説明

ポリマーベースでの無溶媒タイヤシーラントの製造方法

本発明は、ポリマーベースでのタイヤシーラント(C)を製造する方法に関し、本発明によれば、ゴム成分であって、少なくとも1種類の別のゴム成分で希釈されていないかまたは希釈されたゴム成分と、溶媒および活性剤を含まない混合成分と、を含む高粘度の第1のシーラント成分(A)を、少なくとも1種類の活性剤を含有する低粘度の別個に生成された媒体を含む少なくとも1種類の第2のシーラント成分(B)と混合して、タイヤシーラント(C)を形成し、続いてタイヤシーラント(C)をタイヤの内側に適用する際に架橋が生じる。適切な方法工程が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーベースのタイヤシーラントを製造する方法に関する。損傷した場合に、例えば、トレッドがくぎでパンクしたときに効果的なタイヤシーラントの関連先行技術に関して以下の公報が特に参照される。
(1)独国特許出願公開第26 31 691 A1号明細書
(2)米国特許第4 068 027号明細書
(3)米国特許第4 113 799号明細書
(4)米国特許第4 289 089号明細書
【背景技術】
【0002】
公開明細書(1)には、タイヤトレッド穿孔の場合に、自己回復効果を有するタイヤシーラントが記載されている。タイヤシーラントは、中〜高分子量コポリマーで構成された、強化され、部分的に架橋したマトリックスに基づいており、ゴムタイヤの内側表面に適用されて、様々な温度条件(−30〜+130℃)で、タイヤ−トレッド領域において穿孔を封止する役割を果たす。溶媒、例えば、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、トリクロロエチレン、シクロヘキサンおよびテトラヒドロフランが、タイヤシーラントの製造に用いられる。
【0003】
特許明細書(2)には、架橋ブチルゴムに基づくタイヤシーラントが記載されている。このタイヤシーラントは、2成分で構成されており、1つにブチルゴムが含まれる。これら2つの成分は、タイヤに導入される直前に混合される。ゴム成分は、溶媒、例えば、ヘキサンにより希釈されて、処理可能な粘度にされる。
【0004】
特許明細書(3)は、同様に、強化および部分架橋されたブチルゴムに基づくタイヤシーラントに係る。同様に、2成分で構成されており、ここでは2種類の異なるブチルゴムが用いられる。他の点に関しては、公開明細書(1)の上記の教示を参照する。
【0005】
最後に、特許明細書(4)には、タイヤシーラントをタイヤに適用するのに用いることのできる操作ユニットを、タイヤの側壁間に配置するための装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タイヤシーラントの製造にこれまで用いられてきたプロセス技術には、ポリマー希釈用溶媒が使用されており、以下の欠点があった。
−用いることのできる溶媒、特に、公開明細書(1)で言及された溶媒は、環境および健康にとって有害である。
−プロセスで助剤として溶媒を用いると、追加の材料コストが加わる。
−溶媒は、プロセス中に吸引により除去して、再生しなければならないため、プロセス中、費用のかかる追加の工程も必要となる。
−従来から用いられている溶媒は、プロセス中、爆発の危険があった。
−溶媒は、ある程度、生成物に残るため、中間貯蔵が必要である。これに関連して、カスタマーの放出要件に問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した欠点を排除するために、ポリマーベースのタイヤシーラント(C)を製造する新規な方法の特徴は、ゴム成分であって、少なくとも1種類の別のゴム成分とブレンドされていないかまたはブレンドされたゴム成分と、溶媒および活性剤を全く含まない混合成分と、を含む高粘度の第1のシーラント成分(A)を、少なくとも1種類の活性剤を含む別個に生成された低粘度媒体を含む少なくとも1種類の第2のシーラント成分(B)と混合してタイヤシーラント(C)を形成し、続いてタイヤシーラント(C)をタイヤの内側に導入する際に架橋が生じることである。
【0008】
プロセスの個々の工程を、有利なプロセスパラメータを含め、以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
プロセスの第1の工程
溶媒なしで製造される背景技術で挙げた先行技術のシーラントとは異なる第1のシーラント成分(A)は、高粘度の処理のために最適化された混合装置で調製される。特に、調製には、混練押出し機(バッチミキサー)または二軸押出し機を用いる。
【0010】
第1のシーラント成分(A)に用いるゴム成分は、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレン(CR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)またはクロロブチルゴム(CIIR)または上述したタイプのゴムのブレンドを含み、例えば、NR/BRブレンド、NR/SBRブレンドまたはNR/SBR/BRブレンドである。特にブレンドされていないIIRが特に重要である。
【0011】
第1のシーラント成分(A)の混合成分は、フィラー(例えば、カーボンブラック、シリカ)および/または処理助剤(例えば、アルキル樹脂またはフェノール樹脂)および/または可塑剤(例えば、ナフテン油)および/または酸化防止剤(例えば、PPD)および、適切な場合、さらに、別の添加剤(例えば、着色顔料)を含む。架橋剤を添加剤としてこの早い段階で混合することも可能であるが、活性剤は混合できない。しかしながら、混合成分に、架橋剤を全く含まないことも可能である。架橋剤は、第1のシーラント成分(A)に添加して、第2のシーラント成分(B)との混合により、良好に分散させると有利である。キノンの部類、特に、キノンジオキシム(QDO)、例えば、パラキノンジオキシムの架橋剤を用いるのが好ましい。架橋剤系、すなわち、架橋剤と活性剤(促進剤)を含む混合成分の合計の定量的比率は、5〜200phr(樹脂100部当たり)、特に、20〜100phrである。他の点に関しては、ゴム混合技術の一般先行技術を参照のこと。
【0012】
プロセスの第2の工程
第1のシーラント成分(A)とは異なり、第2のシーラント成分(B)は、低粘度で、攪拌システムにおいて別個に製造される。それには、媒体、特に、ペーストまたは油の稠度を有し、少なくとも活性剤を含む媒体を含む。架橋剤は、さらなる添加剤と混合しておくことができ、第2のシーラント成分(B)は全架橋剤系を含む。特に、過酸化物活性剤が用いられ、例えば、ジアロイル過酸化物、ジアシル過酸化物またはパーオキシ−エステルに基づくものである。
【0013】
プロセスの第3の工程
第1のシーラント成分(A)および第2のシーラント成分(B)は、ポンピングにより、別個に、計量装置に導入される。以下の変形が特に用いられる。
−ダイヤフラムベースの計量装置は、第1のシーラント成分(A)および/または第2のシーラント成分(B)のポンピングと計量の組み合わせに用いる。均一な容積の流量とするために、油圧系を、ポンピングおよび計量プロセスに用いると有利である。
−第1のシーラント成分(A)および/または第2のシーラント成分(B)に関して、ポンピングプロセスを最初に行ってから、計量プロセスを行う。第2のシーラント成分(B)に関して、歯車ベースの計量プロセスを行う。別の方法として、ピストンベースの計量プロセスを、両シーラント成分(A、B)、特に第2のシーラント成分(B)に用いることもできる。
【0014】
プロセスの第4の工程
高粘度の第1のシーラント成分(A)を、低粘度の第2のシーラント成分(B)と、混合装置で混合して、タイヤシーラント(C)を形成する。架橋がなされる。混合プロセスは、静的または動的ミキサーで行われる。
【0015】
適切な場合、同じく別個に製造される第3またはさらなる成分を、2つのシーラント成分(A、B)と混合することができる。第3のシーラント成分は、例えば、着色顔料を含むペーストまたは油とすることができる。第3またはさらなる成分の調製、ポンピングおよび計量は、シーラント成分(B)の指針に従ってなされる。
【0016】
プロセスの第5の工程
タイヤを、タイヤシーラント(C)と接触する前に予熱する。これによって、架橋プロセスが促進されるため、タイヤシーラントの反応の完了が促進される。予熱は、40〜100℃、特に、50〜70℃でなされる。
【0017】
プロセスの第6の工程
次に、タイヤシーラント(C)は、回転しているタイヤに挿入される。導入プロセスに関して、次の2つの変形が、特に用いられる。
−タイヤシーラント(C)の導入方法は、連続ビードをタイヤに配置して、巻取りパターンを用いて、タイヤの内側のカバーすべき場所、特に、タイヤトレッドの下をカバーするものである。
−幅広ノズル形状を計量出口に用いて、タイヤにワイドビードを配置し、巻取り数を減らす。巻取りは、特に一回の通過でなされる。
【0018】
プロセスの第7の工程
最後に、タイヤシーラント(C)を固化し、具体的には、シーラント効果を達成する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーベースのタイヤシーラント(C)を製造する方法であって、ゴム成分であって、少なくとも1種類の別のゴム成分とブレンドされていないかまたはブレンドされたゴム成分と、溶媒および活性剤を全く含まない混合成分と、を含む高粘度の第1のシーラント成分(A)を、少なくとも1種類の活性剤を含む別個に生成された低粘度媒体を含む少なくとも1種類の第2のシーラント成分(B)と混合してタイヤシーラント(C)を形成し、続いて前記タイヤシーラント(C)を前記タイヤの内側に導入する際に架橋が生じることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも、
−前記第1のシーラント成分(A)を、高粘度処理のために最適化された混合装置で調製する工程と、
−前記第2のシーラント成分(B)を、攪拌システムにおいて別個に生成する工程と、
−前記第1のシーラント成分(A)および前記第2のシーラント成分(B)を、ポンピングにより計量装置へ別個に導入する工程と、
−前記高粘度の第1のシーラント成分(A)を、前記低粘度の第2のシーラント成分(B)と、混合装置にて混合して、前記タイヤシーラント(C)を形成する工程と、
−前記タイヤシーラント(C)を、前記タイヤの内側に導入する工程と、
−最後に、前記タイヤシーラント(C)を、固化し、具体的には、シーラント効果を得る工程と
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のシーラント成分(A)が、混練押出し機により調製されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のシーラント成分(A)が、二軸押出し機により調製されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ダイヤフラムベースの計量装置を、前記第1のシーラント成分(A)および/または前記第2のシーラント成分(B)のポンピングおよび計量に用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
均一な容積の流量とするために、油圧系をポンピングおよび計量に用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のシーラント成分(A)および/または前記第2のシーラント成分(B)に関して、前記ポンピングプロセスを最初に行ってから、前記計量プロセスを行うことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のシーラント成分(B)に関して、歯車ベースの計量プロセスを行うことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のシーラント成分(A)および/または前記第2のシーラント成分(B)に関して、ピストンベースの計量プロセスを行うことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ピストンベースの計量プロセスを、前記第2のシーラント成分(B)に行うことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のシーラント成分(A)を、前記第2のシーラント成分(B)と混合して、前記タイヤシーラント(C)を形成する工程が、スタティックミキサーでなされることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のシーラント成分(A)と、前記第2のシーラント成分(B)との混合が、ダイナミックミキサーでなされることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タイヤシーラント(C)との接触前に前記タイヤを予熱して、前記架橋プロセスおよび前記タイヤシーラントの反応の完了を促進することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記タイヤを40〜100℃で予熱することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タイヤを50〜70℃で予熱することを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記タイヤシーラント(C)を、回転しているタイヤに挿入することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記タイヤシーラント(C)を導入する方法により、連続ビードを前記タイヤに配置し、巻取りパターンを用いて、前記タイヤの内側のカバーすべき場所、特に、タイヤトレッドの下をカバーすることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の、特に、請求項13および/または16に関連する方法。
【請求項18】
幅広ノズル形状を計量出口に用いて、前記タイヤにワイドビードを配置し、巻取り数を減らすことを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の、特に、請求項13および/または16に関連する方法。
【請求項19】
前記巻取りが、1回の通過でなされることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のシーラント成分(A)に用いる前記ゴム成分が、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレン(CR)、ブチルゴム(IIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)またはクロロブチルゴム(CIIR)または上述したタイプのゴムのブレンドを含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のシーラント成分(A)に、フィラーおよび/または処理助剤および/または可塑剤および/または酸化防止剤、ならびに適切な場合、さらに、別の添加剤を含み、活性剤は除く、混合成分を用いることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のシーラント成分(A)に、架橋剤を含む混合成分を用いることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のシーラント成分(A)に、架橋剤を全く含まない混合成分を用いることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記活性剤と共に架橋剤系を形成する前記架橋剤を、前記第2のシーラント成分(B)と混合することを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
キノンの部類からの架橋剤を用いることを特徴とする請求項22または24に記載の方法。
【請求項26】
用いる前記架橋剤が、キノンジオキシム(QDO)を含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第2のシーラント成分(B)に、過酸化物活性剤を用いることを特徴とする請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記架橋剤系を含む前記用いる混合成分の合計定量的比率が、5〜200phrであることを特徴とする請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
用いる混合成分の前記合計定量的比率が、20〜100phrであることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第2のシーラント成分(B)に、ペーストまたは油の稠度を有する媒体を用いることを特徴とする請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2010−528131(P2010−528131A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508755(P2010−508755)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052554
【国際公開番号】WO2008/141848
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509323358)コンティネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL REIFEN DEUTSCHLAND GMBH
【Fターム(参考)】