説明

ポリビニルアセタール樹脂及びその製造方法

【課題】加熱等により揮発性有機物が多量に発生することのないポリビニルアセタール樹脂を提供すること。
【解決手段】ポリビニルアルコールとアルデヒドを酸性触媒存在下でアセタール化反応して得られるポリビニルアセタール樹脂であって、前記アセタール化反応の反応物をろ過することでろ物を得て、該ろ物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度から±5℃の範囲で、60〜120分間加熱処理することより得られる、100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下であるポリビニルアセタール樹脂とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂及びその製造方法に関する。より詳しくは、揮発性有機物の含有量が少ないポリビニルアセタール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、無機系材料に対する親和性が高い性質等から、塗料、接着剤、バインダーや、種々の電子材料等に使用されている。このポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドとを酸性触媒存在下でアセタール化反応させる方法等により製造される。しかし、このアセタール化反応による製造方法では、アルデヒド等の揮発性有機物がポリビニルアセタール樹脂に混入してしまう。
【0003】
特に、ポリビニルアセタール樹脂に前記揮発性有機物が含有されていると、その後の加熱処理等によりこの揮発性有機物が気化することで異臭が発生することになり、作業環境の悪化や製品価値への悪影響等を引き起こしてしまう。従って、このような揮発性有機物を効果的に除去することが重要となる。
【0004】
これに対して、反応後のポリビニルアセタールから揮発性有機物や酸触媒や中和剤等から発生する種々の不純物を除去する目的で水洗工程(水洗浄)が行われる。この水洗工程では含有する不純物を除去できるが、水への溶解性が低い揮発性有機物までを十分に除去することは困難である。
【0005】
このような問題に関して、特許文献1には、水洗工程と乾燥工程とを多数繰り返すことにより揮発性有機物を除去する方法等について開示されている。また、ポリビニルアセタール樹脂に対して多量の水で洗浄する方法等も行われている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−72445号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、水洗工程と乾燥工程を多数繰り返す方法や、多量の水で洗浄する方法等では、揮発性有機物の含有量を十分に低減できないことや、水洗浄に多量の水を必要とし、多量の洗浄水を処理しなければならない等の問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、加熱等により前記揮発性有機物が多量に発生することのないポリビニルアセタール樹脂を提供すること主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず、本発明は、100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下であるポリビニルアセタール樹脂を提供する。これにより、加熱等により揮発性有機物が多量に発生することのないポリビニルアセタール樹脂とすることができる。
【0010】
なお、本発明において、「揮発性有機物」とは、ポリビニルアセタール樹脂を100℃で1時間加熱したときに発生する気体をいい、例えば、ブチルアルデヒド等のアルデヒド種や、アルコール類等が挙げられる。そして、前記揮発性有機物の含有量は後述の方法で検出される揮発性有機物の量と測定サンプルの量の比をいう。
【0011】
そして、本発明は、前記揮発性有機物がアルデヒドであるポリビニルアセタール樹脂を提供する。また、本発明は、前記ポリビニルアセタール樹脂は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドの少なくともいずれかを用いて得ることができる。
【0012】
また、本発明では、ポリビニルアルコールとアルデヒドを酸触媒存在下でアセタール化反応させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法であって、前記アセタール化反応の反応物をろ別してろ物を得る工程と、該ろ物に水を加えてスラリーを得る工程と、該スラリーを、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度から±5℃の範囲で60〜120分間加熱処理する工程と、を少なくとも行うポリビニルアセタール樹脂を製造する方法を提供する。かかる製造方法によれば、揮発性有機物の含有量が少ないポリビニルアセタール樹脂を効率よく製造することができる。
【0013】
本発明において、ガラス転移温度はブルカーエイエックス株式会社製・示差走査熱量計「DSC3100SA」を用いて次の条件で算出した。試料を測定装置にセットした後、昇温速度10℃/分で150℃まで昇温し、15分間保持した後、降温速度5℃/分で10℃まで冷却し、1分間保持した後、昇温速度10℃/分で140℃まで昇温することでデータを得た後、JIS K 7121に準拠してデータ解析を行なって求めた。
【0014】
そして、本発明は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドの少なくともいずれかを前記アルデヒドとして用いたポリビニルアセタール樹脂の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、加熱等により揮発性有機物が多量に発生することのないポリビニルアセタール樹脂とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明に係わる代表例にすぎず、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0017】
本発明にかかる製造方法は、ポリビニルアルコールとアルデヒドをアセタール化反応させることでポリビニルアセタール樹脂を製造するものである。そして、前記アセタール化反応により得られる反応物をろ過することでろ物を得て、該ろ物に水を加えることでスラリーとし、該スラリーを加熱処理する工程等を行なうことで、揮発性有機物の含有量が少ないポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。特に、本発明は、、100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下のポリビニルアセタール樹脂を効率よく製造することができる。
【0018】
即ち、本発明のポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒドを酸性触媒存在下でアセタール化反応して得られるポリビニルアセタール樹脂であって、前記アセタール化反応の反応物をろ過することでろ物を得て、該ろ物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを加熱処理することにより得られる、100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下のポリビニルアセタール樹脂である。
【0019】
本発明において用いられるポリビニルアルコールの重合度等については特に限定されないが、好適には、重合度300〜2500であることが望ましい。また、ケン化度については特に限定されないが、好適には、80%以上であることが望ましい。そして、重合時に用いられる溶媒については特に限定されないが、好適には、水溶液であり、更に好適には8〜12質量%の水溶液であることが望ましい。
【0020】
本発明において用いられるアルデヒドの種類は特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。また、前記アルデヒドは単独で使用しても良いし、必要に応じ2種以上を併用してもよい。そして、前記アルデヒドのなかでも、好適には、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドの少なくともいずれかを用いることが望ましく、これにより、ポリビニルアセタール樹脂の接着性だけでなく、各種物性面や、反応性等をより向上させることができる。
【0021】
アセタール化の酸触媒としては特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸類や、酢酸、p−トルエンスルホン酸、リンゴ酸、コハク酸等の有機酸等を使用できる。
【0022】
また、アセタール化反応の反応条件については、特に限定されず、例えば、(1)ポリビニルアルコールを高温の水に溶解させて、得られた水溶液を20℃以下の比較的低温に保持しておき、これに酸触媒を添加して、撹拌しながらアルデヒドを添加することでアセタール化反応させる方法、(2)ポリビニルアルコール粉末をメタノール等の溶媒に懸濁させて酸触媒の存在下、アルデヒドを添加することでアセタール化反応させる方法、(3)ポリビニルアルコール水溶液に酸触媒の存在下、アルデヒドを添加してアセタール化反応を開始させ、沈殿生成前に、ポリビニルアセタールおよび水と相溶性のある溶媒を添加することで、沈殿の析出を防止でき均一系で反応を進める方法、等を行うことができる。
【0023】
また、本発明において、前記アセタール化反応の停止目的に使用される中和剤としては、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ中和剤や、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類や、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等を使用できる。
【0024】
更に、本発明では、前記アセタール化反応で得られる反応物を中和処理してから、前記反応物をろ別し、ろ物としてポリビニルアセタール樹脂を取り出し、該ろ物に水を加えることでスラリーとし、該スラリーを加熱処理すればよい。あるいは、前記反応物をろ別し、ろ物としてポリビニルアセタール樹脂を取り出し、該ろ物に水を加えることでスラリーとし、該スラリーを中和処理し、その後に加熱処理を行っても良い。
【0025】
本発明では、前記アセタール化反応で生成したポリビニルアセタールを水で希釈してスラリーとし、このスラリーを特定の温度範囲及び時間で加熱処理する工程を行うことで、ポリビニルアセタール樹脂に含まれている多量の揮発性有機物を水溶液に移行させることができる。したがって、この水溶液を除去することで揮発性有機物の含有量を10ppm以下にまで低減させることができる。
【0026】
アセタール化反応で生成したポリビニルアセタール樹脂を水で希釈する際のポリマー濃度(即ち、希釈濃度)については、特に限定されないが、好適には10質量%以下の水溶液であることが望ましく、より好適には8質量%以下であることが望ましい。希釈濃度が10質量%を超えるとスラリーの流動性が悪くなるため好ましくない。
【0027】
そして、前記スラリーの加熱処理温度は、得られるポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度から±5℃の範囲内であることがよく、好適には前記ガラス転移温度±3℃であることがより望ましい。即ち、前記加熱処理温度が前記ガラス転移温度から5℃よりも低いと揮発性有機物の除去効果が低く、ガラス転移温度から5℃よりも高いと加熱処理中にスラリー中のポリマーの凝集が起こるため好ましくない。
【0028】
そして、前記加熱処理を行う時間については、特に限定されないが、好適には、60〜120分であることが望ましい。加熱処理時間が60分よりも短すぎると所望の効果を得ることができず、加熱処理時間が120分よりも長いと樹脂の物性等に悪影響を与える点などから好ましくない。
【0029】
このように、少なくとも、前記スラリーを、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度から±5℃の範囲で60〜120分間加熱処理することで、ポリビニルアセタール樹脂から揮発性有機物を効率よく除去できる。
【0030】
また、本発明は、多量の水で洗浄する方法や、洗浄工程と乾燥工程を繰り返すという工程等に比較しても、水の使用量が少量でよいため経済的であり、かつ、その処理水量も少量であるため環境にも優しいポリビニルアセタール樹脂の製造方法である。
【0031】
そして、前記加熱処理された水溶液(スラリー)を、水洗工程又は/及び乾燥工程に供することで、前記揮発性有機物等をはじめとする不純物をポリビニルアセタール樹脂から分離・除去できる。例えば、水洗工程としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、スラリーに大過剰の水を加えて混合し、ろ過する方法や、ろ過して得られたポリマーに水を加えて再度スラリー化し、ろ過を繰り返す方法等が挙げられる。そして、乾燥工程としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、流動乾燥機や、かき混ぜ翼を設けた連続乾燥機、旋回気流乾燥機等を用いる方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の効果を阻害しない範囲において、種々の添加物をポリビニルアセタール樹脂に配合させることもでき、例えば、可塑剤、酸化防止剤、滑剤、充填剤、安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0033】
前記可塑剤としては、プラスチック用可塑剤として通常使用されるものが使用可能であり、ポリビニルアセタールの場合には、分子内にエーテル結合を有するエステル系可塑剤等を好適に用いることができる。
【0034】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等があり、これらのなかでもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0035】
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができ、好適には、アニオン系界面活性剤を用いることが望ましい。
【0036】
このようにして得られたポリビニルアセタール樹脂は、揮発性有機物の含有量が10ppm以下であり臭気も少ないという特性を有する。このため、本発明にかかるポリビニルアセタール樹脂は、接着剤、塗料、セラミックバインダー、インキ等のバインダー、熱現象性感光材料、合わせガラス用中間膜、セラミック基板、セラミックコンデンサー、ウオッシュプライマー、再帰反射シート、昇華性熱転写記録材料等に幅広く用いることができる。
【実施例】
【0037】
本発明の効果を検証するために、以下の試験を実施した。詳しくは、ポリビニルアセタール樹脂を製造し、各ポリビニルアセタールの揮発性有機物の含有量測定と臭気測定を行うことにより評価した。
【0038】
なお、ブチルアルデヒド以上の分子量であるアルデヒド種のほとんどが沸点100℃以上であり、本願発明の揮発性有機物には該当しない。これらを踏まえて、本実施例では100℃以下の沸点であるアルデヒドの中では高沸点であるブチルアルデヒドを中心に検討した。
【0039】
<揮発性有機物の測定方法>
得られたポリビニルアセタール樹脂の揮発性有機物の含有量は以下の方法で測定した。得られたポリビニルアセタール樹脂を100℃で1時間加熱したときに発生した気体を回収して、ガスクロマトグラフィーにより以下に示す測定条件で分析した。
・装置:島津製作所社製「GC−14B」
・検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
・カラム:キャピラリーカラム「DB−624」
・温度:初期温度40℃(1分)−10℃/分−最終温度220℃(8分)
・注入口温度(INJ):250℃、検出器温度(DET):280℃
【0040】
<ポリビニルアセタールの臭気測定方法>
得られたポリビニルアセタール樹脂の臭気測定を、5名の検査員による官能試験を行った。前記ポリビニルアセタール樹脂を40℃に加熱して、その際の臭気の有無について前記検査員が判定をした。
【0041】
<実施例1>
ケン化度98モル%、平均重合度1700のポリビニルアルコール100gを蒸留水に溶解して、10質量%のポリビニルアルコール水溶液とした。このポリビニルアルコール水溶液を40℃にして撹拌しながら35質量%塩酸を32g添加した後、ブチルアルデヒド60gを滴下した。
【0042】
水溶液中にポリビニルアセタールが析出してきたことを確認後、32質量%塩酸を64g添加しながら50℃まで昇温して4時間撹拌した。その後、反応物(水溶液)を冷却し、30質量%水酸化ナトリウム水溶液により中和処理を行い、前記反応物をろ過し、得られたろ物に対して対ポリマー質量の20倍量の蒸留水で水洗を行った。
【0043】
続いて、水洗後のポリビニルアセタールに対してポリマー濃度8重量%となるように蒸留水を加えてスラリーした。そして、このスラリーを65℃で2時間、撹拌しながら加熱処理を行った。続いて、前記スラリーを冷却し、ろ過し、得られたろ物に対して対ポリマー質量の20倍量の蒸留水で水洗後、脱水・乾燥処理を行うことでポリビニルアセタール樹脂を得た。なお、このポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度は67℃であった。
【0044】
<実施例2>
実施例1のブチルアルデヒドを、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドの混合物(アセトアルデヒド/ブチルアルデヒド=1/1質量比)とし、加熱処理温度を85℃とした点以外は実施例1と同様の条件でポリビニルアセタール樹脂を製造した。
得られたポリビニルアセタールのガラス転移温度は88℃であった。
【0045】
<実施例3>
実施例1において中和処理前の反応液をろ別し、ポリビニルアセタールに対してポリマー濃度が7質量%となるように蒸留水を加えてスラリーとした。このスラリーを、30質量%水酸化ナトリウム水溶液で中和した。中和したスラリーを65℃で2時間加熱処理した後、このスラリーを冷却し、ろ過し、実施例1と同様に蒸留水で水洗、脱水・乾燥処理を行うことでポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度は67℃であった。
【0046】
<実施例4>
実施例1の加熱処理温度を70℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0047】
<実施例5>
実施例1の加熱処理時間を1時間とした以外は、実施例と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0048】
<実施例6>
実施例1の加熱処理時間を1時間30分とした以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0049】
<比較例1>
実施例1の加熱処理温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0050】
<比較例2>
実施例1の加熱処理温度を80℃としたが、加熱処理中にスラリー中の反応生成物が塊状となってしまい、目的とするポリビニルアセタール樹脂を得ることができなかった。
【0051】
<比較例3>
実施例2の加熱処理温度を70℃とした以外は実施例2と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0052】
<比較例4>
実施例1の加熱処理時間を30分とした以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0053】
<比較例5>
実施例1の加熱処理時間を130分とした。得られたポリビニルアセタール樹脂は、実施例1と同様にブチルアルデヒドや2−エチルヘキサノールが低減されたものであったが、黄色に変色してしまい製品として不適であった。
【0054】
以上のようにして得られた実施例1〜6、比較例1〜5の結果について表1に示す。
【0055】
【表1】



【0056】
<考察>
本実施例によれば、実施例1〜6は、揮発性有機物としてブチルアルデヒドと2−エチルヘキサノールを検出したが、その検出量合計はいずれも10pm以下であり、官能試験も「臭気なし」との結果であった。これに対して、比較例1,3,4は、揮発性有機物であるブチルアルデヒドと2−エチルヘキサノールを50ppm,40ppm,21ppm検出した。そして、官能試験も「臭気あり」との結果であった。また、比較例2,5は反応生成物が塊状になり、目的のポリマーを得ることができなかった。
【0057】
以上より、本発明によれば、100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下であるポリビニルアセタール樹脂を製造することができ、加熱等により揮発性有機物が多量に発生することのないポリビニルアセタール樹脂であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃で1時間加熱したときに発生する揮発性有機物の含有量が10ppm以下であるポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
前記揮発性有機物がアルデヒドであることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドの少なくともいずれかを用いて得られることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
ポリビニルアルコールとアルデヒドを酸触媒存在下でアセタール化反応させるポリビニルアセタール樹脂の製造方法であって、
前記アセタール化反応の反応物をろ別してろ物を得る工程と、
該ろ物に水を加えてスラリーを得る工程と、
該スラリーを、ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度から±5℃の範囲で、60〜120分間加熱処理する工程と、
を少なくとも行うポリビニルアセタール樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記アルデヒドは、ブチルアルデヒドとアセトアルデヒドの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項4記載のポリビニルアセタール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−214435(P2008−214435A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51674(P2007−51674)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】