説明

ポリマー部材に取り付けられる金属薄膜部材を含む医療装置および関連する方法

【課題】医療装置用ポリマー部材の取り付け領域が存在するにもかかわらず、比較的低プロファイルの医療装置を提供する。
【解決手段】穿孔340が貫通している医療装置用金属薄膜部材(金属薄膜血管形成バルーン310など)、およびこの金属薄膜部材に当接している医療装置用ポリマー部材(ポリマー管状カテーテル320など)を有する。また、該医療装置は、穿孔および金属薄膜部材に当接しているポリマー部材の少なくとも一部を覆うポリマースリーブ330も有する。さらに、ポリマースリーブは、穿孔内に侵入し、金属薄膜部材をポリマー部材に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療装置に関し、より詳細には、ポリマー部材に取り付けられる金属薄膜部材を有する医療装置および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の医療装置(例えば血管形成装置、カテーテルおよびステント)は、金属薄膜部材とポリマー部材の両方を有する。例えば、血管形成装置は、金属薄膜バルーンと管状ポリマーカテーテルを有することがある。
【発明の開示】
【0003】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。以下の詳細な説明では、説明のための実施形態を記載しており、これを参照することにより、本発明の特徴および利点をよりよく理解することができるであろう。これら実施形態では、本発明の原理が利用されており、添付の図面中においては、同じ参照符号は同一の要素を参照している。
【0004】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読むべきであり、図面では、異なる図面中の同様の要素には同一の符号が付されている。図面は必ずしも実際の比率どおりではなく、例示のみを目的として選択した例示的な実施形態を図示しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。詳細な説明は、限定のためではなく、例示のために、本発明の原理を示すものである。この説明は、当業者が、明らかに、本発明を実施および使用できるようにするものであり、現時点で本発明を実施する最良の形態であると考えられる形態を含め、本発明のいくつかの実施形態、改案、変更、変形および使用について記載している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
図1は、本発明の一実施形態による、医療装置用金属薄膜部材を医療装置用ポリマー部材に取り付けるための方法100の各種段階を示すフローチャートである。医療装置用金属薄膜部材および医療装置用ポリマー部材は、当業者に知られている適切な医療装置用部材であればどのようなものであってもよく、例えば、ステント部材および血管形成部材などがある。
【0006】
例のみを目的として、医療装置用金属薄膜血管形成バルーンおよび該バルーンに関連する医療装置用管状ポリマーカテーテルに関して、方法100を記載する。図2は、本発明の実施形態に関連する、金属薄膜血管形成バルーン200および関連するポリマー管状カテーテル210の概略側面断面図である。
【0007】
図1を参照すると、方法100では、ステップ110において、医療装置用金属薄膜部材に複数の穿孔を形成する。前述のように、医療装置用金属薄膜部材は、適切な医療装置用金属薄膜部材であればどのようなものであってもよく、例えば、アルミニウム、クロム、コバルト、ニッケル、ニオブ、銀、金、マグネシウム、マンガン、モリブデン、パラジウム、白金、スカンジウム、タンタル、チタン、バナジウム、ジルコニウム、およびこれらの組合せ(例えばステンレス鋼やニチノール)から形成される金属部材を含む。医療装置用薄型金属の厚さは、例えば、0.5ミクロン〜20ミクロンの範囲にある。
【0008】
ひとたび本開示を知れば、当業者は、穿孔の適切な個数とサイズを容易に決定することができる。円形の穿孔の直径の代表的な範囲は、5ミクロン〜50ミクロンであるが、これに限定されない。更に、穿孔は適切な形状であれば、例えば、円形、長方形、楕円形、S字など、どのような形であってもよい。穿孔の代表的な個数の範囲は、1〜40個であるが、これに限定されない。
【0009】
穿孔は、例えば、レーザを用いた穿孔技術、エッチング穿孔技術を含め、適切な従来技術であれば、どのようなものを使用しても形成することができる。
【0010】
次に、ステップ120において、医療装置用金属薄膜部材に医療装置用ポリマー部材が動作可能に当接される。医療装置用ポリマー部材は比較的薄い(例えば、厚さ範囲が2.5ミクロン〜3.0ミクロンなどである)。このような比較的薄い医療装置用ポリマー部材は、従来の接着剤を用いたのでは医療装置用金属薄膜部材に容易に接着することができないが、本発明による方法を使用すれば堅固に接着させることができる。更に、本発明による方法は、医療装置用ポリマー部材の取り付け領域が存在するにもかかわらず、比較的低プロファイルの医療装置を提供する。
【0011】
次に、図1のステップ130に示すように、穿孔と、当接させた医療装置用ポリマー部材の少なくとも一部の上にポリマースリーブが適用される。ポリマースリーブの厚さの代表的な範囲は、0.0001インチ〜0.003インチ(約2.54μm〜約76.2μm)の範囲である。例えば、ポリマースリーブに用いられる適切なポリマーは、ナイロンおよびPebax(登録商標)(ペバックス)を含む。ポリマースリーブは、医療装置用金属薄膜および医療装置用ポリマー部材に重なり、その重なりの分量は適切などのような値でもよく、例えば、長さ1mm〜10mmの範囲である。血管形成バルーンおよび管状ポリマーカテーテルを含む医療装置などの可撓性が要求される医療装置では、ポリマースリーブは、10Durameter〜40Durameterの範囲のDurameter値を有する可撓性ポリマーから形成することが有利である。ひとたび本開示を知れば、当業者は、本発明の実施形態に使用するのに適切な可撓性ポリマー材料を容易に選択することができる。
【0012】
ポリマースリーブは、適切な技術であれば、どのような技術を使用しても適用することができ、例えば、予め形成してあるスリーブを機械的に適用したり、ポリマー材料を堆積させて、医療装置用金属薄膜部材および医療装置用ポリマー部材の表面の上にスリーブを形成することができる。更に、「スリーブ」との文言は、(図3A、3B、4A、4Bに示すように)通常は、被覆または層を指し、更にはシースも指す。
【0013】
図3A、3Bは、本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加する前の、金属薄膜血管形成バルーン310の一部、関連するポリマー管状カテーテル320の一部、およびポリマースリーブ330の概略図である。また、図3は、金属薄膜血管形成バルーンに予め形成された複数の穿孔340も示している。このため、図3A、3Bは、一般にステップ130の後の方法100を示している。
【0014】
図1を再度参照すると、熱または圧力の少なくとも一方が次にポリマースリーブに印加され、ポリマースリーブが医療装置用金属膜および当接させた医療装置用ポリマー部材の一部に接合され、ポリマースリーブが穿孔に流入する。この接合が行われると、医療装置用金属薄膜部材が医療装置用ポリマー部材に堅固に取り付けられる。図1のステップ140を参照されたい。必要に応じて、ポリマー管状カテーテルが金属薄膜血管形成バルーン内に延在し、複数の穿孔の下に配されるように、ポリマー管状カテーテルを配置してもよい。このような場合、熱および/または圧力の印加中に、ポリマースリーブが、穿孔の下に存在するポリマー管状カテーテルの一部と接合しうる。
【0015】
ステップ140では、任意の適切な温度と圧力を使用することができる。例えば、ポリマースリーブおよび医療装置用ポリマー部材のガラス転移温度に等しい値の温度を使用することができる。適切な圧力を印加すると、ポリマースリーブが穿孔に流入(侵入)し、医療装置用ポリマー部材と接合される。この点において、医療装置用ポリマー部材と同じポリマー材料から形成されているポリマースリーブを使用することが有利である。ステップ240で印加される温度は、例えば、250°F〜150°F(約121℃〜約66℃)の範囲などである。
【0016】
図4A、4Bは、本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加した後の、金属薄膜血管形成バルーン310の一部、関連するポリマー管状カテーテル320の一部、およびポリマースリーブ330の概略図である。このため、図4A、4Bは、一般にステップ140の後の方法100を示している。
【0017】
図5は、本発明の一実施形態による医療装置500(例示のみを目的として図示された、血管形成バルーンおよび取り付けられたポリマーカテーテル)の概略断面図である。医療装置500は、穿孔515が貫通している医療装置用金属薄膜部材510(金属薄膜血管形成バルーンなど)、およびこの金属薄膜部材に当接している医療装置用ポリマー部材520(ポリマー管状カテーテルなど)を有する。また、医療装置は、穿孔と、金属薄膜部材に当接しているポリマー部材の少なくとも一部を覆っているポリマースリーブ530も有する。更に、ポリマースリーブは、穿孔内に侵入し、薄型金属部材をポリマー部材に接合している。
【0018】
本発明の好ましい実施形態を図示し、本明細書に記載したが、このような実施形態を例示のみを目的として提示したことは当業者にとって明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、および置き換えを想到できるであろう。本発明を実施する際に、本明細書に記載した本発明の実施形態のさまざまな変形例を使用することができると理解されるべきである。添付の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義しており、それにより、該特許請求の範囲およびその均等物の範囲内の装置および方法がカバーされることを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による方法の各種段階を示す概略フローチャートである。
【図2】本発明の実施形態に関連する、金属薄膜血管形成バルーンおよび関連するポリマー管状カテーテルの概略側面断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加する前の、金属薄膜血管形成バルーンの一部および関連するポリマー管状カテーテルの一部の概略断面図である。
【図3B】本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加する前の、金属薄膜血管形成バルーンの一部および関連するポリマー管状カテーテルの一部の概略断面図である。
【図4A】本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加した後の、金属薄膜血管形成バルーンの一部および関連するポリマー管状カテーテルの一部の概略図である。
【図4B】本発明の一実施形態による方法の実施中に、熱および/または圧力を印加した後の、金属薄膜血管形成バルーンの一部および関連するポリマー管状カテーテルの一部の概略図である。
【図5】本発明の一実施形態による医療装置(すなわち、血管形成バルーンおよび取り付けられたポリマーカテーテル)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
穿孔が貫通している医療装置用金属薄膜部材と、
前記金属薄膜部材に当接している医療装置用ポリマー部材と、
前記穿孔および前記金属薄膜部材に当接している前記ポリマー部材の少なくとも一部を覆っているポリマースリーブであって、前記穿孔に侵入し、前記医療装置用金属薄膜部材を前記医療装置用ポリマー部材に接合しているポリマースリーブと、
を有する医療装置。
【請求項2】
前記医療装置用金属薄膜部材はニチノールから形成されている請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記医療装置用金属薄膜部材は血管形成バルーンである請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記医療装置用ポリマー部材は管状ポリマーカテーテルである請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記医療装置用ポリマー部材と前記ポリマースリーブが同じポリマー材料から形成されている請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
前記穿孔は5ミクロン〜50ミクロンの範囲の直径を有する円形の穿孔である請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
医療装置用金属薄膜部材を医療装置用ポリマー部材に取り付けるための方法であって、
前記医療装置用金属薄膜部材に複数の穿孔を形成するステップと、
前記医療装置用金属薄膜部材に前記医療装置用ポリマー部材を当接させるステップと、
前記穿孔および当接させた前記医療装置用ポリマー部材の少なくとも一部の上にポリマースリーブを適用するステップと、
前記ポリマースリーブに熱または圧力の少なくとも一方を印加し、前記ポリマースリーブが前記医療装置用金属薄膜および当接された前記医療装置用ポリマー部材の一部に接合され、前記ポリマースリーブが前記穿孔に流入し、それにより前記医療装置用金属薄膜部材を前記医療装置用ポリマー部材に取り付けるステップと、
を有する方法。
【請求項8】
前記医療装置用金属薄膜部材はニチノールから形成されている請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記医療装置用金属薄膜部材は血管形成である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記医療装置用ポリマー部材は管状ポリマーカテーテルである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記医療装置用ポリマー部材と前記ポリマースリーブが同じポリマー材料から形成されている請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記形成ステップは5ミクロン〜50ミクロンの範囲の直径を有する円形の穿孔を形成する請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−136672(P2009−136672A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−275585(P2008−275585)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(597041828)コーディス・コーポレイション (206)
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
【Fターム(参考)】