説明

ポリマー組成物及びその製造方法、親水性組成物並びに親水性部材

【課題】基板表面に親水性に優れ、かつ、より良好な耐水性及び耐久性を有する親水性部材を提供し得るポリマー組成物及びそれを含有する親水性組成物、親水性に優れ、かつ、より良好な耐水性及び耐久性を有する親水性膜を基板上に形成した親水性部材を提供すること。
【解決手段】少なくとも1種の親水性基を含む親水性ポリマー及びlogP値が−0.30〜3.00の疎水性成分を0〜4.0質量%含むことを特徴とするポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物及びその製造方法、親水性組成物並びに親水性部材に関し、詳細には、親水性及び耐水性、膜強度に優れた親水性部材を提供し得るポリマー組成物及びそれを含有する親水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム表面を有する製品・部材は、幅広い分野で用いられ、目的に応じ加工され機能を付与した上で使用されている。但しそれらの表面は、樹脂本来の特性から、疎水性・親油性を示すものが一般的である。従って、これらの表面に汚れ物質として、油分等が付着した場合、容易に除去することができず、また蓄積することにより、該表面を有する製品・部材の機能・特性を著しく低下させることがあった。また高湿度の条件や降雨下に曝される製品・部材では、水滴が付着することにより、透明な機能を有する製品・部材において、光の乱反射により光の透過性が阻害される問題があった。ガラスや金属等の無機表面を有する製品・部材においても、油分等の汚れ物質の付着に対する防汚性は十分とは言えず、水滴の付着による防曇性についても十分ではなかった。特に自動車用ガラス、建材用ガラスでは、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着する場合や、水滴の付着によりガラスを透して(鏡の場合は反射して)視界を確保することが妨げられる場合が多く、防汚性や防曇性の機能付与が強く求められていた。
【0003】
防汚性の観点から、汚れ物質を油分等の有機系物質と想定すると、汚れ防止の為には材料表面との相互作用を低減する、即ち親水化するか、撥油化する必要がある。また防曇性に対しても、付着水滴を表面に一様に拡げる拡張濡れ性(即ち親水性)を付与するか、付着水滴を除去し易くさせる撥水性を付与することが必要となる。従って、現在検討されている防汚・防曇材料は、親水化や撥水・撥油化に依拠しているものが多い。
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この報告によればこの塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0004】
また、表面親水性に優れたフィルムとしては従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、さらに光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、且つ、いずれの部位にも使用可能な防汚性部材が求められている。
【0005】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、且つ、良好な耐摩擦性を有することが見出されている(特許文献2参照)。このような架橋構造を有する親水性表面層は反応性基を末端に有する特定の親水性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られる。
しかしながら、いずれも耐久性、耐水性において改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/29375号
【特許文献2】特願2006−256215号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】化学工業日報、1995年1月30日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基板表面に親水性に優れ、かつ、より良好な耐水性及び耐久性を有する親水性部材を提供し得るポリマー組成物及びそれを含有する親水性組成物、親水性に優れ、かつ、より良好な耐水性及び耐久性を有する親水性膜を基板上に形成した親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、親水性ポリマーの特性に着眼し研究を進めた結果、本発明者らは、特定構造の親水性ポリマーを含むポリマー組成物中に含まれる疎水性成分のlogP値及び含有量を特定範囲とすることにより密着性に優れ良好な耐久性を示し、親水性、耐水性に優れた親水性膜を形成し得るポリマー組成物を見出した。
更に、該ポリマー組成物を含有する親水性組成物、該ポリマー組成物の製造方法等を見出し、発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
[1]
少なくとも1種の親水性基を有する親水性ポリマーを含有するポリマー組成物中に含まれる疎水性成分のlogP値が−0.30〜3.00であり、かつ含有量が0〜4.0質量%であることを特徴とするポリマー組成物。
[2]
前記疎水性成分が、分子量(MW)が100〜10000の疎水性成分であることを特徴とする[1]に記載のポリマー組成物。
[3]
前記疎水性成分が、下記一般式(a)より選ばれる少なくとも1種の疎水性基を含む疎水性成分であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のポリマー組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
(一般式(a)中、Raは−CH、−C、又は−Cを表し、n=1〜3の整数を表し、Rbは水素原子、炭化水素基又はアルコキシシリル基を表す。)
[4]
前記親水性ポリマーが下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造、下記一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造又は下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造のいずれかを含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のポリマー組成物。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
[5]
前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリマー組成物を含むことを特徴とする親水性組成物。
[6]
モノマー及びラジカル重合開始剤及び溶媒を含有する組成物を40℃〜120℃で撹拌する工程及び該組成物を加熱する工程を含むことを特徴とするポリマー組成物の製造方法。
[7]
[6]に記載の方法により製造したことを特徴とするポリマー組成物。
[8]
基板上に、[5]に記載の親水性組成物により形成した親水性膜を有することを特徴とする親水性部材。
[9]
フィン本体と、
該フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水層とを具備するフィン材であって、前記親水層は、[5]に記載の親水性組成物が塗設されてなることを特徴とするフィン材。
[10]
前記フィン本体がアルミニウム製である[9]に記載のフィン材。
[11]
[10]に記載のフィン材を用いた熱交換器。
[12]
[11]に記載の熱交換器を用いたエアコン。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の親水性基を有する親水性ポリマーを含有するポリマー組成物中に含まれる疎水性成分のlogP値が−0.30〜3.00であり、かつ含有量が0〜4.0質量%である。
本願は親水性ポリマー組成物中の、疎水性成分含量を特定の範囲とすることで、水の接触角が15°以下と従来にない高い親水性を有する親水性組成物を供給することができる。また、種々の基材に塗布することで、水の結露や曇りの発生を押さえ、埃や室内のワックスなどが部材表面に付着しても凝集水(結露水)により表面を洗い流すことで部材のクリーニング効果を得ることも可能である。
また長期間水に浸漬させた後でも高い親水性を維持できるといった耐久性に優れる特徴もある。これはフイルム表面に親水性を付与する組成物としてポリアクリルアミドに代表される親水性構造を有するポリマーやアルコキシシリル基を含有する化合物を用いることで高い親水性を維持できることに加えて架橋構造を有するために長期にわたる耐水性にも優れると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリマー組成物は、少なくとも1種の極性基を含む親水性ポリマー及びlogP値が−0.30〜3.00の疎水性成分を0〜4.0質量%含む。
【0021】
〔疎水性成分〕
本発明において疎水性成分とは親水ポリマー中に含まれる、不純物(logPで規定)で超親水性能を劣化させるものをいう。
本発明に用いられる疎水性成分は、logP値が−0.30〜3.00である。好ましくは−0.30〜−0.01であり、より好ましくは−0.1〜−0.30である。
疎水性成分のlogP値が上記範囲であれば超親水性能を発揮することができ好ましい。
疎水性成分はGPC(ポリスチレン標準)によりポリマー組成物の質量平均分子量を測定し、質量平均分子量分布を、100以下、100〜9999,10000〜49999、5万以上に分取カラムで分取し、それぞれについてNMR装置で構造解析し、疎水性成分を定量し、logP値を算出することができる。
ここでlogPとは、Medicinal Chemistry Project, Pomona College, Claremont, Californiaで開発され、Daylight Chemical Information System Inc. より入手できるソフトウェアPCModelsを用いて算出した化合物のオクタノール/水分配係数(P)の値の対数である。
【0022】
本発明のポリマー組成物は、疎水性成分を0〜4.0質量%含む。好ましくは1.0%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。
疎水性成分の含有量(質量%)が上記範囲であれば超親水性能を発揮することができ好ましい。
【0023】
上記疎水性成分は、分子量(MW)が100〜10000の疎水性成分であることが好ましい。より好ましくは100〜1000であり、更に好ましくは100〜500である。
疎水性成分の分子量(MW)が上記範囲であれば超親水性能を発揮とすることができ好ましい。
これらの疎水性成分のlogPと、極僅かな含有量の疎水性成分が超親水性を劣化させ、これほど密着性と防曇性に影響することは当業者においても全く想像し得ないことである。
【0024】
疎水性成分は、下記一般式(a)より選ばれる少なくとも1種の疎水性基を含む疎水性成分であることが好ましい。
【0025】
【化5】

【0026】
(一般式(a)中、Raは−CH、−C、又は−Cを表し、n=1〜3の整数を表し、Rbは水素原子、炭化水素基又はアルコキシシリル基を表す。)
【0027】
Rbが表す炭化水素基としては、一般式(I−1)のR101における炭化水素基と同様の基を挙げることができる。例えば−C2n+1を挙げることができ、−CH、−C、又は−Cであることが好ましい。
Rbが表すアルコキシシリル基としては、前記一般式(a)で表される疎水性基を挙げることができる。
【0028】
一般式(a)で表される疎水性基としては、以下の具体例を挙げることができる。
【0029】
【化6】

【0030】
(上記式中、Rbは水素原子、炭化水素基又はアルコキシシリル基を表す。)
【0031】
製膜後の親水性の観点から一般式(a)は−SiCH(OCH、−Si(OCH、−SiCH(OC、−Si(OC、−SiCH(OC又は−Si(OCであることが好ましい。
【0032】
一般式(a)より選ばれる少なくとも1種の疎水性基を含む疎水性成分としては、以下の具体例を挙げることができる。
【0033】
【化7】

【0034】
疎水性成分はポリマー組成物中、前述の含有量の範囲内であればいずれか1種に限られず複数種含まれていてもよい。
【0035】
〔親水性ポリマー〕
本発明に使用される親水性ポリマーは、少なくとも1種の親水性基を含むポリマーである。好ましくは、親水性基を有し、且つSi、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基を有するポリマーである。親水性基としては、好ましくはカルボキシ基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基、リン酸基、リン酸基のアルカリ金属塩、オキシリン酸基、オキシリン酸基のアルカリ金属塩等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、又は連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、及び金属アルコキシド化合物と触媒の作用により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、桂皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。
本発明における親水性ポリマーとしては、下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造、下記一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造又は下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造のいずれかを含有する親水性ポリマーが好ましい。
【0036】
〔一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)〕
【0037】
【化8】

【0038】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0039】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R101〜R108はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0040】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0041】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0042】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0043】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0044】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状ならびにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0045】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0046】
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0047】
101及びL102は単結合又は有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。
101及びL102が有機連結基を表す場合、L101及びL102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−又は−S−又は−CO−又は−NH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0048】
【化9】

【0049】
一般式(I−1)において、L101は単結合、又は、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。
【0050】
一般式(I−2)中、A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0051】
〜Rにおいて、直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、R〜Rにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウム又はスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては燐酸アニオン、硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0052】
101としては、具体的には、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SONMe、−SO、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−SO、−(CHCHO)H、である。尚、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0053】
pは1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0054】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーにおいて、x及びyは(A)特定親水性ポリマーにおける、一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0055】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(I)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(I−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(I−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(I−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0056】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含むポリマーの質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0057】
以下に、一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーの具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
【化18】


【0067】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0068】
〔一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)〕
【0069】
【化19】

【0070】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0071】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)は、下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有することが好ましい。
【0072】
前記一般式(II−1)及び(II−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0073】
201及びL202は、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−CH−である。
【0074】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0075】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0076】
【化20】

【0077】
上記式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(II−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
【0078】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)において、加水分解性シリル基量を有する一般式(II−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(II−2)の構造単位のモル数が、1000〜10倍の範囲が好ましく、500〜20倍の範囲がより好ましく、200〜30倍の範囲が最も好ましい。30倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0079】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(II)の質量平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0080】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(II)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
【化31】

【0092】
〔一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)〕
親水性ポリマー(III)は、下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む。親水性ポリマー(III)は、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーであることが好ましい。
【0093】
【化32】

【0094】
一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0095】
上記一般式(III−1)及び(III−2)において、R301〜R311は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R301〜R311が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができ、好ましい範囲も同様である。
301、L302及びL303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA301、側鎖及びSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L301、L302及びL303が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例及び好ましい例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
rは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
【0096】
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、‘‘グラフト重合とその応用’’井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び‘‘新高分子実験学2、高分子の合成・反応’’高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0097】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0098】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の‘‘新高分子実験学2、高分子の合成・反応’’高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著‘‘マクロモノマーの化学と工業’’アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0099】
親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0100】
一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)において、xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることがさらに好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることがさらに好ましい。
【0101】
親水性ポリマー(III)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(III−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(III−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基量を有する一般式(III−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0102】
親水性ポリマー(III)は、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0103】
以下に、一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(III)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0104】
【化33】

【0105】
【化34】

【0106】
【化35】

【0107】
【化36】

【0108】
【化37】

【0109】
親水性ポリマー(I)、(II)又は(III)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0110】
親水性ポリマー(I)、(II)又は(III)の共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0111】
本発明における親水性組成物は親水性ポリマー(I)、(II)又は(III)を単独あるいは2種以上混合しても良い。
親水性ポリマー(I)、(II)又は(III)は親水性組成物の全固形分に対して20〜99.5質量%使用されることが好ましく、30〜99.5質量%使用されることがさらに好ましい。
【0112】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、さらに好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0113】
〔ポリマー組成物の製造方法〕
本発明は下記製造方法により製造したポリマー組成物にも関する。
本発明のポリマー組成物の製造方法はモノマー及びラジカル重合開始剤及び溶媒を含有する組成物を40℃〜120℃で撹拌する工程及び該組成物を加熱する工程を含む。
本発明のポリマー組成物における反応様式は特に制限されるものではないが、ラジカル重合開始剤の存在下で親水モノマーと(i)の単独重合を効果的に抑制するため、不飽和化合物の分割添加法、逐次添加法などを用いた重合法により製造することができる。
撹拌する工程における温度は好ましくは45〜90℃であり、より好ましくは50〜80℃である。
より好ましくは、50℃〜90℃で逐次添加することで、単独重合をより効果的に抑制することができる。
添加後の昇温による後重合(後反応)は単独重合が促進されるため、添加時に共重合性を合わせることが望ましい。
加熱する工程における過熱後の温度は好ましくは55℃〜150℃であり、より好ましくは60℃〜120℃、更に好ましくは65℃〜90℃である。
加熱はオイル,ブライン,蒸気,温水などにより行うことができる。
後反応としての加熱する工程により、残存原料,残不純物の重合活性が上がり、単独重合が促進されるため親水性ポリマー組成物中の疎水性成分の含有量を本発明における好ましい量とすることができる。
【0114】
〔親水性組成物〕
本発明の親水性組成物は前述のポリマー組成物を含有する。親水性組成物中のポリマー組成物の含有量は親水性ポリマーが上述の範囲となるように調整することが好ましい。
本発明の親水性組成物は更に架橋剤、界面活性剤、硬化触媒等を含有することが好ましい。
架橋剤としては、Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド(金属アルコキシドとも呼ぶ)が特に好ましい。
【0115】
〔金属アルコキシド〕
本発明で用いられる金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシドどうしが重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、さらに、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは一般式(IV)で表すことができ、式中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R及びRがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0116】
(R−Z−(OR4−m (IV)
【0117】
以下に、一般式(IV)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0118】
また、ZがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0119】
〔硬化触媒〕
本発明の組成物においては、ポリマー組成物、さらに金属アルコキシド化合物などの架橋剤を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液が形成され、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有する親水性膜が形成される。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために硬化触媒を用いるが好ましい。
本発明に用いられる硬化触媒としては酸性触媒、塩基性触媒又は金属錯体触媒を使用することが好ましい。
【0120】
本発明で用いられる硬化触媒としては、前記金属アルコキシド化合物などの架橋剤を加水分解、重縮合し、加水分解性シリル基含有親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水又はアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0121】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
本発明の親水性層の形成において使用できる硬化触媒は、金属錯体がとくに好ましい。金属錯体触媒は、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,Sr,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0122】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0123】
好ましい配位子は、アセチルアセトン又はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0124】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0125】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0126】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J. Sol−Gel. Sci. and Tec. 16. 209 (1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0127】
また、上記の金属錯体触媒の他に、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0128】
〔界面活性剤〕
さらに本発明の親水性組成物は界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は基板上に被膜を形成する際の被膜面状を向上する効果のみならず、親水性を向上させる効果がある。界面活性剤による親水性向上は、界面活性剤自身が溶け出すことによるものが一般的であるが、本発明での界面活性剤はその他の効果がある。被膜形成時に界面活性剤が表面へ偏在する際、界面活性剤の親水性官能基が親水性ポリマー中の親水性官能基と相互作用し、親水性ポリマー中の親水性官能基も同時に表面に偏在させることができる。これにより本発明では非常に高い親水性を発現できる。また、形成された被膜の表面自由エネルギーが75mN/m以上となることで、被膜表面に付着した汚れ成分と被膜の間に水が入り込み優れた防汚性を発現できる。
【0129】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0130】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0131】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0132】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0133】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0134】
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0135】
【化38】

【0136】
本発明の親水性組成物には、前記成分に加え、目的に応じて種々の化合物を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。以下、併用しうる成分について説明する。
【0137】
〔抗菌剤〕
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、親水性塗布液組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤又は、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0138】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2’−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0139】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0140】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0141】
抗菌剤の含有量は、一般的には、親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0142】
〔無機微粒子〕
本発明の親水層は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水層中に安定に分散して、親水層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水性部材を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0143】
〔その他の成分〕
以下に、必要に応じて本発明の親水性部材用の構造体の親水性層形成用塗布液に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
【0144】
1)紫外線吸収剤
本発明においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0145】
2)酸化防止剤
本発明の親水性部材用の構造体の親水性層の安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0146】
3)溶剤
本発明の親水性部材用の構造体の親水性層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用塗布液に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性部材形成時の塗布液全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0147】
4)高分子化合物
本発明の親水性部材用の構造体の親水性層形成用塗布液には、親水性層の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0148】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0149】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、ポリマー組成物及び好ましくは各種添加剤のいずれか(2種以上含有しても良い)をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌によりシランカップリング基の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0150】
前記ポリマー組成物を含有する親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。親水性部材の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0151】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性膜を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
【0152】
〔親水性部材〕
本発明の親水性部材は親水性組成物により形成した親水性膜を有するものである。
上述の本発明の親水性組成物を含む溶液を、適切な支持体上に被膜し、乾燥することで、本発明の親水性部材を得ることができる。即ち、本発明の親水性部材は、支持体上に、前記本発明の親水性組成物を被膜し、加熱、乾燥することにより形成された親水性膜(親水性層)を有するものである。親水性膜の形成において、親水性組成物を含む溶液を被膜した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0153】
〔基板〕
本発明に用いられる基材は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板、プラスチック基板、ステンレス基板、又はアルミニウム基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水層を塗設できるが、必要に応じ、親水性層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0154】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルムもしくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0155】
基材と親水性層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0156】
〔親水性部材使用時の層構成〕
本発明の親水性部材を、防汚性や防曇性効果の発現を期待して使用する場合、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
【0157】
(下塗層)
本発明においては、基材と親水性層との間に、一層又は二層以上の下塗層を設けることができる。
下塗層は、Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させたものであることが好ましい。
Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させた下塗層は、架橋構造を有し、このようなアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
【0158】
Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物としては前述のものが挙げられる。これらのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0159】
下塗層で用いられる不揮発性の触媒とは、沸点が20℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が20℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属錯体(金属のキレート化合物とも称する)やシランカップリング剤が挙げられる。その他、当業界においては触媒として酸又はアルカリが好適に用いられるが、これらも沸点が20℃以上のものであれば特に制限なく適用可能である。たとえば沸点が−83℃の塩酸などは除かれるが、沸点が121℃の硝酸や分解温度が213℃のリン酸などは本発明において不揮発性の触媒として適用される。
金属錯体としては、前述のものが挙げられる。
【0160】
不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性又はアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、さらに詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0161】
下塗層は、基材上に上記アルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、基材上に、塗布し、加熱、乾燥することにより、該組成物が加水分解、重縮合させて、形成することができる。下塗層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
下塗層は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0162】
このようにして得られた下塗層は、その中に不揮発性の触媒が活性を失わずに含有されて存在し、特にその表面にも存在することにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性が極めて高いものとなる。
【0163】
また、下塗層は、プラズマエッチング又は金属粒子を混入させて微細凹凸を設けることにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性をさらに高いものとすることができる。
【0164】
下塗層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることもできる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0165】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性ポリマーや水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレン又はプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレン又はポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び水分散性ラテックスの少なくとも1種の、下塗層中における総量としては、0.01〜20g/mが好ましく、0.1〜10g/mがより好ましい。
【0166】
(接着層)
本発明の接着層には、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂及びこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類又は混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、さらに好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0167】
(離型層)
本発明における離型層は、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤としては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0168】
(その他の層)
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷つきや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗り層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材用の構造体を後に詳述する基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0169】
〔表面自由エネルギー〕
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0170】
〔構造体の形態〕
本発明の親水性層を有する構造体は、シート状、ロール状あるいはリボン状の形態で供給されてもよく、適切な基板に貼り付けるために、あらかじめカットされたもとして供給することもできる。
【0171】
本発明の親水性層を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性層は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。本発明の親水性層の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。 本発明の親水性層の乾燥塗布量を好ましくは0.01g/m〜100g/m、より好ましくは0.02g/m〜80g/m、特に好ましくは0.05g/m〜50g/mとすることで、上記の膜厚を得ることができる。
また、下塗り層の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.02μm〜80μmがさらに好ましく、0.05μm〜50μmが特に好ましい。
下塗り層組成物の乾燥塗布量を好ましくは0.01g/m〜100g/m、より好ましくは0.02g/m〜80g/m、特に好ましくは0.05g/m〜50g/mとすることで、上記の膜厚を得ることができる。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性層を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0172】
本発明の親水性部材は、上記のように、本発明の親水性組成物を、適切な基板上に塗布し、加熱、乾燥して表面親水性層を形成することで得ることができる。
下塗り層用組成物及び親水性組成物の塗布方法は、公知の塗布方法を採用でき、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0173】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基板又は透明なプラスチック基板、レンズ、プリズム、鏡等である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。最も好ましい用途は、自動車用及び建材用のガラスである。
【0174】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基板は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基板は、ガラス基板、プラスチック基板、アルミニウム基板である。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室内機、エアコン室外機、熱交換器用フィン、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【0175】
また本発明の表面親水性部材に水等の速乾性を期待する場合にも、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。水等の速乾性効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。またこれらの用途に使用される製品を製造する工程において乾燥工程を有する場合は乾燥時間が短縮でき生産性が向上する効果も期待できる。
【0176】
上記用途の中でも、本発明に係る親水性部材は、フィン材であることが好ましく、アルミニウム製フィン本体を有するフィン材であることが好ましい。すなわち、本発明のフィン材は、フィン本体(好ましくはアルミニウム製フィン本体)と、フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水性層とを具備するフィン材であって、前記親水性層は、本発明に係る親水性膜形成用組成物が塗設されてなる。
室内エアコンや自動車エアコン等の熱交換器等に用いられるアルミニウム製フィン材(アルミニウム製フィン本体そのもの)は、冷房時に発生する凝集水が水滴となりフィン間にとどまることで水のブリッジが発生し、冷房能力が低下する。またフィン間に埃などが付着することでも、同様に冷房能力が低下する。これらの問題に対し、本発明の親水性膜形成用組成物がフィン本体に塗設されてなるフィン材によれば、親水性、防汚性、及びそれらの持続性に優れたフィン材が得られる。
本発明に係るフィン材は、パルミチン酸に1時間曝気、30分水洗、30分乾燥を5サイクル繰返した後の水接触角が40°以下であることが好ましい。
【0177】
フィン材のフィン本体に用いられるアルミニウムとしては、表面が脱脂されたもの、必要に応じて化成処理されたアルミニウム板を挙げることができる。アルミニウム製のフィン本体は、表面が化成処理されていることが親水化処理皮膜の付着性、耐食性などの点から好適である。上記化成処理としては、例えば、クロメート処理を挙げることができ、その代表例として、アルカリ塩−クロム酸塩法(B.V.法、M.B.V.法、E.W.法、アルロック法、ピルミン法)、クロム酸法、クロメート法、リン酸クロム酸法などの処理法、及びクロム酸クロムを主体とした組成物による無水洗塗布型処理法などが挙げられる。
【0178】
例えば、熱交換器用フィン材のフィン本体に用いられるアルミニウム等薄板としては、JIS規格で、1100、1050、1200、1N30等の純アルミニウム板、2017、2014等のAl−Cu系合金板、3003、3004等のAl−Mn系合金板、5052、5083等のAl−Mg系合金板、さらには6061等のAl−Mg−Si系合金板等のいずれを用いても良く、またその形状はシート及びコイルのいずれでも良い。
【0179】
また、本発明に係るフィン材は、熱交換器に用いることが好ましい。本発明に係るフィン材を用いた熱交換器は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、フィン間に水滴や埃などが付着するのを防止することができる。熱交換器としては、例えば、室内用クーラーやエアコン、建設機械用オイルクーラー、自動車のラジエーター、キャパシタ等に使用される熱交換器が挙げられる。
また、本発明に係るフィン材を用いた熱交換器をエアコンに使用することが好ましい。本発明に係るフィン材は、優れた親水性、防汚性及びそれらの持続性を有しているので、前述のような冷房能力の低下等の問題が改善されたエアコンを提供することができる。エアコンとしては、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコン等、いずれのものでもよい。
その他、本発明の熱交換器、エアコンには公知の技術(例えば特開2002−106882号公報、特開2002−156135号公報など)を用いることができ、特に制限されない。
【実施例】
【0180】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0181】
〔ポリマーの合成〕
(実施例1)
200ml4つ口フラスコにアクリルアミド20g、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アクリルアミド(N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide)18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−1 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0182】
(実施例2)
200ml4つ口フラスコにアクリル酸20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−2 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0183】
(実施例3)
200ml4つ口フラスコにアクリルアミド20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物1 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル基(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−2を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0184】
(実施例4)
200ml4つ口フラスコにアクリル酸20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物2 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−1を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.00であった。
【0185】
(実施例5)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた5時間攪拌後、75℃に昇温し2時間攪拌した。40℃まで冷却後メタノール2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0186】
(実施例6)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた5時間攪拌後、75℃に昇温し2時間攪拌した。40℃まで冷却後メタノール2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0187】
(実施例7)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた5時間攪拌後、75℃に昇温し2時間攪拌した。40℃まで冷却後メタノール2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。
GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−7を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.00であった。
【0188】
(実施例8)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。
GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−4を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0189】
(実施例9)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0190】
(実施例10)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0191】
(実施例11)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。
GPC分取装置で採取H−NMRによりトリエトキシシリル基(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−2を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.00であった。
【0192】
(実施例12)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3を得た。乾燥後の重量は30gであった。
GPC分取装置で採取H−NMRによりトリエトキシシリル(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−2を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0193】
(実施例13)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3を得た。乾燥後の重量は30gであった。
GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−3を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0194】
(実施例14)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アクリルアミド(N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide) 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取しH−NMRによりトリエトキシシリル基(Si−(OC;3.5ppm)を定量したところ式−2を4.0%含有であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0195】
(実施例15)
200ml4つ口フラスコにビニルアルコール20g、N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide 18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、55℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた2時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌した。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後、化合物−3 X:Y=80:20を得た。乾燥後の重量は30gであった。疎水性成分は検出できなかった。
【0196】
(比較例1)
実施例1の後反応70℃/4h(70℃に昇温し4時間攪拌)を省略し、化合物1を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−2の含量は0.4質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.33であった。
【0197】
(比較例2)
実施例2の後反応70℃/4hを省略し、化合物2を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−3の含量は0.8質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.10であった。
【0198】
(比較例3)
実施例3の後反応70℃/4hを省略し、化合物1を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−2の含量は7.8質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.29であった。
【0199】
(比較例4)
実施例4の後反応70℃/4hを省略し、化合物2を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−1の含量は4.1質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ2.85であった。
【0200】
(比較例5)
実施例5の後反応75℃/2hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−5の含量は0.6質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.35であった。
【0201】
(比較例6)
実施例6の後反応75℃/2hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−6の含量は0.8質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.150であった。
【0202】
(比較例7)
実施例7の後反応75℃/2hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−7の含量は4.15質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ3.00であった。
【0203】
(比較例8)
実施例8の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−4の含量は4.07質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。
【0204】
(比較例9)
実施例9の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−3の含量は0.5質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.30であった。分取したものの平均分子量は11,000であった。
【0205】
(比較例10)
実施例10の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−2の含量は1.8質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ2.70であった。分取したものの平均分子量は13,000であった。
【0206】
(比較例11)
実施例11の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−7の含量は4.8質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ0.470であった。
【0207】
(比較例12)
実施例12の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−2の含量は4.0質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ0.87であった。分取したものの平均分子量は12,500であった。
【0208】
(比較例13)
実施例13の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−3の含量は3.1質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.33であった。
【0209】
(比較例14)
実施例14の後反応70℃/4hを省略し、化合物3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−2の含量は4.7質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.57であった。
【0210】
(比較例15)
実施例15の後反応70℃/4hを省略し、化合物−3を得た。乾燥後の重量は30gであった。GPC分取装置で採取し、H−NMRにて構造解析によりトリメトキシシリル基(Si−(OCH;3.5ppm)を定量し式−3の含量は5.2質量%であった。ソフトを使用しlogPを計算したところ−0.27であった。
【0211】
【化39】

【0212】
【化40】

【0213】
【化41】

【0214】
ここでlogPは、Medicinal Chemistry Project,PomonaCollege,Claremont,Californiaで開発され、Daylight Chemical Information SystemInc.より入手できるソフトウェアPCModelsを用いて算出した化合物のオクタール/水分配係数(P)の値の対数である。検出限界0.05質量%であり、下記表中、検出できなかったものに関し「−」と記載した。
【0215】
〔親水性部材の製造〕
最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O処理により親水化した後、下記組成の親水性組成物をバー塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの親水性層を形成して親水性部材を作製した。この親水性部材の表面自由エネルギーは、82mN/mで、親水性の高い表面であった。親水性層の可視光透過率は、87%であった(日立分光光度計U3000で測定)。
【0216】
(親水性ゾルゲル液)
精製水100g中に、表1に記載の親水性ポリマー(化合物−1)及び疎水性成分0.4質量%を含むポリマー組成物5.25gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
(親水性組成物)
前記親水性ゾルゲル液に下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液2.3g、精製水115gを混合し、親水性組成物とした。
(塗布方法)
アルカリ脱脂されたアルミ基板(厚み約100μm)を準備し、前記親水性組成物をバー塗布し、150℃、30分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.4g/mの層を形成し、実施例1の親水性部材を得た。
表1に記載の実施例1〜15及び比較例1〜15のポリマー組成物を用いて、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜15及び比較例1〜15の親水性部材を得た。
【0217】
【化42】

【0218】
〔評価方法〕
防曇性:得られた親水性部材表面を、加湿した30〜50℃の蒸気を10cm離したところからあてる。
10秒以内に曇りが発生したもの ×
10〜30秒で曇りが発生したもの △
30秒以上曇りが発生しなかったもの 〇
【0219】
密着性:得られた親水性部材表面に、ニチバンセロテープ(登録商標)を3cm貼り、20回人差し指で擦り、ニチバンセロテープ(登録商標)を一気にはがし親水性膜の剥がれの有無を観察した。
はがれあり ×
一部剥がれあり △
はがれなし 〇
【0220】
【表1】

【0221】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の親水性基を有する親水性ポリマーを含有するポリマー組成物中に含まれる疎水性成分のlogP値が−0.30〜3.00であり、かつ含有量が0〜4.0質量%であることを特徴とするポリマー組成物。
【請求項2】
前記疎水性成分が、分子量(MW)が100〜10000の疎水性成分であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記疎水性成分が、下記一般式(a)より選ばれる少なくとも1種の疎水性基を含む疎水性成分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【化1】

(一般式(a)中、Raは−CH、−C、又は−Cを表し、n=1〜3の整数を表し、Rbは水素原子、炭化水素基又はアルコキシシリル基を表す。)
【請求項4】
前記親水性ポリマーが下記一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造、下記一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造又は下記一般式(III−1)及び(III−2)で表される構造のいずれかを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【化2】

一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【化3】

一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【化4】

一般式(III−1)及び(III−2)中、R301〜R311はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。rは1〜3の整数を表し、L301〜L303は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A301は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかに記載のポリマー組成物を含むことを特徴とする親水性組成物。
【請求項6】
モノマー及びラジカル重合開始剤及び溶媒を含有する組成物を40〜120℃で攪拌する工程及び該組成物を加熱する工程を含むことを特徴とするポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により製造したことを特徴とするポリマー組成物。
【請求項8】
基板上に、請求項5に記載の親水性組成物により形成した親水性膜を有することを特徴とする親水性部材。
【請求項9】
フィン本体と、
該フィン本体の表面の少なくとも一部に設けられた親水層とを具備するフィン材であって、前記親水層は、請求項5に記載の親水性組成物が塗設されてなることを特徴とするフィン材。
【請求項10】
前記フィン本体がアルミニウム製である請求項9に記載のフィン材。
【請求項11】
請求項10に記載のフィン材を用いた熱交換器。
【請求項12】
請求項11に記載の熱交換器を用いたエアコン。

【公開番号】特開2010−90373(P2010−90373A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211139(P2009−211139)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】