説明

ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体

【課題】独立気泡性と押出特性に優れ、軽量且つ剛性感のある、リサイクル性に優れた発泡成形品を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記成分(A)の含有量が70〜100重量%、成分(B)の含有量が0〜30重量%であるポリプロピレン系樹脂組成物。・成分(A):プロピレン−α−オレフィン共重合体(A1)とプロピレン単独重合体(A2)の少なくとも2成分からなり、(A1)及び(A2)を多段重合法によって重合して得られるプロピレン系樹脂組成物。・成分(B):プロピレン単独重合体またはα−オレフィン含量が1重量%未満のプロピレン−α−オレフィン共重合体(B1)と、プロピレン−α−オレフィン共重合体(B2)の少なくとも2成分からなり、(B1)及び(B2)を多段重合法によって重合して得られ、(B1)の含有量が50〜90重量%であるプロピレン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体に関し、独立気泡性と押出特性に優れ、軽量且つ剛性感のある、かつリサイクル性に優れた発泡成形品を得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物およびそれを用いた発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は、軽量で且つ耐熱性や耐衝撃性に優れることから、自動車内装の芯材、建材、文具および食品容器等の用途に広く用いられている。
このようなポリオレフィン系樹脂発泡体は、例えば、押出機により溶融させたポリオレフィン系樹脂に、各種発泡剤を加圧下にて混練した後、押出機先端に取り付けられたダイスより大気圧下に押出発泡することにより得られる。
しかしながら、従来の発泡体では、生じるガス分圧を有する個々の気泡(以下、「セル」という場合もある。)を溶融樹脂中に保持させておくことが困難であり、個々のセルが破裂して連続気泡を生じやすくなるという問題があった。
【0003】
そこで、連続気泡が少ない(独立気泡性に優れた)発泡体を得る方法として、用いる樹脂の溶融張力を高くしてセルの保持力を高める様々な手段が提案されている。
例えば、超高分子量成分を添加して溶融張力を高める方法が提案されているが、一般に溶融張力の高い樹脂を用いると、セルの保持力は上昇するものの、粘度が高すぎて、添加する発泡剤の量に見合った発泡倍率が得られず、また、押出機での負荷が大きくなり、高い生産性を維持しようとする場合には押出機にかかる負荷が増大し、押出成形性が低下する、更にはせん断発熱により樹脂の温度が上がってしまい、セルの成長が冷却により抑制できず、連続気泡となってしまうという問題があった。
【0004】
また、高溶融張力を特徴としたポリプロピレン系樹として、例えば特許文献1などにあるような電子線架橋を行ったプロピレン系樹脂や、特許文献2、3および4などにあるように過酸化物などを用いて架橋処理したプロピレン系樹脂が市販されているが、架橋処理による溶融聴力向上は、発泡シート成形時の耳部分や、容器成型後の不要部分を再度発泡シート成形に戻すときに、溶融物性の低下が著しく、コスト面でも不利であり、また架橋しているために、押出安定性や、臭気の面からも満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−121704号公報
【特許文献2】特開平6−157666号公報
【特許文献3】国際公開第99/27007号公報
【特許文献4】特開2004−339365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、独立気泡性及び押出成形性に優れ、しかも軽量でも剛性感のあるリサイクル性に優れた発泡体を提供することを課題にしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題につき鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリプロピレン系樹脂組成物と発泡剤とからなる材料を用いることにより、独立気泡性及び押出成形性に優れ、しかも軽量且つ剛性感のある、リサイクル性に優れた発泡体が生産可能なことを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下のポリプロピレン系樹脂組成物および発泡成形体を提供する。
【0008】
[1]下記の成分(A)及び成分(B)の少なくとも2成分からなり、成分(A)及び成分(B)の合計100重量%基準で、成分(A)の含有量が100重量%又は100重量%未満70重量%以上、成分(B)の含有量が0重量%又は0重量%を超え30重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
・成分(A):
下記(A−1)〜(A−3)の条件を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))とプロピレン単独重合体(成分(A2))の少なくとも2成分からなり、成分(A1)及び成分(A2)を多段重合法によって重合して得られ、成分(A1)の含有量が1〜20重量%、成分(A2)の含有量が99〜80重量%(ただし、成分(A1)及び成分(A2)の合計を100重量%とする。)であり、かつメルトフローレートが5〜20g/10分の範囲にあり、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定においてひずみ硬化性を示すプロピレン系樹脂組成物。
(A−1)α−オレフィン含量が15〜85重量%(ただし、成分(A1)を構成するモノマーの全量を100重量%とする)
(A−2)固有粘度ηが5〜20dl/g
(A−3)Mw/Mnが5〜15
・成分(B):
MFRが10〜1000g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレン以外のα−オレフィン含量が1重量%未満のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B1))と、重量平均分子量が50万〜1000万、プロピレン以外のα−オレフィンの含量が1〜15重量%のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B2))の少なくとも2成分からなり、成分(B1)及び成分(B2)を多段重合法によって重合して得られ、成分(B1)の含有量が50〜90重量%、成分(B2)の含有量が50〜10重量%(ただし、成分(B1)及び成分(B2)の合計を100重量%とする。)であり、
かつ、下記(B−1)〜(B−3)の条件を満たすプロピレン系樹脂組成物。
(B−1)MFRが0.1〜20g/10分
(B−2)溶融張力(MT)とMFRの関係が以下の式を満たす
logMT>−0.97×logMFR+1.23
(B−3)最長緩和時間(τd)が100秒以上
【0009】
[2]成分(A)の含有量が100重量%、成分(B)の含有量が0重量%であることを特徴とする上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[3]成分(A)の含有量が97〜70重量%、成分(B)の含有量が3〜30重量%であることを特徴とする上記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[4]成分(A)は、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定における歪硬化指数λmax(10)が1.2以上であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、これを押出発泡成形して成形されたポリプロピレン系樹脂発泡成形体。
[6]ポリプロピレン系樹脂発泡成形体が、スリットダイまたはサーキュラーダイから押出されて成形された発泡シートである上記[5]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡成形体。
[7]上記[6]に記載の発泡シートを熱成形により成形されたポリプロピレン系樹脂発泡熱成形体。
[8]上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、これをパリソン状に押出し、その後金型内においてブロー成形により成形されたポリプロピレン系樹脂発泡中空成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、独立気泡性及び押出成形性に優れ、しかも軽量且つ剛性感のある、リサイクル性に優れた発泡体が得られ、特に押出発泡成形における発泡(多層)シート用途に適した材料を提供することができ、得られるポリプロピレン系(多層)発泡シートは熱成形により、均一微細な発泡セルの成形品を得ることができる。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、これをパリソン状に押出し、その後金型内においてブロー成形にすることによっても、均一微細な発泡中空成形体を得ることができる。
そしてこれらの成形体は、外観、熱成形性、耐衝撃性、軽量性、剛性、耐熱性、断熱性、耐油性等に優れていることより、文房具ファイル、食品容器、飲料カップ、ディスプレイ筺体、自動車部品、工業産業用部品、トレーなどに好適に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】CFC−IR測定のフローを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記の成分(A)及び成分(B)の少なくとも2成分からなり、成分(A)及び成分(B)の合計100重量%基準で、成分(A)の含有量が100重量%又は100重量%未満70重量%以上、成分(B)の含有量が0重量%又は0重量%を超え30重量%以下であることを特徴とする。
・成分(A):
下記(A−1)〜(A−3)の条件を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))とプロピレン単独重合体(成分(A2))の少なくとも2成分からなり、成分(A1)及び成分(A2)を多段重合法によって重合して得られ、成分(A1)の含有量が1〜20重量%、成分(A2)の含有量が99〜80重量%(ただし、成分(A1)及び成分(A2)の合計を100重量%とする。)であり、かつメルトフローレートが5〜20g/10分の範囲にあり、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定においてひずみ硬化性を示すプロピレン系樹脂組成物。
(A−1)α−オレフィン含量が15〜85重量%(ただし、成分(A1)を構成するモノマーの全量を100重量%とする)
(A−2)固有粘度ηが5〜20dl/g
(A−3)Mw/Mnが5〜15
・成分(B):
MFRが10〜1000g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレン以外のα−オレフィン含量が1重量%未満のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B1))と、重量平均分子量が50万〜1000万、プロピレン以外のα−オレフィンの含量が1〜15重量%のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B2))の少なくとも2成分からなり、成分(B1)及び成分(B2)の両成分は多段重合法によって重合して得られ、成分(B1)の含有量が50〜90重量%、成分(B2)の含有量が50〜10重量%(ただし、成分(B1)及び成分(B2)の合計を100重量%とする。)であり、
かつ、下記(B−1)〜(B−3)の条件を満たす組成物。
(B−1)MFRが0.1〜20g/10分
(B−2)溶融張力(MT)とMFRの関係が以下の式を満たす
logMT>−0.97×logMFR+1.23
(B−3)最長緩和時間(τd)が100秒以上
【0013】
ここで成分(A)が100重量%、成分(B)が0重量%の場合は、プロピレン系樹脂組成物(成分(A))が本発明のポリプロピレン系樹脂組成物となる。
【0014】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成する各成分につき、詳細に説明する。
[成分(A)]
成分(A)は、以下の(A−1)〜(A−3)の条件を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))とプロピレン単独重合体(成分(A2))の少なくとも2成分からなり、成分(A1)及び成分(A2)の合計100重量%基準で、成分(A1)の含有量が1〜20重量%、成分(A2)の含有量が99〜80重量%であり、
成分(A1)及び成分(A2)を多段重合法によって重合して得られ、
メルトフローレートが5〜20g/10分の範囲にあり、
温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定において測定した伸張粘度測定においてひずみ硬化性を示すプロピレン系樹脂組成物である。
(A−1)α−オレフィン含量が30〜85重量%(ただし、成分(A1)を構成するモノマーの全量を100重量%とする)
(A−2)固有粘度ηが5〜20dl/g
(A−3)Mw/Mnが5〜15。
【0015】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成するプロピレン系樹脂組成物(A)は、少なくとも上記成分(A1)と上記成分(A2)からなる。
以下、成分(A)を構成する成分(A1)、成分(A2)について、詳しく説明する。
【0016】
<成分(A1)>
成分(A1)はプロピレン−α−オレフィン共重合体である。
ここで、α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、ノネン、デケン、1メチルブテン、1メチルペンテンなどのプロピレンを除く炭素数12以内のアルケンが好ましく、中でもエチレンが特に好ましい。
α−オレフィンの含有量は、成分(A1)を構成するモノマーの全量を100重量%とした場合のα−オレフィン含量は15〜85重量%であり、好ましい下限値としては16重量%、17重量%、20重量%、30重量%又は40重量%を取りうる。好ましい上限値としては75重量%、60重量%、50重量%又は45重量%を取りうる。前記上限値下限値は任意の組み合わせが可能である。好ましい範囲として、16〜70重量%、17〜50重量%、40〜60重量%などがあげられる。
【0017】
成分(A1)は、発泡気泡の成長を抑制する、すなわち連立気泡率を低くさせるのに効果的であり、また発泡成形体の耐衝撃性、粘度調整、容器成形時の延展性などを確保することができるが、α−オレフィンの含有量が下限より少ないと、成分(A2)との相溶性が向上し、発泡気泡の成長を抑制する効果が低減する。また、上限より多いと、成分(A2)との相溶性が逆に悪化しすぎてしまい、成分(A1)と成分(A2)間の界面強度が弱くなり、発泡気泡の成長を抑制する効果が低減する。
【0018】
成分(A1)は、固有粘度ηが5〜20dl/gであることが必要であり、好ましくは6.5〜17dl/g、8〜15dl/g、10〜20dl/gである。固有粘度ηをこのような範囲とするのは、プロピレン−α−オレフィン共重合体が気泡成長を抑制するため、分子量が大きい方が気泡隔壁の伸張変形を抑える効果が高いためであり、大きすぎると気泡の成長を妨げてしまうからである。
ここでの固有粘度は温度135℃、溶媒にデカリンを用い、ウベローデ型毛管粘度計を用いて測定した値とする。成分(A1)の固有粘度を求めるためには、逐次重合途中の成分(A2)を少量抜き取って固有粘度測定を行い、さらに逐次重合終了後の成分全体の固有粘度を測定し、以下の式によって求めるものとする。
成分(A1)の固有粘度=[成分全体の固有粘度−{成分(A2)の固有粘度×成分(A2)の重量分率/100}]/{成分(A1)の重量分率/100}
【0019】
また、プロピレン−α−オレフィン共重合体のMw/Mnは、5〜15であることが必要であり、好ましくは10〜15である。Mw/Mnは、分子量分布の広さを表す指標であり、プロピレン−α−オレフィン共重合体が気泡成長を抑制するため、分子量分布が広いほうが効率的に気泡隔壁の伸張変形を抑えられるためである。5以下ではその効果が発現しにくくなり、15以上のものは製造が極めて困難である。
【0020】
<成分(A2)>
成分(A2)はプロピレン単独重合体である。プロピレン単独重合体(成分(A2))としては、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、好ましくは、2〜80g/10分、より好ましくは5〜40g/10分、さらに好ましくは10〜30g/10分であることが好ましい。MFRがこの範囲にあると、樹脂組成物の剛性と耐衝撃性、成形温度に由来する高生産速度に適した樹脂組成物を与える。
ここで、MFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定する値である。
【0021】
また、プロピレン単独重合体(成分(A2))の立体規則性は、96%以上が好ましく、96.5%以上がさらに好ましい。立体規則性が前記範囲を満たすと、剛性および熱変形温度がより向上し、成形時に成形品が変形しにくくなる。
ここで、立体規則性は、13C−NMR法で測定する値である。
【0022】
<成分(A1)と成分(A2)の組成物>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成するプロピレン系樹脂組成物(成分(A))は、上記した条件を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))を、成分(A1)及び成分(A2)の合計100重量%基準で、1〜20重量%、成分(A2)としてプロピレン単独重合体を、成分(A1)及び成分(A2)の合計100重量%基準で、99〜80重量%を含有する。
成分(A1)は、上記したように、発泡気泡の成長を抑制する効果をもたらす成分であるが、良好な機械物性等を維持するために、1〜20重量%であることが必要であり、好ましくは3〜10重量%である。1重量%より少ないと発泡気泡の成長を抑制する効果が低減し、材料の剛性は上がるが耐衝撃性が低下し、20重量%より多すぎると剛性が不足し、樹脂全体の粘度が上昇してしまい、気泡核の形成が少なくなり、気泡成長が阻害され発泡倍率が低下する。
成分(A1)と成分(A2)の好ましい含有量は、成分(A1)が3〜10重量%、成分(A2)が97〜90重量%である。
【0023】
成分(A1)と成分(A2)の組成物は、多段重合法により重合して製造される。多段重合により製造することで、プロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))の分散が細かく出来るため、各性能が発揮でき、好ましい。
【0024】
このように多段重合法によって得られたプロピレン系樹脂組成物(成分(A))は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重で測定)が5〜20g/10分、好ましくは8〜15g/10分に維持されるよう、プロピレン単独重合体の分子量を調整する必要がある。メルトフローレートは、成形性、気泡状態に影響を及ぼす値であり、低すぎると気泡の成長を阻害し、発泡倍率が低下する、さらには気泡核の形成が少なくなり微細なセルが得られなくなる。高い場合、押出成形におけるドローダウンの維持等が困難になり、成形が困難になる。なお、成分(A1)、成分(A2)自体は、各々単段重合法でも、多段重合法で重合されてもよい。
【0025】
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を構成するプロピレン系樹脂組成物(成分(A))は、良好な気泡の成長を維持しつつ、微細で独立した気泡状態を得るため、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した、伸張粘度測定においてひずみ硬化性を示す。特には、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した歪硬化指数λmax(10)は1.2以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましい。λmax(10)の上限に定めはないが、通常10以下程度である。
【0026】
なお、本発明において、プロピレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物の歪硬化指数λmax(10)の測定方法について述べる。
温度180℃、歪み速度=10s−1の場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度η(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似する。サンプルの作成方法は、一般的に用いられているプレス成形機を使用する。プレス成形機の温度は190℃に設定し、まず圧力を掛けない状態で90秒間予熱する。その後、脱気として30kg/cm程度の圧力で30秒間保持し、最終的に100kg/cmにて60秒間加圧して成型する。
【0027】
次に得られたデータの解析方法について述べる。具体的には、まず伸張粘度を時間に対してプロットした際の各々の時刻での傾きを求めるが、それに当っては伸張粘度の測定データは離散的であることを考慮し、種々の平均法を利用する。たとえば隣接データの傾きをそれぞれ求め、周囲数点の移動平均をとる方法等が挙げられる。伸張粘度は、低歪み量の領域では、単純増加関数となり次第に一定値に漸近し、歪み硬化がなければ充分な時間経過後にトルートン粘度に一致するが、歪み硬化のある場合には一般的に歪み量(=歪み速度×時間)1程度から、伸張粘度が時間と共に増大を始める。すなわち、上記傾きは低歪み領域では時間と共に減少傾向があるが、歪み量1程度から逆に増加傾向となり、伸張粘度を時間に対してプロットした際の曲線上に、変曲点が存在する。この増大が確認できる場合、歪み硬化性を示すと判定する。そこで歪み量が0.1〜2.5程度の範囲で、上記で求めた各々の時刻の傾きが最小値をとる点を求めてその点で接線を引き、直線を歪み量が4.0となるまで外挿する。歪み量4.0となるまでの伸長粘度ηの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの上記近似直線上の粘度をηlinとする。ηmax/ηlinを、λmax(10)と定義する。
【0028】
次に、固有粘度、分子量分布、プロピレン−α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量の測定方法に関して記述する。
1.使用する分析装置
・クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(以下、「CFC」と略す。)
・フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)
CFC後段のGPCカラムは、昭和電工社製商品名「AD806MS」を3本直列に接続して使用する。
【0029】
2.CFCの測定条件
・溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
・サンプル濃度:4mg/mL
・注入量:0.4mL
・結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
・分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々「W40」、「W100」、「W140」と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
・溶出時溶媒流速:1mL/分
【0030】
3.FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
CFC−FT−IRのシステム構成の概念図を図1に示した。
検出器:MCT
分解能:8cm−1
測定間隔:0.2分(12秒)
一測定当たりの積算回数:15回
【0031】
4.測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。具体的な手法は上に記載したものと同じである。
【0032】
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
【0033】
<プロピレン−α−オレフィン共重合体の含有量>
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))の含有量は、α−オレフィンがエチレンであるプロピレン−エチレン共重合体(以下、「EP」と記載する。)を例にして説明すると、下記式(I)で定義され、以下のような手順で求められる。
EP含有量(重量%)=
W40×A40/B40+W100×A100/B100+W140×A140/B140 ・・・(I)
(式(I)中、W40、W100、W140は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100、A140は、W40、W100、W140に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100、B140は、各フラクションに含まれるプロピレン−エチレン共重合体のエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、A140、B40、B100、B140の求め方は後述する。
【0034】
式(I)の意味は以下の通りである。
式(I)右辺の第一項はフラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみを含み、プロピレンホモ重合体(以下、「PP」という。)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEP含有量に寄与するが、フラクション1にはEP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えばフラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はEP由来、残りの1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作はフラクション1の重量%(W40)からEPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項以後も同様であり、各々のフラクションについて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
【0035】
(1)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜3に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100、A140とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
【0036】
(2)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2および3については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明ではB100=B140=100と定義する。B40、B100、B140は各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するPPとEPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100、B140はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、ともに100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=B140=100として解析を行うこととしている。
【0037】
(3)以下の式(II)に従い、EP含有量を求める。
EP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100+W140×A140/100 ・・・(II)
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は結晶性を持たないEP含有量(重量%)を示し、第二項と第三項の和であるW100×A100/100+W140×A140/100は結晶性を持つEP含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、次のようにして求める。
結晶分布の違いによって分別されたフラクション1をCFC分析装置の一部を構成するGPCカラムで分子量分布を測定した曲線、および、当該GPCカラムの後ろに接続されたFT−IRによって、分子量分布曲線に対応して測定されるエチレン含有量の分布曲線を求める。微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。
また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和が平均エチレン含有量A40となる。
【0038】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。このようなCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えばEPの大部分、もしくはPPの中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばEP中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えばPP中特に結晶性の高い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140に含まれるEP成分は極めて少量であり実質的には無視できる。
EP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[EP] ・・・(III)
但し、[EP]は先に求めたEP含有量(重量%)である。
【0039】
EPのうち、結晶性を持たない部分のエチレン含有量(E)(重量%)は、ゴム部分の溶出がほとんど40℃以下で完了することから、B40の値をもって近似する。
しかしながら、上述のクロス分別法とFT−IRの組み合わせによる分析方法では、成分(A1)のエチレン含量が15wt%を下回り、成分(A2)との結晶性に大きな差がなくなり、温度による分別が充分に行うことが出来ないような場合では、正確な分析が難しくなる。このような場合は、逐次重合の途中で成分(A1)を抜き取っておき、その分子量(コモノマーを共重合する場合にはコモノマー含量も測定する)を測定し、さらにマテリアルバランスによる計算や逐次重合途中での重量の直接秤量等によって成分(A1)と成分(A2)の量比を決定し、さらに逐次重合終了時の成分(A1)全体のα−オレフィン含量を測定することで、以下の重量の単純な加成則を使用することで成分(A1)のコモノマー含量を求めることが好ましい。コモノマーとしてエチレンを使用する場合、以下の式によって(Y−2)のエチレン含量を求めることができる。
成分(A1)のエチレン含量=[全体のエチレン含量−{成分(A1)のエチレン含量×成分(A1)の重量分率/100}]/{成分(A2)の重量分率/100}
【0040】
成分(A1)と成分(A2)の量比については、成分(A1)と成分(A2)の平均分子量がある程度異なるものを製造する場合には、逐次重合終了後の全体のGPC測定を行って、得られる多峰性の分子量分布曲線を市販のデータ解析ソフトウェア等を用いてピーク分離し、その重量比を計算することで求めることも可能である。
このようにして成分(A2)の量を求めた後、成分(A2)の固有粘度ついては、成分(A2)量と、重合途中の抜き出し品評価による成分(A1)の固有粘度及び、(Y)全体の固有粘度より、以下の式で求めることが出来る。
成分(A1)の固有粘度=[(Y)全体の固有粘度−{成分(A2)の固有粘度×成分(A2)の重量分率/100}]/{成分(A1)の重量分率/100}
【0041】
<製造法>
成分(A)のプロピレン系樹脂組成物の製造法は、多段重合法により行われるが、上記した特性を有している限り、特に限定されるものではなく、公知の多段重合方法、条件の中から適宜に選択される。
プロピレンの重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられる。例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒(特開昭56―100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照。)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒(特開昭57−63310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照。)等のチーグラー系触媒が好ましい。
【0042】
プロピレン系樹脂組成物は、重合触媒の存在下、気相重合法、液相塊状重合法、スラリー重合法等の製造プロセスを適用して、プロピレンを重合し、続いてプロピレンとα−オレフィン、特に好ましくはエチレンをランダム重合することにより得られる。前述した各特性を有するプロピレン系樹脂組成物(成分(A))を得るためには、スラリー法、気相流動床法にて、多段重合することが好ましい。
【0043】
プロピレン単独重合体(成分(A2))の重合は、プロピレンの一段重合であっても、多段重合であってもかまわない。
プロピレン単独重合体の多段重合法としては、以下に示す工程(1)と工程(2)による二段重合法を、例示することができる。
工程(1):
プロピレンを、分子量調節剤としての水素の存在下で重合する。分子量が大きすぎる重合体の生成を抑制するためである。水素は、プロピレン重合体部分のMFRが好ましくは150g/10分以上になるように、添加される。水素濃度としては、全モノマー量に対して通常0.1〜40モル%の範囲から選択される。また、重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常0.1〜5MPaの範囲から選択される。この工程(1)で得られる重合体の量は、通常全重合量の80〜99重量%となるように調整されることが好ましい。工程(1)で製造されるプロピレン重合体の量が80重量%未満であると、工程(2)で製造される高分子量のプロピレン重合体が多くなり過ぎ、成形性を損ないやすい。
【0044】
工程(2):
工程(2)では、工程(1)で生成したプロピレン重合体と比べ、高分子量のプロピレン重合体を重合するために、なるべく低濃度の水素雰囲気下もしくは、実質上水素の存在しない状態で重合することが好ましい。重合は、工程(1)で生成したプロピレン重合体及び触媒の存在下、引き続いて行われる。重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常0.1〜5MPaの範囲から選択される。この工程(2)で得られる重合体の量は、通常、好ましくは、全重合量の1〜20重量%となるように、調整される。工程(1)及び工程(2)を結合して、結果として得られる重合体全体の物性値を前述した範囲に調整できれば、いかなる組み合わせを採用してもよい。
【0045】
プロピレン単独重合体(成分(A2))部分の重合に続いて、プロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))部分の重合を行う。プロピレン−α−オレフィン共重合体部分は、固有粘度、分子量分布(Mw/Mn)を所定の値に調整するため、高分子量のプロピレン−α−オレフィン共重合体にする必要がある。
プロピレン−α−オレフィン共重合体部分の重合は、高分子量の重合体を重合するために、なるべく低濃度の水素雰囲気下もしくは、実質上水素の存在しない状態で重合することが好ましい。重合は、プロピレン単独重合体の重合工程で生成したプロピレン単独重合体及び触媒の存在下、引き続いて行われる。重合温度は通常40〜90℃、圧力は通常0.1〜5MPaの範囲から選択されることが好ましい。
【0046】
[成分(B)]
成分(B)は、以下を満たす多段重合法で得られる成分(B1)及び成分(B2)から構成されるプロピレン系樹脂組成物である。
成分(B1):
MFRが10〜1000g/10分のプロピレン単独重合体またはプロピレン以外のα−オレフィン含量が1重量%未満のプロピレン−α−オレフィン共重合体
成分(B2):
重量平均分子量が50万〜1000万、プロピレン以外のα−オレフィンの含量が1〜15重量%のプロピレン−α−オレフィン共重合体
そして、成分(B)は、成分(B1)の含有量が50〜90重量%、成分(B2)の含有量が50〜10重量%(ただし、成分(B1)及び成分(B2)の合計を100重量%とする。)であり、かつ、下記(B−1)〜(B−3)の条件を満たすプロピレン系樹脂組成物である。
(B−1)MFRが0.1〜20g/10分
(B−2)溶融張力(MT)とMFRの関係が以下の式を満たす
logMT>−0.97×logMFR+1.23
(B−3)最長緩和時間(τd)が100秒以上
【0047】
このような特性を有するプロピレン系樹脂組成物(成分(B))を得るための触媒系としては、チタン含有固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを主体とするもの、またはΠ電子共役配位子を少なくとも1個有するメタロセン系の遷移金属化合物を用いることができる。
【0048】
メタロセン化合物はアルミノキサン類を助触媒として用いられることもあるし、シリカや粘土鉱物に担持されて使用されることもある。メタロセン触媒の具体的例示としては特開平8−217928、特開平8−238731、特開平8−183814、特開平8−208733、特開平8−85707などに記載の触媒が好ましく挙げられる。
【0049】
チタン含有固体触媒成分は、固体のマグネシウム化合物、四ハロゲン化チタン及び電子供与性化合物を接触させて得られる公知の担持型触媒成分、三塩化チタンを主成分として含む公知の触媒成分から選ばれる。
助触媒のアルミニウム化合物は、一般式AlR3−n (式中Rは炭素数2〜10の炭化水素基を表し、Xは塩素等のハロゲン原子、nは3≧n>1.5の数を表す)で表される。
チタン含有固体触媒成分が固体のマグネシウム化合物を含有する担体担持型触媒成分である場合は、AlR又はAlRとAlRXの混合物を使用するのが好ましく、一方、三塩化チタン又は三塩化チタンを主成分として含む触媒成分である場合はAlRXを使用するのが好ましい。
さらに上記触媒および共触媒成分の他に第三成分として公知の電子供与性化合物を使用することができる。
【0050】
また、プロピレン系樹脂組成物(成分(B))を得るための重合反応は、たとえばヘキサン、ヘプタンなどの不活性溶媒の存在下でも、不存在下、即ち液体プロピレンの存在下あるいは気相プロピレン中でも行うことができる。反応は1基の重合槽を用いて回分式に行うこともできるし、2基以上の重合槽を直列につないで連続的に行うこともできる。重合の順位は、最初に成分(B1)を重合し次いで成分(B2)を重合する2段階で行う方が好ましい。なお、付加的に重合を行って3段階、4段階で行ってもよい。
触媒は、第1段階で重合前に添加されるのが一般的である。後段に於いて触媒を補充することを必ずしも排除するものではないが、樹脂のブレンドでは得られない特性を得るためには、触媒は第1段階で添加するのが好ましい。
また、プロピレンと共重合される他のα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を用いることができ、特にエチレンが好ましい。
【0051】
以下、最初に成分(B1)を重合し、次いで成分(B2)を重合する2段階で行う方法により、詳細に説明する。
成分(B1)を得るための工程(1)は、プロピレンあるいはプロピレンと少量の他のオレフィンを水素の存在下に重合する。水素は工程(1)で得られる重合体のMFRが10〜1000g/10分の範囲となるように制御されることが好ましい。MFRが10以下では全体の粘度が低下してしまい、微細な気泡が得られなくなり、1000より高いと、気泡の成長抑制効果が低下し、連続した気泡状態となり好ましくない。一般には水素濃度(スラリー重合においては気相部濃度、液体プロピレン中の重合あるいは気相法においてはモノマー中の含有量を指す)が1〜50mol%、好ましくは3〜30mol%添加される。プロピレンと共重合される他のオレフィンは、間欠的に添加することもできるし、プロピレン等と共に連続的に供給することもできる。工程(1)の重合温度は一般に40〜90℃であり、全重合量の50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%を製造する。
【0052】
成分(B2)を得るための工程(2)は高分子量成分を得るための重合であり、水素濃度は0.1mol%以下の実質的に無水素状態で重合を進行せしめる。工程(2)で得られる重合体の重量平均分子量は50万〜1000万であり、好ましくは80万〜500万である。重量平均分子量が50万以下では、溶融張力向上効果が低下し、気泡の成長を抑制する効果が低下し、連続した気泡状態となり好ましくない。一方、1000万を超えると、全体の粘度が低下してしまい、微細な気泡が得られなくなる。重合温度は通常40〜90℃、好ましくは50〜80℃であり、共重合コモノマーとして用いられるα−オレフィンとしては、具体的にはエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどから選ばれ、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンの含量は1〜15重量%であり、好ましくは3〜10重量%である。コモノマー含量が高すぎても、低すぎても高分子量成分の分散が悪くなり溶融張力向上効果が低下する。
工程(2)で得られる重合体は、成分Bを重合する全重合体の10〜50重量%であり、好ましくは20〜40重量%である。10重量%より低いと溶融張力向上効果が低下し、気泡の成長を抑制する効果が低下し、連続した気泡状態となり好ましくない。また、50重量%より多いと、全体の粘度が低下してしまい、微細な気泡が得られなくなる。
【0053】
重量平均分子量は、GPCを用いて前段重合終了後に得られた重合体と最終重合体の両者を測定し、両者の差と前段重合の重合体量と最終重合体量の関係から算出することができる。工程(1)及び工程(2)で得られた最終重合体のMFRは好ましくは0.1〜20g/10分であり、より好ましくは0.5〜10g/10分である。
【0054】
ここで、GPCによる重量平均分子量の導出に関して詳細を述べる。本実施例では以下の方法によった。
使用機種:ウォーターズ社製150C
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製Shodex 80M/S 2本
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
分子量の算出:標準ポリスチレン法
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、
A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS : K=1.38×10−4、α=0.7
PE : K=3.92×10−4、α=0.733
PP : K=1.03×10−4、α=0.78
検出器:FOXBORO社製、MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
【0055】
また、プロピレン系樹脂組成物(成分(B))は、溶融張力(MT)とMFRの間に下記関係が成立することを特徴とする。
logMT>−0.97×logMFR+1.23
上記の関係式は溶融張力と流動性のバランスを表すものであり、上式を満足することは、高い溶融張力を発現しながら流動性、押出特性が良好であることに相当する。すなわち、プロピレン系樹脂組成物(成分(B))は、ブロー成形、発泡成形、熱成形等の加工特性と、押出特性とのバランスが良好であることを意味するものである。
一方、従来の汎用のポリプロピレン系樹脂組成物は、上式において左辺<右辺であり、プロピレン系樹脂組成物(成分(B))に比べると同一MTにおけるMFRは小さくなるため、流動性が悪化する
ここで、溶融張力MTの測定方法として、本実施例においては、東洋精機製作所製のキャピログラフを用いて、シリンダー温度190℃、オリフィスL/D=8.1/2.095(mm)、ピストンスピード10mm/min、引取速度3.9m/minの条件下で測定した。
【0056】
上記関係式を満たすプロピレン系樹脂組成物(成分(B))の製造は、上述した重合法により、得ることができるが、特に好ましくは、成分(B2)を50から10重量%、好ましくは40〜20重量%にすることにより、また成分(B1)の重量平均分子量を50万〜1000万、好ましくは50万〜500万程度することにより製造することが出来る。
【0057】
また、プロピレン系樹脂組成物(成分(B))は、最長緩和時間(τd)が100秒以上であることを特徴とする。上記τdは、応力緩和測定より求められ、変形を加えられた分子鎖が配向を変えずに緩和する配向緩和を経て、変形前のランダム状態に戻るまでの時間を意味する。このτdは、ブロー成形、発泡成形、熱成形等の加工特性と密接に関連しており、τdが大きいほど加工特性に優れるものと考えられる。τdは、高分子量成分、もしくは分岐成分のいずれか、もしくは両者の存在により長大化する傾向がみられるが、伸長粘度の非線形性とは必ずしも一致しない。すなわちτdは、伸長粘度の非線形性を規定するものではなく、伸長変形時の均一延展性を規定するものである。本発明者らが検討した結果、τdが100秒より小さい場合には、長緩和時間成分の寄与が小さくなるために加工特性に支障を来す。すなわち、τd≧100秒を満足させることが、高溶融張力を必要とする成形加工において必須の条件である。
ここで、最長緩和時間(τd)は、本実施例においては、レオメトリックス社製メカニカルスペクトロメーターRMS−800を用い、直径25mmのパラレルプレート、ギャップ1.5mmで温度200℃、240℃、歪み50、100%で緩和弾性率G(t)を測定してマスターカーブを作成する。得られたG(t)を用いて、JOURNAL OF
POLYMER SCIENCE,VOL.XL,P443−456(1959)に記載の方法により、τdを算出した。
【0058】
最長緩和時間(τd)が100秒以上であるプロピレン系樹脂組成物(成分(B))の製造は、上述した重合法により、得ることができるが、特に好ましくは、成分(B2)を50から10重量%、好ましくは40〜20重量%にすることにより、また成分(B1)の重量平均分子量を50万〜1000万、好ましくは50万〜500万程度することにより製造することが出来る。
【0059】
[成分(A)、成分(B)からなるポリプロピレン系樹脂組成物]
上記のごとく得られた成分(A)および成分(B)は、成分(A)及び成分(B)の合計100重量%基準で、成分(A)が100重量%又は100重量%未満70重量%以上、成分(B)が0重量%又は0重量%を超え30重量%以下の量比で構成することにより、発泡に適したポリプロピレン系樹脂組成物となる。成分(A)は気泡の微細化、押出発泡体の外観の保持、組成物全体の流動性、耐衝撃性、剛性を維持するために重要な成分であり、一方、成分(B)は、気泡抑制に必要な溶融張力の付与、熱成形時やブロー成型時のドローダウン性をより向上させる成分として重要である。成分(A)が70%以下では、良好な外観の発泡体が得られず、気泡セルも粗大になり、耐衝撃性も悪化する。
成分(B)を必須成分とする場合は、成分(B)の効果が十分に認められる範囲として、好ましくは成分(A)が97〜70重量%、成分(B)が3〜30重量%であり、より好ましい量比は、成分(A)が96〜70重量%、成分(B)が4〜30重量%であり、より好ましくは、成分(A)が95〜80重量%、成分(B)が5〜20重量%である。
【0060】
<添加剤>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、結晶増核剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤、難燃剤等を配合することができる。
【0061】
また、充填剤も添加することが可能であり、その種類として、無機系、有機系の充填材があるが、無機系の充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、ベントナイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンファイバー、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、炭素繊維、軽石粉、雲母、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどが上げられ、有機系の充填材としてはPMMAビーズ、セルロース繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、籾殻、木粉、おから、タピオカ粉末、米粉、ケナフ繊維、澱粉、紙粉などが上げられる。
【0062】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から発泡成形体を得る際に発生する耳ロス、スケルトンなどの粉砕、もしくは希釈材として、ホモポリプロピレン、エチレン乃至は炭素数4以上のα−オレフィンプロピレンランダムコポリマー、エチレン乃至は炭素数4以上のα−オレフィンプロピレンブロックコポリマーなどや、必要に応じて改質目的として、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、スチレン系などのエラストマー、石油樹脂やシクロオレフィン系樹脂など、ポリエチレンワックスや石油ワックス、エチレン−酢ビ共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂などの異なる樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することも出来る。
これらを添加するその指標としては、成分(A1)のプロピレン−α−オレフィン共重合体の全体の含有量が1〜20重量%の間で添加量を制御されることが好ましい。
【0063】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体を得るためには、押出機内で該樹脂材料に発泡剤を添加して溶融混練する方法を用いるのが好ましい。
発泡剤としては、例えば、無機系発泡剤、揮発性発泡剤、分解型発泡剤が用いられ、これらは混合して用いることができる。無機系発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、空気、窒素等が挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素類及び環式脂肪族炭化水素類が、モノクロロジフロロメタン、トリクロロフロロメタン、ジクロロジフロロメタン、ジクロロテトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、クエン酸、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0064】
ポリプロピレン系樹脂組成物への発泡剤の添加量は、発泡剤の種類や設備、運転条件、製品の発泡倍率等によって異なるが、発泡倍率2〜8倍(発泡密度0.11〜0.46g/cm)の発泡シートを得るためには、ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、1〜10重量部を添加するのが好ましい。発泡に適した材料は、適切なガス量において、適度な発泡倍率を得ることが出来る材料が必要となる。
【0065】
発泡の状態は、連続気泡率、独立気泡率の値で表すことがひとつの指標となる。特に、発泡シートを2次加工する際には、連続気泡率は、30%以下、好ましくは15%以下である。30%より大きいと、2次加熱の際のセルの膨張が表面に影響を与えるほど大きくなり、容器の外観に影響を与えやすい。
【0066】
また、平滑な外観、容器成型などの2次成型性を付与するためには、ポリプロピレン系樹脂発泡シートと、熱可塑性樹脂組成物からなる非発泡層とを共押出してもよい。共押出方法としては公知の方法が用いられるが、一例としてダイス内で積層するマルチマニホールド方式や、ダイスに流入させる直前に積層するフィードブロック方式(コンバイニングアダプター方式)等を挙げることができる。
【0067】
非発泡層を構成する熱可塑性樹脂組成物とは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレン乃至は炭素数4以上のα−オレフィンプロピレンランダムコポリマー、エチレン乃至は炭素数4以上のα−オレフィンプロピレンブロックコポリマー、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどが挙げられるが、発泡層との親和性、共押出特性から、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、プロピレンエチレンブロックコポリマー、プロピレンエチレンランダムコポリマー、及びこれらの混合物が好ましく、更に好ましくは、押出し時の発熱を抑える意味からホモポリプロピレン、プロピレンエチレンブロックコポリマー、プロピレンエチレンランダムコポリマー、及びこれらの混合物が良い。
【0068】
また、非発泡層には、必要に応じて一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤、難燃剤等を配合することができる。また、充填材として無機系または有機系の充填材があるが、無機系の充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、ベントナイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンファイバー、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、炭素繊維、軽石粉、雲母、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどが上げられ、有機系の充填材としてはポリメチルメタアクリレート樹脂ビーズ、セルロース繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、籾殻、木粉、おから、タピオカ粉末、米粉、ケナフ繊維などを添加することも出来る。
【0069】
上記のように構成される、ポリプロピレン系樹脂発泡成形体は、発泡剤を添加したポリプロピレン系樹脂組成物を押出すための単独の押出機をスリットダイもしくはサーキュラーダイに接続し、スリットダイ(T型ダイス、コートハンガー型など)もしくはサーキュラーダイから押出してポリプロピレン系樹脂発泡シートを得ることができる。
【0070】
発泡シートの発泡倍率は、好ましくは1.5〜30倍程度である。また、発泡シートの厚みは、特に限定しないが、0.3mm〜10mm程度が好ましく、更に好ましくは0.5mm〜5mmである。
さらに、発泡シートの平均気泡径が300μm以下であることが好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましい。平均気泡径が300μmを大きく超えると、ポリプロピレン系発泡シートや該シートを熱成形する際に熱成形体に対し、穴明き等の外観不良が発生するため好ましくない。また、連続気泡率は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下である。
【0071】
また、発泡層以外の非発泡層として、1)非発泡層を表面と裏面に、顔料を変えるなど異なる配合で積層する、2)非発泡層を複数層に分割し、バリア層、接着層を設ける、3)発泡層を2層に分割し、中心層に他の層を設けるなど、多様なバリエーションの非発泡層を配してもよい。
多層発泡シートの厚みは、特に限定しないが、0.3mm〜10mm程度が好ましく、更に好ましくは0.5mm〜5mmである。
【0072】
次いで、ダイスより押出された単層または多層の発泡シートは、公知の方法、例えばポリシングロール、エアーナイフ、マンドレルなどにより冷却固化され、その後巻き取り機にて巻き取られる、もしくは裁断機にて所定の寸法にカットされる。冷却固化後の後処理に関しては、特に制限は無く、例えばコロナ処理、火炎処理、フレーム処理、プラズマ処理などの極性基付与処理工程、コーターロールによる防曇剤、帯電防止剤などのコーティング処理工程、フィルム貼合、印刷、塗装などが使用可能である。
特に、フィルム貼合は、2次成型時前に貼合する熱成形前ラミネート法、発泡積層シート成形時の冷却時に貼合する熱ラミネート法、いったん発泡積層シートを冷却した後、再度加熱ロールなどで加温して貼合する方法などがあるが、いずれの公知の方法により貼合することが可能である。
【0073】
貼り合わせるフィルムの種類も、CPP(無軸延伸ポリプロピレン)フィルム、及びその印刷フィルム、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)フィルムなどを積層したフィルムなど、特に限定はないが、ポリオレフィン系と接着しやすい、貼合面にポリオレフィン系樹脂を配したフィルム、又は塩素化ポリプロピレンや低分子量のポリオレフィンを混合したインク、接着剤などを塗布したフィルムを用いることが好ましい。
【0074】
本発明の発泡シートは、容器などの成形品に2次成型するのに極めて好適である。2次成型に用いられる成形法には、通常任意の公知の方法である真空圧空成形法、真空成形法、プラグ成形法、プレス成形法、両面真空成形法などがある。
【0075】
本発明において、単独、ないしは積層状態にてパリソン状に押出された樹脂を、ブロー成型法にて成型することが出来る。ブロー成型の方法としては特に制限されず、通常、ダイレクトブロー成形機やアキューム式ブロー成形機などを用い、ポリプロピレン系樹脂発泡中空成型品を得る方法が挙げられる。
【0076】
このような成形法により得られた成形品としては、文房具ファイル、食品容器、飲料カップ、ディスプレイ筺体、自動車部品、工業産業用部品、トレーなどあらゆる分野に適用可能である。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、ポリプロピレン系(多層)発泡シートその構成成分についての諸物性は、下記の評価方法に従って測定、評価し、使用した樹脂として下記のものを用いた。
【0078】
1.物性評価
(1)MFR(単位:g/10分):
JIS−K6921−2附属書に準拠し測定した。条件は、温度230℃、荷重21.18Nにて測定を行った。
(2)成分(A1)、成分(B1)及び成分(B2)の固有粘度、分子量分布、エチレン−α−オレフィン含有量、エチレン−α−オレフィン中のα−オレフィン含有量の測定方法:上述した方法に準じて測定した。
【0079】
(3)歪硬化指数λmax(10)の測定方法
下記の装置、条件にて、前述した方法で導出した。
(a)装置:Rheometorics社製「Ares」
(b)冶具:ティーエーインスツルメント社製
「Extentional Viscosity Fixture」
(c)試験温度:180℃
(d)歪み速度:10/sec
(e)サンプル試験片:15mm×10mm、厚さ0.5mmのプレス成形シート
【0080】
2.使用材料(材料A−1)
1.固体触媒成分(c)の製造
充分に窒素置換した内容積50リットルの攪拌機付槽に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン、20リットルを導入し、次いでMgClを10モル、Ti(o−n−Cを20モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を12リットル導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、前記攪拌機付槽を用いて該槽に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを5リットル導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で3モル導入した。次いでn−ヘプタン2.5リットルにSiCl5モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。
次いで前記攪拌機付槽へn−ヘプタン2.5リットル導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して、70℃、30分間で導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでTiCl2リットルを導入して110℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄して固体触媒成分(c)を製造するための固体成分(c1)を得た。この固体成分のチタン含量は2.0重量%であった。
次いで、窒素置換した前記攪拌機付槽にn−ヘプタンを8リットル、上記で合成した固体成分(c1)を400グラム導入し、成分(c2)としてSiCl0.6リットルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、さらに成分(c3)として(CH=CH)Si(CH0.54モル、成分(c4)として(t−C)(CH)Si(OCH0.27モルおよび成分(c5)としてAl(C1.5モルを順次導入して30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする成分(c)390gを得た。このもののチタン含量は、1.8重量%であった。
【0081】
2.プロピレン系ブロック共重合体の製造
内容積400リットルの攪拌機付きステンレス鋼製オートクレーブをプロピレンガスで充分に置換し、重合溶媒として脱水及び脱酸素したn−ヘプタン120リットルを入れた。次に温度70℃の条件下、トリエチルアルミニウム30g、水素12リットル、および前記触媒成分(c)を10g加えた。オートクレーブを内温75℃に昇温した後、プロピレンを20.7Kg/Hr、水素を20.6L/Hrで供給。200分後にプロピレン、水素の供給を停止した。プロピレン、水素の供給の間、器内の圧力は徐々に上昇し、最終的に0.46MPaGまで上昇。その後、残重合を行い、器内の圧力が0.35MPaになった時点で、反応器内のガスを0.03MPaGまでパージしプロピレン重合体を得た(前段重合工程)。
次いで、オートクレーブを内温65℃にセットした後、n−ブタノールを16.0cc導入、次いで、プロピレンを2.4Kg/Hr、エチレンを1.6Kg/Hrで供給。90分後エチレン、プロピレンの供給を停止、重合を終了した。圧力はエチレン、プロピレン供給開始時0.03MPaGであったが、供給停止時0.09MPaGであった(後段重合工程)。
得られたスラリーは、次の攪拌機付き槽に移送し、ブタノールを2.5リットル加え、70℃で3時間処理し、更に次の攪拌機付き槽に移送、水酸化ナトリウム20gを溶解した純水100リットルを加え、1時間処理した後、水層を静置後分離、触媒残渣を除去した。スラリーは遠心分離機で処理し、ヘプタンを除去、80℃の乾燥機で3時間処理しヘプタンを完全に除去、59.7Kgのサンプルを得た。
【0082】
得られた材料は、プロピレン−α−オレフィン共重合体部分の全体に対する割合が6.6重量%、α−オレフィンとしてエチレンの44.7重量%、固有粘度ηが14.8dl/g、重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が13.3、プロピレン単独重合体部分の全体に対する割合が93.4重量%、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR(230℃、2.16kg荷重)が12g/10分、180℃伸張粘度測定において歪硬化性を示し(歪硬化性「有」)、その歪硬化度(λmax(10))が2.0のポリプロピレン系樹脂組成物であった。
【0083】
(材料A−2〜7、9〜11)
材料A−1と同様の方法にて、水素量、エチレン量を調整することにより、表1に示す組成、物性の材料を得た。
(材料A−8)
ホモポリプロピレン(日本ポリプロ社製、商品名「ノバテック(登録商標)PP MA3」、MFR(230℃、2.16kg荷重):10g/10分)を用いた。
上記材料A−1〜A−11の特性を下記表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
(材料B−1)
内容積200リットルのステンレス製オートクレーブにn−ヘプタン70リットル、Mg担持型チタン触媒(特開平4−348113の実施例1と同様にして調製された固体触媒)3g、およびトリエチルアルミニウム10gを加え、70℃に昇温し、水素とプロピレンを供給してMFR=50g/10分のプロピレン単独重合体を全重合体の70重量%製造した。次に水素をパージしてエチレンとプロピレンを供給し、エチレン含量10重量%、重量平均分子量480万のエチレン・プロピレン共重合体を全重合体の30重量%製造して樹脂組成物を得た。
【0086】
(材料B−2〜B−9)
材料B−1において、プロピレン単独重合(前段重合工程)およびエチレン・プロピレン共重合(後段重合工程)の重合条件を変更した以外、同様の方法によって各インデックスの樹脂組成物を得た。
上記材料B−1〜B−9の特性を下記表2に示す。
【0087】
【表2】

【0088】
上記記載の各材料Aおよび材料Bは、添加剤としてフェノ−ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン(商品名「IRGANOX1010」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1重量部、フォスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名「IRGAFOS168」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.1重量部、並びに中和剤であるステアリン酸カルシウム(商品名「カルシウムステアレ−ト」、日油株式会社製)0.1重量部を、各々のプロピレン系樹脂組成物100重量部に添加し、200℃の2軸押出機にて溶融混練して、各成分のペレットを得た。
【0089】
(実施例1−1〜1−3、1−7〜1−9、比較例1−1〜1−5)
スリットダイによる発泡押出評価
表3に記載の各成分のペレットを使用し、発泡核剤として発泡剤(重曹−クエン酸系化学発泡剤、クラリアント社製、商品名「CF40E」)を0.5重量部ドライブレンドで混ぜた。65φmmの押出機(プラ技研社製、スクリュー先端温度180℃)を用いて、押出量約60kg/時間で押出した。押出機前半において、まず溶融混練可塑化を行い、次いで、押出機中間部分にて炭酸ガス定量供給装置(昭和炭酸社製)より、時間当たり0.23kgで炭酸ガスを注入し、更に押出機の残存部分で炭酸ガスを可塑化樹脂中に混練することにより、炭酸ガスを均一に分散させた発泡剤含有樹脂を得、その後750mm幅のTダイ(設定温度180℃)からポリシングロールにキャストし、冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡シートのサンプルを得た。
その後、そのシートを用いて、発泡倍率、連続気泡率、独立気泡率、気泡形態を観察した。なお、添加する炭酸ガス量は最低2.5倍の範囲が得られる程度のガス量であるため、これらの範囲を下回る場合、膨らみにくい材料、すなわち発泡に適さない材料と判断できる。
【0090】
・連続気泡率(単位:%)と独立気泡率(単位:%):
測定装置としてエアーピクノメーター(東芝ベックマン社製、型式930)を用いて、空気比重を測定し、多層による非発泡層の堆積を除外し、以下の式により連続気泡率、独立気泡率を測定した。
連続気泡率=(見掛発泡層体積−測定値)×100/見掛発泡層体積
独立気泡率=(測定値−発泡層重量/0.9)/見掛発泡層体積×100
【0091】
熱成形による評価
上記で得られたシートを用い、浅野研究所社製真空圧空成形装置を用い、上下ヒーター温度380℃にて、タテ22cm、ヨコ22cm、深さ5cmの円形容器を作成し、容器成形性、外観を目視にて評価した。
評価は、以下の基準に拠った。
・容器成型性:
○:成型時の垂れ下がりや、加熱時の破膜等、問題なく成型できた。
△:垂れ下がりが多少あるが、加熱時の破膜は起こらず、成型は可能であった。
×:垂れ下がりが大きい、ないしは加熱時の破膜が生じ、成型が不可能であった。
・容器外観:
○:容器の外観に凹凸、ブリッジ等は生じず、肉厚の維持も適当で良好な容器が得られた。
△:ブリッジ等が多少生じる、容器の外観の凹凸がやや生じる、肉厚の維持がやや不足だが、使用可能な容器が得られた。
×:ブリッジ等が生じる、容器の外観の凹凸が激しい、肉厚の維持が不十分な容器が得られた。
以上の結果を下記表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
(実施例1−4〜1−6、比較例1−6〜1−9)
ブロー成形機による発泡押出評価:
表4に記載の成分のペレットを使用し、発泡核剤として前記発泡剤「CF40E」(重曹、クエン酸系化学発泡剤)を3重量部ドライブレンドで混ぜ、ダイス設定温度170℃としたダイレクトブロー成形機に供給し、発泡状態のパリソンを得た。
【0094】
・成形品表面外観:
得られた発泡状態のパリソンの表面平滑性を、次の3段階で評価した。
○:手で表面をなでてすべすべするもの
△:手で表面をなでてざらざらするもの
×:手で表面をなでて凹凸が感じられるもの
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
・発泡倍率:
原料のポリプロピレン系樹脂組成物の比重と得られた発泡状態のパリソンの比重との比を発泡倍率とした。比重は水中置換法によって求めた。
発泡倍率は1.8倍以上が良好と判断できる。
以上の評価結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
(実施例2−1〜2−7、12〜14、比較例2−1〜2−12)
スリットダイによる発泡押出評価
表3〜5に記載の各成分のペレットを使用し、各表に記載の比率にてドライブレンドした後、発泡核剤として発泡剤(重曹−クエン酸系化学発泡剤、クラリアント社製、商品名「CF40E」)を0.5重量部ドライブレンドで混ぜた。65φmmの押出機(プラ技研社製、スクリュー先端温度180℃)を用いて、押出量約60kg/時間で押出した。押出機前半において、まず溶融混練可塑化を行い、次いで、押出機中間部分にて炭酸ガス定量供給装置(昭和炭酸社製)より、時間当たり0.23kgで炭酸ガスを注入し、更に押出機の残存部分で炭酸ガスを可塑化樹脂中に混練することにより、炭酸ガスを均一に分散させた発泡剤含有樹脂を得、その後750mm幅のTダイ(設定温度180℃)からポリシングロールにキャストし、冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡シートのサンプルを得た。
その後、そのシートを用いて、発泡倍率、連続気泡率、独立気泡率、気泡形態を観察した。なお、添加する炭酸ガス量は最低2.5倍の範囲が得られる程度のガス量であるため、これらの範囲を下回る場合、膨らみにくい材料、すなわち発泡に適さない材料と判断できる。
【0097】
・連続気泡率(単位:%)と独立気泡率(単位:%):
測定装置としてエアーピクノメーター(東芝ベックマン社製、型式930)を用いて、空気比重を測定し、多層による非発泡層の堆積を除外し、以下の式により連続気泡率、独立気泡率を測定した。
連続気泡率=(見掛発泡層体積−測定値)×100/見掛発泡層体積
独立気泡率=(測定値−発泡層重量/0.9)/見掛発泡層体積×100
【0098】
熱成形による評価
上記で得られたシートを用い、浅野研究所社製真空圧空成形装置を用い、上下ヒーター温度380℃にて、タテ22cm、ヨコ22cm、深さ5cmの円形容器を作成し、容器成形性、外観を目視にて評価した。
評価は、以下の基準に拠った。
・容器成型性:
○:成型時の垂れ下がりや、加熱時の破膜等、問題なく成型できた。
△:垂れ下がりが多少あるが、加熱時の破膜は起こらず、成型は可能であった。
×:垂れ下がりが大きい、ないしは加熱時の破膜が生じ、成型が不可能であった。
・容器外観:
○:容器の外観に凹凸、ブリッジ等は生じず、肉厚の維持も適当で良好な容器が得られた。
△:ブリッジ等が多少生じる、容器の外観の凹凸がやや生じる、肉厚の維持がやや不足だが、使用可能な容器が得られた。
×:ブリッジ等が生じる、容器の外観の凹凸が激しい、肉厚の維持が不十分な容器が得られた。
以上の結果を下記表5〜7に示す。
【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
【表7】

【0102】
(実施例2−8〜2−11、2−14〜2−15、比較例2−13)
5.ブロー成形機による発泡押出評価:
表8に記載の成分のペレットを使用し、表6に記載の比率にてドライブレンドした後、発泡核剤として前記発泡剤「CF40E」(重曹、クエン酸系化学発泡剤)を3重量部ドライブレンドで混ぜ、ダイス設定温度170℃としたダイレクトブロー成形機に供給し、発泡状態のパリソンを得た。
【0103】
・成形品表面外観:
得られた発泡状態のパリソンの表面平滑性を、次の3段階で評価した。
○:手で表面をなでてすべすべするもの
△:手で表面をなでてざらざらするもの
×:手で表面をなでて凹凸が感じられるもの
この場合、○および△が実用性を有すると、判断されるレベルである。
・発泡倍率:
原料のポリプロピレン系樹脂組成物の比重と得られた発泡状態のパリソンの比重との比を発泡倍率とした。比重は水中置換法によって求めた。
発泡倍率は1.8倍以上が良好と判断できる。
・耐ドローダウン性
ダイス設定温度170℃で発泡状態のパリソンを長さ1.0m押し出した時のパリソン下部肉厚に対するパリソン上部肉厚の比が0.8〜1.0のものを良好で○、0.8未満のもの又は成形不良若しくは成形不能のものを不良で×とした。
以上の評価結果を表8に示す。
【0104】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、独立気泡性と押出特性に優れ、軽量且つ剛性感のある、かつリサイクル性に優れた発泡成形品を得ることができるので、文房具ファイル、食品容器、飲料カップ、ディスプレイ筺体、自動車部品、工業産業用部品、トレーなどに好適に利用でき、その工業的価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)及び成分(B)の少なくとも2成分からなり、成分(A)及び成分(B)の合計100重量%基準で、成分(A)の含有量が100重量%又は100重量%未満70重量%以上、成分(B)の含有量が0重量%又は0重量%を超え30重量%以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
・成分(A):
下記(A−1)〜(A−3)の条件を満たすプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(A1))とプロピレン単独重合体(成分(A2))の少なくとも2成分からなり、成分(A1)及び成分(A2)を多段重合法によって重合して得られ、成分(A1)の含有量が1〜20重量%、成分(A2)の含有量が99〜80重量%(ただし、成分(A1)及び成分(A2)の合計を100重量%とする。)であり、かつメルトフローレートが5〜20g/10分の範囲にあり、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定においてひずみ硬化性を示すプロピレン系樹脂組成物。
(A−1)α−オレフィン含量が15〜85重量%(ただし、成分(A1)を構成するモノマーの全量を100重量%とする)
(A−2)固有粘度ηが5〜20dl/g
(A−3)Mw/Mnが5〜15
・成分(B):
MFRが10〜1000g/10分の、プロピレン単独重合体またはプロピレン以外のα−オレフィン含量が1重量%未満のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B1))と、重量平均分子量が50万〜1000万、プロピレン以外のα−オレフィンの含量が1〜15重量%のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(B2))の少なくとも2成分からなり、成分(B1)及び成分(B2)を多段重合法によって重合して得られ、成分(B1)の含有量が50〜90重量%、成分(B2)の含有量が50〜10重量%(ただし、成分(B1)及び成分(B2)の合計を100重量%とする。)であり、
かつ、下記(B−1)〜(B−3)の条件を満たすプロピレン系樹脂組成物。
(B−1)MFRが0.1〜20g/10分
(B−2)溶融張力(MT)とMFRの関係が以下の式を満たす
logMT>−0.97×logMFR+1.23
(B−3)最長緩和時間(τd)が100秒以上
【請求項2】
成分(A)の含有量が100重量%、成分(B)の含有量が0重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が97〜70重量%、成分(B)の含有量が3〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)は、温度180℃、歪み速度10s−1において測定した伸張粘度測定における歪硬化指数λmax(10)が1.2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、これを押出発泡成形して成形されたポリプロピレン系樹脂発泡成形体。
【請求項6】
ポリプロピレン系樹脂発泡成形体が、スリットダイまたはサーキュラーダイから押出されて成形された発泡シートである請求項5に記載のポリプロピレン系樹脂発泡成形体。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡シートを熱成形により成形されたポリプロピレン系樹脂発泡熱成形体。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物に発泡剤を添加し、これをパリソン状に押出し、その後金型内においてブロー成形により成形されたポリプロピレン系樹脂発泡中空成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−100491(P2013−100491A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−229470(P2012−229470)
【出願日】平成24年10月17日(2012.10.17)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】