説明

ポリマー組成物、製造方法、及びそれから形成される物品

マトリックスポリマー、カプセル化用ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されていてもよいフルオロポリマー、及び充填材を含むポリマー組成物が開示されている。このポリマー組成物の作成方法、及びかかる組成物から作成された物品も開示されている。本組成物及び物品は、改良された引張弾性率、延性、及び/又は衝撃特性を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物、このポリマー組成物を合成する方法及びこの組成物から作成される物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのポリマー系物品は射出その他の成形プロセスによって製造される。高いモジュラスのような良好な機械的性質を得るために、充填材を用いてポリマーを強化するといったようないろいろなアプローチが試みられている。ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、及び様々な粒子状充填材のようないろいろなタイプの充填材が使用されている。しかし、これらの充填材を添加するとポリマーの脆性破壊を起こすことが多く、その樹脂の衝撃強さを低下する可能性がある。アラミド充填材の場合のように改良された延性が得られても、得られたモジュラスは非常に低い。加えて、充填材を使用すると、少なくとも部分的に充填材とポリマーマトリックスの相溶性の欠如に起因して加工処理上の困難が生じる可能性がある。かかる不相溶性はまた成形及び流動性に関連する問題を起こし得る。
【0003】
当技術分野における進歩及び多くの充填材含有ポリマー組成物の上首尾にもかかわらず、より高いモジュラス、改良された延性、改良された衝撃、及び/又は成形作業がより迅速にかつ改良された経済で行うことができるように改良されたメルトフロー特性のような改良された性質の組合せが相変わらず求め続けられている。また、物品が良好な衝撃抵抗性及び延性をもっているが、その結果として他の望ましい特性を失うことがないのが望ましい。通例、特定のポリマー組成物で高いモジュラス、良好な流動性、並びに良好な延性及び衝撃強さを得るのは困難である。
【0004】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維は、ポリマー組成物中に充填材として使用されているが、マトリックス樹脂中で凝集して均一な組成物を得るのが極めて困難になる可能性がある。また、ポリテトラフルオロエチレンその他のフルオロポリマーは、熱可塑性ポリマーのある種の性質を改良するためにそのポリマー中に添加剤として使用されてもいる。比較的小量、例えば約0.1〜約1重量パーセントのフルオロポリマーをドリップ抑制性添加剤として難燃グレードの熱可塑性樹脂成形用組成物中に使用することが、例えば、米国特許第4810739号、同第4579906号、及び同第4810739号に記載されている。焼結PTFEを充填材高含有の熱可塑性組成物中に低摩擦性添加剤として使用することが、米国特許第5879791号に開示されている。しかし、フルオロポリマー添加剤を使用することの欠点は、かかる添加剤は多くのポリマーに対して分散性が悪い点にある。
【0005】
米国特許第5804654号は、乳化重合で得ることができる任意のポリマー又はコポリマーをカプセル材料としてカプセル化されたフルオロポリマーを製造する方法を教示している。これらのカプセル化されたフルオロポリマーは、多くのポリマー組成物で、特にその組成物に難燃性を付与するために使用される。米国特許第5962587号及び同第6025441号には、カプセル化されたPTFEを含み、改良された機械的性質が観察された熱可塑性ポリマー組成物が記載されている。しかし、従来技術は、最適のバランスの機械的性質を提供するPTFE含有組成物の特定の組合せ又は加工処理を認識も示唆もしていないようである。従って、当技術分野では、バランスのとれた機械的性質のプロファイル、特に改良された引張弾性率を提供することができる組成物、方法、及び物品が引き続き求められている。
【特許文献1】米国特許第4810739号明細書
【特許文献2】米国特許第4579906号明細書
【特許文献3】米国特許第4810739号明細書
【特許文献4】米国特許第5879791号明細書
【特許文献5】米国特許第5804654号明細書
【特許文献6】米国特許第5962587号明細書
【特許文献7】米国特許第6025441号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、ポリマー組成物は、マトリックス成分、フルオロポリマー、及び充填材からなり、このポリマー組成物はISO−527に従って測定して約3GPaより大きい引張弾性率を有している。
【0007】
もう1つ別の態様において、組成物はマトリックス成分、フィブリル化可能なフルオロポリマー、及び充填材の組合せからなり、このフルオロポリマーはその場でマトリックスポリマー及び/又は充填材と混合することによってフィブリル化される。
【0008】
別の態様において、混合ポリマー組成物はマトリックス成分、充填材、及びフルオロポリマーからなり、このフルオロポリマーは、マトリックスポリマー及び/又は充填材との混合中に、フルオロポリマーをフィブリル化しない以外は同じ組成物より高い引張弾性率を当該組成物に付与するのに有効な程度までフィブリル化される。
【0009】
また、以上の組成物を含んでなる物品も開示される。
【0010】
物品の製造方法は、上記組成物を押し出し、成形し、又は賦形して物品を形成することからなる。
【0011】
別の態様において、溶融ブレンドされたポリマー組成物の製造方法は、マトリックス成分、フィブリル化可能なフルオロポリマー、及び充填材を、ISO−527に従って測定して約3GPaより大きい破断時引張弾性率を有する組成物が生成するのに有効な温度と剪断力で混合することからなる。
【0012】
さらに別の態様は、以上の方法で形成された組成物である。
【0013】
以下の説明、実施例、及び特許請求の範囲を参照することにより、本発明の様々なその他の特徴、態様、及び利点が一段と明瞭になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲では、多くの用語を使用するが、以下の意味を有するものと定義される。
【0015】
単数形態は、前後関係から明らかに他の意味を示す場合を除き、複数も包含する。
【0016】
「任意」又は「場合により」は、その後に記載される事象又は状況が起こってもよいし起こらなくてもよいことを意味し、その記載が、その事象が起こる場合と起こらない場合とを包含することを意味する。
【0017】
「組合せ」とは、本明細書で使用する場合、混合物、コポリマー、反応生成物、ブレンド、複合材、などを包含する。
【0018】
同じ特性に関して示す全ての範囲の端点は独立して組合せ可能であり、その示された端点を含む。「約 より大きい」又は「約 未満」として表される値はその示された端点を含む。例えば、「約3.5より大きい」は3.5の値を含む。
【0019】
本明細書で使用する場合、用語「ポリカーボネート」とは、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物と1種以上のカーボネート前駆体との反応から誘導された構造単位を含むポリカーボネートをいい、ポリエステルカーボネートのようなポリカーボネートのコポリマーを含む。
【0020】
1種以上のマトリックスポリマー、1種以上のフィブリル化されるフルオロポリマー、及び1種以上の充填材を含む混合ポリマー組成物は、フルオロポリマーが混合プロセス中にその場でフィブリル化されると予想外に改良された性質を示す。特に、フルオロポリマーがフィブリル化されない条件下、又は充填材が存在しない場合に、フィブリル化される前のフルオロポリマーから生成された組成物と比較して、熱膨張係数(CTE)、延性、衝撃強さ、及び/又は引張弾性率のような改良された機械的性質を達成することができる。このフルオロポリマーは少なくとも部分的にカプセル化用ポリマーによりカプセル化されてもよいし、又はカプセル化することなく、すなわち、そのままの形態で用いてもよい。
【0021】
マトリックス成分は、本明細書に記載される混合プロセス中にフィブリル化されない1種以上のポリマーからなる。適切なマトリックスポリマーの例としては、限定されることはないが、非晶質、結晶性、及び半結晶性の熱可塑性材料、例えば、ポリオレフィン(例えば、線状又は環状ポリオレフィン、例えばポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、など)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルメチレンテレフタレート、など)、アリーレートエステル、ポリアミド、ポリスルホン(例えば、水素化ポリスルホン、など)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン(例えば、水素化ポリスチレン、シンジオタクチック及びアタクチックポリスチレン、水素化ポリスチレン、例えば、ポリシクロヘキシルエチレン、スチレン−コ−アクリロニトリル、スチレン−コ−無水マレイン酸、など)、ポリブタジエン、ポリアクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メタクリル酸メチル−ポリイミドコポリマー、など)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(例えば、2,6−ジメチルフェノールから誘導されたもの、及び2,3,6−トリメチルフェノールとのコポリマー、など)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、フルオロポリマー、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリフッ化ビニル、及びポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(但し、このフルオロポリマーは下記フルオロポリマー成分より低い軟化温度を有する)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、並びに以上のポリマーを1種以上含む組合せがある。このマトリックスポリマーは、一般に、限定されることはないが、粉末、板状、ペレット、フレーク、チップ、ウィスカー、などを始めとする任意の形態で提供され得る。
【0022】
1つの実施形態において、マトリックスポリマーは、ポリオレフィンのホモポリマー若しくはコポリマー、ポリカーボネートのホモポリマー若しくはコポリマー、ポリエステルのホモポリマー若しくはコポリマー、ポリフェニレンエーテルのホモポリマー若しくはコポリマー、スチレン系ポリマーのホモポリマー若しくはコポリマー、又は以上のものを1種以上含む組合せであることができる。具体的には、マトリックスポリマーは、ホモポリマー、又は1種以上のポリエチレン、ポリプロピレン、若しくはポリブチレンを含むコポリマーからなることができる。もう1つ別の実施形態において、マトリックスポリマーはポリカーボネート、又はポリカーボネートを含む組合せからなり得る。
【0023】
有用なポリカーボネートは、次の一般式(I)の繰返し単位を2以上含む。
【0024】
【化1】

式中、各Gは同一でも異なっていてもよく、Gで表される部分の60%以上が芳香族、例えばフェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、などである。
【0025】
式(I)中のEは、アルキレン、アルキリデン、シクロアルキレン、又はシクロアルキリデン基、例えばメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデン、シクロヘキシレン、などのような二価C1−36ヒドロカルビル基でよい。或いは、Eは、芳香族結合、第三アミノ結合、エーテル結合、エステル結合、カルボニル結合、ケイ素含有結合(例えば、ジメチルシロキサン)、スルフィド、スルホキシド、若しくはスルホンのようなイオウ含有結合、ホスフィニル、ホスホニルのようなリン含有結合、及び類似の結合のような、アルキレン又はアルキリデンと異なる部分によって連結された2以上のアルキレン又はアルキリデン基であってもよい。また、Eは、第三アミノ結合(但し、R13は上記定義の通り)、エーテル結合、エステル結合、カルボニル結合、ケイ素含有結合(例えばジメチルシロキサン)、スルフィド、スルホキシド、若しくはスルホンのようなイオウ含有結合、ホスフィニル若しくはホスホニルのようなリン含有結合、及び類似の結合であってもよい。
【0026】
文字「p」はゼロからE上で置換に利用可能な位置の数までの整数を表す。R13は、存在する場合、水素又はC1−12アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル、などの基のような一価ヒドロカルビル基である。
【0027】
式(I)中のYは、ハロゲン(すなわち、フッ素、臭素、塩素、又はヨウ素)、ニトロ基、C1−12アルキル、アルケニル、若しくはアリル基、C1−12アルコキシ若しくはアルケニル基、などでよいが、Yはポリカーボネートを製造するのに使用する反応体及び反応条件に対して実質的に不活性で、かつその影響を受けてはならない。式(1)中の文字「m」は、ゼロからG上で置換に利用可能な位置の数までの任意の整数を表す。
【0028】
式(I)中の文字「t」は1以上に等しい整数を表し、「s」はゼロ又は1であり、「u」はゼロ又は1を表す。
【0029】
かかるポリカーボネートは、対応するジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体の界面反応によって製造することができる。適切なジヒドロキシ化合物の幾つかの具体的な非限定例としては、名称又は式(一般的なもの又は個々のもの)により米国特許第4217438号に開示されているジヒドロキシ置換炭化水素がある。適切なジヒドロキシ化合物の個々の例の包括的なリストとしては、レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α、α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオリン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、及び2,7−ジヒドロキシカルバゾール、など、並びに以上のジヒドロキシ化合物を1種以上含む混合物がある。
【0030】
適切なビスフェノール化合物の個々の例の包括的なリストとしては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後「ビスフェノールA」又は「BPA」とする)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンがある。以上のジヒドロキシ化合物を1種以上含む組合せも使用できる。好ましいポリカーボネートは、uとtがそれぞれ1、各Gがp−フェニレン、各mがゼロ、sが1、そしてEがイソプロピリデンであるビスフェノールAに基づいている。
【0031】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマーを使用するのが望ましい場合には、2種以上の異なるジヒドロキシ化合物、又はジヒドロキシ化合物とグリコールのコポリマーを使用することも可能である。枝分かれポリカーボネート、また線状ポリカーボネートと枝分かれポリカーボネートのブレンドも有用である。枝分かれポリカーボネートは重合中に枝分かれ剤を添加することによって製造することができる。
【0032】
これらの枝分かれ剤は周知であり、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及びこれらの混合物から選択される3個以上の官能基を含有する多官能性有機化合物がある。個々の例としては、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4−(4−(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α、α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメリト酸、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。この枝分かれ剤は約0.05〜2.0重量パーセントのレベルで添加することができる。枝分かれ剤及び枝分かれポリカーボネートの製造方法は米国特許第3635895号及び同第4001184号(援用により本明細書の内容の一部をなす)に記載されている。あらゆるタイプのポリカーボネート末端基が本熱可塑性組成物で有用であると考えられる。
【0033】
界面重合によるポリカーボネートの製造方法も公知である。この製造プロセスの反応条件は変化し得るが、幾つかの好ましいプロセスでは、通例、二価フェノール反応体を水性苛性ソーダ又はカリに溶解又は分散し、得られた混合物を適切な水不混和性溶媒媒体に加え、これらの反応体を、トリエチルアミン又は相間移動触媒のような適切な触媒の存在下、制御されたpH条件、例えば約8〜約10でホスゲンのようなカーボネート前駆体と接触させる。最も一般的に使用される水不混和性溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエン、などがある。
【0034】
適切なカーボネート前駆体としては、例えば、臭化カルボニル若しくは塩化カルボニルのようなハロゲン化カルボニル、又は二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノン、などのビスクロロホルメート)若しくはグリコールのビスハロホルメート(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、などのビスハロホルメート)のようなハロホルメートがある。以上のようなカーボネート前駆体を1種以上含む組合せも使用できる。
【0035】
使用することができる相間移動触媒の中には、式(RXの触媒があり、ここで各Rは同じであるか又は異なりC1−10アルキル基であり、Qは窒素又はリン原子であり、Xはハロゲン原子又はC1−8アルコキシ基又はC6−188アリールオキシ基である。適切な相間移動触媒としては、例えば、[CH(CHNX、[CH(CHPX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、[CH(CHNX、CH[CH(CHNX、CH[CH(CHNXがあり、ここでXはCl、Br又はC1−8アルコキシ基若しくはC6−188アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効な量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして約0.1〜約10重量%、約0.5〜約2重量%でよい。
【0036】
また、溶融プロセスを使用してもよい。触媒を用いて、ジヒドロキシ反応体とカーボネート前駆体との重合速度を速めることができる。代表的な触媒としては、限定されることはないが、トリエチルアミンのような第三アミン、第四ホスホニウム化合物、第四アンモニウム化合物、などがある。
【0037】
また、ポリカーボネートを製造するには、エステル交換触媒のの存在下Banburyミキサー、二軸式押出機、などでジヒドロキシ反応体とジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネートエステルとを溶融状態で共に反応させて均一な分散物を形成してもよい。蒸留により揮発性の一価フェノールを溶融反応体から除去し、ポリマーを溶融残渣として単離する。
【0038】
ポリカーボネートは広範囲の回分式、半回分式又は連続式反応器で製造することができる。かかる反応器は、例えば、撹拌槽、撹拌塔、管、及び再循環ループ反応器である。ポリカーボネートの回収は、反溶媒、蒸気沈殿、又は反溶媒と蒸気沈殿の組合せを使用するといったような当技術分野で公知の任意の手段によって行うことができる。
【0039】
ポリカーボネート生成物の分子量は、他の要因の中でも、反応体の供給速度、押出機のタイプ、押出機のスクリュー設計及び形状、押出機内の滞留時間、反応温度、並びに押出機に存在する減圧技術を制御することによって変えることができる。また、ポリカーボネート生成物の分子量は、活性化された芳香族カーボネート、脂肪族ジオール、ジヒドロキシ芳香族化合物のような反応体の構造、及び使用する触媒にも依存し得る。1つの実施形態において、ポリカーボネートの平均分子量は約5000〜約100000、より好ましくは約10000〜約65000、最も好ましくは約15000〜約35000である。
【0040】
上記ポリカーボネートに加えて、ポリカーボネートと他の熱可塑性ポリマーとの組合せ、例えばポリカーボネート及び/又はポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組合せを使用することも可能である。適切なポリエステルは、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、及びポリエステルコポリマーでよい。また、枝分かれ剤、例えば、3個以上のヒドロキシル基を有するグリコール又は三官能性若しくは多官能性のカルボン酸を組み込んである枝分かれポリエステルを使用することも可能である。また、時には、組成物の最終使用目的に応じて、ポリエステル上に様々な濃度の酸及びヒドロキシル末端基を有するのが望ましいこともある。
【0041】
1つの実施形態においては、ポリ(アルキレンテレフタレート)を使用する。適切なポリ(アルキレンテレフタレート)の具体例は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、及び以上のポリエステルを1種以上含む組合せである。また、以上のポリエステルで、脂肪族二酸及び/又は脂肪族ポリオールから誘導された単位を少量、例えば、約0.5〜約10重量パーセント含んでコポリエステルを形成しているものも考えられる。
【0042】
ポリカーボネートとポリエステルのブレンドは約1〜約99重量%のポリカーボネートと、これに対応して約99〜約1重量%のポリエステル、特にポリ(アルキレンテレフタレート)からなり得る。1つの実施形態において、このブレンドは約30〜約70重量%のポリカーボネートと、これに対応して約70〜約30重量%のポリエステルからなる。以上の量はポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の総重量に基づく。
【0043】
マトリックスポリマーは、さらに、その衝撃抵抗性を増大するために衝撃改良剤組成物であっても、又はそれを含んでいてもよい。すなわち、衝撃改良剤はマトリックス成分の約1〜100重量パーセント(重量%)、具体的には約5〜約60重量%、さらに具体的には約10〜約40重量%の量で存在することができ、残部はその他のマトリックスポリマー材料である。
【0044】
これらの衝撃改良剤としては、(i)約10℃未満、さらに具体的には約−10℃未満、又はさらに具体的には約−40〜−80℃のTgを有するエラストマー性(すなわち、ゴム状)ポリマー基材と、(ii)エラストマー性ポリマー基材にグラフト化した硬質ポリマー性枝とからなるエラストマー変性グラフトコポリマーがある。公知のように、エラストマー変性グラフトコポリマーを製造するには、まず最初にエラストマー性ポリマーを提供し、次いでエラストマーの存在下で硬質相の構成成分モノマーを重合してグラフトコポリマーを得るとよい。このグラフトはグラフト枝として、又はシェルとしてエラストマーコアに結合していることができる。このシェルは単に物理的にコアを包んでいてもよいし、又はシェルは部分的又は実質的に完全にコアにグラフト化していてもよい。
【0045】
エラストマー相として使用するのに適切な材料としては、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと約50重量%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー、エチレンプロピレンコポリマー(EPR)若しくはエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)のようなオレフィンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、シリコーンゴム、エラストマー性C1−8アルキル(メタ)アクリレート、C1−8アルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー性コポリマー、又は以上のエラストマーを1種以上含む組合せがある。
【0046】
エラストマー相を製造するのに適切な共役ジエンモノマーは次式(II)のものである。
【0047】
【化2】

式中、各Xは独立して水素、C〜Cアルキル、などである。使用できる共役ジエンモノマーの例はブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、など、並びに以上の共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物である。特定の共役ジエンホモポリマーとしては、ポリブタジエン及びポリイソプレンがある。
【0048】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば共役ジエンと1種以上の共重合可能なモノマーとの水性ラジカル乳化重合によって製造されたものも使用できる。共役ジエンとの共重合に適切なモノマーとしては、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどのような縮合芳香族環構造を含有するモノビニル芳香族モノマー、又は次式のモノマーがある。
【0049】
【化3】

式中、各Xは独立して水素、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、又はヒドロキシであり、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ、又はクロロである。使用できる適切なモノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、など、及び以上の化合物を1種以上含む組合せがある。スチレン及び/又はα−メチルスチレンを、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用することができる。
【0050】
共役ジエンと共重合することができるその他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド若しくはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N−アルキル−、アリール−、若しくはハロアリール置換マレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び次の一般式(10)のモノマーのようなモノビニルモノマーである。
【0051】
【化4】

式中、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ、又はクロロであり、Xはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニル、C〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニル、などである。式(10)のモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、など、及び以上のモノマーを1種以上含む組合せがある。アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸2−エチルヘキシルのようなモノマーが一般に共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして使用される。以上のモノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーとの混合物も使用できる。
【0052】
エラストマー性相として使用するのに適切な(メタ)アクリレートモノマーは、C1−8アルキル(メタ)アクリレート、特にC4−6アルキルアクリレート、例えばアクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、など、及び以上のモノマーを1種以上含む組合せの架橋した粒子状エマルションホモポリマー又はコポリマーであってもよい。これらのC1−8アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、場合により、15重量%以下の式(II)、(III)、又は(IV)のコモノマーと混合して重合してもよい。代表的なコモノマーとしては、限定されることはないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、フェネチルメタクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル又はアクリロニトリル、及び以上のコモノマーを1種以上含む混合物がある。場合により、5重量%以下の多官能性架橋用コモノマー、例えばジビニルベンゼン、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、例えばグリコールビスアクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステル、など、並びに以上の架橋剤を1種以上含む組合せが存在してもよい。
【0053】
エラストマー相は、連続式、半回分式、又は回分式プロセスを用いて、塊状、乳化、懸濁、溶液、又はバルク−懸濁、乳化−バルク、バルク−溶液若しくはその他の技術のような複合プロセスによって重合することができる。エラストマー基材の粒径は決定的に重要ではない。例えば、乳化系重合ゴム格子では、約0.001〜約25マイクロメートル、具体的には約0.01〜約15マイクロメートル、さらに具体的には約0.1〜約8マイクロメートルの平均粒径を使用することができる。バルク重合ゴム基材には、約0.5〜約10マイクロメートル、具体的には約0.6〜約1.5マイクロメートルの粒径が使用できる。粒径は簡単な光透過法又はキャピラリー流体クロマトグラフィー(capillary hydrodynamic chromatography、CHDF)で測定することができる。エラストマー相は粒子状の適度に架橋した共役ブタジエン又はC4−6アルキルアクリレートゴムでよく、好ましくはゲル含量が70%より大きい。また、ブタジエンとスチレン及び/又はC4−6アルキルアクリレートゴムとの混合物も適切である。
【0054】
エラストマー性相はグラフトコポリマー全体の約5〜約95重量%、より具体的にはエラストマー変性グラフトコポリマーの約20〜約90重量%、さらに具体的には約40〜約85重量%であり得、残りは硬質グラフト相である。
【0055】
エラストマー変性グラフトコポリマーの硬質相は、1種以上のエラストマー性ポリマー基材の存在下で、モノビニル芳香族モノマー及び場合により1種以上のコモノマーを含む混合物をグラフト重合することによって形成することができる。上記式(9)のモノビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ジブロモスチレンのようなハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラ−ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、など、又は以上のモノビニル芳香族モノマーを1種以上含む組合せを硬質グラフト相に使用することができる。適切なコモノマーとしては、例えば、上記モノビニルモノマー及び/又は一般式(10)のモノマーがある。1つの実施形態において、Rは水素又はC〜Cアルキルであり、Xはシアノ又はC〜C12アルコキシカルボニルである。硬質相に使用するのに適切なコモノマーの具体例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、など、及び以上のコモノマーを1種以上含む組合せがある。
【0056】
硬質グラフト相中のモノビニル芳香族モノマーとコモノマーの相対比は、エラストマー基材のタイプ、モノビニル芳香族モノマーのタイプ、コモノマーのタイプ、及び衝撃改良剤の望ましい性質に応じて広く変化し得る。硬質相は一般に、100重量%以下のモノビニル芳香族モノマー、具体的には約30〜約100重量%、さらに具体的には約50〜約90重量%のモノビニル芳香族モノマーを含み、残りはコモノマーである。
【0057】
存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じて、未グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーの別のマトリックス又は連続相はエラストマー変性グラフトコポリマーと同時に得ることができる。通例、かかる衝撃改良剤は、衝撃改良剤の総重量を基準にして約40〜約95重量%のエラストマー変性グラフトコポリマーと約5〜約65重量%のグラフト(コ)ポリマーを含む。もう1つ別の実施形態において、かかる衝撃改良剤は、衝撃改良剤の総重量を基準にして、約50〜約85重量%、さらに具体的には約75〜約85重量%のゴム変性グラフトコポリマーを、約15〜約50重量%、さらに具体的には約15〜約25重量%のグラフト(コ)ポリマーと共に含む。
【0058】
もう1つ別の特定のタイプのエラストマー変性衝撃改良剤は、1種以上のシリコーンゴムモノマー、式HC=C(R)C(O)CHCHを有する枝分かれアクリレートゴムモノマー、第1のグラフト結合モノマー、重合可能なアルケニル含有有機材料、及び第2のグラフト結合モノマーから誘導された構造単位を含む。上記式中で、Rは水素又はC〜C線状若しくは枝分かれヒドロカルビル基であり、Rは枝分かれC〜C16ヒドロカルビル基である。シリコーンゴムモノマーは、例えば、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、若しくはアリルアルコキシシランの単独、又はこれらと例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はテトラエトキシシランとの組合せからなり得る。
【0059】
代表的な枝分かれアクリレートゴムモノマーとしては、イソ−オクチルアクリレート、6−メチルオクチルアクリレート、7−メチルオクチルアクリレート、6−メチルヘプチルアクリレート、などの単独又は組合せがある。重合可能なアルケニル含有有機材料は、例えば、式(III)又は(IV)のモノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は非枝分かれ(メタ)アクリレート、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、などの単独又は組合せでよい。
【0060】
1種以上の第1のグラフト結合モノマーは、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、若しくはアリルアルコキシシランの単独又はこれらと例えば(γ−メタクリルオキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシラン及び/又は(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランとの組合せでよい。1種以上の第2のグラフト結合モノマーはアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、又はトリアリルイソシアヌレートの単独又は組合せのような1以上のアリル基を有するポリエチレン性不飽和化合物である。
【0061】
シリコーン−アクリレート衝撃改良剤組成物は乳化重合で製造することができる。例えば、1種以上のシリコーンゴムモノマーを、ドデシルベンゼンスルホン酸のような界面活性剤の存在下で約30〜約110℃の温度で1種以上の第1のグラフト結合モノマーと反応させてシリコーンゴムラテックスを形成する。或いは、シクロオクタメチルテトラシロキサンのような環状シロキサン及びテトラエトキシオルトシリケートを(γ−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランのような第1のグラフト結合モノマーと反応させて約100ナノメートル〜約2ミクロンの平均粒径を有するシリコーンゴムを得てもよい。次に、1種以上の枝分かれアクリレートゴムモノマーを、場合によりアリルメタクリレートのような架橋性モノマーを存在させて、過酸化ベンゾイルのようなフリーラジカル生成性重合触媒の存在下でシリコーンゴム粒子と共に重合させる。次いで、このラテックスを、重合可能なアルケニル含有有機材料及び第2のグラフト結合モノマーと反応させる。このグラフトシリコーン−アクリレートゴムハイブリッドのラテックス粒子は、凝集(凝集剤を用いた処理による)により水性相から分離し、微細な粉末に乾燥してシリコーン−アクリレートゴム衝撃改良剤組成物を製造することができる。この方法は、一般に約100ナノメートル〜約2マイクロメートルの粒径を有するシリコーン−アクリレート衝撃改良剤を製造するのに使用することができる。
【0062】
以上のエラストマー変性グラフトコポリマーの形成用として公知の方法には、連続式、半回分式、又は回分式プロセスを用いる塊状、乳化、懸濁、及び溶液法、又はバルク−懸濁、乳化−バルク、バルク−溶液その他の技術のような複合法がある。
【0063】
1つの実施形態においては、以上のタイプの衝撃改良剤を乳化重合プロセスで製造するが、このプロセスではC6−30脂肪酸のアルカリ金属塩、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、など、アルカリ金属炭酸塩、アミン、例えばドデシルジメチルアミン、ドデシルアミン、など、及びアミンのアンモニウム塩のような塩基性物質を使用しない。かかる物質は、一般に、乳化重合において界面活性剤として使用され、ポリカーボネートのエステル交換及び/又は分解を触媒し得る。代わりに、イオン性のスルフェート、スルホネート、又はホスフェート系界面活性剤を、衝撃改良剤、特に衝撃改良剤のエラストマー性基材部分を製造するのに使用し得る。適切な界面活性剤としては、例えば、C1−22アルキル又はC7−25アルキルアリールスルホネート、C1−22アルキル又はC7−25アルキルアリールスルフェート、C1−22アルキル又はC7−25アルキルアリールホスフェート、置換シリケート、及びこれらの混合物がある。特定の界面活性剤はC6−16、具体的にはC8−12アルキルスルホネートである。この乳化重合プロセスはRohm & Haas及びGeneral Electric Companyのような会社の様々な特許及び文献に記載され開示されている。実施の際には、上記衝撃改良剤のいずれも使用できるが、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルカリ金属炭酸塩、その他の塩基性物質は含まない。
【0064】
フルオロポリマー成分として使用するのに適切なフルオロポリマーは、マトリックスポリマー、充填材、又は同時に両者と混合する間にフィブリル化することができる(「フィブリル化可能である」)。「フィブリル化」とは、例えば、「ノード及びフィブリル」、網目、又はかご様構造が生成するようなフルオロポリマーの処理を指していう専門用語である。適切なフルオロポリマーとしては、限定されることはないが、1種以上のフッ素化α−オレフィンモノマー、すなわち、水素原子の代わりに1個以上のフッ素原子を含むα−オレフィンモノマーから誘導された構造単位を含むホモポリマー及びコポリマーがある。1つの実施形態において、フルオロポリマーは、2種以上のフッ素化α−オレフィン、例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、などから誘導された構造単位を含んでいる。もう1つ別の実施形態において、フルオロポリマーは、1種以上のフッ素化α−オレフィンモノマーと、フッ素化モノマーと共重合可能な1種以上の非フッ素化モノエチレン性不飽和モノマー、例えば、α−モノエチレン性不飽和共重合可能モノマー、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、アクリレートモノマー(例えば、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチル)、ビニルエーテル(例えば、シクロヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、ビニルエステル)などとから誘導された構造単位を含んでいる。フルオロポリマーの具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン、ポリフッ化ビニル、及びエチレンクロロトリフルオロエチレンがある。以上のフルオロポリマーを1種以上含む組合せも使用することができる。
【0065】
公知のように、フルオロポリマーは粉末、エマルション、分散物、凝集塊、などを始めとして各種の形態で入手可能である。「分散物」(「エマルション」ともいう)フルオロポリマーは、一般に分散又は乳化によって製造され、一般に水中に約25〜60重量%のフルオロポリマーを含み、界面活性剤で安定化されており、これらのフルオロポリマー粒子は直径が約0.1〜0.3マイクロメートルである。「微細な粉末」(又は「凝集した分散物」)フルオロポリマーは分散により製造されたフルオロポリマーを凝集・乾燥することによって作成することができる。微細な粉末のフルオロポリマーは一般に約400〜500ミクロンの粒径を有するように製造される。「顆粒状」フルオロポリマーは懸濁法によって作成することができ、一般に2つの異なる粒径範囲、すなわち約30〜40マイクロメートルのメジアン粒径、及び約400〜500マイクロメートルのメジアン粒径を示す高い嵩密度の生成物として製造される。また、フルオロポリマーのペレットも得られ、望ましい粒径を示すように低温で粉砕することができる。
【0066】
1つの実施形態において、フルオロポリマーは、マトリックスポリマーと同一でも異なっていてもよいカプセル化用ポリマーにより少なくとも部分的にカプセル化されている(以後 、「カプセル化されたポリマー」という)。理論に縛られることはないが、カプセル化は、マトリックス内でのフルオロポリマーの分配に役立ち得、及び/又はフルオロポリマーとマトリックスを相溶化し得ると考えられる。
【0067】
従って、適切なカプセル化用ポリマーとしては、限定されることはないが、ビニルポリマー、アクリルポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリ(アルケニル芳香族)ポリマー、ポリブタジエン、液晶ポリマー、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、及び以上のポリマーを1種以上含む組合せがある。
【0068】
カプセル化用ポリマーは、当技術分野で公知の方法、例えば、縮合、付加重合、などによってモノマー又はモノマーの混合物を重合することによって得ることができる。乳化重合、特にラジカル重合は効果的に使用することができる。1つの実施形態において、カプセル化用ポリマーは縮合芳香環構造を含有するモノビニル芳香族モノマー、例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど、又は上記式(II)のモノマーから形成される。適切なモノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、など、及び以上の化合物を1種以上含む組合せがある。スチレン及び/又はα−メチルスチレンは特に言及することができる。
【0069】
カプセル化用ポリマーの形成に有用な他のモノマーとしては、モノビニルモノマー、例えばイタコン酸、アクリルアミド、N−置換アクリルアミド又はメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N−アルキル−、アリール−、又はハロアリール−置換マレイミド、(メタ)アクリル酸グリシジル、及び上記式(III)のモノマーがある。式(III)のモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、など、及び以上のモノマーを1種以上含む組合せがある。
【0070】
以上のモノビニル芳香族モノマーとモノビニルモノマーの混合物、例えばスチレンとアクリロニトリルの混合物(SAN)も使用できる。硬質グラフト相中のモノビニル芳香族とモノビニルモノマーの相対比は、フルオロポリマーのタイプ、モノビニル芳香族及びモノビニルモノマーのタイプ、及びそのカプセル材料の望ましい性質に応じて広く変化し得る。カプセル材料は一般に100重量%以下のモノビニル芳香族モノマー、具体的には約30〜約100 重量%、さらに具体的には約50〜約90重量%のモノビニル芳香族モノマーから形成され得、残りがコモノマーである。
【0071】
エラストマーもエラストマー変性グラフトコポリマーと同様にカプセル化用ポリマーとして使用できる。適切なエラストマーとしては、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと約50重量%未満の共重合可能なモノマーとのコポリマー、オレフィンゴム、例えばエチレンプロピレンコポリマー(EPR)又はエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム、シリコーンゴム、エラストマー性C1−8アルキル(メタ)アクリレート、C1−8アルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンのエラストマー性コポリマー、又は以上のエラストマーを1種以上含む組合せがある。
【0072】
適切な共役ジエンモノマーは式(IV)のものである。使用できる共役ジエンモノマーの
例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、など、並びに以上の共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物である。特定の共役ジエンホモポリマーとしては、ポリブタジエン及びポリイソプレンがある。
【0073】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば共役ジエンと10重量%以下の共重合可能な1種以上のモノマーとの水性ラジカル乳化重合によって製造されるものも使用できる。適切な共重合可能なモノマーとしては、上記式(II)のモノビニル芳香族モノマー及び/又は式(III)のモノビニルモノマーがある。特定のコポリマーとしてはスチレン及びアクリロニトリルがある。
【0074】
エラストマー性カプセル化用モノマーとして使用するのに適切な(メタ)アクリレートモノマーとしては、C4−8アルキル(メタ)アクリレート、特にC4−6アルキルアクリレート、例えばアクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル、など、及び以上のモノマーを1種以上含む組合せの架橋した粒子状エマルションホモポリマー又はコポリマーがある。このC4−8アルキル(メタ)アクリレートモノマーは場合により15重量%以下の式(II)、(III)、又は(IV)のコモノマーとの混合物として重合してもよい。代表的なコモノマーとしては、限定されることはないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、フェネチルメタクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル又はアクリロニトリル、及び以上のコモノマーを1種以上含む混合物がある。場合により、5重量%以下の多官能性架橋用コモノマー、例えばジビニルベンゼン、アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、例えばグリコールビスアクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステル、など、並びに以上の架橋剤を1種以上含む組合せ存在してもよい。
【0075】
適切なエラストマー変性グラフトコポリマーは、まず最初にエラストマー性ポリマーを得(例えば、上記のようにして)、次にフルオロポリマーとエラストマーの存在下で硬質相の構成成分モノマーを重合してグラフトコポリマーを得ることによって製造することができる。エラストマー性相はグラフトコポリマー全体の約5〜約95重量%、さらに具体的には約20〜約90重量%、さらに具体的にはエラストマー変性グラフトコポリマーの約40〜約85重量%であることができ、残りが硬質グラフト相である。存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じて、未グラフト化硬質ポリマー又はコポリマーの別のマトリックス又は連続相をエラストマー変性グラフトコポリマーと同時に得てもよい。
【0076】
特定のカプセル化用ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α−エチルスチレン)、ポリ(α−プロピルスチレン)、ポリ(α−ブチルスチレン)、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、ポリ(アクリル酸プロピル)、及びポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸プロピル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)のコポリマー、ポリブタジエン、ポリブタジエンとプロピレンのコポリマー、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマーゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリ(C4−8アルキルアクリレート)ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、EPDMゴム、シリコーンゴム、及び以上のカプセル化用ポリマーを1種以上含む組合せがある。
【0077】
もう1つ別の実施形態において、カプセル化用ポリマーはSAN、ABSコポリマー、α−(C1−3)アルキル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン−アクリロニトリル(AMSAN)コポリマー、SBR、及び以上のものを1種以上含む組合せからなる。さらに別の実施形態において、カプセル化用ポリマーはSAN又はAMSANである。
【0078】
カプセル化用ポリマーの適切な量は、当業者が以下に挙げる指針を用いて過度の実験をすることなく決定することができる。1つの実施形態において、カプセル化されたフルオロポリマーは、当該カプセル化されたフルオロポリマーの総重量を基準にして約10〜約90重量パーセント(重量%)のフルオロポリマーと約90〜約10重量%のカプセル化用ポリマーを含んでいる。或いは、カプセル化されたフルオロポリマーは、当該カプセル化されたポリマーの総重量を基準にして約20〜約80重量%、さらに具体的には約40〜約60重量%のフルオロポリマーと、約80〜約20重量%、具体的には約60〜約40重量%のカプセル化用ポリマーとを含んでいる。
【0079】
本ポリマー組成物はさらに充填材、例えば、一般にポリマー性組成物に使用される充填材及び固体コンパウンディング成分又は剤を含んでいる。理論に縛られることはないが、本発明で得られる有利な結果は、下記混合プロセス中に生ずる充填材とフルオロポリマーとの間の相乗的相互作用に起因すると考えられる。
【0080】
1つの有用なクラスの充填材は粒子状充填材であり、これはいかなる形状、例えば球、板状、繊維、針状、フレーク、ウィスカー、又は不揃いな形状であり得る。適切な充填材は通例平均最長寸法が約1ナノメートル〜約500マイクロメートル、具体的には約10ナノメートル〜約100マイクロメートルである。幾つかの繊維状、針状、又はウィスカー形状の充填材(例えば、ガラス又はウォラストナイト)の平均アスペクト比(長さ:直径)は約1.5〜約1000であり得るが、これより長い繊維も本発明の範囲内である。板状様充填材(例えば、雲母、タルク、又はカオリン)の平均アスペクト比(同じ面積の円の平均直径:平均厚さ)は約5より大きく、具体的には約10〜約1000、さらに具体的には約10〜約200であり得る。二モード、三モード、又はそれ以上の混合アスペクト比も使用できる。
【0081】
充填材は、少なくともその充填材を混入する組成物の加工処理温度でその固体としての物理的構造を維持するのに充分な耐熱性を有している限り、天然又は合成の鉱物又は非鉱物由来であることができる。適切な充填材としては、粘土(クレー)、ナノクレー、カーボンブラック、木粉(油を含んでいてもいなくてもよい)、様々な形態のシリカ(沈降又は水和、ヒュームド若しくは発熱性、ガラス質、溶融又はコロイド状、例えば一般的な砂)、ガラス、金属、無機酸化物(例えば、周期律表の第Ib、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb(炭素を除く)、Va、VIa、VIIa及びVIII族の第2、3、4、5及び6周期の金属の酸化物)、金属の酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ナノスケール酸化チタン、三水和アルミニウム、酸化バナジウム、及び酸化マグネシウム)、アルミニウム若しくはアンモニウム若しくはマグネシウムの水酸化物、アルカリ及びアルカリ土類金属の炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、及び炭酸マグネシウム)、三酸化アンチモン、ケイ酸カルシウム、ケイ藻土、フラー土、ケイ藻土、雲母、タルク、スレート粉、火山灰、綿フロック、アスベスト、カオリン、アルカリ及びアルカリ土類金属硫酸塩(例えば、硫酸バリウム及び硫酸カルシウム)、チタン、ゼオライト、ウォラストナイト、ホウ化チタン、ホウ酸亜鉛、炭化タングステン、フェライト、二硫化モリブデン、アスベスト、クリストバライト、アルミノシリケート、例えばバーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、Na−モンモリロナイト、Ca−モンモリロナイト、水和ナトリウムカルシウムアルミニウムマグネシウムシリケート水酸化物、葉蝋石、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ケイ酸アルミニウムリチウム、ケイ酸ジルコニウム、並びに以上の充填材を1種以上含む組合せがある。適切な繊維状充填材としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、アラミド繊維、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、炭素バッキーボール、超高分子量ポリエチレン繊維、メラミン繊維、ポリアミド繊維、セルロース繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウィスカー、及びホウ酸アルミニウムウィスカーがある。
【0082】
これらのうち、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、炭酸マグネシウム、雲母、炭化ケイ素、カオリン、ウォラストナイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン、シリカ、カーボンブラック、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、及び以上のものを1種以上含む組合せが有用である。雲母、タルク、炭化ケイ素、及び以上の充填材を1種以上含む組合せが特に有用であることが判明している。
【0083】
或いは、又は粒子状充填材に加えて、充填材はモノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の形態であることができ、単独で、又は例えば共織り又はコア/シース、サイドバイサイド、オレンジ−タイプ又はマトリックス及びフィブリル構造により、又はその他繊維製造の当業者に公知の方法によって他のタイプの繊維と組み合わせて使用することができる。適切な共織り構造としては、例えば、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、及び芳香族ポリイミド繊維ガラス繊維などがある。繊維状充填材は、例えば、ロービング、0−90度ファブリックなどのような織った繊維状強化材、連続ストランドマット、チョップト ストランドマット、ティッシュ、ペーパー及びフェルトなどのような不織繊維状強化材、又は組み紐のような三次元強化材の形態で供給され得る。
【0084】
場合により、充填材は表面改質されていてもよく、例えば充填材と組成物のポリマー性部分との相溶性を改良するように処理されていてもよく、これによって脱凝集と充填材のポリマー中への均一な分配が助長される。1つの適切な表面改質は、後にポリマーに結合するカップリング剤の持続性の結合である。また、適切なカップリング剤を使用すると、プラスチック及びエラストマーにおける衝撃、引張、曲げ、及び/又は誘電性、コーティングにおけるフィルムの完全性、基材接着、耐候性及び使用寿命、並びに接着剤及びシーラントにおける応用及び作業性、基材接着、凝集強さ、及び使用寿命も改良され得る。適切なカップリング剤としては、シラン、チタネート、ジルコネート、ジルコアルミネート、カルボキシル化ポリオレフィン、クロメート、塩素化パラフィン、有機ケイ素化合物、及び反応性セルロース誘導体がある。また、充填材は導電性を上げるために金属材料、例えば、金、銅、銀、などの層で部分的又は全体的に被覆されていてもよい。
【0085】
マトリックス成分、フルオロポリマー、及び充填材の相対量は、組成物の望ましい性質を達成するために当業者が以下に挙げる指針を用いて過度の実験をすることなく調節することができる。1つの実施形態において、組成物は、当該組成物(マトリックス、フルオロポリマー、充填材、及び下記に非限定例を挙げる任意の添加剤)の総重量を基準にして約5〜約99重量%のマトリックス成分(任意の衝撃改良剤を含めて)、約0.5〜約40重量%のカプセル化されてないフルオロポリマー、及び約0.5〜約60重量%の充填材を含んでいる。或いは、組成物は、当該組成物の総重量を基準にして約20〜約90、さらに具体的には約30〜約85重量%、さらに一段と具体的には約50〜約85重量%のマトリックスポリマー、約1〜約40重量%、さらに具体的には約2〜約20重量%、さらに一段と具体的には約2.5〜約10重量%のカプセル化されてないフルオロポリマー、及び約3〜約40重量%、さらに具体的には約5〜約30重量%、さらに一段と具体的には約5〜約15重量%の充填材を含み得る。特に有利な結果は、フルオロポリマーの量が組成物の総重量の約2.5重量%より大きい、さらに具体的には約5〜約35重量%、さらに一段と具体的には約10〜約30重量%であるときに達成され得る。
【0086】
もう1つ別の実施形態において、組成物は、当該組成物の総重量を基準にして約5〜約99重量%のマトリックスポリマー、約0.5〜約60重量%のカプセル化されたフルオロポリマー、及び約0.5〜約60重量%の充填材を含んでいる。或いは、本熱可塑性組成物は、当該組成物の総重量を基準にして約20〜約90、さらに具体的には約30〜約85重量%、さらに一段と具体的には約60〜約85重量%のマトリックスポリマー、約1〜約50重量%、さらに具体的には約2〜約45重量%のカプセル化されたフルオロポリマー、及び約0.5〜約50重量%、さらに具体的には約5〜約30重量%、さらに一段と具体的には約5〜約15重量%の充填材を含み得る。特に有利な結果は、カプセル化されたフルオロポリマーの量が組成物の総重量の約2.5重量%より大きい、さらに具体的には約5〜約35重量%、さらに一段と具体的には約10〜約30重量%のときに達成することができる。
【0087】
場合により、ポリマー組成物はさらに、このタイプの樹脂組成物に通常配合される1種以上の添加剤を含有し得る。但し、好ましくは、これらの添加剤は本熱可塑性組成物の望ましい性質に大きな悪影響を与えることのないように選択されなければならない。添加剤の混合物を使用してもよい。かかる添加剤は組成物を形成する成分を混合する間の適切な時点で混合することができる。代表的な添加剤としては、増量剤、潤滑剤、流動性改良剤、難燃剤、顔料、染料、着色剤、UV安定剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、可塑剤、蛍光増白剤、防炎剤、帯電防止剤、発泡剤、などがある。
【0088】
適切な酸化防止性添加剤としては、例えば、有機ホスファイト、例えばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、(2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル)(2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイトなど、アルキル化モノフェノール又はポリフェノール、ポリフェノールとジエンのアルキル化反応生成物、例えばテトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、など、パラ−クレゾール又はジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデン−ビスフェノール、ベンジル化合物、アシルアミノフェノール、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸と一価又は多価アルコールのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロピオン酸と一価又は多価アルコールのエステル、チオアルキル又はチオアリール化合物のエステル、例えばジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど、β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のアミドなど、又は以上の酸化防止剤を1種以上含む組合せがある。酸化防止剤は一般に、組成物のポリマー性部分(マトリックスポリマー、フルオロポリマー、及び任意の衝撃改良剤)の100重量部を基準にして約0.1〜約5重量部の量で使用する。
【0089】
適切な熱安定性添加剤としては、例えば、有機ホスファイト、例えばトリフェニルホスファイト、トリス−(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス−(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスファイトなど、ホスホネート、例えばジメチルベンゼンホスホネートなど、ホスフェート、例えばトリメチルホスフェート、など、及び以上の熱安定剤を1種以上含む組合せがある。熱安定剤は一般に、組成物のポリマー性部分の100重量部を基準にして約0.1〜約5重量部の量で使用する。
【0090】
光安定剤及び/又は紫外光(UV)吸収性添加剤も使用できる。適切な光安定性添加剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、例えば2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、など、又は以上の光安定剤を1種以上含む組合せがある。光安定剤は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.5〜約20重量部の量で使用する。
【0091】
適切なUV吸収性添加剤としては、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン類、ヒドロキシベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾトリアジン類、シアノアクリレート、オキサニリド、ベンゾキサジノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール(CYASORB 5411)、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB 531)、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)−フェノール(CYASORB 1164)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン)(CYASORB UV−3638)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3、3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL 3030)、2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾキサジン−4−オン)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、ナノサイズの無機材料、例えば酸化チタン、酸化セリウム、及び酸化亜鉛(いずれも粒径約100ナノメートル未満)、など、又は以上のUV吸収剤を1種以上含む組合せがある。UV吸収剤は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.5〜約20重量部の量で使用する。
【0092】
可塑剤、潤滑剤、及び/又は離型剤添加剤も使用できる。これらのタイプの物質にはかなりの重複があるが、例えば、フタル酸エステル、例えばジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレート、トリス−(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン、二−若しくは多官能性芳香族ホスフェート、例えばレゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート及びビスフェノール−Aのビス(ジフェニル)ホスフェート、ポリ−α−オレフィン、エポキシド化大豆油、シリコーン、例えばシリコーン油、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸若しくはステアリン酸のような脂肪酸のナトリウム、カルシウム若しくはマグネシウム塩、エステル、例えば、アルキルステアリルエステルのような脂肪酸エステル、例えば、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリトリトールテトラステアレート、など、ステアリン酸メチルとポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、及びこれらのコポリマーを含む親水性及び疎水性の非イオン性界面活性剤との混合物、例えば、適切な溶媒中のステアリン酸メチル及びポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマー、ワックス、例えば蜜蝋、モンタンワックス、パラフィンワックス、EBSワックス、などがある。かかる物質は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.1〜約20重量部の量で使用する。
【0093】
用語「帯電防止剤」とは、ポリマー樹脂中に加工処理するか及び/又は材料又は物品上に噴霧して導電性と全体の物理的性能を改良することができるモノマー性、オリゴマー性、又はポリマー性の物質をいう。モノマー性帯電防止剤の例としては、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エトキシル化アミン、第一、第二及び第三アミン、エトキシル化アルコール、アルキルスルフェート、アルキルアリールスルフェート、アルキルホスフェート、アルキルアミンスルフェート、アルキルスルホン酸塩、例えばステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど、第四アンモニウム塩、第四アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタイン、など、又は以上のモノマー性帯電防止剤を1種以上含む組合せがある。
【0094】
代表的なポリマー性帯電防止剤としては、ある種のポリエステルアミドポリエーテル−ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル、又はポリウレタンがあり、各々ポリアルキレングリコール部分ポリアルキレンオキシド単位、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、などを含有する。かかるポリマー性帯電防止剤は市販されており、例えばPelestat 6321(Sanyo)又はPebax MH1657(Atofina)、Irgastat P18及びP22(Ciba−Geigy)がある。帯電防止剤として使用できるその他のポリマー性物質は、本質的に導電性のポリマー、例えばポリアニリン(PanipolからPANIPOL(登録商標)EBとして市販されている)、ポリピロール及びポリチオフェン(Bayerから市販されている)であり、これらは高温での溶融加工処理後その固有導電率を幾らか保持している。1つの実施形態において、化学的帯電防止剤を含有するポリマー性樹脂中に炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又は以上の任意の組合せを使用して、その組成物を静電気的に消散性にすることができる。帯電防止剤は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.05〜約20重量部の量で使用する。
【0095】
顔料及び/又は染料添加剤のような着色剤も存在し得る。適切な顔料としては、例えば、無機顔料、例えば金属酸化物及び混合金属酸化物、例えば酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄など、硫化物、例えば硫化亜鉛、など、アルミン酸塩、ナトリウムスルホ−シリケートスルフェート、クロメート、など、カーボンブラック、亜鉛フェライト、ウルトラマリーンブルー、Pigment Brown 24、Pigment Red 101、Pigment Yellow 119、有機顔料、例えばアゾ系、ジアゾ系、キナクリドン、ペリレン、ナフタレンテトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンタントロン、ジオキサジン、フタロシアニン、及びアゾレーキ、Pigment Blue 60、Pigment Red 122、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15、Pigment Green 7、Pigment Yellow 147 and Pigment Yellow 150、又は以上の顔料を1種以上含む組合せがある。顔料は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.1〜約20重量部の量で使用する。
【0096】
適切な染料は一般に有機物質であり、例えば、クマリン染料、例えばクマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイルレッドなど、ランタニド錯体、炭化水素及び置換炭化水素染料、多環式芳香族炭化水素染料、シンチレーション染料、例えばオキサゾール若しくはオキサジアゾール染料、アリール−若しくはヘテロアリール置換ポリ(C2−8)オレフィン染料、カルボシアニン染料、インダントロン染料、フタロシアニン染料、オキサジン染料、カルボスチリル染料、ナフタレンテトラカルボン酸染料、ポルフィリン染料、ビス(スチリル)ビフェニル染料、アクリジン染料、アントラキノン染料、シアニン染料、メチン染料、アリールメタン染料、アゾ染料、インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、アミノケトン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、ペリレン染料、ペリノン染料、ビス−ベンゾキサゾリルチオフェン(BBOT)、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、チオキサンテン染料、ナフタルイミド染料、ラクトン染料、フルオロフォア、例えば近赤外波長で吸収して可視波長で放出するアンチストークスシフト染料、など、発光染料、例えば7−アミノ−4−メチルクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス−(4−ビフェニリル)−オキサゾール、2,2’−ジメチル−p−カルテルフェニル、2,2−ジメチル−p−ターフェニル、3,5,3””,5””−テトラ−t−ブチル−p−キンクフェニル、2,5−ジフェニルフラン、2,5−ジフェニルオキサゾール、4,4’−ジフェニルスチルベン、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、1,1’−ジエチル−2,2’−カルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチル−4,4’,5,5’−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージド、7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2、7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2、2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウムペルクロレート、3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレート、2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール、2,2’−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール)、ローダミン700、ローダミン800、ピレン、クリセン、ルブレン、コロネン、など、又は以上の染料を1種以上含む組合せがある。染料は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.01〜約20重量部の量で使用する。
【0097】
発泡体が望まれる場合、適切な発泡剤としては、例えば、低沸点ハロ炭化水素及び二酸化炭素を生成するもの、室温では固体であり、その分解温度より高い温度に加熱されると窒素、二酸化炭素 アンモニアガスのようなガスを発生する発泡剤、例えばアゾジカーボンアミド、アゾジカーボンアミドの金属塩、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、など、又は以上の発泡剤を1種以上含む組合せがある。発泡剤は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.01〜約15重量部の量で使用する。
【0098】
添加することができる適切な難燃剤は、リン、臭素、及び/又は塩素を含む有機化合物であり得る。ある種の用途では規制上の理由から非臭素化及び非塩素化リン含有難燃剤、例えば有機ホスフェート及びリン−窒素結合を含有する有機化合物が好ましいことがある。
【0099】
1つのタイプの代表的な有機ホスフェートは式(GO)P=Oの芳香族ホスフェートである。ここで、式中、各Gは独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキル基であるが、1以上のGが芳香族基である。2つのG基が互いに結合して環状基、例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートを形成していてもよく、これはAxelrodの米国特許第4154775号に記載されている。他の適切な芳香族ホスフェートは、例えば、フェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p−トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、などであり得る。特定の芳香族ホスフェートは各Gが芳香族であるもの、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、などである。
【0100】
二−又は多官能性芳香族リン含有化合物も有用であり、例えば、次式の化合物がある。
【0101】
【化5】

式中、各Gは独立して1〜約30個の炭素原子を有する炭化水素であり、各Gは独立して1〜約30個の炭素原子を有する炭化水素又は炭化水素オキシであり、各Xは独立して臭素又は塩素であり、mは0〜4であり、nは1〜約30である。適切な二−又は多官能性芳香族リン含有化合物の例としては、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート及びビスフェノール−Aのビス(ジフェニル)ホスフェート、これらに対応するオリゴマー性及びポリマー性のもの、などがある。
【0102】
リン−窒素結合を含有する代表的な適切な難燃剤化合物としては、塩化ホスホニトリル、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドがある。存在する場合、リン含有難燃剤は一般に、ポリカーボネート樹脂及び任意の衝撃改良剤の100重量部を基準にして約1〜約60重量部、さらに具体的には約5〜約25重量部の量で存在する。
【0103】
ハロゲン化物質、例えば次式(11)のハロゲン化化合物及び樹脂も難燃剤として使用できる。
【0104】
【化6】

式中、Rはアルキレン、アルキリデン又は環式脂肪族結合、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデン、など、又は酸素エーテル、カルボニル、アミン、若しくはイオウ含有結合、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホン、などである。また、Rは芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホン、などのような基によって連結された2以上のアルキレン若しくはアルキリデン結合からなることもできる。
【0105】
式(11)中のAr及びAr’は各々独立してモノ−又はポリ炭素環式芳香族基、例えばフェニレン、ビフェニレン、ターフェニレン、ナフチレン、などである。
【0106】
Yは有機、無機、又は有機金属基、例えば(1)ハロゲン、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、又は(2)一般式OEのエーテル基(ここで、EはXと類似の一価炭化水素基である)、又は(3)Rで表されるタイプの一価炭化水素基、又は(4)その他の置換基、例えば、ニトロ、シアノ、などであり、この置換基は実質的に不活性である。但し、アリール核当たり1個以上、好ましくは2個のハロゲン原子が存在する。
【0107】
存在する場合、各Xは独立して一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシル、などのようなアルキル基、フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリル、などのようなアリール基、及びベンジル、エチルフェニル、などのようなアラルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、などのような環式脂肪族基である。この一価炭化水素基はそれ自体不活性な置換基を含有していてもよい。
【0108】
各dは独立して1〜最大でAr又はAr’からなる芳香環上に置換されている置換可能な水素の数に等しい。各eは独立して0〜最大でR上の置換可能な水素の数に等しい。各a、b、及びcは独立して0を含む整数である。bが0でないとき、aもcも0ではあり得ない。その他の場合にはa又はcが、両方ではないが、0であり得る。bが0の場合、芳香族基は直接炭素−炭素結合によって結合する。
【0109】
芳香族基Ar及びAr’上のヒドロキシル及びY置換基は芳香環上のオルト、メタ又はパラの位置で変化し得、またこれらの基は互いに可能ないかなる幾何学的関係にあることもできる。
【0110】
上記式の範囲内にはビスフェノールが包含され、その代表例は次の通り。2,2−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−プロパン、ビス−(2−クロロフェニル)−メタン、ビス(2,6−ジブロモフェニル)−メタン、1,1−ビス−(4−ヨードフェニル)−エタン、1,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)−エタン、1,1−ビス−(2−クロロ−4−ヨードフェニル)エタン、1,1−ビス−(2−クロロ−4−メチルフェニル)−エタン、1,1−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−エタン、2,2−ビス−(3−フェニル−4−ブロモフェニル)−エタン、2,6−ビス−(4,6−ジクロロナフチル)−プロパン、2,2−ビス−(2,6−ジクロロフェニル)−ペンタン、2,2−ビス−(3,5−ジブロモフェニル)−ヘキサン、ビス−(4−クロロフェニル)−フェニル−メタン、ビス−(3,5−ジクロロフェニル)−シクロヘキシルメタン、ビス−(3−ニトロ−4−ブロモフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−2,6−ジクロロ−3−メトキシフェニル)−メタン、及び2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン。また、上記構造式に含まれるものとして、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−4−ヒドロキシベンゼン、及びビフェニル、例えば2,2’−ジクロロビフェニル、ポリ臭素化1,4−ジフェノキシベンゼン、2,4’−ジブロモビフェニル、及び2,4’−ジクロロビフェニル並びにデカブロモジフェニルオキシド、などもある。
【0111】
また、オリゴマー性及びポリマー性のハロゲン化芳香族化合物、例えばビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールA及びカーボネート前駆体、例えばホスゲンのコポリカーボネートも有用である。金属相乗剤、例えば、酸化アンチモンも難燃剤と共に使用できる。存在する場合、ハロゲンを含有する難燃剤は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約5〜約50重量部、さらに具体的には約5〜約20重量部の量で存在する。
【0112】
また、熱可塑性組成物は実質的に塩素と臭素を含まなくてもよい。本明細書で使用する場合、実質的に塩素と臭素を含まないとは、塩素又は臭素又は塩素若しくは臭素を含有する材料を意図的に加えることなく製造した物質をいう。しかし、複数の製品を加工処理する施設で幾らかの量の二次汚染が起こり、その結果通例重量で百万部当たりの部スケールの臭素及び/又は塩素レベルが生じ得るものと了解されたい。この条件で、実質的に臭素と塩素を含まないとは、重量で百万部当たり約100部(ppm)未満、約75ppm未満、又は約50ppm未満の臭素及び/又は塩素含量を有すると定義し得ることが容易に分かる。この定義を難燃剤に適用する場合、難燃剤の総重量を基準にする。この定義を熱可塑性組成物に適用する場合、組成物のポリマー部分と難燃剤の総重量を基準にする。
【0113】
無機難燃剤も使用でき、例えば、C2−16アルキルスルホン酸塩の塩、例えばカリウムペルフルオロブタンスルホネート(Rimar塩)、カリウムペルフルオロオクタンスルホネート、テトラエチルアンモニウムペルフルオロヘキサンスルホネート、及びカリウムジフェニルスルホンスルホネート、など、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム塩)と、無機酸複合塩、例えば、オキソアニオン、例えば炭酸のアルカリ金属及びアルカリ土類金属塩、例えばNaCO、KCO、MgCO、CaCO、及びBaCO又はフルオロ−アニオン錯体、例えばLiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiF及び/又はNaAlFなどとを反応させることによって形成される塩がある。存在する場合、無機難燃剤塩は一般に、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約0.01〜約5.0重量部、さらに具体的には約0.02〜約3.0重量部の量で存在する。
【0114】
もう1つ別の有用なタイプの難燃剤は、次式(12)の繰返し構造単位を含むポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーである。
【0115】
【化7】

式中、各Rは同じであるか又は異なり、C1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C14アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基、又はC〜C13アルカリールオキシ基であることができる。以上の基はフッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素、又はこれらの組合せで完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。以上のR基の組合せを同じコポリマー中に使用してもよい。式(8)中のDの値は、熱可塑性組成物中の各成分のタイプと相対量、組成物に望まれる性質、及び類似の事項に応じて広く変化し得る。一般に、Dは2〜約1000、具体的には約2〜約500、さらに具体的には約5〜約100の平均値を有し得る。1つの実施形態においてDは約10〜約75の平均値を有し、さらにもう1つ別の実施形態においてDは約40〜約60の平均値を有する。Dが低めの値、例えば約40未満の場合、比較的大量のポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを使用するのに望ましいであろう。逆に、Dが高めの値、例えば約40より大きい場合、比較的少量のポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを使用する必要があるであろう。第1及び第2の(又はさらに別の)ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーの組合せを使用してもよく、この場合第1のコポリマーのDの平均値は第2のコポリマーのDの平均値未満である。
【0116】
1つの実施形態において、ポリジオルガノシロキサンブロックは次式(13)の繰返し構造単位によって提供される。
【0117】
【化8】

式中、Dは上記定義の通りであり、各Rは同一でも異なっていてもよく、上記定義の通りであり、Arは同一でも異なっていてもよく、置換又は非置換のC〜C30アリーレン基であり、この場合結合は直接芳香族部分に結合している。式(9)中の適切なAr基はC〜C30ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば上記式(3)、(4)、又は(7)のジヒドロキシアリーレン化合物から誘導され得る。以上のジヒドロキシアリーレン化合物を1種以上含む組合せも使用できる。適切なジヒドロキシアリーレン化合物の具体例は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニルスルフィド)、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンである。以上のジヒドロキシ化合物を1種以上含む組合せも使用できる。かかる単位は、次式の対応するジヒドロキシ化合物から誘導され得る。
【0118】
【化9】

式中、ArとDは上記の通りである。かかる化合物はKressらの米国特許第4746701号に詳しく記載されている。式(10)の化合物は、相転移条件下、ジヒドロキシアリーレン化合物と、例えば、α,ω−ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンとの反応によって得ることができる。
【0119】
もう1つ別の実施形態において、ポリジオルガノシロキサンブロックは次式(13)の繰返し構造単位によって提供される。
【0120】
【化10】

式中、RとDは上記定義の通りである。式(10)中のRは二価C〜C脂肪族基である。式(9)中の各Mは同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アラルコキシ、C〜C12アルカリール、又はC〜C12アルカリールオキシであり得る。また、各nは独立して0、1、2、3、又は4である。1つの実施形態において、Mはブロモ又はクロロ、アルキル基、例えばメチル、エチル、若しくはプロピル、アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシ、又はアリール基、例えばフェニル、クロロフェニル、若しくはトリルであり、Rはジメチレン、トリメチレン又はテトラメチレン基であり、RはC1−8アルキル、ハロアルキル、例えばトリフルオロプロピル、シアノアルキル、又はアリール、例えばフェニル、クロロフェニル若しくはトリルである。もう1つ別の実施形態において、Rはメチル、又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物、又はメチルとフェニルの混合物である。さらに別の実施形態において、Mはメトキシであり、nは1であり、Rは二価C〜C脂肪族基であり、Rはメチルである。式(10)の単位は対応するジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(11)から誘導され得る。
【0121】
【化11】

式中、R、D、M、R、及びnは上記の通りである。かかるジヒドロキシポリシロキサンは、次式の水素化シロキサンと脂肪族性不飽和一価フェノールとの白金に触媒される付加を実施することによって製造することができる。
【0122】
【化12】

式中、RとDは既に定義した通りである。適切な脂肪族性不飽和一価フェノールとしては、例えば、ユージノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール及び2−アリル−4,6−ジメチルフェノールがある。以上のものを1種以上含む混合物も使用できる。
(12)
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、場合により上記のような相間移動触媒の存在下で、対応するジヒドロキシポリシロキサンとカーボネート源及び式(3)のジヒドロキシ芳香族化合物との反応によって製造することができる。適切な条件はポリカーボネートを形成する際に有用なものと同様である。また、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、上記のようなエステル交換触媒の存在下でジヒドロキシモノマーとジアリールカーボネートエステル、例えばジフェニルカーボネートとを溶融状態で共に反応させることによって製造することができる。一般に、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、ポリカーボネートブロックのモル数に対して約1〜約60モルパーセントのポリジオルガノシロキサンブロック、より一般的にはポリカーボネートブロックのモル数に対して約3〜約50モルパーセントのポリジオルガノシロキサンブロックを含むコポリマーが生成するように選択される。存在する場合、このコポリマーは、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約5〜約50重量部、さらに具体的には約10〜約40重量部の量で使用し得る。
【0123】
中和用添加剤は、例えば、メラミン、ポリビニルピロリドン、ジシアンジアミド、トリアリルシアヌレート、尿素誘導体、ヒドラジン誘導体、アミン、ポリアミド、及びポリウレタン、高級脂肪酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム、乳酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、リシノール酸ナトリウム、及びパルミチン酸カリウム、アンチモンピロカテコラート、亜鉛ピロカテコラート、及びハイドロタルサイト及び合成ハイドロタルサイトでよい。ヒドロキシカーボネート、マグネシウム亜鉛ヒドロキシカーボネート、マグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、及びアルミニウム亜鉛ヒドロキシカーボネート、並びに金属酸化物、例えば酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び酸化カルシウム、過酸化物捕捉剤、例えば、β−チオジプロピオン酸の(C10〜C20)アルキルエステル、例えばラウリル、ステアリル、ミリスチル又はトリデシルエステル、メルカプトベンズイミダゾール又は2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、亜鉛−ジブチルジチオカルバメート、ジオクタデシルジスルフィド、及びペンタエリトリトールテトラキス(β−ドデシルメルカプト)プロピオネートも使用できる。存在する場合、中和剤は、組成物のポリマー部分の100重量部を基準にして約5〜約50重量部、さらに具体的には約10〜約40重量部の量で使用できる。
【0124】
さらに別の実施形態において、任意の添加剤は、ポリアミド安定剤、例えば、銅塩と組み合わせたヨウ化物及び/又はリン化合物及び二価マンガンの塩である。立体障害アミンの例としては、限定されることはないが、トリイソプロパノールアミン、又は2,4−ジクロロ−6−(4−モルホリニル)−1,3,5−トリアジンと1,6−ジアミン、N,N’−ビス(2,2,4,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ヘキサンのポリマーとの反応生成物がある。
【0125】
組成物の成分は、混合された組成物で望まれる特性、特に改良された引張弾性率及び/又は延性が得られるのに有効な剪断及び温度の条件下で混合される。理論に縛られることはないが、かかる改良はフルオロポリマーのその場でのフィブリル化によって達成されると考えられる。望ましい剪断及び温度条件を達成するのに適切な混合方法は、例えば、押出混練、ロール混練、又は2ロールミルによる混合、Banburyミキサー、単軸式若しくは二軸式押出機、二枚羽根回分式ミキサー、垂直シャフトミキサー、遊星型ミキサー、Beckenブレードミキサー、分散ブレードミキサー、シグマミキサー、水中翼、タービンブレード、又はCFインペラーブレードタイプの連続式バッチミキサー、静的ミキサー、及び制御された剪断度を付与することができる類似の装置であり得る。1つの実施形態においては単軸式又は二軸式の押出機を使用する。二軸式押出機は同方向回転型、逆方向回転型、噛み合い式、非噛み合い式、など、例えば、遊星型ギア押出機readco連続式ミキサーでよい。混合は連続式又は回分式のプロセスで行うことができる。溶融ブレンド又は反応性溶融ブレンドを使用する場合、混合は一般に実質的に均質な組成の溶融混合物が生成するのに有効な温度と時間実施する。
【0126】
従って、混合の時間、温度、装置、成分の添加順及び位置(例えば押出機に沿った)、及びその他の条件は、充填材とフルオロポリマーの両方は含有しない組成物と比べて改良されたモジュラスを有する組成物が生成するように選択される。当業者は、本明細書に示した指針を用いて過度の追加実験をすることなく剪断及び温度の程度、並びにその他のパラメーターを調節することができよう。
【0127】
1つの実施形態において、ポリマー組成物を製造する際に、適切な温度及び剪断条件下で混合する前に、必ずしも必要というわけではないが、マトリックスポリマー、フルオロポリマー、及び充填材を予め混ぜ合わせることができる。この予め混ぜ合わせる工程は、任意の慣用のミキサー(例えば、ドラムミキサー、リボンミキサー、垂直螺旋ミキサー、Mullerミキサー、シグマミキサー、カオスミキサー、静的ミキサー、など)で行うことができる。予め混ぜ合わせる工程は通例、マトリックスポリマー、フルオロポリマー、及び任意のカプセル化用ポリマーの分解温度より低い温度で行う。また、マトリックスポリマーの一部分をフルオロポリマー(1種以上の添加剤を含めても含めなくてもよい)と予め混ぜ合わせてマスターバッチを製造し、その後残りのマトリックスポリマーを加えて後に混合してもよい。
【0128】
一般に、適切な混合(フィブリル化)条件には、マトリックスポリマーのガラス転移温度以上でフルオロポリマーの軟化温度より低い温度が含まれる。この混合温度はまた、マトリックスポリマーの分解温度より低いのが好ましい。適切な温度は約20〜約450℃、さらに具体的には約50〜約400℃、さらに一段と具体的には約100〜約300℃であり得る。これらの温度で、加工処理は約2秒〜約10時間、具体的には約3秒〜約6時間の間行うとよい。
【0129】
ポリカーボネート含有マトリックス成分を含む組成物の場合、混合は、二軸式押出機で、例えば、20〜300℃の範囲、例えば50、200、250、260、270、270、275℃の温度プロファイル、5〜25キログラム/時間の供給速度、及び50〜80%、具体的には60〜65%のトルクを用いて行うことができる。かかる条件で、フルオロポリマー中に網目、又はノード及びフィブリル構造が得られる。
【0130】
様々な組成物中のフルオロポリマーのフィブリル化の程度を測定するために、変調示差走査熱量測定(DSC)法を用いて、フィブリル化の経過と程度をモニターすることができる。例えばTA InstrumentsのQ1000示差走査熱量計を用いて、約1〜5mgの試料でDSCを行い、観測結果をほぼ320〜360℃(変調範囲)で記録することができる。ほぼ330℃に1つのピークが観察され、これは3つの異なるピークに分割できる。ここでいろいろなピーク温度はフルオロポリマーの異なる形態に対応する。MDSCの生のデータ点をプロットし、ベースラインで調節して(差し引いた後)明かな拡大ピークが観察された。分割により、溶融結晶したPTFEについてはほぼ326℃で、フィブリル化されたPTFEについては330℃で、生来のPTFE(ノード状PTFE)については338℃でガウス曲線に合わせた。各曲線下の面積が、引張弾性率のような性質の最適化と強い相関を有することが判明した。特に、ノード:フィブリル比は338℃のピーク(ノード)と330℃のピーク(フィブリル)の下の面積に基づいて計算することができる。
【0131】
1つの実施形態において、混合フルオロポリマーは約5ナノメートル〜約2マイクロメートルの平均直径を有するフィブリルを含む。また、フルオロポリマーは約30〜約750ナノメートル、さらに具体的には約5〜約500ナノメートルの平均フィブリル直径も有し得る。(平均直径は走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。)混合フルオロポリマーのノード分率対フィブリル分率の比(DSC測定における曲線下の面積に反映される)は約2.5未満、具体的には約2未満、さらに一段と具体的には約1未満であり得る。
【0132】
混合後、形成された組成物は、例えばペレット化又は粉砕することによって粒子状形態にし得る。例えば、押出機から出た溶融混合物をダイに供給し得る。適切なダイの幾つかの非限定例として、環状ダイ、コートハンガーダイ、螺旋マンドレルダイ、クロスヘッドダイ、T−ダイ、フィッシュテールダイ、スパイダーダイ、シングル、若しくはダブルローラーダイ、又は異形押出ダイがある。
【0133】
有利な特徴において、本発明の混合組成物は、約1.5〜約20GPa、具体的には約2.5〜約15、さらに具体的には約3.5〜約10GPaの引張弾性率を有している。ここで、引張弾性率は、ISO 527に従って室温で、1%の歪みまで1mm/分、次いで試料が破断するまで5mm/分の引張速度を用いて測定することができる。幾つかの実施形態において、この改良されたモジュラスは、組成物の他の性質の有意な悪化を伴うことなく得ることができる。他の実施形態において、改良されたモジュラスは、良好な延性及び/又は良好な流動性と共に得られる。
【0134】
本混合組成物は、公称破断時伸び率、ノッチ付きIzod衝撃強さ及び/又は直径方向衝撃強さに反映されるように良好又は改良された延性を有し得る。例えば、混合組成物は20%より大きい公称破断時伸び率を有することがある。もう1つ別の実施形態で、公称破断時伸び率は約200〜約20%、具体的には約100〜約30%であり得る。約20%より大きい、約30%より大きい、約40%より大きい、又は約50%より大きい公称破断時伸び率と共に約3.5GPaより大きい引張弾性率を有する組成物、また、約30%より大きい、約40%より大きい、又は約50%より大きい公称破断時伸び率と共に約4GPaより大きい引張弾性率を有する組成物を得ることができる。ここでも、引張弾性率及び破断時伸びは、ISO 527に従って室温で、1%の歪みまでは1mm/分、次いで試料が破断するまで5mm/分の引張速度を用いて測定することができる。
【0135】
本混合組成物は、ISO 180/Uに従って室温で測定して、約40.0又はそれ以上(破断なし(NB))、具体的には約60〜NB、さらに具体的には約100〜約180キロジュール/平方メートル(KJ/m)のノッチなし衝撃強さを有し得る。
【0136】
組成物の曲げ弾性率は、ISO 178に従って室温で測定して約1.0〜約20GPa、具体的には約2〜約15Gpa、さらに具体的には約2.5〜約10GPaであり得る。
【0137】
組成物の曲げ強さは、ISO 178に従って室温で2mm/minの引張速度によって測定して約50〜約200MPa、具体的には約60〜約150Mpa、さらに具体的には約80〜約120MPaであり得る。
【0138】
混合組成物は、ISO 180に従って23℃で測定して、約5〜約120、具体的には約10〜約100、さらに具体的には約15〜約50キロジュール/平方メートル(KJ/m)のノッチ付き衝撃強さを有し得る。
【0139】
混合組成物は約5.5×10−5m/m/℃未満(−40〜80℃に渡って測定)のCTEを有し得る。さらに具体的には、混合組成物は約5.0×10−5m/m/℃未満、約4.5×10−5m/m/℃未満、約4.0×10−5m/m/℃未満、約3.5×10−5m/m/℃未満、又は約3.0×10−5m/m/℃未満(各々−40〜80℃に渡って測定)のCTEを有し得る。さらに他の実施形態において、許容可能なCTEの範囲はこれより多少広く、すなわち、約10×10−5〜約2×10−5m/m/℃、さらに具体的には約8×10−5〜約3×10−5m/m/℃(各々−40〜80℃に渡って測定)のCTEであり得る。もう1つ別の実施形態において、混合組成物は、約5.5×10−5m/m/℃未満(−40〜120℃に渡って測定)のCTEを有し得る。さらに具体的には、混合組成物は、約5.0×10−5m/m/℃未満、約4.5×10−5m/m/℃未満、約4.0×10−5m/m/℃未満、約3.5×10−5m/m/℃未満、又は約3.0×10−5m/m/℃未満(各々−40〜120℃に渡って測定)のCTEを有し得る。また、さらに他の実施形態において、CTEはこれより多少広く、すなわち、約10×10−5〜約2×10−5m/m/℃、さらに具体的には約8×10−5〜約3×10−5m/m/℃(各々−40〜120℃に渡って測定)のCTEであり得る。CTEはASTM E−831を用いて測定することができる。
【0140】
また、良好な難燃性を有する組成物、すなわち、1.2mm以上の厚さを有する試料がV1のUL94等級を達成する組成物を製造することも可能である。さらにまた、1.2mm以上の厚さを有する試料がV0のUL94等級を達成する組成物を製造することも可能である。かかる組成物はさらに、1.5mmの厚さでV1及び/又はV0のUL94等級を達成し得る。難燃性試験は、「Tests for Flammability of Plastic Materials、UL94」と題するUnderwriter’s Laboratory Bulletin 94の手順に従って行った。この手順によると、材料は、5つの試料で得られた試験結果に基づいてHB、V0、V1、V2、VA及び/又はVBとして分類され得る。V0の等級を達成するには、長軸が火炎に対して180度となるように配置された試料で、点火用火炎を取り去った後に燃焼及び/又は燻る平均時間が5秒を越えず、かつ垂直に配置された試料がいずれも脱脂綿に着火する燃焼粒子のドリップを生じない。5本のバーの消炎時間(FOT)は各々2回ずつ点火した5本のバーの消炎時間の合計であり、最大消炎時間は50秒である。V1の等級を達成するには、長軸が火炎に対して180度となるように配置された試料で、点火用火炎を取り去った後に燃焼及び/又は燻る平均時間が25秒を越えず、かつ垂直に配置された試料がいずれも脱脂綿に着火する燃焼粒子のドリップを生じない。5本のバーの消炎時間は各々2回ずつ点火した5本のバーの消炎時間の合計であり、最大消炎時間は250秒である。
【0141】
上記のような難燃性添加剤を使用して難燃性を達する補助とすることができる。かかる添加剤は存在すると組成物の機械的性質、特に公称破断時伸びに影響を及ぼす可能性がある。難燃性組成物の公称破断時伸びは、ISO 527に従って室温で、1%の歪みまでは1mm/分、次いで試料が破断するまで5mm/分の引張速度を用いて測定して、約1〜約15%、具体的には約3〜約12%、さらに具体的には約5%より大きく約10%までであり得る。
【0142】
加えて、本組成物は、改良された紫外線耐性、光沢の維持、耐溶剤性、粉砕再生によるリサイクル能、などにより立証されるように良好な耐候性を有し得る。1つの実施形態において、良好な機械的性質が、良好な流動性、特に組成物を薄肉部品(例えば、約2.5mm未満、約2.0mm未満、さらには約1.5mm未満の壁厚を有する部品)の射出成形に適したものにする流動性と組み合わせて得られる。小さい部品の成形用の流動性、並びに自動車のドアパネル、フェンダー、バンパー、などのような大きい部品の成形用の流動性も達成することができる。
【0143】
溶融ブレンドした組成物は物品を形成する各種の手段、例えば射出成形、押出成形、回転成形、発泡成形、カレンダー成形、ブロー成形、熱成形、圧縮、溶融紡糸、などによって有用な物品に成形することができる。有利な機械的特性のために、殊に好ましいのは、その寿命の間に天然であろうと人工であろうと曝露される〜紫外(UV)光に物品であり、特に屋外及び屋内物品である。適切な物品を例示すると以下のものがあるが限定されることはない。航空機、自動車、トラック、軍用車両(例えば、自動車、航空機、及び水上輸送用車両)、スクーター、及びオートバイの外装及び内装部品、例えばパネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクの蓋、フード、ボンネット、屋根、バンパー、フェイシア、グリル、ミラーハウジング、ピラーアプリケ、クラッディング、ボディーサイドモールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、窓枠、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テールランプ、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ナンバープレートエンクロージャー、ルーフラック、及びステップ、屋外車両及び装置用のエンクロージャー、ハウジング、パネル、及び部品、電気及び通信装置用エンクロージャー、屋外家具、航空機部品、ボート及び海洋設備、例えばトリム、エンクロージャー、及びハウジング、船外モーターハウジング、水深測定器ハウジング、水上バイク、ジェットスキー、プール、温泉、ホットタブ、階段、ステップカバー、建築及び建設用途、例えば窓ガラス、屋根、窓、床、装飾用窓備品又は処理、写真、絵画、ポスター、及び類似の表示用品目用処理済ガラスカバー、壁パネル、及びドア、カウンター甲板、保護グラフィック、屋外及び屋内の標示、現金自動預入支払機(ATM)用のエンクロージャー、ハウジング、パネル、及び部品、コンピューター、デスクトップコンピューター、ポータブルコンピューター、ラップトップコンピューター、パームヘルドコンピューターハウジング、モニター、プリンター、キーボード、FAX機、複写機、電話機、電話機ベゼル、携帯電話、送信機、受信機、芝生及び庭園用トラクター、芝刈り機、及び工具、例えば芝刈り及び庭園用工具のエンクロージャー、ハウジング、パネル、及び部品、窓及びドアのトリム、スポーツ設備及び玩具、スノーモービルのエンクロージャー、ハウジング、パネル、及び部品、リクリエーション車両パネル及び部品、運動場の設備、靴紐、プラスチック−木の組合せから作成された物品、ゴルフコースマーカー、ユーティリティーピットカバー、電灯、照明器具、ネットワークインターフェースデバイスハウジング、変圧器ハウジング、エアコンディショナーハウジング、公共輸送機関のクラッディング又はシート、列車、地下鉄、又はバス用のクラッディング又はシート、計器類ハウジング、アンテナハウジング、衛星放送受信アンテナ用
クラッディング、被覆ヘルメット及び個人用設備、被覆合成又は天然織物、被覆塗装物品、被覆着色物品、被覆蛍光物品、被覆発泡体物品、及び類似の用途がある。本発明はさらに、前記物品に対する追加の製造操作、例えば限定されることはないが、成形、絵付け成形、塗料オーブン中でのベーキング、積層、及び/又は熱成形を含む。本発明の組成物から作成された物品は自動車産業、家庭用電気製品、電気部品、及び通信に広く使用できる。
【実施例】
【0144】
以下の非限定例により本発明をさらに例証する。
【0145】
以下の実施例では、ポリカーボネート(「PC」、LEXAN(登録商標)105、General Electric Company)をマトリックスポリマーとして使用した。使用したフルオロポリマーは、注記する以外は米国特許第5804654号に開示されているように水性乳化重合によって合成されたPTFE/SANであった。組成物は全て、さらに1重量%以下の潤滑剤と2重量%以下の酸化防止剤パッケージを含んでいた。
【0146】
表1及び2に示す成分(量はポリマー組成物の総重量を基準にして重量パーセントで表す)を乾式混合に供し、WERNER and PFLEIDERER CoextruderのZSK 25同方向回転型二軸式押出機に供給し、約275℃のバレル温度で、トルクを80パーセントに維持して300回転/分(rpm)のスクリュー回転速度で混合した。押し出した材料を次に高速ペレタイザー中に供給した。
【0147】
得られたペレットを4時間以上80℃で乾燥した後、ASTM/ISO試験の試験片の形成に適切な金型中に射出成形した。L&T Demag De−Tech 60T LNC4−E射出成形機を使用し、約280℃の温度で作動させた。
【0148】
引張弾性率、降伏応力、公称破断時伸び(破断歪み)、ノッチなしIzod衝撃強さ、及びCTEは、上記ISO法に従って測定した。以下の表で「NB」は試料が破断しなかったことを意味しており、従って高い衝撃と考えることができる。
【0149】
実施例1〜27に対する結果を表1に示す。
【0150】
【表1】

以上のデータは、本発明の組成物が、例えば実施例19に反映されているように優れたモジュラスを有することを示している。また、幾つかの実施例のCTEも優れており、4.05×10−5m/m/℃の範囲である。雲母又はタルクを充填材として使用した試料の性質は特に良好な結果を示した。
【0151】
マトリックスポリマー組成物及び/又は添加剤を表示(量は全て重量パーセント)のように変化させて本発明の追加の実施例28〜37を調製した。実施例は上記のように調製・試験した。結果を表2に示す。
【0152】
【表2】

以上の結果は、各種のポリマーマトリックス系を使用して優れた結果を得ることができるということを示している。
【0153】
以上の手順及びポリマーマトリックスとしてABSを用いて比較例38〜40及び本発明の実施例41を調製した。結果を下記表3に示す。
【0154】
【表3】

以上の結果は、本発明の方法をABSのようなポリマー系で使用することができることを示している。
【0155】
実施例13、14、19、21、38、及び35をUL94に従って難燃性を、ASTM D 523に従って光沢をさらに試験した。試料の光沢を を用いて測定した。結果を下記表4に示す。
【0156】
以上の実施例は、本発明の実施例で優れた難燃性と光沢を得ることができることを示している。
【0157】
【表4】

上記の手順に従い、表5に従って一組の比較例(C1〜C16)を調製した。比較例1(C1)は充填材とフルオロポリマーを含有していない。C2〜C11はフルオロポリマーを含有していない。比較例C12〜C16は充填材を省略した影響を示している。結果を表5に示す。
【0158】
【表5】

以上の結果から分かるように、充填材とフルオロポリマーを省くと(C1)、大幅に低い引張弾性率と高めのCTEを有する組成物が生成する。
【0159】
ポリカーボネート(LEXAN(登録商標)105、General Electric Co.)とPTFEを表7に示す量(組成物の総重量を基準にした重量%)で乾式ブレンドした後、WERNER and PFLEIDERER Co.のZSK 25同方向回転型二軸式押出機に供給した。この組成物を約275℃のバレル温度で溶融混合した。スクリュー回転速度300rpmでトルクを80パーセントに維持した後、高速ペレタイザーに供給して、ペレット化組成物を得た。得られたペレットを4時間以上80℃で乾燥した後、約280℃の温度で作動させたL&T Demag De−Tech 60T LNC4−E射出成形機でASTM/ISO試験片に射出成形した。比較例C17とC18は充填材を使用しないで調製した。結果を表6に示す。
【0160】
【表6】

比較例C19〜C21と実施例44〜48で難燃性試験も行った。各々上記のように調製して試験した。表8に示す配合を使用した。「FOT」は試料の平均消炎時間である。
【0161】
【表7】

以上の結果は、低めの難燃剤充填量でも、良好な組合せの機械的性質と共に良好な難燃性を有する組成物を配合することができることを示している。
【0162】
本明細書で引用した特許と公表された文献は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。
【0163】
典型的な実施形態について本発明を例示し説明してきたが、いかなる意味でも本発明の範囲から逸脱することなく様々な修正と置換をなすことが可能であるので、ここに示した詳細に本発明が限定されることはない。すなわち、本明細書に開示した本発明にさらなる修正と等価物は日常以上の実験を要することなく当業者には明かであり、かかる修正と等価物は全て特許請求の範囲に記載の本発明の思想と範囲内に入るものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物の総重量を基準にして、
5〜99重量%のマトリックスポリマー成分、
0.5〜60重量%のフルオロポリマー、及び
0.5〜60重量%の充填材
を含んでなり、ISO−527に従って1mm/分、次いで5mm/分の引張速度を用いて測定して約3Gpa以上の引張弾性率を有するポリマー組成物。
【請求項2】
マトリックスポリマー、フィブリル化可能なフルオロポリマー、及び充填材を、ISO−527に従って1mm/分、次いで5mm/分の引張速度を用いて測定して約3Gpa以上の引張弾性率及び約20%以上の公称破断時伸び率を有する組成物を形成するのに有効な剪断及び温度条件下で混合することを含んでなる、ポリマー組成物の製造方法。
【請求項3】
ISO−527に従って1mm/分、次いで5mm/分の引張速度を用いて測定して約3.5Gpa以上の引張弾性率及び約200〜約20%の公称破断時伸び率を有する、請求項1又は請求項2記載のポリマー組成物。
【請求項4】
約5.5×10−5m/m/℃未満のCTE(−40〜80℃に渡って測定)を有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記マトリックスポリマーがポリカーボネート又はポリカーボネートを含む組合せからなり、前記フルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン、ポリフッ化ビニル、エチレンクロロトリフルオロエチレン、又は以上のポリマーを1種以上含む組合せからなり、前記充填材が炭酸カルシウム、雲母、カオリン、タルク、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、炭酸マグネシウム、バリウムの硫酸塩、硫酸カルシウム、チタン、ナノクレイ、カーボンブラック、シリカ、アルミニウム若しくはアンモニウム若しくはマグネシウムの水酸化物、ジルコニア、ナノスケールチタニア、又は以上の充填材を1種以上含む組合せからなる、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記フルオロポリマーがカプセル化されており、前記カプセル化用ポリマーがスチレン−アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、α−アルキル−スチレン−アクリロニトリルコポリマー、α−メチルスチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、又は以上のポリマーを1種以上含む組合せである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
マトリックスポリマー成分、
フィブリル化可能なフルオロポリマー、及び
充填材
を含んでなり、フルオロポリマーが、マトリックスポリマー及び充填材とその場で混合することによってフィブリル化されている、ポリマー組成物。
【請求項8】
マトリックスポリマー、フィブリル化可能なフルオロポリマーを、フルオロポリマーをフィブリル化するのに有効な剪断及び温度の条件下で混合することを含んでなる、ポリマー組成物の製造方法。
【請求項9】
前記フルオロポリマーが、約5ナノメートル〜約2マイクロメートルのフィブリル直径及び約2以下のノード分率対フィブリル分率の比を有する、請求項7又は請求項8記載のポリマー組成物。
【請求項10】
さらに難燃性添加剤を含んでおり、当該組成物の1.5mm厚の試料がUL−94難燃性等級V1を示す、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載のポリマー組成物。

【公表番号】特表2007−517125(P2007−517125A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547455(P2006−547455)
【出願日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/043593
【国際公開番号】WO2005/066278
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】