説明

ポリマーの製造方法

【課題】 アミノ基を有するポリマーの製造中又は製造後に生成する着色物質の量を低減させ、色相が良好なポリマーを製造する方法の提供。
【解決手段】 下記のモノマー(A)及びモノマー(B)を含むモノマー成分を重合してポリマーを製造する方法であって、重合反応前又は重合反応中にモノマー(A)の一部又は全部を芳香環を含まない有機酸で中和する、ポリマーの製造方法、並びにこの製造方法によって得られる、繊維表面改質用ポリマー。
(A)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー
(B)疎水性基を有し、且つ、1〜3級アミノ基を有しない不飽和結合含有モノマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色物質が低減されたアミン系ポリマーの製造方法、並びにその方法で得られる繊維表面改質用ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基を有するポリマーは、幅広い分野で使用されているポリマーである。例えば、アミノ基の物質表面への高い吸着性を利用して、繊維等の表面改質剤などに使用されている(特許文献1、2)。このようなポリマー及びその溶液は、一般的に製造中又は製造後に着色物質が生成しやすいため、着色しやすい傾向にある。着色は外観上好ましくないだけでなく、使用する際に、系中の物質(繊維等)の表面を汚染し、着色する原因となる。
【特許文献1】特開2005−314843号公報
【特許文献2】特開平7−316590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、アミノ基を有するポリマーの製造中又は製造後に生成する着色物質の量を低減させ、色相が良好なポリマーを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記のモノマー(A)及びモノマー(B)を含むモノマー成分を重合してポリマーを製造する方法であって、重合反応前又は重合反応中にモノマー(A)の一部又は全部を芳香環を含まない有機酸で中和する、ポリマーの製造方法、並びにこの製造方法によって得られる、繊維表面改質用ポリマーを提供する。
(A)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー
(B)疎水性基を有し、且つ、1〜3級アミノ基を有しない不飽和結合含有モノマー
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法によると、アミノ基を有するポリマーの製造中又は製造後に生成する着色物質の量を低減させ、色相が良好なポリマーを得ることができる。また、本発明により得られるポリマーは、繊維の表面を汚染せずに繊維表面を改質することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[モノマー成分]
本発明に用いられるモノマー成分は、モノマー(A)及びモノマー(B)を含む。モノマー(A)は、1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマーである。
【0007】
モノマー(A)としては、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン類、ジアリル化合物等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0008】
具体的には、一般式(I)〜(III)で表されるモノマーが挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4、好ましくは1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示し、Xは−O−又は−NH−基を示し、Yは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1、R2、R3及びYは前記の意味を示す。nは0又は1を示す。)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R4及びR5は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R6は水素原子、炭素数1〜4、好ましくは1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示す。)
一般式(I)で表されるモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0015】
一般式(II)で表されるモノマーとしては、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類等が挙げられる。一般式(III)で表されるモノマーとしては、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等のジアリルアミン化合物が挙げられる。
【0016】
本発明のモノマー(B)は、疎水性基を有し、且つ、1〜3級アミノ基を有しない不飽和結合含有モノマーである。疎水性基としては、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0017】
モノマー(B)としては、炭素数1〜22、好ましくは4〜22の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基、あるいはアリール基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル及びスチレン類から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
モノマー(B)の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜22の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリルアミド;ベンジル(メタ)アクリルアミド等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の炭素数1〜22の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基又はアルケニル基を有するビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン等のスチレン類等が挙げられる。
【0019】
本発明の方法において、モノマー(A)とモノマー(B)は、繊維表面改質用ポリマーとして用いる観点からは、(A)/(B)=20/80〜98/2の重量比で用いることが好ましい。
【0020】
モノマー(A)、モノマー(B)は、それぞれ1種以上を用いることができる。又、モノマー(A)及びモノマー(B)以外に、モノマー(A)及びモノマー(B)と共重合可能な不飽和結合含有モノマー(以下モノマー(C)という)を共重合しても良い。
【0021】
モノマー(C)としては、例えば、ビニルアルコール;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の炭素数1〜22のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミド;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜100)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの重合度が1〜50)、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(ブチレングリコールの重合度が1〜50)等のポリアルキレン(アルキレン基の炭素数1〜8;直鎖もしくは分岐鎖)オキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;グリセリン(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;N−(メタ)アクロイルモルホリン;塩化ビニル;アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物等が挙げられる。
【0022】
これらのモノマー(C)の共重合量は、繊維表面改質用ポリマーとして用いる観点からは、モノマー全量に対して0〜80重量%が好ましい。
【0023】
[芳香環を含まない有機酸]
本発明で用いられる芳香環を含まない有機酸とは、環上のπ電子系に含まれる電子の数が4n+2(n=1、2、3、・・・)を満たす(ヒュッケル則)共役不飽和環構造(いわゆる芳香族性)を有さない有機酸のことである。芳香環を含む有機酸を使用した場合、着色物質の量をあまり低減できないかむしろ増加させることもある。
【0024】
芳香環を含まない有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の総炭素数1〜22の飽和カルボン酸;アリルカルボン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸等の総炭素数1〜22の不飽和カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸等の総炭素数1〜22の多価カルボン酸;グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸等の総炭素数1〜22のヒドロキシカルボン酸;メタンスルホン酸、N−メチルタウリン等の総炭素数1〜22の有機スルホン酸;ラウリル硫酸等の総炭素数1〜22の硫酸エステル等が挙げられる。本発明では、これらの芳香環を含まない有機酸を1種以上使用することができる。
【0025】
これらの中でも、上記芳香環を含まない、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等の総炭素数1〜22のカルボン酸を使用することが好ましく、総炭素数1〜22のヒドロキシカルボン酸がより好ましい。
【0026】
[ポリマーの製造方法]
本発明の方法においては、上記モノマー成分の重合反応前又は重合反応中にモノマー(A)の一部又は全部を芳香環を含まない有機酸で中和する。
【0027】
ここで、「重合反応前」とは、所定の反応温度のモノマーと開始剤とが接触する前の期間をいう。ここで、所定の反応温度とは、開始剤が実質的に重合反応を開始する温度をいう。したがって、モノマーと開始剤が接触した後であって所定の反応温度に達していない状態は「重合反応前」に含まれる。また、モノマーが所定の反応温度に達していても開始剤と接触してない状態は「重合反応前」に含まれる。
【0028】
「重合反応中」とは、所定の反応温度のモノマーと開始剤とが接触した時から、反応混合物に開始剤の添加を完了するまでの期間をいう。開始剤の添加を完了するまでの期間には、モノマーと開始剤の両方を同時に添加する期間、開始剤のみを添加する期間、モノマーのみを添加する期間、又は開始剤とモノマーのいずれも添加しない期間があっても差し支えない。
【0029】
重合反応前に芳香環を含まない有機酸で中和しておくことが着色物質の量を低減させる観点から特に好ましい。また、重合反応率を向上させる目的で、モノマーと開始剤の両方を同時に添加する期間の後に開始剤のみを添加する期間を設定する場合があるが、その際には、開始剤のみを添加する期間の前、又は開始剤のみを添加する期間の初期に芳香環を含まない有機酸で中和を行うことが好ましい。
【0030】
芳香環を含まない有機酸の使用量は、モノマー(A)のアミノ基に対して0.1〜1.5当量が好ましく、0.2〜1.2当量がさらに好ましく、0.3〜1.0当量が特に好ましい。
【0031】
なお、ポリマー中の着色物質の量は、ポリマーの組成、重合溶媒等により大きく異なり、それに対する最適な有機酸とその使用量も変化するが、重合反応前又は重合反応中に芳香環を含まない有機酸で中和した場合、芳香環を含む有機酸で中和したり、重合反応後に中和したり、全く中和しない場合と比較して着色物質の量を顕著に低減させることができる。
【0032】
本発明の方法において、モノマー成分の重合は、溶液重合法又は懸濁重合法等により、ラジカル重合させることが好ましい。
【0033】
本発明に用いられるラジカル重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム等の過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤等が挙げられる。ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や濃度、開始剤の種類、反応温度等により変化するが、通常全モノマー量に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.5〜8モル%がより好ましい。
【0034】
本発明のポリマーの製造方法は、通常の一般的な溶液重合法、懸濁重合法等により行うことができ、特に制限されることはないが、具体的には以下の製造方法が例示される。
【0035】
まず、反応容器を所定の温度まで加熱する。その時の反応容器内の温度は、ラジカル重合開始剤の種類や量、溶媒の種類、モノマーの種類や濃度等により自由に設定することができるが、ラジカル重合開始剤の半減期が200分以下となる温度であることが反応制御の面で好ましい。通常その温度は40〜120℃程度であり、50〜100℃が好ましい。また、反応容器中に予め溶媒、又は、溶媒及びその他の成分(モノマー等)を適量添加しておいても良い。また、必要に応じて窒素等の不活性ガスによる置換等により反応容器内の酸素を留去しておいても良い。
【0036】
次に、モノマー及びラジカル重合開始剤を反応容器内に連続的又は断続的に滴下する。この際、モノマーやラジカル重合開始剤を溶媒に溶解して滴下しても良い。その時のモノマーやラジカル重合開始剤の濃度は、通常モノマーの場合20〜100重量%が好ましく、ラジカル重合開始剤の場合1〜100重量%が好ましい。また、各モノマーやラジカル重合開始剤又はその溶液を別々に反応容器内に滴下しても良いし、混合して滴下しても良い。別々に滴下する際には、滴下するタイミングや速度をずらしても良い。それぞれの滴下は連続的に行っても良いし、断続的に行っても良い。これらの滴下液は、必要に応じて窒素等の不活性ガスによる置換等により液中の溶存酸素を留去しても良い。滴下時間は、モノマーの種類や濃度、ラジカル重合開始剤の種類や量、溶媒の種類、反応温度等により自由に設定することができるが、全モノマー滴下終了直後の全モノマーの反応率が50〜100%であることが反応制御の面で好ましい。その時間は通常1〜20時間程度である。また、滴下中の反応容器内の温度は上記温度範囲内で適宜変更することができる。
【0037】
芳香環を含まない有機酸の添加方法は、(i)反応容器中に予め添加しておき、その後モノマー及び/又は開始剤を添加する方法、(ii)反応容器に滴下する前のモノマー溶液にあらかじめ添加する方法、(iii)有機酸又はその溶液を、モノマー及び/又は開始剤が添加されている反応容器内に滴下する方法等が例示されるが、特に限定されるものではなく、これらを組み合わせても良い。
【0038】
滴下終了後、重合反応を完結させるため、反応溶液を上記温度範囲内で一定時間保持することが好ましい。保持時間は0〜15時間程度である。
【0039】
本発明の方法に用いられる溶媒は特に限定されず、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;2−フェノキシエタノール、フェニルトリグリコール等の芳香族系溶媒等を単独又は適宜組み合わせて用いることができる。
【0040】
[ポリマー及びその用途]
本発明の方法により得られるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、繊維表面改質用ポリマーとして用いる観点からは、2,000以上が好ましい。
【0041】
尚、本発明のポリマーのMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、ポリエチレンオキシド又はポリスチレン換算の分子量とする。
【0042】
本発明の方法により得られるポリマーは、色相が良好であり、様々な用途に使用することができるが、繊維表面改質用ポリマーとして用いることが好ましく、特に着色が問題となる洗剤や繊維処理剤に添加されるポリマーとして有用である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例において、ポリマー溶液の色相は下記の方法で測定した。
【0044】
<色相の評価法>
分光式色差計(SE2000;日本電色工業(株)製)を用いてポリマー溶液のAPHA値(0〜500;値が大きいほど着色が大きい)を測定した。
【0045】
[実施例1](反応前に中和)
内容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを十分に窒素置換した。そこに溶媒として95%エタノール(以下エタノールと略)54.7gを添加し、撹拌しながら内温が78〜80℃になるまで加熱し、保持した。別の容器に、モノマーとして、ジメチルアミノエチルメタクリレート206.97g、ラウリルメタクリレート83.73g、エタノール130.1gを均一に混合した。該混合溶液に、液温が40℃以下になるように保ちながらDL−乳酸(85〜92%水溶液;和光純薬工業(株)製)67.00gを滴下して中和を行った。その後、得られた溶液に、開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)4.09gを溶解してモノマー/開始剤溶液を得た。
【0046】
該モノマー/開始剤溶液を上記フラスコ中に3時間かけて一定速度で滴下した。該モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に、開始剤V−65B 10.22gをエタノール40.9gに溶解した溶液(開始剤溶液)を上記フラスコ中に5時間かけて一定速度で滴下した。開始剤溶液滴下終了後、80℃付近で2時間保持することでポリマーのエタノール溶液を得た。
【0047】
このポリマーの重量平均分子量(Mw)(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は7300であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0048】
[実施例2](反応中に中和)
内容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを十分に窒素置換した。そこにエタノール48.0gを添加し、撹拌しながら内温が78〜80℃になるまで加熱し、保持した。別の容器に、モノマーとして、ジメチルアミノエチルメタクリレート206.97g、ラウリルメタクリレート83.73g、エタノール136.8gを均一に混合した。得られた溶液に、開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)4.09gを溶解してモノマー/開始剤溶液を得た(中和は行わなかった)。
【0049】
該モノマー/開始剤溶液を上記フラスコ中に3時間かけて一定速度で滴下した。該モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に、DL−乳酸(85〜92%水溶液;和光純薬工業(株)製)67.00gを2時間かけて一定速度で滴下した。次に、DL−乳酸をフラスコ中に滴下終了した直後に、開始剤V−65B 10.22gをエタノール40.9gに溶解した溶液(開始剤溶液)を上記フラスコ中に5時間かけて一定速度で滴下した。開始剤溶液滴下終了後、80℃付近で1時間保持することでポリマーのエタノール溶液を得た。
【0050】
このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は10900であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0051】
[比較例1](反応後に中和)
内容量1Lのガラス製セパラブルフラスコを十分に窒素置換した。そこにエタノール53.9gを添加し、撹拌しながら内温が78〜80℃になるまで加熱し、保持した。別の容器に、モノマーとして、ジメチルアミノエチルメタクリレート249.19g、ラウリルメタクリレート100.81g、エタノール130.1gを均一に混合した。得られた溶液に、開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)4.09gを溶解してモノマー/開始剤溶液を得た(中和は行わなかった)。
【0052】
該モノマー/開始剤溶液を上記フラスコ中に3時間かけて一定速度で滴下した。該モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に、開始剤V−65B 12.30gをエタノール49.2gに溶解した溶液(開始剤溶液)を上記フラスコ中に5時間かけて一定速度で滴下した。開始剤溶液滴下終了後、80℃付近で2時間保持し、その後、DL−乳酸80.67gを添加することでポリマーのエタノール溶液を得た。
【0053】
このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は10200であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0054】
実施例1、2及び比較例1のポリマー組成と中和条件、そのポリマー溶液の色相をまとめて表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例3](反応前に中和)
実施例1において、溶媒としてセパラブルフラスコに添加するエタノールの代わりに2−フェノキシエタノール(フェニルグリコール(PhG);日本乳化剤(株)製)を82.8g用い、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を165.58g、ラウリルメタクリレート量を66.99g、エタノールの代わりにPhGを301.6g、DL−乳酸量を53.60g、V−65B量を3.27gに変更した。また、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.27g、エタノールの代わりにPhGを29.4gに変更した。それ以外は実施例1と同様にしてポリマーのPhG溶液を得た。
【0057】
このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は6100であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0058】
[比較例2](反応後に中和)
実施例3において、セパラブルフラスコに添加するPhG量を84.0gに変更し、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を199.35g、ラウリルメタクリレート量を80.65g、PhG量を300.6g、V−65B量を5.91gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.94g、PhG量を35.4gに変更した。さらに、DL−乳酸はモノマー/開始剤溶液には添加せず、最後に80℃付近で2時間保持した後64.53g添加した。それ以外は実施例3と同様にしてポリマーのPhG溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は8500であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0059】
実施例3及び比較例2のポリマー組成と中和条件、そのポリマー溶液の色相をまとめて表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
[実施例4](反応前に中和)
実施例3において、使用する溶媒をPhGの代わりにフェニルトリグリコール(PhG−30;日本乳化剤(株)製)に変更する以外は実施例3と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は6600であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0062】
[実施例5](反応前に中和)
実施例4において、セパラブルフラスコに添加するPhG−30量を83.2g、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を177.61g、ラウリルメタクリレート量を71.86g、PhG―30量を301.3g、DL−乳酸量を34.50g、V−65B量を5.26gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.51g、PhG−30量を31.6gに変更した。それ以外は実施例4と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は7200であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0063】
[実施例6](反応前に中和)
実施例4において、セパラブルフラスコに添加するPhG−30量を80.5g、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を170.06g、ラウリルメタクリレート量を68.80g、PhG―30量を291.7g、DL−乳酸の代わりにグリコール酸(約70%水溶液;和光純薬工業(株)製)を58.76g、V−65B量を5.04gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.36g、PhG−30量を30.2gに変更した。それ以外は実施例4と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は8600であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0064】
[比較例3](反応後に中和)
比較例2において、使用する溶媒をPhGの代わりにPhG−30に変更する以外は比較例2と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は11000であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0065】
[比較例4](反応前に芳香環を含む有機酸で中和)
実施例4において、セパラブルフラスコに添加するPhG−30量を82.9g、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を161.55g、ラウリルメタクリレート量を65.36g、PhG―30量を302.8g、DL−乳酸の代わりにp−トルエンスルホン酸を58.67g、V−65B量を4.79gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.19g、PhG−30量を28.7gに変更した。それ以外は実施例4と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は10700であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0066】
実施例4〜6及び比較例3、4のポリマー組成と中和条件、そのポリマー溶液の色相をまとめて表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
[実施例7](反応前に中和)
実施例4において、セパラブルフラスコに添加するPhG−30量を73.9g、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を149.33g、ラウリルメタクリレートの代わりにブチルメタクリレートを57.89g、PhG―30量を259.2g、DL−乳酸量を48.34g、V−65B量を2.70gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を4.04g、PhG−30量を36.4gに変更した。それ以外は実施例4と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は12800であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0069】
[比較例5](反応後に中和)
実施例7において、セパラブルフラスコに添加するPhG−30量を75.0g、モノマー/開始剤溶液中のジメチルアミノエチルメタクリレート量を180.16g、ブチルメタクリレート量を69.84g、PhG―30量を270.7g、V−65B量を4.88gに変更し、モノマー/開始剤溶液の滴下終了後に滴下する開始剤溶液中のV−65B量を3.25g、PhG量を29.3gに変更した。さらに、DL−乳酸はモノマー/開始剤溶液には添加せず、最後に80℃付近で2時間保持した後58.32g添加した。それ以外は実施例7と同様にしてポリマーのPhG−30溶液を得た。このポリマーのMw(水/エタノール=7/3系、ポリエチレンオキシド換算)は16600であった。また1H−NMRにより分析したこのポリマーの組成は仕込みモノマー組成どおりであった。
【0070】
実施例7及び比較例5のポリマー組成と中和条件、そのポリマー溶液の色相をまとめて表4に示す。
【0071】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のモノマー(A)及びモノマー(B)を含むモノマー成分を重合してポリマーを製造する方法であって、重合反応前又は重合反応中にモノマー(A)の一部又は全部を芳香環を含まない有機酸で中和する、ポリマーの製造方法。
(A)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー
(B)疎水性基を有し、且つ、1〜3級アミノ基を有しない不飽和結合含有モノマー
【請求項2】
芳香環を含まない有機酸が、総炭素数1〜22のカルボン酸である請求項1記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
芳香環を含まない有機酸の量が、モノマー(A)のアミノ基に対して0.1〜1.5当量である請求項1又は2記載のポリマーの製造方法。
【請求項4】
モノマー(A)が、1〜3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン類及びジアリル化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項1〜3いずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の製造方法によって得られる、繊維表面改質用ポリマー。

【公開番号】特開2008−120880(P2008−120880A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304243(P2006−304243)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】