説明

ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体

【課題】耐衝撃性、曲げ強度、流動性などに優れ、成形後に層状剥離を呈することがなく、高い耐薬品性を有すると共に難燃性が向上したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】(A)粘度平均分子量16000〜35000である芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を有する化合物の付加量が3〜30質量%である、エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー1〜40質量%、及び(C)ポリオレフィン系樹脂〔成分(B)のポリオレフィン系樹脂は除く〕0〜39質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(D)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩の群から選ばれる少なくとも1種0.001〜1質量部、ならびに(E)リン系および/またはハロゲン系難燃剤3〜40質量部、(F)フッソ含有ポリマー0.05〜5質量部を含み、かつ溶融混練してなるポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関する。より詳しくは、成形後に層状剥離を呈することがなく、耐衝撃性、曲げ強度、流動性などに優れ、電子機器や情報機器などのハウジングとして有用な、高い耐薬品性を有し、且つ難燃性が向上したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、高い物性を有すると共に良好な難燃特性を有し、電子・情報・電気部品の重要な素材として用いられている。しかし、流動性が低い、耐薬品性に劣るなどの弱点も有している。そのため製品の薄肉化においては、流動性を改良するためPC/ABSアロイ(特許文献1)、PC/PSのようなアロイ化が行われている。しかし、昨今の新型インフルエンザの流行等で、アルコール消毒を初め様々な薬液で各所の洗浄や清掃が頻繁に行われるようになり、そのため、電子・情報・電気部品等にも高い耐薬品性が必要になって来た。しかし、従来のPC/ABS等は耐薬品性が低く、流動性が良く、難燃性を有し且つ高い耐薬品性を有するPC系材料が強く望まれていた。
そこで、これらの課題を克服する材料の組み合わせとして、PCとポリオレフィン樹脂のアロイ、特にポリプロピレン(PP)とPCのアロイが期待されるが、相容化が困難で、そのため面衝撃が弱い、射出成形品に層剥離が生じるなどの大きな課題があり、実際実用化が困難であった。
【0003】
例えば、特許文献2は、水添されたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体のエポキシ化物(エポキシ変性SEBS)をPPとPCの相容化剤として用いることを提案したものだが、PP及びPCは官能基を有していないため、この方法では引張伸びの向上や層剥離防止が困難である。
特許文献3は、PPとPCの相容化剤として、末端に脂肪族OH基を有するPCとエポキシ基含有PPを溶融混練時に用いることを提案したものであるが、エポキシ基含有PPの分子量が小さく、伸びや衝撃強度の改良効果に限界があると共に、成形時に配向を助長し、厳しい折り曲げなどでは剥離が生じる。
特許文献4は、PPとPCの相容化剤として、末端に脂肪族水酸基を有するPCとカルボキシル基含有PPを溶融混練時に用いることを提案したものであるが、その反応効果は十分ではなく、伸びの改良や層剥離防止効果は小さい。
特許文献5は、PPとPCの相容化剤として、SEBSを用いることを提案したものだが、SEBSもPCとの相容性が低く、この方法では、引張伸びの向上や層剥離防止が困難である。
特許文献6は、OH末端PCとエチレン−グリシジルメタクリレート(GMA)の共重合体を溶融混練することにより、低温衝撃性を改善することを提案したものだが、この方法では流動性の改善は殆んど期待できない。また、PPとの組み合わせに関しては、全く考慮されていない。
特許文献7は、酸無水物変性ポリオレフィン(PO)とOH末端PCを反応させた樹脂改質剤が開示されており、そして、本改質剤はPPとPCの相容化剤としても活用できることを提案している。しかし、実際PCとPPの改質剤としての効果は示されておらず、酸無水物変性POとOHの反応は十分ではなく、伸びの改良や層剥離防止効果は小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235012号公報
【特許文献2】特開平7−207078号公報
【特許文献3】特開昭63−215749号公報
【特許文献4】特公平8−19297号公報
【特許文献5】特開2000−17120号公報
【特許文献6】特開平3−7758号公報
【特許文献7】特開平3−294333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性に劣る欠点を補い、耐衝撃性、曲げ強度、流動性などに優れ、成形後に層状剥離を呈することがなく、高い耐薬品性を有し、且つ難燃性が向上したポリカーボネート樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、特定の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の特定量にエポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマーおよび脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキルシアンモニウム塩の群から選ばれる少なくとも1種とリン系および/またはハロゲン系難燃剤の特定量ならびにフッソ含有ポリマーの特定量を添加して溶融混練してなるポリカーボネート樹脂組成物により上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記
(1)(A)粘度平均分子量16000〜35000である芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を有する化合物の付加量が3〜30質量%である、エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー1〜40質量%、及び(C)ポリオレフィン系樹脂〔成分(B)のポリオレフィン系樹脂は除く〕0〜39質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(D)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩の群から選ばれる少なくとも1種0.001〜1質量部、ならびに(E)リン系および/またはハロゲン系難燃剤3〜40質量部、(F)フッソ含有ポリマー0.05〜5質量部を含み、かつ溶融混練してなるポリカーボネート樹脂組成物、
(2)前記成分(B+C)と前記成分(E)が1/3(B+C)<E<2(B+C)の関係を満たす含有量である上記(1)に記載のポリカーボネート樹脂組成物および
(3)上記(1)または(2)に記載のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂を配合しても流動性優れ、耐衝撃性及び曲げ強度にも優れる、高い耐薬品性を有し且つ難燃性が向上したポリカーボネート樹脂組成物を提供することができ、これを用いることにより成形後に層状剥離を呈することがなく、各種の洗浄剤に耐えうる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[(A)芳香族ポリカーボネート樹脂]
本発明における(A)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量16000〜35000であれば特に制限はない。通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される種々の芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
【0009】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
特に、好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールA又はビスフェノールAを主原料としたものである。
【0010】
カーボネート前駆体としては、例えばカルボニルハライド、カルボニルエステル及びハロホルメートなど、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0011】
また、芳香族ポリカーボネートは、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、例えば1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸及びイサチンビス(o−クレゾール)などが挙げられる。
さらに、芳香族ポリカーボネートは、ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂であっても良いし、それを一部含んでいてもよい。ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部からなるものであり、例えば、ポリカーボネートオリゴマーとポリオルガノシロキサン部を構成する末端に反応性基を有するポリオルガノシロキサンとを、塩化メチレン等の溶媒に溶解させ、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液を加え、トリエチルアミン等の触媒を用い、界面重縮合反応することにより製造することができる。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂は、例えば、特開平3−292359号公報、特開平4−202465号公報、特開平8−81620号公報、特開平8−302178号公報及び特開平10−7897号公報等に開示されている。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂のポリオルガノシロキサンの含有量としては、通常0.1〜2質量%、好ましくは0.3〜1.5質量%の範囲である。ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂は、難燃性及び耐衝撃性の向上の観点から有用である。
ポリオルガノシロキサン含有芳香族ポリカーボネート樹脂において、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が好ましく、ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0012】
本発明における(A)成分の芳香族ポリカーボネート樹脂は粘度平均分子量は16000〜35000であるが、16000未満であると衝撃強度や引張強度が不足すると共に燃焼時ドリップを起こし易くなり、難燃性が悪くなる上、耐溶剤性が悪くなる。また、35000超であると成形性が悪くなり、薄肉部分の成形が困難になるとともに成形体の層剥離が発生し、引張伸度が低下することがある。粘度平均分子量は、好ましくは17000〜25000であり、より好ましくは18000〜24000である。
【0013】
なお、本発明における(A)成分の粘度平均分子量は、塩化メチレン100cm3に芳香族ポリカーボネート樹脂約0.7gを20℃で溶解した溶液をウベローデ粘度計を用いて測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
(ηsp)/C=[η]+0.45×[η]2
[η]=1.23×10-50.83
(但し、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である)
【0014】
本発明における(A)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計量中、60〜95質量%である。60質量%未満では引張強度及び弾性率などが低下し、95質量%超では流動性及び耐薬品性などの改良効果が不十分となる。好ましくは65〜92質量%であり、より好ましくは70〜90質量%である。
【0015】
[(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー]
本発明における(B)成分であるポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー中のエポキシ基又はグリシジル基を有する化合物の含有量は3〜30質量%である。3質量%未満であると(A)成分と(C)成分との相溶性の改善効果が発揮されず、引張伸度及び耐衝撃性が低下し、かつ、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系エラストマーが配向し易くなり、難燃性が低下する。さらに成形体の層剥離が発生することがある。また、30質量%超であると自己架橋が起こるおそれがあり、引張伸び率及び耐衝撃性が低下し、さらに成形体の層剥離が発生することがある。エポキシ基又はグリシジル基を有する化合物の含有量は、好ましくは4〜25質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。
【0016】
(B)成分におけるポリオレフィン系樹脂は、例えばエポキシ基又はグリシジル基を有するオレフィンの単独重合体、あるいはオレフィンとエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体との共重合体であっても、オレフィン重合体に対してエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体を共重合したものであってもよく、共重合体はグラフト共重合体、ランダム共重合体、あるいはブロック共重合体であってもよい。
また、例えばオレフィン重合体の末端、あるいはオレフィンと他の不飽和単量体などとの共重合体及びこれらの複合物中に存在する不飽和結合を、過酸化水素あるいは有機過酸など、例えば過安息香酸、過ギ酸及び過酢酸などにより酸化することでエポキシ基を導入したものであってもよい。すなわち、オレフィン系重合体にエポキシ基又はグリシジル基を導入したものであればいずれを用いてもよい。
(B)成分におけるポリオレフィン系エラストマーとは、エポキシ基又はグリシジル基を含有し、X線回折法により測定される結晶化度が50%以下の低結晶性ないし非晶性のオレフィン系共重合体である。
【0017】
オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−ブテン、シクロブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、シクロペンテン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、1−オクテン、1−デセン、及び1−ドデセンなどが挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、グリシジルシンナメート、イタコン酸グリシジルエステル、及びN−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−3,5−ジメチルベンジル]メタクリルアミドなどが挙げられる。これらは、1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(B)成分の重量平均分子量は、5万〜50万程度であることが好ましい。この範囲内であれば、層剥離を防止できると共に、良好な引張伸びや高い面衝撃性を得ることができる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法を用いることにより求めることができる。
【0019】
本発明においては、(B)成分として、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂を1種以上用いてもよいし、エポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系エラストマーを1種以上用いてもよく、また上記ポリオレフィン系樹脂1種以上とポリオレフィン系エラストマー1種以上とを併用してもよい。
本発明における(B)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計量中、1〜40質量%である。1質量%未満では(A)成分と(C)成分との相溶性の改善が充分とはいえず、引張伸び率及び耐衝撃性が低下し、かつ、ポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系エラストマーが配向し易くなり、難燃性が低下する。さらに成形体の層剥離が発生することがある。40質量%超では自己架橋が起こりやすく、引張強度及び弾性率が大幅に低下し、流動性が悪くなり、難燃性が低下する。好ましくは2〜13質量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。
【0020】
[(C)ポリオレフィン系樹脂]
本発明における(C)成分であるポリオレフィン系樹脂は、前記(B)成分の一つであるエポキシ基又はグリシジル基を有するポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂である。
(C)成分であるポリオレフィン系樹脂としては、エチレンやプロピレンのようなオレフィンモノマーを単独で重合したものであってもよく、それらを主体として共重合したものであってもよい。例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)やアイソタクチックプロピレン単独重合体、あるいはシンジオタクチックプロピレン単独重合体であってもよい。また、共重合体は、例えばプロピレンとエチレンの共重合体などが挙げられ、グラフト共重合体、ランダム共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0021】
本発明において(C)成分はメルトインデックス(MI)が、測定条件樹脂温230℃、荷重21.18Nにおいて、2〜40g/10分程度であることが好ましい。MIが2g/10分以上であれば流動性の改善効果を充分に発揮でき、40g/10分以下であれば成形体の層剥離が発生しにくくなる。より好ましくは3〜30g/10分である。なお、MIはASTM D 1238に準拠した測定法により求めたものである。
【0022】
本発明においては、(C)成分として、上記オレフィン系重合体を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(C)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計量中、0〜39質量%である。0質量%では流動性及び耐薬品性の改善効果が充分に発揮できず、39質量%超では引張伸び率及び耐衝撃性が低下し、難燃性が低下する。さらに成形体の層剥離が発生し易くなる。好ましくは1〜35質量%であり、より好ましくは3〜30質量%である。
【0023】
[(D)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩]
本発明における(D)成分は、脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩の群から選ばれる少なくとも1種である。
脂肪族アミン塩及び芳香族アミン塩は、例えば一般式R123N・1/nA1で表すことができ、脂肪族アミン塩のときR1〜R3は、独立して水素原子又は脂肪族基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。芳香族アミン塩のときR1〜R3は、独立して水素原子又は芳香族基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。A1は酸を表し、例えば塩酸、硫酸、硝酸、塩素酸、過塩素酸、酢酸、モノアルキル硫酸、スルホン酸化合物などである。nは、酸A1のアニオンの価数であり、例えば塩酸の場合はn=1、硫酸の場合はn=2である。
【0024】
アンモニウムヒドロキシドは、例えば一般式R4567+OH-で表すことができる。R4〜R7は、例えば独立して水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。
このアンモニウムヒドロキシドの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−プロピルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシドなどを挙げることができる。
一方、ヒドロキシルアミン塩としては、例えば一般式R89NOH・1/mA2で表すことができ、R8及びR9は、例えば独立に水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す(ただし、全てが同時に水素原子ではない)。A2は酸を示し、mは酸A2のアニオンの価数である。
【0025】
このヒドロキシルアミン塩の例としては、塩酸メチルヒドロキシルアミン、塩酸エチルヒドロキシルアミン、塩酸n−プロピルヒドロキシルアミン、塩酸イソプロピルヒドロキシルアミン、塩酸ジメチルヒドロキシルアミン、塩酸ジエチルヒドロキシルアミン、及びこれらのヒドロキシルアミン類における塩酸を他の酸、例えば硫酸、硝酸、酢酸、モノアルキル硫酸、スルホン酸化合物などに置換したヒドロキシルアミン類などを挙げることができる。
本発明においては、(D)成分として、前述した窒素含有化合物を1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明における(D)成分の配合量は、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して、0.001〜1質量部である。0.001質量部未満では、(C)成分のポリオレフィン系樹脂が配向し易くなり、難燃性が低下し、かつ、成形体の層剥離が発生し易くなる。1質量部超では分子量が低下し、耐薬品性が低下するとともに引張伸度及び衝撃強度が低下するおそれがある。好ましくは0.002〜0.8質量部であり、より好ましくは0.003〜0.5質量部である。
【0026】
[(E)リン系および/またはハロゲン系難燃剤]
(E)成分の一つであるリン系難燃剤としてはリン酸エステル系難燃剤としては、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。
具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート等又はこれらの置換体、縮合物等が挙げられる。上記のようなリン酸エステル系難燃剤以外のリン系難燃剤としては、赤リン等が挙げられる。
リン酸エステル系難燃剤として好適に用いることができる市販のリン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、CR733S〔レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)〕、CR741〔ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX201L〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX202〔4,4'−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートなどを挙げることができる。
上記リン酸エステル系難燃剤は、2価のフェノール類およびAr・OHで表される1価のフェノール類とオキシ塩化燐との反応によって得られる。
【0027】
もう一つの(E)成分であるハロゲン系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ジブロモメチル−ジブロモスクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、ハロゲン化ポリカーボネート及びハロゲン化ポリカーボネートの(共)重合体、これらのオリゴマー(TBAカーボネートオリゴマー)、デカブロモジフェニルエーテル、TBAエポキシオリゴマー、ハロゲン化ポリオレフィン、ハロゲン含有アクリル系樹脂[ハロゲン化ポリベンジル(メタ)アクリレート系樹脂、例えば、ポリ(ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート)などの臭素化ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリ(ペンタクロロベンジル(メタ)アクリレート)などのハロゲン化ベンジル(メタ)アクリレートの単独又は共重合体など]、ハロゲン含有スチレン系樹脂[ハロゲン化ポリスチレン(臭素化ポリスチレン、塩素化ポリスチレンなどのスチレン系樹脂をハロゲン化処理したハロゲン化物、ハロゲン化スチレン系単量体の単独又は共重合体など)など]、ハロゲン含有ポリカーボネート系樹脂[臭素化ポリカーボネート、塩素化ポリカーボネートなどハロゲン化ポリカーボネートなど]、ハロゲン含有エポキシ化合物[臭素含有エポキシ樹脂(臭素化エポキシ樹脂など)、塩素化エポキシ樹脂などのハロゲン含有エポキシ樹脂[ハロゲン化エポキシ樹脂など];臭素含有フェノキシ樹脂[臭素化フェノキシ樹脂など]などのハロゲン含有フェノキシ樹脂(ハロゲン化フェノキシ樹脂など)など]、ハロゲン含有リン酸エステル[例えば、トリス(ブロモエチル)ホスフェート、トリス(モノ又はジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(モノ又はジブロモブチル)ホスフェート、トリス(モノ乃至トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ビス(トリブロモネオペンチル)フェニルホスフェート、トリス(モノ乃至トリブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素含有リン酸エステルなど]、ハロゲン含有トリアジン化合物(例えば、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジンなどの臭素含有トリアジン化合物など)、ハロゲン含有イソシアヌル酸化合物[例えば、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、トリス(ペンタブロモベンジル)イソシアヌレートなどの臭素含有イソシアヌル酸化合物など]、ハロゲン化ポリアリールエーテル化合物[例えば、オクタ乃至デカブロモジフェニルエーテル、オクタ乃至デカクロロジフェニルエーテルなどのビス(ハロゲン化アリール)エーテル(例えば、ビス(ハロゲン化フェニル)エーテルなど);臭素化ポリフェニレンエーテルなどのハロゲン含有ポリフェニレンオキシド系樹脂など]、ハロゲン化芳香族イミド化合物[例えば、エチレンビス臭素化フタルイミドなどの臭素化芳香族イミド化合物(例えば、ビスイミド化合物など)など]、ハロゲン化ビスアリール化合物[例えば、臭素化ジフェニルなどのビス(ハロゲン化C6-10アリール);臭素化ジフェニルメタンなどのビス(ハロゲン化C6-10アリール)C1-4アルカン;臭素化ビスフェノールAなどのハロゲン化ビスフェノール類又はその誘導体(ハロゲン化ビスフェノール類のエチレンオキシド付加体を重合した臭素化ポリエステルなど)など]、ハロゲン化脂環族炭化水素[架橋環式飽和又は不飽和ハロゲン化脂環族炭化水素、例えば、ドデカクロロペンタシクロオクタデカ−7,15−ジエンなどのハロゲン化ポリシクロアルカジエンなど]などが挙げられる。ハロゲン系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明においては、成分(E)のリン系および/又はハロゲン系難燃剤の含有量は、前記(A)〜(C)からなる成分100質量部に対して、3〜40質量部、好ましくは、5〜25質量部、特に、10〜15質量部である。
3質量部以上とすることにより所望の難燃性が得られ、40質量部以下とすることにより耐薬品性、耐熱性、引張伸度、衝撃強度等の低下を避けることができる。
【0028】
[(F)フッ素含有ポリマー]
(F)成分であるフッ素含有ポリマーとしては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体が挙げられる。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくは500,000〜10,000,000である。
本発明で用いることができるポリテトラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべての種類のものを用いることができる。なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能力のあるものが好ましい。
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。
その具体例としては、例えば、テフロン6−J[三井・デュポンフロロケミカル(株)製]、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201[ダイキン工業(株)製]及びCD076[旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製]等が挙げられる。
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えば、アルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA及びポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。
これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えば、テトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、7〜700kPaの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得ることができる。
フッ素含有ポリマー(F)は、さらなる難燃性の向上(例えば、V−0、5V)のために添加されるもので、その配合量は、成分(A)〜(C)の合計量100質量部あたり0.05〜5質量部である。配合量が0.05質量部未満では滴下防止性に劣り、また5質量部を超えると表面外観や機械物性(衝撃強度)が悪化する。より好適には、0.1〜1質量部の範囲である。
【0029】
前記各成分の範囲内において、成分(B)、(C)及び(E)が1/3(B+C)<E<2(B+C)の関係を満たすような含有量とするのが好ましい。
この範囲を外れると、即ち難燃剤量(E)がポリオレフィン量(B+C)の1/3よりも少ないと、難燃性が不足し、UL規格を満足できなくなる。また難燃剤量(E)がポリオレフィン量(B+C)の2倍以上になると、耐薬品性が低下し、一般的な洗浄剤に耐えられなくなる。
ちなみに、上記関係式は、流動性を改良するために添加したポリオレフィン量に対する難燃剤の必要量を割り出したものであり、ULの難燃規格と一般敵な洗浄剤に対する耐薬品性と相反する特性に関し、何れも満足するような添加量を詳細な実験結果より誘導したものである。なお、この関係は、ポリカーボネート樹脂中にポリオレフィンを微細に分散させ層剥離を起こさない状態での値であり、層剥離を起こす場合は、難燃性が不足し、両者を満足する添加量は存在しなかった。
【0030】
[添加剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物において、上記(A)〜(F)成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、無機添加剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃助剤、着色剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、離型剤及び滑剤などが挙げられる。
【0031】
[ポリカーボネート樹脂組成物及び成形体]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分及び所望により用いられる各種の添加剤を常法により配合し、溶融混練することにより得ることができる。溶融混練機としては、例えばバンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ及び多軸スクリュー押出機などが挙げられる。溶融混練における加熱温度は、通常220〜300℃が適当である。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば中空成形、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形、熱曲げ成形、圧縮成形、カレンダー成形及び回転成形などを適用することにより、成形体とすることができ、特に射出成形による成形法が好ましい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、曲げ強度、流動性及び耐薬品性に優れるため、射出成形によりこれらの特性が要求される自動車部品、電子機器や情報機器のハウジングなどとして利用可能である。
すなわち、本発明は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いてなる成形体、とりわけ自動車部品用のポリカーボネート樹脂組成物をも提供する。
【実施例】
【0033】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下において、GMAはグリシジルメタクリレート、MIはメルトインデックスを示す。
【0034】
実施例及び比較例において用いた(A)〜(F)成分を以下に示す。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂
A−1:タフロンFN2600[出光興産(株)製、分子量26000]
A−2:タフロンFN2200[出光興産(株)製、分子量22000]
A−3:タフロンFN1900[出光興産(株)製、分子量19000]
A−4:タフロンFN3000[出光興産(株)製、分子量30000]
A−5:タフロンFN1500[出光興産(株)製、分子量15000]
(B)エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー
B−1:エチレン-GMA共重合体[住友化学(株)製、ボンドファーストE、GMA含有量12質量%]
B-2:GMAグラフトポリプロピレン[ポリプロピレンとGMAと有機過酸化物をブ レンド後、バッチ式混練にて溶融混練して製造]、GMA含有量9質量%]
B-3:GMAグラフトポリエチレン 高密度ポリエチレンとGMAと有機過酸化物を ブレンド後、バッチ式混練にて溶融混練して製造、GMA含有量5質量%]
B-4:GMAグラフトポリプロピレン[ポリプロピレンとGMAと有機過酸化物をブ レンド後、バッチ式混練にて溶融混練して製造、GMA含有量1質量%]
(C)ポリオレフィン系樹脂
C-1:ポリプロピレンブロック重合体[プライムポリマー(株)製、J−785H、 MI=15g/10分]
C-2:ポリプロピレンブロック重合体[プライムポリマー(株)製、E−185G、 MI=0.3g/10分]
C-3:ポリプロピレンホモポリマー[プライムポリマー(株)製、J-3000GP 、MI=30g/10分]
C-4:高密度ポリエチレン[旭化成ケミカルズ(株)製、J300、MI=42g/ 10分]
(D)アンモニウムヒドロキシド、脂肪族アミン塩
D−1:トリメチルアンモニウムヒドロキシド[和光純薬工業(株)製、TMAH]
D−2:脂肪族アミン塩[日本油脂(株)製、商品名:カチオンBB]
(E)リン系またはハロゲン系難燃剤
E−1:固体リン酸エステル系難燃剤[大八化学(株)製の1,3−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、PX−200]
E−2:液体リン酸エステル系難燃剤[大八化学(株)製のレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、CR−733S、]
E−3:赤リン系難燃剤[燐化学工業(株)製、ノーバエクセル140F]
E−4:ハロゲン系難燃剤[アルベマール日本(株)製のエチレンビス(ペンタブロモフェニル)、SAYTEX8010]
(F)フッソ含有ポリマー
F−1:ポリテトラフルオロエチレン[旭硝子(株)製、PTFE CD76]
F−2:アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン[三菱レーヨン(株)製、メタブレン]
【0035】
<サンプル製造方法>
表1〜3に示す各配合成分を、二軸混練機[日本製鋼所(株)製、TEX44]を用い、設定温度を250℃とし、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/時で溶融混練を行い、目的とするペレットを得た。得られたペレットを110℃で6時間以上乾燥した後、射出成形により試験片を作成した。射出成形温度は、260℃、金型温度は60℃とした。
<評価方法>
(1)引張試験:JIS K7162に準拠
(2)IZOD衝撃試験:JIS K7110に準拠
(3)難燃性:125×12.5×1.5mmの試験片使用、UL94に準拠
(4)耐薬品性:125×12.5×3.0mmの試験片を使用、浸漬液として、擬似ガソリン〔トルエン/イソオクタン=40/60(質量比)混合液〕、マジックリン[住宅用洗浄マジックリン(1質量%アルキルアミンオキシド)]およびエタノールを使用した。
耐薬品性1は擬似ガソリンを使用して1/4楕円法を用い、1時間後の限界歪みを測定した。
耐薬品性2はマジックリンを使用して、スパン間距離80mmの3点曲げ試験で、
歪み量を1%に保持し24時間後の状況を目視により評価した。
耐薬品性3はエタノールを使用して、耐薬品性2と同様に行ない、評価した。
【0036】
〔実施例1、2、比較例1、2および参考例1〕
表1に示す配合割合で、上記<サンプル製造方法>に記載した通りの方法でサンプルを調製して下記の方法により物性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
〔実施例3〜6〕
表2に示す配合割合で、上記<サンプル製造方法>に記載した通りの方法でサンプルを調製して下記の方法により物性評価を行った。得られた結果を表2に示す。
〔比較例3〜7〕
表3に示す配合割合で、上記<サンプル製造方法>に記載した通りの方法でサンプルを調製して下記の方法により物性評価を行った。得られた結果を表3に示す。
【0037】
<物性評価>
(1)引張強度、引張弾性率および引張伸度は、厚さ3.0mmの試験片を用いてJIS K 7162に準拠して測定した。
(2)アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)厚さ3.0mmの試験片を用いてJIS K 7110に準拠して測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、流動性及び耐薬品性に優れ、耐衝撃性及び曲げ強度にも優れるため、自動車部品、電子機器や情報機器のハウジングなどに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘度平均分子量16000〜35000である芳香族ポリカーボネート樹脂60〜95質量%、(B)エポキシ基又はグリシジル基を有する化合物の付加量が3〜30質量%である、エポキシ基又はグリシジル基を含有するポリオレフィン系樹脂及び/又はポリオレフィン系エラストマー1〜40質量%、及び(C)ポリオレフィン系樹脂〔成分(B)のポリオレフィン系樹脂は除く〕0〜39質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、(D)脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アンモニウムヒドロキシド、ヒドロキシルアミン塩の群から選ばれる少なくとも1種0.001〜1質量部、ならびに(E)リン系および/またはハロゲン系難燃剤3〜40質量部、(F)フッソ含有ポリマー0.05〜5質量部を含み、かつ溶融混練してなるポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(B+C)と前記成分(E)が1/3(B+C)<E<2(B+C)の関係を満たす含有量である請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる成形体。

【公開番号】特開2011−132312(P2011−132312A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291203(P2009−291203)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】