説明

ポリペプチドと五糖の複合物

本発明は、ポリペプチドが少なくとも1個のオリゴ糖−スペーサー残基と複合化され、該オリゴ糖が4−18単糖単位を含む合成硫酸化オリゴ糖であり、該オリゴ糖自体がアンチトロンビンIIIに親和性を有し、該スペーサーが結合であり、又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である、ポリペプチドとオリゴ糖の複合物又は薬剤として許容されるその塩に関する。本発明の複合物は、元のポリペプチド(すなわち、対応する非複合ポリペプチド自体)よりも、薬物動態特性が改善されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドとオリゴ糖の新しい複合物、その調製方法、該化合物を活性成分として含む薬剤組成物並びに医薬品の製造への前記化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術の最近の進歩及び先進のペプチド合成方法によって、医学的に有用な量の治療用ポリペプチドを商業生産することが可能になった。しかし、多数の治療用ポリペプチドの半減期が短いことが、これらの化合物の投与にこれまで難題を提起してきた。半減期を延長することによって有利となる、現行の重要なポリペプチド系薬物が幾つかある。例は、(著しく)数時間未満の半減期を有する、エリスロポイエチン、インスリン、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ、顆粒球コロニー刺激因子、ヒト成長ホルモン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リラキシン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲンアクチベーター、カルシトニン、インターロイキン−2及び腫よう壊死因子である。例えば、インスリンは、ヒトにおける半減期がわずか12分程度である。治療薬候補として開発されたが、半減期が短いポリペプチドの他の例は、アドレノメデュリン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)及びキスペプチン(メタスチン)である。治療用ポリペプチドの半減期が延長されると、投薬量及び投薬頻度を削減することによって、現行の治療を改善することができる(Curr. Opin. Drug Disc. Dev. 2005, 8, 590−600)。
【0003】
例えばPEG化(すなわち、約1−30kDaのポリエチレングリコール部分との結合;Drug Discovery Today 2005, 10, 1451−1458)による改良によって、インビボでの半減期を延長する目的で多数のタンパク質がすでに研究されている。例えば、半減期の延長されたインスリンのPEG化類似体が現在入手可能である。このインスリン誘導体の重要な側面は、クリアランス速度の低下に加えて、免疫原性が低下し(例えば、米国特許第4,179,337号)、溶解性が増大することである。また、インスリンのPEG化の進歩によって、未変性インスリンよりも物理的にもタンパク質分解性的にも安定な複合物も得られる(例えば、国際公開第2004/091494号、同2002/098232号、米国特許出願公開第2005/0152848号参照。)。
【0004】
より長い血清半減期を有するPEG化エリスロポイエチンは、例えば、国際公開第2004/022577号に記載されている。さらに、エリスロポイエチンの改変グリコシル化によって、半減期が延長されることも見出された。また、エリスロポイエチンのハイパーグリコシル化類似体がより高いインビボ活性を有することが報告された(国際公開第2000/24893号)。作用期間の長いPEG化(ポリ)ペプチドの他の例は、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)(国際公開第2005/058954号、同2004/093823号;Bioconjugate Chem. 2005, 16, 377−382;Biomaterials, 2005, 26, 3597−3606)、ブドウ糖依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)(Bioorg. Med. Chem. Lett, 2005, 15, 4114−4117)、カルシトニン(Pharm. Dev. Technol. 1999, 4, 269−275)及びオクトレオチド(Pharm. Res. 2005, 22, 743−749)である。
【0005】
それでも、PEGの使用には制約がある。PEGは化学合成によって得られ、全ての合成高分子同様、多分散である。これは、1つのバッチのPEGが、分子量の正規分布を生じる異なるモノマー数の分子からなることを意味する。ポリペプチドをPEG化すると、異なる生物学的諸性質、特に半減期及び免疫原性を有し得る複合物の集合になる。したがって、PEG化ポリペプチドの薬理活性の再現性は、この技術の重大な欠点になり得る。また、タンパク質のPEG化は、生物活性の損失を伴うことが多い。また、PEGの使用は、体内からの排出に関する問題を生じ得る。高分子量のPEGは、肝臓に蓄積し、巨大分子症候群(macromolecular syndrome)を起こす恐れがある。したがって、薬物のPEG化は、細心の注意を払って実施すべきである。多糖、特にポリシアル酸鎖によるポリペプチドの誘導体化によってPEG化と類似の結果が得られた(例えば、国際公開第92/22331号及び同2001/87922号)。
【0006】
日本特許出願公開第02/231077号では、ヘパリン−スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)複合物が記載されている。好ましくは、幾つかのヘパリン分子がSODと結合して、酵素活性の約90%を保持しつつ、未変性SODよりも長い半減期を有する複合物を生成する。
【0007】
半減期の長い他のポリペプチド複合物としては、循環血清アルブミンに結合した、インスリン(国際公開第2003/013573号、同05/012346号)又はGLP−1(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 4395−4398)の複合誘導体が例示される。これらの化合物における血清アルブミンとの結合は、特に、複合物内の結合部分とヒト血清アルブミンの疎水的相互作用に基づく。結合部分の疎水性が高いほど、ヒト血清アルブミンとの結合親和性は強くなる。多様な結合部分が適切であるが、かかる複合物の欠点は、複合物とヒト血清アルブミンの相互作用の親和性及び選択性が低いことであり、その結果、薬力学的挙動を予測することが困難である。或いは、ヒトインスリンの遺伝子をヒト血清アルブミンの遺伝子と直接融合させると、皮下投与後長期間にわたって血糖値を低下させるのに有効な長時間作用型インスリンが得られる(Duttaroy et al. Diabetes 2005, 54, 251−258)。しかし、この場合、融合ポリペプチドの生物学的利用能及び標的受容体に対する結合親和性が低下する。
【0008】
また、国際公開第2000/40253号は、例えば、ペプチドと、特にグリコサミノグリカン鎖との複合物を開示しており、これは、合成プロテオグリカンと考えられる。この複合物では、複合グリコサミノグリカンの薬理活性は、その治療活性にかなり影響を及ぼす。
【0009】
また、薬剤的に活性な化合物の溶解性を増大させるために、オリゴ糖が該化合物に結合された(国際公開第2004/03971号)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリペプチドとオリゴ糖の複合物である、半減期の長い新しいポリペプチド複合物又は薬剤として許容されるその塩に関する。ここで、ポリペプチドは、少なくとも1個の合成硫酸化オリゴ糖−スペーサー残基と複合化されている。オリゴ糖は、4−18単糖単位を含み、それ自体がアンチトロンビンIIIに親和性を有する。スペーサーは結合であり、又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である。好ましいオリゴ糖は4−6単糖単位からなり、特に好ましいのは五糖である。本発明の複合物は、元のポリペプチド(すなわち、対応する非複合ポリペプチド自体)よりも、薬物動態特性が改善され、したがって薬理学的特性が改善されている。
【0011】
本発明は、さらに、治療に有効な、抗血栓活性の無視し得る、ポリペプチドを含む複合物の調製方法に基づく新規技術にも関する。この調製方法は、アンチトロンビンIII(ATIII)に対する親和性をそれ自体が有する合成硫酸化オリゴ糖、特に五糖が、結合又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基を介して、ポリペプチドに共有結合する段階を含む。
【0012】
ATIIIはセリンプロテアーゼ阻害剤であり、血しょう中に存在し、凝固カスケードを分断してフィードバックループを与える。硫酸化五糖の半減期は、本質的にATIIIとの親和性に基づく(例えば、F. Paolucci et al. Clin. Pharmacokinet. 2002;41 Suppl. 2:11−18参照)。本発明の複合物においては、血清半減期は、複合物の半減期を主として占める五糖の半減期の結果として、元のポリペプチドの半減期よりも長い。また、本発明の複合物は、半減期が長いだけでなく、複合物の五糖部分とATIIIの特異的相互作用に基づいて、薬物動態特性を調整することもできる(この相互作用は、例えば、Westerduin et. al. Bioorg. Med. Chem. 1994, 1267−1280; van Amsterdam et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1995;15:495−503に記載されている。)。本発明の一実施形態においては、オリゴ糖−ポリペプチド複合物(オリゴ糖は、特に4−6単糖単位からなり、とりわけ五糖である。)は、50nM以下の循環血しょう中濃度を有する。この濃度まで、ATIIIによって媒介されるオリゴ糖(特に五糖)の抗凝血活性は、特に出血のリスクに関して重要でない(例えば、(1)F. Donat et al, Clin. Pharmacokinet. 2002;41 Suppl. 2:1−9;(2)S.J. Keam et al. Drugs 2002;62(11):1673−1685及び(3)The Rembrandt Investigators Circulation 2000;102:2726−2731参照)。本発明の実施形態によれば、複合物に使用するオリゴ糖(特に4−6単糖単位からなり、とりわけ五糖である。)は、ポリペプチド自体の薬理活性と比較したときに、治療量以下のレベルである抗凝血活性をそれ自体が有する。この点で、治療量以下とは、治療効果未満であり、出血リスクなどの副作用がないことを意味する。例えば、1型糖尿病患者は、本複合物に使用する五糖の治療量以下の範囲に十分ある(基本の)治療血しょう中濃度約[0.1−1.0]nMを補足する(長い半減期の)インスリン注射を必要とする。当業者は、ポリペプチドと五糖それぞれの治療レベル間の適切なバランスで複合物を選択する方法を理解されたい。
【0013】
本発明の複合物中のポリペプチドはその生物活性を保持している。また、本発明の複合物中のATIIIと結合した五糖が線形の薬物動態学的挙動を示すことは、複合ポリペプチドの極めて予測可能な治療効果を説明するものである。というのは、複合物は、i.v.又はs.c.投与後は主として血管内の区画に残存するからである。
【0014】
本発明の複合物中のオリゴ糖残基は、アンチトロンビンIII(ATIII)に対する親和性をそれ自体が有する合成硫酸化オリゴ糖に由来する残基である。硫酸化オリゴ糖、特に五糖は、一般に、ATIIIに対して親和性を有するが、当業者はATIIIに対するオリゴ糖の親和性を容易に調べ(van Amsterdam et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 1995;15:495−503)、所望の親和性レベルを選択することができる。適切な合成オリゴ糖残基、特に五糖残基は、EP 0,454,220、EP 0,529,715、国際公開第98/03554号、同99/36428号、J. Med. Chem. 2005;48, 349−352, Angew. Chem. Intl. Ed. Engl. 1994, 32, 1671−1690などに開示されているオリゴ糖及び五糖から誘導し得る。
【0015】
オリゴ糖及び五糖の残基は、直接的に、又は五糖残基内の任意の化学的に適切な位置に結合した連結残基を介して、ポリペプチドと複合化し得る。したがって、本発明の一実施形態においては、複合物は、オリゴ糖−スペーサー残基が構造(I)を有する複合物である。
【0016】
【化11】

式中、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な1個の連結残基が存在し、Rは独立にOSO、(1−8C)アルコキシ又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、
Raは独立にOSOであり、(1−8C)アルコキシであり、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、又は1−13単糖単位を含むオリゴ糖残基であり、
Rbは独立に(1−8C)アルコキシであり、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、又は1−13単糖単位を含むオリゴ糖残基であり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。
【0017】
より好ましいのは、オリゴ糖−スペーサー残基が、構造(II)を有する五糖−スペーサー残基である複合物である。
【0018】
【化12】

式中、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な1個の連結残基が存在し、Rは独立にOSO、(1−8C)アルコキシ又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。
【0019】
さらに好ましいのは、五糖残基が構造(III)を有する複合物である。
【0020】
【化13】

式中、Rは独立にOSO又は(1−8C)アルコキシであり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。
【0021】
本発明による極めて好ましい化合物は、五糖残基が構造(IV)を有する化合物である。
【0022】
【化14】

式中、Rは独立にOCH又はOSOであり、特に(II)中の両方のR基はOSOである。
【0023】
本発明によれば、ATIIIに対して親和性を有する合成硫酸化オリゴ糖残基、特に五糖残基は、任意のポリペプチドと複合化し得る。例えば、ポリペプチドは、生理活性ペプチド(例えば、3から50アミノ酸長)とすることができ、又は触媒活性を有しても、有さなくてもよいより長いポリペプチドとすることができる。生理活性ペプチドの非限定的例としては、コナントキンG、ダイノルフィン、エンドルフィン、エンケファリン、ニューロテンシンなどの神経伝達物質;ボンベシン、モチリン、ガストリンなどの胃の活性化因子(gastric activator);カルシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)などのカルシウム調節因子;オステオプロテジェリン(OPG)などの骨吸収調節因子;アドレノメデュリン又はADM(27−52)などのその切断型誘導体などの骨芽細胞活性の刺激因子;血管作動性腸管ポリペプチド、コルチコトロピン、セクレチンなどのホルモン;ソマトスタチンなどのホルモン阻害剤;メラニン細胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン放出因子、セルモレリンなどのホルモン刺激因子;グルカゴン、アミリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)又はGLP−1(7−36)、GLP−2、ブドウ糖依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、インスリン(「Humulin」、Eli Lilly)などのその切断型誘導体などの抗糖尿病薬;リソスタフィンなどの抗感染薬;オベスタチンなどの食欲抑制ホルモン;アンジオテンシンIIなどの血管収縮剤;ブラジキニン、サブスタンスP、カリジンなどの血管拡張薬;心房性ナトリウム利尿ポリペプチド(ANP)などのナトリウム排泄増加薬;バソプレッシン、デスモプレッシンなどの抗利尿ホルモン及びオキシトシンなどの分娩促進薬が挙げられる。使用することができるポリペプチドの追加の例としては、ヒト成長ホルモン(「Humantrope」、Genentech);rLH;rG−CFS(「Neupogen」、Amgen);エリスロポイエチン(「Epogen」、Amgen);インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ又はインターフェロンγ;第VIII因子又はプロテインC、第VIIa因子などの他の血液凝固因子;卵胞刺激ホルモン(FSH);インターロイキン(IL)(例えば、IL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10、−11、−12又は−18)などのサイトカイン;ヘモグロビン;スーパーオキシドジスムターゼ;可溶性CD4又はCD4受容体;血小板GpIIb/IIIa類似体及びその受容体(「ReoPro」、Johnson & Johnson);グルコセレブロシダーゼ(「Ceredase」又は「Cerezyme」、Genzyme);ACTH;ソマトトロピン;副甲状腺ホルモン、抗利尿ホルモン;プロラクチン;ペグビソマント(「Somavert」、Pfizer)などのrHGH;ロイプロリド(「Lupron」、「Leprorelin」、Takeda)、ナファレリン(「Synarel」、Roche)などのGnRH作動物質及びガニレリクス(「Antagon」、Organon)などのGnRH拮抗物質;セルモレリン(「Geref」、Serono)などのGHRH作動物質;オクトレオチド(「Sandostatin」、Novartis);ストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼ、ウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子(「Activase」、Genentech)などの血栓溶解剤;メタスチン(KISS1又はキスペプチン−54)、キスペプチン−10などのその切断型誘導体が挙げられる。
【0024】
好ましいポリペプチドは、分子量が約0.3−50kDaである。他の好ましいポリペプチドは、分子量が約0.3−20kDaである。分子量約0.3−7.5kDaのポリペプチドも好ましい。
【0025】
さらに好ましいポリペプチドは、インスリン(t1/2=12min;Mw=5.8kDa)、カルシトニン(t1/2=20min;Mw=3.4kDa)、GLP−1(7−36)(t1/2=6min;Mw=3.4kDa)、アドレノメデュリン(t1/2=20min;Mw=6.0kDa)、ADM(27−52)(Mw 3.0kDa)、オクトレオチド(t1/2=1.7h、Mw=1.0kDa)、インターロイキン−2(t1/2=20min;Mw=15kDa)及びガニレリクス(t1/2=12h;Mw=1.6kDa)である。インスリン及び[D−Ala]−GLP−1(7−36)が特に好ましい。本発明のさらなる実施形態は、五糖−スペーサー残基で一置換されたポリペプチド複合物である。
【0026】
スペーサーは、結合であり、又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である。好ましくは、スペーサーは、スペーサー「骨格」に沿ってオリゴ糖残基の酸素を含めずに数えて特に10−50原子の本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である。本明細書では「本質的に薬理学的に不活性」という用語は、本発明の化合物が治療上有効である用量においてそれ自体が薬理学的に活性である原子又は基をスペーサーが含まないことを意味する。したがって、本発明の化合物を治療薬として使用する用量において、スペーサーの性質は、実証し得る薬理学的副作用をもたらさない。スペーサーは、環構造、不飽和結合などの(いくらか)剛直な要素を含み得る。本発明の化合物のスペーサーは、好ましくは柔軟である。適切なスペーサーは、当業者が容易に設計することができる。合成上の理由で、スペーサーが長いほど不適切であると考えられるが、長いスペーサーでも、本発明の化合物に首尾よく適用し得る。好ましいスペーサーは、少なくとも1個の−(CHCHO)−基を含む。
【0027】
本発明の複合物の代表例は、以下の構造の複合物又は他のその塩、スペーサーが異なる、若しくは五糖の別の位置に結合している複合物である。
【0028】
【化15】

式中、R1=R2=H、R3=
【0029】
【化16】

又はR1=R3=H、R2=
【0030】
【化17】

であり、Yは構造A、B、C及びDから選択される。
【0031】
【化18】

ナトリウム塩が好ましい。好ましくは、Yは構造A及びBから選択される。
【0032】
本開示において明示的に定義していない、一般に用いられる化学略語は、The American Chemical Society Style Guide, Second Edition, American Chemical Society, Washington, DC(1997), ”2001 Guidelines for Authors” J. Org. Chem. 66(1), 24A(2001), ”A Short Guide to Abbreviations and Their Use in Polypeptide Science” J. Polypeptide. Sci. 5, 465−471(1999)に記載されている。
【0033】
ポリペプチドという用語は、翻訳後修飾にかかわらず、少なくとも3個のアミノ酸からなる鎖を指す。ポリペプチドは、天然の、化学合成された、又は組換え産生されたアミノ酸ポリマーでもよい。3から50個のアミノ酸を含むポリペプチドは、典型的には、ペプチドとして分類される。
【0034】
「触媒活性を有するポリペプチド」という句は酵素を意味する。本明細書ではインスリンという用語は、ヒト、ラット、モルモット及びウサギを含めた哺乳動物中に存在する天然の血糖降下ポリペプチド、組換えインスリン並びに米国特許第4,652,525号、同4,431,740号、同5,268,453号、同5,506,202号、同5,514,646号及び同5,700,662号に開示されている類似の血糖降下ポリペプチドを指す。
【0035】
本発明の複合物の記載においては、さらに以下の定義を使用する。(1−4C)アルキル及び(1−8C)アルキルという用語は、それぞれ1−4個及び1−8個の炭素原子を有する分枝又は非分枝アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ヘキシル及びオクチルを意味する。メチル及びエチルが好ましいアルキル基である。
【0036】
(1−8C)アルコキシという用語は、1−8個の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。アルキル部分は、上で定義した意味を有する。メトキシが好ましいアルコキシ基である。
【0037】
スペーサーの長さは、スペーサーと結合したオリゴ糖残基の酸素原子を数えずに、オリゴ糖残基とポリペプチドの間の最短の鎖に沿って数えたスペーサーの原子数である。
【0038】
本発明の実施形態は、さらに、アンチトロンビンIIIに対する親和性をそれ自体が有する合成硫酸化オリゴ糖(特に、オリゴ糖は4−6単糖単位からなり、とりわけ硫酸化五糖である。)が、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基を場合によっては介して、ポリペプチドに結合する段階を含み、該ポリペプチドを含む複合物が、生物活性を本質的に保持しつつ、元のポリペプチドよりも長い血しょう中半減期を有し、無視し得る抗血栓活性を有する、治療に有効な該複合物の調製方法である。
【0039】
合成及び分析の一般的態様
五糖の合成
本発明の化合物の、ATIII結合性のオリゴ糖、特に五糖は、例えば、Angew. Chem. Intl. Ed. Engl. 1994, 32, 1671−1690に記載のように調製することができる。ATIIIに対して異なる親和性を有する異なるオリゴ糖及び五糖は、中間体の単糖、二糖又は四糖構成要素を変えることによって、例えば、(永続的な)アルキル基を導入することによって、又は異なる硫酸化オリゴ糖及び五糖を制御された様式で利用する異なる(一時的な)保護基を適用することによって、得ることができる(例えば、Westerdu in et. al. Bioorg. Med. Chem. 1994, 1267)。スペーサーは、例えば、国際公開第2001/42262号に記載のように導入することができる。オリゴ糖−及び五糖−スペーサー分子は、ガンマ−マレイミドブチリル(GMB)基、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基、保護されていてもよいチオール基などの連結残基を用いてさらに誘導体化して(例えばAngew. Chem. Intl. Ed. Engl. 1996, 35, 331−333)、修飾されていてもよいポリペプチドと直接カップリングすることができる。
【0040】
複合化
一般に、本発明の複合物は、(a)ポリペプチドが複合化用に改変される、必須でない段階と、(b)改変されていてもよいポリペプチドがオリゴ糖−又は五糖−スペーサー分子と反応する、カップリング段階とを含む方法によって製造される。
【0041】
バイオコンジュゲートを生成する一般的合成方法は、Greg T. Hermanson, ”Bioconjugate Techniques” 1996, Academic Pressに記載されている。また、複合化としては、(K.L. Kiick et al. Proc. Nat. Acad. Sci. 2002;99:19−24に記載のものなどの)Staudingerライゲーション又は五糖誘導体とアルキン若しくはアジド官能基で独立に修飾されたポリペプチドとを用いたHuisgenの1,3−双極子環付加を考えることができる。或いは、(M. Lewinska et al. Bioconjugate Chem. 2004, 15, 231−234に記載のものなどの)位置選択的IgAプロテアーゼによって媒介されるポリペプチドのN末端伸長、(M. Sato et al. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 14013−14022に記載のものなどの)トランスグルタミナーゼによって触媒されるアミノスペーサー含有オリゴ糖の導入などの酵素反応を用いて、修飾されていてもよいポリペプチドに五糖−スペーサー残基を複合化することができる。
【0042】
また、例えばインスリン、GLP−1及びオクトレオチドのPEG化は、詳細に記録されている。これらのタンパク質においては、約5−30kDaのPEG部分を、その生物活性を失わずに導入することができる。かかる戦略に従って、五糖(スペーサー)部分を(部位特異的に)導入することができる。また、五糖複合物とATIII(約50kDa)の結合は、ポリペプチドの生物活性に実質的な有害作用を及ぼさないことが必要条件である。
【0043】
インスリン:N末端B−1及びC末端近傍B−29のリジンアミノ官能基は、インスリンの生理活性には必須ではない。B1−PEG化インスリンが、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化PEG誘導体とジN−Bocによって保護されたインスリンとの反応によって全収率20%で調製された(S.W. Kim et al., Adv. Drug Del. Rev. 2002, 54, 505−530)。N−マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル(GMBS)などの二官能カップリング試薬の類似の反応によって、B1修飾インスリン五糖複合物が得られる。或いは、非保護Zn2+−インスリンのB29 Lys残基を、過剰のNHSエステルを用いてpH約10−11で収率約60%で選択的に修飾することができる。インスリンとの位置選択的な複合化のための他の確立された方法は、国際公開第98/02460号、同2004/091494号、同2005/012346号、米国特許出願公開第2005/0152848号、Jensen et al. J. Pept. Sci. 2005, 11, 339−346, Lee et al. Bioconj. Chem. 2005, 16, 615−620, Jain et al. Biochim. Biophys. Act. 2003, 1622, 42−49, Tessmar et al. Tissue Engin. 2004, 10, 3, 441−453から改良して作成することができる)。
【0044】
ガニレリクス:五糖のNHSエステル誘導体は、de−N−Acガニレリクスの遊離N末端アミノ基と複合化することができる。又は、五糖誘導体を含むアミノスペーサーは、場合によっては追加のスペーサーを介して、デスアミドガニレリクスの遊離末端カルボン酸基と複合化することができる。デスアミドガニレリクスは、例えばJ. Med. Chem. 1992, 35, 3942−3948に記載された、先進の(固相)ペプチド合成によって得ることができる。
【0045】
オクトレオチド:市販ペプチドであるオクトレオチドのN末端D−Pheアミノ酸残基は、最高5kDaのPEGを用いて、生理活性を失わずに修飾することができる(D. Hee et al. Pharm. Res. 2005, 22, 743−749)。N末端アミノ基の位置特異的官能基化は、過剰の二官能NHSエステル連結試薬を用いてpH約6で実施することができる。その後、上述のバイオコンジュゲートを生成する一般的合成方法に従って(例えば、チオール基を含む五糖−スペーサー残基をオクトレオチドのマレイミド誘導体と複合化することによって)、担体の五糖とさらに複合化することができる。
【0046】
ADM(27−52):完全長アドレノメデュリン(ADM)のN末端は、骨形成活性及び血管石灰化に対する抑制作用に必須ではない。五糖−スペーサー残基とADM(27−52)のN末端Ala残基との位置特異的複合化は、固相ペプチド合成を利用する確立された方法及び上述のバイオコンジュゲートを生成する一般的合成方法を用いて、N末端修飾されていてもよいADM(27−52)を合成することによって実施することができる。
【0047】
[D−Ala]−GLP−1(7−36):GLP−1(7−36)及びエキセンディン−4(1−39)などのその誘導体のC末端部分は、受容体の結合に重要であるアミノ酸残基が露出したαヘリックス構造を形成する。Nε位がマレイミド官能基で修飾された追加のリジン残基を用いて、例えば国際公開第2005/058954号に記載された、改良された固相ペプチド合成によって、このアミノ酸配列を伸長すると、ヒト血清アルブミンのCys34アミノ酸と共有結合した後でも、受容体と結合し、インビボでの官能基活性を示す。一方、タンパク質分解の安定性は、2位にD−Ala残基を組み込むことによって(さらに)改善することができる(Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 4395−4398)。同様に、GLP−1(7−36)又はその類似体を、適切に官能基化された(例えばチオール基を含む)五糖−スペーサー部分と複合化することができる。或いは、Cysアミノ酸は、ペプチド配列、好ましくは11、12、16、22、23、24、25、26、27、30、34、35若しくは36位に組み込むことができ、又は37位に付加することができ、また、適切に官能基化された(例えばマレイミド基を含む)五糖−スペーサー部分に、GLP−1誘導体のPEG化(国際公開第2004/093823号)の場合と類似した方法によってカップリングすることができる。また、GLP−1の複合物は、GLP−1に対する二官能NHSエステル連結試薬との直接カップリングと、それに続く(例えば、GLP−1の直接PEG化についてLee et al. Bioconjugate Chem. 2005, 16, 377−382に記載されたように)位置異性体の分離及び適切に官能基化された五糖−スペーサー部分とのカップリングによって得ることができる。
【0048】
インターロイキン−2(IL−2):市販の未変性recH−IL2の遊離Cys125アミノ酸又は依然として生物活性である、IL2変異タンパク質の遊離の(追加の)Cysアミノ酸を、PEG−マレイミドによるIL2のPEG化(米国特許第5,206,344号)の場合と類似したプロトコルに従って、マレイミド基を含む五糖−スペーサー部分と反応させることができる。
【0049】
本発明の化合物を調製する上記方法において考えられる手順段階であるペプチドカップリングは、アジド法、混合酸無水物法、活性化エステル法、カルボジイミド法などペプチド断片のカップリング若しくは縮合に対して当分野で周知の方法によって、又は、好ましくは、TBTUのようなアンモニウム/ウロニウム塩の影響下で、特にN−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び7−アザ−N−ヒドロキシベンゾトリアゾールのような触媒作用的なラセミ化抑制化合物を添加して、実施することができる。概要は、The Peptides, Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 3, E. Gross and J. Meienhofer, eds.(Academic Press, New York, 1981)及びPeptides: Chemistry and Biology. N. Sewald and H.−D. Jakubke(Wiley−VCH, Weinheim, 2002)に記載されている。
【0050】
化合物中のアミン官能基は、合成手順中にN保護基(tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジルオキシカルボニル(Z)基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基又はフタロイル(Phth)基のような、ペプチド化学反応においてα−アミノ基の保護のために一般に使用される基を意味する。)によって保護することができ、又はアジド部分のデマスキングによって導入することができる。アミノ保護基及びその除去方法の概要は、上記The Peptides, Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 3及びPeptides: Chemistry and Biologyに記載されている。
【0051】
遊離塩基の形で存在し得る本発明の化合物は、薬剤として許容される塩の形で反応混合物から単離することができる。薬剤として許容される塩は、式(I)の遊離塩基を塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機又は無機酸で処理することによって得ることもできる。
【0052】
本発明の化合物又はその中間体は、不斉炭素原子を有し得る。したがって、本発明の化合物又はその中間体は、純粋な鏡像異性体、鏡像異性体の混合物、又はジアステレオマーを含む混合物として得られる場合がある。純粋な鏡像異性体を得る方法は、当分野で周知であり、例えば光学活性な酸から得られる塩及びラセミ混合物の結晶化、又はキラルカラムを用いたクロマトグラフィーである。ジアステレオマーの場合には、順相(straight phase)又は逆相カラムを使用することができる。
【0053】
物理化学分析及び生化学分析
タンパク質の生理活性に対する、二官能リンカー及び/又は反応性五糖部分を用いた反応の効果をモニターする幾つかの技術が利用可能である。この点で、可溶な受容体分子を相補的結合剤(インスリン)として用いた生体分子間相互作用解析(BIA)及び酵素活性の測定は貴重なツールである。五糖複合物とATIIIの結合試験も、これらのアッセイに含まれ得る。イオン交換、サイズ排除クロマトグラフィー及びATIIIアフィニティークロマトグラフィーは、五糖複合物の亜分画に利用可能な方法である。一方、電気泳動技術は、直交、定性及び定量キャラクタリゼーション(例えばSDS−PAGE、CZE)に適切である。複合化部位は、複合物のMALDI−TOF MS分析及びN末端配列決定によって同定することができる。
【0054】
薬物動態(PK)試験
非修飾ポリペプチド及び対応する五糖複合物のインビボでの半減期を求めるPK試験をラットで実施することができる。幾つかの選択肢、例えば血しょう試料におけるIodogen、求電子置換を起こすラクトペルオキシダーゼイオン化、又は標識部分としてのボルトンハンター試薬を用いた125Iによる放射性標識とガンマ線放射の測定が利用可能である。当分野で公知の他の方法は、非標識複合物の注入と、それに続くELISA又はLuminex法による免疫化学的分析に基づく。
【0055】
薬理学的評価
本発明のポリペプチドとATIII結合性五糖の複合化の薬理効果は、以下に示すように、インビトロでのアッセイ及びインビボでの動物モデルにおいて試験することができる。インスリンは、2個のジスルフィド架橋によって結合した2個のペプチド鎖からなる5.8kDaのタンパク質である。Lys ε−アミノ基又はN末端α−アミノ基の1つにおける部位特異的化学修飾は詳細に記録されている。五糖とインスリンの複合化の効果は、血清試料のグルコース、インスリン及びC−ペプチド含有量(内因性インスリン分泌を補正するための生物マーカー)を分析することによって試験することができる。血糖計、ヒトインスリン及びC−ペプチド放射性免疫測定法が商用的に利用可能である。血糖値に対するインスリンのインビボでの効果は、ラット又はビーグルで測定することができる。
【0056】
デカペプチド模倣GnRH拮抗物質ガニレリクスの五糖複合化のインビトロ及びインビボでの薬理学的効果は、確立されたアッセイ及び動物モデルにおいて試験することができる。先進のポリペプチド合成によって、マウス及びラットにおいて卵成熟及び排卵を阻止するガニレリクスとその効果を比較することができる明確に定義された分子が生成される。ガニレリクスとその五糖複合物の相手の生物学的半減期の比較は、例えば、投与後に成熟及び排卵の天然プロセスが回復する時間を求めることによって試験することができる。
【0057】
GLP−1(7−36)は、インスリン分泌の刺激、グルカゴン分泌、胃又は腸運動の阻害、グルコース利用の促進、体重減少の誘導などの多数の生物学的効果をもたらす、十分研究された周知のインスリン分泌性内分泌ホルモンである。GLP−1(7−36)は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)によって迅速に分解される。この早すぎる分解は、例えば、8位のアミノ酸残基を(例えばD−アラニンで)置換することによって回避し得る。大きい脂肪酸鎖又はPEGによる修飾などの他の手法によって、生物活性GLP−1又は(例えば、国際公開第2004/093823号に定義される)その類似体が生成される。修飾されていてもよいGLP−1(7−36)誘導体を担体の五糖と複合化する(付加的な)安定化効果は、DPPIVの存在下でインビトロで複合物の安定性を測定することによって、また、血しょう中半減期を免疫化学的分析を用いて測定することによってインビボで、試験することができる。GLP−1五糖複合物の官能基の活性は、GLP−1受容体に結合し、それを活性化する能力を測定することによってインビトロで求めることができる。インビボでの薬力学的効果は、血清試料のグルコース及びインスリンを分析することによって試験することができる。
【0058】
アドレノメデュリンは、血管拡張、気管支拡張、神経伝達、成長調節、骨形成調節などの多数の生物学的機能を有する52アミノ酸ポリペプチドである。切断断片のADM(27−52)は、血管拡張剤活性の構造上の要件を欠くが、培養したラット骨芽細胞の成長を依然として用量依存的に刺激することができる(Regulatory Peptides 2003, 112, 79−86)。また、ADM(27−52)は、ラットにおける血管石灰化を阻害し(Regulatory Peptides 2005, 129, 125−132)、したがって動脈石灰化の予防に応用し得ることが最近確認された。ADM(27−52)を担体の五糖と複合化する効果は、ラット胎児の活発に成長する骨芽細胞の培養におけるインビトロでの骨形成活性又は骨形成の指標のインビボでの増加を(骨吸収に影響を及ぼさずに)測定する確立されたアッセイによって評価することができる。
【0059】
オクトレオチドは、ソマトスタチンの合成オクタペプチド類似体であり、末端肥大症及びある種の内分泌腫ようの治療に臨床的に使用される。長時間作用性デポー製剤(例えば、Sanostatin LARデポー、Novartis Pharma、Basel、Switzerland)は、毎日3回の皮下注射と比較して、血しょう成長ホルモン及びインスリン様成長因子(IGF−I)レベルの低下に少なくとも有効であることが判明した。薬物動態特性及び薬理学的特性に対するオクトレオチドと五糖の複合化の効果は、オスのラットにおいて、確立された放射性免疫測定法を用いて複合オクトレオチドのレベル及びIGF−Iの変化レベルを測定することによって試験することができる。
【0060】
インターロイキン−2(IL−2)は、白血球(Tリンパ球)によって体内で自然に産生されるタンパク質であり、免疫系の重要なタンパク質である。IL−2は、薬物として市販されており(アルデスロイキン、Proleukin(登録商標)、Chiron、U.S.)、一部のタイプの癌(有毛細胞白血病)の治療に使用され、CD4細胞数を増加させるために抗HIV治療と併用される。五糖−IL−2複合物の特異的生理活性は、Gillis et al.(J. Immunol. 1978, 120, 2027−2032)によって記述されたIL−2細胞増殖バイオアッセイによってインビトロで求めることができる。
【0061】
薬剤
本発明の複合物は、経腸又は非経口投与することができる。これらの化合物及びその組成物の正確な用量及び投薬計画は、ポリペプチド自体の生物活性、医薬品を投与する個々の対象の要求、苦痛の程度又は開業医の要求及び判断に応じて必然的に決まる。一般に、非経口投与は、吸収により大きく依存する他の投与方法よりも少ない投与量を必要とする。しかし、ヒトに対する1日用量は、好ましくは0.0001−1mg/kg体重、より好ましくは0.001−0.1mg/kg体重である。
【0062】
本発明の化合物を用いて製造された医薬品は、治療におけるアジュバントとしても使用することができる。かかる場合には、医薬品は、かかる病態の治療に有用である他の化合物と一緒に投与される。
【0063】
本化合物は、例えば標準の参考文献、Gennaro et al., Remington’s Pharmaceutical Sciences,(18th ed., Mack Publishing Company, 1990、特にPart 8: Pharmaceutical Preparations and Their Manufactureを参照されたい。)に記載された、薬剤的に適切な助剤と混合して、丸剤、錠剤などの固体投与単位に圧縮することができ、又はカプセル剤若しくは坐剤に加工することができる。本化合物は、薬剤的に適切な液体を用いて、例えば注射剤又は噴霧剤用の溶液、懸濁液、乳濁液の形で適用することもできる。
【0064】
投与単位、例えば錠剤を製造する場合、充填剤、着色剤、重合体結合剤などの従来の添加剤の使用が企図される。一般に、活性化合物の機能を妨げない、薬剤として許容される任意の添加剤を使用することができる。組成物を一緒に投与することができる適切な担体としては、適切な量で使用される、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体など又はその混合物が挙げられる。静脈内投与するときには、薬剤組成物を、ボーラスとして、時間の異なる2回以上の回数で、又は一定流量若しくは非線形流量の注入として、投与することができる。したがって、本発明の組成物は、任意の投与経路用に処方することができる。
【0065】
典型的には、静脈内投与用組成物は、無菌等張性緩衝水溶液である。必要に応じて、本組成物は、可溶化剤、安定剤及び注射部位におけるとう痛を軽減するリドカインなどの局所麻酔薬を含むこともできる。一般に、これらの成分は、別個に、例えばキットで、又は単位剤形として一緒に混合して、例えば、凍結乾燥粉末、又は水を含まない濃縮物として、供給される。本組成物は、活性薬剤量を活性単位で示した、アンプル、小袋などの機密密封容器に保存することができる。本組成物を注入投与する場合には、医薬品等級の無菌「注射用水」、食塩水又は他の適切な静脈内輸液を含む注入ボトルを用いて投与することができる。本組成物を注射投与する場合には、無菌注射用水又は食塩水のアンプルを、投与前に各成分を混合することができるように用意することができる。本発明の薬剤組成物は、本発明の化合物及び薬剤として許容されるその塩と、薬剤として許容される任意の成分、賦形剤、担体、アジュバント又はビヒクルを含む。
【0066】
特に断らない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は等価である方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を本明細書に記載する。本明細書で言及する全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献を参照によりその全体を援用する。矛盾が生じた場合には、定義を含めて本明細書が基準になる。また、材料、方法及び実施例は、説明のためにのみあり、限定的なものではない。
【0067】
本発明を、これらだけに限定されないが、以下の実施例によってさらに詳細に説明する。異なる五糖、スペーサー及びポリペプチドを用いて、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変を成し得ることを理解されたい。
実施例
使用略語:
ACN アセトニトリル
AcOH 酢酸
ADM アドレノメデュリン
(h)ATIII (ヒト)抗トロンビンIII
AUC 曲線下面積
BIA 生体分子間相互作用解析
BocO ジ−tert−ブチルジカルボナート
Cl クリアランス
DCCI N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N’−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ELISA 酵素結合免疫吸着検定法
Equiv. 当量
ESI エレクトロンスプレーイオン化
GLP−1 グルカゴン様ペプチド1
GMB ガンマ−マレイミドブチリル
GMBS ガンマ−マレイミド酪酸N−ヒドロキシコハク酸(succinimic)エステル
HBS−EP EDTAとポリエチレングリコールを含むhepes緩衝食塩水
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HP−SEC 高速サイズ排除クロマトグラフィー
HRP 西洋わさびペルオキシダーゼ
i.v. 静脈内
IL−2 インターロイキン−2
MALDI−TOF マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型
MoAb モノクローナル抗体
MRT 平均滞留時間
MS 質量分析法
NMM N−メチルモルホリン
NMR 核磁気共鳴
PAGE ポリアクリルアミドゲル電気泳動
PBS リン酸緩衝食塩水
PS 五糖
Q−TOF 四重極飛行時間型
recH 組換えヒト
RT 室温
Rt 保持時間
SDS ドデシル(docecyl)硫酸ナトリウム
TBTU 2−(1H−ベンゾトリアゾル−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
TCA トリクロロ酢酸
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
Vss 定常状態での分布容積
材料及び方法
H−NMRスペクトルをBruker DRX−400(ultra shield)によって400MHzで記録した。有機溶媒中の化学シフトをテトラメチルシランに対するppm(δ)で報告する。
【0068】
DMF、1,4−ジオキサン、NMM、酢酸アンモニウム、BocO、TFA、DMSO、DCCI(Acros)、ヒドロキシルアミン(50wt%水溶液)、無水ヨード酢酸、GMBS(Sigma Aldrich)、recHインスリン(Diosynth)、TEA、6−アミノカプロン酸、N−ヒドロキシスクシンイミド(Janssen)、THF(Biosolve)、2−メルカプト−[S−アセチル]酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(13)、TBTU(Fluka)、ACN(Merck)、AcOH及びNaHPO(J.T. Baker)を各供給業者から入手してそのまま使用した。
【0069】
カラムクロマトグラフィーを、MP Biomedicals Germany GmbH kieselgel 60(MP silica 32−63、60Å)及びMerck LiChroprep RP−18(40−63μm)を用いて実施した。TLC分析を、Merck TLC plates kieselgel 60 F254を用いて実施した。化合物をUV吸収(254nm)によって、及び/又はUSUI試薬(リンモリブデン酸(phosphor molybdenic acid)/AcOH/HSOのEtOH溶液)と一緒に炭化することによって、可視化した。
【0070】
MALDIスペクトルをVoyager DE PRO(Applied Biosystems、Framingham、MA、USA)を用いて正及び負イオンモードの線形、遅延引き出しモードで得た。再結晶化アルファ−シアノヒドロキシケイ皮酸(CHCA、500mL/L ACN/1mL/L TFA中3g/L)をマトリックスとして使用した。分子量を二点較正によって(例えば、recHインスリン及びその断片鎖の1つ又はミオグロビンをm/z16953及びm/z8477に割り当てることによって)測定した。
【0071】
Q−TOFスペクトルを、ESI源を備えたPE Sciex API Q−star Pulsarを用いて正イオンモードで得た。試料をHOに溶解させ、逆相Zip Tip(登録商標)を用いて脱塩した。初期設定の分析HPLCを、3台のGilsonポンプ(305)の勾配システムを備えたGilson 234自動試料採取装置とLuna(商標)C18(2)カラム(逆相、150×4.6mm、5μm)を用いて実施した。Gilson UV検出器(118)を210nmにおける検出に使用した。勾配溶出をカラム温度40℃及び流量1mL/minで実施した。溶離剤A(HO/ACN、9:1中の0.1%TFA溶液)95%と溶離剤B(0.1%TFAのACN溶液)5%で5分間開始し、次いで15から50%ACNの線形勾配を25分間適用した。
【0072】
化合物4の分析的な(HPLC)分析を、Shimadzu SCL−10A vp(システム制御装置)二方向ポンプ勾配システムとLuna(商標)C18(2)カラム(逆相、150×2.0mm、5μm)を用いて実施した。ShimadzuダイオードアレイUV検出器(SPD−M10A vp)を214nmにおける検出に使用した。勾配溶出をカラム温度40℃及び流量0.4mL/minで実施した。
【0073】
分取HPLCを、単一のポンプ(Waters 600)勾配システムを備えたWaters 2769 sample managerとLuna(商標)C18(2)カラム(逆相、250×50mm、10μm)を用いて実施した。Gilson UV検出器(2996、フォトダイオードアレイ)を210nmにおける検出に使用した。勾配溶出を流量50mL/minで実施した。溶離剤A(HO/ACN、9:1中の0.1%TFA溶液)90%と溶離剤B(0.1%TFAのACN溶液)10%で10分間開始し、次いで15から50%の溶離剤Bの線形勾配を50分間適用した。
【0074】
分析陰イオン交換クロマトグラフィーを、Pharmaciaポンプ(P−900)勾配システムを備えたPharmacia Akta ExplorerとPharmacia Biotech MonoQ HR 5/5カラムを用いて実施した。Pharmacia UV検出器(UV 900)を、Pharmacia pH及び電気伝導度検出器(pH/C 900)と組み合わせて、210nmにおける検出に使用した。AD検出器(AD900)をChiralyser(IBZ)と併用した。また、Pharmaciaフラクションコレクター(Frac 950)及びPharmacia自動試料採取装置(A 900)を使用した。初期設定の溶出を流量1mL/minで実施した。溶離剤A(ACN/HO 2:8)74%と溶離剤B(ACN/2M NaCl 2:8)26%で5分間開始し、次いで溶離剤A 20%と溶離剤B 80%までの勾配を15分間適用した。
【0075】
分取陰イオン交換クロマトグラフィーを、Pharmaciaポンプ(P−50)とPharmacia勾配ミキサー(LKB GP−10)勾配システムを備えたPharmaciaシステム及びPharmacia Biotech XK16 Q−sepharose Fast−Flowカラムを用いて実施した。Pharmacia UV検出器(LKB−UV−MII)を、Biotechnics電気伝導度検出器と組み合わせて、214nmにおける検出に使用した。初期設定の勾配溶出を流量4.6mL/minで実施した。溶離剤A(HO)80%と溶離剤B(2M NaCl水溶液)20%で20分間開始し、次いで溶離剤A 20%と溶離剤B 80%までの勾配を210分間適用した。
【0076】
Sephadex G25を用いた分取ゲルろ過(脱塩)を、Watson−Marlowポンプ(101V)を備えたPharmaciaシステムとPharmacia Biotech XK26 Sephadex−G25ファインカラムとを用いて実施した。Pharmacia UV検出器(LKB−UV−MII)を、Biotechnics電気伝導度検出器と組み合わせて、214nmにおける検出に使用した。均一濃度溶離をHOを用いて流量1mL/min HOで10時間実施した。
【0077】
化合物6を用いた分析HP−SECを、HP1100クロマトグラフィーシステムに搭載したPharmacia Superdex(商標)30 HR 10/30カラムを用いて実施した。0.2mol/Lリン酸ナトリウム緩衝剤pH7.0を用いて流量0.4mL/Lで溶出させた。
【0078】
他の複合物を用いた分析HP−SECを、分析Q−sepharose クロマトグラフィーの場合と同様に、Akta ExplorerシステムとPharmacia Superdex(商標)75 HR 10/30カラムを用いて実施した。均一濃度溶離を50mM酢酸アンモニウムを用いて流量1mL/minで実施した。
【0079】
分取HPSECを、分析Q−sepharose クロマトグラフィーの場合と同じAkta ExplorerシステムとPharmacia Superdex(商標)XK26 Hiload 26/60 prep−gradeカラムを用いて実施した。均一濃度溶離を50mM酢酸アンモニウムを用いて流量1.32mL/minで実施した。
【0080】
五糖複合物とATIII、抗インスリン抗体及びインスリン受容体との結合試験をBIA法によって実施した。センサーグラム及び記録点を、BIAevaluation 3.2によってブランク(blanc)のフローセルを減算して分析した。IC50値をgraphpad Prism 3.0によって計算した。
【0081】
280測定をNano Drop(登録商標)ND−1000 UV−VIS分光光度計を用いて実施した。
【0082】
スキーム1. 化合物4の合成
【0083】
【化19】

【0084】
(実施例1)
6−(2−ヨード−アセチルアミノ)−ヘキサン酸(2)
6−アミノ−ヘキサン酸(1)(0.37g、2.8mmol)の1,4−ジオキサン(60mL)懸濁液に無水ヨード酢酸(0.50g、1.4mmol)を添加した。反応混合物を50℃で3時間及び周囲温度で16時間撹拌した。その後、TLC分析(CHCl/MeOH/AcOH、98/10/1、v/v/v)によって、化合物1が親油性(lypophilic)のより低い生成物に完全に転化したことを確認した。EtOAc(100mL)を添加し、反応混合物を0.10M HCl水溶液(50mL)で洗浄した。次いで、有機層を塩水(50mL)で2回洗浄し、混合水層をEtOAc(75mL)で2回抽出した。混合有機層を脱水(MgSO)し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフ(CHCl/MeOH/AcOH、98/10/1、v/v/v)にかけて、6−(2−ヨード−アセチルアミノ)−ヘキサン酸(2)(0.45g、>100%)を得た。H NMR(MeOD):δ 3.67(s、2H)、3.17(t、2H)、2.29(t、2H)、1.66−1.33(m、6H)。
【0085】
(実施例2)
6−(2−ヨード−アセチルアミノ)−ヘキサン酸2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イルエステル(3)
6−(2−ヨード−アセチルアミノ)−ヘキサン酸(2)(0.20g、0.67mmol)のTHF(10mL)溶液にN−ヒドロキシスクシンイミド(85mg、0.74mmol)及びN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.21g、1.0mmol)を添加した。反応混合物を暗所で16時間撹拌した。TLC分析(EtOAc/Hep/AcOH、80/20/1、v/v/v)によって活性化エステル3への完全な転化を確認した後、酢酸7滴を添加した。次いで、混合物を冷凍庫に終夜保存した(−20℃)。粗製混合物をろ過し、ろ液を濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/Hep/AcOH、40/60/5→20/80/5、v/v/v)によって精製し、適切な画分を濃縮して、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体3(0.18g、67%)を得た。H NMR(MeOD):δ 3.67(s、2H)、3.18(t、2H)、2.82(s、4H)、2.63(t、2H)、2.0−1.0(m、6H)。
【0086】
(実施例3)
化合物4
recHインスリン(50mg、8.6μmol)のDMF(15mL)懸濁液に溶液が透明になるまでHO(9.0mL)を添加した。溶液を15分間撹拌して、室温に調節した。0.1M NaOH水溶液を滴下して、溶液のpHを10に調節した。その後、反応フラスコをスズ箔で包んだ。3(5.0mg、8.6μmol)のDMF(1.0mL)溶液を反応混合物に1分間滴下した。反応混合物を磁気撹拌子で撹拌し、pHを10に維持した。30分後、過剰の0.1%TFA水溶液(5.0mL)を添加して、反応をクエンチした。HO(200mL)を添加し、反応混合物を凍結乾燥して、4(60mg、>100%、最高8.6μmol)を得た。溶離剤A(0.1%TFA水溶液)80%と溶離剤B(ACN)20%で5分間開始し、次いで溶離剤A 20%と溶離剤B 80%までの勾配を30分間適用したHPLC(Shimadzu、逆相)分析によって、45%の一置換生成物の存在が明らかになった(recHインスリン Rt:12.84min;化合物4 Rt:13.54min;B29/A1二置換生成物:Rt 14.16min)。粗製生成物を精製せずに次の反応に使用した。
【0087】
(実施例4)
化合物6
粗製化合物4(60mg)を、(Nを通して)脱気した0.1M NaHPO緩衝剤(25mL、pH7.0)中の0.05M NHOH溶液に溶解させた。反応混合物を磁気撹拌子で撹拌し、(Nを通して)30分間脱気した。次いで、Angew. Chem. Intl. Ed.(1996), 35, 331−333に記載のように調製した五糖−スペーサー化合物5(95mg、43μmol)を固体として添加し、反応混合物を窒素雰囲気下で16時間撹拌した。
【0088】
スキーム2. 化合物6の合成
【0089】
【化20】


【0090】
五糖−インスリン複合物6の精製。
【0091】
前段落の反応混合物から、一置換五糖−インスリン複合物6を、陰イオン交換クロマトグラフィー(捕捉段階)及びサイズ排除クロマトグラフィー(ポリッシング段階)によって精製してほぼ均一にした。
【0092】
複合物含有溶液を、20mmol/Lリン酸ナトリウム緩衝剤PH8.0で平衡にしたQ−Sepharose FFカラムにかけた。保持されないタンパク質画分がカラムを通過した後、A280がベースラインレベルに戻るまで平衡緩衝剤で徹底して洗浄した。Superdex 30を用いた分析HP−SEC及びMALDI−TOF−MSで測定して、結合した未反応のインスリンは約0.4mol/L NaClで溶出し、一置換五糖−インスリン複合物は0.7mol/L NaClで溶出した。複合物画分を、限外ろ過又は2mol/L NaClバンプ(bump)を溶出段階として用いた陰イオン交換クロマトグラフィーによって濃縮し、リン酸緩衝食塩水で平衡にした分取Superdex 30カラムにかけた。HP−SEC及びMALDI−MSで測定して、純粋なモノ複合物(monoconjugate)を含む画分をプールした。最終生成物をエタノール/ドライアイス混合物中で瞬間凍結(snapfreezing)後、−70℃で保存した。複合物濃度を、1mg/mLに対する吸光度係数0.8を用いたA280測定によって推定した。
【0093】
化合物6のキャラクタリゼーション
精製五糖−インスリン複合物6の特性(identity)をインスリンのELISAによって、また、ヒトインスリン受容体とヒトATIIIを分析物として用いた生体分子間相互作用解析(BIA)によって求めた。純度及び単量体性(monomericity)を、Superdex 30を用いたHP−SEC及びMALDI−MSによって評価した。
【0094】
図1に示すように、2バッチの五糖−インスリン複合物6がインスリン特異的ELISAによって識別される。これは、免疫反応性インスリン部分が存在することを示している。BiacoreにおけるBIA実験から、五糖と複合化したインスリンは、依然としてヒトインスリン受容体に結合することができると結論することができる(図2A)。これらの実験においては、ヒトインスリンに対するMoAb(クローンM3222213、10−130、バッチ223、Fitzgerald Industries International、MoAb 13と命名)を、標準アミノカップリングによってCM5センサーチップ上に固定した。HBS−EP(Biacore、カタログ番号22−0512−44)を泳動緩衝剤として流量5μL/minで用いた。インスリン複合物を注射すると、複合物と固定化抗体が結合した。免疫結合したインスリン複合物は、ヒトインスリン受容体及びATIIIと反応することができた。後者は、共有結合した五糖を表す(図2B)。
【0095】
五糖−インスリン複合物6のMALDI−TOFスペクトルを、材料及び方法の項に記載したように得た。分析前に、試料を脱塩し、μC18−ZipTips(Millipore Corporation、Billerica MA、USA)で濃縮した。溶出は、500mL/L ACN/1mL/L TFA中の10g/Lアルファ−シアノを含有する溶液1μLを用いて、ステンレススチールMALDI標的に対して直接的であった。図3は、m/z6700及び7400の周囲のピークを含む、一置換五糖−インスリン複合物の典型的なMALDI−TOF MSプロファイルである。見掛け上の不均一性は、80Daの段階的損失をもたらす、レーザーにより誘導された五糖部分の脱硫酸化(desulfatation)によって生じる。二置換インスリンに特徴的なm/z9400の範囲にピークが存在せず、二置換五糖−インスリン複合物は、MALDI−TOF MS分析では見出されなかった。未反応インスリンのピークも存在しないことに注意すべきである(m/z5808)。
【0096】
HP−SEC分析(図4)は、保持時間22分の主ピークを示している。純度は97%と推定された。(未反応インスリン及び二置換複合物は存在しないと考えられる。)。
【0097】
(実施例5)
化合物11
五糖7(46mg)[五糖7は、国際公開第2001/42262号に記載の誘導体化された単糖5と、Bioorg. Med. Chem.(1994), 2, 1267−1280に記載の四糖30を生成する合成経路を実施することによって得られる四糖とのカップリングによって得ることができる。ここで、還元性末端の単糖構成要素12は、脱保護及び硫酸化を含めて、これらの刊行物に記載の方法と類似の方法によって、メチル2,3−ジ−O−ベンジル−6−O−メチル−α−D−グルコースで置換される。]及びグリコール誘導体10(18mg、1.6当量)をDMF(5mL)に窒素雰囲気下で溶解させた。NMM(61μL、5当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。溶媒を減圧蒸発させ、残渣を分取陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。適切な画分を混合し、分取G25カラムで脱塩した。混合画分を凍結乾燥させて、11(29mg、57%)を白色粉末として得た。純度>98%(分析陰イオン交換、UV210nm)。H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 5.31(d、1H)、5.23(m、1H)、4.91(m、1H)、4.45−4.35(m、1H)、4.48−3.93(m、11H)、3.87−3.62(m、9H)、3.60−3.45(m、39H)、3.41−3.34(m、15H)、3.33−3.23(m、7H)、3.18−3.08(m、2H)、2.97(t、2H)、2.23(s、3H)。
【0098】
(実施例6)
化合物12
国際公開第2001/42262号に記載のように調製した五糖8(0.2g)及びAngew. Chem. Intl. Ed.(1996), 35, 331−333に記載のように調製したグリコール誘導体10(53mg、1.3当量)をDMF(5.0mL)に溶解させた。NMM(61μL、5当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。溶媒を減圧蒸発させ、残渣を分取陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。適切な画分を混合し、分取G25カラムで脱塩した。混合画分を凍結乾燥させて、12(0.13g、55%)を白色粉末として得た。純度>95%(分析陰イオン交換、UV210nm)。H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 5.12(d、1H)、5.03(d、1H)、4.70(d、1H)、4.34−4.18(m、2H)、4.09−4.03(m、1H)、3.98−3.90(m、5H)、3.85−3.74(m、6H)、3.66−3.48(m、7H)、3.43−3.24(m、41H)、3.23−3.15(m、13H)、3.12(m、2H)、3.10−3.01(m、7H)、2.99−2.88(m、3H)、2.78(t、2H)、2.04(s、3H)。
【0099】
(実施例7)
化合物14
五糖9(100mg)[五糖9は、国際公開第01/42262号に記載の誘導体化された単糖5と、米国特許出願公開第2004/0024197号に記載の四糖48との、脱保護及び硫酸化を含めて、これらの特許出願に記載の方法と類似の方法を用いたカップリングによって得ることができる。]及び化合物13(18mg、1.5当量)をDMFに溶解させた。NMM(15μL、2.5当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。溶媒を減圧蒸発させ、残渣を分取G25カラムによって精製した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、14(84mg、79%)を白色粉末として得た。純度>95%(分析陰イオン交換、UV210nm)。H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 5.12(d、1H)、5.09(d、1H)、4.82(d、1H)、4.40−4.26(m、1H)、4.10−3.87(m、8H)、3.82−3.73(m、4H)、3.67−3.43(m、11H)、3.41−3.35(m、14H)、3.31−3.26(m、13H)、3.24−3.15(m、8H)、3.14−3.02(m、5H)、3.01−2.87(m、3H)、2.08(s、3H)。
【0100】
スキーム3. 五糖スペーサー誘導体11、12及び14の合成。
【0101】
【化21】

【0102】
(実施例8)
化合物15
RecHインスリン(779mg)を無水DMSO(25mL)及びAcOH(465μL)に溶解させた。BocO(73mg、2.5当量)を溶液に添加し、生成した混合物を周囲温度で5時間撹拌した。0.1%TFAのHO/ACN(9/1、v/v、150mL)溶液を添加して反応をクエンチし、溶液を4回凍結乾燥させた。残渣を0.1%TFAのHO/ACN(9/l)/ACN(3:1)溶液に溶解させ、主生成物を分取HPLCによって単離した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、A1,B1−ジBocインスリン15(200mg、26%)を白色粉末として得た。純度:98%(分析HPLC)。C2673996581のMS計算値=6008、(recHインスリンを内部比較基準として用いた)MALDI−TOFの実測値6008。
【0103】
(実施例9)
化合物16
RecHインスリン(752mg)を無水DMSO(20mL)及びTEA(0.75mL)に溶解させた。BocO(66mg、2.5当量)のDMSO(5mL)溶液を溶液に添加し、反応物を周囲温度で1.5時間撹拌した。0.1%TFAのHO/ACN(9/1、v/v、150mL)溶液を添加して反応をクエンチし、混合物を3回凍結乾燥させた。生成した残渣を0.1%TFAのHO/ACN(9/1)に溶解させ、分取HPLCに供した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、A1,B29−ジBocインスリン16を白色粉末として得た(332mg、43%)。純度:>98%(分析HPLC)。C2673996581のMS計算値=6008、(recHインスリンを内部比較基準として用いた)MALDI−TOFの実測値6008。
【0104】
(実施例10)
化合物17
A1,B1−ジBocインスリン15(200mg)を無水ジメチルスルホキシド(5mL)及びトリエチルアミン(145μL)に溶解させた。GMBS(45mg、5当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で30分間撹拌した。0.1%TFAのHO/ACN(9/1、v/v、150mL)を添加して反応混合物をクエンチし、生成した混合物を凍結乾燥させて、A1,B1−ジBoc−B29−GMBインスリン17(0.5g、粗製)を得た。これをさらに精製せずに次の段階に使用した。
【0105】
(実施例11)
化合物18
A1,B29−ジBocインスリン16(330mg)を無水DMSO(5mL)及びTEA(332μL)に溶解させた。GMBS(230mg、15当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で30分間撹拌した。0.1%TFAのHO/ACN(9/1、v/v、150mL)溶液を添加して反応混合物をクエンチし、生成した溶液を凍結乾燥させて、A1,B29−ジBoc−B1−GMBインスリン18(0.6g、粗製)を得た。これをさらに精製せずに次の段階に使用した。
【0106】
(実施例12)
化合物19
A1,B1−ジBoc−B29−GMBインスリン17(0.5g、粗製)をTFA(5mL)に溶解させ、周囲温度で10分間撹拌した。TFAを減圧除去し、残渣を0.1%TFAのHO/ACN(2/1、v/v)溶液に溶解させ、溶液をすぐに分取HPLCに供した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、B29−GMBインスリン19を白色粉末として得た(93mg、47%)。純度 >99%(分析HPLC)。
【0107】
(実施例13)
化合物20
A1,B29−ジBoc−B1−GMBインスリン18(0.6g、粗製)をTFA(5mL)に溶解させ、混合物を周囲温度で10分間撹拌した。TFAを減圧蒸発させ、粗生成物を0.1%TFAのHO/ACN(9/2、v/v)溶液に溶解させ、生成溶液をすぐに分取HPLCに供した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、B1−GMBインスリン20を白色粉末として得た(127mg、40%)。純度 >99% 分析HPLC)。C2673996581のMS計算値=5973、(recHインスリンを内部比較基準として用いた)MALDI−TOFの実測値5973。
【0108】
(実施例14−19)
GMB−インスリンと五糖の複合化の一般的手順
GMB−インスリン19又は20(25mg)を0.1M NaHPO緩衝剤(12mL、pH7.0、Nを溶液に通して脱気)に溶解させた。溶液を磁気撹拌子で撹拌し、さらに30分間脱気した。次いで、五糖5、11、12又は14(23mg、2.5当量)を固体として添加し、続いてNHOH(50μL、0.05M)を添加した。反応混合物を窒素雰囲気下で周囲温度で撹拌した。16時間後、反応混合物を分取HPSEC(S75)に供した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、インスリン−ペンタ複合物24、25、26、27、28、29を白色粉末として、30%−50%の典型的な収率で得た。収率は、A280測定によってrecHインスリンの場合と同じモル吸光係数を用いて求めた。
【0109】
(実施例14)
化合物24
B29−GMBインスリン19(25mg)を五糖5(23mg)と一般的手順に従って複合化して、B29−五糖インスリン誘導体24(15mg、45%)を得た。C3204876713714のESI−MS計算値=7913、Q−TOFによる実測値2638.7 M3+;1979.2 M4+;1583.6 M5+、1319.8 M6+。純度:>98%(分析HPSEC、分析陰イオン交換)。
【0110】
(実施例15)
化合物25
B1−GMBインスリン20(25mg)を五糖5(23mg)と一般的手順に従って複合化して、B1−五糖インスリン誘導体25(16mg、47%)を得た。C3204876713714のESI−MS計算値=7913、Q−TOFによる実測値2637 M3+;1978 M4+;1583 M5+。純度:>95%(分析HPSEC)、>98%(分析陰イオン交換)。
【0111】
(実施例16)
化合物26
B29−GMBインスリン19(13mg)を五糖14(12mg)と一般的手順に従って複合化して、B29−五糖インスリン誘導体26(5mg、31%)を得た。C3124716713314のESI−MS計算値=7737、Q−TOFによる実測値2578 M3+;1934 M4+。純度:>98%(分析HPSEC)。
【0112】
(実施例17)
化合物27
B1−GMBインスリン20(15mg)を五糖14(13mg)と一般的手順に従って複合化して、B1−五糖インスリン誘導体27(8mg、40%)を得た。C3124716713314のESI−MS計算値=7737、Q−TOFによる実測値2578 M3+;1934 M4+。純度:>98%(分析HPSEC)。
【0113】
(実施例18)
化合物28
B29−GMBインスリン19(15mg)を五糖12(13mg)と一般的手順に従って複合化して、B29−五糖インスリン誘導体28(6mg、30%)を得た。C3214896713413のESI−MS計算値=7847、Q−TOFによる実測値1962 M4+;1570 M5+;1308 M6+。HPSEC純度:>98%。
【0114】
(実施例19)
化合物29
B29−GMBインスリン19(15mg)を五糖11(13mg)と一般的手順に従って複合化して、B29−五糖インスリン誘導体29(7mg、33%)を得た。C3224916713112のESI−MS計算値=7782、Q−TOFによる実測値2593 M3+;1945 M4+;1556 M5+。純度:>98%(分析HPSEC)。
【0115】
スキーム4. インスリン−五糖複合物24−29の合成
【0116】
【化22】

【0117】
キャラクタリゼーション
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
化合物24−29をSuperdex 75 26/10カラムを用いた分析的なHP−SEC分析に供した。50mM酢酸アンモニウムを用いて流量1.0mL/minで溶出させた。
【0118】
表1. インスリン複合物24−29のHPSEC分析
【0119】
【表1】

【0120】
全ての複合物が単一ピーク(少なくとも>95%純度)として観測され、インスリン−五糖の凝集体が存在しないことを示している。
【0121】
N末端配列解析
インスリン−五糖複合物24−29並びに対応する前駆体15、16、19及び20をN末端配列解析(エドマン分解)に供した。実施したサイクルの各々において、B29が置換されたインスリン誘導体15、19、24、26、28及び29は、複合物の初期量のレベルに匹敵するレベルでA鎖アミノ酸とB鎖アミノ酸の等モル量を生成した。これは、両方のN末端の利用性(accessibility)が十分であることを示し、したがってB29位に限定される複合部分が存在しないことを示している。これに対し、B1が置換されたインスリン誘導体16、20、25及び27のN末端配列決定中にはA鎖アミノ酸しか見出されなかった。これは、B鎖のN末端におけるエドマン分解が結果として阻害されたB1位における複合化を示している。
【0122】
生体分子間相互作用解析を用いた競合的hATIII結合アッセイ
試験の原理及び目的:生体分子間相互作用解析(BIA)は、相互作用物の一方をセンサーチップ表面に共有結合によって固定し、もう一方の相互作用物をこの表面を連続して流れる緩衝剤に注入することによって、(生体)分子間の相互作用を試験する。結合は、この表面での屈折率の変化として記録され、相互作用物の分子量(Mw)に比例する。
【0123】
hATIIIと五糖複合物の相互作用を試験するために、化合物9をセンサーチップ表面に共有結合させる。hATIIIと五糖が結合することによって、結合した(小さい)五糖リガンドと(大きい)hATIII分析物とのMwの差の結果として、強い信号が発生する。一定濃度のhATIIIと可変濃度の遊離五糖又は複合物とを含む、プレインキュベートした試料を表面全体に注入する。プレインキュベーション中に五糖又は複合物とATIIIが結合すると、固定化五糖に結合するATIIIが減少する。この競合結合アッセイによって、各五糖複合物のIC50値を求めることができる。
【0124】
実験手順:化合物9をアミンカップリングによってpH8.5でCM5センサーチップに共有結合させる。センサーチップをEDC/NHSによって15分間活性化させ、続いて化合物9を濃度100μg/mLで注入する。未反応ヒドロキシスクシンイミド基をエタノールアミンと7分間反応させる。5mol/L NaCl 5μLを流量25μL/minで3回短時間注入して表面を再生させる。五糖の固定化を検出することはできないが、上記のように処理した表面とhATIIIの結合は特異的であることが判明した。これは、表面に五糖が存在することを示している。一連の濃度(concentration series)のhATIIIを試験して、(最大結合量の80%において)阻害に敏感な濃度を推定した。ブランク(blanc)及び固定化表面に流量20μL/minで25℃で順次3分間注入した。記録点を170秒にする。5mol/L NaClを12秒間注入して表面を再生する。
【0125】
試料を、一定濃度のhATIII(すなわち15nmol/L)と0.78−100nMの濃度の五糖複合物に対して試験する。五糖複合物のないhATIII注入又は記録点を100%結合とする。最大結合量に対する五糖と複合物の相対結合%を用い、Log[濃度]と結合%をプロットすることによって(可変勾配を有する)S字曲線を作成した。このS字曲線からIC50値を得た。
表2. 競合結合アッセイ(BIA試験)における潜在的ATIII結合能力を表すIC50
【0126】
【表2】

【0127】
結論 − 基準担体五糖7−9(図5、表2)間のIC50の差から、ATIIIに対する結合親和性の尺度である、ATIIIに対する潜在的競合結合能力を、これらの分子中の硫酸基数を変えることによって調整できることが確認される。hATIIIに対する全ての対応するインスリン−五糖複合物(24−29)の潜在的(競合)結合能力(IC50)は、親の基準五糖7−9と比較して同じ範囲にある(図6、表2)。これらのデータによれば、複合物の薬物動態特性は、ATIIIに対して異なる結合親和性を有する代替の担体五糖を用いることによって調整することができる。
【0128】
質量分析法
五糖複合物の質量分析法による典型的な分析結果を図7に示す。例えば、総計の式(bruto formula)C3204876713714及びモノアイソトピック質量計算値7913を有する化合物24をESI−QTOFシステムで分析した。ESI−MSスペクトルでは、recHインスリンの電荷分布と一致するm/z比1319.8(6+)、1583.6(5+)、1979.2(4+)、2638.7(3+)の複数の荷電イオンが出現した。また、C3204876713714(化合物24)に対して無作為に選択した2価以上の荷電ピーク(例えば5+)の同位体分布は、Isoproプログラムを用いて理論計算した同位体分布(図7Aの点線を参照)と一致する。
【0129】
GnRH拮抗デカペプチドと五糖の一般的複合化手順(実施例20、21、24、25)
ガニレリクス誘導体(dervative)30又は35(70mg)をDMF(20mL)に窒素雰囲気下で溶解させた。TBTU(14mg、1.05当量)及びNMM(25μL、5当量)を添加し、混合物を周囲温度で1時間撹拌した。五糖8又は9(88mg、1.1当量)をDMF(10mL)に溶解させて、懸濁液を得た。この懸濁液を反応混合物に添加し、残りの混合物を周囲温度で16時間撹拌した。反応混合物を水(200mL)で希釈し、凍結乾燥させた。生成した残渣を、0.01M酢酸アンモニウム(pH7)を用いた逆相シリカ(C18)にかけ、10から50%ACNの勾配でブロック溶出(block−elution)させて精製した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、ガニレリクス五糖複合物31、32、36又は37を白色粉末として得た。勾配溶出による分析HPLCを、溶離剤A(0.01M酢酸アンモニウム)90%と溶離剤B(ACN)10%で5分間開始し、次いで溶離剤B 100%までの勾配を30分間適用して実施した。
【0130】
(実施例20)
化合物31
J. Med. Chem. 1992, 35, 3942−3948に記載の固相ペプチド合成によって調製したガニレリクス誘導体30(70mg)を、一般的手順に従って五糖8(88mg)と複合化して、31(16mg、40%)を得た。純度96%(分析HPLC)、97%(分析陰イオン交換)。C126191ClN1862のESI−MS計算値=3175.0359、実測値792.7390[M−4H]4−、1057.3258[M−3H]3−、1062.9883[M+NH−3H]3−H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 8.56(m、1H)、8.53(m、1H)、8.10(m、1H)、7.76(m、2H)、7.68(m、2H)、7.47(m、1H)、7.39(m、2H)、7.16(m、3H)、7.04(m、2H)、6.95(m、2H)、6.63(m、2H)、5.35−5.25(m、2H)、4.95(m、1H)、4.68−4.61(m、1H)、4.61−4.51(m、2H)、4.50−4.38(m、2H)、4.38−4.25(m、3H)、4.24−3.96(m、15H)、3.90−3.84(m、1H)、3.84−3.67(m、8H)、3.67−3.20(m、53H)、3.19−3.09(m、4H)、3.09−2.98(m、12H)、2.98−2.84(m、8H)、2.77(m、2H)、2.13(m、1H)、1.96−1.72(m、5H)、1.68−1.42(m、5H)、1.42−1.20(m、7H)、1.18−0.89(m、13H)、0.85−0.71(m、5H)。
【0131】
(実施例21)
化合物32
ガニレリクス誘導体30(70mg)を一般的手順に従って五糖9(88mg)と複合化して32(52mg、35%)を得た。C125189ClN1865の質量計算値=3240.9770;ESI−QTOFによる実測値809.2219[M−4H]4−、1079.2994[M−3H]3−、1084.9739[M+NH3−、1090.6340、[M+2NH−3H]3−H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 8.45(m、1H)、8.38(m、1H)、7.90(m、1H)、7.78(d、1H)、7.73(m、2H)、7.59(m、1H)、7.50(m、1H)、7.43(m、2H)、7.20(m、3H)、7.05(d、2H)、6.97(m、2H)、6.66(m、2H)、5.40−5.30(m、2H)、5.09(d、1H)、4.67−4.48(m、2H)、4.40−3.92(m、18H)、3.92−3.75(m、7H)、3.77−3.17(m、56H)、3.12−3.02(m、11H)、3.02−2.98(m、8H)、2.97−2.83(m、4H)、2.81−2.75(m、2H)、2.14(m、1H)、1.99−1.86(m、5H)、1.82−1.23(m、12H)、1.22−0.90(m、13H)、0.87−0.72(m、5H)。純度:95%(分析HPLC)、97%(分析陰イオン交換純度)。
【0132】
(実施例22)
化合物34
化合物30(100mg)をDMFに溶解させた。TBTU(36mg、2当量)及びNMM(60μL、10当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で1時間撹拌した。次いで、国際公開第2005090382号に記載のように調製した化合物33(34mg、2当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣を水/CANに溶解させ、生成した溶液を分取HPLC(勾配:溶離剤A(0.1%TFA水溶液)80%と溶離剤B(ACN)20%から溶離剤A 20%と溶離剤B 80%まで45分間)に供した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、化合物34(60mg、60%)を白色粉末として得た。分析HPLCを、溶離剤A(0.1%TFA水溶液)75%と溶離剤B(CHCN)25%から溶離剤A 20%と溶離剤B 80%までの勾配を15分間適用して実施した。C94139ClN1819の質量計算値=1859、MALDI−TOFの実測値1860[M+H]及び1882[M+Na]。純度:>90%(分析HPLC)。
【0133】
(実施例23)
化合物35
化合物34(60mg)をHO/TFA/ACN(7mL、5:1:1)に溶解させ、周囲温度で2時間撹拌した。過剰量のTFA(2.5mL)を添加し、反応混合物をさらに22時間撹拌した。TFAを減圧蒸発させ、残りの溶液を凍結乾燥させて、35(45mg、77%)を白色粉末として得た。C90131ClN1819の質量計算値=1803、MALDI−TOFの実測値1804[M+H]及び1826[M+Na]。純度:>95%(分析HPLC)。
【0134】
(実施例24)
化合物36
ガニレリクス誘導体35(17mg)を五糖8(19mg)と一般的手順に従って複合化した。さらなる精製を分取HPLC(勾配:溶離剤A(0.01M酢酸アンモニウム)90%と溶離剤B(CHCN)10%を5分間、次いでB 100%まで50分間)によって実施した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、36(2mg、6%)を得た。純度:94%(分析HPLC)、>98%(分析陰イオン交換)。
【0135】
(実施例25)
化合物37
ガニレリクス誘導体35(17mg)を五糖9(19mg)と一般的手順に従って複合化した。さらなる精製を、化合物36の場合と同様に、分取HPLCによって実施した。適切な画分を混合し、凍結乾燥させて、37(1.16mg、3%)を得た。純度:88%(分析HPLC)。分析陰イオン交換純度:>95%。
【0136】
スキーム5. 化合物31、32、36及び37の合成。
【0137】
【化23】

【0138】
結論:(図8に示す)複合物31及び32と複合物36及び37とのATIIIに対する潜在的競合結合能力の差は、連結残基の長さに無関係に、ATIIIに対する親和性を、これらの分子に含まれる硫酸基数を変えることによって調整できることを示している。さらに、これらのデータによれば、これらの複合物のインビボでの薬物動態特性が五糖を選択することによって調整することができる(下記の薬物動態試験参照)。また、複合化されていない親ペプチドガニレリクスがATIIIと競合結合を示さないことから、複合物とATIIIの結合は特異的である。
【0139】
(実施例24)
化合物39
NeoMPS(Strasbourg、France)によって供給される化合物38(26.5mg、8.4μmol)を、脱気した0.1M NaHPO/NaHPO緩衝剤(16mL、pH7.0)に溶解させた。五糖5(45.5mg、21μmol、2.5当量)を窒素雰囲気下で添加し、生成した混合物を約10分間撹拌した。次いで、NHOH水溶液(50wt%、69μL)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。生成物をQ−Sepharoseカラム(2M NaCl(aq)/HO/ACN、10/40/1→40/10/1、v/v/v)によって精製した。適切な画分を、上述したようにG25 sephadexクロマトグラフィーによって脱塩して、化合物39(15.7mg、35%)を得た。収率は、1mg/mL溶液に対する理論吸光度0.48を用いてA280測定によって求めた。C19630941101の質量計算値=5108.8;ESI−Q−TOFによる実測値=1740.6[M+5Na]3+、1311.2[M−1H+6Na]4+、1053.5[M−2H+7Na]5+
スキーム6. 化合物39の合成
【0140】
【化24】

【0141】
結論:図9に示すように、ATIIIに対する複合物39の潜在的競合結合能力は、親の五糖−スペーサー残基(図5、化合物9参照)と比較して、一定である。これらのデータは、ペプチドのインビボでの半減期が、ATIII結合性担体の五糖との複合化によって、かなり延長され得ることを示唆している(下記の薬物動態試験参照)。また、複合化されていない親ペプチドADM(27−52)がATIIIと競合結合を示さないことから、複合物とATIIIの結合は特異的である。
【0142】
(実施例25)
化合物41
NeoMPS(Strasbourg、France)によって調製された化合物40(15mg、4.2μmol)を、脱気した0.1M NaHPO/NaHPO緩衝剤(8mL、pH7.0)に溶解させた。五糖5(22.7mg、10.4μmol、2.5当量)を窒素雰囲気下で添加し、混合物を約10分間撹拌した。次いで、NHOH水溶液(50wt%、0.14mL)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。生成物を、化合物39の場合と同様に精製して、化合物41(1.38mg、6%)を得た。収率は、1mg/mL溶液に対する理論吸光度1.22を用いてA280測定によって求めた。C21834244106の質量計算値=5528;ESI Q−TOFの実測値=1843.7[M+3H]3+、1383.0[M+4H]4+、1107 M+5H]5+
【0143】
結論:ATIIIに対する複合物41の潜在的競合結合能力は、親の五糖−スペーサー残基化合物9と比較して、一定である(図10参照)。これらのデータは、ペプチドのインビボでの半減期が、ATIII結合性担体の五糖との複合化によって、かなり延長され得ることを示唆している(下記の薬物動態試験参照)。
【0144】
スキーム7. 化合物41の合成
【0145】
【化25】

【0146】
(実施例26)
化合物44
Bachem(Weil am Rhein、Germany)などの供給業者から入手することができるオクトレオチド(化合物42、50mg、0.04mmol)をDMSO(5mL)に溶解させた。AcOH(7μL)を添加して、微酸性溶液を作製した。続いて、GMBS(11.2mg、0.04mmol、1.0当量)を添加し、生成溶液を窒素下で1時間撹拌した。LC−MS分析によれば、GMB部分がN末端Phe残基に極めて位置選択的に導入されたGMBオクトレオチド43にほぼ完全に転化された。反応物を約5℃に冷却し、NaHPO/NaHPO(20mL、pH7.0)溶液を添加した。10分後、混合物を室温にし、Nを10分間通した。次いで、五糖5(21.8mg、0.01mmol、0.25当量)を窒素雰囲気下で固体として添加し、続いてNHOH水溶液(0.11mL、50wt%)を添加し、反応混合物を16時間撹拌した。生成物を、上述したようにイオン交換クロマトグラフィーによって精製して、化合物44(6.3mg、19%)を得た。C112170127010の質量計算値=3122.7;ESI−Q−TOFによる実測値=1562.3[M+2H]2+、1041.9[M+3H]3+H−NMR(DO、400MHz、HH−COSY):δ 7.52−7.29(m、10H)、7.26−7.14(m、4H)、7.03(s、1H)、5.44(m、1H)、5.37(m、1H)、5.14(m、1H)、5.12−4.89(m、2H)、4.77−4.60(m、3H)、4.45−3.97(m、18H)、3.95−3.76(m、13H)3.75−3.35(m、57H)、3.33−2.59(m、18H)、2.22−1.16(m、2H)、1.85−1.76(m、3H)、1.71−1.38(m、3H)、1.32−1.15(m、7H)、0.81−0.61(M、2H)。
【0147】
スキーム8. 化合物44の合成
【0148】
【化26】

【0149】
結論:ATIIIに対する複合物44の潜在的競合結合能力は、親の五糖−スペーサー残基化合物9と比較して、一定である(図11参照)。これらのデータは、ATIII結合性担体の五糖との複合化によって、ペプチドのインビボでの半減期がかなり延長されることを示している。
【0150】
(実施例27)
化合物46
五糖9(100mg)及びGMBS(22mg、1.5当量)をDMF(10mL)に溶解させた。DiPEA(18μL、2当量)を添加し、反応混合物を周囲温度で終夜撹拌した。溶媒を減圧蒸発させ、残渣を分取G25カラムによって精製した。混合画分を凍結乾燥させて、46(50mg、46%)を白色粉末として得た。C537755NaのESI−MS計算値=2052;ESI−Q−TOFによる実測値=1027M2+
【0151】
(実施例28)
化合物47
五糖マレイミド誘導体46を未変性recH−IL2(R&D systems、202−IL/CF)の遊離Cys125と複合化した。複合化前に、recH−IL−2をHPSEC、SDS−PAGE及びMALDI−TOF MSで分析した。それによれば、recH−IL−2は、圧倒的に単一な組成であった。recH−IL2(1mg、800μL、1.26mg/mL 0.5%SDS含有PBS溶液)をロールバンク上で過剰の化合物46(10mg/mL水溶液59μL、5当量)で終夜室温で処理して、出発材料を完全に転化させた。次に、未反応マレイミド46を5倍モル過剰のシステアミン(16μL、10mg/mL)で3時間ブロックした。反応混合物を、0.5%SDSのPBS溶液で透析して(カットオフ6−8kDa)、過剰のシステアミン及び46を除去した。生成物の最終量はA280で求めて0.69mgであった。
【0152】
最終複合物47をSDS−PAGE(4−12%)及びウエスタンブロットによって分析した(図12参照)。レーン3及び4から、化合物47は、(五糖部分の存在に対応して)recH−IL2よりも高いMwを有すると結論される。a)10μg/mL hATIII(HAT 950A2L−Kordia);b)a−hATIII(MoAb HATIII 200−Kordia);c)GAM−HRP(W402B 20373201−Promega)のウエスタンブロット分析とそれに続くインキュベーション及びDAB試薬による最終の検出によって、五糖含有IL2との特異的ATIII結合(レーン7対8)が明らかになった。
【0153】
スキーム9. 複合物47の合成
【0154】
【化27】

【0155】
薬理学
複合(ポリ)ペプチドの薬物動態の測定
本発明の化合物の代表例の薬物動態特性を以下のパラグラフに記載のように求めた。
【0156】
ラット血しょう中のインスリンを測定するためのヒトインスリンELISA
ヒト及びラットの血しょう又は緩衝系中のヒトインスリンを測定するために、ヒト酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を開発した。このようにして、ELISAを使用して、薬物動態学的実験由来の血しょう試料中のインスリン濃度を求めることができる。
【0157】
アッセイは、2種類のモノクローナル抗体、すなわち固相に結合した捕捉抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識された検出抗体とを用いた免疫化学的「サンドイッチ」原理に基づく。
【0158】
五糖−インスリン複合物6及び組換えヒトインスリン(recHインスリン、バッチSIHR017、Diosynth、The Netherlands製)の薬物動態特性を求めるために、ラット血しょう試料を10Hzで振とうしながら室温で1時間インキュベートした。このインキュベーション中に、五糖−インスリン複合物6又はrecHインスリンは、固定化抗インスリン抗体と結合する。第2の洗浄手順後、HRPと複合化された検出抗体抗インスリンを添加して、固定化インスリン複合体に結合させた。プレートを洗浄して、結合していない酵素標識抗体を除去し、続いて3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン/H基質溶液を添加した。反応を0.5M硫酸によって停止させ、マイクロタイタープレートを分光測定によって450nmで読み取った。色の強度は、インスリン濃度に正比例する。次いで、各血しょう試料について、インスリンの平均濃度(mol/L)を求めた。
【0159】
化合物6の薬物動態特性の測定
インスリン複合物6及びrecHインスリンの薬物動態学的挙動を300−400gのオスのウィスターラットで試験した。ラットをO/NO/イソフルラン混合物の吸入によって麻酔し、その後、右の頚静脈をカニューレ処置した。翌日、ラットに化合物6又はrecHインスリン3.5nmol/kgをi.v.投与し、その後、血液を幾つかの時間間隔で採取した。血液を遠心分離し、その後、血しょうを吸い上げ、使用するまで−20℃で保存した。血しょう試料中の試験化合物の濃度を、ヒトELISAによって、試験化合物自体の原液でできた検量線に対して求めた。試料中の濃度をnmol/Lで表した。動力学的パラメータをWinNonlinのノンコンパートメントモデルを用いて計算した。
【0160】
結論:図13及び表3に示すように、五糖−インスリン複合物6の薬物動態特性は、親のrecHインスリンの薬物動態特性よりも大きく改善された。
【0161】
表3. ラットにおける化合物6又はrecHインスリン(3.5nmol/kg)のi.v.投与後の薬物動態パラメータ。実験をn=3/処理で実施した。
【0162】
【表3】

【0163】
125I標識後の薬物動態の測定
五糖複合物24、28、29、31、32、39及び41を、Machalonis et al.(Biochem J. 1969, 113:299−305)に従って、ラクトペルオキシダーゼ法によって125Iで標識した。標識後、複合物をSephadex G25を用いたゲルろ過及び陰イオン交換体HiTrap Q10によって精製した。動力学的実験を化合物6の場合と同様に、但し125I標識複合物を代わりに用いて繰り返した。甲状腺に125が蓄積するのを防止するために、化合物の投与前にラットを10mg/kgヨウ化カリウムで経口的に処理した。
【0164】
125I標識複合物の結末(fate)を正確に求めることは、循環する遊離125を生成する代謝的な細胞内の内因性脱ハロゲン化によって悪影響を受ける恐れがある。遊離125自体はラットにおける消失半減期が3.2時間であるので(対照。データ示さず。)、比較的短い半減期を有する125I標識化合物の実測全半減期は延長され、比較的長い半減期を有する化合物の実験的に求めた半減期は短くなり得る。実際、複合物31、32及び39の観測された排出半減期は、ペプチドと担体五糖の複合化によって滞留時間が延長されることを定性的に示している。
【0165】
40倍の体積のTCAで沈殿させた(最終濃度10%)後のペレット(0.1mL)中の放射能を測定することによって上記方法を改良すると、競合する内因性125I脱ハロゲン化に対して補正された、化合物24、28、29及び41の薬物動態パラメータが得られた。
【0166】
recHインスリンと比較したインスリン−五糖複合物24、28及び29の薬物動態
表4. インスリン複合物24、28及び29のi.v.投与後の薬物動態パラメータ。実験をn=3/処理で実施した。比較のために、recHインスリンをn=1で試験した(cpm単位の用量を正規化した。)。
【0167】
【表4】

【0168】
結論:125I標識法によって求めたインスリン−五糖複合物24の薬物動態特性(図14、表4)は、ELISA法によって求めた類似のインスリン−五糖複合物(化合物6)の薬物動態特性(図13、表3)と一致した。2つの分析方法によって求めたrecHインスリンの動力学的パラメータの差は、最初の15分間に循環から標識が急速に消失するために、(Vss及びClを計算する)曲線外挿の差によって説明することができる。
【0169】
また、インスリン五糖複合物24、28、29のAUC、Cl及びVssの観測された差(図14、表4)は、ATIIIに対して異なる結合親和性を有する代替の担体五糖を用いることによって複合物の薬物動態特性を調整できることを明確に示している(これは、BIA試験の知見と一致する。図6及び表2を参照されたい。)。
【0170】
五糖複合物31及び32の薬物動態
表5. 2種類の複合物31及び32のi.v.投与後の薬物動態パラメータ実験をn=3/処理で実施した。(脱ハロゲン化に対する補正をしていないデータ)。
【0171】
【表5】

【0172】
結論:遊離ガニレリクスの半減期(ラットにおけるT1/2 1.4時間、i.v.、Chan et al. Drug. Metab. Dispos 1991, 19, 858)は、担体五糖との複合化によってかなり延長される(図15、表5)。化合物31と32の薬物動態学の比較によれば、Vss、Cl及びT1/2排出は、ATIIIに対する親和性が高い五糖を使用することによって改善される。これらのデータは、BIA試験(図8参照)の知見と合わせて、ATIIIに対して異なる結合親和性を有する代替の担体五糖を用いることによって複合物の薬物動態特性を調整できることを示している。
【0173】
五糖複合物39及びADM(27−52)の薬物動態
表6. ADM(27−52)及び化合物39のi.v.投与後の薬物動態パラメータ。実験をn=3/処理で実施した。(脱ハロゲン化に対する補正をしていないデータ)。
【0174】
【表6】

【0175】
結論:ADM(27−52)の薬物動態特性は、ATIII結合性担体の五糖との複合化によって改善された(化合物39、図16、表6)。データを脱ハロゲン化に対して補正していないので、ADM(27−52)のT1/2自体は、過大評価されている可能性がある。さらに、遊離アドレノメデュリンの半減期は、ヒトにおいて僅か22分に過ぎない(Meeran et al. J. Clin. Endocrin. Met. 1997, 82, 95−100)。これらの観測結果及びBIA試験における観測結果(図9)は、(ポリ)ペプチドの薬物動態特性が、循環ATIIIに対して特異的結合親和性を有する(担体)複合物への転化によって改善され得るという結論を支持する。
【0176】
[D−Ala]−GLP−1(7−36)と比較した五糖複合物41の薬物動態
表7. GLP−1及び化合物41のi.v.投与後の薬物動態パラメータ。実験をn=3/処理で実施した(cpm単位のデータを正規化した。)。
【0177】
【表7】

【0178】
結論:[D−Ala8]−GLP−1(7−36)の薬物動態特性は、ATIII結合性担体の五糖との複合化によって改善された(化合物41、図17、表7)。化合物41のClは非複合ペプチドの約1/100に減少し、Vssは1/13に減少し、その結果、AUC(暴露)は約100倍になった。BIAデータ(図10)と合わせて、これらの観測結果は、(ポリ)ペプチドの薬物動態特性が、ATIII結合性複合物への転化によって改善され得るという結論を支持する。
【0179】
ラット血しょう中の(ポリ)ペプチド−五糖−ATIII複合体の測定
(ポリ)ペプチド五糖複合物がアンチトロンビンIIIにインビボで確実に結合するように、捕捉抗体として抗インスリンMabと検出抗体としてHRP複合抗ATIII抗体とを使用するサンドイッチ型ELISAを、化合物6の薬物動態学的実験から得られた血しょう試料に対して実施した。完全な五糖−インスリン−ATIII複合体のみが、recHインスリンを負の対照として使用したこのアッセイタイプにおいて検出できることは明らかである)。
【0180】
ラットにおいて化合物6又はrecHインスリン3.5nmol/kgのi.v.投与の1分後に得られる血しょう試料から、五糖−インスリン複合物6及びrecHインスリンとラットATIIIの結合性を判定した。結果を図18に示す。
【0181】
結論:五糖−インスリン複合物6はATIIIと結合するが、recH−インスリンはATIIIと複合体を形成することができない。抗ウサギATIII抗体は感応性が低いが、両方のATIII抗体は、五糖−インスリン複合物6−ATIII複合体を検出することができた。これらの結果によれば、化合物6は循環中のATIIIと結合し、ATIII結合性五糖の半減期の延長はこの複合体形成の結果である。したがって、元の非複合(ポリ)ペプチドよりも(化合物6などの)(ポリ)ペプチド−五糖複合物の薬物動態特性が改善されることは、複合物とATIIIの特異的結合によるものであると結論することができる。
【0182】
ラットにおけるインビボでのグルコース抑制試験
インスリン及びインスリン複合物の生物活性を、ラットモデルにおいてグルコース抑制レベルを測定することによって試験した。ラットを実験前に終夜(16時間)絶食させた。朝、尾部を少し切って、全ラットから採血した。その後、血液を試験片に滴下し、ACCU−Check Sensor血糖モニター(Roche Diagnostics)を用いてグルコースレベルを測定した。ラットを加熱箱中で39℃で10分間予熱後、五糖−インスリン複合物6及びインスリンを尾静脈にi.v.投与した。投与量は、五糖−インスリン複合物6 7nmol/kg及びrecH−インスリン3.5nmol/kgであった。種々の時間間隔で、凝固した血液を除去して血液試料を採取し、その後、グルコース含量を上記のようにすぐに測定した。
【0183】
五糖インスリン複合物6の薬力学
recH−インスリンよりも五糖−インスリン複合物6の薬物動態特性が改善されたことは、i.v.投与後のグルコース抑制レベルが延長したことによって確認される(図19参照)。
【0184】
化合物24、25、26、27及びインスリンデテミル(対照)を用いて実施した実験においては、(対照群における一貫したグルコースレベルを確実にするために)化合物の投与直前にラットを飢餓状態にした。
【0185】
B29−インスリン複合物24とB29−インスリン複合物26(図20)及びB1−インスリン複合物25とB1−インスリン複合物27(図21)を比較すると、グルコース抑制活性がスペーサーの長さにかかわらず同様に延長されたことがわかる。
【0186】
驚くべきことに、試験した全インスリン複合物の作用開始は、recHインスリン又はインスリンデテミル(i.v.投与)の作用開始よりも遅く、暴露は、より長い作用期間によって増強されたことが判明した。
【0187】
24nmol/kgの用量における1回の実験内のB29−インスリン複合物24、28及び29の直接比較によって、これらの血糖降下活性の作用期間の違いが実証される(図22参照)。すなわち、化合物24によるグルコースレベルの抑制は7時間以上持続したのに対して、複合物28及び29はi.v.投与後5.5時間を過ぎるともはや活性ではなかった。薬力学的差は、それぞれ化合物28及び29と比較した、化合物24の分布容積及びクリアランスの上記薬物動態学的差と一致する。最後に、インスリンデテミルを比較例として試験した。インスリンデテミルは、用量24及び48nmol/kgにおいて、より不明瞭でより短い活性を示した(図21、22)。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】インスリン特異的ELISAによる五糖−インスリン複合物6(インスリン−ペンタ)の識別。
【図2A】五糖(PS)−インスリン複合物6の生体分子間相互作用解析。固定化抗インスリン抗体とインスリン複合物の反応と、それに続くヒトインスリン受容体への結合。
【図2B】五糖(PS)−インスリン複合物6のBiacore解析。固定化抗インスリン抗体とインスリン複合物の反応と、それに続くヒトATIIIへの結合。
【図3】一置換五糖−インスリン複合物6のMALDI−TOF分析。
【図4】Superdex 30を用いた一置換五糖−インスリン複合物6のHP−SEC分析。
【図5】基準五糖−スペーサー残基7、8及び9のhATIII結合(BIA試験)。
【図6】インスリン−五糖複合物24、28及び29のhATIII結合(BIA試験)。
【図7】インスリン−五糖複合物24の質量分析(ESI−QTOF)。
【図7A】インスリン−五糖複合物の実測及び計算による典型的な同位体分布の比較(ESI−QTOF、M5+、化合物24)。
【図8】化合物31、32、36、37のhATIII結合(Biacore試験)。
【図9】(BIAによって測定した)化合物39のhATIII結合。
【図10】(BIAによって測定した)化合物41のhATIII結合プロファイル。
【図11】(BIAによって測定した)化合物44のhATIII結合プロファイル。
【図12】化合物47のSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析。
【図13】3.5nmol/kg recHインスリン(白丸)又は五糖−インスリン複合物6(三角形)のi.v.投与後のインスリン濃度を測定して求めた平均血しょう中濃度(平均±s.e.m.)。
【図14】125I標識複合物29(白四角形)、24(白丸)及び28(白三角形)並びにrecHインスリン自体(黒丸)のi.v.投与後T=1分の測定濃度に対する%で表した平均血しょう中濃度(平均±s.e.m.)。
【図15】125I標識複合物31(白四角形)及び32(黒三角形)のi.v.投与後T=1分の測定濃度に対する%で表した平均血しょう中濃度(平均±s.e.m.)。(脱ハロゲン化に対する補正をしていないデータ)。
【図16】125I標識複合物39(白四角形)及び125I標識ADM(27−52)(黒三角形)のi.v.投与後T=1分の測定濃度に対する%で表した平均血しょう中濃度(平均±s.e.m.)。(脱ハロゲン化に対する補正をしていないデータ)。
【図17】125I標識複合物41(黒三角形)及び125I標識GLP−1(白四角形)のi.v.投与後T=1分の測定濃度に対する%で表した平均血しょう中濃度(平均±s.e.m.)。
【図18】抗ヒト及び抗ウサギATIII抗体を用いた五糖−インスリン複合物6−ATIII複合体の検出。
【図19】7nmol/kg五糖−インスリン複合物6(白三角形)又は3.5nmol/kg recH−インスリン(白丸)のi.v.投与後の平均グルコースレベル(平均±s.e.m.)。
【図20】9nmol/kg recH−インスリン(白丸)で処理後のグルコースレベルと比較した、12nmol/kg五糖−インスリン複合物26(黒三角形)又は24(黒丸)のi.v.投与後の平均グルコースレベル(平均±s.e.m.)。
【図21】9nmol/kg recH−インスリン(白丸)又は48nmol/kgインスリンデテミル(白三角形)で処理後のグルコースレベルと比較した、24nmol/kg五糖−インスリン複合物27(黒四角形)又は25(黒菱形)のi.v.投与後の平均グルコースレベル(平均±s.e.m.)。
【図22】9nmol/kg recH−インスリン(白丸)又は24nmol/kgインスリンデテミル(白菱形)で処理後のグルコースレベルと比較した、24nmol/kg五糖−インスリン複合物24(黒三角形)、28(黒丸)又は29(黒四角形)のi.v.投与後の平均グルコースレベル(平均±s.e.m.)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドが少なくとも1個のオリゴ糖−スペーサー残基と複合化され、該オリゴ糖が4−18単糖単位を含む合成硫酸化オリゴ糖であり、該オリゴ糖自体がアンチトロンビンIIIに親和性を有し、該スペーサーが結合であり、又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である、ポリペプチドとオリゴ糖の複合物又は薬剤として許容されるその塩。
【請求項2】
オリゴ糖が4−6単糖単位からなる、請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
オリゴ糖が五糖である、請求項1又は2に記載の複合物。
【請求項4】
50nM以下の循環血しょう中濃度を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項5】
オリゴ糖自体が、ポリペプチド自体の薬理活性と比較したときに、治療レベル以下である抗凝血活性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項6】
オリゴ糖−スペーサー残基が構造(I)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の複合物。
【化1】

(式中、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な1個の連結残基が存在し、Rは独立にOSO、(1−8C)アルコキシ又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、
Raは独立にOSOであり、(1−8C)アルコキシであり、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、又は1−13単糖単位を含むオリゴ糖残基であり、
Rbは独立に(1−8C)アルコキシであり、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、又は1−13単糖単位を含むオリゴ糖残基であり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。)
【請求項7】
オリゴ糖−スペーサー残基が、構造(II)を有する五糖−スペーサー残基である、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合物。
【化2】

(式中、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な1個の連結残基が存在し、Rは独立にOSO、(1−8C)アルコキシ又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基であり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。)
【請求項8】
五糖残基が構造(III)を有する、請求項7に記載の複合物。
【化3】

(式中、Rは独立にOSO又は(1−8C)アルコキシであり、電荷は、プラスに帯電した対イオンによって打ち消されている。)
【請求項9】
五糖残基が構造(IV)を有する、請求項8に記載の複合物。
【化4】

(式中、Rは独立にOCH又はOSOである。)
【請求項10】
(IV)中の両方のR基がOSOである、請求項9に記載の複合物。
【請求項11】
ポリペプチドが分子量約0.3−50kDaである、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項12】
ポリペプチドが分子量約0.3−20kDaである、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項13】
ポリペプチドが分子量約0.3−7.5kDaである、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項14】
ポリペプチドが、インスリン、カルシトニン、ガニレリクス、GLP−1、[D−Ala]−GLP−1(7−36)、アドレノメデュリン、ADM(27−52)、キスペプチン−10、オクトレオチド又はインターロイキン−2から選択される、請求項11に記載の複合物。
【請求項15】
ポリペプチドが、インスリン、ADM(27−52)及び[D−Ala]−GLP−1(7−36)から選択される、請求項14に記載の複合物。
【請求項16】
ポリペプチドが五糖−スペーサー残基で一置換されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項17】
スペーサーが、本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である、請求項1から16のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項18】
スペーサーが10−50原子の長さを有する、請求項17に記載の複合物。
【請求項19】
スペーサーが少なくとも1個の−(CHCHO)−要素を含む、請求項17又は18に記載の複合物。
【請求項20】
以下の構造から選択される、請求項1に記載の複合物。
【化5】

(式中、R1=R2=H、R3=
【化6】

又はR1=R3=H、R2=
【化7】

であり、Yは構造A、B、C及びDから選択される。)
【化8】

【請求項21】
Yが構造A及びBから選択される、請求項20に記載の複合物。
【請求項22】
以下の構造を有する、請求項1に記載の複合物。
【化9】

【請求項23】
以下の構造を有する、請求項1に記載の複合物。
【化10】

【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の複合物と薬剤的に適切な助剤とを含む、薬剤組成物。
【請求項25】
治療用の、請求項1から23のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項26】
医薬品が、ある種の治療用ポリペプチドよりも改善された薬物動態特性を有する請求項1から23のいずれか一項に記載の複合物を含む、該ポリペプチドによる治療を必要とする患者を治療するための該医薬品の製造に対する、請求項1から23のいずれか一項に記載の複合物の使用。
【請求項27】
(a)ポリペプチドが複合化用に改変される、必須でない段階と、(b)改変されていてもよいポリペプチドがオリゴ糖−スペーサー分子と反応する、カップリング段階とを含み、
ポリペプチドが少なくとも1個のオリゴ糖−スペーサー残基と複合化され、該オリゴ糖が4−18単糖単位を含む合成硫酸化オリゴ糖であり、該オリゴ糖自体がアンチトロンビンIIIに親和性を有し、該スペーサーが結合であり、又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基である、ポリペプチドとオリゴ糖の複合物又は薬剤として許容されるその塩の調製方法。
【請求項28】
オリゴ糖が4−6単糖単位からなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
オリゴ糖が五糖である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
4−18単糖単位を含む合成硫酸化オリゴ糖であって、アンチトロンビンIII(ATIII)に対する親和性をそれ自体が有するオリゴ糖が、結合又は本質的に薬理学的に不活性である柔軟な連結残基によって、ポリペプチドに共有結合する段階を含み、該ポリペプチドを含む複合物が、生物活性を本質的に保持しつつ、元のポリペプチドよりも長い血しょう中半減期を有し、無視し得る抗凝血活性を有する、治療に有効な該複合物の調製方法。
【請求項31】
オリゴ糖が4−6単糖単位からなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
オリゴ糖が五糖である、請求項30又は31に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−538200(P2008−538200A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552658(P2007−552658)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050551
【国際公開番号】WO2006/082184
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】