挙げられるが、E層と同一の樹脂層を更に内部層として使用することも可能である。他に6層、8層、及びそれ以上の層からも構成することが出来る。
【0035】また、本発明のフィルムには、その本来の特性を損なわない範囲で、さらに内部層として、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、エチレン−ビニルアルコール共重合体を使用したガスバリアー層、また必要に応じて更に加えて接着性樹脂よりなる接着層を設けても良い。更に、本発明のフィルムは80℃における熱収縮率が20〜50%である。この値が20%未満では、基本的に低温収縮性に乏しく、包装時シュリンク後のフィット性が不十分になり、包装後にシワやタルミが発生する原因となる。また50%を越えると、保管、流通過程において寸法収縮を生じ易いといった問題がある(特に巾方向が問題となるが、ロール状の巻物の場合、巻芯部と外側表面での巾寸法の差も問題となる)。
【0036】本発明の多層フィルムの各樹脂層には、それぞれその本来の特性を損なわない範囲で、防曇剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、無機フィラー等を添加しても良く、またフィルム表面にショ糖エステル、各種シリコーンエマルジョン、シリコーンオイル、各種界面活性剤、高級脂肪酸金属塩、およびポリビニルアルコール等の公知の表面改質用高分子等を必要に応じて適宜溶媒で希釈してコーティングしても良い。
【0037】次に、本発明の多層シュリンクフィルムの製法の一例について述べる。まず各種(D、E、F層および必要に応じて用いられるその他の層)を構成する樹脂をそれぞれの押出機で溶融して、多層ダイで共押出し、急冷固化して多層フィルム原反を得る。押出法は、多層のTダイ法、多層のサーキュラー法等を用いることが出来るが、好ましくは後者が良い。このようにして得た多層フィルム原反を30〜100℃に加熱して延伸を行う。延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、インフレ(ダブルバブル法を含む)等があるが、同時二軸延伸で製膜される方法が好ましい。また延伸は少なくとも1方向に面積延伸倍率で4〜30倍に延伸されるが、この延伸倍率は用途により必要な熱収縮率等に応じて適宜選択される。また、必要に応じ、後処理、例えば寸法安定性のためのヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理の他、各種フィルムとのラミネーションが行われても良い。
【0038】更に本発明のフィルムは、その少なくとも1つの層が架橋されていても良く、架橋処理は電子線、γ線、紫外線等のエネルギー線照射やパーオキサイドの利用等の従来公知の方法が用いられる。以下、本発明を実施例にて更に詳しく説明する。なお、本発明で用いた測定評価方法および使用した樹脂は、以下の通りである。
(1)延伸製膜安定性以下の基準に従い、加熱延伸を行った際のフィルムの連続製膜安定性を評価した。(延伸開始点〜延伸終了点までの距離Lに対して、延伸開始点の変動範囲をXとした時のX/L)
◎:X/Lが2%未満(極めて安定)
○:X/Lが3%以上、5%未満(若干の変動が見られるが延伸バブルは揺れない)
△:X/Lが6%以上、10%未満(延伸バブルが揺れるが、バブルの維持は可能)
×:X/Lが10%以上(延伸バブルが大きく揺れ、バブルの維持が困難)
【0039】(2)熱収縮率100mm角のフィルム試料を所定の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で30分間処理した後、フィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比で表し、タテ、ヨコ両方についてそれぞれ測定した。
(3)tanδ動的粘弾性試験機、商標「RSAII」(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー製)を用いて、幅7mm(TD)×長さ40mm(MD)の短冊状サンプルを切り出し、周波数1Hzで温度−70℃から+30℃まで5℃/分で昇温した時のtanδピークの温度を採用した。
【0040】(4)示差走査型熱量計(DSC)測定示差走査型熱量計DSC7(パーキンエルマー製)を用いて、温度−10℃から10℃/分で200℃まで昇温した(1st.融解挙動)。200℃で5分間保持した後、10℃/分で−10℃まで降温した(1st.結晶化挙動)。次いで再び10℃/分で200℃まで昇温し(2nd.融解挙動)、この時のピーク温度及び125℃以上の融解熱量(ΔH)を採用した。試料重量は5〜10mgの範囲に入るようにした。
(5)引き裂き強度JIS−P−8116に準じて、軽荷重引き裂き試験器(東洋精機製)を用いて、タテ方向とヨコ方向それぞれについて測定した。なお、ここでの測定の読みは、目盛りの20〜60の範囲になるように測定を行うが、測定レンジによって測定値に差がある場合は、高い方の値を採用した。
【0041】(6)変形回復性−1(賦型回復性)
中がくり抜かれた状態の外寸法が180×180mmの木枠をフィルム支持台とし、該支持台の中心部に外寸法が82×82mmの升状の木型を該支持台の各辺が平行を保てるようにして、該支持台の下側から外支持台の上面より10mm突き出させ、この状態でフィルムを該升状の木型に上から覆い被せ、このフィルムの端をフィルム支持台の縁に両面テープで固定した。この際、フィルムの張りは最小限で、かつタルミが生じないように注意深く固定した。次いで、この状態のままで90℃の熱風トンネルを3秒間通過させ、フィルムをシュリンクさせた。トンネル通過後、それぞれ0℃、−10℃下で3分間放置後にフィルム支持台から升状の木型を抜き取り、0℃、−10℃下で該支持台に固定されているフィルムの表面の状態を5分後に目視観察した。タルミやシワ、または局部的なくぼみがわずかに認められるが商品性に問題のないものを○、明らかにタルミやシワ、局部的なくぼみが残っており、商品性に問題のあるものを×とし、○と×の中間レベルのものを△とした。
【0042】(7)変形回復性−2(押し込み回復性)
中がくり抜かれた状態の外寸法が125±125mm、深さ50mmの木枠をフィルム支持台とし、フィルムを木枠に上から覆い被せ、このフィルムの端をフィルム支持台の縁に両面テープで固定した。この際、フィルムの張りは最小限で、かつタルミが生じないように注意深く固定した。次いで、この状態のままで90℃の熱風トンネルを3秒間通過させ、フィルムをシュリンクさせた。トンネル通過後、それぞれ0℃、−10℃下で3分間放置後に、先端を半径7.5mmの球面に加工した、直径15mmのSUS(ステンレス)製の押し込み棒を速度1000mm/分でフィルムより15mmの深さまで、上方より支持台の中心部に押し込んだ。15mmの深さまで押し込んだ後、保持時間0秒で、押し込み棒を1000mm/分で引き上げた。その後0℃、−10℃下で該支持台に固定されているフィルムの表面の状態を1分後に目視観察した。タルミやシワ、または局部的なくぼみがわずかに認められるが商品性に問題のないものを○、明らかにタルミやシワ、局部的なくぼみが残っており、商品性に問題のあるものを×とし、○と×の中間レベルのものを△とした。
【0043】(8)収縮後HAZE90℃±3秒の条件で熱風トンネルを通過させたフィルムを面積で0%収縮させたものを用いて、ASTM−D−1003−52に準じて測定した。
(9)防曇性製膜後3日経過したフィルムを更に23℃のエアーオーブン式恒温槽に24時間入れた後、そのフィルムを用いて、20℃の水が入ったビーカーを覆って密封し、5℃の冷蔵庫で1時間放置後、フィルムに付着した水の状態を以下の基準で目視評価した。
5:鏡面状に水膜が形成され、曇りが全くなく透明なもの。
4:やや斑のある水膜であるが、内容物の確認にはほとんど支障がないもの。
3:広がった水膜が付着しているが、内容物の確認は可能であり、実用上支障がないもの。
2:小さい水滴が付着しており、内容物の形状が分かる程度で、細部の確認が困難なもの。
1:白く曇り、内容物の存在が確認出来ないもの。
【0044】(10)包装時の破れ伝搬性包装時に被包装物の鋭利な突起によって生じる破れのMD方向への伝搬性を冷凍エビを用いて評価した。中央化学製のトレー、商標「エビNo.24」にあらかじめ−30℃で保存した冷凍エビ12尾(280g)を盛り付け、大森機械工業製の包装機「STC−IIB」を用いて各フィルムで包装した。各フィルムで10パックずつ包装し、フィルムのエビの尾との接触部から生じる破れが全く伝播しないものを○、包装機の供給部まで大きく伝播したものを×、中間レベルのものを△とした。
【0045】(11)実施例および比較例において使用した樹脂LL1:エチレンα−オレフィン共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.904g/cm3、MI=4.0g/10分)
LL2:エチレンα−オレフィン共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=オクテン−1、密度=0.902g/cm3、MI=3.0g/10分)
LL3:エチレンα−オレフィン共重合体(シングルサイト触媒で重合されたもの、α−オレフィン=ヘキセン−1、密度=0.912g/cm3、MI=0.8g/10分)
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量=15重量%、MI=2.2g/10分)
【0046】PP1:プロピレン系重合体(アイソタチックポリプロピレン(ホモポリマー))、密度=0.900g/cm3、MFR=4.0g/10分、融点(DSC法最高融解ピーク温度)=160℃PP2:プロピレン系重合体(プロピレン−エチレンランダム共重合体)、密度=0.900g/cm3、MFR=2.3g/10分、融点(DSC法最高融解ピーク温度)=159℃PP3:プロピレン系重合体(プロピレン−エチレンランダム共重合体)、密度=0.89g/cm3、MFR=1.8g/10分、融点(DSC法最高融解ピーク温度)=140℃
【0047】TPO1:ポリオレフィン系エラストマー(ランダムポリプロピレンタイプでEPR含量65重量%)、密度=0.880g/cm3、MFR=0.45g/10分、ビカット軟化点=55℃TPO2:ポリオレフィン系エラストマー(TPO1のビスブレイク品でEPR含量65重量%)、密度=0.890g/cm3、MFR=4.0g/10分、ビカット軟化点=55℃TPO3:ポリオレフィン系エラストマー(ランダムポリプロピレンタイプでEPR含量90重量%)、密度=0.880g/cm3、MFR=1.5g/10分、ビカット軟化点≦25℃
【0048】TPO4:ポリオレフィン系エラストマー(シングルサイト触媒で重合されたエチレン−オクテン−1共重合体。オクテン−1含量=25重量%、密度=0.870g/cm3、MI=1.0g/10分、Mw/Mn=2.7、ビカット軟化点≦25℃)
TPO5:ポリオレフィン系エラストマー(シングルサイト触媒で重合されたエチレン−オクテン−1共重合体。オクテン−1含量=25重量%、密度=0.868g/cm3、MI=0.5g/10分、Mw/Mn=2.7、ビカット軟化点≦25℃)
【0049】TPO6:ポリオレフィン系エラストマー(ホモポリプロピレンタイプでEPR含量65重量%)、密度=0.890g/cm3、MFR=3.0g/10分(MFR0.8g/10分と30g/10分の2種を混合して調整)、ビカット軟化点=68℃TPO7:ポリオレフィン系エラストマー(ランダムポリプロピレンタイプでEPR含量50重量%)、密度=0.890g/cm3、MFR=6.0g/10分、ビカット軟化点=81℃
【0050】PB1:ポリブテン−1系樹脂(プロピレンをコモノマーとする共重合体)、密度=0.900g/cm3、MFR=3.5g/10分、融点(DSC法最高融解ピーク温度)=73℃PB2:ポリブテン−1系樹脂(プロピレンをコモノマーとする共重合体)、密度=0.900g/cm3、MFR=1.0g/10分、融点(DSC法最高融解ピーク温度)=70℃
【0051】
【実施例1】エチレンα−オレフィン共重合体LL1=60重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA1=40重量%に、ジグリセリンオレート50重量%、グリセリンモノオレート50重量%の混合物を1.5重量%含めたものをE層とし、またF層にポリオレフィン系エラストマーTPO5を5重量%、エチレンα−オレフィン共重合体LL1を50重量%にEVA1を加えて100重量%に調整した樹脂組成物に、ジグリセリンオレート50重量%、グリセリンモノオレート50重量%の混合物を2.3重量%配合したものを用いた。
【0052】更に、D層としてプロピレン系重合体PP1を40重量%とビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーTPO1を30重量%とポリブテン−1系樹脂PB1を30重量%の3種混合樹脂を用いて、層配置がE/F/D/F/Eの5層になるように環状5層ダイを用いて押出した後、冷水にて冷却固化して折り幅270mm、厚み100μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状原反を作成した。
【0053】この際、チューブ内部には、6%オレイン酸ナトリウム水溶液を封入し、ニップロールでしごくことにより内面コーティングを施した。各層の厚み比率はチューブの外側から、10%/27.5%/25%/27.5%/10%になるように調整した。次いでこの原反を2対の差動ニップロール間に通し、約50℃に加熱した後、内部に空気を圧入してバブルを形成させて連続延伸を行い、20℃の冷風を吹き付けてバブルを折り畳み、延伸倍率でタテ3.2倍、ヨコ2.8倍に同時延伸した厚み11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。表1より、延伸製膜安定性および引き裂き強度、突き刺し強度、収縮後の透明性、変形回復性の全てにおいて優れるものであり、包装時の破れ伝搬も起こらず、包装機適性にも優れていることが分かる。
【0054】
【実施例2】実施例1で得られたフィルムを細片化して押出機を通してリサイクルペレットを作成した。このペレットをF層に50重量%、LL1を43%とし、F層中のLL1の量を実施例1のLL1の量と同量としたものに、更にTPO5を4%添加し、EVA1を加えて100重量%に調整した。その他は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、更に3回、上記と同様なリサイクル操作を繰り返した。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。延伸製膜安定性および引き裂き強度、突き刺し強度、収縮後の透明性、変形回復性も実施例1で得たフィルムとほぼ同じで、包装時の破れ伝搬も起こらず、包装機適性にも優れており、リサイクル適性にも優れるものであった。
【0055】
【実施例3】実施例1のD層のビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーをTPO2に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0056】
【実施例4】実施例1のD層のビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーをTPO3に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0057】
【実施例5】実施例1のD層のビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーをTPO4に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0058】
【実施例6】実施例1のD層にプロピレン系重合体PP1を30重量%とビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーTPO5を40重量%とポリブテン−1系樹脂PB1を30重量%の3種混合樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0059】
【実施例7】実施例1のD層のプロピレン系重合体PP1を50重量%、ビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーTPO1を20重量%、ポリブテン−1系樹脂PB1を30重量%、の比率に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0060】
【実施例8】実施例1のD層のプロピレン系重合体PP1を30重量%、ビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーTPO1を40重量%、ポリブテン−1系樹脂PB1を30重量%の比率に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0061】
【実施例9】実施例1のD層のPP系重合体をPP2に変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0062】
【実施例10】実施例1のE層をEVA1に変えた以外は同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
【実施例11】実施例1のE層中のLL1を40重量%に、EVA1を60重量%に変えた以外は同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】


【0065】表1より、上記実施例3〜11は実施例1と同様に延伸製膜安定性および引き裂き強度、突き刺し強度、収縮後の透明性、変形回復性の全てにおいて優れるものであり、包装時の破れ伝搬も起こらず、包装機適性にも優れていることが分かる。
【0066】
【比較例1】先行技術である、特開平10−34848号公報に記載の実施例1に従い、本発明の実施例1のE層をLL2に、F層をLL3に、D層にPP3を70重量%とPB2を30重量%混合したものを使用した以外は本発明の実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例1はD層中のプロピレン系重合体の量が多い為に、tanδのピーク温度が下がらず、変形回復性が劣る結果となった。
【0067】
【比較例2】実施例1のD層の組成をプロピレン系重合体PP1を70重量%、ポリブテン−1樹脂PB1を30%とし、ビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例2はD層中のプロピレン系重合体の量が多い為に、tanδのピーク温度が下がらず、変形回復性が劣る結果となった。
【0068】
【比較例3】実施例1のD層の組成をプロピレン系重合体PP1を30重量%、ポリブテン−1樹脂PB1を70%とし、ビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例3はプロピレン系重合体の量は少なくtanδのピーク温度は下がっているがビカット軟化点80℃未満のポリオレフィン系エラストマーが無いために、変形回復性が劣る結果となった。
【0069】
【比較例4】D層にプロピレン系重合体を使用せず、ビカット軟化点80℃以下のポリオレフィン系エラストマーTPO6を70重量%、ポリブテン−1系樹脂PB1を30重量%に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚さ11μmのフィルムを得た。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例4はtanδのピーク温度が低く、変形回復性は良好であるが、プロピレン系重合体が無い為にMDの引裂強度が低く、包装時の破れ伝搬性が大きいものであった。
【0070】
【比較例5】実施例1のD層のポリオレフィン系エラストマーをTPO7に変えた以外は、実施例1と同様に行った。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例4はD層中のポリオレフィン系エラストマーのビカット軟化点が高いため、延伸製膜安定性が劣り、一方、tanδピーク温度が高く、変形回復性が劣る傾向にあった。
【0071】
【比較例6〜8】実施例1のD層に使用した樹脂の混合比率を変えた以外は実施例1と同様に行った。D層に使用した樹脂組成とD層、E層の樹脂組成比及び得たフィルムの評価結果を表2に示す。表2より、比較例6はD層中のポリオレフィン系エラストマーの量が少ない為に変形回復性が劣り、比較例7はプロピレン系重合体の量が少ない為に、引裂強度比が低く、包装時の破れ伝搬が劣り、比較例8はD層のポリオレフィン系エラストマー量は十分であるが、プロピレン系重合体の量が多く、tanδのピーク温度が高い為に変形回復性が劣る上、引裂強度比も低いために包装時の破れ伝搬性が大きい結果となった。
【0072】
【表2】


【0073】
【発明の効果】本発明のフィルムは、少なくとも3層構成で成り、80℃における熱収縮率が20%〜50%でフィルムの優れた諸特性即ち耐熱性、収縮性、光学特性、耐突き破れ性、防曇性を保持しつつ、引裂強度のMDとTDのバランスが良く、0℃前後のチルド域から−10℃前後の冷凍域での変形回復性を両立させることが出来たため、フィルム性能が飛躍的に向上し、市場で満足が得られるものである。本発明のフィルムは、種々のシュリンク包装用途への使用が可能であることは勿論、家庭用、業務用ラップフィルム等の各種包装材料の用途にも使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも3層構成で成り、80℃における熱収縮率が20%〜50%であるポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルムにおいて、以下の(1)〜(3)を特徴とするポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム。
(1)フィルムの動的粘弾性測定によるtanδのピーク温度が−10〜2℃であること。
(2)フィルムの示差走査型熱量計(DSC)測定による2nd.融解挙動において、少なくとも155℃±15℃の範囲にピークがあり、かつ、125℃以上の結晶融解熱量が10〜20J/gであること。
(3)フィルムの引裂強度として、少なくとも縦方向が0.05N以上であり、かつ、縦と横の引裂強度比が縦/横=1.2〜5.0倍であること。
【請求項2】 プロピレン系重合体(a)20重量%〜60重量%と、ビカット軟化点が80℃未満のポリオレフィン系エラストマー(b)10重量%〜50重量%と、ポリブテン−1系樹脂(c)10重量%〜40重量%とから成る内部層を少なくとも1層有することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂熱収縮性多層フィルム。

【公開番号】特開2003−260764(P2003−260764A)
【公開日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−62222(P2002−62222)
【出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】