説明

ポリシロキサン化合物およびその製造方法並びに屈折率変換材料

【課題】光反応性基を有する新規なポリシロキサン化合物およびその製造方法、および上記のポリシロキサン化合物よりなる屈折率変換材料を提供する。
【解決手段】ポリシロキサン化合物は、下記式(a)で表される基を有する。


〔式中、R2は、特定の光反応性基を示し、R3は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R4およびR5は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示す。nは0または1。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン化合物およびその製造方法並びに屈折率変換材料に関し、更に詳しくは、光反応性基を有するカゴ型シルセスキオキサン化合物および環状ポリシロキサン化合物、これらの光反応性基を有するポリシロキサン化合物を製造するための方法、並びにこれらのポリシロキサン化合物よりなる屈折率変換材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルナジエン(以下、「NBD」ともいう。)は、紫外線の照射により、分極率の低いクワドリシクラン(以下、「QC」ともいう。)に光原子価異性化し、また、QCは、触媒との接触および短波長の光の照射により、放熱を伴ってNBDに異性化する特性を有することから、NBD構造を有する化合物は、光エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積する光−熱エネルギー変換蓄積材料として注目されている。
また、NBD構造を有する化合物は、異性化したQC構造を有する化合物と異なる屈折率を有する、すなわち光の照射によって屈折率が変化する特性を有することから、例えば光記憶素子や光スイッチシステムに用いられる屈折率変換材料への応用が期待されている。
【0003】
このような光−熱エネルギー変換蓄積材料および屈折率変換材料においては、容易に成膜され得るものであることが肝要である。そして、従来、成膜化が可能なNBD構造を有する化合物として、NBD構造が導入された種々の重合体が提案されている。また、本発明者らによっても、フェノール性水酸基を数多く有し、熱安定性に優れたカリックスレゾルシンアレーン化合物に対してNBD構造が導入されたカリックスレゾルシンアレーン誘導体が提案されており、そのカリックスレゾルシンアレーン誘導体は光照射によって屈折率が大きく変化する特性を有するものであることが報告されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
また、カリックスレゾルシンアレーン化合物と同様の特性を有するものとしては、シルセスキオキサン化合物、具体的には、かご構造、ランダムに三次元架橋したゲル構造あるいははしご型構造を有するポリシロキサンが挙げられる。
そして、最近において、NBD構造などの光反応性基が導入された、はしご型構造を有するシルセスキオキサン重合体が提案されており(特許文献3参照。)、また本発明者らによっては、光反応性基が導入されたシルセスキオキサン化合物が提案されている(特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−306470号公報
【特許文献2】特開2004−262822号公報
【特許文献3】特開2006−257321号公報
【特許文献4】特開2009−249326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を背景として、ポリシロキサン化合物について種々の研究を行った結果として得られたものである。
本発明の第1の目的は、光反応性基を有する新規なポリシロキサン化合物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記のポリシロキサン化合物よりなる屈折率変換材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリシロキサン化合物は、下記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1 は、水素原子または下記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは下記式(a)で表される基である。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R2 は、下記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、R3 は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示す。nは0または1である。〕
【0012】
【化3】

【0013】
〔式(ホ)において、R6 は、水素原子、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはt−ブチル基を示す。式(ト)において、R7 は、メチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基を示す。〕
【0014】
本発明のポリシロキサン化合物は、下記式(2)で表されることを特徴とする。
【0015】
【化4】

【0016】
〔式中、R1 は、水素原子または上記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは上記式(a)で表される基である。〕
【0017】
本発明のポリシロキサン化合物は、下記式(3)で表されることを特徴とする。
【0018】
【化5】

【0019】
〔式中、R1 は、水素原子または上記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは上記式(a)で表される基である。R8 は、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。mは3〜100の整数を示す。〕
【0020】
本発明のポリシロキサン化合物の製造方法は、下記式(4)で表されるポリシロキサン化合物と、下記式(5)で表される化合物とを反応させることにより、上記式(2)で表されるポリシロキサン化合物を得ることを特徴とする。
【0021】
【化6】

【0022】
〔式中、R9 は、下記式(b)で表される基を示す。〕
【0023】
【化7】

【0024】
〔式中、R3 は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Xは、水素原子またはハロゲン原子を示す。pは0または1である。〕
【0025】
【化8】

【0026】
〔式中、R2 は、請求項1に記載の式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、Lは、水素原子またはカリウム原子を示す。〕
【0027】
本発明のポリシロキサン化合物の製造方法は、下記式(6)で表されるポリシロキサン化合物と、下記式(7)で表される化合物とを反応させることにより、上記式(3)で表されるポリシロキサン化合物を得ることを特徴とする。
【0028】
【化9】

【0029】
〔式中、R8 は、炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R10は、下記式(c)で表される基を示す。mは3〜100の整数を示す。〕
【0030】
【化10】

【0031】
〔式中、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示す。pは0または1である。〕
【0032】
【化11】

【0033】
〔式中、R2 は、上記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、R11 は、単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基を示す。〕
【0034】
本発明の屈折率変換材料は、上記のポリシロキサン化合物よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明のポリシロキサン化合物は、光照射によって屈折率が変化するものである。
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造方法によれば、上記のポリシロキサン化合物を有利に製造することができる。
そして、本発明のポリシロキサン化合物は、屈折率変換材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図2】実施例1に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図3】実施例2に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図4】実施例2に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図5】実施例3に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図6】実施例3に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図7】実施例4に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図8】実施例4に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図9】実施例5に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図10】実施例5に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図11】実施例6に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図12】実施例6に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図13】実施例7に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図14】実施例7に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図15】実施例8に係るポリシロキサン化合物におけるSEC曲線である。
【図16】実施例8に係るポリシロキサン化合物における 1H−NMRスペクトル図を示す図である。
【図17】実施例1に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図18】実施例2に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図19】実施例3に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図20】実施例4に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図21】実施例5に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図22】実施例6に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図23】実施例7に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図24】実施例8に係るポリシロキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を示す図である。
【図25】実施例1に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図26】実施例2に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図27】実施例3に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図28】実施例4に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図29】実施例5に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図30】実施例6に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図31】実施例7に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【図32】実施例8に係るポリシロキサン化合物における異性化反応率を一次速度式にプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下本発明の実施の形態について説明する。
【0038】
本発明のポリシロキサン化合物は、上記式(1)で表される構造単位(以下、「特定構造単位」ともいう。)を有するものである。
【0039】
本発明のポリシロキサン化合物に係る特定構造単位を示す式(1)において、R1 は、水素原子または上記式(a)で表される基であり、R1 の少なくとも1つは式(a)で表される基である。すなわち、本発明のポリシロキサン化合物を構成する複数の特定構造単位のうちの少なくとも1つの特定構造単位に係る基R1が式(a)で表される基とされる。
基R1 を示す式(a)において、R2 は、上記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される光反応性基である。
ここに、式(ホ)において、R6 は、水素原子、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはt−ブチル基であるが、水素原子であることが好ましい。また、式(ト)において、R7 は、メチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基であるが、メトキシ基またはジメチルアミノ基であることが好ましい。
【0040】
また、式(a)において、R3 は、メチレン基、または炭素数2〜10のアルキレン基を示す。
基R3 を示す炭素数2〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
【0041】
また、式(a)において、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R4 およびR5 は、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
基R4 および基R5 を示す炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられる。
また、nは1または0である。
【0042】
本発明のポリシロキサン化合物の好ましい具体例としては、上記式(2)で表されるポリシロキサン化合物(以下、「特定のカゴ型シルセスキオキサン化合物」ともいう。)および上記式(3)で表されるポリシロキサン化合物(以下、「特定の環状ポリシロキサン化合物」ともいう。)が挙げられる。
【0043】
特定のカゴ型シルセスキオキサン化合物の構造を示す式(2)においては、nが0であることが好ましく、R3 がプロピレン基であることが好ましい。
【0044】
特定の環状ポリシロキサン化合物の構造を示す式(3)においては、nが1であることが好ましく、また、R3 が炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、特に好ましくはプロピレン基であり、R4 およびR5 がメチル基であることが好ましい。
また、式(3)においては、R8 は、1〜10の炭化水素基を示す。この基R8 を示す炭素数1〜10の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、イソプロペニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられ、これらのうちではフェニル基が好ましい。mは3〜100の整数であり、4〜50の整数であることが好ましく、5〜20の整数であることがより好ましい。
【0045】
特定の環状ポリシロキサン化合物は、数平均分子量(Mn)が1000〜2500であることが好ましく、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜1.5であることが好ましい。
【0046】
このような構成の特定構造単位を有するポリシロキサン化合物は、原料化合物としてのポリシロキサン化合物と、上記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される光反応性基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0047】
具体的には、特定のカゴ型シルセスキオキサン化合物は、上記式(4)で表される化合物(以下、「原料化合物(1)」ともいう。)と、上記式(5)で表される化合物(以下、「原料化合物(2)」ともいう。)とを反応させることにより得ることができる。
ここに、原料化合物(1)の構造を示す式(4)において、R9 は、上記式(b)で表される基であり、この式(b)において、X は、水素原子またはハロゲン原子である。基Xを示すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。また、式(4)においては、R3 は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基であり、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、pは0または1である。
また、原料化合物(2)の構造を示す式(5)において、R2 は、上記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される光反応性基であり、Lは、水素原子またはカリウム原子である。
【0048】
原料化合物(1)と、原料化合物(2)との使用割合は、原料化合物(1)中の式(b)で表される基1molに対して原料化合物(1)が0.1〜10molであることが好ましく、1〜2molであることがより好ましい。
【0049】
原料化合物(1)と原料化合物(2)との反応は、触媒の存在下、適宜の溶媒中において行うことができる。
ここで、触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミドなどを用いることができる。
また、触媒の使用割合は、反応に供する原料化合物(1)および原料化合物(2)に対して2〜10mol%であることが好ましい。
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどを用いることができる。
反応条件としては、例えば反応温度が0〜150℃であることが好ましく、30〜100℃であることがより好ましく、また、反応時間が10分間〜200時間であることが好ましく、10〜100時間であることがより好ましい。
【0050】
また、特定の環状ポリシロキサン化合物は、上記式(6)で表される化合物(以下、「原料化合物(3)」もいう。)と、上記式(7)で表される化合物(以下、「原料化合物(4)」ともいう。)とを反応させることにより得ることができる。
ここに、原料化合物(3)の構造を示す式(6)において、R10は、上記式(c)で表される基であり、この式(c)において、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基であり、pは0または1である。また、式(6)において、R8 は、1〜10の炭化水素基であり、mは3〜100の整数である。
また、原料化合物(4)の構造を示す式(7)において、R2 は、上記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される光反応性基であり、R11は、単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基である。
【0051】
原料化合物(3)と、原料化合物(4)との使用割合は、原料化合物(3)中の式(b)で表される基1molに対して原料化合物(4)が0.1〜10molであることが好ましく、1〜2molであることがより好ましい。
【0052】
原料化合物(3)と原料化合物(4)との反応は、触媒の存在下、適宜の溶媒中において行うことができる。
ここで、触媒としては、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金などを用いることができる。また、触媒の使用量は、原料化合物(4)1molに対して1×10-4〜1×10-1molであることが好ましく、1×10-3mol〜1×10-2molであることがより好ましい。
溶媒としては、トルエンなどを用いることができる。
反応条件としては、例えば反応温度が70℃、反応時間が24時間である。
【0053】
以上のような本発明のポリシロキサン化合物は、光反応性基を有するため、後述する実施例から明らかなように、特定の光、例えば紫外線を受けることによって屈折率が変化する特性を有するものである。従って、本発明のポリシロキサン化合物は、光記憶素子や光スイッチシステムなどに用いられる屈折率変換材料として極めて有用である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
〈クロロプロピル基を有するカゴ型シルセスキオキサンの合成例1〉
容積3Lのナスフラスコに、メタノール1.8L、濃塩酸90mLおよび3−クロロプロピルトリメトキシシラン73.6mL(0.4mol)を仕込み、室温で5週間にわたって撹拌することにより反応させた。反応が終了した後、析出物をろ収し、脱イオン水で洗浄することにより、反応生成物22.3241g(収率43%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析、13C−NMR分析および29Si−NMR分析の結果から、下記式(4−1)で表されるシルセスキオキサン化合物(以下、「POSS−(Cl)8 」ともいう。)であることが確認された。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により 数平均分子量(Mn)が881であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.02であることが確認された。
【0056】
【化12】

【0057】
反応生成物の 1H−NMR分析、13C−NMR分析および29Si−NMR分析の結果を下記に示す。
【0058】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.79−0.82(t,2H,Ha ),
1.85−1.90(quintet,2H,Hb ),
3.53−3.55(t,2H,Hc ).
13C NMR(150MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
9.3(Ca ),
26.2(Cb ),
47.0(Cc ).
29Si NMR(119MHz,CDCl3 ,TEOS)δ(ppm):
−67.1(Cage Structure).
【0059】
〈実施例1〉
容積10mLのナスフラスコに、POSS−(Cl)8 0.1634g(0.16mmol)、9−アントラセンカルボン酸カリウム0.4919g(1.9mmol,POSS−(Cl)8 のクロロプロピレン基に対して1.5e.q.)およびテトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」ともいう。)0.0322g(5mol%)、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)3mLを仕込み、温度70℃の条件下において48時間反応させた。反応が終了した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸水溶液で乾燥して濃縮した。その後、少量のテトラヒドロフラン(以下、「THF」ともいう。)に溶解させ、メタノール中に滴下する沈殿操作を行うことによって粘性液体を得、更に得られた粘性液体に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の粘性液体0.3683g(収率91%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(2−1)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(1)」ともいう。)であることが確認された。また、9−アントラセン残基の導入率は98%であった。更に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が1834であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.04であることが確認された。
【0060】
【化13】

【0061】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図1に示し、 1H−NMRスペクトル図を図2に示す。
【0062】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.72−0.81(m,2H,Ha ),
1.81−1.90(m,2H,Hb ),
4.31−4.46(t,2H,Hc ),
3.71−3.73(t,2H,Hd ),
7.22−7.36(m,2H,Hf,g ),
7.81−7.93(m,2H,He,h ),
8.34−8.40(m,1H,Hi ).
【0063】
〈実施例2〉
容積10mLのナスフラスコに、POSS−(Cl)8 0.2592g(0.25mmol)、3−フェニル−2,5−ノルボルナジエン−カルボン酸カリウム0.7510g(3mmol,POSS−(Cl)8 のクロロプロピレン基に対して1.5e.q.)およびTBAB0.0322g(5mol%)、NMP5mLを仕込み、温度70℃の条件下において48時間反応させた。反応が終了した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸水溶液で乾燥して濃縮した。その後、少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下する沈殿操作を行うことによって粘性液体を得、更に得られた粘性液体に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の粘性液体0.3377g(収率55%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(2−2)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(2)」ともいう。)であることが確認された。また、ノルボルナジエン残基の導入率は99%以上であった。更に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が1927であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.03であることが確認された。
【0064】
【化14】

【0065】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図3に示し、 1H−NMRスペクトル図を図4に示す。
【0066】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.58(m,2H,Ha ),
1.66(m,2H,Hb ),
2.02,2.19(d,2H,Hd ),
3.81(m,1H,Hf ),
4.01−4.04(m,3H,Hc,e ),
6.88−6.92(m,2H,Hg ),
7.28−7.50(m,5H,Hh ).
【0067】
〈実施例3〉
容積10mLのナスフラスコに、POSS−(Cl)8 0.2592g(0.25mmol)、4−メトキシケイ皮酸カリウム0.6488g(3mmol,POSS−(Cl)8 のクロロプロピレン基に対して1.5e.q.)およびTBAB0.0322g(5mol%)、NMP5mLを仕込み、温度70℃の条件下において48時間反応させた。反応が終了した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸水溶液で乾燥して濃縮した。その後、少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下する沈殿操作を行うことによって粘性液体を得、更に得られた粘性液体に対して同様の沈殿操作を行うことにより、白色の個体0.4990g(収率92%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(2−3)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(3)」ともいう。)であることが確認された。また、4−メトキシケイ皮酸残基の導入率は99%以上であった。更に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が2441であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05であることが確認された。
【0068】
【化15】

【0069】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図5に示し、 1H−NMRスペクトル図を図6に示す。
【0070】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.75−0.77(m,2H,Ha ),
1.83(m,2H,Hb ),
3.76−3.80(m,3H,Hh ),
4.16−4.19(m,2H,Hc ),
6.25−6.29(m,1H,Hd ),
6.80−6.84(m,2H,Hg ),
7.37−7.42(m,3H,Hf ),
7.58−7.62(m,1H,He ).
【0071】
〈実施例4〉
容積10mLのナスフラスコに、POSS−(Cl)8 0.2592g(0.25mmol)、1−アントラセンカルボン酸カリウム0.7810g(3mmol,POSS−(Cl)8 のクロロメチル基に対して1.5e.q.)およびTBAB0.0322g(5mol%)、NMP5mLを仕込み、温度70℃の条件下において48時間反応させた。反応が終了した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸水溶液で乾燥して濃縮した。その後、少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下する沈殿操作を行うことによって粘性液体を得、更に得られた粘性液体に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の個体0.3729g(収率93%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(2−4)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(4)」ともいう。)であることが確認され、また1−アントラセン残基の導入率は98%であった。更に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が2003であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.05であることが確認された。
【0072】
【化16】

【0073】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図7に示し、 1H−NMRスペクトル図を図8に示す。
【0074】
1H NMR(500MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.93−0.96(m,2H,Ha ),
2.01(m,2H,Hb ),
3.74(m,2H,Hd ),
4.29−4.38(m,2H,Hc ),
7.09−7.21(m,1H,Hl ),
7.36−7.40(m,2H,Hg,h ),
7.78−8.23(m,5H,Hj,m,k,f,i ),
9.36−9.45(m,1H,He ).
【0075】
〈実施例5〉
容積10mLのナスフラスコに、POSS−(Cl)8 0.2592g(0.25mmol)、4−ジメチルアミノケイ皮酸カリウム0.6880g(3mmol,POSS−(Cl)8 のクロロプロピレン基に対して1.5e.q.)およびTBAB0.0322g(5mol%)、NMP5mLを仕込み、温度70℃の条件下において48時間反応させた。反応が終了した後、反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和重曹水で2回、水道水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸水溶液で乾燥して濃縮した。その後、少量のテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、メタノール中に滴下する沈殿操作を行うことによって粘性液体を得、更に得られた粘性液体に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の個体0.1530g(収率27%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(2−5)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(5)」ともいう。)であることが確認された。また、4−ジメチルアミノケイ皮酸残基の導入率は99%以上であった。更に、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が2558であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.04であることが確認された。
【0076】
【化17】

【0077】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図9に示し、 1H−NMRスペクトル図を図10に示す。
【0078】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.93−0.96(m,2H,Ha ),
2.01(m,2H,Hb ),
3.74(m,6H,Hd ),
4.29−4.38(m,2H,Hc ),
7.09−7.21(m,1H,Hh ),
7.36−7.40(m,2H,Hg ),
7.78−8.23(m,5H,Hf ),
9.36−9.45(m,1H,He ).
【0079】
〈実施例6〉
アルゴン置換したナスフラスコに、下記式(6−1)で表される化合物(以下、「CS−6−SiH」ともいう。)0.2945g(0.25mmol)、下記(7−1)で表される化合物0.5480g(2.3mmol)、トルエン10mLを仕込み、更に0.1Mの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金のキシレン溶液6μLを加え、温度70℃の条件下において24時間反応させた。反応が終了した後、トルエンを減圧留去して少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下して沈殿物を回収する沈殿操作を行い、更に回収した沈殿物に対して同様の沈殿操作を行うことにより、赤色の粘性液体0.3169g(収率56%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(3−1)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(6)」ともいう。)であることが確認された。また、アドベンゼンの導入率は75%であった。更に、GPC(ゲルバーミエーションクロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が1947であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.08であることが確認され、DSC法(示差走査熱量測定法)により、ガラス転移点が0.9℃であることが確認された。
【0080】
【化18】

【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図11示し、 1H−NMRスペクトル図を図12に示す。
図11において、(a)はCS−6−SiHに由来の曲線であり、(b)はポリシロキサン化合物(6)に由来の曲線である。
【0084】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.15−0.34(m,6H,Ha ),
0.64−0.70(m,2H,Hc ),
1.72−1.74(m,2H,Hd ),
3.77−3.82(m,2H,He ),
4.92−5.00(m,1H,Hb ).
【0085】
〈実施例7〉
アルゴン置換したナスフラスコに、CS−6−SiH0.2945g(0.25mmol)、下記式(7−2)で表される化合物0.5902g(2.3mmol)、トルエン10mLを仕込み、更に0.1Mの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金のキシレン溶液6μLを加え、温度70℃の条件下において24時間反応させた。反応が終了した後、トルエンを減圧留去して少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下して沈殿物を回収する沈殿操作を行い、更に回収した沈殿物に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の粘性液体0.1119g(収率19%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(3−2)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(7)」ともいう。)であることが確認された。また、1−アントラセンの導入率は76%であった。更に、GPC(ゲルバーミエーションクロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が1669であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.07であることが確認された。
【0086】
【化21】

【0087】
【化22】

【0088】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図13に示し、 1H−NMRスペクトル図を図14に示す。
図13において、(a)はCS−6−SiHに由来の曲線であり、(b)はポリシロキサン化合物(7)に由来の曲線である。
【0089】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.13−0.35(m,6H,Ha ),
0.50−0.68(m,2H,Hc ),
1.73(m,2H,Hd ),
4.23(m,2H,He ),
4.92−5.00(m,1H,Hb ).
【0090】
〈実施例8〉
アルゴン置換したナスフラスコに、CS−6−SiH0.2945g(0.25mmol)、下記式(7−3)で表される化合物0.5902g(2.3mmol)、トルエン10mLを仕込み、更に0.1Mの1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金のキシレン溶液6μLを加え、温度70℃の条件下において24時間反応させた。反応が終了した後、トルエンを減圧留去して少量のTHFに溶解させ、メタノール中に滴下して沈殿物を回収する沈殿操作を行い、更に回収した沈殿物に対して同様の沈殿操作を行うことにより、黄色の粘性液体0.1119g(収率19%)を得た。
得られた反応生成物は、 1H−NMR分析の結果から、下記式(3−3)で表される化合物(以下、「ポリシロキサン化合物(8)」ともいう。)であることが確認された。また、9−アントラセンの導入率は94%であった。更に、GPC(ゲルバーミエーションクロマトグラフィー)法により、数平均分子量(Mn)が1744であり、分子量分布(Mw/Mn)が1.18であることが確認された。
【0091】
【化23】

【0092】
【化24】

【0093】
反応生成物の 1H−NMR分析の結果を下記に示し、SEC曲線を図15に示し、 1H−NMRスペクトル図を図16に示す。
図15において、(a)はCS−6−SiHに由来の曲線であり、(b)はポリシロキサン化合物(8)に由来の曲線である。
【0094】
1H NMR(600MHz,CDCl3 ,TMS)δ(ppm):
0.11(m,6H,Ha ),
0.49−0.56(m,2H,Hc ),
1.54(m,2H,Hd ),
3.43−3.48(m,2H,He ),
4.88(m,1H,Hb ).
【0095】
〔ポリシロキサン化合物の光反応特性〕
実施例1〜実施例8に係るポリシロキサン化合物に対して、キセノンランプを用い、1.8〜2.0mW/cm2(313nm)の条件で、光照射時間を変えながら光照射処理を行うと共に、紫外分光光度計により、シルセスキオキサン化合物における紫外線の吸光度の変化を測定した。結果を図17〜図24に示す。
【0096】
図17の結果から、実施例1に係るポリシロキサン化合物(1)においては、最大吸収波長368nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が50分間で完了することが確認された。
図18の結果から、実施例2に係るポリシロキサン化合物(2)においては、最大吸収波長294nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が17分間で完了することが確認された。
図19の結果から、実施例3に係るポリシロキサン化合物(3)においては、最大吸収波長293nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が832分間で完了することが確認された。
図20の結果から、実施例4に係るポリシロキサン化合物(4)においては、最大吸収波長387nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が41分間で完了することが確認された。
図21の結果から、実施例5に係るポリシロキサン化合物(5)においては、最大吸収波長331nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が43分間で完了することが確認された。
図22の結果から、実施例6に係るポリシロキサン化合物(6)においては、最大吸収波長344nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が約120秒間で完了することが確認された。
図23の結果から、実施例7に係るポリシロキサン化合物(7)においては、最大吸収波長384nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が50分間で完了することが確認された。
図24の結果から、実施例8に係るポリシロキサン化合物(8)においては、最大吸収波長370nmの光の吸収が、光照射時間の経過に伴って減少することが確認され、また、光異性化反応は、光照射時間が30分間で完了することが確認された。
【0097】
また、最大吸収波長の吸光度の減少率から、実施例1〜実施例8に係るポリシロキサン化合物における光異性化反応率を算出し、これを一次速度式にプロットした結果を図25〜図32に示す。
【0098】
図25の結果から、実施例1に係るポリシロキサン化合物(1)においては、光異性化反応完了時(光照射時間50分間)の転化率が90%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図26の結果から、実施例2に係るポリシロキサン化合物(2)においては、光異性化反応完了時(光照射時間17分間)の転化率が92%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図27の結果から、実施例3に係るポリシロキサン化合物(3)においては、光異性化反応完了時(光照射時間832分間)の転化率が83%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図28の結果から、実施例4に係るポリシロキサン化合物(4)においては、光異性化反応完了時(光照射時間41分間)の転化率が94%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図29の結果から、実施例5に係るポリシロキサン化合物(5)においては、光異性化反応完了時(光照射時間43分間)の転化率が87%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図30の結果から、実施例6に係るポリシロキサン化合物(6)においては、光異性化反応完了時(光照射時間120秒間)の転化率が28%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図31の結果から、実施例7に係るポリシロキサン化合物(7)においては、光異性化反応完了時(光照射時間50分間)の転化率が97%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
図32の結果から、実施例8に係るポリシロキサン化合物(8)においては、光異性化反応完了時(光照射時間30分間)の転化率が96%であり、また、光異性化反応は一次で進行していることが理解される。
【0099】
〔ポリシロキサン化合物の屈折率変化〕
実施例1〜実施例8に係るポリシロキサン化合物について、各々、ポリシロキサン化合物をテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液を、スピンコーターによってシリコンウエハの表面に塗布し、2時間の減圧乾燥処理を行うことにより、厚みが1000Å前後の薄膜を4枚以上形成した。得られた薄膜の各々に対して紫外線照射を行い、エリプソメーターを用い、波長632.8nmのレーザー光により、紫外線照射前後における屈折率をそれぞれ測定し、屈折率の変化量の平均値を求めた。結果を表1に示す。
ここに、紫外線の光源としては、300W−キセノンランプ(光量:1.8〜2.0mW/cm2 (313nm))を使用した。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とするポリシロキサン化合物。
【化1】

〔式中、R1 は、水素原子または下記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは下記式(a)で表される基である。〕
【化2】


〔式中、R2 は、下記式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、R3 は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示す。nは0または1である。〕
【化3】

〔式(ホ)において、R6 は、水素原子、メトキシ基、トリフルオロメチル基またはt−ブチル基を示す。式(ト)において、R7 は、メチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基を示す。〕
【請求項2】
下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリシロキサン化合物。
【化4】

〔式中、R1 は、水素原子または上記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは上記式(a)で表される基である。〕
【請求項3】
下記式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリシロキサン化合物。
【化5】


〔式中、R1 は、水素原子または上記式(a)で表される基を示す。但し、R1 の少なくとも1つは上記式(a)で表される基である。R8 は、炭素数1〜10の炭化水素基を示す。mは3〜100の整数を示す。〕
【請求項4】
下記式(4)で表されるポリシロキサン化合物と、下記式(5)で表される化合物とを反応させることにより、請求項2に記載のポリシロキサン化合物を得ることを特徴とするポリシロキサン化合物の製造方法。
【化6】


〔式中、R9 は、下記式(b)で表される基を示す。〕
【化7】


〔式中、R3 は、メチレン基または炭素数2〜10のアルキレン基を示し、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Xは、水素原子またはハロゲン原子を示す。pは0または1である。〕
【化8】


〔式中、R2 は、請求項1に記載の式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、Lは、水素原子またはカリウム原子を示す。〕
【請求項5】
下記式(6)で表されるポリシロキサン化合物と、下記式(7)で表される化合物とを反応させることにより、請求項3に記載のポリシロキサン化合物を得ることを特徴とするポリシロキサン化合物の製造方法。
【化9】


〔式中、R8 は、炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R10は、下記式(c)で表される基を示す。mは3〜100の整数を示す。〕
【化10】


〔式中、R4 およびR5 は、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を示す。pは0または1である。〕
【化11】

〔式中、R2 は、請求項1に記載の式(イ)〜式(チ)のいずれかで表される基を示し、R11 は、単結合、メチレン基または炭素数2〜8のアルキレン基を示す。〕
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のポリシロキサン化合物よりなることを特徴とする屈折率変換材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−184652(P2011−184652A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54295(P2010−54295)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】