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ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物の製造方法
説明

ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物の製造方法

【課題】ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥工程で粗大粒子が生成するのを防止する方法,及び眼の透明組織可視化剤用ポリ乳酸粒子の製造方法の提供。
【解決手段】ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥時における粗大粒子生成を抑制する方法であって,(a)分散剤と賦形剤を含有するポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製するステップであって,(i)ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなる溶液を,分散剤水溶液に撹拌下で添加した後,賦形剤を添加するか,又は(ii)ポリ乳酸を該溶媒に溶解させてなる溶液を,分散剤及び賦形剤を含有する水溶液に撹拌下で添加することによるものであるステップと,(b)該懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すステップと,を含み,ステップ(b)において,ガラス容器が凍結乾燥機のチャンバー内に置かれ,該懸濁液が凍結する時のチャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分に調節されるものである,方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を凍結乾燥して得られるポリ乳酸粒子の凝集塊の発生を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼には硝子体,水晶体および角膜などの透明組織が集まっている。白内障手術では水晶体嚢内の核および皮質の除去を行うが,後嚢近くに残った水晶体の皮質が混濁し,後発白内障を引き起こすことが知られている。
【0003】
また硝子体除去手術では,網膜に癒着した増殖組織と増殖の足場となる硝子体を可能な限り完全に除去することが求められる。しかしながら,硝子体は透明な組織であり,硝子体の完全な除去は容易ではない。この解決策として,硝子体除去手術中にトリアムシノロン製剤(ケナコルト−A:登録商標)などのステロイド懸濁液を硝子体腔に注射器を用いて注入することによって透明な硝子体を可視化することが行われている(非特許文献1参照)。この方法を採用することで,手術手技を容易にし,確実に硝子体の除去を行うことができる。しかしながら,治療を目的としたトリアムシノロン製剤の硝子体への使用においては,副作用として眼圧上昇と白内障の進行が報告されている(非特許文献2および3参照)。そこで,ポリ乳酸その他の薬理作用を示さない高分子化合物からなる粒子の懸濁液を硝子体腔に注入することにより,硝子体の視認性を向上させる方法及びそのために使用する透明組織可視化剤(眼の透明組織に注入又は散布することによって,手術時における眼の透明組織の視認性を向上させるための薬剤)が提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記の方法において,微粒子の懸濁液は,液状での長期保存による沈殿分離等の安定性の問題を回避する等の理由から,懸濁液の凍結乾燥物の形で供給されることが極めて好ましい。しなしながら,ポリ乳酸等,高分子化合物によっては懸濁液の凍結乾燥時に凝集塊を形成して粗大粒子を生ずるものがある。高分子化合物の粒子は,注射器により眼内に注入される形で使用されるから,粒子は,注射針を詰らせることなしに通過できる粒子径のものでなければならない。上記特許文献1には,平均値として粒子径が開示されているものの,最大粒子径には言及されておらず,また粒子径をコントロールするための調製条件に関する明確な記載はない。また,ポリ乳酸の分散液に2価あるいは3価の金属塩を添加することで眼組織の視認性を向上させる方法が特許文献2に開示されているが,同文献には,凍結乾燥時の粗大粒子の生成の防止に関しては記載がない。更に,20〜120μmのポリ乳酸微粒子を形成してグリコール酸含有の水性担体中で凍結乾燥することによる注射可能インプラントの製造方法が特許文献3に開示されているが,同方法は,ポリ乳酸微粒子の生成に際し塩素系有機溶媒への溶解及び析出の工程を含んでおり,製剤中の塩素系有機溶媒の残留の可能性を考慮すると,医薬用途の製剤,特に眼内に注入される製剤の製造方法としては好ましくない。その他,特許文献4,5に乳液および懸濁液を凍結乾燥させるための技術的な条件検討が行われているが,ポリ乳酸の懸濁液の凍結乾燥に際した粒子凝集による粗大粒子形成を防止することに関しては,記載がない。
【0005】
懸濁液を凍結乾燥するときは,分散した懸濁粒子が沈降するより前,すなわち懸濁粒子が均一に分散した状態にあるうちに速やかに凍結させてしまえば,粒子同士が凝集する時間は殆どなくなる筈である。このことから,ポリ乳酸微粒子懸濁液を凍結乾燥するに際して粒子の凝集を防止して微小粒子の状態を維持するには,均一な懸濁液の状態から急速に冷却して凍結するのが望ましいと考えられる(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/115411号
【特許文献2】国際公開第2008/126720号
【特許文献3】国際公開第2003/007782号
【特許文献4】国際公開第2001/051032号
【特許文献5】国際公開第2004/112754号
【特許文献6】国際公開第2003/026642号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Sakamoto, T. et al., Graefe’s Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology, 240: p.423 (2002).
【非特許文献2】Challa, J.K. et al., Australian and New Zealand Journal of Ophthalmology, 26: p.277 (1998).
【非特許文献3】Wingate, R.J. et al., Australian and New Zealand Journal of Ophthalmology, 27: p.431 (1999).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記背景において,本発明の一目的は,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液から凍結乾燥によりポリ乳酸粒子を製造する方法であって,凍結乾燥工程で粗大粒子が生成するのを防止できる方法を提供することである。
また本発明の更なる一目的は,眼の透明組織,特に硝子体および水晶体に適用することによってそれら眼の透明組織の視認性を向上させるための製剤である透明組織可視化剤用ポリ乳酸粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は,上記目的のため検討の結果,分散剤を溶解して含有する水溶液又は分散剤と賦形剤とを溶解して含有する水溶液に,水混和性有機溶媒に溶解させたポリ乳酸を添加,撹拌することにより一次粒子(凝集していない状態での個々の粒子をいう)としての平均粒子径500〜1000nm(最大粒子径5μm以下)であるポリ乳酸微粒子の水性懸濁液が得られ,その凍結乾燥工程において凍結乾燥工程において,急速に凍結するのではなく緩徐な冷却速度で凍結する方が,粗大粒子の生成が抑制できることを見出した。本発明は,当該発見に基づき,更に検討を重ねて完成させたものである。すなわち,本発明は以下を提供する。
【0010】
すなわち,本発明は以下を提供する。
1.ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥時におけるポリ乳酸の粗大粒子の生成を抑制する方法であって,
(a) 分散剤と賦形剤とを含有するポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製するステップであって,
(i) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤を含有する分散剤水溶液に撹拌下で添加した後,賦形剤を添加するか,又は
(ii) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤及び賦形剤を含有する分散剤/賦形剤水溶液に撹拌下で添加することによるものであるステップと,
(b) 該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すステップと,
を含んでなり,
ステップ(b)において,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を入れた該ガラス容器が凍結乾燥機のチャンバー内に置かれ,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液が凍結する時の該チャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分に調節されるものである,方法。
2.該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液中の該分散剤の濃度が0.11〜2.2W/V%である,上記1の方法。
3.該分散剤がポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールである,上記1又は2の方法。
4.該分散剤/賦形剤水溶液中の該賦形剤の濃度が1.1〜11W/V%である,上記1ないし3の何れかの方法。
5.該賦形剤が多価アルコールである,上記1ないし4の何れかの方法。
6.該多価アルコールがマンニトールである,上記5の方法。
7.該ポリ乳酸溶液中の該ポリ乳酸の濃度が1〜50W/V%である,上記1ないし6の何れかの方法。
8.該水混和性有機溶媒がアセトン・エタノール混液である,上記1ないし7の何れかの方法。
9.該アセトン・エタノール混液におけるアセトンとエタノールの混合比が,体積で,アセトン:エタノール=3:7〜5:5である,上記8の方法。
10.該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液と該ポリ乳酸溶液の混合比が,体積で,該水溶液:ポリ乳酸溶液=85:15〜95:5である,上記1ないし9の何れかの方法。
11.該ガラス容器がガラスバイアルである,上記1ないし10の何れかの方法。
12.眼の透明組織可視化剤用ポリ乳酸粒子の製造方法であって,
(a) 分散剤と賦形剤とを含有するポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製するステップであって,
(i) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤を含有する分散剤水溶液に撹拌下で添加した後,賦形剤を添加するか,又は
(ii) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤及び賦形剤を含有する分散剤/賦形剤水溶液に撹拌下で添加することによるものであるステップと,
(b) 該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すステップと,
を含んでなり,
ステップ(b)において,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を入れた該ガラス容器が凍結乾燥機のチャンバー内に置かれ,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液が凍結する時の該チャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分に調節されるものである,製造方法。
13.該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液中の該分散剤の濃度が0.11〜2.2W/V%である,上記12の製造方法。
14.該分散剤がポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールである,上記12又は13の製造方法。
15.該分散剤/賦形剤水溶液中の該賦形剤の濃度が1.1〜11W/V%である,上記12ないし14の何れかの製造方法。
16.該賦形剤が多価アルコールである,上記12ないし15の何れかの製造方法。
17.該多価アルコールがマンニトールである,上記16の製造方法。
18.該ポリ乳酸溶液中の該ポリ乳酸の濃度が1〜50W/V%である,上記12ないし17の何れかの製造方法。
19.該水混和性有機溶媒がアセトン・エタノール混液である,上記12ないし18の何れかの製造方法。
20.該アセトン・エタノール混液におけるアセトンとエタノールの混合比が,体積で,アセトン:エタノール=3:7〜5:5である,上記19の製造方法。
21.該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液と該ポリ乳酸溶液の混合比が,体積で,該水溶液:ポリ乳酸溶液=85:15〜95:5である,上記12ないし20の何れかの製造方法。
22.該ガラス容器がガラスバイアルである,上記12ないし21の何れかの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
上記構成になる本発明は,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥時におけるポリ乳酸粒子の凝集を抑制し粗大な凝集塊(特に,粒子の短径が0.3mm以上,取り分け0.2mm以上のもの)の発生を防止できる。このため本発明によれば,透明組織を可視化するための眼内へのポリ乳酸粒子水性懸濁液の注入に際し,眼科手術において一般に使用される注射針に粒子が詰まることがなくなり,懸濁粒子を眼内に円滑に注入することを可能にする。
【0012】
本発明により製造されるポリ乳酸粒子は,球状でなく,個々に種々の不規則な形状をとっているが,そのような不規則形状のポリ乳酸粒子は,球状粒子に比べて硝子体及び水晶体等の眼の透明組織と接触したとき,組織によく付着し,手術中の眼内灌流液の流れによっても組織から脱落しにくい。このため,不規則形状のポリ乳酸粒子は,透明組織可視化剤として優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
検討に用いたポリ乳酸はDL−ポリ乳酸であることから,D−ポリ乳酸,L−ポリ乳酸,DL−ポリ乳酸を区別することなく,またそれらの適宜の混合物も,本発明において同様に使用することができる。
【0014】
本明細書中で,「眼の透明組織」の語は,硝子体,硝子体膜,水晶体及び角膜等の眼組織中の透明な組織をいう。
【0015】
本明細書中で,「透明組織可視化剤」の語は,凍結乾燥して得られるポリ乳酸粒子を分散液に分散させた製剤をいう。
【0016】
本明細書において,「ポリ乳酸微粒子」の語は,ポリ乳酸の粒子であって粒子径が5μm以下のものを意味する。
【0017】
本明細書において,「ポリ乳酸微粒子水性懸濁液」の語は,ポリ乳酸微粒子を懸濁状態で含有する液体であって,その分散媒が水性媒質,すなわち,水,又は混和した状態で有機溶媒を一部に含有する水であるものをいう。
【0018】
本明細書中で,「分散剤水溶液」の語は,分散剤を水に添加し溶解させることにより得られる水溶液をいい,「分散剤/賦形剤水溶液」の語は,分散剤及び賦形剤を水に添加し溶解させることにより得られる水溶液をいう。
【0019】
ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥にあたり,本発明においては当該懸濁液を容器に注入してこれを凍結乾燥機のチャンバー内に設置して冷却し凍結させるが,このときチャンバーの冷却速度が,粗大粒子の生成に大きく影響することを本発明者は見出した。すなわち,従来の技術的常識から予想されたところとは逆に,驚くべきことにポリ乳酸微粒子水性懸濁液が凍結を開始する時での冷却速度が速いと粗大粒子が生成し易く,同時点での冷却速度が遅いと粗大粒子の生成が抑制される。この理由は明らかでないが,凍結が開始する時点において懸濁液内の温度分布の均一性が高いことが重要な役割を果たしているものと推測される。懸濁液内の温度分布の均一性は,冷却速度と密接に関係し,冷却速度が遅い程,温度分布の均一性は保たれ易い。これらのことから,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥にあたっては,当該懸濁液が凍結を開始する瞬間において,該容器の設置されたチャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分であることが好ましく,0.1〜0.8℃/分であることがより好ましく,0.1〜0.6℃/分であることが更に好ましい。なお,凍結を開始する瞬間の温度は添加物の種および濃度により変動するが,−10〜−20℃の範囲である。
【0020】
上記分散剤水溶液又は上記分散剤/賦形剤水溶液に含有される分散剤は,水混和性有機溶媒に溶解させたポリ乳酸溶液を,分散剤を含有する水溶液に添加してポリ乳酸微粒子を析出させる工程において粒子成長の抑制に有用であり,また,凍結乾燥前におけるポリ乳酸微粒子の均一な懸濁状態の維持及び凍結乾燥組成物を分散媒と混合して透明組織可視化剤を調製する際にも,ポリ乳酸粒子を迅速に懸濁させ且つ安定な懸濁状態を維持する上で有用である。分散剤としては,界面活性剤や界面活性を有する水溶性高分子を用いることができる。常温で固体であり,水に対して即溶性の水溶性高分子が好適に用いられ,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール等のビニル系ポリマーが特に好適に用いられる。ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールを用いる場合,分散剤水溶液又は分散剤/賦形剤水溶液中における当該化合物の含有量は0.11〜2.2W/V%とするのが好ましく,0.22〜1.1W/V%とするのがより好ましく,0.44〜0.66W/V%とするのがより好ましい。
【0021】
上記該分散剤/賦形剤水溶液中の該賦形剤の濃度は,1.1〜11W/V%であることが好ましく,3.85〜11W/V%とすることがより好ましく,4.5〜10W/V%とすることが更に好ましく,5.5〜8W/V%とすることが特に好ましい。賦形剤として好ましいものとして多価アルコールが挙げられ,それらのうち特にマンニトールが好ましい。
【0022】
本発明において水混和性有機溶媒に溶解させるポリ乳酸の濃度は,通常1〜50W/V%の範囲であり,2〜30W/V%とするのが好ましく,5〜20W/V%とするのが更に好ましい。
【0023】
上記水混和性有機溶媒しては,アセトン・エタノール混液が好ましい。これを調製するのに用いるアセトンとエタノールとの体積比は,適宜でよいが,通常は3:7〜5:5の範囲とするのが好ましい。これらの溶媒は共に,塩素系有機溶媒に比して身体組織に対する安全性が高く,しかも塩素系有機溶媒と異なり水混和性であるため,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製したときポリ乳酸微粒子から水相へと移行し易く,凍結乾燥により速やかに除去され,最終的に得られる凍結乾燥組成物中には,実質的に残存しない。
【0024】
上記において分散剤水溶液,又は分散剤/賦形剤水溶液とこれに添加するポリ乳酸溶液との体積比率は,通常95:5〜85:15とすることが好ましく,特に好ましくは約90:10である。このような比率で当該水溶液にポリ乳酸溶液を添加し撹拌したとき,一次粒子としての平均粒子径が500〜1000nmで最大粒子径5μm以下であるポリ乳酸微粒子の水性懸濁液が容易に得られる。一次粒子は,水性懸濁液の調製中に一部凝集する場合があり得るが,調製後に例えば口径106μmの篩に水性懸濁液を通してこれに掛かる粒子を除去しておけば,問題はない。
【0025】
本発明において凍結乾燥に付すポリ乳酸微粒子水性懸濁液中のポリ乳酸の含量は,通常0.05〜7.5W/V%,好ましくは0.1〜5.0W/V%,より好ましくは,0.5〜2.5W/V%とすればよい。ポリ乳酸微粒子水性懸濁液中のポリ乳酸含量の調整は,水混和性有機溶媒(アセトン・エタノール混液等)に含有させるポリ乳酸の濃度を予め調節しておくことによって行ってもよく,懸濁液調製時における水溶液に対するポリ乳酸溶液の添加割合を調整することによって行ってもよい。ポリ乳酸微粒子水性懸濁液中のポリ乳酸の含量がこれらの含量範囲にある場合,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥時に,マンニトールの存在と相俟って,ポリ乳酸粒子の凝集が防止できる。なお,本法はこれらの範囲よりポリ乳酸含量を少なくした場合でも適用し得る。
【0026】
本明細書において,ポリ乳酸について「平均分子量」というときは,重量平均分子量をいう。本発明において使用されるポリ乳酸の平均分子量は,通常500以上,好ましくは1000以上であり,より好ましくは3000以上,特に好ましくは4000以上であり,通常20000以下,好ましくは15000以下,より好ましくは10000以下,更に好ましくは6000以下である。
【0027】
本発明において,凍結乾燥されるポリ乳酸微粒子水性懸濁液には,医薬上許容される添加物,例えば等張化剤(塩化ナトリウム,塩化カリウムなどの塩:グリセリン,ソルビトール,グルコース,マンニトールなどの糖類:グリセリン,プロピレングリコールなどの多価アルコール類:ホウ酸,ホウ砂など),緩衝剤(リン酸緩衝液,酢酸緩衝液,ホウ酸緩衝液,炭酸緩衝液,クエン酸緩衝液,トリス緩衝液など),増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースナトリウム,ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコール,アルギン酸ナトリウムなど),安定化剤(亜硫酸水素ナトリウム,チオ硫酸ナトリウム,エデト酸ナトリウム,クエン酸ナトリウム,アスコルビン酸,ジブチルヒドロキシトルエン,塩化マグネシウム,塩化カルシウムなど),pH調整剤(塩酸,水酸化ナトリウム,リン酸,酢酸など)などを適宜添加することができる。その場合,それらの添加物は,ポリ乳酸溶液が添加される前の分散剤及びマンニトールを含有する水溶液に予め添加しておいてもよく,ポリ乳酸微粒子含有水性懸濁液を調製した後でこれに添加してもよく,また一部をポリ乳酸溶液が添加される前の分散剤及びマンニトールを含有する水溶液に予め添加し,残りをポリ乳酸微粒子含有水性懸濁液を調製した後でこれに添加してもよい。
【0028】
本発明において,凍結乾燥に付されるポリ乳酸微粒子水性懸濁液のpHは,通常4.0〜8.0,好ましくは約5.0〜7.5に調整される。
【0029】
本発明において,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を凍結乾燥に付す際の容器は,通常はガラス容器が用いられ,中でもガラスバイアルが好ましい。
【0030】
本発明において,ポリ乳酸微粒子水性懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すに際し,各容器に注入される液量は適宜でよいが,通常は,0.5〜5mL,より好ましくは1〜2mLである。
【0031】
本発明により製造されるポリ乳酸粒子は不規則形状である。
【0032】
なお,本発明により製造されるポリ乳酸微粒子含有の凍結乾燥組成物は,使用に際し水性の分散媒と混合されてポリ乳酸微粒子の水性懸濁液の形に調製される。そのための水性の分散媒としては,医薬として眼内に注入することが許容される組成の水溶液を,適宜用いることができる。眼内灌流・洗浄液としては種々の組成物が当業者によく知られており,それらを適宜選択して分散媒として用いてよい。また,眼内灌流・洗浄液として既に販売されている医薬品を分散媒として使用してもよく,そのような医薬品として特に適しているものの例としては,オペガードMA(登録商標,)及びオペガードネオキット(登録商標,千寿製薬株式会社製)が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下実施例を参照して本発明を更に具体的に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0034】
〔試験例1〕
精製水にポリビニルピロリドン(ポビドンK−30,BASFジャパン製,日本薬局方)及びD−マンニトールを,それぞれ0.55W/V%及び1W/V%の濃度となるように添加して溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過しA液とした。
【0035】
PLA0005〔DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000,和光純薬(株)製〕をアセトン・エタノール混液(体積比でアセトン:エタノール=4:6)に10W/V%の濃度となるように溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とした。
【0036】
A液とB液を9:1の体積比で次のように混合した。すなわち,200mLのビーカーに入れたA液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2-200 μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)を用い,B液を約1mL/分の速度でA液中に送液することにより,PLA0005の微粒子を析出させた。この間,吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておいた。この液を約30分間攪拌して懸濁液を得,これを篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去した。得られた懸濁液D(100mL中)のポリ乳酸,ポリビニルピロリドン及びD−マンニトールの含量(100mL中)は次のとおりである。
【0037】
ポリ乳酸(PLA0005)・・・・・・・1g
ポリビニルピロリドン・・・・・・・・・・0.5g
D−マンニトール・・・・・・・・・・・・1g
【0038】
懸濁液Dを1.5mLずつガラス製バイアル(18Φ,高さ33mm)に充填し,充填済みバイアルを第1群〜第4群に等分し,下記の条件で懸濁液Dを凍結乾燥に付し,凍結乾燥組成物を得た。
【0039】
(a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社製)
(b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
(c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
(d)分注量:1.5mL/バイアル
(e)バイアル設置:装置のチャンバー内のトレイ1枚分が埋まるよう懸濁液D又はダミー液(2.5%D−マンニトール水溶液1.5mL)のバイアルを敷き詰めた。
(f)予備凍結:凍結におけるチャンバー内の冷却速度が粒子の凝集に与える影響を調べるため,群により異なる以下の方法で実施。
(i) 第1群(徐冷凍結1): チャンバー内の常温のトレイに上記バイアルを並べ,トレイ温度を+20℃から−40℃まで2時間かけて徐々に冷却して懸濁液Dを凍結させた。
(ii) 第2群(徐冷凍結2): チャンバー内の常温のトレイに上記バイアルを並べ,トレイ温度を+20℃からー45℃まで40分かけて徐々に冷却して懸濁液Dを凍結させた。
(iii) 第3群:トレイを予め−45℃まで冷却した上で,上記バイアルを−45℃トレイの上に並べて薬液を凍結させた。
(iv) 第4群(液体窒素凍結):上記バイアルを液体窒素に浸して薬液を急速に凍結させた後,−45℃のトレイ上に並べた。
(g)一次乾燥及び二次乾燥:何れの群についても以下の凍結乾燥プログラムに従い一次乾燥および二次乾燥を実施した。
・一次乾燥:トレイ温度−45℃又は−40℃から−10℃まで1時間で上昇させ,その後−10℃で19時間保持した。このときの真空制御値を0.1 Torrとした。
・二次乾燥:トレイ温度−10℃から+20℃まで1時間で上昇させ,その後+20℃で12時間保持した。このときの真空度は成り行きとした。
(h)バイアルの密栓: 二次乾燥終了後はゴム栓で密封した。
【0040】
〔凍結乾燥組成物の評価〕
上記第1〜4群の凍結乾燥組成物を,表1に示した組成の分散媒Cに,ポリ乳酸の含量が1W/V%となるように分散させることにより懸濁液を再調製した(バイアルあたり液量1.5mL)。
【0041】
【表1】


【0042】
<評価方法>
各群の凍結乾燥組成物から上記で再調製した懸濁液につき,各バイアル内の全量をそれぞれ,12穴プレート(12.5cmX8cm,内径22mm,IWAKI社)の各穴に移し,デジタルマイクロスコープ(型番:VHX−500 キーエンス社)にて懸濁液中の粒子の大きさを観察した。観察は,1穴のほぼ全体像が捉えられるよう倍率を設定して懸濁液の写真撮影を行い,写真上において粗大粒子として,短径が0.2mmを超える凝集体の個数及びそれらのうち短径が0.3mmを超える凝集体の個数を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】


【0044】
表2に見られるように,冷却がゆっくりと行われるほど,粗大粒子の生成は抑制されることが判明した。特に第1群における冷却速度0.5℃/分では,第2群に比して粗大粒子は顕著に少なかった。
【0045】
〔試験例2〕 第5群〜第9群
精製水にポリビニルピロリドン(ポビドンK−30)を0.55W/V%の濃度となるように,及びD−マンニトールを表3の第5群〜第9群にそれぞれ規定した量の1.1倍となるように溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過し,それぞれA−5〜A−9液とした。
【0046】
【表3】


【0047】
PLA0005〔DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000,和光純薬(株)製〕をアセトン・エタノール混液(体積比でアセトン:エタノール=4:6)に10W/V%の濃度となるように溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とした。
【0048】
A−5〜A−9の各液とB液を9:1の割合で次のように混合した。200mLのビーカーに入れたA−5〜A−9の各液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2〜200μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)用いてB液を約1mL/分の速度でA−5〜A−9の各液中に送液し,PLA0005の微粒子を析出させた。このとき吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておいた。これを約30分間攪拌して懸濁液それぞれD−5〜D−9を得た。懸濁液D−5〜D−9に含有されるポリ乳酸,ポリビニルピロリドン及びD−マンニトールの量は表3に示したとおりである。
【0049】
上記で得られた懸濁液D−5〜D−9を,篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去した。篩にかけた後の懸濁液D−5〜D−9を1.5mLずつガラス製バイアル瓶(18Φ,高さ33mm)に充填し,下記の条件で凍結乾燥を行い,凍結乾燥組成物それぞれE−5〜E−9を得た。
【0050】
(凍結乾燥条件)
a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社)
b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
d)分注量:1.5mL/バイアル
e)凍結乾燥本数:トレイ1枚分が埋まるよう実液またはダミー液(D−マンニトール水溶液2.5%)のバイアルを敷き詰めた。
f)凍結乾燥プログラムの設定
<予備凍結>
常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させた。棚温を+20℃から−40℃まで2時間かけて冷却した。
<一次乾燥及び二次乾燥>
懸濁液D−5〜D−9につき,以下の凍結乾燥プログラムにて一次乾燥および二次乾燥を行った。
一次乾燥は,棚温−45℃または−40℃から−10℃に1時間で上昇させ,その後−10℃で19時間に設定した。このときの真空制御値を0.1Torrとした。二次乾燥では棚温−10℃から+20℃に1時間で上昇させ,その後+20℃で12時間に設定した。このときの真空度は成り行きとした。二次乾燥終了後はゴム栓で密封した。
【0051】
〔凍結乾燥組成物の評価〕
凍結乾燥組成物E−5〜E−9を,表4に示した組成の分散媒Cに,ポリ乳酸の含量が1W/V%となるように分散させることにより懸濁液を調製した。
【0052】
【表4】


【0053】
評価方法:上記で調製した懸濁液の全量を12穴プレート(12.5cm×8cm,内径22mm,IWAKI社)に移し,デジタルマイクロスコープ(型番:VHX−500 キーエンス社)にて粒子の大きさを観察した。その際,1穴のほぼ全体像が捉えられるよう倍率を設定した。写真撮影を行い,0.3および0.2mmを超える凝集体の個数と短径を測定した。結果を次の表5に示す。
【0054】
【表5】


【0055】
表5に見られるように,予備凍結を徐冷とした第8群及び第9群において,粗大粒子が全く見られないことが確認された。
【0056】
〔製剤実施例1〜4〕
下記の手順で,ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物を製造する。
精製水にポリビニルビニルピロリドン(ポビドンK−30)及びD−マンニトールを,それぞれ1.1W/V%及び1.1W/V%の濃度となるように添加して溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過しA液とする。別に,ポリ乳酸(例えばPLA0005,DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000,和光純薬(株)製〕をアセトン・エタノール混液(体積比でアセトン:エタノール=4:6)に1W/V%の濃度となるように溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とする。A液とB液を9:1の体積比で次のように混合する。すなわち,200mLのビーカーに入れたA液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2-200 μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)を用い,B液を約1mL/分の速度でA液中に送液することにより,PLA0005の微粒子を析出させる。この間,吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておく。この液を約30分間攪拌して懸濁液を得,これを篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去する。得られる懸濁液D(100mL中)のポリ乳酸,ポリビニルピロリドン及びD−マンニトールの含量(100mL中)は次のとおりである。
【0057】
ポリ乳酸(PLA0005)・・・・・・・ 0.1g
ポリビニルピロリドン・・・・・・・・・・ 1g
D−マンニトール・・・・・・・・・・・・ 1g
【0058】
上記懸濁液Dをガラスバイアルに分注し,以下の条件で凍結乾燥に付す。
(a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社製)
(b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
(c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
(d)分注量:1.5mL/バイアル
(e)バイアル設置:装置のチャンバー内のトレイ1枚分が埋まるようバイアルを敷き詰める。
(f)予備凍結: 試験は,凍結速度の粒子凝集への影響を確認するため,予備凍結は以下の方法で行う。
(i) 製造実施例1: 常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させた。棚温を+10℃から−10℃まで15分かけて冷却し,その後−10℃から−40℃まで60分かけて冷却する。
(ii) 製造実施例2: 常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させた。棚温を+15℃から−5℃まで10分かけて冷却し,その後−5℃から−40℃まで100分かけて冷却する。
(iii) 製造実施例3: 常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させた。棚温を+20℃から−10℃まで20分かけて冷却し,その後−5℃から−30℃まで60分かけて冷却し,更に30℃からー40℃まで40分かけて冷却する。
(iv) 製造実施例4: 常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させた。棚温を+10℃から−10℃まで15分かけて冷却し,その後−10℃から−30℃まで60分かけて冷却し,更に30℃からー40℃に5分かけて冷却してー40℃の状態を30分間維持する。
(g)一次乾燥と二次乾燥:
・一次乾燥:トレイ温度−45℃又は−40℃から−10℃まで1時間で上昇させ,その後−10℃で19時間保持する。真空制御値は0.1 Torrとする。
・二次乾燥:トレイ温度−10℃から+20℃まで1時間で上昇させ,その後+20℃で12時間保持する。
(h)バイアルの密栓: 二次乾燥終了後はゴム栓で密封し,ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物とする。
【0059】
〔製剤実施例5〕
下記の手順で,ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物を製造する。
精製水にポリビニルピロリドン(ポビドンK−30)を,表6のPVP含量の最終濃度の1.1倍となるように添加して溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過しA液とする。別に,表6(アセトン:エタノール(体積比))に従い,アセトン・エタノール混液を調製し,ポリ乳酸〔表6(PLA分子量),DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000〜20000,和光純薬(株)製〕を最終濃度が表6(ポリ乳酸含量)のとおりになるようにアセトン・エタノール混液に溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とする。A液とB液を表6(水溶液:PLA溶液)に従い体積比で次のように混合する。すなわち,200mLのビーカーに入れたA液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2-200 μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)を用い,B液を約1mL/分の速度でA液中に送液することにより,ポリ乳酸の微粒子を析出させる。この間,吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておく。ポリ乳酸の微粒子を析出させた後,D−マンニトールを表6のD−マンニトール含量になるように添加して溶解させ,この液を約30分間攪拌して懸濁液を得,これを篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去し,懸濁液Dを得る。
【0060】
〔製剤実施例6〜9〕
下記の手順で,ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物を製造する。
精製水にポリビニルピロリドン(ポビドンK−30)及びD−マンニトールを,表6(PVP含量,マンニトール含量)のそれぞれ最終濃度の1.1倍となるように添加して溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過しA液とする。別に,表6(アセトン:エタノール(体積比))に従い,アセトン・エタノール混液を調製し,ポリ乳酸(表6(PLA分子量)DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000〜20000,和光純薬(株)製〕を最終濃度が表6(ポリ乳酸含量)のとおりになるようにアセトン・エタノール混液に溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とする。A液とB液を表6(水溶液:PLA溶液)に従い体積比で次のように混合する。すなわち,200mLのビーカーに入れたA液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2-200 μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)を用い,B液を約1mL/分の速度でA液中に送液することにより,ポリ乳酸の微粒子を析出させる。この間,吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておく。この液を約30分間攪拌して懸濁液を得,これを篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去し,懸濁液Dを得る。
【0061】
【表6】


【0062】
製剤実施例5〜9で得られる懸濁液Dをガラスバイアルに分注し,以下の条件で凍結乾燥に付す。
(a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社製)
(b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
(c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
(d)分注量:1.5mL/バイアル
(e)バイアル設置:装置のチャンバー内のトレイ1枚分が埋まるようバイアルを敷き詰める。
(f)予備凍結:試験は,凍結速度の粒子凝集への影響を確認するため,予備凍結は以下の方法で行う。
【0063】
(凍結乾燥条件)
a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社)
b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
d)分注量:1.5mL/バイアル
e)凍結乾燥本数:トレイ1枚分が埋まるよう実液またはダミー液(D−マンニトール水溶液2.5%)のバイアルを敷き詰める。
f)凍結乾燥プログラムの設定
<予備凍結>
常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させる。棚温を+20℃から−40℃まで2時間かけて冷却する。
<一次乾燥及び二次乾燥>
製剤実施例5〜9につき,以下の凍結乾燥プログラムにて一次乾燥および二次乾燥を行う。
一次乾燥は,棚温−45℃または−40℃から−10℃に1時間で上昇させ,その後−10℃で19時間に設定する。このときの真空制御値を0.1Torrとする。二次乾燥は棚温−10℃から+20℃に1時間で上昇させ,その後+20℃で12時間に設定する。このときの真空度は成り行きとする。二次乾燥終了後はゴム栓で密封する。
【0064】
〔製剤実施例10〕
下記の手順で,ポリ乳酸微粒子含有凍結乾燥組成物を製造する。
精製水にポリビニルアルコール及びD−マンニトールを,0.22%及び5.5%となるように添加して溶解させ,溶液を0.22μm水性フィルターでろ過しA液とする。別に,ポリ乳酸(例えばPLA0005,DL−ポリ乳酸,重量平均分子量5000,和光純薬(株)製〕をアセトン・エタノール混液(体積比でアセトン:エタノール=4:6)に10W/V%の濃度となるように溶解させ,得られた溶液を0.22μm非水性フィルターでろ過してB液とする。A液とB液を90:10の体積比で次のように混合する。すなわち,200mLのビーカーに入れたA液を,撹拌子(直径6mm長さ20mm)を用いてスターラー(中速度700〜800rpm)で攪拌しながら,マイクロピペットチップ(Eppendolf ep T.I.P.S standard 2-200 μL)を吐出側に装着したシリコンチューブ(外径6mm内径4mm)を取り付けたチューブポンプ(PERISTALTIC PUMP PST-100 IWAKI社製)を用い,B液を約1mL/分の速度でA液中に送液することにより,ポリ乳酸の微粒子を析出させる。この間,吐出口であるマイクロピペットチップの先端は完全に液中に浸漬させておく。この液を約30分間攪拌して懸濁液を得,これを篩(口径106μm)にかけ,凝集塊を除去し,懸濁液Dを得る。
【0065】
懸濁液Dをガラスバイアルに分注し,以下の条件で凍結乾燥に付す。
(a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社製)
(b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
(c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
(d)分注量:1.5mL/バイアル
(e)バイアル設置:装置のチャンバー内のトレイ1枚分が埋まるようバイアルを敷き詰める。
(f)予備凍結:試験は,凍結速度の粒子凝集への影響を確認するため,予備凍結は以下の方法で行う。
【0066】
(凍結乾燥条件)
a)試験装置:Triomaster-A04型(日精株式会社)
b)トレイ:引き抜きトレイ 枠290W×445L,1枚使用
c)バイアル:18φ×33H(ガラス)
d)分注量:1.5mL/バイアル
e)凍結乾燥本数:トレイ1枚分が埋まるよう実液またはダミー液(D−マンニトール水溶液2.5%)のバイアルを敷き詰める。
f)凍結乾燥プログラムの設定
<予備凍結>
常温棚にバイアルを仕込み,棚を冷却して薬液を凍結させる。棚温を+20℃から−40℃まで2時間かけて冷却する。
<一次乾燥及び二次乾燥>
懸濁液Dにつき,以下の凍結乾燥プログラムにて一次乾燥および二次乾燥を行う。
一次乾燥は,棚温−45℃または−40℃から−10℃に1時間で上昇させ,その後−10℃で19時間に設定する。このときの真空制御値を0.1Torrとする。二次乾燥は棚温−10℃から+20℃に1時間で上昇させ,その後+20℃で12時間に設定する。このときの真空度は成り行きとする。二次乾燥終了後はゴム栓で密封する。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の製造方法は,凍結乾燥時におけるポリ乳酸微粒子の凝集を抑制でき,注射針を詰まらせる粗大粒子を含まないポリ乳酸微粒子含有の再分散性のある凍結乾燥組成物を与えるため,硝子体除去手術等の眼科手術における使用に適した透明組織可視化剤の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸微粒子水性懸濁液の凍結乾燥時におけるポリ乳酸の粗大粒子の生成を抑制する方法であって,
(a) 分散剤と賦形剤とを含有するポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製するステップであって,
(i) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤を含有する分散剤水溶液に撹拌下で添加した後,賦形剤を添加するか,又は
(ii) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤及び賦形剤を含有する分散剤/賦形剤水溶液に撹拌下で添加することによるものであるステップと,
(b) 該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すステップと,
を含んでなり,
ステップ(b)において,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を入れた該ガラス容器が凍結乾燥機のチャンバー内に置かれ,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液が凍結する時の該チャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分に調節されるものである,方法。
【請求項2】
該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液中の該分散剤の濃度が0.11〜2.2W/V%である,請求項1の方法。
【請求項3】
該分散剤がポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールである,請求項1又は2の方法。
【請求項4】
該分散剤/賦形剤水溶液中の該賦形剤の濃度が1.1〜11W/V%である,請求項1ないし3の何れかの方法。
【請求項5】
該賦形剤が多価アルコールである,請求項1ないし4の何れかの方法。
【請求項6】
該多価アルコールがマンニトールである,請求項5の方法。
【請求項7】
該ポリ乳酸溶液中の該ポリ乳酸の濃度が1〜50W/V%である,請求項1ないし6の何れかの方法。
【請求項8】
該水混和性有機溶媒がアセトン・エタノール混液である,請求項1ないし7の何れかの方法。
【請求項9】
該アセトン・エタノール混液におけるアセトンとエタノールの混合比が,体積で,アセトン:エタノール=3:7〜5:5である,請求項8の方法。
【請求項10】
該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液と該ポリ乳酸溶液の混合比が,体積で,該水溶液:ポリ乳酸溶液=85:15〜95:5である,請求項1ないし9の何れかの方法。
【請求項11】
該ガラス容器がガラスバイアルである,請求項1ないし10の何れかの方法。
【請求項12】
眼の透明組織可視化剤用ポリ乳酸粒子の製造方法であって,
(a) 分散剤と賦形剤とを含有するポリ乳酸微粒子水性懸濁液を調製するステップであって,
(i) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤を含有する分散剤水溶液に撹拌下で添加した後,賦形剤を添加するか,又は
(ii) ポリ乳酸を水混和性有機溶媒に溶解させてなるポリ乳酸溶液を,分散剤及び賦形剤を含有する分散剤/賦形剤水溶液に撹拌下で添加することによるものであるステップと,
(b) 該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液をガラス容器中で凍結乾燥に付すステップと,
を含んでなり,
ステップ(b)において,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液を入れた該ガラス容器が凍結乾燥機のチャンバー内に置かれ,該ポリ乳酸微粒子水性懸濁液が凍結する時の該チャンバー内の冷却速度が0.1〜1℃/分に調節されるものである,製造方法。
【請求項13】
該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液中の該分散剤の濃度が0.11〜2.2W/V%である,請求項12の製造方法。
【請求項14】
該分散剤がポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールである,請求項12又は13の製造方法。
【請求項15】
該分散剤/賦形剤水溶液中の該賦形剤の濃度が1.1〜11W/V%である,請求項12ないし14の何れかの製造方法。
【請求項16】
該賦形剤が多価アルコールである,請求項12ないし15の何れかの製造方法。
【請求項17】
該多価アルコールがマンニトールである,請求項16の製造方法。
【請求項18】
該ポリ乳酸溶液中の該ポリ乳酸の濃度が1〜50W/V%である,請求項12ないし17の何れかの製造方法。
【請求項19】
該水混和性有機溶媒がアセトン・エタノール混液である,請求項12ないし18の何れかの製造方法。
【請求項20】
該アセトン・エタノール混液におけるアセトンとエタノールの混合比が,体積で,アセトン:エタノール=3:7〜5:5である,請求項19の製造方法。
【請求項21】
該分散剤水溶液又は該分散剤/賦形剤水溶液と該ポリ乳酸溶液の混合比が,体積で,該水溶液:ポリ乳酸溶液=85:15〜95:5である,請求項12ないし20の何れかの製造方法。
【請求項22】
該ガラス容器がガラスバイアルである,請求項12ないし21の何れかの製造方法。

【公開番号】特開2012−214525(P2012−214525A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181971(P2009−181971)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】