説明

ポリマー溶液

【課題】溶媒を除去する必要性を軽減または排除するポリマーマイケルドナーのポリマー溶液を提供することが望ましい。
【解決手段】溶媒中で1以上のモノマーを重合することを含む、ポリマー溶液の製造方法が提供され、ここで、前記モノマーは、多官能性マイケルドナーである1以上のエチレン性不飽和モノマーを含み;前記溶媒は、前記溶媒の重量基準で40重量%以上の1以上の多官能性マイケルドナーを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、エネルギー省により授与された契約番号DE−FG36−04GO14317のもと政府の支援を得てなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
過去において、ポリマーマイケルドナー化合物は、溶液重合により製造され、例えば、アセトアセテート官能性モノマーが他のモノマーと共重合され、重合が溶媒2−ブトキシエタノール中で行われる米国特許第4,408,018号により教示されるように溶液重合により製造される。多くの用途に対して、溶媒はその後除去されなければならない。
【特許文献1】米国特許第4,408,018号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶媒を除去する必要性を軽減または排除するポリマーマイケルドナーのポリマー溶液を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様において、溶媒中で1以上のモノマーを重合することを含むポリマー溶液の製造方法であって、前記モノマーが、多官能性マイケルドナーである1以上のエチレン性不飽和モノマーを含み、および前記溶媒が、前記溶媒の重量基準で40重量%以上の1以上の多官能性マイケルドナーを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本明細書において用いられる場合、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し;「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味し;および「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを意味する。
【0006】
本明細書において用いられる場合、「エチレン性不飽和」である化合物は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する。
【0007】
本発明は、マイケル付加反応を受けることができる官能基を有する化合物の使用を含む。マイケル付加は、たとえば、RT MorrisonおよびRNBoydによる「Organic Chemistry」(第三版、Allyn and Bacon、1973年)で教示されている。この反応は、触媒の存在下において、マイケルドナーとマイケルアクセプターとの間で起こるものと考えられる。
【0008】
本明細書で使用する場合、「マイケルドナー」は少なくとも1つのマイケルドナー官能基を含有する化合物であり、マイケルドナー官能基は少なくとも1つのマイケル活性水素原子を有する官能基であり、マイケル活性水素原子は2つの電子求引性基(たとえばC=Oおよび/またはC≡Nなど)の間に位置する炭素原子に結合された水素原子である。マイケルドナー官能基の例は、マロン酸エステル基、アセト酢酸エステル基、マロンアミド基、およびアセトアセトアミド基(ここにおいて、マイケル活性水素は2つのカルボニル基の間の炭素原子に結合している);ならびにシアノ酢酸エステル基およびシアノアセトアミド基(ここにおいて、マイケル活性水素はカルボニル基とシアノ基との間の炭素原子に結合している)である。2以上のマイケル活性水素原子を有する化合物は、本明細書において多官能性マイケルドナーと呼ばれる。マイケルドナーは、それぞれが1以上のマイケル活性水素原子を含有する1、2、3以上の別々の官能基を有し得る。分子上のマイケル活性水素原子の合計数がマイケルドナーの官能価である。本明細書で使用される場合、マイケルドナーの「骨格」は、マイケル活性水素原子を含有する官能基以外のドナー分子の部分である。
【0009】
本明細書において用いられる「マイケルアクセプター」とは、構造(I)を有する少なくとも1つの官能基を有する化合物である。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、R、R、およびRは独立して、水素または有機基、たとえばアルキル(直鎖状、分枝状または環状)、アリール、アリール置換アルキル(アルアルキルまたはアリールキルとも呼ばれる)、およびアルキル置換アリール(アルカリールまたはアルキルアリールとも呼ばれる)であり、これらの誘導体および置換体も包含される。R、R、およびRは、独立して、エーテル結合、カルボキシル基、更なるカルボニル基、これらのチオ類似体、窒素含有基、またはこれらの組合せを含むことができ、または含まなくてもよい。Rは酸素、窒素含有基、またはR、R、およびRに対して上で説明されているいずれかの有機基の二価のものである。それぞれが構造(I)を含有する2以上の官能基を有する化合物は、本明細書において多官能性マイケルアクセプターと呼ばれる。分子上の構造(I)を含有する官能基の数がマイケルアクセプターの官能価である。本明細書で使用する場合、マイケルアクセプターの「骨格」は、構造(I)以外のドナー分子の部分である。任意の構造(I)が別の(I)基に結合されていてもよいし、または骨格に直接に結合されていてよい。
【0012】
本発明の実施は、少なくとも1つのマイケル触媒の使用を含む。「マイケル触媒」は、本明細書において用いられる場合、マイケル付加反応を触媒する化合物である。本発明はいかなる特定の理論にも限定されないが、触媒はマイケルドナーから水素イオンを取り去ると考えられる。
【0013】
ここで、化合物がある酸(例えば、RC(O)OH)とあるアルコール(R’OH)のエステルとして記載されている場合、この化合物は、化合物が酸をアルコールと反応させることにより実際に製造されるか、または別の方法により製造されるかに関係なく、構造RC(O)OR’を有する化合物であると考えられる。化合物があるエステル(例えば、RC(O)OR’)に対応するアミドであると記載されている場合、その意味するところのアミドは、RC(O)NHR’またはRC(O)NR’R”(式中、R’およびR”はどちらもN原子と結合し、R”はR’と類似しているか、または同じである)のいずれかである。
【0014】
「ポリマー」は、本明細書において用いられるように、またFW Billmeyer、JR.による「Textbook of Polymer Science」(第2版、1971年)において定義されているように、より小さな化学的繰返し単位の反応生成物から構成される比較的大きな分子である。通常、ポリマーは11以上の繰返し単位を有する。ポリマーは直鎖状構造、分枝状構造、星形構造、ループ状構造、超分岐構造、または架橋構造を有することができ;ポリマーは単一のタイプの繰返し単位を有することができ(「ホモポリマー」)、または1つより多くのタイプの繰返し単位を有することができる(「コポリマー」)。コポリマーは、ランダム、シーケンス、ブロック、他の配列、または任意の混ぜ合わせまたはそれらの組合せに配列された様々なタイプの繰返し単位を有することができる。
【0015】
他の分子と反応してポリマーを形成する分子はモノマーとして知られている。
【0016】
ポリマーの形成は、ポリマーを形成するモノマー間の化学反応を含む。かかる化学反応は、重合反応または重合のような同義語で呼ばれる。モノマー分子の残基はポリマーの繰り返し単位である。
【0017】
本明細書において用いられる場合、ポリマー溶液は、25℃で液体であり、ポリマーおよび溶媒を含有し、ポリマー分子が溶媒中に分散している組成物である。ポリマー溶液は様々な形態をとることはよく知られている。ポリマー分子が少なくとも24時間25℃で分散したままである全ての形態が本発明に含まれる。例えば、溶媒はポリマーのいわゆる「良」溶媒であり、ポリマー分子は溶解し、比較的伸びた構造である。他の場合において、溶媒は「貧」溶媒であり得、ポリマー分子は溶解し、比較的コンパクトな構造である。ポリマー分子が互いに凝集し、凝集物が溶媒中に分散している場合も含まれる。
【0018】
本明細書において用いられる場合、ポリマー溶液中の溶媒はポリマーを溶解または分散させる任意の非ポリマー化合物または非ポリマー化合物の混合物である。溶媒の重量基準で50%以上の水を含有する溶媒は、本明細書において「水性」と呼ばれる。水性ではない溶媒は本明細書においては「非水性」と呼ばれる。
【0019】
本発明の実施は、1以上のモノマーを溶媒中で重合させることを含む。いくつかの実施形態において、溶媒はエチレン性不飽和ではない1以上の化合物である。溶媒は25℃で液体である。いくつかの実施形態において、溶媒は1気圧で50℃以上、または100℃以上の沸点を有する。
【0020】
本発明の実施において、その中で重合が起こる溶媒は、1以上の多官能性マイケルドナーを含む。好適な多官能性マイケルドナーは、溶媒が本明細書において前述のように好適である限り、任意の骨格を有し得る。いくつかの好適な骨格は、例えば、アルキル基、例えば、1〜8個の炭素原子、または2〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。かかるアルキル基は直線状、分岐状、環状、またはその組み合わせであってよい。独立して、いくつかの好適な骨格は、複素環(環内に、炭素以外の1以上の原子を含有する環状基)、例えば、グルコース、スクロース、またはイソソルビドにおいて見られる環構造などである。
【0021】
多官能性マイケルドナーであって、溶媒中に含まれるのに適したものは、本明細書において「溶媒適合性」多官能性マイケルドナーと呼ばれる。
【0022】
溶媒適合性多官能性マイケルドナーの一群は、例えば、マイケル官能基を含有する酸のアルコールとのエステルの構造を有する化合物を包含する。かかるエステル中に含めるのに好適な酸としては、例えば、アセト酢酸、シアノ酢酸、マロン酸、およびその混合物が挙げられる。かかるエステル中に含めるのに好適なアルコールとしては、モノアルコール(1分子あたり1つのヒドロキシル基を有する化合物)およびポリオール(1分子あたり2以上のヒドロキシルを有する化合物)が挙げられる。いくつかの好適なモノアルコールは、例えば、1〜8個の炭素を有するアルキルアルコールであり、例えば、エタノールが包含される。いくつかの好適なポリオールとしては、例えば、2〜8個の炭素、または3〜6個の炭素を有する直線状および分岐アルキルポリオールが挙げられ、例えば、グリセロールおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。別のまたはさらなる好適なポリオールとしては、例えば、生物学的起源由来のポリオール、例えば、イソソルビド、ヒマシ油、グルコースおよびソルビトールが挙げられる。ポリオールを含むエステルは、1つの酸へのエステル結合に参加するように変換されたちょうど1つのヒドロキシル基を有することができ、または2つの酸へのエステル結合に参加するように変換されたちょうど2つのヒドロキシル基を有することができ、または複数の酸へのエステル結合に参加するように変換された2より多いヒドロキシル基を有することができる。
【0023】
いくつかの溶媒適合性多官能性マイケルドナーとしては、例えば、エチルアセトアセテート、トリメチロールプロパントリスアセトアセテート、グリセロールトリスアセトアセテート、およびイソソルビドイソアセトアセテートが挙げられる。
【0024】
溶媒適合性多官能性マイケルドナーは、好適な多官能性マイケルドナーとして前述のエステルのいずれかに対応するアミドでもある。
【0025】
溶媒適合性多官能性マイケルドナーは、その化学組成とは独立に、その分子量により有効に説明することができる。いくつかの実施形態において、溶媒は、1,000以下の数平均分子量を有する1以上の多官能性マイケルドナーを含有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、500以下の数平均分子量を有する1以上の多官能性マイケルドナーを含有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、溶媒は炭素−炭素二重結合を有さない1以上の多官能性マイケルドナーを含有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、エチレン性不飽和モノマーとのフリーラジカル重合に関与しない1以上の多官能性マイケルドナーを含有する。
【0027】
溶媒適合性多官能性マイケルドナーの混合物も溶媒適合性である。
【0028】
いくつかの実施形態において、溶媒中の多官能性マイケルドナーの量は、溶媒の重量基準で、40重量%以上;または50重量%以上;または75重量%以上;または90重量%以上;または95重量%以上;または100重量%である。いくつかの実施形態において、溶媒は、1以上のアセトアセテート基を含有する1以上の多官能性ドナーを含有する。いくつかの実施形態において、溶媒は、アセトアセテートではないマイケルドナー官能基を含有しない1以上の多官能性ドナーを含有する。いくつかの実施形態において、溶媒中の全ての多官能性ドナーは、アセトアセテートではないマイケルドナー官能基を含有しない。
【0029】
本発明の実施は、本明細書において「マイケルドナーモノマー」と称する多官能性マイケルドナーであるエチレン性不飽和モノマーの使用を含む。マイケルドナーモノマーは、炭素−炭素二重結合および2以上のマイケル活性水素原子の両方を有する任意の化合物である。いくつかの好適なマイケルドナーモノマーとしては、例えば、下記構造を有する(メタ)アクリル酸のエステルが挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、R12はメチルまたは水素であり、R13は2以上のマイケル活性水素を含有する基である。いくつかの実施形態において、R13は、構造−R14−R15(式中、−R14は1〜6個の炭素原子を有する二価アルキル基、例えば、エチル(即ち、−CHCH−)などであり、R15はアセトアセテート、シアノアセテート、またはマロネートである。いくつかの実施形態において、R14はエチルであり、R15はアセトアセテートである。
【0032】
好適なマイケルドナーモノマーの混合物も好適である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、1以上のマイケルドナーモノマーに加えて、多官能性マイケルドナーではない1以上のエチレン性不飽和モノマーが使用される。多官能性マイケルドナーではないエチレン性不飽和モノマーは、本明細書においては非マイケルモノマーと呼ばれる。
【0034】
好適な非マイケルモノマーは、多官能性マイケルドナーでなく、マイケルドナーモノマーと共重合できる任意のエチレン性不飽和化合物を包含する。いくつかの好適な非マイケルモノマーは、例えば、カルボキシルモノマー、官能性モノマー、親水性モノマー、および中性モノマーを包含する。
【0035】
カルボキシルモノマーは、カルボキシル基またはその塩を有するモノマーである。いくつかの好適なカルボキシルモノマーは、例えば、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、およびその混合物を包含する。いくつかの実施形態において、カルボキシルモノマーが使用される場合、カルボキシルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、またはその混合物から選択される。カルボキシルモノマーは本発明において任意である。
【0036】
官能性モノマーはカルボキシルモノマーでなく、反応性官能基を有するモノマーである。好適な反応性官能基は、例えば、グリシジル基を包含する。好適な官能性モノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートが挙げられる。官能性モノマーが使用されるいくつかの実施形態において、唯一の官能性モノマーはグリシジルメタクリレートである。官能性モノマーは本発明において任意である。
【0037】
親水性モノマーは、カルボキシルモノマーでなく、官能性モノマーでなく、比較的極性の基を有するモノマーである。好適な比較的極性の基は、例えば、ヒドロキシル基およびアミド基である。いくつかの実施形態において、親水性モノマーは、使用されるならば、ヒドロキシル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、およびその混合物から選択される。いくつかの好適なアミド基としては、例えば、窒素上に置換基を有さないアミド基、窒素上に1つの置換基を有するもの、および窒素上に2個の置換基を有するものが挙げられる。いくつかの好適なアミド基を有する親水性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(ここで、アルキル基は、直線状、分岐、または環状であり、1〜6個の炭素原子を有する)が挙げられる。独立して、いくつかの好適な親水性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基は、直線状、分岐、または環状であり、1〜6個の炭素原子を有する)が挙げられる。ヒドロキシル基を有するいくつかの好適な親水性モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。親水性モノマーが使用されるいくつかの実施形態において、親水性モノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、およびその混合物から選択される。親水性モノマーは本発明において任意である。
【0038】
中性モノマーは、カルボキシルモノマーでなく、官能性モノマーでなく、親水性モノマーではないモノマーである。いくつかの好適な中性モノマーとしては、例えば、オレフィン(例えば、ブタジエンなど)、ビニルアセテート、スチレン、置換スチレン、および(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。いくつかの実施形態において、中性モノマーは、オレフィン(例えば、ブタジエン)、ビニルアセテート、スチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびその混合物から選択される。いくつかの実施形態において、中性モノマーは、スチレン、置換スチレン、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、およびその混合物から選択される。好適な置換スチレンとしては、例えば、アルキルスチレン、例えば、アルファ−メチルスチレンが挙げられる。好適な(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基(直線状、分岐、環状、またはその組み合わせであり得る)を有するものが挙げられる。いくつかの好適な(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を有するものが挙げられる。いくつかの好適な中性モノマーとしては、例えば、スチレン、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびその混合物が挙げられる。中性モノマーは、本発明において任意である。
【0039】
非マイケルモノマーが使用される実施形態のうち、このような実施形態のいくつかにおいて、マイケルドナーモノマーの量は、モノマーの合計重量基準で、1重量%〜40重量%であり、非マイケルモノマーの量は、モノマーの合計重量基準で60重量%〜99重量%である。かかる実施形態のいくつかにおいて、マイケルドナーモノマーの量は、モノマーの合計重量基準で2重量%以上;または4重量%以上である。独立して、かかる実施形態のいくつかにおいて、マイケルドナーモノマーの量はモノマーの合計重量基準で30重量%以下;または25重量%以下である。
【0040】
本発明の実施において、非マイケルモノマーが使用されるならば、任意の種類の非マイケルモノマーは、存在し得る任意の他の種類の非マイケルモノマーの存在または量とは独立に使用することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、1以上の中性非マイケルモノマーが使用される。かかる実施形態のいくつかの態様において、中性非マイケルモノマーの合計量は非マイケルモノマーの合計重量基準で20重量%〜100重量%である。1以上の中性非マイケルモノマーが使用され、かつ1以上のカルボキシル非マイケルモノマーが使用されるいくつかの実施形態において、カルボキシル非マイケルモノマーの合計重量の、中性非マイケルモノマーの合計重量に対する比は0.003〜0.5である。独立して、1以上の中性非マイケルモノマーが使用され、かつ1以上の官能性非マイケルモノマーが使用されるいくつかの実施形態において、官能性非マイケルモノマーの合計重量の、中性非マイケルモノマーの合計重量に対する比は、0.009〜1.5である。独立して、1以上の中性非マイケルモノマーが使用され、かつ1以上の親水性非マイケルモノマーが使用されるいくつかの実施形態において、親水性非マイケルモノマーの合計重量の、中性非マイケルモノマーの合計重量に対する比は0.03〜2である。
【0042】
いくつかの実施形態において、連鎖移動剤が重合の間に使用される。連鎖移動剤は本明細書においてはモノマーと見なされない。連鎖移動剤は重合プロセスにより製造されるポリマーの分子量を減少させる働きをすることが考えられる。いくつかの連鎖移動剤は、例えば、メルカプタン、例えば、ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびその混合物を包含する。連鎖移動剤の使用は任意である。連鎖移動剤が使用されるいくつかの実施形態において、連鎖移動剤の量は、例えば、モノマーの合計重量基準で、0.5重量%以上;または0.8重量%以上である。独立して、連鎖移動剤が使用されるいくつかの実施形態において、連鎖移動剤の量は、例えば、モノマーの合計重量基準で、3重量%以下;または2.5重量%以下;または2重量%以下である。
【0043】
本発明のプロセスは、溶媒中で1以上のモノマーを重合させてポリマーを製造することを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーは、重合が起こる溶媒中に可溶性である。重合の結果において、ポリマー溶液の合計重量のパーセンテージとしての固体ポリマーの重量であるポリマー固形分により溶媒を特徴づけることが有用である。いくつかの実施形態において、ポリマー固形分は33%〜55%である。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマーの重量平均分子量は5,000以上;または9,000以上である。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマーの重量平均分子量は100,000以下;または80,000以下;または60,000以下である。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマーのガラス転移温度は−60℃以上;または−40℃以上である。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマーのガラス転移温度は90℃以下;または120℃以下である。ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量測定法により測定される。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明の方法により形成されるポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの炭素−炭素二重結合の連鎖反応により形成される少なくとも1つのポリマーを含有する。かかるポリマーは本明細書においてはビニルポリマーと呼ばれる。いくつかの実施形態において、本発明のポリマー溶液中にはポリエステルポリマーであるポリマーは存在しない。ポリエステルポリマーは、ポリマーの骨格の一部として少なくとも1つのエステル結合を有するポリマーである。独立して、いくつかの実施形態において本発明のポリマー溶液中にポリウレタンポリマーであるポリマーは存在しない。ポリウレタンポリマーは、ポリマーの骨格の一部として少なくとも1つのウレタン結合を有するポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリマー溶液中に存在する全てのポリマーはビニルポリマーである。
【0045】
いくつかの実施形態において、溶媒中の重合はフリーラジカル重合である。フリーラジカル重合は、多くの場合、開始剤を溶媒およびモノマーの溶液に添加することにより行われる。開始剤は、使用されるならば、例えば、化合物の酸化/還元対の組み合わせにより、25℃より高い温度の適用により、放射線(例えば、紫外線または電子線)の適用により、あるいはその組み合わせによりフリーラジカルを生成させる開始剤をはじめとする任意の種類のものであってよい。
【0046】
重合の結果において、ポリマー溶液はエチレン性不飽和モノマーをほとんどまたは全く含有しないことが想定される。いくつかの実施形態において、エチレン性不飽和モノマーの量は、重合により生成するポリマーの乾燥重量基準で、5重量%以下;または2重量%以下;または1重量%以下である。
【0047】
重合プロセスは、マイケルドナー官能基のほとんどまたは全てを変化させないまま残すことが想定される。重合により生成するポリマーは多官能性マイケルドナーであることが想定される。
【0048】
本発明のポリマー溶液の使用の一つは、1以上の多官能性マイケルアクセプターと、1以上のマイケル触媒と、任意に1以上の追加の成分とともに本発明のポリマー溶液を含有する硬化性混合物中の一成分としての使用であることが想定される。
【0049】
好適な多官能性マイケルアクセプターとしては、例えば、多官能性アクリレートが挙げられる。多官能性アクリレートは、同じ分子と結合した2以上の構造(II)を有する分子であり、ここで、各構造(II)は、RおよびRがどちらも水素であり、Rが水素またはメチルであり、−R−が−O−または−NH−または−N(アルキル)−である構造(I)型である。各構造(II)は任意の種類の結合により骨格と結合することができる。例えば、いくつかの実施形態において、構造(II)を骨格と結合させる結合は、エステル結合であり、これは(メタ)アクリル酸が骨格上のヒドロキシル基とエステルを形成する場合に形成されるエステル結合であると説明することができる。例えば、構造(II)と、かかるエステルに対応するアミドの形態を有する骨格との間の結合も想定される。(メタ)アクリル酸が骨格上のいくつかの他の酸反応性基と反応する場合に形成される結合の形態を有する、構造(II)と骨格との間の結合もさらに想定される。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート上のヒドロキシル基が骨格上のヒドロキシル反応性基(例えば、イソシアネート、カルボキシル、または他のヒドロキシル反応性基)と反応して結合を形成する場合に形成される結合の形態を有する、構造(II)と骨格との間の結合もさらに想定される。
【0050】
好適な多官能性マイケルアクセプターの混合物も好適である。
【0051】
好適なマイケル触媒としては、例えば、強い強塩基および弱塩基が挙げられる。強塩基は、11より高い共役酸のpKaを有する。弱塩基は3〜11の共役酸のpKaを有する。強塩基としては、例えば、リン酸塩、ケイ酸塩、アルカリ金属アルコキシド、第三アミン、および環状アミンなどの種類に属する、11より高い共役酸のpKaを有する塩基が挙げられる。弱塩基としては、例えば、イミダゾリン、ホスフィン、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、およびアルカリ金属重炭酸塩などの種類に属する、3〜11の共役酸のpKaを有する塩基が挙げられる。1つのマイケル活性水素の引き抜きにより形成されるマイケルドナーのアニオンもマイケル触媒として好適である。
【0052】
好適な多官能性マイケル触媒の混合物も好適である。
【0053】
硬化性混合物を硬化させることができることが想定される。即ち、マイケルドナー官能基の一部または全部は構造(I)の基の一部または全部と反応して、ポリマーを形成し、これは直線状でも、分岐状でも、および/または架橋されていてもよい。いくつかの実施形態において、硬化は25℃から100℃の間の温度で起こり;いくつかの実施形態においては、硬化は25℃で起こる。
【0054】
硬化性混合物の硬化した形態は25℃で固体である。硬化性流体の硬化した形態はガラス状固体、ゴム状固体、または任意の他の種類の固体であり得る。いくつかの実施形態において、硬化性混合物の硬化した形態は、100,000以上の重量平均分子量を有するポリマー、または架橋されたポリマー、またはその混合物を含有する。
【0055】
硬化性混合物を特徴づけるための一つの有用な方法は、本明細書において、硬化性混合物中のマイケルドナーと、マイケルアクセプターと、純粋な状態で単離されるならば25℃で固体である物質との全ての物質の合計の、硬化性混合物の全重量パーセンテージとして定義される全硬化性固形分である。いくつかの実施形態において、硬化性混合物の全硬化性固形分は50%以上;または75%以上;または90%以上;または95%以上;または98%以上である。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明のポリマー溶液であって、その溶媒が完全(場合により、僅かな量の不純物を除いて)に1以上の多官能性マイケルドナーから形成されるものを製造することができ;かかるポリマー溶液を、例えば、1以上の多官能性マイケルアクセプター、および1以上のマイケル触媒(どちらも、場合によっては、溶媒中に可溶性であり得る)と混合することができる。かかる実施形態のいくつかにおいて、マイケル触媒は多官能性マイケルドナーではない溶媒における溶液として供給することができる。硬化性混合物に触媒溶液の一部として導入される溶媒が、場合によりわずかな量の不純物を除いて、多官能性マイケルドナーでも、多官能性マイケルアクセプターでもない硬化性混合物中に存在する唯一の液体である実施形態が想定される。
【0057】
いくつかの実施形態において、硬化性混合物は25℃で液体である。かかる実施形態のいくつかにおいて、硬化性混合物は45℃、0.01秒−1の剪断速度で、100Pa*s(100,000cps)以下;または30Pa*s(30,000cps)以下;または10Pa*s(10,000cps)以下;または3Pa*s(3,000cps)以下の粘度を有する。独立して、硬化性混合物の「ブルックフィールド(Brookfield)粘度」はブルックフィールド粘度計(例えば、モデルDV−I+、スピンドル番号25を有し、フルスケールの20%から80%の読みを提供するために十分な回転速度を使用)を用いて有効に測定することができる。いくつかの実施形態において、45℃での硬化性混合物のブルックフィールド粘度は、100Pa*s(100,000cps)以下;または30Pa*s(30,000cps)以下;または10Pa*s(10,000cps)以下;または3Pa*s(3,000cps)以下である。
【0058】
本発明のポリマー溶液を1以上の多官能性マイケルアクセプターおよび1以上のマイケル触媒と混合することにより形成される硬化性混合物を任意の目的で使用することができる。いくつかの好適な目的としては、例えば、コーティング、接着剤、シーラント、エラストマー、および発泡体の形成が挙げられる。いくつかの実施形態において、硬化性混合物は接着剤として使用される。かかる実施形態において、硬化性混合物の層を基体に適用し、第二の基体を硬化性混合物の層と接触させ、硬化性混合物を両基体と接触した状態で硬化させるか、または硬化を許容することが想定される。いくつかの実施形態において、基体は比較的薄く、かつ平坦であり、硬化性混合物は一方の基体の平坦な面を他方の平坦な面に接着させる接着剤としての働きをし;かかる実施形態において、硬化性混合物は積層化接着剤として知られている。
【0059】
本発明の硬化性混合物において、溶媒は、ポリマーではない少なくとも1つの多官能性マイケルドナーを含有する。かかる硬化性混合物は2以上の多官能性マイケルドナーを含有し;1以上の多官能性マイケルドナーは溶媒中に含まれ、かつポリマーでなく、1以上の多官能性マイケルドナーは、多官能性マイケルドナーである1以上のエチレン性不飽和モノマーを含有するモノマーの重合の結果であることが想定される。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の硬化性混合物は望ましい特性:望ましい低粘度の利点、部分的または完全に多官能性マイケルドナーである溶媒の利点、および改善された生強度(green strength)の利点の組み合わせを有することが想定される。
【0061】
生強度は、2以上の基体を硬化性接着剤組成物の層と接触させることにより形成される複合物品の性質である。生強度は短期間で、通常は接着組成物の硬化のプロセスが完了する前に生じる接着結合の強度である。
【0062】
例えば、柔軟性フィルム積層化において、低い粘度は高速コーティングラインによって硬化性混合物の層を適用させるために望ましく;高い生強度は、積層フィルムの時期尚早の層間剥離(「トンネリング(tunneling)」と呼ばれる)を防止するために望ましく;多官能性マイケルドナーを溶媒中に含めることは、接着剤から溶媒を除去する必要性を軽減または排除するために望ましい。
【0063】
独立して、かかる実施形態のいくつかは、特定の実施形態が、望ましいならば、硬化前の硬化性混合物の粘度および硬化性混合物の硬化した形態のレオロジー特性の両方を制御するために設計することができるという特性を有することが想定される。例えば、硬化性混合物の硬化した形態を感圧接着剤として使用することが意図される場合、硬化性混合物の硬化した形態は、比較的低い架橋密度を有する、比較的低いTg(20℃未満、または10℃未満、または0℃未満)のポリマーを含有することが望ましい。比較的低い架橋密度は、例えば、多官能性マイケルドナーであるエチレン性不飽和モノマーを比較的少量含有し、および他のエチレン性不飽和モノマーを比較的多量含有するモノマーの混合物(モノマーは所望のTgを得るために選択される)を使用して、本発明の重合プロセスを行うことにより提供することができる。硬化性混合物の未硬化形態の望ましい低い粘度は、溶媒の存在により得ることができ、溶媒除去の必要性は、溶媒中にポリマーではない1以上の多官能性マイケルドナーを含めることにより軽減または排除できる。
【0064】
本明細書において、特に他を示す記載がない限り、どの操作も25℃、1気圧で行われると理解される。
【0065】
さらに、本明細書において、種類が指定され、組成物が特定のリスト「から選択された」その種類の要素を含有するとされる場合、組成物は、その特定のリストにおいて指定されたもの以外のその種類の要素を含有しないことを意味すると理解されるべきである。例えば、ポリマーを製造するためのカルボキシルモノマーがアクリル酸、メタクリル酸、またはその混合物から選択されると記載されている場合、ポリマーの製造するために使用されるモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、およびその混合物以外のカルボキシルモノマーを含有しないと理解される。
【実施例】
【0066】
以下の実施例で、次の略語が使用される:
AAEM=アセトアセトキシエチルメタクリレート
TMPtrisAcAc=トリメチロールプロパントリスアセトアセテート
BA=ブチルアクリレート
MMA=メチルメタクリレート
AA=アクリル酸
MPTMS=3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
DDM=ドデシルメルカプタン
HEA=ヒドロキシエチルアクリレート
HEMA=ヒドロキシエチルメタクリレート
DMA=N,N−ジメチルアクリルアミド
VTMS=ビニルトリメトキシシラン
MATS=3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート
GMA=グリシジルメタクリレート
Init=開始剤(Vazo(商標)67、Dupont Co.から得られる置換アゾニトリル化合物)
Tg=Fox式により計算されるガラス転移温度
Mw=サイズ排除クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量
%Sol=本明細書において前記定義のポリマー固形分
CTA=連鎖移動剤
ND=測定せず
Solv=溶媒
SR−259=Sartomer Co.から得られるポリエチレングリコール(200)ジアクリレート
Morcure(商標)2000=ローム・アンド・ハース・カンパニーから得られるジグリシジルエーテルビスフェノール−Aのジアクリレート
TRPGDA=トリプロピレングリコールジアクリレート
Cat Mix=マイケル触媒混合物組成物であって、Cat Mixの重量基準で、35重量%NaCO、36重量%Morcure(商標)2000、29重量%TRPGDAを含有するマイケル触媒混合物組成物。
【0067】
〔実施例1〕:ポリマー溶液の製造手順
500mL四口フラスコに110gの溶媒を添加し、メカニカルスターラーおよび温度制御機器を有する空気式ポットリフターを用いて90℃に温めた。フラスコの1つのアームにパートA(開始剤および溶媒)の添加漏斗を取り付け、別のフラスコのアームにパートB(AAEM、アクリレート、メタクリレート、連鎖移動剤、酸緩衝液などを含むモノマーを含有)を含有する添加漏斗を取り付けた。パートAについて、開始剤を溶媒中に溶解させた。反応容器が90℃に達したら、両方の添加漏斗を開けて、反応溶液中への両パートの速度が一定であるようにした。添加速度は、モノマー溶液(パートB)の添加が約1時間にわたって続き、一方、開始剤溶液(パートA)が約1.25時間にわたって添加されるように調節した。両添加が完了した後、反応溶液を90℃で1時間撹拌し、続いて、追加量の開始剤をフラスコに直接添加した。追加は、典型的にさらに1時間後に完了し、残存するモノマーを減じた。90℃での撹拌をさらに1時間続けた後、反応を停止した。溶液ポリマーを次に別の容器に温かい状態で移した。
【0068】
〔実施例2〕:TMPtrisAcAc溶媒
TMPtrisAcAcを溶媒として用いる実施例1の方法を用いて、次のポリマー溶液を製造した。各モノマーの量は重量部である。
【0069】
【表1】

【0070】
〔実施例3〕:TMPtrisAcAc溶媒中の官能化ポリマー
実施例2の方法を用いて、次のポリマーを製造し、試験し、以下に示す結果を得た。各ポリマーについて、モノマーおよび連鎖移動剤を表3−1に示し;結果として得られるポリマーの特性を表3−2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
〔実施例4〕:グリセロールトリスアセトアセテート溶媒を用いた官能化ポリマー
溶媒がグリセロールトリスアセトアセテートである以外は実施例2の方法を使用して次のポリマーを製造し、試験し、結果は以下に示すとおりであった。各ポリマーについて、モノマー、連鎖移動剤、およびその他の注記を表4−1に示し、得られたポリマーの特性を表4−2に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
〔実施例5〕
他のアセトアセテート溶媒中のポリマー
溶媒が以下に記載するとおりである以外は実施例2の方法を用いて、次のポリマーを製造し、試験し、結果は下記に示すとおりであった。各ポリマーについて、溶媒、モノマー、開始剤、および連鎖移動剤を表5−1に示し、得られたポリマーの特性を表5−2に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
〔実施例6〕:Tg−35℃を有するポリマーの調製
実施例1の手順を用い、TMPtrisAcAcの溶媒を用いて、次の重量部のモノマー比を有するポリマーを製造した:30AAEM/69BA/1AA(モノマーの合計重量基準で1.8重量%の量においてMPTMSのCTAを使用)。結果として得られたポリマー溶液は43%ポリマー固形分を有していた。結果として得られたポリマーはFox式により計算すると−35℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0080】
〔実施例7〕:マイケルアクセプターとの混合物
Morcure(商標)2000(5.77g)、TRPGDA(1.93g)およびCat Mix(1.66g)を45℃で混合して、均一な完全混合物を作成した。この完全混合物を45℃で実施例6の均一な混合物と組み合わせ、短時間混合した。45℃での初期ブルックフィールド粘度(スピンドル数25を有するBrookfield モデルDV−I+により、フルスケールの20%から80%の読みを提供するために十分な回転速度を用いて測定)は1.7Pa*S(1700cps)であった。粘度倍加時間は17.3分であり、これは完全混合物が有用な硬化が可能であることを示す。
【0081】
完全混合物を、形成直後に、PETフィルム上に2.0g/m(1.2lb/リーム)のコーティング重量でコーティングした。次に、アルミ箔を該コーティングと接触させ、その積層物をローラー間でプレスした。
【0082】
幅25mm(1インチ)の試験片を各積層物から切り出した。試験片を引張試験機で25℃において4.2mm/秒(10インチ/分)の速度で引き離した。引っ張り強度を試験片を引くために必要な最大負荷として記録した。
【0083】
1つの試験片を24時間25℃で保存し、次に剥離試験した;最大負荷は176グラムであった。別の試験片を48時間25℃で保存した;最大負荷は134グラムであった。
【0084】
〔実施例8〕
Tg58℃を有するポリマーの調製
実施例1の手順を用い、TMPtrisAcAcの溶媒を用いて、次の重量部におけるモノマー比を有するポリマーを製造した:10AAEM/48VAc/45MMA/1AA(モノマーの合計重量基準で1.7重量%の量でMPTMSのCTAを使用)。結果として得られたポリマーは43%ポリマー固形分を有していた。結果として得られたポリマーはFox式により計算すると58℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0085】
〔実施例9〕:マイケルアクセプターとの混合物
Morcure(商標)2000(8.19g)、TRPGDA(2.9g)およびCat Mix(2.49g)を45℃で混合して、均一な完全混合物を作成した。この完全混合物を45℃で実施例8の均一な混合物と組み合わせ、短時間混合した。45℃での初期ブルックフィールド粘度(スピンドル数25を有するBrookfield モデルDV−I+により、フルスケールの20%から80%の読みを提供するために十分な回転速度を用いて測定)は2.4Pa*S(2400cps)であった。粘度倍加時間は27.2分であり、これは完全混合物が有用な硬化が可能であることを示す。
【0086】
完全混合物を、形成直後に、PETフィルム上に2.0g/m(1.2lb/リーム)のコーティング重量でコーティングした。次に、アルミ箔を該コーティングと接触させ、その積層物をローラー間でプレスした。
【0087】
幅25mm(1インチ)の試験片を各積層物から切り出した。試験片を引っ張り試験機で25℃において4.2mm/秒(10インチ/分)の速度で引き離した。引っ張り強度を試験片を引くために必要な最大負荷として記録した。
【0088】
1つの試験片を24時間25℃で保存し、次に剥離試験した;最大負荷は574グラムであった。別の試験片を48時間25℃で保存した;最大負荷は604グラムであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中で1以上のモノマーを重合することを含むポリマー溶液の製造方法であって、前記モノマーが、多官能性マイケルドナーである1以上のエチレン性不飽和モノマーを含み、および前記溶媒が、前記溶媒の重量基準で40重量%以上の1以上の多官能性マイケルドナーを含む方法。
【請求項2】
前記溶媒が、エチレン性不飽和ではない1以上の多官能性マイケルドナーを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の、多官能性マイケルドナーであるエチレン性不飽和モノマーが、1以上の、アクリル酸のエステル、または1以上の、メタクリル酸のエステルまたはその混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の1以上のモノマーが、前記の、多官能性マイケルドナーであるエチレン性不飽和モノマーに加えて、多官能性マイケルドナーではない1以上のエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の、多官能性マイケルドナーではないエチレン性不飽和モノマーが、オレフィン、ビニルアセテート、スチレン、置換スチレン、アクリル酸のアルキルエステル、メタクリル酸のアルキルエステル、およびその混合物からなる群から選択される1以上の中性モノマーを含み;および前記の、多官能性マイケルドナーではないエチレン性不飽和モノマーが、1以上のカルボキシルモノマーをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法により製造されるポリマー溶液。
【請求項7】
請求項1記載の方法を行い、および前記ポリマー溶液を
(i)1以上の多官能性マイケルアクセプターおよび
(ii)1以上のマイケル触媒
と混合することを含む、硬化性混合物の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法により製造される硬化性混合物。

【公開番号】特開2009−7572(P2009−7572A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−144093(P2008−144093)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】