説明

ポリプロピレン系樹脂組成物および、それからなるシートおよび容器

【課題】容器に成形した場合に、容器の変形を抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物、シートおよび容器を提供すること。
【解決手段】下記のプロピレン系重合体(A)50〜99.5重量%と、下記のプロピレン系重合体(B)または下記のプロピレン系重合体(C)0.05〜50重量%とを含有する樹脂成分と(ただし、重合体(A)と、重合体(B)または重合体(C)の合計を100重量%とする)、当該樹脂成分100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル化合物類とを0.01〜1重量部含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物および、それからなるシートおよび容器に関するものである。さらに詳細には、容器に成形した場合に、容器の変形を抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物および、それからなるシートおよび容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリプロピレン系樹脂は、各種の成形品として用いられることが知られている。
例えば、特開平8−311253号公報には、成形品の透明性を改良する手段として、結晶性ポリオレフィンに、特定の構造を有するフォスフェート系化合物及びリチウムアルミニウム複合水酸化物塩及びそれぞれ特定量配合してなる結晶性ポリオレフィン組成物が記載されている。
【0003】
また、特開2002−348421号公報には、シートの透明性、耐衝撃性、耐熱性および剛性を改良する手段として、特定の温度範囲内に結晶融点を有するポリプロピレン(A)と、これより5〜50℃低い範囲に結晶融点を有するポリプロピレン(B)とからなる樹脂成分に、結晶核剤として環状有機リン酸エステル塩基性多価金属塩を配合してなる樹脂組成物が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−311253号公報
【特許文献2】特開2002−348421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の公報等に記載されているポリオレフィン樹脂組成物を容器に用いた場合、容器が変形することがあることから、容器の変形を抑制することが求められていた。
かかる状況の下、本発明の目的は、容器に成形した場合に、容器の変形を抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物および、それからなるシートおよび容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
下記のプロピレン系重合体(A)50〜99.5重量%と、下記のプロピレン系重合体(B)または下記のプロピレン系重合体(C)0.05〜50重量%とを含有する樹脂成分と(ただし、重合体(A)と、重合体(B)または重合体(C)の合計を100重量%とする)、当該樹脂成分100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル化合物類0.01〜1重量部とを含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物、並びにそれからなるシートおよび容器に係るものである。
プロピレン系重合体(A):融点(Tm)が136℃以上149℃以下であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であるプロピレン系重合体。
プロピレン系重合体(B):融点(Tm)が100℃以上136℃未満であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であり、プロピレン含有量が90〜99重量%であり、エチレン含有量が1〜10重量%であるプロピレン系重合体(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量の合計を100重量%とする)。
プロピレン系重合体(C):融点(Tm)が100℃以上136℃未満であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であり、プロピレン含有量が85〜96.5重量%であり、エチレン含有量が0.5〜5重量%、炭素数4〜20個を有するα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン系重合体(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量とα−オレフィン含有量の合計を100重量%とする)。


(式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、M1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアルミニウム原子であり、M1がアルカリ金属原子の場合、pは1であり、且つqは0であり、M1がアルカリ土類金属原子の場合、pは2であり、且つqは0であり、M1がアルミニウム原子の場合、pは1または2であり、且つqは3−pである。)。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器に成形した場合に、容器の変形を抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物および、それからなるシートおよび容器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)50〜99.5重量%と、プロピレン系重合体(B)またはプロピレン系重合体(C)0.05〜50重量%とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物である(ただし、重合体(A)と、重合体(B)または重合体(C)との合計を100重量%とする)。
【0009】
容器に成形した場合に、容器の変形を抑制するという観点から、重合体(A)の含有量と、重合体(B)または重合体(C)の含有量として、好ましくは、重合体(A)の含有量が55〜99重量%であり、重合体(B)または重合体(C)の含有量が1〜45重量%である。より好ましくは、重合体(A)の含有量が60〜95重量%であり、重合体(B)または重合体(C)の含有量が5〜40重量%である。
【0010】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体である。透明性を高めるという観点から、好ましくは、プロピレン系共重合体である。
【0011】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン系共重合体である場合、プロピレン系ランダム共重合体が挙げられる。
プロピレン系ランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレン共重合体、プロピレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンと炭素数4〜20個を有する少なくとも1種のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0012】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体である場合、用いられる炭素数4〜20個を有するのα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチルー1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3―ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3―ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−へプテン、メチルエチル−1−へプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくは、透明性および剛性を高めるという観点から1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0013】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン−α−オレフィン共重合体である場合、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0014】
プロピレン系重合体(A)がプロピレン系ランダム共重合体である場合、プロピレン系ランダム共重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体である。
より好ましくは、透明性や剛性の観点から、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である。
【0015】
プロピレン系重合体(A)の融点(Tm)は、136℃以上149℃以下であり、好ましくは135℃以上149℃以下であり、より好ましくは134℃以上149℃以下℃である。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)の融点(Tm)が、上記の下限を下回ると、シートや、その二次成形体である容器の剛性が悪化する場合がある。また前記上限を上回ると、シートや、その二次成形体などを熱成形する時に必要な熱量が大きくなる場合がある。
【0016】
プロピレン系重合体(A)の融点(Tm)は、プロピレン系重合体(A)の製造に使用する重合触媒を選択し、プロピレン系重合体(A)の立体規則性を調節することによって、上記範囲内に調節することができる。また、プロピレン系重合体(A)が共重合体である場合、共重合体に含有されるエチレンおよび/またはα−オレフィンの含有量を調節することによって、上記範囲内に調節することができる。
【0017】
通常、プロピレン系重合体(A)の立体規則性が高くなると融点(Tm)は高くなり、立体規則性が低くなると融点(Tm)は低くなる。また、プロピレン系重合体(A)が共重合体である場合、共重合体に含有されるエチレンおよび/またはα−オレフィンの含有量が多くなると融点(Tm)は低くなり、エチレンおよび/またはα−オレフィンの含有量が少なくなると融点(Tm)は高くなる。
【0018】
プロピレン系重合体(A)の温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)は1〜10g/10分であり、好ましくは2〜9g/10分であり、より好ましくは2〜8g/10分である。
【0019】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(A)のMFRが、前記下限を下回ると押出加工時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、前記上限を上回ると、押出加工時の樹脂の流動性が悪化する場合があったり、シートや容器の成形性が悪化する場合がある。
【0020】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)は、プロピレン含有量が90〜99重量%であり、エチレン含有量が1〜10重量%であるプロピレン系重合体である(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量の合計を100重量%とする)。
【0021】
プロピレン系重合体(B)の融点(Tm)は、100℃以上136℃未満であり、好ましくは105℃以上135℃以下であり、より好ましくは110℃以上134℃以下である。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)の融点(Tm)が、上記の下限を下回ると、シートや、その二次成形体である容器の剛性が悪化する場合がある。また、前記上限を上回ると、シートや、その二次成形体などを熱成形する時に必要な熱量が大きくなる場合がある。
【0022】
プロピレン系重合体(B)の融点(Tm)は、プロピレン系重合体(B)の製造に使用する重合触媒を選択し、プロピレン系重合体(B)の立体規則性を調節することによって、上記範囲内に調節することができる。また、プロピレン系重合体(B)に含有されるエチレンの含有量を調節することによって、上記範囲内に調節することができる。
【0023】
通常、プロピレン系重合体(B)の立体規則性が高くなると融点(Tm)は高くなり、立体規則性が低くなると融点(Tm)は低くなる。また、プロピレン系重合体(B)に含有されるエチレンの含有量が多くなると融点(Tm)は低くなり、エチレンの含有量が少なくなると融点(Tm)は高くなる。
【0024】
プロピレン系重合体(B)のエチレン含有量は1〜10重量%であり、好ましくは2〜9重量%であり、より好ましくは3〜7重量%である。
【0025】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)のエチレン含有量が、前記下限を下回ると、シートや、その二次成形体である容器の透明性が悪化する場合がある。また、前記上限を上回ると、シートや、その二次成形体である容器の剛性が悪化する場合がある。
【0026】
プロピレン系重合体(B)の温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)は1〜10g/10分であり、好ましくは2〜9g/10分であり、より好ましくは2〜8g/10分である。
【0027】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)のMFRが、前記下限を下回ると押出加工時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、前記上限を上回ると、押出加工時の樹脂の流動性が悪化する場合があったり、シートや容器の成形性が悪化する場合がある。
【0028】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)は、プロピレン含有量が85〜96.5重量%であり、エチレン含有量が0.5〜5重量%であり、炭素数4〜20個を有するα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体である(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量とα―オレフィン含有量の合計を100重量%とする)。
【0029】
プロピレン系重合体(C)の融点(Tm)は、100℃以上136℃未満であり、好ましくは105℃以上135℃以下であり、より好ましくは110℃以上134℃以下である。
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)の融点(Tm)が、上記の下限を下回ると、シートや、その二次成形体である容器の剛性が悪化する場合がある。また、前記上限を上回ると、シートや、その二次成形体などを熱成形する時に必要な熱量が大きくなる場合がある。
【0030】
プロピレン系重合体(C)の融点(Tm)は、プロピレン系重合体(C)の製造に使用する重合触媒を選択し、プロピレン系重合体(C)の立体規則性を調節することによって、融点(Tm)を上記範囲内に調節することができる。また、プロピレン系重合体(C)に含有されるエチレンの含有量および/またはα−オレフィンの含有量を調節することによって、融点(Tm)を上記範囲内に調節することができる。
【0031】
プロピレン系重合体(C)のエチレン含有量は0.5〜5重量%であり、好ましくは0.6〜4重量%であり、より好ましくは0.7〜3重量%である。
【0032】
プロピレン系重合体(C)の炭素数4〜20個のα−オレフィン含有量は、3〜10重量%であり、好ましくは3〜9重量%であり、さらに好ましくは3〜6重量%である。
【0033】
プロピレン系重合体(C)であるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられる炭素数4〜20個を有するのα−オレフィンとしては、プロピレン系重合体(A)がプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体である場合に用いられるα−オレフィンと同様のα−オレフィンが挙げられる。
プロピレン系重合体(C)であるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられる炭素数4〜20個を有するのα−オレフィンとして好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、さらに好ましくは、透明性や剛性の観点から1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0034】
プロピレン系重合体(C)であるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0035】
プロピレン系重合体(C)の温度230℃、荷重21.18Nで測定したメルトフローレート(MFR)は1〜10g/10分であり、好ましくは2〜9g/10分であり、より好ましくは2〜8g/10分である。
【0036】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(C)のMFRが、前記下限を下回ると押出加工時の押出負荷が大きくなる場合がある。また、前記上限を上回ると、押出加工時の樹脂の流動性が悪化する場合があったり、シートや容器の成形性が悪化する場合がある。
【0037】
プロピレン系重合体(A)、(B)および(C)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、
(1)マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、
(2)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、
(3)シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系
等が挙げられる。
好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0038】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法や溶媒重合法、無溶媒である液相重合法や気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法である。
さらに、前記の重合法を組み合わせ、それらを連続的に行う方法、例えば、液相−気相重合法等が挙げられる。例えば、特開平7−216017号公報等に記載されている重合方法が挙げられる。
【0039】
本発明で用いられる芳香族燐酸エステル化合物類は、下記式(I)で表される化合物である。

(式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、M1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアルミニウム原子であり、M1がアルカリ金属原子の場合、pは1であり、且つqは0であり、M1がアルカリ土類金属原子の場合、pは2であり、且つqは0であり、M1がアルミニウム原子の場合、pは1または2であり、且つqは3−pである。)
【0040】
本発明で用いられる上記式(I)で表される芳香族燐酸エステル化合物類において、R1で示される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基等が挙げられ、R2およびR3で示される炭素原子数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、t−アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、i−ノニル基、デシル基、i−デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、t−ドデシル基等が挙げられる。
【0041】
本発明で用いられる上記式(I)のM1で表されるアルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、例えば、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられる。
【0042】
本発明で用いられる上記式(I)のM1として好ましくは、リチウムまたはアルミニウムであり、さらに好ましくは、リチウムである。
【0043】
本発明で用いられる上記式(I)のM1がリチウムである場合、芳香族燐酸エステル化合物類としては、例えば、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−i−プロピルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−i−プロピルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート等が挙げられる。
【0044】
本発明で用いられる上記式(I)のM1がアルミニウムである場合、芳香族燐酸エステル化合物類としては、例えば、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジエチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−i−プロピルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−i−プロピルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]、ヒドロキシアルミニウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート]等が挙げられる。
【0045】
式(I)で示される芳香族燐酸エステル化合物類としては、市販品を用いても良く、例えば、式(I)のM1がリチウムであるアデカスタブNA71(商品名、ADEKA(株)製)、また式(I)のM1がアルミニウムであるアデカスタブNA21(商品名、ADEKA(株)製)が挙げられる。
【0046】
本発明で用いられる芳香族燐酸エステル化合物類の含有量は、プロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B)またはプロピレン系重合体(C)とを含有する樹脂成分100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、好ましくは0.015〜0.1重量部であり、より好ましくは0.020〜0.05重量部である。
【0047】
本発明で用いられる芳香族燐酸エステル化合物類の含有量が、前記下限を下回ると、透明性や剛性が優れない場合がある。また、本発明で用いられる芳香族燐酸エステル化合物類の含有量が、前記上限を上回ると、シートや、その容器にブツが発生する場合がある。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば、中和剤、有機過酸化物、耐候性、難燃性、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、銅害防止剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。他の添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0049】
中和剤としては、例えば、脂肪酸カルシウム塩、ハイドロタルサイトが挙げられ、その含有量として、好ましくは、プロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B)またはプロピレン系重合体(C)とを含有する樹脂成分100重量部に対して0.005〜0.5重量部である。
【0050】
有機過酸化物としては、工業的に取り扱いが容易なものが好ましく、例えば、半減期が150℃で0.5分以上のものが好ましい。このような有機過酸化物の具体例としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、1,3ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0051】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、ポリエチレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン系エラストマー等を含有させてもよい。
【0052】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造法としては、プロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B)またはプロピレン系重合体(C)とを含有する樹脂成分と、芳香族燐酸エステル化合物類とを、さらには必要に応じて添加される前記の各種添加剤とを、溶融混練する方法が挙げられる。例えば、プロピレン系重合体(A)と、プロピレン系重合体(B)またはプロピレン系重合体(C)とを含有する樹脂成分と、芳香族燐酸エステル化合物類とを、さらには必要に応じて添加される前記の各種添加剤とを、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー等の混合機を用いて混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練して、ペレット化する方法が挙げられる。
【0053】
本発明のポリプロピレン系樹脂シートは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるシートである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をシートに成形する方法としては、押出成形方法、射出成形方法、プレス成形方法、カレンダー成形方法などの通常のシート製造に用いられる成形方法が挙げられる。生産性が良好であるという理由や、透明性が良好であるという理由から、好ましくは押出成形方法であり、より好ましくは押出Tダイ成形方法である。押出Tダイ成形方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ギヤ押出機などを用い、溶融したポリプロピレン樹脂組成物をTダイより、シート状に押出し、金属冷却ロールで冷却固化しながら引き取る押出Tダイ成形方法が挙げられる。
【0054】
本発明のシートの厚みとしては、十分な強度や透明性を得るという観点から、通常は0.1〜3.0mmであり、好ましくは0.3〜2.5mmである。また、本発明シートは、単独のシートでもよく、異なる樹脂とからなる多層シートでもよい。多層シートの製造方法としては、通常よく用いられる押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【0055】
本発明のポリプロピレン系樹脂シートを、例えば、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等によって、一軸または二軸に延伸してもよい。また、通常用いられるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等によって、表面処理を施してもよい。
【0056】
本発明のポリプロピレン系樹脂容器は、本発明のポリプロピレン系樹脂シートを熱成形してなる容器である。本発明のポリプロピレン系樹脂シートを二次成形体であるポリプロピレン系樹脂容器に熱成形する方法としては、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法等の公知の熱成形法が挙げられる。熱成形する時の加熱方式としては、熱板による直接加熱や遠赤外線ヒータによる間接加熱などの方式が挙げられる。
【0057】
熱成形法として好ましくは、良好な金型転写性を確保するために比較的高い圧空圧力で熱成形する方法であり、より好ましくは、金型合わせ面からの空気の漏れや金型寿命の低下が起こり難い範囲、例えば0.2〜0.5MPaの範囲で熱成形する方法である。
【0058】
本発明のポリプロピレン系樹脂容器の形状としては、目的に応じて任意の形状を選択することができる。例えば、弁当箱型、丼型、ドリンクカップ型、ゼリーカップ型等の食品包装用途に応じた任意の形状や、精密部品を入れるトレイ等の工業用途に応じた形状等を選択することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明する。実施例および比較例で用いた物性の測定および試料の調整は、下記の方法に従って行った。
【0060】
[物性の測定方法]
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210の条件14(Condition Number 14)の方法に従って温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
【0061】
(2)エチレンおよび1−ブテン含量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616〜619頁に記載されているIRスペクトルによる定量方法に準拠し測定を行い求めた。
【0062】
(3)融点(Tm、単位:℃)
樹脂を熱プレス(230℃で5分間予熱後、3分間かけて50kgf/cm2Gまで昇圧し2分間保圧した後、30℃、30kgf/cm2Gで5分間冷却)して、厚さ0.5mmのシートを作成し、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、DSC−7型)を用い、そのシート10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間熱処理後、降温速度300℃/分で150℃まで冷却し、150℃において1分間保温し、さらに降温速度50℃/分で50℃まで冷却し、50℃において1分間保温した後、50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際に得られる融解曲線において、最大ピークを示す温度を測定した。
【0063】
(4)シートの透明性(ヘイズ、単位:%)
JIS K7105に従い測定した。
【0064】
(5)シートの剛性(ヤング率、単位:MPa)
JIS K7113に従って測定した。
【0065】
(6)容器の透明性(ヘイズ、単位:%)
圧空成形して得られたポリプロピレン系樹脂容器の胴部中央から切り取った試験片を用いて、JIS K7105に従い測定した。
【0066】
(7)容器の剛性(ヤング率、単位:MPa)
圧空成形して得られたポリプロピレン系樹脂容器の胴部中央から切り取った試験片を用いて、JIS K7113に従って測定した。
【0067】
(8)容器の変形量(単位:mm)
圧空成形して得られたポリプロピレン系樹脂容器の開口部の最大口径と最小口径を測定し、その差(容器の開口部の最大口径―最小口径、単位:mm)を、容器の変形量として求めた。容器の変形量が大きいと、容器の意匠性が悪化する場合がある。
【0068】
(プロピレン系重合体(A)の製造方法)
特開平7−216017号公報の実施例1記載の方法によって得られる触媒系を用いて、触媒条件として、Al/Tiモル比を600、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(Z)/Tiモル比を40とし、重合条件として、重合温度を84℃、重合圧力を1.8MPa、プロピレン、エチレンおよび1−ブテンの全フィード量(単位:Ton)に対するエチレンのフィード量(単位:Kg)を8Kg/Ton、前記全フィード量に対する1−ブテンのフィード量を36Kg/Tonとし、水素濃度が1.25vol%(容積%)、エチレン濃度が0.6vol%(容積%)、1−ブテン濃度が4.3vol%(容積%)になるように、プロピレン、エチレン、1−ブテンおよび水素をフィードして、プロピレン、エチレンおよび1−ブテンを気相重合で共重合することによって、下記のプロピレン―エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)を得た。
(A−1)プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体
MFRが7.0g/10分であり、Tmが148℃であり、エチレン含有量が1.0重量%であり、1−ブテン含量が4.2重量%であった。
【0069】
(プロピレン系重合体(B)の製造方法)
前記のプロピレン系重合体(A)の製造方法において、1−ブテンを用いずに、プロピレンおよびエチレンの全フィード量(単位:Ton)に対するエチレンのフィード量(単位:Kg)を48.5Kg/Tonとし、水素濃度が1.45vol%、エチレン濃度が3.3vol%になるように、プロピレン、エチレンおよび水素をフィードして、プロピレンおよびエチレンを気相重合で共重合することによって、下記のプロピレン−エチレン共重合体(B−1)を得た。
(B−1)プロピレン−エチレン共重合体
MFRが1.3g/10分であり、Tmが133℃であり、エチレン含有量が5.2重量%であった。
【0070】
(プロピレン系重合体(C)の製造方法)
前記のプロピレン系重合体(A)の製造方法において、エチレンのフィード量を25Kg/Tonに、1−ブテンのフィード量を65Kg/Tonに、エチレン濃度を1.75vol%に、1−ブテン濃度を6.8vol%に変更した以外は、前記重合体(A)の製造と同様にして行うことによって、下記のプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)を得た。
(C−1)プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体
MFRが3.2g/10分であり、Tmが134℃であり、エチレン含有量が2.4重量%であり、1−ブテン含量が6.8重量%であった。
【0071】
(プロピレン系重合体(D)の製造方法)
特開平7−216017号公報の実施例1記載の方法によって得られる触媒系を用いて、触媒条件として、Al/Tiモル比を140、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(Z)/Tiモル比を0.4とし、重合条件として、重合温度を84℃、重合圧力を2.1MPa、プロピレンおよびエチレンの全フィード量(単位:Ton)に対するエチレンのフィード量(単位:Kg)を5.3Kg/Tonとし、水素濃度が0.06vol%(容積%)、エチレン濃度が0.29vol%(容積%)になるように、プロピレン、エチレンおよび水素をフィードして、プロピレンおよびエチレンを気相重合で共重合することによって、下記のプロピレン−エチレン共重合体(B−1)を得た。
(D−1)プロピレン−エチレン共重合体
MFRが1.5g/10分であり、Tmが162℃であり、エチレン含有量が0.3重量%であった。
【0072】
[芳香族燐酸エステル化合物類]
式(I)のM1がリチウムであるADEKA(株)製、アデカスタブNA71(商品名)、または式(I)のM1がアルミニウムであるADEKA(株)製、アデカスタブNA21(商品名)用いた。
【0073】
実施例1
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)80重量部と、プロピレン−エチレン共重合体(B−1)20重量部とからなる樹脂成分100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のADEKA(株)製、商品名アデカスタブNA21を0.20重量部、塩素補足剤としてステアリン酸カルシウムを0.05重量部、酸化防止剤としてトリス(2,4−t−ブチルフェニル)フォスファイト/テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)の3/1の混合物を0.255重量部加え、窒素雰囲気下においてヘンシェルミキサ−で3分間混合した後、スクリュー径65mmφの押出造粒機を用いて、250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは5.0g/10分であった。
Tダイシート加工機(ダイ幅450mm)によって、スクリュー径65mmφ、シリンダー温度250℃、ダイ温度250℃、引き取り速度1.8m/分、冷却ロール温度60℃の条件で、上記で得られたペレットを押出し、押出シート(厚み1.65mm、幅45cm)を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
開口部の口径93mmφ、深さ116mm、底部の口径55.1mmのドリンクカップ形状の雌型の成形金型を使用し、圧空圧力0.3MPa、遠赤外線ヒータ温度350℃、圧空3MPaの条件で、上記で得られた押出シートを圧空成形し、二次成形体であるポリプロピレン系樹脂容器を得た。得られた二次成形体であるポリプロピレン系樹脂容器の胴部中央から切り取った試験片を用いて、ポリプロピレン系樹脂容器の物性を測定した。なお、容器の開口部の最大口径と最小口径を測定し、その差(容器の開口部の最大口径−最小口径、単位:mm)を、当該容器の変形量として求めた。その結果を表1に示した。
【0074】
実施例2
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)75重量部、プロピレン−エチレン共重合体(B−1)25重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=4.7g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0075】
実施例3
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン共重合体(B−1)30重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(B−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類としてアデカスタブNA21の配合量を0.10重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=4.2g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0076】
実施例4
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)80重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)20重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=6.2g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0077】
実施例5
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.6g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0078】
実施例6
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類としてアデカスタブNA21の配合量を0.10重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.5g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0079】
実施例7
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)80重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)20重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のADEKA(株)製、アデカスタブNA71(商品名)を0.04重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=6.3g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
【0080】
実施例8
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のADEKA(株)製、アデカスタブNA71(商品名)を0.10重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.4g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
【0081】
実施例9
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のアデカスタブNA71を0.04重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.5g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
【0082】
実施例10
プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(A−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(A−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のアデカスタブNA71を0.02重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.5g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表2に示した。
【0083】
比較例1
プロピレン−エチレン共重合体(D−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(D−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル類化合物のアデカスタブNA21を0.10重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.23重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.9g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表3に示した。
【0084】
比較例2
プロピレン−エチレン共重合体(D−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(D−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のアデカスタブNA71を0.10重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.23重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.6g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表3に示した。
【0085】
比較例3
プロピレン−エチレン共重合体(D−1)70重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)30重量部に変更し、共重合体(D−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のアデカスタブNA71を0.04重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.23重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.5g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表3に示した。
【0086】
比較例4
プロピレン−エチレン共重合体(D−1)80重量部、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体(C−1)20重量部に変更し、共重合体(D−1)と共重合体(C−1)それぞれの重量の合計量100重量部に対して、芳香族燐酸エステル化合物類のアデカスタブNA71を0.10重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.25重量部に変更した以外は、実施例1と同様にペレット化し(MFR=5.5g/10分)、シートおよび容器を成形し、物性を測定した。その結果を表3に示した。
【0087】
【表1】


























【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
本発明の要件を満足する実施例1〜10のポリプロピレン系樹脂容器は、剛性および透明性に優れており、容器の変形が抑制されていることが分かる。そして、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(C)とを用いた実施例4〜10のポリプロピレン系樹脂容器の変形量は、さらに小さいことが分かる。また、芳香族燐酸エステル化合物類として、アデガスタブNA71を用いた場合、添加量が少ない実施例7、9および10のポリプロピレン系樹脂容器の変形量は、実施例8と比較してさらに小さいことが分かる。
これに対して、本発明の要件を満たさない比較例1〜4のポリプロピレン系樹脂容器は透明性が不十分であり、さらに樹脂容器の変形量が大きいことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のプロピレン系重合体(A)50〜99.5重量%と、下記のプロピレン系重合体(B)または下記のプロピレン系重合体(C)0.05〜50重量%とを含有する樹脂成分と(ただし、重合体(A)と、重合体(B)または重合体(C)の合計を100重量%とする)、当該樹脂成分100重量部に対して、下記式(I)で表される芳香族燐酸エステル化合物類とを0.01〜1重量部含有してなるポリプロピレン系樹脂組成物。
プロピレン系重合体(A):融点(Tm)が136℃以上149℃以下であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であるプロピレン系重合体。
プロピレン系重合体(B):融点(Tm)が100℃以上136℃未満であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であり、プロピレン含有量が90〜99重量%であり、エチレン含有量が1〜10重量%であるプロピレン系重合体(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量の合計を100重量%とする)。
プロピレン系重合体(C):融点(Tm)が100℃以上136℃未満であり、メルトフローレート(MFR)が1〜10g/10分であり、プロピレン含有量が85〜96.5重量%であり、エチレン含有量が0.5〜5重量%、炭素数4〜20個を有するα−オレフィン含有量が3〜10重量%であるプロピレン系重合体(ただし、プロピレン含有量とエチレン含有量とα−オレフィン含有量の合計を100重量%とする)。



(式中、R1は水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、M1はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、またはアルミニウム原子であり、M1がアルカリ金属原子の場合、pは1であり、且つqは0であり、M1がアルカリ土類金属原子の場合、pは2であり、且つqは0であり、M1がアルミニウム原子の場合、pは1または2であり、且つqは3−pである。)
【請求項2】
芳香族燐酸エステル化合物類のM1が、リチウム原子、またはアルミニウム原子である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなるポリプロピレン系樹脂シート。
【請求項4】
請求項3に記載のポリプロピレン系樹脂シートを熱成形してなるポリプロピレン系樹脂容器。

【公開番号】特開2007−119746(P2007−119746A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260250(P2006−260250)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】