説明

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子

【課題】無機ガス発泡剤を使用した場合でも、高発泡倍率であり、かつ、表面美麗で寸法収縮率が小さい発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供する。
【解決手段】耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、(a)結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質0.001重量部以上0.5重量部以下、(b)脂肪酸アミド0.005重量部以上0.5重量部以下、(c)珪酸塩化合物0.0001重量部以上0.5重量部以下、(d)3価の有機リン系化合物0.005重量部以上0.5重量部以下、を含んでなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝包装材、通函、断熱材、自動車部材などに用いられるポリプロピレン系樹脂の型内発泡成形体の製造に好適に使用しうるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子及び該予備発泡粒子を金型内に充填し加熱して得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン系樹脂粒子を難水溶性無機物などの分散剤、界面活性剤などの分散助剤、必要に応じて揮発性有機発泡剤や炭酸ガス、窒素、空気などの無機ガス発泡剤とともに攪拌しながら水性媒体に分散させ、昇温して一定圧力、一定温度として樹脂粒子中に発泡剤を含浸したのち、低圧雰囲気下に放出してポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得る方法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
揮発性発泡剤としてはプロパン、ブタン、ペンタン等が知られているが、これらの多くは可燃性のため危険性が高いばかりでなく、大気に放出された場合に地球温暖化の原因となるといった環境上の問題も有していた。
【0004】
一方、炭酸ガス、窒素、空気などの無機ガス発泡剤は、不燃性であり、環境にもやさしいという利点を有しているが、揮発性発泡剤を使用した際に得られるような高い発泡倍率の予備発泡粒子を得ることが困難という問題があった。無機ガス発泡剤におけるこの問題を解決するために、ポリプロピレン樹脂粒子中に水酸化アルミニウムや硼砂などの無機物質を含有させる方法が提案されている(特許文献4、5)。しかしながら、この方法により得られる予備発泡粒子を用いて発泡成形体を製造する場合、気泡径のバラツキが大きいため発泡成形体の外観にムラがあるだけでなく、発泡成形体の収縮率が大きく、発泡成形体の寸法安定性に劣るという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、ホウ酸亜鉛等のホウ酸金属塩をポリプロピレン系樹脂粒子中に存在させる方法が提案されている(特許文献6)。この方法によれば、気泡径の均一性が向上し外観のムラも解消されるものの、高発泡倍率を得るためには添加量を増やす必要があり、その場合気泡径が微細になるため、成形時の予備発泡粒子の発泡能力が低下し、成形体表面に多数の粒子間隙が残り、表面美麗性を損なうという問題があった。
【0006】
また、高発泡倍率とした時の収縮を防止する目的で、ポリプロピレンの結晶核剤として一般的に用いられる5価の有機リン酸化合物であるリン酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウムを使用する方法が提案されている(特許文献7、8)。しかしこの方法を用いた場合、気泡径が小さくなり発泡成形体表面の粒子間隙が増加して表面美麗性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特開昭52−77174号公報
【特許文献2】特開昭60−245650号公報
【特許文献3】特開昭60−229936号公報
【特許文献4】特開昭61−4738号公報
【特許文献5】特開平3−223347号公報
【特許文献6】WO98/25996号公報
【特許文献7】特開平5−156065号公報
【特許文献8】特開平6−192462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、無機ガス発泡剤を使用した場合でも、高発泡倍率であり、かつ、表面美麗で寸法収縮率が小さい発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題解決のため鋭意研究を行った結果、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質、脂肪酸アミド、珪酸塩化合物に加えて3価の有機リン系化合物を表面及び/もしくは内部に含んでなることにより、高発泡倍率でありながら、表面美麗で寸法収縮率が小さい発泡成形体を与えるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち本発明の第1は、耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、(a)結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質0.001重量部以上0.5重量部以下、(b)脂肪酸アミド0.005重量部以上0.5重量部以下、(c)珪酸塩化合物0.0001重量部以上0.5重量部以下、(d)3価の有機リン系化合物0.005重量部以上0.5重量部以下、を含んでなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0010】
好ましい態様としては、
(1)結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質が、ホウ酸亜鉛である、
(2)脂肪酸アミドが、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドから選ばれる一以上である、
(3)珪酸塩化合物が、タルク、マイカ、カオリンから選ばれる一以上である、
(4)3価の有機リン系化合物が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸から選ばれる一以上である、
(5)耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に発泡能を付与して加熱して得られる、
前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に関する。
【0011】
本発明の第2は、前記記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し加熱して得られることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、金型内に充填し加熱してポリプロピレン系樹脂発泡成形体を製造しても、高発泡倍率でありながら、表面美麗で寸法収縮率が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、耐圧容器内においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるものであり、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、(a)結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質0.001重量部以上0.5重量部以下、(b)脂肪酸アミド0.005重量部以上0.5重量部以下、(c)珪酸塩化合物0.0001重量部以上0.5重量部以下、(d)3価の有機リン系化合物0.005重量部以上0.5重量部以下、を含んでなる。
【0014】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒等を用いて重合されたポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられ、これらを単独であるいは混合して用いられる。また、これらのポリプロピレン系樹脂は無架橋のものが好適に使用されるが、架橋したものも使用できる。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂は、既知の方法を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子の形状とする。例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー(商標)、ロール等を用いて溶融して、1粒の重量が好ましくは0.2〜10mg、より好ましくは0.5〜6mgのポリプロピレン系樹脂粒子に加工される。一般的には、押出機を用いて溶融し、ストランドカット法にて製造することがこのましい。例えば、円形ダイスからストランド状に押出されたポリプロピレン系樹脂を水、空気等で冷却、固化させたものを切断して、所望の形状のポリプロピレン系樹脂粒子を得ることが出来る。必要に応じて、溶融したポリプロピレン系樹脂を水中に押出し、水中にて切断して造粒するアンダーウォーターカット法を用いてもよい。
【0016】
本発明においては、(a)結晶水の脱水開始温度が200℃以上の無機物質が用いられる。本発明において、結晶水の脱水開始温度とは、熱重量測定(TGA)において重量の減少が開始する温度を言う。このような物質としては、例えば、水酸化アルミニウム(結晶水の脱水開始温度:200℃)、水酸化マグネシウム(結晶水の脱水開始温度:300℃)、ホウ酸亜鉛(結晶水の脱水開始温度:290℃)、などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることが出来る。中でも、ホウ酸亜鉛を使用することが好ましい。
【0017】
結晶水の脱水開始温度が200℃以上の無機物質の使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.001重量部以上0.5重量部以下であり、好ましくは0.01重量部以上0.3重量部以下、更に好ましくは0.01重量部以上0.1重量部以下である。0.001重量部未満では十分な発泡倍率が得られず、0.5重量部を越えるとポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を金型に充填し加熱して得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の表面に粒子間隙が残る。
【0018】
本発明においては、(b)脂肪酸アミドが用いられる。脂肪酸アミドとしては、例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のモノアミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のジアミド類が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることが出来る。これらのうち、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドから選ばれる一以上を用いるのが好ましく、エルカ酸アミドを用いるのが最も好ましい。
【0019】
脂肪酸アミドの使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.005重量部以上0.5重量部以下であり、好ましくは0.01重量部以上0.3重量部以下、更に好ましくは0.01重量部以上0.1重量部以下である。0.005重量部未満ではポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の金型への充填性が悪くなり、0.5重量部を越えると発泡後にポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子表面に残留する無機分散剤量が増大し成形時にポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子同士の融着が悪くなる。
【0020】
本発明においては、(c)珪酸塩化合物を用いる。珪酸塩化合物としては、例えば、タルク、マイカ、カオリン、輝石、カンラン石、角閃石等が挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることが出来る。中でも、タルク、マイカ、カオリンから選ばれる一以上であることが好ましく、カオリンが最も好ましい。
【0021】
珪酸塩化合物の使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.0001重量部以上0.5重量部以下である。0.0001重量部未満では気泡径にバラツキが生じると共に発泡倍率が小さくなり、0.5重量部を越えるとポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の気泡径が微細になり、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を金型に充填し加熱して得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の表面に粒子間隙が残る。
【0022】
本発明においては、(d)3価の有機リン系化合物を用いる。3価の有機リン系化合物としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して用いることが出来る。これらの中でも特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを使用するのが好ましい。
【0023】
3価の有機リン系化合物の使用量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.005重量部以上0.5重量部以下である。0.005重量部未満では添加する効果が認められず、0.5重量部を越えても効果が飽和する。
【0024】
更に、ポリプロピレン系樹脂粒子の製造の際、必要により種々の添加剤を、ポリプロピレン系樹脂の特性を損なわない範囲内で添加することができる。添加剤としては、例えば、カーボンブラック、有機顔料などの着色剤、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルエタノールアミン、脂肪酸モノグリセライド、脂肪酸ジグリセライドなどの帯電防止剤、FLAMESTAB(登録商標)NOR116(チバ)、MELAPUR(登録商標)MC25(チバ)等の非ハロゲン系難燃剤などが例示される。
【0025】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、(a)〜(d)を含んでなるとは、これらの化合物がポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面および/または内部に存在することを言う。
【0026】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、耐圧容器内においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られる。また、前記方法で得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に発泡能を付与し、加熱してポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子としてもよい。このように発泡能を付与して加熱することにより、より発泡倍率の高い予備発泡粒子を得ることができる傾向がある。方法は特に限定しないが、例えば、耐圧容器内においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を容器内にて空気などの無機ガスにて加圧し、発泡能を付与させたのち、蒸気やヒーターで加熱する方法などが用いられる。
【0027】
なお、以下、耐圧容器内においてポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を一段発泡粒子と称する場合があり、一段発泡粒子に発泡能を付与して加熱してえられたポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を二段発泡粒子と称す場合がある。
【0028】
使用する耐圧容器には特に限定はなく、予備発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよく、例えば、オートクレーブ型の耐圧容器が挙げられる。
【0029】
本発明における水系分散媒は、水を主成分とするものであればよく、通常は水を用いることが好ましい。水系分散媒の使用量は、ポリプロピレン系樹脂粒子の分散媒中での分散性を良好なものにするために、該ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して100重量部以上500重量部以下使用するのが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させた分散液に、必要に応じて分散剤、分散助剤を使用することが出来る。本発明で用いられる分散剤としては、特に制限はなく、一般的に用いられている無機系分散剤を使用することができる。
【0031】
具体的には、硫酸バリウム、シリカ−アルミナを主成分とする、カオリン、タルク等のアルミノ珪酸塩、酸化アルミニウム、酸化チタン、第3リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト等のリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛などが挙げられる。
【0032】
この中でも、少ない使用量で分散効果があり、排水処理負荷が少ない観点からは、硫酸バリウム、シリカ−アルミナを主成分とするアルミノ珪酸塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムが好ましい。
【0033】
このような分散剤の添加量としては、特に制限はなく、分散液の安定化効果が発現するよう適宜調整されるものではあり、また、分散助剤との添加比率をも勘案して適宜調整されるものであるが、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し0.01重量部以上5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.05重量部以上4重量部以下であり、最も好ましくは0.1重量部以上3重量部以下である。0.01重量部未満ではポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上でポリプロピレン系樹脂粒子の分散性が低下する傾向にあり、5重量部を越えると得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の表面に分散剤が多く付着し、型内成形した際の発泡成形体の融着性が低下する傾向にある。
【0034】
本発明で用いられる分散助剤としては、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、一般的に用いられているアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、更には両性界面活性剤などを用いることが出来る。
【0035】
具体的には、(イ)アルキルスルホン酸塩(高級アルコール硫酸エステル塩)、アルキルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルアミノ酸塩などのアニオン系界面活性剤、(ロ)アルキルおよびアルキルアリルポリオキシエチレンエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、脂肪族アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミンオキシドなどのノニオン系界面活性剤、(ハ)脂肪族アミン塩、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、(ニ)カルボキシベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミノカルボン酸塩などの両性界面活性剤、などが挙げられる。
【0036】
分散液の安定性の観点からは、界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤が好ましく、より好ましくはアルキルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩などのスルホン酸塩であり、最も好ましくはアルキルスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩である。
【0037】
このような分散助剤の添加量としては、特に制限はなく、分散液が安定するよう適宜調整されるものではあるが、ポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対し0.001重量部以上0.5重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.003重量部以上0.3重量部以下であり、最も好ましくは0.005重量部以上0.2重量部以下である。0.001重量部未満ではポリプロピレン系樹脂粒子の軟化点温度以上でポリプロピレン系樹脂粒子の分散性が低下する傾向にあり、0.5重量部を越えると分散液の泡立ちが激しくなり、排水処理の負荷が大きくなる傾向にある。
【0038】
本発明においては、発泡剤として無機ガスを用いる。無機ガスとしては例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)、空気、酸素、窒素、水などが挙げられ、これらの中でも、発泡性と得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の倍率バラツキが小さく、かつ気泡径バラツキが小さくなる観点からは炭酸ガス、あるいは炭酸ガスと水を併用して用いることが好ましい。
【0039】
具体的には、耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子、必要に応じて分散剤、分散助剤を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、攪拌下、所定の圧力まで加圧され、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の所定の温度まで昇温され、一定時間、好ましくは5〜180分間、より好ましくは10〜60分間保持された後、耐圧容器内の分散液を、耐圧容器下部に設けられたバルブを開放して低圧雰囲気下(通常は大気圧下)に放出することによりポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を製造することができる。
【0040】
なお、発泡剤として、水系分散媒を構成する水を使用する場合、耐圧容器内は窒素、空気、二酸化炭素等の無機ガスにて加圧することが好ましい。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂粒子を含んだ分散液を低圧雰囲気下に放出する際、流量調整、倍率バラツキ低減などの目的で2〜10mmφの開口オリフィスを通して放出することもできる。また、発泡倍率を高くする目的で、前記低圧雰囲気を飽和水蒸気で満たす場合もある。
【0042】
耐圧容器内を加熱する温度(以下、発泡温度と称す場合がある)は、用いるポリプロピレン系樹脂の融点[Tm(℃)]、発泡剤の種類等により異なり、一概には規定できないが、ポリプロピレン系樹脂の軟化温度以上であり、好ましくはTm−30(℃)〜Tm+10(℃)の範囲である。また、耐圧容器内を加圧する圧力(以下、発泡圧力と称す場合がある)は、用いるポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類、所望の予備発泡粒子の発泡倍率によって異なり、一概には規定できないが、概ね1〜8MPa(ゲージ圧)の範囲から決定される。
【0043】
なおここでいうポリプロピレン系樹脂の融点とは、示差走査熱量計を用いて、試料5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事によりポリプロピレン系樹脂を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる値である。
【0044】
本発明のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の平均気泡径(L(av))は130μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは160μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは210μm以上350μm以下である。平均気泡径(L(av))が130μm未満の場合、得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の融着性が低下する、形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合があり、500μmを越える場合、得られるポリプロピレン系樹脂発泡成形体の緩衝特性が低下する傾向がある。なお、本発明における平均気泡径(L(av))と気泡径バラツキ(S)は、発泡粒子のほぼ中央を切断し、現れた断面を拡大観察して行うが、詳細は後述する。
【0045】
本発明により得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率に特に制限はないが、50倍以下が好ましい。発泡倍率が50倍を越える場合は得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の気泡が破泡したり、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体を成形した際、寸法精度、機械的強度、耐熱性などが不充分となる傾向がある。
【0046】
以上のようにして得たポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子は、従来から知られている成形方法により、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体にすることができる。例えば、イ)予備発泡粒子を無機ガス、例えば空気や窒素等で加圧処理して予備発泡粒子内に無機ガスを含浸させ所定の予備発泡粒子内圧を付与した後、金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、ロ)予備発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、予備発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱融着させる方法、ハ)特に前処理することなく予備発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱融着させる方法、などの方法が利用し得る。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例をあげて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価は、次の方法により行なった。
【0048】
(発泡倍率)
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子3〜10g程度を取り、60℃で6時間乾燥したのち重量wを測定後、水を入れたメスシリンダーに投入して水没させ、水面上昇から体積vを測定し、発泡粒子の真比重ρb=w/vを求め、原料樹脂組成物の密度ρr(=0.9g/cm3)との比から発泡倍率K=ρr/ρbを求めた。
【0049】
(平均気泡径(L(av)))
無作為に選んだ20個の発泡粒子のそれぞれについて、ほぼ中央を切断し、現れた断面を拡大観察する。ここで、断面ほぼ中心で直交するX軸とY軸を引き、断面ほぼ中心のX軸とY軸が交差する点を中心O、X軸が断面端部と交差する点をそれぞれA、A’、Y軸が断面端部と交差する点をB、B’とした。
【0050】
次いで線分OAがクロスする気泡壁の数を数え、線分OAの長さを気泡壁数で除した値を更に0.616で除することにより気泡径L(OA)を求める。
【0051】
線分OA’、線分OB、線分OB’についても同様に行い、それぞれL(OA’)、L(OB)、L(OB’)を求める。なお、気泡壁上に中心Oがある場合は、気泡壁として数えた。
【0052】
L(OA)、L(OA’)、L(OB)、L(OB’)の4つの相加平均値L’(av)を算出し、20個のポリプロピレン系樹脂発泡粒子のL’(av)を更に相加平均した値を平均気泡径L(av)とした。
【0053】
(成形体融着率)
発泡成形体の表面にナイフで約5mmの深さのクラックを入れたのち、このクラックに沿って発泡成形体を割り、破断面を観察し、観察した全粒子数に対する破壊粒子数の割合を求め、成形体融着率とした。
【0054】
(表面美麗性)
○:しわ少なく、粒間(発泡粒子の間のへこみ、穴など)少なく、美麗
△:しわが少ないが、粒間(発泡粒子の間のへこみ、穴など)がやや目立つ
×:しわがある、あるいは粒間が顕著であり、ヒケなどもあり外観不良
【0055】
(寸法収縮率)
金型寸法400mm(長さ)×300mm(幅)×50mm(厚さ)に対して、得られた成形体の長さamm、幅bmm、厚さcmmを実測し、以下の式で寸法収縮率を算出した。
寸法収縮率(%)=[(400−a)/400+(300−b)/300+(50−c)/50]/3×100
【0056】
(実施例1〜9、比較例1〜3)
エチレン成分量が4重量%のエチレン−プロピレンランダム共重合体(密度0.90g/cm3、メルトフローレート(MFR)7.3g/10分、融点138℃)100重量部に対し、表1に示した添加剤を所定量加えた後タンブラーミキサーでブレンドした。次いで、該ブレンド物を50mmφ単軸押出機に供給し、溶融混練したのち、直径1.8mmφの円筒ダイより押出し、水冷後、カッターで切断し、円柱状のポリプロピレン系樹脂粒子(1.2mg/粒)を得た。
【0057】
得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部を、純水200重量部、第3リン酸カルシウム1.0重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部とともに耐圧容器に投入したのち、脱気し、攪拌しながら炭酸ガス6重量部を耐圧容器内に入れ、143℃に加熱した。このときの圧力は3MPaであった。すぐに耐圧容器下部のバルブを開いて、内容物を直径4mmφのオリフィスを通じて大気圧下に放出して発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。この際、放出中は容器内の圧力が低下しないように、炭酸ガスで圧力を保持した。得られた一段発泡粒子の発泡倍率、平均気泡径を表2に示す。
【0058】
ここで得た一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させた後、耐圧容器内に導入し、容器を0.6MPaの空気で15時間加圧したところ、発泡粒子内部の空気圧が表2に示す値となった。該発泡粒子を表2に示す圧力の蒸気と接触させることで二段発泡させ、表2に示す発泡倍率の二段発泡粒子を得た。次に、該二段発泡粒子を再度、耐圧容器内に導入し0.3MPaの空気で17時間加圧し、発泡粒子内圧を表2に示す値とした後、300×400×50mmの金型内に充填し、0.25MPaの加圧蒸気を使って型内発泡成形を行った。得られた発泡成形体の評価結果を表2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、(a)結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質0.001重量部以上0.5重量部以下、(b)脂肪酸アミド0.005重量部以上0.5重量部以下、(c)珪酸塩化合物0.0001重量部以上0.5重量部以下、(d)3価の有機リン系化合物0.005重量部以上0.5重量部以下、を含んでなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項2】
結晶水の脱水開始温度が200℃以上である無機物質が、ホウ酸亜鉛である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項3】
脂肪酸アミドが、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドから選ばれる一以上である請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項4】
珪酸塩化合物が、タルク、マイカ、カオリンから選ばれる一以上である請求項1〜3何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項5】
3価の有機リン系化合物が、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸から選ばれる一以上である請求項1〜4何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項6】
耐圧容器内に、ポリプロピレン系樹脂粒子を水系分散媒に分散させ、発泡剤として無機ガスを導入し、ポリプロピレン系樹脂粒子の軟化温度以上の温度まで加熱、加圧した後、耐圧容器の内圧よりも低い圧力域に放出して得られるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子に発泡能を付与して加熱して得られる請求項1〜5何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項1〜6何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を金型内に充填し加熱して得られることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡成形体。

【公開番号】特開2010−37432(P2010−37432A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201860(P2008−201860)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】