説明

ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、偏光膜、および偏光板

【課題】幅広化や長尺化に対応した、搬送性能に優れ、さらに光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)界面活性剤を含み、水分率が60〜90重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する工程、および
(B)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液をドラム型ロールと接触させてキャスト法により製膜する製膜工程を経て、水分率5重量%以下のポリビニルアルコール系フィルムを製造する工程
からなり、製膜工程におけるポリビニルアルコール系樹脂水溶液とドラム型ロールとの接触時間が30〜120秒であり、かつ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の水分の蒸発速度が15〜30重量%/分であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、偏光膜、および偏光板に関する。さらに詳しくは、本発明は、搬送性能に優れ、さらに光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、偏光膜、および偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を水などの溶媒に溶解して原液を調製したのち、溶液流延法(キャスティング法)により製膜して、金属加熱ロールなどを使用して乾燥することにより製造される。このようにして得られたポリビニルアルコール系フィルムは、色素の染色性や吸着性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。かかる偏光膜は液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大されている。
【0003】
このような中、液晶テレビなどの画面の大型化に伴い、偏光膜のサイズ、ひいてはその原反フィルムであるポリビニルアルコール系フィルムのサイズも大型化している。たとえば、数年前までは1m幅であったポリビニルアルコール系フィルムは、ここ数年で2m幅が主流となり、現在既に3m幅以上の商品も見受けられる。また、数年前までは2000m巻きだったロールが、今や4000m巻きへと長尺化している。
【0004】
このような幅広化、長尺化に伴い、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法も改善されてきた。設備的な改善はもとより、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度や結晶化度、あるいはフィルムの水分率を改善し、フィルム自身のハンドリング性を向上させる試みも多い。たとえば、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜工程における水分率を規定する方法(たとえば、特許文献1参照)や、巻き取り装置とキャストドラムの速度比を特定し延伸性を改良する方法(たとえば、特許文献2参照)や、ポリビニルアルコール系フィルムと接するロールの静止摩擦係数を規定する方法(たとえば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0005】
しかし、これらの開示技術をもってしても、ロール・ツー・ロールでフィルムを連続搬送するときに、亀裂やしわのために製造が滞ることがあったり、また、ポリビニルアルコール系フィルムを得ることができたとしても、ロールとフィルムとの間のこすれで微細な傷が生じ、偏光膜を製造した時に線状の光学欠点が目立つことがある。特に、搬送性やブロッキング回避のために、製品フィルム表面に剥離粉をふりかけたりする時は、偏光膜の光学欠点が顕著である。ポリビニルアルコール系フィルムの製造においても、また偏光膜の製造においても、通常はロール・ツー・ロールでの連続製造が行なわれており、一旦製造がストップするとライン全体の復旧に多大な労力を必要とする。したがって、生産性や、近年の低コスト化、さらには光学性能を考慮すると、ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法には、更なる改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−28938号公報
【特許文献2】特開2001−315141号公報
【特許文献3】特開2004−17321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、幅広化や長尺化に対応した、搬送性能に優れ、光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムの製造方法、偏光膜、および偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(A)界面活性剤を含み、水分率が60〜90重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する工程、および
(B)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液をドラム型ロールと接触させてキャスト法により製膜する製膜工程を経て、水分率5重量%以下のポリビニルアルコール系フィルムを製造する工程
からなり、製膜工程におけるポリビニルアルコール系樹脂水溶液とドラム型ロールとの接触時間が30〜120秒であり、かつ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の水分の蒸発速度が15〜30重量%/分であるポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関するものである。
【0009】
前記製造方法において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、窒素を含有する界面活性剤を、ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.01重量%以上含むことが好ましい。
【0010】
前記製造方法において、ポリビニルアルコール系フィルムの厚さが30〜70μmであることが好ましく、また、ポリビニルアルコール系フィルムの幅が2m以上であることが好ましく、さらに、ポリビニルアルコール系フィルムの長さが4000m以上であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明は、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜、さらには、偏光膜の少なくとも片面に保護膜を設けてなる偏光板に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルムは、表面粗さや動摩擦係数が小さく、すべり性が高いため、搬送性に優れ、光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムであり、偏光膜の原反フィルムとして有効である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルム(以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムとも言う。)は、フィルムの厚さが30〜70μmであることが好ましく、また、ステンレス製ロールに対する動摩擦係数が0.03以下であるポリビニルアルコール系フィルムであることが好ましい。
【0014】
ポリビニルアルコール系フィルムに使用されるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して得られる樹脂が用いられる。しかし、本発明においては、必ずしもこれに限定されるものではなく、酢酸ビニルと、少量の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、たとえば、不飽和カルボン酸や、その塩、エステル、アミドまたはニトリルなど;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなどの炭素数2〜30のオレフィン類;ビニルエーテル類;不飽和スルホン酸塩などを用いることができる。
【0015】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは120000〜300000、より好ましくは140000〜260000、さらに好ましくは160000〜200000である。重量平均分子量が120000未満では、ポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず、300000をこえると、フィルムを偏光膜とする場合に延伸が困難となり、工業的な生産が難しく好ましくない。尚、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−LALLS法により測定される。
【0016】
また、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは97〜100モル%、より好ましくは98〜100モル%、さらに好ましくは99〜100モル%である。ケン化度が97モル%未満では、ポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず好ましくない。
【0017】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、
(A)界面活性剤を含み、水分率が60〜90重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する工程、および
(B)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液をドラム型ロールと接触させてキャスト法により製膜する製膜工程を経て、水分率5重量%以下のポリビニルアルコール系フィルムを製造する工程
からなり、製膜工程におけるポリビニルアルコール系樹脂水溶液とドラム型ロールとの接触時間が30〜120秒であり、かつ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の水分の蒸発速度が15〜30重量%/分であることを特徴とする。
【0018】
本発明の製造方法においては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液に、フィルムのすべり性を向上させるために界面活性剤を含有させる。界面活性剤としては、通常用いられるノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤が使用できる。本発明で用いる界面活性剤は、窒素を含有する界面活性剤であることが好ましい。また、本発明で用いる界面活性剤は、ノニオン性の界面活性剤であることが好ましい。製膜後のフィルムの表層部に局在化させやすい点で、特に窒素を含有するノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。乾燥工程における界面活性剤のフィルム表面への移行機構に関しては明らかではないが、水分がポリビニルアルコール系フィルムの表面に移行するに従い、水との親和性の高い界面活性剤も表面に移行するためと推測される。
【0019】
窒素を含有するノニオン性界面活性剤としては、
式(1):
1CONH−R2−OH
(1)
で表わされる高級脂肪酸モノアルカノールアミド、
式(2):
1CON−(R2−OH)2 (2)
で表わされる高級脂肪酸ジアルカノールアミド、
式(3):
1CONH2 (3)
で表わされる高級脂肪酸アミド、
式(4):
1NH(C24O)xH (4)
または式(5):
H(C24O)yN(R1)(C24O)xH (5)
で表わされるポリオキシエチレンアルキルアミンなどがあげられる。また、そのほかに、ポリオキシエチレン高級脂肪酸アミド、アミンオキシドなどを用いることもできる。
【0020】
式(1)〜(5)において、R1は炭素数が6〜22、好ましくは8〜18のアルキル基またはアルケニル基である。アルキル基またはアルケニル基の炭素数が6未満では界面活性剤の疎水性が不足する傾向があり、炭素数が22をこえると界面活性剤の親水性が不足する傾向がある。R2は、−C24−、−C36−または−C48−のいずれかである。これらのアルキレン基以外では、界面活性剤の親水性が不足する傾向がある。また、xおよびyは、1〜20の整数であり、x及びyは互いに同一でも異なっていてもよい。xまたはyの少なくとも一方が21以上の整数である場合には、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液と界面活性剤との相溶性に劣る傾向がある。
【0021】
このような界面活性剤を用いる場合、R1で表わされるアルキル基は、1種類のアルキル基であってもよく、また、やし油、パーム油、パーム核油、牛脂などに由来するアルキル基のように、炭素数の異なるアルキル基が混在するものであってもよい。
【0022】
高級脂肪酸アルカノールアミドの具体例としては、たとえば、カプロン酸モノまたはジエタノールアミド、カプロン酸モノまたはジプロパノールアミド、カプロン酸モノまたはジブタノールアミド、カプリル酸モノまたはジエタノールアミド、カプリル酸モノまたはジプロパノールアミド、カプリル酸モノまたはジブタノールアミド、カプリン酸モノまたはジエタノールアミド、カプリン酸モノまたはジプロパノールアミド、カプリン酸モノまたはジブタノールアミド、ラウリン酸モノまたはジエタノールアミド、ラウリン酸モノまたはジプロパノールアミド、ラウリン酸モノまたはジブタノールアミド、パルミチン酸モノまたはジエタノールアミド、パルミチン酸モノまたはジプロパノールアミド、パルミチン酸モノまたはジブタノールアミド、ステアリン酸モノまたはジエタノールアミド、ステアリン酸モノまたはジプロパノールアミド、ステアリン酸モノまたはジブタノールアミド、オレイン酸モノまたはジエタノールアミド、オレイン酸モノまたはジプロパノールアミド、オレイン酸モノまたはジブタノールアミド、やし油脂肪酸モノまたはジエタノールアミド、やし油脂肪酸モノまたはジプロパノールアミド、やし油脂肪酸モノまたはジブタノールアミドなどがあげられる。これらの中では、ラウリン酸ジエタノールアミドおよびやし油脂肪酸ジエタノールアミドが、好適に使用される。
【0023】
高級脂肪酸アミドの具体例としては、たとえば、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミドなどがあげられる。これらの中では、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドが有利に使用される。
【0024】
ポリオキシエチレンアルキルアミンの具体例としては、たとえば、ポリオキシエチレンヘキシルアミン、ポリオキシエチレンヘプチルアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンノニルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンドデシルアミン、ポリオキシエチレンテトラデシルアミン、ポリオキシエチレンヘキサデシルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンエイコシルアミンなどがあげられる。これらの中では、ポリオキシエチレンドデシルアミンが有利に使用される。
【0025】
ポリオキシエチレン高級脂肪酸アミドの具体例としては、たとえば、ポリオキシエチレンカプロン酸アミド、ポリオキシエチレンカプリル酸アミド、ポリオキシエチレンカプリン酸アミド、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンパルミチン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミドなどがあげられる。これらの中では、ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミドが有利に使用される。
【0026】
アミンオキシドの具体例としては、たとえば、ジメチルラウリルアミンオキシド、ジメチルステアリルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシドなどがあげられる。これらの中では、ジメチルラウリルアミンオキシドが有利に使用される。
【0027】
前記の窒素を含有する界面活性剤の中でも、特にポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アミドなどが、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液と界面活性剤との相溶性の点でより好ましく用いられる。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液への界面活性剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.01〜3重量%、更に好ましくは0.03〜2重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%である。添加量が0.01重量%未満では、製造されるフィルムの表面近傍の界面活性剤量が不足し本発明の効果に乏しい。逆に、添加量が3重量%をこえるとフィルム表面外観が不良となり好ましくない。
【0029】
工程(A)において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製方法は特に限定されず、ポリビニルアルコール系樹脂の含水率を調整して得られるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを水に溶解する方法などにより調製される。多軸押出機を用いて調製してもよく、また、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶において、缶中に水蒸気を吹き込んで含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解させて調製することもできる。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂および前記界面活性剤以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの一般的に使用される可塑剤を含有させることが、機械特性や生産性の点より好ましい。可塑剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂に対して、好ましくは30重量%以下、より好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。添加量が30重量%をこえると製造されるフィルムの強度が劣り好ましくない。
【0031】
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の水分率(後述する水分率a)は、60〜90重量%(樹脂濃度40〜10重量%)、好ましくは65〜85%(樹脂濃度35〜15重量%)、特に好ましくは70〜80%(樹脂濃度30〜20重量%)である。水分率が60重量%未満では、水溶液の粘度が高くなりすぎて均一な溶解が困難である。逆に、水分率が90重量%をこえると、水分の蒸発に多大な時間を要し、生産性に劣る。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、乾燥工程における水分の蒸発速度を制御するために、水100重量部に対し30重量部以下の範囲で、少量の補助溶剤を含ませてもよい。補助溶剤としては、水溶性の溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、およびこれらの混合物などを用いることができる。
【0033】
次に、工程(A)において調製されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、通常、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡などの方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であれば、特に限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
【0034】
脱泡処理ののち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は一定量ずつT型スリットダイに導入される。その後、スリットダイから吐出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、ドラム型ロール又はエンドレスベルトに流延されて、キャスト法により製膜されたフィルムは、乾燥されて、水分率が5重量%以下のフィルムとなる(工程(B))。
【0035】
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の流延に際しては、一般に、ドラム型ロール又はエンドレスベルトが用いられるが、幅広化や長尺化、膜厚の均一性などの点からドラム型ロールを用いることが好ましい。
【0036】
本発明の製造方法において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の水分の蒸発速度は、15〜30重量%/分となるように調整される。ここで、蒸発速度とは、工程(A)で調製したポリビニルアルコール系樹脂水溶液の水分率をa(重量%)、乾燥後のフィルムの水分率をb(重量%)、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液がドラム型ロールに吐出されてから、フィルムの乾燥が終了するまでの時間をT(分)とした場合に、下式で表わされる値(重量%/分)である。
蒸発速度=(a−b)/T
【0037】
蒸発速度は、15〜30重量%/分であり、好ましくは18〜27重量%/分、より好ましくは、20〜25重量%/分である。蒸発速度が速いほど、界面活性剤がフィルム中に拡散かつ残存することなく、効果的にフィルムの表面近傍に移行するものと思われる。蒸発速度が15重量%/分未満の場合は、界面活性剤のフィルム表面への移行が充分ではなく、すべり性の改良効果が充分ではない。逆に、蒸発速度が30重量%/分をこえる場合は、界面活性剤のブリードアウトが生じ、フィルムの表面平滑性が低下したり、白化などのフィルム外観の低下が生じる。界面活性剤がフィルムの表面近傍に充分移行した場合には、フィルム表面と、フィルムや偏光膜の製造する際の各工程で用いられる主としてステンレス鋼(以下、SUSという)製の金属ロールとのすべり性がよくなり、金属ロールとの接触によるフィルム表面の傷付きもなくなる。
【0038】
乾燥終了後のポリビニルアルコール系フィルムの水分率bは、5重量%以下であり、好ましくは4重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。また、水分率bの下限値としては、0.5重量%以上であることが好ましい。水分率が5重量%をこえると、乾燥不充分なため、しわなどが入りやすくなる傾向がある。
【0039】
なお、本発明において、乾燥終了後のポリビニルアルコール系フィルムの水分率bは次のようにして測定される。即ち、試料フィルムとして15cm×15cmのフィルムを準備し、試料フィルムの重量(減圧乾燥前)を測定する。尚、試料フィルムの厚さは、30〜70μmであれば特に限定されない。次に、試料フィルムを真空乾燥機(真空度:10mmHg以下)中で83℃にて20分間減圧乾燥を行い、減圧乾燥後の試料フィルムの重量を測定する。得られた減圧乾燥前後の試料フィルムの重量から、下式により、水分率bを算出する。
水分率b(%)={(減圧乾燥前のフィルム重量)−(減圧乾燥後のフィルム重量)}
×100/(減圧乾燥前のフィルム重量)
【0040】
蒸発速度は、製膜工程および乾燥工程において調整される。製膜工程における蒸発速度は、主としてドラム型ロールの表面温度と、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液とドラム型ロールとの接触時間で決定されるが、熱風の吹きつけなどで蒸発を加速させてもよい。ドラム型ロールの表面温度は、好ましくは70〜100℃、より好ましくは80〜95℃、さらに好ましくは85〜95℃である。70℃未満では生産性に劣り、100℃をこえるとポリビニルアルコール系樹脂フィルム中に気泡が発生する。接触時間は、好ましくは30〜240秒、より好ましくは40〜180秒、さらに好ましくは50〜120秒である。接触時間が30秒未満では、乾燥工程においてしわが入りやすくなり、240秒をこえると生産性に劣り好ましくない。
【0041】
製膜後に行なわれる乾燥の手法に関しては、特に限定されず、複数の熱ロールを用いる方法やフローティング型ドライヤーにて行なう方法などがあげられる。乾燥温度および乾燥時間は、水分の蒸発速度が15〜30重量%/分となる限り、特に限定されないが、乾燥温度は50〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0042】
本発明においては、得られたポリビニルアルコール系フィルムのステンレス製ロールに対する動摩擦係数μは、0.03以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.03、特に好ましくは0.02〜0.03である。本発明において、フィルムのステンレス製ロールに対する動摩擦係数μとは、幅40mm、直径80mm、重さ2.0kg、表面粗さ(Ra)が0.05μmのSUS304製の試験ロールを、フィルム上で速度100mm/分で転がした際の駆動力F(kgf)から下式により算出される転がり摩擦係数である。
μ=F/2.0
【0043】
動摩擦係数μが0.03以下であれば、フィルムがロール・ツー・ロールでSUS製ロール間を搬送される際に、亀裂やしわを生じることなく、生産性よく搬送され、さらに光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。
【0044】
なお、本発明において、表面粗さ(Ra)とは、JIS B0601に準拠した算術平均粗さであり、試験ロールの表面粗さ(Ra)0.05μmは、一般的な光学フィルムの搬送や巻き取りに使われるロールの値である。
【0045】
また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、表面粗さ(Ra)が、0.05μm以下であることが好ましく、更には0.03μm以下であることが好ましく、特には0.01〜0.02μmが好ましい。表面粗さ(Ra)が0.05μmをこえるとフィルム表面で光散乱が生じ好ましくない。
【0046】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましい。尚、全光線透過率の上限は、95%である。
【0047】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの引張強度は、70N/mm2以上であることが好ましく、75N/mm2以上であることがより好ましい。また、引張強度の上限は、115N/mm2以下が好ましく、110N/mm2以下がより好ましい。尚、本発明における引張強度とは、20℃65%RH環境下で24時間調湿した試験片に対し、同環境下においては引張強度1000mm/minで引張強度を行うことにより得られる引張強度である。
【0048】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの完溶温度は、65℃以上であることが好ましく、より好ましくは65〜90℃、更に好ましくは71〜80℃である。尚、本発明における完溶温度とは、2Lビーカーに2000mlの水を入れ、30℃に昇温した後、2cm×2cmのフィルム片を投入し撹拌しながら3℃/分の速度で水温を上昇させた際の、フィルムが完全に溶解する温度である。
【0049】
さらに本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、その厚さが30〜70μmであることが好ましく、より好ましくは35〜55μm、特に好ましくは40〜50μmである。厚さが30μm未満では偏光膜とする場合の延伸が難しい上に充分な偏光性能も得られず、70μmをこえると、かかるフィルムを用いて偏光フィルムを製造し、該フィルムを液晶パネルに貼合した際に、経時的に白抜けを生じ易くなりパネルの表示品位が低下するなどの不都合が生じやすくなる。
【0050】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムにおいて、その幅、長さは任意であるが、近年の幅広長尺化を鑑みると、幅は2m以上であることが好ましく、更に好ましくは2.5m以上、特に好ましくは3m以上であり、長さは1000m以上であることが好ましく、更に好ましくは2000m以上、特に好ましくは3000m以上であり、偏光膜の生産性の点で特に好ましくは4000m以上であり、さらに好ましくは4000〜15000mである。幅が2m未満または長さが1000m未満では、偏光膜の生産性に劣る。
【0051】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、光学フィルムとして充分な平滑性および外観を有しており、光学用、特に偏光膜の製造に、原反フィルムとして好ましく用いられる。偏光膜の製造に用いられるポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は、上記の如く30〜70μmであることが好ましく、より好ましくは35〜55μm、特に好ましくは40〜50μmである。
【0052】
本発明の偏光膜は、上記のポリビニルアルコール系フィルムを用いて、通常の染色、延伸、ホウ酸架橋および熱処理などの工程を経て製造される。偏光膜の製造方法としては、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素または二色性染料の溶液に浸漬し染色したのち、ホウ素化合物処理する方法、延伸と染色を同時に行なったのち、ホウ素化合物処理する方法、ヨウ素または二色性染料により染色して延伸したのち、ホウ素化合物処理する方法、染色したのち、ホウ素化合物の溶液中で延伸する方法などがあり、適宜選択して用いることができる。このように、ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、延伸と染色、さらにホウ素化合物処理を別々に行なっても同時に行なってもよいが、染色工程、ホウ素化合物処理工程の少なくとも一方の工程中に一軸延伸を実施することが、生産性の点より望ましい。
【0053】
延伸は一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが望ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃から選ぶのが望ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
【0054】
フィルムへの染色は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜20g/L、ヨウ化カリウムの濃度は10〜70g/L、ヨウ化カリウム/ヨウ素の重量比は10〜100とすることが好ましい。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜60℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。接触手段としては浸漬、塗布、噴霧などの任意の手段が適用できる。
【0055】
染色処理されたフィルムは、ついでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度0.3〜2モル/L程度で用いられることが好ましく、液中には少量のヨウ化カリウムを共存させるのが実用上望ましい。処理法は浸漬法が望ましいが、もちろん塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は40〜70℃程度が好ましく、処理時間は2〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
【0056】
このようにして得られる本発明の偏光膜の偏光度は、好ましくは98〜99.9%、より好ましくは99〜99.9%である。偏光度が98%未満では、液晶表示のコントラストが低下することとなり好ましくない。
【0057】
また、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは43%以上である。43%未満では液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。尚、偏光膜の単体透過率の上限は、46%である。
【0058】
本発明の偏光膜は、その片面または両面に光学的に等方性の高分子フィルムまたはシートを保護膜として積層接着して、偏光板として用いることもできる。保護膜としては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド、シクロ系ないしノルボルネン系ポリオレフィンなどのフィルムまたはシートがあげられる。
【0059】
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、前記保護膜の代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、積層させることもできる。
【0060】
偏光膜(少なくとも片面に保護膜あるいは硬化性樹脂を積層させたものを含む)は、その一方の表面に、必要に応じて透明な感圧性接着剤層が通常知られている方法で形成されて、実用に供される場合もある。感圧性接着剤層としては、たとえば、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルと、たとえばアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα−モノオレフィンカルボン酸との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールのようなビニル単量体を添加したものも含む)を主体とするものが、偏光フィルムの偏光特性を阻害することがないので特に好ましいが、これに限定されることなく、透明性を有する感圧性接着剤であれば使用可能で、たとえば、ポリビニルエーテル系、ゴム系などでもよい。
【0061】
また、さらに偏光膜(前記感圧性接着剤が設けられたもの)の片面(前記感圧性接着剤が設けられていない面)に各種機能層を設けることも可能である。機能層としては、たとえば、アンチグレア層、ハードコート層、アンチリフレクション層、ハーフリフレクション層、反射層、蓄光層、拡散層、エレクトロルミネッセンス層、視野角拡大層、輝度向上層などがあげられる。さらに、各種2種以上の組み合わせをすることも可能で、たとえば、アンチグレア層とアンチリフレクション層、蓄光層と反射層、蓄光層とハーフリフレクション層、蓄光層と光拡散層、蓄光層とエレクトロルミネッセンス層、ハーフリフレクション層とエレクトロルミネッセンス層などの組み合わせがあげられる。ただし、これらに限定されることはない。
【0062】
本発明の偏光膜は、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防目メガネ、立体メガネ、表示素子(CRT、LCDなど)用反射低減層、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施の携帯を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例中、ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量、ポリビニルアルコール系フィルムとステンレス製ロールとの間の動摩擦係数およびポリビニルアルコール系フィルムの表面粗さRaは、次の方法により求めた。
【0065】
重量平均分子量
GPC−LALLS法により、以下の条件で重量平均分子量を測定する。
【0066】
1)GPC
装置:Waters製244型ゲル浸透クロマトグラフ
カラム:東ソー(株)製TSK−gel−GMPWXL(内径8mm、長さ30cm、2本)
溶媒:0.1M−トリス緩衝液(pH7.9)
流速:0.5ml/分
温度:23℃
試料濃度:0.040%
ろ過:東ソー(株)製0.45μmマイショリディスクW−25−5
注入量:0.2ml
検出感度(示差屈折率検出器):4倍
【0067】
2)LALLS
装置:Chromatrix製KMX−6型低角度レーザー光散乱光度計
温度:23℃
波長:633nm
第2ビリアル係数×濃度:0mol/g
屈折率濃度変化(dn/dc):0.159ml/g
フィルター:MILLIPORE製0.45μmフィルターHAWP01300
ゲイン:800mV
【0068】
(2)動摩擦係数
幅40mm、長さ100mmの短冊状試験片を、23℃、50%RHの環境下に1日間放置した後、平坦な常盤上に設置し、同環境下にて、該試験片上で、幅40mm、直径80mm、重さ2.0kg、表面粗さRaが0.05μmのSUS304製ロールを速度100mm/分で距離70mm転がす。その際の駆動力F(kgf)を島津製作所(株)製オートグラフAGS−Hで測定し、下式に従って動摩擦係数μを求める。
μ=F/2.0
【0069】
(3)表面粗さ(Ra)
(株)キーエンス製レーザーフォーカス顕微鏡VK−8500を用いて測定する。測定条件は下記の通りである。
測定長:0.3mm、対物レンズ:50倍、カットオフ:0.8μm、スムージング:なし
【0070】
実施例1
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
500Lのタンクに18℃の水200kgを入れ、撹拌しながら、重量平均分子量142000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂40kgを加え、15分間撹拌を続けた。その後一旦水を抜いたのち、さらに水200kgを加え、15分間撹拌した。得られたスラリーを脱水し、水分率40重量%のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを得た。
【0071】
得られたポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ67kgを溶解缶に入れ、可塑剤としてグリセリン4.2kg、界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン(式(5)において、R1はC1225、xとyは1である)28gおよび水10kgを加え、缶底から水蒸気を吹き込んだ。内部樹脂温度が50℃になった時点で撹拌(回転数:5rpm)を行ない、内部樹脂温度が100℃になった時点で系内を加圧した。150℃まで昇温したのち、水蒸気の吹き込みを停止し(水蒸気の吹き込み量は合計90kg)、30分間撹拌(回転数:20rpm)を行なった。均一に溶解させたのち、水分率74重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。
【0072】
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温147℃)を、2軸押出機で脱泡したのち、T型スリットダイ(ストレートマニホールドダイ)よりドラム型ロールに吐出し(液温95℃)、流延して製膜した。流延製膜の条件は下記の通りとした。
【0073】
ドラム型ロール
直径:3200mm、幅:4000mm、回転速度:10m/分、表面温度:95℃、接触時間:54秒
得られたキャスト直後の膜の水分率は20重量%であった。連続して、この膜を両面から温風を吹き付けるフローティングドライヤー(長さ18.5m)により、100℃で111秒間乾燥させた。得られたポリビニルアルコール系フィルム(幅3000mm、厚さ50μm、長さ4000m)の水分率は4重量%であり、吐出から乾燥終了までの時間は165秒であった(水分蒸発速度25重量%/分)。
【0074】
得られたフィルムの動摩擦係数は0.021であり、表面粗さ(Ra)は0.03μmであった。
【0075】
(偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素0.2g/L、ヨウ化カリウム15g/Lよりなる水溶液中に30℃にて240秒浸漬し、ついでホウ酸60g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬するとともに、同時に4倍に一軸延伸しつつ5分間にわたってホウ酸処理を行なった。その後、乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の光学欠点を下記の通り評価した。結果を表2に示す。
【0076】
(光学欠点)
偏光膜表面の光学的な線状欠点を、表面照度14000ルックスのライトボックスを用いて観察し、以下の基準で評価した。
○・・・欠点なし
×・・・欠点あり
【0077】
実施例2〜5
表1に示される条件以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたフィルムの動摩擦係数および表面粗さを表2に示す。
【0078】
また、実施例1と同様にして偏光膜を得、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0079】
実施例6
重量平均分子量175000のポリビニルアルコール系樹脂を用いる以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたフィルムの動摩擦係数および表面粗さを表2に示す。
【0080】
また、実施例1と同様にして偏光膜を得、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0081】
比較例1〜2
表1に示される条件以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。得られたフィルムの動摩擦係数および表面粗さを表2に示す。
【0082】
また、実施例1と同様にして偏光膜を得、実施例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0083】
比較例3
表1に示される条件以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。しかし、フィルム表面に界面活性剤が析出しており、またフィルム外観が白化しており、評価に値するフィルムが得られなかった。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明により、搬送性能に優れ、さらに光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、光学欠点のないポリビニルアルコール系フィルムであり、偏光膜の原反フィルムとして有用に活用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)界面活性剤を含み、水分率が60〜90重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製する工程、および
(B)ポリビニルアルコール系樹脂水溶液をドラム型ロールと接触させてキャスト法により製膜する製膜工程を経て、水分率5重量%以下のポリビニルアルコール系フィルムを製造する工程
からなり、製膜工程におけるポリビニルアルコール系樹脂水溶液とドラム型ロールとの接触時間が30〜120秒であり、かつ、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の水分の蒸発速度が15〜30重量%/分であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【請求項2】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、窒素を含有する界面活性剤を、ポリビニルアルコール系樹脂に対して0.01重量%以上含むことを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系フィルムの厚さが30〜70μmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系フィルムの幅が2m以上であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系フィルムの長さが4000m以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルムからなることを特徴とする偏光膜。
【請求項7】
請求項6記載の偏光膜の少なくとも片面に保護膜を設けてなることを特徴とする偏光板。

【公開番号】特開2011−245872(P2011−245872A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178528(P2011−178528)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【分割の表示】特願2005−315898(P2005−315898)の分割
【原出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】