説明

ポリマー、その製造方法、固体高分子形燃料電池用電解質膜および膜電極接合体

【課題】分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高いポリマー、該ポリマーを生産性よく製造できる製造方法、高温においても高い機械的強度を有し、プロトン伝導性が高い電解質膜、出力特性に優れ、高温運転に適した膜電極接合体の提供。
【解決手段】化合物(m1)および化合物(m2)の少なくとも一方とテトラフルオロエチレンとをジtert−ブチルパーオキサイドを用い、100〜200℃で重合させる工程を有する方法で得られたポリマーを電解質膜15等に用いる。


、Q21、Q22=パーフルオロアルキレン基等、Y=フッ素原子等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質材料として用いられるポリマー、その製造方法、該ポリマーを含む固体高分子形燃料電池用電解質膜および膜電極接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩電解用のイオン交換膜、固体高分子形燃料電池用電解質膜および触媒層に含まれる電解質材料には、化学的安定性が要求される。該電解質材料としては、下式(1)で表される化合物とテトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)とを重合して得られたポリマーの−SOF基をスルホン酸基(−SOH基)に変換したパーフルオロポリマーが知られている。
CF=CF(OCFCFY)(CFSOF ・・・(1)。
ただし、Yは、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、pは、0〜3の整数であり、qは、0または1であり、rは、1〜12であり、p+q>0である。
【0003】
式(1)で表される化合物としては、下式(11)〜(13)で表される化合物がよく用いられており、下記式(13)で表される化合物が特によく用いられている。
CF=CFO(CFSOF ・・・(11)、
CF=CFOCFCF(CF)O(CFSOF ・・・(12)、
CF=CF(OCFCF(CF))O(CFSOF ・・・(13)。
ただし、sは、1〜8の整数であり、tは、1〜8の整数であり、uは、2または3である。
【0004】
また、該パーフルオロポリマーを含む固体高分子形燃料電池用電解質膜には、プロトン伝導性および機械的強度の両立が求められる。しかし、プロトン伝導性を高めるために、式(1)で表される化合物に基づく繰り返し単位の含有率を高めると、機械的強度が低下する問題がある。そのため、式(1)で表される化合物に基づく繰り返し単位の含有率は、通常、10〜30モル%(スルホン酸基に変換した後のポリマーのイオン交換容量にして、0.7〜1.5ミリ当量/g乾燥樹脂に相当する。)が好適とされている。
【0005】
また、固体高分子形燃料電池には、除熱を容易にして発電効率を高めるために、高温運転(たとえば、120℃以上での運転)が求められている。しかし、前記パーフルオロポリマーは軟化温度が低くいため、100℃以上で運転すると該パーフルオロポリマーを含む電解質膜が変形し、充分な性能を発揮できない。そのため、現状では60〜80℃の温度で固体高分子形燃料電池を運転せざるを得ない。よって、電解質材料には、得られる電解質膜が高温においても高い機械的強度を有するために、軟化温度が高いことが求められている。
【0006】
軟化温度が高いパーフルオロポリマーとしては、下式(2)で表される化合物とTFEとを重合して得られたポリマーの−SOF基をスルホン酸基に変換したパーフルオロポリマーが提案されている(特許文献1)。
CF=CFCFOCFCFSOF ・・・(2)。
【0007】
該パーフルオロポリマーは、従来のパーフルオロポリマーよりも軟化温度が30℃以上高いとされている。また、特許文献1の実施例にイオン交換容量が1.18ミリ当量/g乾燥樹脂のパーフルオロポリマーが記載されており、該パーフルオロポリマーによれば、従来のパーフルオロポリマーと同等のプロトン伝導性を有する電解質膜を得ることができる。
【0008】
しかし、該パーフルオロポリマーには、下記の問題がある。
(i)固体高分子形燃料電池の出力特性をさらに向上させるには、イオン交換容量をさらに高くする(具体的には、1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂とする。)必要があるが、式(2)で表される化合物が重合しにくいため、式(2)で表される化合物に基づく繰り返し単位の含有率を高くできない。
(ii)式(2)で表される化合物とTFEとを重合して得られたポリマーの分子量が、式(1)で表される化合物とTFEとを重合して得られたポリマーに比べ低いため、得られる電解質膜の機械的強度が不充分である。
(iii)式(2)で表される化合物の重合速度が、式(1)で表される化合物の重合速度に比べ遅いため、工業的生産性が低い。
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0037265号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高いポリマーを生産性よく製造できる製造方法;分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高いポリマー;高温においても高い機械的強度を有し、かつプロトン伝導性が高い固体高分子形燃料電池用電解質膜;および出力特性に優れ、かつ高温運転に適した固体高分子形燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のポリマーの製造方法は、下記の工程(a)を有することを特徴とする。
(a)下式(m1)で表される化合物および下式(m2)で表される化合物の少なくとも一方と、TFEとを含むモノマー成分を、ラジカル重合開始剤としてジtert−ブチルパーオキサイドを用い、100〜200℃の温度で重合させる工程。
【0011】
【化1】

【0012】
ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、Q21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
前記式(m1)で表される化合物は、下式(m11)で表される化合物であることが好ましい。
【0013】
【化2】

【0014】
ただし、xは、1〜12の整数である。
前記式(m11)で表される化合物は、下式(m11−1)で表される化合物であることが好ましい。
【0015】
【化3】

【0016】
本発明のポリマーの製造方法においては、前記ラジカル重合開始剤を連続添加または逐次添加することが好ましい。
本発明のポリマーの製造方法は、さらに、下記の工程(c)を有することが好ましい。
(c)前記工程(a)の後、−SOF基を加水分解し、ついで酸型化してスルホン酸基に変換する工程。
【0017】
本発明のポリマーは、下式(u1)で表される繰り返し単位および下式(u2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、TFEに基づく繰り返し単位とを有し、イオン交換容量が、1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂であることを特徴とする。
【0018】
【化4】

【0019】
ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、Q21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
前記式(u1)で表される繰り返し単位は、下式(u11)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0020】
【化5】

【0021】
ただし、xは、1〜12の整数である。
前記式(u11)で表される繰り返し単位は、下式(u11−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0022】
【化6】

【0023】
本発明の固体高分子形燃料電池用電解質膜は、本発明のポリマーを含むことを特徴とする。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であり、前記電解質膜、アノードの触媒層およびカソードの触媒層の少なくとも1つが、本発明のポリマーを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポリマーの製造方法によれば、分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高いポリマーを生産性よく製造できる。
本発明のポリマーは、分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高い。
本発明の固体高分子形燃料電池用電解質膜は、高温においても高い機械的強度を有し、かつプロトン伝導性が高い。
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体は、出力特性に優れ、かつ高温運転に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本明細書においては、式(m1)で表される化合物を化合物(m1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
また、本明細書においては、式(u1)で表される繰り返し単位を単位(u1)と記す。他の式で表される繰り返し単位も同様に記す。繰り返し単位は、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
【0026】
<ポリマーの製造方法>
本発明のポリマーの製造方法は、下記の工程(a)を有し、必要に応じて工程(b)、(c)を有する方法である。
(a)化合物(m1)および化合物(m2)の少なくとも一方と、TFEとを含むモノマー成分を、ラジカル重合開始剤としてジtert−ブチルパーオキサイドを用い、100〜200℃の温度で重合させ、−SOF基を有するポリマー(以下、ポリマーFと記す。)を得る工程。
(b)必要に応じて、工程(a)の後、ポリマーFとフッ素ガスとを接触させ、ポリマーFの不安定末端基をフッ素化する工程。
(c)必要に応じて、工程(a)または工程(b)の後、ポリマーFの−SOF基を加水分解し、ついで酸型化してスルホン酸基に変換し、スルホン酸基を有するポリマー(以下、ポリマーHと記す。)を得る工程。
【0027】
【化7】

【0028】
ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、Q21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
【0029】
工程(a):
(化合物(m1))
のパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、ポリマーのイオン交換容量の低下が抑えられ、電解質膜のプロトン伝導性の低下が抑えられる。
【0030】
化合物(m1)としては、化合物(m11)が好ましく、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、化合物(m11−1)がより好ましい。
【0031】
【化8】

【0032】
ただし、xは、1〜12の整数である。
化合物(m11−1)は、特許文献1に記載された方法にしたがって、下記のスキームAに示す合成ルートにより製造できる。
【0033】
【化9】

【0034】
(化合物(m2))
21、Q22のパーフルオロアルキレン基がエーテル性の酸素原子を有する場合、該酸素原子は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、該酸素原子は、パーフルオロアルキレン基の炭素原子−炭素原子結合間に挿入されていてもよく、炭素原子結合末端に挿入されていてもよい。
パーフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
パーフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料の含フッ素モノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、ポリマーのイオン交換容量の低下が抑えられ、電解質膜のプロトン伝導性の低下が抑えられる。
【0035】
22は、エーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。Qがエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であれば、Qが単結合である場合に比べ、長期にわたって固体高分子形燃料電池を運転した際に、発電性能の安定性に優れる。
21、Q22の少なくとも一方は、エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性の酸素原子を有する炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基を有する含フッ素モノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
【0036】
としては、フッ素原子、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0037】
化合物(m2)としては、化合物(m21)が好ましく、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、化合物(m21−1)がより好ましい。
【0038】
【化10】

【0039】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
化合物(m21)は、たとえば、下記の合成ルートにより製造できる。
【0040】
【化11】

【0041】
(他のモノマー)
モノマー成分は、ポリマーの物性を調整するために、化合物(m1)、化合物(m2)およびTFE以外の他のモノマーを含んでいてもよい。
他のモノマーとしては、下記のものが挙げられる。
CF=CFCFO(CFn1F、
CF=CF(CFn2F、
CF=CFCF[OCFCF(CF)]n3OCFCFCF
CF=CFO(CFn4CF
CF=CFOCFCF(CF)O(CFn5CF
CF=CF[OCFCF(CF)]n6O(CFF、
【0042】
【化12】

【0043】
ただし、n1は1〜4の整数であり、n2は1〜11の整数であり、n3は1または2であり、n4は1〜9の整数であり、n5は1〜9の整数であり、n6は2または3であり、n7は1〜6の整数である。
モノマー成分中の他のモノマーの割合は、化合物(m1)、化合物(m2)およびTFEのいずれよりも少ないことが好ましい。
【0044】
(重合開始剤)
本発明においては、ラジカル重合開始剤として化合物(i−1)(ジtert−ブチルパーオキサイド)を用いる。ラジカル重合開始剤としてジtert−ブチルパーオキサイドを用いることにより、イオン交換容量が高いポリマーを生産性よく製造できる。
【0045】
【化13】

【0046】
ラジカル重合開始剤の濃度は、化合物(m1)および化合物(m2)の合計の質量に対して、0.1〜10000ppmが好ましく、1〜1000ppmがより好ましく、30〜300ppmが特に好ましい。ラジカル重合開始剤の濃度が低くすぎると、未反応モノマーの残存量が多くなり、ポリマーの収量も少なくなる。ラジカル重合開始剤の濃度が高すぎると、ラジカル濃度が高くなり、ラジカル同士のカップリング反応により生長反応が停止しやすくなるため、分子量が充分に上がらない。
【0047】
ラジカル重合開始剤は、重合温度とラジカル重合開始剤の10時間半減期温度とを考慮して、重合開始時に一括添加してもよく、重合中に連続添加または逐次添加してもよい。ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも10℃以上低い温度で重合を行う場合、ラジカル重合開始剤を重合開始時に一括添加するのが好ましい。一括添加は、連続添加または逐次添加に比べ、操作、制御が簡便である。ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度よりも10℃以上高い温度で重合を行う場合、ラジカル重合開始剤またはその溶液を、一括添加の場合より低濃度で、連続添加または逐次添加するのが好ましい。該場合では、一括添加より高温で重合できるため、化合物(m1)や化合物(m2)の重合しやすい条件を選択できる。
【0048】
(重合)
重合法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合方法、乳化重合法等が挙げられ、重合溶媒の連鎖移動性に起因するポリマーの分子量の低下が避けられる点から、重合溶媒を実質的に用いないバルク重合法が好ましい。
溶液重合法を採用する場合、連鎖移動定数の低い重合溶媒を用いることが好ましい。該重合溶媒としては、炭素原子、フッ素原子、酸素原子および窒素原子以外の原子を有しない化合物が挙げられる。具体的には、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカン、パーフルオロ(2,7−ジメチルオクタン)、パーフルオロデカリン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロ(1,3,5−トリメチルシクロヘキサン)、パーフルオロジメチルシクロブタン(構造異性を問わない。)、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロベンゼン、液化二酸化炭素、超臨界二酸化炭素等が挙げられる。
【0049】
また、重合溶媒として、水素原子の数が少ないハイドロフルオロカーボン、水素原子の数が少ないハイドロクロロフルオロカーボン、水素原子の数が少ないハイドロフルオロエーテルを用いてもよい。
水素原子の数が少ないハイドロフルオロカーボンとしては、1H−パーフルオロヘキサン、1H−パーフルオロオクタン、1H,4H−パーフルオロブタン、2H,3H−パーフルオロペンタン、3H,4H−パーフルオロ(2−メチルペンタン)等が挙げられる。
水素原子の数が少ないハイドロクロロフルオロカーボンとしては、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン等が挙げられる。
水素原子の数が少ないハイドロフルオロエーテルとしては、HCFCFOCHCF、n−COCH、n−COCHFCF、n−COCHCF、n−COCH、iso−COCH、n−COCHCF、CFOCF(CF)CFOCH、n−COCF(CF)CFOCHFCF等が挙げられる。
水素原子を有しないクロロフルオロカーボンも技術的には使用可能である。
【0050】
重合温度は、100〜200℃である。
化合物(m1)および化合物(m2)のTFEに対する反応性は、低温では低いが、高温では高くなると推定される。高温ではTFEの反応性も高まるが、化合物(m1)および化合物(m2)の反応性の温度による上昇率がより大きいと考えられる。100℃未満の低温では、化合物(m1)および化合物(m2)の反応性が低いため、ポリマーの生長反応速度に比較して、生長ラジカルの停止反応の方が相対的に速く、充分な分子量のポリマーを得ることができない。したがって、重合温度は、120℃以上が好ましい。200℃超の高温では、ラジカル重合開始剤の分解速度が速くなりすぎ、重合の制御が難しく実用的でない。また、200℃超ではTFEの圧力が2MPaG(ゲージ圧、以下同様。)以上、窒素ガスでの希釈を行うと3MPaG以上となり、それ以上に昇圧可能なTFE供給装置と安全上の措置が必要とされ、プロセス上好ましくない。したがって、重合温度は、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。
なお、100〜200℃の温度でTFEの重合を行う場合、TFEの不均化反応が起こるおそれがあるため、窒素ガス等の不活性ガスでTFEを15〜40体積%に希釈することで不均一化反応を回避できる。
【0051】
重合圧力は、重合温度に応じて適宜設定され、TFEの分圧として0.2〜1.8MPaGが好ましい。重合圧力が低すぎると、重合速度が遅く、ポリマーの収率が大幅に低くなる。重合圧力が高すぎると、生成するポリマーのTFEの含有率が高くなり、充分なイオン交換容量のものが得られない。重合圧力は、0.4〜1.6MPaGがより好ましい。
【0052】
TFEは、連続で供給してもよく、初期に一括で仕込んでもよい。TFEの反応性は、化合物(m1)および化合物(m2)より大幅に高いため、系中の化合物(m1)および化合物(m2)の濃度変化に対してTFEの濃度変化が大きくなることが考えられる。よって、ポリマー組成の均一化の点から、一定の重合圧力を保ちつつTFEを連続で供給する方法が好ましい。
【0053】
工程(b):
不安定末端基をフッ素化して安定化することにより、ポリマーの分解が抑えられ、電解質膜の耐久性が向上する。
不安定末端基とは、連鎖移動反応によって形成される基、ラジカル開始剤に基づく基等であり、具体的には、−COOH基、−CF=CF基、−COF基、−CFH基等である。
【0054】
フッ素ガスは、不活性ガス(窒素、ヘリウム、二酸化炭素等。)で希釈することが好ましい。
ポリマーFとフッ素ガスとを接触させる際の温度は、150〜200℃が好ましく、170〜190℃がより好ましい。
ポリマーFとフッ素ガスとの接触時間は、1分〜1週間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
【0055】
工程(c):
加水分解は、たとえば、溶媒中にてポリマーFと塩基とを接触させて行う。
塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。溶媒としては、水、水と極性溶媒との混合溶媒等が挙げられる。極性溶媒としては、アルコール類(メタノール、エタノール等。)、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
酸型化は、たとえば、スルホン酸塩を有するポリマーを、酸の水溶液に接触させて行う。酸としては、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
加水分解および酸型化は、通常、0〜120℃にて行う。
【0056】
ポリマー中の残存有機物による燃料電池の耐久性への影響をなくすために、ポリマーFまたはポリマーHを過酸化水素処理してもよい。過酸化水素の濃度は、1〜30質量%が好ましい。処理温度は、20〜95℃が好ましい。処理時間は、1〜200時間が好ましい。
【0057】
以上説明した本発明のポリマーの製造方法にあっては、ラジカル重合開始剤として化合物(i−1)を用いているため、化合物(m1)および化合物(m2)の少なくとも一方とTFEとを含むモノマー成分を、100〜200℃の高温で重合させることができる。そのため、化合物(m1)および化合物(m2)の反応性が高くなり、分子量が高いポリマーを生産性よく製造できる。また、化合物(m1)および化合物(m2)の少なくとも一方を100〜200℃の高温で重合させているため、モノマー成分中の化合物(m1)および/または化合物(m2)の割合を増やすことができ、その結果、イオン交換容量が高いポリマーを製造できる。また、化合物(m1)および化合物(m2)のようなアリルエーテル化合物に基づく単位を有するポリマーは、従来のビニルエーテル化合物に基づく単位を有するポリマーに比べ、軟化温度が高くなる。
【0058】
また、化合物(m1)および化合物(m2)は、その合成に高価なヘキサフルオロプロピレンオキサイドを用いないため、化合物(m1)に基づく単位(u1)および化合物(m2)に基づく単位(u2)の少なくとも一方とTFEに基づく繰り返し単位とを有するポリマーは、従来のポリマーよりも安価に製造できる。
【0059】
なお、化合物(i−1)の代わりに、下記の重合開始剤を用いても、化合物(m1)および/または化合物(m2)と、TFEとを含むモノマー成分を重合させ、ポリマーFを得ることができる。
NF
NF
NF、
N、
N=NR
OOR
パーフルオロピペラジン、
ヒンダードパーフルオロカーボン(C2n+2)、
国際公開第88/08007号パンフレットに記載のパーフルオロカーボン類、
ヒンダードパーフルオロアルケン類(C2n)、
パーフルオロ(ジアルキルスルホン)(RSO、RSOF、RSOClまたはClSOCl)、
I、
IRI(2つのヨウ化物は隣接も並列もしていない。)、
パーフルオロ(ジアルキルジスルフィド)類(RSSR)、
パーフルオロ(トリアルキルアミン)類、
窒素−硫黄結合含有パーフルオロアルキル化合物(RNSR)。
【0060】
ただし、Rは、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基であり、
は、炭素数3〜20のパーフルオロアルキレン基であり、
は、飽和パーフルオロヒドロカルビル基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)、孤立したヨウ素、臭素もしくは塩素置換基、またはパーフルオロアミノ基である。
「飽和パーフルオロヒドロカルビル基」は、炭素原子およびフッ素原子のみを有していて炭素−炭素不飽和結合を有さない一価の基を意味する。
「孤立した」ヨウ素、臭素もしくは塩素置換基は、この孤立したヨウ素、臭素もしくは塩素原子に結合している炭素原子に対してアルファ位またはベータ位に位置する炭素原子上に他のヨウ素、塩素もしくは臭素原子が存在していないことを意味する。
【0061】
<ポリマー>
本発明のポリマーは、単位(u1)および単位(u2)の少なくとも一方と、TFEに基づく繰り返し単位とを有し、イオン交換容量が、1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂のポリマーである。
【0062】
【化14】

【0063】
ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、Q21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、Yは、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
【0064】
(単位(u1))
単位(u1)としては、単位(u11)が好ましく、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u11−1)がより好ましい。
【0065】
【化15】

【0066】
ただし、xは、1〜12の整数である。
【0067】
(単位(u2))
単位(u2)としては、単位(u21)が好ましく、ポリマーの製造が容易であり、工業的実施が容易である点から、単位(u21−1)がより好ましい。
【0068】
【化16】

【0069】
ただし、RF11は、単結合、またはエーテル性の酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基であり、RF12は、炭素数1〜6の直鎖状のパーフルオロアルキレン基である。
【0070】
(他の単位)
本発明のポリマーは、ポリマーの物性を調整するために、単位(u1)、単位(u2)およびTFEに基づく繰り返し単位以外の他の単位を有してもよい。
他の単位としては、上述の他のモノマーに基づく繰り返し単位が挙げられる。
ポリマー中の他の単位の割合は、単位(u1)、単位(u2)およびTFEに基づく繰り返し単位のいずれよりも少ないことが好ましい。
【0071】
(イオン交換容量)
本発明のポリマーのイオン交換容量は、1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂であり、1.51〜1.65ミリ当量/g乾燥樹脂が好ましい。イオン交換容量が1.51ミリ当量/g乾燥樹脂以上であれば、電解質膜のプロトン伝導性が高くなる(電気抵抗が低くなる)ため、膜電極接合体の出力特性が良好となる。イオン交換容量が1.80ミリ当量/g乾燥樹脂以下であれば、分子量の高いポリマーの合成が容易であり、また、ポリマーが過度に水で膨潤しないため、電解質膜の機械的強度を保持できる。
イオン交換容量が1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂のポリマーは、本発明の製造方法によって容易に得られる。
【0072】
(TQ)
TQは、ポリマーの溶融流動性の指標であり、該TQによってポリマーの分子量および軟化温度を評価できる。TQは、加水分解、酸型化される前のポリマーFの段階で測定される。TQは、容量流速100mm/秒を示す温度(℃)と定義される。容量流速とは、ポリマーFを2.94MPa加圧下、長さ1mm、内径1mmのノズルから溶融流出させ、流出するポリマーFをmm/秒の単位で示したものである。通常、TQが高いほど分子量は大きく、軟化温度が高い。
【0073】
本発明におけるポリマーFのTQは、150〜400℃が好ましい。ポリマーFのTQが該範囲であれば、ポリマーFから得られるポリマーHが充分な分子量および軟化温度を有することとなる。電解質膜として実用上充分な機械的強度および軟化温度を有するには、ポリマーFのTQは180℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。
一方、ポリマーFのTQの上限は、電解質膜の製造方法に依存する。ポリマーFを溶融成形して電解質膜を製造する場合、350℃付近から−SOF基の分解が始まるため、TQは350℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。ポリマーHをキャスト法により電解質膜を製造する場合、溶媒への溶解性または分散性を確保する点から、TQは350℃以下がより好ましい。
【0074】
<電解質膜>
本発明の固体高分子形燃料電池用電解質膜(以下、電解質膜と記す。)は、本発明のポリマーを含む膜である。
【0075】
(電解質膜の製造方法)
電解質膜は、たとえば、下記の方法によって製造される。
(x−1)ポリマーFを膜状に成形した後、前記工程(c)を行う方法。
(x−2)前記工程(c)で得られたポリマーHを膜状に成形する方法。
【0076】
方法(x−1):
ポリマーFを膜状に成形する方法としては、ポリマーFが溶融流動性に優れる点から、押出成形法、加圧プレス成形法、延伸法等が挙げられる。
【0077】
方法(x−2):
ポリマーHを膜状に成形する方法としては、ポリマーHの液状組成物を基材に塗工、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
液状組成物は、水酸基を有する有機溶媒および水を含む分散媒に、ポリマーHを分散させた分散液である。
【0078】
電解質膜の厚さは、5〜70μmが好ましく、7.5〜50μmがより好ましい。電解質膜の厚さが5μm未満では、電解質膜の機械的強度が不充分となる。電解質膜の厚さが70μmを超えると、膜抵抗が大きくなり充分な電池出力が得られなくなる。
【0079】
電解質膜は、補強材で補強されていてもよい。補強材としては、多孔体、繊維、織布、不織布等が挙げられる。補強材の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0080】
以上説明した本発明の電解質膜にあっては、分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高い本発明のポリマーを含むため、高温においても高い機械的強度を有し、かつプロトン伝導性が高い。
【0081】
<膜電極接合体>
本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)は、触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であり、前記電解質膜、アノードの触媒層およびカソードの触媒層の少なくとも1つが、本発明のポリマーを含む。
【0082】
図1は、本発明の膜電極接合体の一例を示す断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置される電解質膜15とを具備する。
【0083】
(固体高分子電解質膜)
電解質膜15は、イオン性基を有するポリマーを含む膜である。
イオン性基を有するポリマーとしては、ポリマーHが好ましい。
【0084】
(触媒層)
触媒層11は、触媒と、イオン性基を有するポリマーとを含む層である。
触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末が挙げられる。
イオン性基を有するポリマーとしては、ポリマーHが好ましい。
【0085】
(ガス拡散層)
ガス拡散層12は、触媒層11に均一にガスを拡散させる機能および集電体としての機能を有する。
ガス拡散層12としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散層12は、PTFE等によって撥水化処理されていることが好ましい。
【0086】
(中間層)
膜電極接合体10は、図2に示すように、触媒層11とガス拡散層12との間に中間層16を有していてもよい。
中間層としては、補強層、カーボン層等が挙げられる。
【0087】
補強層は、多孔質のシート状補強材と、カーボンナノファイバーと、イオン性基を有するポリマーとを含む層である。補強層は、機械的強度が高く、かつ導電性とガス拡散性を有する。
シート状補強材の材料としては、PTFEからなる多孔質フィルム、ポリマー(ポリプロピレン、含フッ素ポリマー、ポリアミド等。)からなる不織布等が挙げられる。
イオン性基を有するポリマーとしては、ポリマーHが好ましい。
【0088】
カーボン層は、カーボンナノファイバーと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。カーボン層を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
非イオン性含フッ素ポリマーとしては、PTFE等が挙げられる。
【0089】
(膜電極接合体の製造方法)
膜電極接合体10は、たとえば、下記の方法にて製造される。
(y−1)電解質膜15上に触媒層11を形成して膜触媒層接合体とし、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(y−2)ガス拡散層12上に触媒層11を形成して電極(アノード13、カソード14)とし、電解質膜15を該電極で挟み込む方法。
【0090】
触媒層11の形成方法としては、下記方法が挙げられる。
(z−1)触媒層形成用液を、固体高分子電解質膜15またはガス拡散層12上に塗布し、乾燥させる方法。
(z−2)触媒層形成用液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させ触媒層11を形成し、該触媒層11を固体高分子電解質膜15上に転写する方法。
【0091】
触媒層形成用液は、イオン性基を有するポリマーおよび触媒を分散媒に分散させた液である。触媒層形成用液は、たとえば、前記液状組成物と、触媒の分散液とを混合することにより調製できる。
【0092】
以上説明した本発明の膜電極接合体にあっては、分子量、軟化温度およびイオン交換容量が高い本発明のポリマーを含むため、出力特性に優れ、かつ高温運転に適している。
【0093】
<固体高分子形燃料電池>
本発明の膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に用いられる。固体高分子形燃料電池は、たとえば、2つのセパレータの間に膜電極接合体を挟んでセルを形成し、複数のセルをスタックすることにより製造される。
【0094】
セパレータとしては、燃料ガスまたは酸素を含む酸化剤ガス(空気、酸素等。)の通路となる溝が形成された導電性カーボン板等が挙げられる。
固体高分子形燃料電池の種類としては、水素/酸素型燃料電池、直接メタノール型燃料電池(DMFC)等が挙げられる。DMFCの燃料に用いるメタノールまたはメタノール水溶液は、液フィードであってもよく、ガスフィードであってもよい。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
例1〜6は実施例であり、例7〜13は比較例である。
【0096】
(TQ)
TQ(単位:℃)は、ポリマーHの分子量および軟化温度の指標であり、長さ1mm、内径1mmのノズルを用い、2.94MPaの押出し圧力の条件でポリマーFの溶融押出しを行った際の押出し量が100mm/秒となる温度である。
フローテスタCFT−500D(島津製作所社製)を用い、温度を変えてポリマーFの押出し量を測定し、押出し量が100mm/秒となるTQを求めた。
【0097】
(イオン交換容量)
ポリマーHのイオン交換容量は、下記の方法により求めた。
0.35Nの水酸化ナトリウム溶液を用いて、60℃で40時間かけてポリマーHを中和し、0.1Nの塩酸で未反応の水酸化ナトリウムを滴定することで、イオン交換容量を求めた。
【0098】
〔合成例1〕
特許文献1の実施例に記載の方法にしたがって、上述のスキームAに示す合成ルートで化合物(m11−1)を合成した。
【0099】
〔合成例2〕
下記合成ルートにより化合物(m21−1)を合成した。
【0100】
【化17】

【0101】
(i)化合物(a21)の合成:
特開昭57−176973号公報の実施例2に記載の方法と同様にして、化合物(a21)を合成した。
【0102】
(ii)化合物(c21)の合成:
ジムロート冷却管、温度計、滴下ロートおよび撹拌翼付きガラス棒を備えた300cmの4口丸底フラスコに、窒素雰囲気下、フッ化カリウム(森田化学社製、商品名:クロキャットF)の1.6gおよびジメトキシエタンの15.9gを入れた。ついで、丸底フラスコを氷浴で冷却して、滴下ロートより化合物(b1)の49.1gを32分かけて、内温10℃以下で滴下した。滴下終了後、滴下ロートより化合物(a21)の82.0gを15分かけて滴下した。内温上昇はほとんど観測されなかった。滴下終了後、内温を室温に戻して約90時間撹拌した。分液ロートで下層を回収した。回収量は127.6gであり、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと記す。)純度は55%であった。回収液を200cmの4口丸底フラスコに移して、蒸留を実施した。減圧度1.0〜1.1kPa(絶対圧)の留分として化合物(c21)の97.7gを得た。GC純度は98%であり、収率は80%であった。
【0103】
(iii)化合物(m21−1)の合成:
温度計、ジムロート冷却管および撹拌機を備えた200mLの4口フラスコに、窒素雰囲気下、ジグライムの677gをいれた。ついで、フラスコ内を撹拌しながら、フッ化カリウムの23.33g(402mmol)を加えた。滴下ロートをフラスコに取り付け、フラスコを氷浴で冷却した。化合物(c21)の191.02g(363mmol)を30分かけて滴下した。この間、内温は2.7〜6.4℃であった。氷浴で冷却したまま2時間撹拌した。
【0104】
ついで、滴下ロートから化合物(e1)の88.55g(385mmol)を40分かけて滴下した。この間、内温は0.9〜3.4℃であった。氷浴で冷却したまま3時間撹拌を続け、さらに室温で一晩撹拌した。反応液をろ過した後、二相分離した下層を回収して粗生成物の218g(純度71.7%)を得た。そして、減圧蒸留により化合物(m21−1)を得た。沸点は、105−106℃/1.3−1.5kPaであり、単離収率は45%であった。
【0105】
化合物(m21−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)。
δ(ppm):45.5(1F),45.1(1F),−72.1(2F),−79.6(2F),−82.4(4F),−82.9(2F),−90.3(1F),−104.2(1F),−112.5(2F),−112.7(2F),−145.2(1F),−190.8(1F)。
【0106】
〔例1〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の87.96gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の1.8mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.39MPaGに保持した。そこへ窒素ガスを加えて0.72MPaGとした。その後、145℃に昇温して0.95MPaGとした。化合物(i−1)を化合物(s−1)に溶解した5.2質量%の化合物(i−1)溶液を30分毎に逐次添加した。1回の添加量は、化合物(i−1)の固形分が0.67mgとなる量とし、合計12回添加した。12回目を添加した後、30分経過した後に、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させた。145℃で撹拌した時間は、6.5時間であった.添加したラジカル重合開始剤を合計すると、9.84mgであった。
CClFCFCHClF ・・・(s−1)。
【0107】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥した。収量は10.8gであった。TQは、217℃であった。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定したところ、1.54ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
CHCClF ・・・(s−2)。
【0108】
〔例2〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の63.85gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の6.39mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.25MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.49MPaGとする。100℃で10時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。
【0109】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は4.5gである。TQは、235℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定すると、1.51ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0110】
〔例3〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の63.85gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の6.39mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.41MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.75MPaGとする。その後、120℃に昇温して0.86MPaGとする。120℃で9時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了する。
【0111】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は6gである。TQは、240℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定すると、1.52ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0112】
〔例4〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の87.96gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の0.9mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.35MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.65MPaGとする。その後、170℃に昇温して1.59MPaGとする。化合物(i−1)を化合物(s−1)に溶解した5.2質量%の化合物(i−1)溶液を30分毎に逐次添加する。1回の添加量は、化合物(i−1)の固形分が0.33mgとなる量とし、合計12回添加する。12回目を添加した後、30分経過した後に、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。170℃で撹拌した時間は、6.5時間である。添加したラジカル重合開始剤を合計すると、4.86mgである。
【0113】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は3.5gである。TQは、240℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定すると、1.62ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0114】
〔例5〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m21−1)の87.96gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の0.9mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.31MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.58MPaGとする。その後、145℃に昇温して0.66MPaGとする。化合物(i−1)を化合物(s−1)に溶解した5.2質量%の化合物(i−1)溶液を30分毎に逐次添加する。1回の添加量は、化合物(i−1)の固形分が0.33mgとなる量とし、合計12回添加する。12回目を添加した後、30分経過した後に、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。145℃で撹拌した時間は、6.5時間である。添加したラジカル重合開始剤を合計すると、4.86mgである。
【0115】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は6gである。TQは、210℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定すると、1.55ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0116】
〔例6〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の30.0g(50モル%)、化合物(m21−1)の61.5g(50モル%)、ラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の1.8mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.45MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.85MPaGとする。その後、145℃に昇温して1.15MPaGとする。化合物(i−1)を化合物(s−1)に溶解した5.2質量%の化合物(i−1)溶液を30分毎に逐次添加する。1回の添加量は、化合物(i−1)の固形分が0.67mgとなる量とし、合計14回添加する。14回目を添加後、30分経過した後に、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。145℃で撹拌した時間は、7.5時間である。添加したラジカル重合開始剤を合計すると、11.18mgである。
【0117】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は8gである。TQは、230℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定すると、1.52ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0118】
〔例7〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の61.64gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−2)の34.0mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、70℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.3MPaGに保持する。70℃で7時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。
(CH(CN)C−N=N−C(CN)(CH ・・・(i−2)。
【0119】
生成物を化合物(s−1)で希釈後、これに化合物(s−2)を添加するが、ポリマーFの生成はみられない。
【0120】
〔例8〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の36.13gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−3)の16.2mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、80℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.22MPaGに保持した。80℃で10.5時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させた。
【0121】
【化18】

【0122】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥した。収量は2.5gであった。TQは、231℃であった。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定したところ、1.23ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0123】
〔例9〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の63.77gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−4)の122.5mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、40℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.05MPaGに保持する。40℃で9時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了する。
(CHCHOC(O)−O−O−C(O)OCH(CH ・・・(i−4)。
【0124】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は4gである。TQは、225℃である。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定したところ、1.02ミリ当量/g乾燥樹脂である。
【0125】
〔例10〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の36.13gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−3)の3.6mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.25MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.49MPaGとする。100℃で8時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了する。
【0126】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は0.5gである。TQおよびイオン交換容量を測定するには不充分な乾燥樹脂量である。
【0127】
〔例11〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m11−1)の63.85gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の6.39mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、80℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.2MPaGに保持する。80℃で9時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。
【0128】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は0.3gである。TQおよびイオン交換容量を測定するには不充分な乾燥樹脂量である。
【0129】
〔例12〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m21−1)の67.42gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−3)の14.5mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気した。その後、80℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.14MPaGに保持した。80℃で9時間撹拌した後、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させた。
【0130】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過した。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥した。収量は3.8gであった。TQは、191℃であった。ポリマーFを加水分解し、酸型化した後、イオン交換容量を滴定により測定したところ、1.48ミリ当量/g乾燥樹脂であった。
【0131】
〔例13〕
内容積125mLのステンレス製オートクレーブに、化合物(m21−1)の87.96gおよびラジカル重合開始剤として化合物(i−1)の0.9mgを仕込み、液体窒素による冷却下、充分脱気する。その後、100℃に昇温して、TFEを系内に導入し、圧力を0.31MPaGに保持する。そこへ窒素ガスを加えて0.58MPaGとする。その後、205℃に昇温して0.9MPaGとする。化合物(i−1)を化合物(s−1)に溶解した5.2質量%の化合物(i−1)溶液を30分毎に逐次添加する。1回の添加量は、化合物(i−1)の固形分が0.33mgとなる量とし、合計13回添加する。13回目を添加した後、30分経過後に、系内のガスをパージし、オートクレーブを冷却して反応を終了させる。205℃で撹拌した時間は、7時間である.添加したラジカル重合開始剤を合計すると、5.19mgである。
【0132】
生成物を化合物(s−1)で希釈した後、これに化合物(s−2)を添加し、ポリマーFを凝集してろ過する。その後、化合物(s−1)中でポリマーFを撹拌し、化合物(s−2)で再凝集し、80℃で一晩減圧乾燥する。収量は0.8gである。TQおよびイオン交換容量を測定するには不充分な乾燥樹脂量である。
【0133】
【表1】

【0134】
〔例14〕
例1のポリマーFをTQ温度で、加圧プレス成形によりポリマーフィルム(膜厚100〜200μm)に加工する。ついで、ジメチルスルホキシドの30質量%とKOHの15質量%を含む水溶液に80℃にてポリマーフィルムを16時間浸漬させることにより、ポリマーフィルム中の−SOF基を加水分解し、−SOK基に変換する。さらに該ポリマーフィルムを、3mol/Lの塩酸水溶液に、50℃で2時間浸漬した後、塩酸水溶液を交換する酸処理を4回繰り返し行う。ついで、該ポリマーフィルムをイオン交換水で充分に水洗し、該ポリマーフィルム中の−SOK基がスルホン酸基に変換されたポリマーフィルムを得る。該ポリマーフィルムを粉砕してポリマーHとする。
【0135】
ポリマーHを、エタノールと水の混合溶媒(70/30質量比)に分散させ、固形分が9質量%の分散液Aを得る。ついで、該分散液Aを、厚さ100μmのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体からなるシート(旭硝子社製、商品名:アフレックス100N)(以下、単にETFEシートと記す。)上に、ダイコータにて塗工して製膜し、これを80℃で30分間乾燥し、さらに190℃で30分のアニールを施し、厚さ25μmの固体高分子電解質膜を形成する。
【0136】
ついで、カーボンブラック粉末に白金を50質量%担持した触媒の20gに水の126gを添加し、超音波を10分かけて均一に分散させた。これに分散液Aの80gを添加し、さらにエタノールの54gを添加して固形分が10質量%の触媒層作製用塗工液を得る。該塗工液を別途用意したETFEシート上に塗布、乾燥し、白金量が0.2mg/cmの触媒層を2枚作製する。
【0137】
先に得られた固体高分子電解質膜の両側から前記触媒層の2枚で挟み、プレス条件:150℃、5分、3MPaで加熱プレスして、膜の両面に触媒層を接合し、基材フィルムを剥離して電極面積25cmの膜触媒層接合体を得る。
該膜触媒層接合体を、2枚のカーボンペーパーからなるガス拡散層で挟み込んで膜電極接合体を得る。該カーボンペーパーは、片側の表面にカーボンとPTFEとからなる層を有しており、該層が膜触媒層接合体の触媒層と接触するように配置する。
【0138】
該膜電極接合体を発電用セルに組み込み、セル温度80℃、アノードに水素(利用率70%)、およびカソードに空気(利用率50%)を、それぞれ常圧で供給する。その際にガスの加湿露点を水素、空気とともに80℃とした場合と、さらに低加湿条件にするために44℃とした場合のそれぞれについて、電流密度が0.5A/cmまたは1.0A/cmのときのセル電圧をそれぞれ記録する。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明のポリマーは、固体高分子形燃料電池用電解質膜ならびに膜電極接合体のほか、種々の用途に用いることができる。たとえば、水電解、過酸化水素製造、オゾン製造、廃酸回収等に用いるプロトン選択透過膜;食塩電解、レドックスフロー電池の隔膜、脱塩または製塩に用いる電気透析用陽イオン交換膜等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】膜電極接合体の一例を示す断面図である。
【図2】膜電極接合体の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0142】
10 膜電極接合体
11 触媒層
13 アノード
14 カソード
15 電解質膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)を有する、ポリマーの製造方法。
(a)下式(m1)で表される化合物および下式(m2)で表される化合物の少なくとも一方と、テトラフルオロエチレンとを含むモノマー成分を、ラジカル重合開始剤としてジtert−ブチルパーオキサイドを用い、100〜200℃の温度で重合させる工程。
【化1】

ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、
21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、
は、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
【請求項2】
前記式(m1)で表される化合物が、下式(m11)で表される化合物である、請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【化2】

ただし、xは、1〜12の整数である。
【請求項3】
前記式(m11)で表される化合物が、下式(m11−1)で表される化合物である、請求項2に記載のポリマーの製造方法。
【化3】

【請求項4】
前記ラジカル重合開始剤を連続添加または逐次添加する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
さらに、下記の工程(c)を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
(c)前記工程(a)の後、−SOF基を加水分解し、ついで酸型化してスルホン酸基に変換する工程。
【請求項6】
下式(u1)で表される繰り返し単位および下式(u2)で表される繰り返し単位の少なくとも一方と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを有し、
イオン交換容量が、1.51〜1.80ミリ当量/g乾燥樹脂である、ポリマー。
【化4】

ただし、Qは、単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であり、
21、Q22は、それぞれ単結合またはパーフルオロアルキレン基(エーテル性酸素原子を有していてもよい。)であって、同時に単結合ではなく、
は、フッ素原子または1価のパーフルオロ有機基である。
【請求項7】
前記式(u1)で表される繰り返し単位が、下式(u11)で表される繰り返し単位である、請求項6に記載のポリマー。
【化5】

ただし、xは、1〜12の整数である。
【請求項8】
前記式(u11)で表される繰り返し単位が、下式(u11−1)で表される繰り返し単位である、請求項7に記載のポリマー。
【化6】

【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のポリマーを含む、固体高分子形燃料電池用電解質膜。
【請求項10】
触媒層を有するアノードと、
触媒層を有するカソードと、
前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜と
を有する固体高分子形燃料電池用膜電極接合体であり、
前記電解質膜、アノードの触媒層およびカソードの触媒層の少なくとも1つが、請求項6〜8のいずれかに記載のポリマーを含む、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−18674(P2010−18674A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179135(P2008−179135)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】