説明

ポリベンザゾールブロックコポリマー

【課題】先行技術のスルホン化ポリベンザゾールにおいて、スルホン化を高度にして、イオン伝導度を最大化する試みがなされるが、同時に、プロトン性基の存在が、受け入れられない程度の膨張又は水における若しくはメタノールにおける完全な溶解及び膜の十分でない機械的特性を引き起こす。
【解決手段】スルホン化ベンズイミダゾール及び非スルホン化ベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールのポリベンザゾールブロックコポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体ポリマー電解質膜適用に好適な、スルホン化ベンズイミダゾール及び非スルホン化ベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールのポリベンザゾールブロックコポリマー、それからの固体ポリマー電解質膜、それからの固体ポリマー電解質ドープ(doped)膜、及びそれからの燃料電池に関する。
燃料電池は、実用的な及び多用途の電源として浮上し、それは、競争的な技術より、一層効率的で及び環境的にダメージの少ないものであり得る。携帯電話及び電気自動車から宇宙船及びマルチ-メガワットパワーステーション(multi-megawatt power station)まで、燃料電池のための適用電位(application potential)は、急速に成長している。燃料電池は、バッテリーと多く共通し、それは、また、化学形態において電気内に蓄えられるエネルギーを転換する。バッテリーとは対照的に、しかしながら、それらは、外面的に供給された燃料を酸化し及び従って再充電する必要がない。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、種々の電解質、燃料及び運転温度を用いる数々の方法において作ることができる。例えば、燃料、例えば、水素又はメタノールは、直接、燃料電池の電極に提供され得又は燃料、例えば、メタン又はメタノールは、電池それ自身の外側にある水素濃厚ガス混合物に転換され得(燃料改質)及び続いて燃料電池に提供され得る。空気は、大部分の燃料電池における酸素源であるが、いくつかの適用において、酸素は、過酸化水素分解により又は極低温記憶装置系から得られる。
【0003】
理論上、電解質、燃料、酸化剤、温度などの無数の組み合わせがあるけれども、実用的なシステムは、多くのケースにおいて、水素又はメタノールを燃料源として及び酸素又は空気を酸化剤として使用する固体ポリマー電解質系により特徴付けられる、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)技術をベースとする。更に、PEMFCは、他のタイプの燃料電池と比較して小型化され得及びモバイル電源として又は小さな容量の電源として適切である。
PEMFCの中心を形成するポリマー電解質膜は、プロトン交換膜として作用し、及び優れたイオン伝導度、物理的強度、気体バリヤ性、化学的安定性、電気化学的安定性及び熱安定性を、燃料電池の運転条件で有さなければならない。
PEMFCにおいて現在使用されている膜は、ペルフルオロ化スルホン酸(PFSA)ポリマー、例えば、デュポン製のナフィオン(NAFION)樹脂である。たとえ、そのような膜が、良好な性能、酸化的及び還元的双方の環境における相当な長期間の安定性及び十分に水和された条件下(80〜100%の相対湿度、以降RH)で価値あるプロトン伝導性を証明していても、それらは、低温度(80℃まで)に制限され、高度な水管理(システムの複雑さ)を必要とし、及びメタノールクロスオーバーに起因して、DMFC(直接メタノール型燃料電池)のために非実用的である。
偉大な努力が、学術及び産業研究所において、100℃より上の温度で作動するためのプロトン交換膜を開発するためになされた。
【0004】
圧倒的に有望なアプローチは、ポリベンズイミダゾール(PBI)/H3PO4酸ドープ膜であり、それは、外的加湿を必要とせず、高プロトン伝導性(150℃を超える温度で)を有し、生産水の効果がほとんどなしで、ほぼゼロの電気浸透水抗力及びナフィオン(登録商標)樹脂と比較して少なくとも10倍低いメタノール透過性を有する。
しかしながら、現在のPBI/H3PO4ドープ膜は、重大な障害に悩まされている。十分な伝導性を達成するのに必要とされる高酸ドーピングレベルのために、機械的強度は、可塑化することに起因して制限される。また、酸は、時間とともに、特に、それが液体生産水により洗浄される時の開始及び中断の間消耗される。
ポリベンザゾール(PBZ)ポリマーは、有意な固有イオン伝導度を有さないが、それらは、プロトン性の基、一般には、スルホン酸基により改質されて、スルホン化ポリベンザゾール(sPBZ)、特には、スルホン化ポリベンズイミダゾール(sPBI)を提供し、それは、低い又はゼロのドーピングレベルで使用される。
従って、US 2004/0062929(Toyo Bosekiによる)は、燃料電池ポリマー電解質膜のための、スルホン酸又はホスホン酸基を有するベンザゾールホモ-及びコポリマーを開示し、その中において、イオン基は、ジカルボン酸の残基に結合される。
【0005】
実施例5は、スルホン化及び非スルホン化ポリベンズイミダゾールの繰り返し単位を含む、ブロックコポリマーを提供する、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン(以降、TAS)の及びテレフタル酸(以降、TPA)の重合により、その後のTAS及び2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム塩(以降、STA)の更なる添加により得られるポリマーの製造を記載する。このブロックコポリマーから得られる膜のイオン伝導度は、STA及びTPAの混合物でTASを重合すること(スキーム1参照)により製造される対応ランダムコポリマーのイオン伝導性より等級が1オーダー低いものだった。
【0006】
【化1】

【0007】
ここより下の一般式(A)に対応するイオン基(−SO3H及び−PO32)を有するポリベンザゾールコポリマーはまた、JP 2002/201269(Toyobo Co. Ltd.による)において記載される:
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Zは、スルホン酸又はホスホン酸基であり、mは、1〜3の整数であり、nは、0〜1の間に含まれ並びにX1及びX2は、同一又は異なっており及び各々独立して−S−、−O−、−NH−又はここより下の構造から選択される基である):
【0010】
【化3】

【0011】
WO 2004/034499(Celanese Venturesによる)は、1又は数個の芳香族又はヘテロ芳香族テトラアミノ又はビス(オルトアミノヒドロキシ)又はビス(オルトアミノチオール)化合物(XX−モノマー)を1又は数個の芳香族ジカルボン酸(YY−モノマー)と重合することで得られる、スルホン酸含有ポリアゾール(コ)ポリマーを開示し、その中において、XX−又はYY−モノマーの少なくとも一部は、少なくとも1つのスルホン酸基を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許明細書2004/0062929
【特許文献2】特願2002/201269
【特許文献3】国際特許出願2004/034499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、先行技術のスルホン化ポリベンザゾールにおいて、スルホン化を高度にして、イオン伝導度を最大化する試みがなされるが、同時に、プロトン性基の存在が、受け入れられない程度の膨張又は水における若しくはメタノールにおける完全な溶解及び膜の十分でない機械的特性でさえ引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従って、上記の問題は、スルホン化ベンズイミダゾール及び非スルホン化ベンゾオキサゾール又はベンゾチアゾールのポリベンザゾールブロックコポリマーにより飛躍的に克服される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ポリベンザゾールブロックコポリマーに沿う酸度関数の位置、数、及び分布の制御は、有利に、より安定的な構造を提供し及び付随する顕著な特性、例えば、伝導性及び溶解性の調整を可能にする。
本発明の別の目的物は、前記ポリベンザゾールブロックコポリマーを含むポリベンザゾールポリマー組成物である。
本発明の別の目的物は、前記ポリベンザゾールブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質膜である。
本発明の別の目的物は、前記ポリベンザゾールブロックコポリマーを含むドープ固体ポリマー電解質膜である。
【0016】
更に、本発明の別の目的物は、前記ポリベンザゾールブロックコポリマーを含む燃料電池である。
水、水/メタノール及びメタノール双方における低膨張性、低浸透性、不溶性、低減された相対湿度でさえ高いイオン伝導度、その顕著な熱耐性の結果、本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーは、有利に、燃料電池作動温度ウインドウの上昇を可能にし、従って、増加された触媒活性を可能にし、電極反応速度論をスピードアップし、改良された燃料電池効率及び貴金属負荷の低減を与え、温度管理を簡略化し、一層簡単な及び一層効率的な冷却効率を可能にし;及び金属水素化物ストレージシステムからの水素放出又は(メタノール又はメタン間接燃料電池のための)内部水蒸気改質装置への熱供給を含む、熱回収における増加された値、上記の全てを先行技術のポリマーの欠点なしで可能にする。
良好な溶解特性の結果、本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーは、簡単に、造形品及びフィルムにされるであろう。
本発明のブロックコポリマーを含む固体ポリマー電解質膜及び/又はドープ膜は、顕著な伝導性、溶剤及び温度耐性、機械的特性及び水及び/又はメタノールに対する低減された浸透性を、先行技術の膜の欠点なしに有する。
高運転温度の結果として、本発明のブロックコポリマーを含む燃料電池の運転は、低減された加湿の程度及び/又は制限されたドーピングレベルで、複雑な水管理システムの必要なしに、内部の加湿の程度の自主規制のおかげで実行することができ、従って簡略化されたスタック構築及び改善された信頼性を可能にする。
【0017】
本発明に従って、第一目的は、以下のものを含むポリベンザゾールブロックコポリマーを提供することである:
−繰り返し単位(R)を含む少なくとも1つのブロック(B1)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、少なくとも1つのベンズイミダゾール基(式1a及び1b)及び少なくとも1つのスルホン酸基(式2)を含むもの[繰り返し単位(R1)]:
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、式1aにおけるEは、置換又は未置換炭素原子又は窒素原子であってもよく、及び式1a及び1bにおけるQは、水素原子又はスルホン酸基を含む基であってもよい);及び
−繰り返し単位(R’)を含む少なくとも1つのブロック(B2)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、ベンゾオキサゾール基(式3a及び3b) 及びベンゾチアゾール基(式4a及び4b)より選択される少なくとも1つのベンザゾール基を含むもの[繰り返し単位(R2)]:
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、式3a及び4aにおけるE’及びE’’は、各々、独立して、置換又は未置換炭素原子又は窒素原子であってもよく、及びブロック(B2)は、実質上、スルホン酸基を有さない)。
繰り返し単位(R1)は、有利には、繰り返し単位(R1−a)、繰り返し単位(R1−b)、繰り返し単位(R1−c)、繰り返し単位(R1−d)及びそれらの混合物より選択される:
【0022】
【化6】

【0023】
(式中、
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−
【0024】
【化7】

【0025】
基は、Ar1、Ar2又はAr3基における炭素原子のいずれか1つに結合されていてもよく;
−aは、0〜2の整数であり;
−bは、1又は2であり;
−dは、0〜2の整数であり;
−eは、1又は2であり;
−fは、0〜2の整数であり;
−Ar1は、典型的には:
【0026】
【化8】

【0027】
であり、及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar2は、典型的には:
【0028】
【化9】

【0029】
であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar3は、典型的には:
【0030】
【化10】

【0031】
であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Q’、Q’’、Q’’’基の各々は、独立して、水素原子又は以下より選択されるスルホン酸基を含む基のいずれかであってもよく:
【0032】
【化11】

【0033】
及びRaは、直鎖状又は分枝状アルキル、アルキルアリール、アリール又は−NO2基であり、mは、0〜10の整数であり、及びcは、1又は2であり、Y及びY’は、独立して、水素原子、フッ素原子、直鎖状又は分枝状炭化水素又はフッ化炭素C2-5鎖であり、及びk及びjは、独立して、1〜10の整数であり;
d及びfが、0である場合、Q’、Q’’及びQ’’’基の少なくとも1つが、少なくとも1つのスルホン酸基を含むという更なる要件を伴う)。
少なくとも1つのスルホン酸基を含むQ’、Q’’及び/又はQ’’’基は、好ましくは、以下のものより選択される:
【0034】
【化12】

【0035】
及びそれらの混合物。
好ましくは、繰り返し単位(R1)は、以下からなる基より選択される:
【0036】
【化13】

【0037】
及びそれらの混合物(式中、ここより上の式r1−i〜r1−vにおいて:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−aは、0〜2の整数であり;
−Ar1は、上記と同一の意味を有し;
【0038】
【化14】

【0039】
基は、それらが結合されるフェニル環の又はAr1基の炭素原子のいずれか1つに結合され得る)。
より好ましくは、繰り返し単位(R1)は、以下のものからなる基より選択される:
【0040】
【化15】

【0041】
(式中、ここより上の式(r1−vi)〜(r1−viii)において、→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示す)。
ブロックB1の繰り返し単位(R)の50質量%より多くが、繰り返し単位(R1)である。好ましくは、繰り返し単位(R)の75質量%より多くが、繰り返し単位(R1)である。更により好ましくは、ブロックB1は、繰り返し単位(R1)以外の繰り返し単位を含まない。
ブロックB1は、有利には少なくとも3、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも10の繰り返し単位(R)を含む。
ブロックB1は、有利には最大150、好ましくは最大100、より好ましくは最大50の繰り返し単位(R)を含む。
ブロックB1の繰り返し単位の数は、特に、当該技術分野における当業者によく知られる方法によるNMR光分法により決定され得る。これらの方法は、典型的に、末端基の誘導体化を必要とする。
ブロックB1は、有利には、非晶質である。
ブロックB1は、硫黄の窒素に対するモル比(S/N)が、有利には、少なくとも0.25、好ましくは少なくとも0.5である。
ブロックB1は、イオン交換能が、有利には少なくとも2.0meq/g、好ましくは少なくとも2.5meq/g、より好ましくは少なくとも3.0meq/gである。
【0042】
少なくとも1つのブロックB1を含むプレポリマーは、特に、以下のいずれかを含む重合方法により製造され得る:
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(AA-タイプのモノマー)を、少なくとも1つのテトラアミンモノマー(BB-タイプのモノマー)と反応させること、その中において、モノマーの少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホン酸基を含み;又は
−重縮合条件において、少なくとも1つのスルホン酸基を有する少なくとも1つのジアミノカルボン酸モノマー(AB-タイプのモノマー)を反応させること;又は
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(AA-タイプのモノマー)と少なくとも1つのテトラアミンモノマー(BB-タイプのモノマー)との、及び少なくとも1つのジアミノ-カルボン酸モノマー(AB-タイプのモノマー)の混合物を反応させること、その中において、モノマーの少なくとも1つは、少なくとも1つのスルホン酸基を含む。
これらの重合方法において、少なくとも1つのモノマーは、少なくとも1つのスルホン酸基を含む。
代替案として、少なくとも1つのブロックB1を含むプレポリマーは、特に、以下のいずれかを含む重合方法で少なくとも1つのブロックB1’を含むプレポリマーを製造し、及び次いで、スルホン酸基を導入することによりブロックB1’を官能化することにより製造され得る:
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(AA-タイプのモノマー)を、少なくとも1つのテトラアミンモノマー(BB-タイプのモノマー)と反応させること、その中において、モノマーのいずれも、スルホン酸基を含まず;又は
−重縮合条件において、スルホン酸基を含まない少なくとも1つのジアミノカルボン酸モノマー(AB-タイプのモノマー)を反応させること;又は
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(AA-タイプのモノマー)と少なくとも1つのテトラアミンモノマー(BB-タイプのモノマー)との、及び少なくとも1つのジアミノカルボン酸モノマー(AB-タイプのモノマー)の混合物を反応させること、その中において、モノマーのいずれも、スルホン酸基を含まない。
【0043】
これらの代替の重合方法において、全モノマーは、スルホン酸基を含まず、それは、次いで官能化により導入される。
好ましくは、少なくとも1つのブロックB1を含むプレポリマーは、上述したように、少なくとも1つのモノマーが、少なくとも1つのスルホン酸基を含む重合方法により製造される。
本発明の目的のために、用語「ジカルボン酸モノマー」は、少なくとも2つのカルボン酸基をそれ自体で又はそれらの塩、エステル、又は酸ハロゲン化物形態において含む芳香族化合物を示すことが意図される。
ジカルボン酸モノマーとして用いられる芳香族ジカルボン酸及びそれらの誘導体は、特に制限されない。具体例として、芳香族ジカルボン酸、例えば、テレフタル酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ケトン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン及びそれらの誘導体、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどのアルカリ金属塩を、挙げることができる。
【0044】
少なくとも1つのスルホン酸基を含むジカルボン酸モノマーの具体例は、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジカルボキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、4,6−ジカルボキシ−1,3−ベンゼン−ジスルホン酸、4,4’−ジカルボキシ−3,3’−(ビフェニルスルホン)ジスルホン酸、及びそれらの誘導体、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどのアルカリ金属塩である。
本発明の目的のために、用語「テトラアミンモノマー」は、少なくとも2つのオルト-ジアミン基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族化合物を示すことが意図される。
テトラアミンモノマーとして用いることができる芳香族テトラアミン及びそれらの誘導体は、特に制限されないが、1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラミン、1,2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルチオエーテル、3,3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジアモノ(diamono)フェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ケトン、ビス(3,4−ジアミノフェノキシ)ベンゼン及びそれらの誘導体、例えば、酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩を、例として挙げることができる。
本発明の目的のために、用語「ジアミノ−カルボン酸モノマー」は、少なくとも1つのカルボン酸基をそれ自体で又はその塩、エステル、又は酸ハロゲン化物で、及び少なくとも1つのオルト-ジアミン基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族化合物を示すことが意図される。
【0045】
本発明の目的のために、用語「少なくとも1つのブロックB1を含むプレポリマー」は、上述したように、少なくとも1つのブッロクB1を含むポリマーを示すことが意図され、それは、本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーを製造するための先駆物質として使用され得る。
本発明の目的のために、用語「ブロックB1’」は、繰り返し単位(R”)を含むブロックを示し、該繰り返し単位の50%より多くが、少なくとも1つのベンズイミダゾール基(式5a及び5b)含み、スルホン酸基(式2)を含まない [繰り返し単位(R3)]:
【0046】
【化16】

【0047】
(式中、式5aにおけるE’’’は、置換又は未置換炭素原子又は窒素原子であってもよい)。
繰り返し単位(R3)は、有利には、繰り返し単位(R3−a)、繰り返し単位(R3−b)、及びそれらの混合物より選択される:
【0048】
【化17】

【0049】
(式中:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−Ar1、Ar2又はAr3は、上記と同一の意味を有する)。
AA-及びBB-タイプのモノマーの間の又はAB-タイプのモノマーの反応は、有利には、ポリリン酸(PPA)において100〜240℃の間の温度で行うことができる。PPAは、一般に、溶剤、触媒及び脱水剤として作用する。用語PPAは、一般式:
n+2n3n+1
(式中、nの平均値は、水と五酸化リン(P25)との比に依存する)の縮合リン酸オリゴマーの混合物を示すことが意図される。
PPAの組成は、以下において、PPAの全質量により分割されるP25の質量パーセントとして表される、P25の質量含有量(weight content)により記載されるであろう。
その方法を行う際、テトラアミンモノマー又はジアミノカルボン酸モノマーが、塩酸塩として入手可能である場合、実質的に化学量論量のAA-及びBB-タイプのモノマー及び/又は必要量のAB-タイプのモノマーが、有利には、最初に、40〜80℃で、PPA(50〜80質量%のP25)において加熱されて、有利に脱塩化水素に影響を与える。この工程は、有利には、減圧下で行われて、塩化水素の除去を促進する。脱塩化水素を完了した後、又はモノマーをPPAにおいてテトラアミンモノマー及び/又はジアミノカルボン酸モノマーがそれ自体で入手可能である場合において混合した後、追加量のP25及び/又はPPAが、必要に応じて添加されて、攪拌可能な混合物を提供し及び80〜86質量%のP25の範囲内でPPAの濃度を上昇させることができる。重縮合反応の間、追加量のPPAは、有利には、80〜86質量%の間で、好ましくは82〜84質量%のP25の間でPPAの濃度を維持するために添加され得る。段階的重合を行うのが好ましく、即ち、段階的加熱スケジュールが用いられる。そのようなスケジュールが好ましく、なぜなら、反応混合物を比較的高い重合温度に即座に暴露することにより、1以上のモノマーの分解が引き起こされ得るからである。特定の段階的加熱スケジュールの選択は、当該技術分野における当業者に明らかである。最適な重合温度は無条件に定義可能でないが、この最適条件が、モノマーの組み合わせに依存するので、温度は、少なくとも重合の1工程において、有利には100℃、好ましくは120℃、より好ましくは140℃を超える。典型的な加熱スケジュールは、例えば、60℃で4時間、100℃で2時間、160℃で24時間及び190℃で4時間である。
【0050】
モノマーがAA及びBBモノマーである場合、等モル量のAA-及びBB-タイプのモノマーが、一般に、一方がカルボン酸基を及び他方がオルト-ジアミン基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にし、化学量論に関してわずかに過度のAA-タイプのモノマー(典型的に10モル%未満、好ましくは5モル%未満)は、一般に、カルボン酸基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にし、及びわずかに過度のBB-タイプのモノマー(典型的に10モル%未満、好ましくは5モル%未満)は、一般に、オルト-ジアミン基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にする。
モノマーがABモノマーである場合、一方がカルボン酸基を及び他方がオルト-ジアミン基を末端とするプレ-ポリマーが、一般的に得られる。
従って、上記のような重合方法により、有利には、アゾール-形成基により停止される少なくとも1つのB1又はB1’ブロックを含むプレ-ポリマーを製造することが可能である。
本発明の目的のために、用語「アゾール-形成基」は、アゾール環、即ち、イミダゾール、チアゾール又はオキサゾール環を形成するために別の適切なアゾール-形成基と反応することができる基を示すことが意図される。
「アゾール-形成基」の例としては、それらの酸、酸ハロゲン化物、エステル又は塩形態におけるカルボン酸基、オルト-ジアミン基(式6)、オルト-アミノヒドロキシ基(式7)、オルト-アミノチオール基(式8)が挙げられる。
【0051】
【化18】

【0052】
スルホン酸基を導入することによるブロックB1’の官能化は、特に、当該技術分野における当業者によく知られる任意の方法、例えば、芳香族環のスルホン化、スルフィン化(sulfination)、スルホアルキル化などにより行われ得る。
ブロックB1’のスルホン化は、有利には、ブロックB1’を硫酸又はクロロスルホン酸の混合物で処理して、スルホン化ブロックB1を得ることにより達成され得る。
ブロックB1’のスルフィン化は、有利には、ブロックB1’を、強塩基で、好ましくは水素化物、例えば、水素化ナトリウム又は金属アルキル、例えば、nブチルリチウムで、無水非プロトン性溶剤、例えば、DMSOにおいて処理して、ブロックB1’のポリアニオンを形成すること、及び得られたポリアニオンを、SO2で低温度(典型的には−30〜−80℃)で処理し、次いで、酸化剤、例えば、H22、NaOCl、KMnO4などで処理して、対応するスルホン化ブロックB1を得ることにより達成され得る。
ブロックB1’のスルホアルキル化は、有利には、ブロックB1’を、強塩基で、好ましくは、水素化物、例えば、水素化ナトリウム又は金属アルキル、例えば、nブチルリチウムで、無水非プロトン性溶剤、例えば、DMSOにおいて処理して、ブロックB1’のポリアニオンを形成すること、及び得られたポリアニオンを、適切なスルトン(sultone)化合物、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,2,2−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−1−トリフルオロメチルエタンスルホン酸スルトンなどで又はハロメチル−ベンゼンスルホネート塩、例えば、4−(ブルモメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムで、25〜150℃の温度で処理して、対応するスルホン化ブロックB1を得ることにより達成され得る。
【0053】
本発明の目的のために、用語「実質的にスルホン酸基を含まないブロックB2」は、ブロックB2がスルホン酸基を含まないモノマーから製造されるということを意味すると理解される。
好ましくは、ブロックB2は、完全にスルホン酸基を含まない。
繰り返し単位(R2)は、有利には、繰り返し単位(R2−a)、繰り返し単位(R2−b)及びそれらの混合物より選択される:
【0054】
【化19】

【0055】
(式中、
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−Xは、酸素又は硫黄原子であり;
−Ar4は、典型的には:
【0056】
【化20】

【0057】
であり、及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar5は、典型的には:
【0058】
【化21】

【0059】
であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar6は、典型的には:
【0060】
【化22】

【0061】
であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有する)。
好ましくは、繰り返し単位(R2)は、以下のものからなる群より選択される:
【0062】
【化23】

【0063】
及びそれらの混合物(式中、ここより上の式r2−j〜r2−jvにおいて:
−→は、芳香族ベンズザゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;
−Xは、酸素又は硫黄原子であり;
−Gは、上記と同一の意味を有する)。
より好ましくは、繰り返し単位(R2)は、以下ものからなる郡より選択される:
【0064】
【化24】

【0065】
(式中、ここより上の式r2−v〜r2−viiにおいて、→は、芳香族ベンザゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示す)。
50質量%より多くのブロックB2の繰り返し単位(R’)は、繰り返し単位(R2)である。好ましくは、75質量%より多くの繰り返し単位(R’)は、繰り返し単位(R2)である。更により好ましくは、ブロックB2は、繰り返し単位(R2)以外の繰り返し単位を含まない。
ブロックB2は、有利には少なくとも3、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも20の繰り返し単位(R’)を含む。
ブロックB2は、有利には最大150、好ましくは最大100、より好ましくは最大75の繰り返し単位(R’)を含む。
ブロックB2の繰り返し単位の数は、特に、NMR分光法により、当該技術分野における当業者によく知られる方法に従って決定され得る。これらの方法は、典型的には、末端-基の誘導体化を必要とする。
少なくとも1つのブロックB2を含むプレ-ポリマーは、特に、以下のいずれかを含む重合方法により製造され得る:
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(aa-タイプのモノマー)を少なくとも1つのジアミンジオール-又はジアミンジチオール-モノマー(bb-タイプのモノマー)と反応させること、その中において、モノマーは、スルホン酸基を含まず;又は
−重縮合条件において、スルホン酸基を含まない、少なくとも1つのヒドロキシアミノ-カルボン酸-又はチオアミノ-カルボン酸-モノマー(ab-タイプのモノマー)を反応させること;又は
−重縮合条件において、少なくとも1つのジカルボン酸モノマー(aa-タイプのモノマー)と少なくとも1つのテトラアミンモノマー(bb-タイプのモノマー)との、及び少なくとも1つのジアミノ-カルボン酸モノマー(ab-タイプのモノマー)の混合物を反応さること、その中において、モノマーは、スルホン酸基を含まない。
【0066】
用語「ジカルボン酸モノマー」は、上に定義されるような意味を有する。
本発明の目的のために、用語「ジアミンジオールモノマー」は、少なくとも2つのオルト-アミノヒドロキシ基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族化合物を示すことが意図される。
ジアミンジオールモノマーの例として、特に、以下のものを記載することができる:2,5−ジヒドロキシパラフェニレンジアミン、4,6−ジヒドロキシメタフェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジオール、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2―ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの対応する誘導体、例えば、塩酸(hydrochloridric acid)、硫酸(suforic acid)及びリン酸との塩。
【0067】
本発明の目的のために、用語「ジアミンジチオール-モノマー」は、少なくとも2つのオルト-アミノチオール基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族族化合物を示すことが意図される。
ジアミンジチオールモノマーの例として、特に、以下のものを記載することができる:2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジチオール、2,5−ジアミノ−3,6−ジメチル−1,4−ベンゼンジチオール、3,3’−ジメルカプトベンジジン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェニルベンゼンジチオール、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)チオエーテル、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)チオエーテル、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)ケトン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ケトン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの対応する誘導体、例えば、塩酸(hydrochloridric acid)、硫酸(suforic acid)及びリン酸との塩。
【0068】
本発明の目的のために、用語「ヒドロキシアミノ-カルボン酸モノマー」は、少なくとも1つのカルボン酸基をそれ自体で又はその塩、エステル、又は酸ハロゲン化物において、及び少なくとも1つのオルト-ヒドロキシアミン基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族化合物を示すことが意図される。
ヒドロキシアミノ-カルボン酸モノマーの例としては、特に、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸及びそれらの対応する誘導体、例えば、塩酸(hydrochloridric acid)、硫酸(suforic acid)及びリン酸との塩を記載することができる。
本発明の目的のために、用語「チオアミノ-カルボン酸モノマー」は、少なくとも1つのカルボン酸基をそれ自体で又はその塩、エステル、又は酸ハロゲン化物において、及び少なくとも1つのオルト-チオアミン基をそれ自体で及び/又は酸、例えば、塩酸、硫酸及びリン酸との塩として含む芳香族化合物を示すことが意図される。
チオアミノ-カルボン酸モノマーの例として、特に、3−メルカプト−4−アミノ安息香酸、4−メルカプト−3−アミノ安息香酸及びそれらの対応する誘導体、例えば、塩酸(hydrochloridric acid)、硫酸(suforic acid)及びリン酸との塩を記載することができる。
本発明の目的のために、用語「少なくとも1つのブロックB2を含むプレ-ポリマー」は、本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーを製造するための先駆物質として使用され得る、上で定義されるような、少なくとも1つのブロックB2を含むポリマーを示すことが意図される。
aa-及びbb-タイプのモノマーの間の及び/又はab-タイプのモノマーの反応は、有利には、ポリリン酸(PPA)において100〜240℃の間の温度で行われ得る。PPAは、一般には、溶剤、触媒及び脱水剤として作用する。
【0069】
その方法を行う際、ジアミンジチオール-、ジアミンジオール-、チオアミノ-カルボン酸-、ヒドロキシアミノ-カルボン酸-モノマーが、塩酸塩として、入手可能である場合、実質的に化学量論量のaa-及びbb-タイプのモノマー又は必要量のab-タイプのモノマーが、有利には、最初に、40-80℃でPPA(50〜80質量%のP25)において加熱されて、典型的には脱塩化水素に影響を与える。この工程は、有利には、減圧下で行われて、塩化水素の除去を促進する。脱塩化水素の完了後、又はモノマーを、PPAにおいて、ジアミンジチオール-、ジアミンジオール-、チオアミノ-カルボン酸、ヒドロキシアミノ-カルボン酸-モノマーがそれ自体で入手可能であるケースにおいて混合した後、追加量のP25及び/又はPPAは、必要に応じて添加されて、攪拌可能な混合物を提供し及びPPAの濃度を約80〜85質量%のP25まで増加することができる。重縮合反応の間、追加量のPAAは、PPAの濃度を有利には80〜86質量%、好ましくは82〜84質量%のP25に維持するために添加され得る。段階的重合を行うのが好ましく、即ち、段階的加熱スケジュールが用いられる。そのようなスケジュールが好ましく、なぜなら、迅速に反応混合物を比較的高い重合温度に暴露することにより、1又は2以上のモノマーの分解がもたらされ得るからである。特定の段階的加熱スケジュールの選択は、当該技術分野における当業者に明らかである。最適な重合温度は無条件に定義可能でないが、この最適条件が、モノマーの組み合わせに依存するので、温度は、少なくとも重合の1工程において、有利には100℃、好ましくは120℃、より好ましくは140℃を超える。典型的な加熱スケジュールは、例えば、60℃で4時間、100℃で2時間、160℃で24時間及び190℃で4時間である。
【0070】
モノマーがaa及びbbモノマーである場合、等モル量のaa-及びbb-タイプのモノマーが、一般に、一方がカルボン酸基を及び他方がオルト-ヒドロキシアミン又はオルト-アミンチオール基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にし、化学量論に関してわずかに過度のaa-タイプのモノマー(典型的に10モル%未満、好ましくは5モル%未満)は、一般に、カルボン酸基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にし、及びわずかに過度のbb-タイプのモノマー(典型的に10モル%未満、好ましくは5モル%未満)は、一般に、オルト-ヒドロキシアミン又はオルト-アミンチオール基を末端とするプレ-ポリマーの製造を可能にする。
モノマーがabモノマーである場合、一方がカルボン酸基を及び他方がオルト-ヒドロキシアミン又はオルト-アミンチオール基を末端とするプレ-ポリマーが、一般的に得られる。
従って、上記のような重合方法により、有利には、アゾール-形成基により停止される少なくとも1つのB2を含むプレ-ポリマーを製造することが可能である。
本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーは、有利には少なくとも70、好ましくは少なくとも100の全体的平均重合度を有する。
本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーは、97%H2SO4において30℃で測定される時、有利には少なくとも0.5dl/g、好ましくは少なくとも0.6dl/g、最も好ましくは少なくとも0.8dl/gの固有粘度を有する。
ポリベンザゾールブロックコポリマーは、有利には、NMP、DMSO、DMF、DMAのような極性非プロトン性溶媒において溶解性であり、及び有利には、メタンスルホン酸、トリフリック酸(triflic acid)、クロロスルホン酸、硫酸、ポリリン酸(PPA)のような強酸において溶解性である。
【0071】
本発明によるポリベンザゾールブロックコポリマーは、有利には、以下の工程の少なくとも1つを含む重合方法により合成され得る:
(a)鉱酸において重合条件下で、第一アゾール-形成基を末端とする少なくとも1つのB1ブロックを含むプレ-ポリマーを、第一アゾール-形成基と反応可能な第二アゾール-形成基を末端とする少なくとも1つのB2基を含む第二プレ-ポリマーと接触させること;
(b)鉱酸において重合条件下で、第一アゾール-形成基を末端とする少なくとも1つのB2ブロックを含むプレ-ポリマーを、第一アゾール-形成基と反応可能な第二アゾール-形成基を末端とする少なくとも1つのB1ブロックを含む第二プレ-ポリマーと接触させること;
(c)鉱酸において重合条件下で、アゾール-形成基を末端とする少なくとも1つのB1ブロックを含む第一プレ-ポリマーを、B2ブロックを形成するのに適切なモノマーと接触させること;
(d)鉱酸において重合条件下で、アゾール形成-基を末端とする少なくとも1つのB2ブロックを含む第一プレ-ポリマーを、B1ブロックを形成するのに適切なモノマーと接触させること。
本発明のポリベンザゾールブロックコポリマーは、好ましくは、工程(c)及び(d)の少なくとも1つを含む重合方法により合成される。
上の工程(a)〜(d)のいずれか1つにおける重合条件は、好ましくは、鉱酸として使用されるべきPPAを必要とし及び温度は、100〜240℃である。
PPAの濃度は、有利には、80〜86質量%のP25、好ましくは82〜85質量%のP25である。
【0072】
最適な重合温度は無条件に定義可能でないが、この最適条件が、モノマー及び/又はプレ-ポリマーの組み合わせに依存するので、温度は、少なくとも重合の1工程において、有利には100℃、好ましくは120℃、より好ましくは140℃を超える。
段階的加熱スケジュールを用いる重合を行うのが好ましく;特定の段階的加熱スケジュールの選択は、当該技術分野における当業者に明らかである。同様の温度スケジュールは、有利には、ポリベンザゾールブロックコポリマーの製造のために適用され得る少なくとも1つのブロックB2を含むプレ-ポリマーの製造のために使用されるものである。
オルト-ジアミン、オルト-ヒドロキシアミン及びオルト-アミンチオール基は、有利には、カルボン酸基と反応して、イミダゾール、オキサゾール又はチアゾール環をそれぞれ生じる。
カルボン酸基は、有利には、オルト-ジアミン、オルト-ヒドロキシアミン及びオルト-アミンチオール基より選択される基と反応して、イミダゾール、オキサゾール又はチアゾール環をそれぞれ生じる。
B1ブロックを形成するのに適切なモノマーは、上に特定されるような、AA-、BB-及び/又はAB-タイプのモノマーである。
B2ブロックを形成するのに適切なモノマーは、上に特定されるような、aa-,bb-及び/又はab-タイプのモノマーである。
反応時間の終わりに、冷却後、ポリベンザゾールブロックコポリマーは、特に、水における凝固により回収され得る。
本発明の別の目的物は、上記のようなポリベンザゾールブロックコポリマーを含むポリベンザゾールポリマー組成物である。
ポリベンザゾールポリマー組成物は、有利には、前記ポリベンザゾールブロックコポリマーと異なる少なくとも1つのポリベンザゾールポリマーを含む。
【0073】
本発明の目的のために、用語「ポリベンザゾールポリマー」は、繰り返し単位(R’’’) を含むポリマーを示すことが意図され、該繰り返し単位の少なくとも50モル%が、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾールからなる群より選択される少なくとも1つのベンザゾール基を含む。
ポリベンザゾールポリマー組成物は、有利には、上記のようなベンザゾールブロックコポリマーを、最大95質量%、好ましくは最大80質量%、より好ましくは最大75質量%含む。
本発明の好ましい実施態様に従って、上記のようなベンザゾールブロックコポリマーに加えて、ポリベンザゾールポリマー組成物は、スルホン酸基を含む少なくとも1つのポリベンザゾールポリマー及びスルホン酸基を含まない少なくとも1つのポリベンザゾールポリマーを含む。
出願人は、それでもなお、本発明の範囲を制限するとの解釈なしに、上記のようなベンザゾールブロックコポリマーが、スルホン化ポリマー及び非スルホン化ポリマーの間の相溶化剤(compatibilizer)として作用し得ると考える。
好ましい実施態様のポリベンザゾールポリマー組成物は、有利には、上記のようなベンザゾールブロックコポリマーを、少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも2.5質量%、より好ましくは少なくとも5質量%含む。
好ましい実施態様のポリベンザゾールポリマー組成物は、有利には、上記のようなベンザゾールブロックコポリマーを、最大35質量%、好ましくは最大30質量%、より好ましくは最大25質量%含む。
本発明の別の目的物は、上記のようなポリベンザゾールブロックコポリマーを含む又は上記のようなポリベンザゾールポリマー組成物を含む固体ポリマー電解質膜である。
【0074】
本発明による固体ポリマー電解質膜は、有利には、上記のようなポリベンザゾールブロックコポリマー又はポリベンザゾールポリマー組成物を含む注型溶液から膜を注型して、注型フィルムを得ることを含む方法により製造され得る。
その方法は、有利には、更に、注型フィルムを少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも140℃の温度で加熱して、膜を得ることを含む乾燥工程を含む。
注型するのに有用である適切な溶剤は、NMP、DMSO、DMF、DMAのような極性非プロトン性溶剤又はトリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフリック酸、クロロスルホン酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸(PPA)のような強酸である。
更に、本発明の目的物は、上に特定されるようなポリベンザゾールブロックコポリマーを含む又は上記のようなポリベンザゾールポリマー組成物を含む固体ポリマー電解質ドープ膜である。
【0075】
本発明の目的のために、用語「固体ポリマー電解質ドープ膜」は、上記のような、ポリベンザゾールブロックコポリマー又はポリベンザゾールポリマー組成物を含み、更に、少なくとも1つの強酸を含む膜を示すことが意図される。
固体ポリマー電解質ドープ膜は、以下の方法のいずれかにより得ることができる:
−更に少なくとも1つの強酸を含む、上記のようなキャスティング溶液から注型することを含む方法;又は
−上に特定されるような固体ポリマー電解質膜を少なくとも1つの強酸で処理することを含む方法。
好ましくは、強酸は、リン酸(H3PO4)及び/又は硫酸であり、より好ましくはリン酸である。
ドープ膜における繰り返し単位(R)及び繰り返し単位(R’)中のアゾール基のモル数の合計と強酸のモル数の間の比は、有利には少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも25モル%、より好ましくは少なくとも100モル%及び有利には最大1500モル%、好ましくは最大1000モル%、より好ましくは400モル%である。
【0076】
本発明の目的のために、用語「アゾール基」は、ベンズイミダゾール基(ここより上の式1a及び1b)、ベンゾチアゾール基(ここより上の式3a及び3b)及びベンゾオキサゾール基(ここより上の式4a及び式4b)を示すことが意図される。
一般に、それでもなお、本発明の範囲を制限するこの解釈なしで、ポリベンザゾールブロックコポリマーの塩基性部位及び吸収された強酸の間のプロトンホッピング(proton hopping)が、強化されたイオン伝導度を提供するということが認められる。
更に、本発明の目的物は、上記のようなポリベンザゾールブロックコポリマーを含む又は上記のようなポリベンザゾールポリマー組成物を含む燃料電池である。
好ましくは、本発明の燃料電池は、水素又はメタノール燃料電池である。
有利には、燃料電池は、上記のような固体ポリマー電解質膜又は固体ポリマー電解質ドープ膜を含む。
上記のようなポリベンザゾールブロックコポリマーのおかげで、イオン伝導度を、許容できない程度の膨張又は水における若しくはメタノールにおける完全な溶解でさえ引き起こすことなしに、固体ポリマー電解質膜の良好な機械的特性及び熱耐性を維持しつつ、最大化することが可能であり、従って燃料電池の高い運転温度が可能となる。
【0077】
上記のような燃料電池の運転は、低減された相対湿度で、複雑な水管理システムの必要なしに、内部加湿度の自動調節(self-regulation)のおかげで行われ得、従って、簡素化されたスタック構築及び改善された信頼性を可能にする。
本発明のいくつかの実施例をこれ以降に記載し、その目的は、単に説明的なものであって、本発明自体の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0078】
出発材料
DAB:アルドリッチから商業的に入手可能な1,1’−ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラミン(以下DAB)を、最初に、遊離塩基DABを水性HCl溶液で中和すること、そのように生成されたDAB塩酸塩(以下DABT)の活性炭の存在下での水からの再結晶、及び水性NaOHでの再結晶化したDABTの処理を介する最終DAB回収により精製した。精製DABは、HPLCで測定して、99.7%の純度を有することが示された。
【0079】
【化25】

【0080】
DSBSA:4,4’−ジカルボキシ−3,3’−ビフェニルスルホンジスルホン酸のナトリウム塩を、ここより下の反応スキームにおいてスケッチされるように、発煙硫酸でのジ−p−トリルスルホン(アルドリッチから入手可能)のスルホン化及び苛性ソーダ及び塩化ナトリウムでのその後の中和/沈殿、及び水性NaMnO4でのメチル基のカルボン酸基への最終酸化により製造した:
【0081】
【化26】

【0082】
そのように得られた製品の水/エタノール混合物における再結晶は、99.8%のHPLC純度をもたらした。
DSBSAの-SO3Na基を、容易に、DSBSAをPPAと混合した時、それらの対応するスルホン酸形態(−SO3H)に転化した。
AHBA:アルドリッチから商業的に入手可能な3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸を、活性炭の存在下での水における再結晶により精製した。精製されたAHBAは、HPLCにより測定して、99.8%の純度を有することを示した。
【0083】
【化27】

【0084】
PPA:アルドリッチから商業的に入手可能な、83.3質量%のP25含量を有するポリリン酸を使用した。
TA:BPアモコ(BP Amoco)から商業的に入手可能な、99.8%のHPLC純度を有するテレフタル酸を、更なる精製なしで、受け入れられるように(as received)使用した。
【0085】
【化28】

【0086】
TBBA:アルドリッチから商業的に入手可能な、99%の純度を有する4−t−ブチル安息香酸(TBBA)を、更なる精製なしで、受け入れられるように使用した。
【0087】
【化29】

【0088】
分析方法
固有粘度(IV)を、濃硫酸(H2SO497質量%)において30.0℃でウベルホード粘度計(Ubbelhode viscosimeter)を用いて測定した。
イオン交換能を、以下の手順を用いて測定した:ブロックコポリマーサンプルを、水性0.6M NaCl及び0.1M NaOHの混合物内に浸し及びその混合物を24時間攪拌した。過度のNaOHを、0.1M HClを用いて逆滴定した。イオン交換能を、従って、以下の式を介して計算した:
IEC(meqSO3H/g)=1000・(nNaOH−nHCl)/wt乾燥ポリマー
(式中、nNaOHは、ブロックコポリマーと最初に混合されたNaOHのモルを示し;nHClは、逆滴定のために必要とされるHClのモルを示し及びwt乾燥ポリマーは、ブロックコポリマーサンプルのgにおける質量を示す)。
【0089】
カルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマーの平均重合度のNMR測定を、以下のように行った。PPAにおけるカルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマーを含む反応混合物のサンプルを、過度の3,4−ジアミノトルエンに添加した。150℃で2時間の均質化後、得られた混合物を、24時間180℃で反応させた。このような方法で、sPBIプレ-ポリマーの−COOH末端基を、定量的にジアミンと反応させて、側基としてメチル置換基を有するベンズイミダゾール単位を形成した。
対応するポリマーを、標準手順を用いて回収した。平均重合度を、DSBSA残留物からの芳香族プロトンに関連する積分領域(integrated area)と、メチル末端側基のプロトンに関連する積分領域との比としてNMRスペクトルから推定した。1H−及び13C−(1D及び2D)NMRスペクトルを、ブラッカーアバンス500(BRUCKER Avance 500)(500MHzで運転)及びブラッカーアバンス400(400MHzで運転)スペクトロメータにおいて、濃D2SO4を溶剤として用いて90℃で記録した。
【0090】
実施例1
1−a)少なくとも1つのブロックB1を含むカルボキシ-末端プレ-ポリマー(カルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマー)の製造
6.257gのDAB(0.0292モル)及び15.648gのDSBSA(0.03066モル)を、不活性雰囲気下で、機械的な攪拌デバイス、窒素入り口及び出口を備える500mlの丸底三つ口フラスコ内に導入した。これらの量は、ジアミンモノマーに関して5モル%過度のジカルボン酸モノマーに相当するものであった。次いで、525.7gの予備脱気されたPPA(P25初期含量=81.0質量%)を、添加して、4.0質量%のモノマー濃度を得た。そのように得られた混合物を、不活性雰囲気下で、100℃で、1時間、油浴を用いて攪拌し、次いで150℃で1時間脱気した。反応混合物を、次いで、不活性雰囲気及び強力な攪拌の下、24時間、180℃で反応させた。80.7質量%の最終P25濃度及び3.37質量%のsPBI濃度(−SO3H形態において)が予期された。
反応混合物を、次いで、150℃に冷却した。固体P25(83.2g)を、次いで、P25含量を83.3質量%に増加するために攪拌下で添加し及び得られた混合物を、均質化のためにこの温度で24時間保った。
カルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマーを含む反応混合物(114.5g)のサンプルを、従って、ポリマー特徴付けのために反応器から取り出した。
カルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマーは、0.49dl/gの固有粘度(H2SO497質量%、30.0℃)を有することが分かった。
【0091】
1−b)カルボキシ-末端sPBIプレ-ポリマーとAHBAとの反応によるトリブロックPBO−sPBI−PBOコポリマーの合成
脱気されたPPA(P25初期含量=83.3質量%)におけるAHBA溶液を、464.8gのPPAに13.8gのAHBAを攪拌下で3時間100℃で溶解することにより、窒素雰囲気下で製造した。
10.980g(0.0717モル)のAHBA含量に相当する、380.79gのそのように得られた溶液を、丸底フラスコに工程1−a)からの反応混合物に3回の同じ分量で添加した。モル比AHBA/sPBIは、従って、3であった。
得られた混合物を、150℃で90分間、及び次いで、各添加後200℃で24時間攪拌した。
72時間後、反応混合物を、150℃に冷却し及びブロックコポリマーを、多量の過度の蒸留水において強力な攪拌下で沈殿させた。
ポリマーを、次いで、ろ過し及びろ液が中性pHであることが分かるまで、蒸留水で洗浄した。ソックスレー装置において残渣のPPAの水における抽出を完了後、ポリマーを、恒量になるまで、真空オーブンにおいて120℃で減圧(30mmHg)下で乾燥した。
1−c)トリブロックPBO−sPBI−PBOコポリマーの特徴付け
トリブロックポリマーは、以下の構造を有することが分かった:
【0092】
【化30】

【0093】
(式中:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−NMRにより測定されるxの平均値が、約14であることが分かった)。
トリブロックポリマーは、2.08meq/gのIEC及び0.97dl/gの固有粘度(H2SO497%、30℃)を有することが分かった。
実施例2
2−a)少なくとも1つのブロックB1を含むアミン-末端プレ-ポリマー(アミン-末端sPBIプレ-ポリマー)の製造
1−a)において上に詳述されるような同一の手順を繰り返したが、397.1gのPPA(P25初期含量=83.3質量%)において5.050gのDAB(0.02357モル)及び11.277gのDSBSA(0.02210モル)を用いた。これらの量は、ジカルボン酸モノマーに関して6.7モル%の過度のジアミンモノマーに相当した。
反応混合物を、攪拌下で、100℃で1時間、150℃で1時間加熱し、及び180℃で24時間反応させた。
反応混合物を、次いで、150℃に冷却した。
アミン-末端sPBIプレ-ポリマーは、以下の構造を有することが分かった:
【0094】
【化31】

【0095】
2−b)少なくとも1つのブロックB2を含むカルボキシ-末端プレ-ポリマー(カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマー)の製造
カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーを、末端-キャッピング剤(end-capping agent)としての少量のt−ブチル安息香酸の存在下でAHBAを重合することにより製造した。
従って、11.070gのAHBA(0.0723モル)、0.573gのt−ブチル安息香酸(0.00321モル)及び280gのPPA(P25初期含量=83.3質量%)を、窒素雰囲気下で、機械的攪拌デバイス、窒素入り口及び出口を備えた250mlの丸底三つ口フラスコに導入した。
得られた混合物を、以下の温度ランプで加熱した:
100℃1時間
150℃2時間
160℃1時間
170℃1時間
180℃1時間
及び最終的に200℃で24時間反応させた。それを、次いで、150℃に冷却した。
カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーは、以下の構造に適合した:
【0096】
【化32】

【0097】
2−c)アミン−末端sPBIプレ-ポリマーとカルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーとの反応によるトリブロックPBO−sPBI−PBOコポリマーの合成
トリブロックコポリマーは、工程2−b)から得られた、267.4gの反応混合物(カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーを含む)を、工程2−a)から得られた反応混合物(アミン-末端sPBIプレ-ポリマーを含む)に添加することにより得た。
得られた混合物を、150℃で1時間均質化し並びに180℃で18時間及び200℃で24時間反応させた。
反応の完了後、溶液を150℃に冷却し;混合物を、次いで、過剰(a large excess)の蒸留水内に攪拌下で注いだ。
ポリマーを、次いで、ろ過し及びろ液が、中性pHであることが分かるまで蒸留水で洗浄した。ソックスレー装置において残りのPPAの水における抽出を完了後、ポリマーを、恒量まで、真空オーブンにおいて120℃で減圧下で(30mmHg)乾燥した。
2−d)トリブロックPBO−sPBI−PBOコポリマーの特徴付け
トリブロックポリマーは、以下の構造を有することが分かった:
【0098】
【化33】

【0099】
(式中:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し; トリブロックポリマーは、2.08meq/gのIECを有することが分かった)。
実施例3
3−a)少なくとも1つのブロックB1を含むアミン-末端プレ-ポリマー(アミン-末端sPBIプレ-ポリマー)の製造
1−a)において上に詳述されるような同一の手順を繰り返したが、302.8gのPPA(P25初期含量=83.3質量%)において4.480gのDAB(0.02091モル)及び 8.004gのDSBSA(0.01568モル)を用いた。これらの量は、ジカルボン酸モノマーに関して33モル%の過度のジアミンモノマーに相当した。
【0100】
反応混合物を、攪拌下で、150℃で1時間、160℃で1時間、170℃で1時間加熱し及び180℃で24時間反応させた。混合物を、次いで、150℃に冷却した。
重合工程の終わりで、アミン-末端sPBIプレ-ポリマーを含む反応混合物(78.68g)のサンプルを、ポリマー特徴付けのために反応器から回収した。
4−t−ブチル安息香酸での誘導体化後、アミン-末端sPBIプレ-ポリマーは、0.14dl/gの固有粘度(H2SO497%、30℃)を有することが分かった。
3−b)少なくとも1つのブロックB2を含むカルボキシ-末端プレ-ポリマー(カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマー)の合成
カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーを、少量のテレフタル酸(TA)の存在下でAHBAを重合することにより製造した。
従って、13.821gのAHBA(0.09025モル)、2.507gのTA(0.01509モル)及び332.9gのPPA(P25初期含量=83.3質量%)を、窒素雰囲気下で、機械的攪拌デバイス、窒素入り口及び出口を備えた500mlの丸底三つ口フラスコに導入した。得られた混合物を、100℃で1時間、150℃で2時間攪拌し、及び24時間200℃で反応させた。反応混合物を、次いで、150℃に冷却した。
カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーは、0.59dl/gの固有粘度(H2SO497%、30℃)及び以下の構造を有することが分かった:
【0101】
【化34】

【0102】
3−c)アミン-末端sPBIプレ-ポリマーとカルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーとの反応によるマルチブロック[sPBI−b−PBO]コポリマーの合成
マルチブロックコポリマーは、工程3−b)から得られた、必要量(91.1g)の反応混合物(カルボキシ-末端PBOプレ-ポリマーを含む)を、工程3−a)から得られた反応混合物(アミン-末端sPBIプレ-ポリマーを含む)に添加することにより得た。
得られた混合物を、以下の温度ランプで加熱した:
150℃0.5時間
160℃0.5時間
170℃0.5時間
及び180℃で18時間及び200℃で24時間反応させた。
反応の完了後、溶液を150℃に冷却し;混合物を、次いで、過剰の蒸留水に攪拌下で注いだ。
ポリマーを、次いで、ろ過し及びろ液が、中性pHであることが分かるまで、蒸留水で洗浄した。ソックスレー装置において残渣のPPAの水における抽出を完了後、ポリマーを、恒量まで、真空オーブンにおいて120℃で減圧下で(30mmHg)乾燥した。
3−d)マルチブロック[sPBI−b−PBO]コポリマーの特徴付け
マルチブロックポリマーは、1.21dl/gの固有粘度(H2SO497%、30℃)を有することが分かった。
【0103】
更に、本発明は以下である。
(1)
以下のものを含むポリベンザゾールブロックコポリマー:
−繰り返し単位(R)を含む少なくとも1つのブロック(B1)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、少なくとも1つのベンズイミダゾール基(式1a及び1b)及び少なくとも1つのスルホン酸基(式2)を含むもの[繰り返し単位(R1)]:
【化35】

(式中、式1aにおけるEは、置換又は未置換炭素原子又は窒素原子であってもよく、及び式1a及び1bにおけるQは、水素原子又はスルホン酸基を含む基であってもよい);及び
−繰り返し単位(R’)を含む少なくとも1つのブロック(B2)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、ベンゾオキサゾール基(式3a及び3b) 及びベンゾチアゾール基(式4a及び4b)より選択される少なくとも1つのベンザゾール基を含むもの[繰り返し単位(R2)]:
【化36】

(式中、式3a及び4aにおけるE’及びE’’は、各々、独立して、置換又は未置換炭素原子又は窒素原子であってもよく、及びブロック(B2)は、実質上、スルホン酸基を有さない)。
(2)
繰り返し単位(R1)が、繰り返し単位(R1−a)、繰り返し単位(R1−b)、繰り返し単位(R1−c)、繰り返し単位(R1−d)及びそれらの混合物より選択される請求項1に記載のポリベンザゾールブロックコポリマー:
【化37】

(式中、
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;
【化38】

基は、Ar1、Ar2又はAr3基における炭素原子のいずれか1つに結合されていてもよく;
−aは、0〜2の整数であり;
−bは、1又は2の整数であり;
−dは、0〜2の整数であり;
−eは、1又は2の整数であり;
−fは、0〜2の整数であり;
−Ar1は:
【化39】

であり、及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar2は:
【化40】

であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar3は:
【化41】

であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Q’、Q’’、Q’’’基の各々は、独立して、水素原子又は以下より選択されるスルホン酸基を含む基のいずれかであってもよく:
【化42】


及びRaは、直鎖状又は分枝状アルキル、アルキルアリール、アリール又は−NO2基であり、mは、0〜10の整数であり、及びcは、1又は2であり、Y及びY’は、独立して、水素原子、フッ素原子、直鎖状又は分枝状炭化水素又はフッ化炭素C2-5鎖であり、及びk及びjは、独立して、1〜10の整数であり;
d及びfが、0である場合、Q’、Q’’及びQ’’’基の少なくとも1つが、少なくとも1つのスルホン酸基を含むという更なる要件を伴う)。
(3)
繰り返し単位(R1)が、以下、
【化43】

及びそれらの混合物
(式中、これより上の式r1−i〜r1−vにおいて:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−aは、0〜2の整数であり;
−Ar1は:
【化44】

であり
及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
【化45】

基は、それらが結合されるフェニル環の又はAr1基の炭素原子のいずれか1つに結合されていてもよい)
からなる群より選択される請求項2に記載のポリベンザゾールブロックコポリマー。
(4)
繰り返し単位(R2)が、繰り返し単位(R2−a)、繰り返し単位(R2−b)及びそれらの混合物より選択される請求項1に記載のポリベンザゾールブロックコポリマー:
【化46】

(式中:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−Xは、酸素又は硫黄原子であり;
−Ar4は:
【化47】

であり
及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar5は:
【化48】

であり、Gは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar6は:
【化49】

であり、Gは、先に記載したと同一の意味を有する)。
(5)
繰り返し単位(R2)が、以下、
【化50】

及びそれらの混合物
(式中、これより上の式r2−j〜r2−jvにおいて:
−→は、芳香族ベンザゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;
−Xは、酸素又は硫黄原子であり;
【化51】

であり及びn=0、1、2、3、4又は5である)
からなる群より選択される請求項4に記載のポリベンザゾールブロックコポリマー。
(6)
以下の工程の少なくとも1つを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリベンザゾールブロックコポリマーを製造する方法:
(a)鉱酸において、重合条件下で、第一アゾール-形成基により停止される少なくとも1つのB1ブロックを含むプレポリマーを、第一アゾール形成基と反応可能な第二アゾール形成基により停止される少なくとも1つのB2基を含む第二プレポリマーと接触させること;
(b)鉱酸において、重合条件下で、第一アゾール形成基により停止される少なくとも1つのB2ブロックを含むプレポリマーを、第一アゾール形成基と反応可能な第二アゾール形成基により停止される少なくとも1つのB1ブロックを含む第二プレポリマーと接触させること;
(c)鉱酸において、重合条件下で、アゾール形成基により停止される少なくとも1つのB1ブロックを含む第一プレポリマーを、B2ブロックを形成するのに適切なモノマーと接触させること;
(d)鉱酸において、重合条件下で、アゾール形成基により停止される少なくとも1つのB2ブロックを含む第一プレポリマーを、B1ブロックを形成するのに適切なモノマーと接触させること。
(7)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリベンザゾールブロックコポリマーを含むポリベンザゾールポリマー組成物。
(8)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリベンザゾールブロックコポリマーを含む又は請求項7に記載のポリベンザゾールポリマー組成物を含む固体ポリマー電解質膜。
(9)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリベンザゾールブロックコポリマー又は請求項7に記載のポリベンザゾールポリマー組成物及び少なくとも1つの強酸を含む固体ポリマー電解質ドープ膜。
(10)
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリベンザゾールブロックコポリマーを含む又は請求項7に記載のポリベンザゾールポリマー組成物を含む燃料電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のものを含むポリベンザゾールブロックコポリマー:
−繰り返し単位(R)を含む少なくとも1つのブロック(B1)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、繰り返し単位(R1−a)、繰り返し単位(R1−b)、繰り返し単位(R1−c)、繰り返し単位(R1−d)及びそれらの混合物より選択される繰り返し単位(R1)を含むブロック、
【化1】

(式中、
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;
【化2】

基は、Ar1、Ar2又はAr3基における炭素原子のいずれか1つに結合されていてもよく;
−aは、0〜2の整数であり;
−bは、1又は2の整数であり;
−dは、0〜2の整数であり;
−eは、1又は2の整数であり;
−fは、0〜2の整数であり;
−Ar1は:
【化3】

であり、及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar2は:
【化4】

であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar3は:
【化5】

であり、及びGは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Q’、Q’’、Q’’’基の各々は、独立して、水素原子又は以下より選択されるスルホン酸基を含む基のいずれかであってもよく:
【化6】


及びRaは、直鎖状又は分枝状アルキル、アルキルアリール、アリール又は−NO2基であり、mは、0〜10の整数であり、及びcは、1又は2であり、Y及びY’は、独立して、水素原子、フッ素原子、直鎖状又は分枝状炭化水素又はフッ化炭素C2-5鎖であり、及びk及びjは、独立して、1〜10の整数であり;
d及びfが、0である場合、Q’、Q’’及びQ’’’基の少なくとも1つが、少なくとも1つのスルホン酸基を含むという更なる要件を伴う)、
及び、
−繰り返し単位(R’)を含む少なくとも1つのブロック(B2)であって、該繰り返し単位の50モル%より多くが、繰り返し単位(R2−a)、繰り返し単位(R2−b)及びそれらの混合物より選択される繰り返し単位(R2)を含むブロック:
【化7】

(式中:
−→は、芳香族ベンズイミダゾール構造内の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が、示されるように又は交換された位置において存在することができるような異性を示し;−Xは、酸素又は硫黄原子であり;
−Ar4は:
【化8】

であり
及びn=0、1、2、3、4又は5であり;
−Ar5は:
【化9】

であり、Gは、先に記載したと同一の意味を有し;
−Ar6は:
【化10】

であり、Gは、先に記載したと同一の意味を有する)。

【公開番号】特開2012−92352(P2012−92352A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28840(P2012−28840)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2007−540635(P2007−540635)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】