説明

ポリ乳酸樹脂組成物、およびその製造方法、並びにポリ乳酸二軸延伸フィルム、およびそれからなる成形品

本発明は、バイオマス系材料である(A)ポリ乳酸と(B)セルロースエステルが配合されている樹脂組成物とその成形品、(A)ポリ乳酸と(B)セルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種が配合されている樹脂組成物からなる成形品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリ乳酸とセルロースエステルを主成分とするポリ乳酸樹脂組成物、その製造方法それからなる成形品、フィルム、及びシートに関するものである。
【背景技術】
ポリ乳酸は、高い融点を持ち、また溶融成形可能で実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。しかしながら、ポリ乳酸は結晶化速度が遅く、結晶化させて成形品等に用いるには限界があった。例えば射出成形する場合、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とするだけでなく、成形時や熱処理時の変形が大きく耐熱性に劣るなど、実用的には大きな問題があった。そのため、実用的な成形サイクル内での成形で、耐熱性を改良する方法が望まれていた。またフィルムとして用いた場合、ポリ乳酸フィルムは各種生分解性フィルムの中でも最も引っ張り強度や弾性率が高く、光沢、透明性にも優れているとされているが、樹脂のガラス転移温度が比較的低いために耐熱用途として用いるには限界があった。そのため、耐熱性(熱変形温度)の向上が求められている。
一方、セルロースおよびセルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料であり、また生分解性ポリマーであることから大きな注目を集めている。またこれらのセルロース誘導体を溶融成形する方法としては、特開昭53−11564号公報に記載の様に、セルロースアセテートにポリエチレングリコールのような水溶性可塑剤を配合して溶融紡糸する方法が知られている。しかしながら、ポリエチレングリコールの様な吸湿性の高い可塑剤を使用することは用途が制限されることから好ましくなく、より汎用的な方法が望まれていた。
ところで2種もしくはそれ以上のポリマー同士を混合することは、ポリマーブレンドまたはポリマーアロイとして広く知られており、個々のポリマーの欠点を改良する方法として広く利用されている。しかしながら、一般的に2種のポリマーを混合した場合、多くは個々の相に分離し、一方の相が数μm以上の不均一な粗大分散構造を有するのが一般的である。この様な分散形態の場合、不透明であり、また機械強度も低く、さらには溶融混練時の吐出時にバラス効果を起こしやすく生産性に劣るものとなるのが多い。一方、極まれに2種のポリマーが均一に混合する場合があり、この種のものは、一般的に相溶性ポリマーまたは混和性ポリマーと呼ばれ、優れた特性を示すことが期待されるが、その例は限られたものである。
特開平11−241008号公報には、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステルからなるポリマー成分と可塑剤からなる樹脂組成物に、天然物を添加することにより、柔軟性と耐熱性を有した生分解性樹脂組成物を得る方法が記載されている。しかしながら該文献においては、天然物として澱粉(馬鈴薯、とうもろこし、さつまいも、タピオカ等から得られる)、キチン、キトサン、セルロース類が挙げられ、セルロース類としてセルロースエステルの範疇に含まれるアセチルセルロースが例示されているのみであり、実際に配合した具体例はない。つまり該公報中には、ポリ乳酸とアセチルセルロースを溶融混練することにより、優れた相溶性または混和性を示し、かつ優れた耐熱性を有することについては一切言及されていない。
また特開2003−82160号公報、および、国際公開第92/09654号パンフレットには、セルロースエステルにポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルをブレンドすることでセルロースエステルの成形性を向上させる方法が記載されている。しかしながら該文献においては、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを可塑剤として用いることで、溶融成形温度が高いセルロースエステルの成形性を向上させることが示されているのみであり、ポリ乳酸とセルロースエステルを混合させることでポリ乳酸の耐熱性を向上させる技術思想については全く開示されていない。
一方、ポリ乳酸と相溶性を有する樹脂を混合する方法としては、「ポリマー」(Polymer)39巻(26),p6891(1998)および、「マクロモレキュール・ケミカル・フィジックス」(Macromol.Chem.Phys.)201巻,p.1295(2000)などに、ガラス転移温度が約100℃であるポリメチルメタクリレートと混合することで、その樹脂組成物のガラス転移温度が向上することが記載され、また特開平8−59949号公報には、ポリ乳酸を含むα−ヒドロキシカルボン酸重合体とポリ(メタ)アクリレート樹脂の混合によって加水分解性に優れた樹脂が生成することが記載され、特開2002−155207号公報にはポリ乳酸にアクリル系化合物を配合し、耐候性、成形加工性に優れる樹脂組成物が得られることが記載され、特開平6−322217号公報に主鎖中にカルボニル化合物を有する重合体にビニルアルコール系重合体を混合することで耐水性に優れた樹脂組成物が生成することが記載されているが、いずれも耐熱性や高温剛性向上に関する技術思想については全く開示されておらず、その解決手段についての示唆もない。
そこで本発明は、優れた透明性、機械特性、耐熱性に優れたポリ乳酸樹脂組成物、二軸延伸フィルムおよび成形品を提供すること課題とする。
【発明の開示】
本発明者らは、ポリ乳酸樹脂とセルロースエステルを配合してなる樹脂組成物が優れた相溶性または混和性を有し、かつ優れた耐熱性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとを配合してなるポリ乳酸樹脂組成物である。
さらに、本発明者らは、ポリ乳酸樹脂とセルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上を配合してなる二軸延伸フィルムが優れた透明性と耐熱性を有し、かつ、ポリ乳酸のガラス転移温度以上での剛性保持が可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上を配合してなるポリ乳酸二軸延伸フィルムであり、透明性と耐熱性を両立する観点から、好ましくは前記(A)成分と前記(B)成分の含有量の和に対する前記(B)成分の含有量が1重量%以上50重量%未満のポリ乳酸二軸延伸フィルムである。
具体的には図1、図2で示したとおりである。実施例1の組成物における各成分の分散形態を示す図1においては、構造が観察されず、さらに、実施例3の組成物における各成分の分散形態を示す図2においては規則的な両相連続構造が観察された
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真である。
図2は、実施例3の組成物における各成分の分散形態を示す位相差光学顕微鏡写真である。
図3は、実施例1、2、3のシートの写真である。
【符号の説明】
1・・・(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂(PLA−1)
2・・・(B)セルロースエステル(CAP−1)
3・・・光散乱測定による構造周期(=1.1μm)
4・・・実施例1のポリ乳酸樹脂組成物からなるシートの写真(光線透過率(400nm)=83%)
5・・・実施例2のポリ乳酸樹脂組成物からなるシートの写真(光線透過率(400nm)=68%)
6・・・実施例3のポリ乳酸樹脂組成物からなるシートの写真(光線透過率(400nm)=52%)
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂は、実用的な機械特性を満足させるため、重量平均分子量が5万以上であることが必要であり、好ましくは8万以上、さらに10万以上であることがより好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
また本発明のポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。上記他の共重合成分の共重合量は、全単量体成分に対し、30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることが好ましい。
本発明において、特に高い耐熱性を有する樹脂組成物および二軸延伸フィルムを得るためには、ポリ乳酸樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが更に好ましい。
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は通常、乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより得ることができる。
本発明におけるセルロースエステルとは、セルロースの水酸基がエステル化剤によって封鎖されているものを言う。具体的なエステル化剤としては、酸塩化物(例えば塩化アセチル、塩化プロピオニルなど)、酸無水物(例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など)、カルボン酸化合物(例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、カルボン酸化合物誘導体(例えばアミド化合物、エステル化合物など)、環状エステル(例えばε−カプロラクトンなど)などが挙げられる。
具体的なセルロースエステルの種類としては、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等が挙げられ、相溶性または混和性の観点から中でもセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、さらにはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。
またセルロースにおける水酸基の置換度(セルロースエステルに置換された水酸基の平均個数)は、グルコース単位あたり0.5〜2.9であることが好ましい。またポリ乳酸とのより良好な相溶性または混和性を付与するためには、置換度は1.8〜2.9であることが好ましく、また2.0〜2.8であることがより好ましい。
また上記置換度は、アルカリ加水分解により生成したエステル化剤を高速液体クロマトグラフィーに供し定量することによって求めることができる。
本発明においては、後述の透明性を向上させる目的で、さらにポリ乳酸樹脂とセルロースエステルの相溶性を改良する1種または2種以上の相溶化剤を配合することが好ましい。かかる相溶化剤の好ましい例としては、有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをグラフトまたは共重合により含む高分子化合物が挙げられる。
有機金属化合物としては、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物が好ましい例として挙げられる。有機チタン化合物の具体例としては、チタンアルコキシドが好ましい例として挙げられ、チタンアルコキシドは一般式Ti(OR)mであらわされる。ここでmは整数でありアルコラート基の配位数をあらわし、一般的には1〜4である。Rは任意のアルキル基から選択される。Rとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などがあり、さらにこれらが連続したダイマー、トリマー、テトラマーなどがある。特にチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラブトキシドテトラマーが好ましい例として挙げられる。有機アルミニウム化合物の具体例としては、アルミニウムアルコレート(トリアルコキシアルミニウム)類、アルミニウムキレート類が挙げられる。アルミニウムアルコレート(トリアルコキシアルミニウム)類としては、たとえばアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等が挙げられ、アルミニウムキレート類としては、たとえばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが好ましく、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートとしては、川研ファインケミカル若しくは味の素ファインテクノ製の“プレンアクト”AL−Mが好ましい例として挙げられる。
メタクリル樹脂ユニットをグラフトまたは共重合により含む高分子化合物としては、少なくとも1種以上のメタクリル樹脂ユニットをグラフト共重合体の分岐鎖として含む場合、または少なくとも1種以上のメタクリル樹脂ユニットをブロック共重合により主鎖中に含む場合がある。中でも市場での入手性の観点から、少なくとも1種以上のメタクリル樹脂をグラフト共重合体の分岐鎖として含む高分子化合物が好ましく、この場合、主鎖となる高分子の例としてはポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂などを挙げることができる。
かかるポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
また、前記ポリスチレンとは、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、スチレン系モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
さらに、前記アクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリル酸等のアクリル系樹脂モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、アクリル系樹脂モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
またここでグラフト及び共重合等によって導入されるメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独、またはメタクリル酸メチルと他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体の混合物を重合して得られるものであり、好ましくは80重量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものである。他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、及びアクリロニトリルが挙げられる。導入されるメタクリル樹脂は、一種に限らず、複数種でも可能である。
メタクリル樹脂をグラフトまたは共重合により変性した高分子の具体例としては、ポリエチレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PE−g−PMMA)(“g”は、グラフトを表す、以下同じ)、ポリプロピレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PP−g−PMMA)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−ポリメタクリル酸メチル(EPM−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EEA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EVA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EA/GMA−g−PMMA)等が挙げられ、特にポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)が好ましい例として挙げられる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合した後、溶媒を除去して組成物を製造することにより製造することも可能であるが、溶媒へ原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である溶融混練法を採用することが好ましい。溶融混練法は、各成分を溶融混練することにより製造する方法である。その溶融混練方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いることができる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用が好ましい。またその混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸とセルロースエステルをドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸とセルロースエステルを溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とを溶融混練する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とセルロースエステルとを溶融混練する方法を用いてもよい。また溶融混練時の温度は190℃〜240℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸の劣化を防ぐ意味から、200℃〜220℃の範囲とすることがより好ましい。
本発明の溶融混練を経て製造されたポリ乳酸樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れていることから、透明性に優れており、ポリ乳酸樹脂組成物を用いて0.2mm厚さのシートとした場合、通常波長400nmの可視光線における光線透過率が40%以上のものを得ることができる。また好ましい態様においては、波長400nmの可視光線における光線透過率が50%以上のものを得ることができる。さらに好ましい態様においては波長400nmの可視光線における光線透過率が60%以上のものをも得ることができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れており、配合するセルロースエステルの種類や配合量によってはポリ乳酸樹脂とセルロースエステルが相溶化および/または0.01μm以下の相構造を有する場合があり、この場合、特に透明性に優れることから各種透明用途で好適に用いられることから好ましい。ここで「相溶化」とは、分子レベルで両成分が均一に混合していることを意味する。具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していないことをいう。また、「非相溶」とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことをいう。相溶しているか否かは、例えば「ポリマーアロイとポリマーブレンド」(L.A.Utracki著,西敏夫訳,東京化学同人,1991年,p.111)に記載のように、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。この相溶性最も一般的な方法としては、ガラス転移温度で判断する方法が挙げられる。相溶化している場合には、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、DSCで測定する方法、動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
また本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、セルロースエステルの種類や配合量によってはポリ乳酸樹脂とセルロースエステルが、構造周期0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜3μmの分散構造を有する場合があり、この場合も優れた機械特性と耐熱性を両立することから好ましい。これらの両相連続構造や分散構造は、溶融混練時に一旦相溶化後、スピノーダル分解により相分離すること等によって生じたものと推定されるが、これに限定されるものではない。またこれらの両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認や、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れること等によって確認することができる。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λmは、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θmを用いて次式
Λm=(λ/2)/sin(θm/2)
により計算することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物およびポリ乳酸二軸延伸フィルム中の組成物配合量に関しては特に制限はないが、ポリ乳酸樹脂と(B)成分の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂99重量部以下50重量部超及び(B)成分1重量部以上50重量部未満とする場合には、ポリ乳酸樹脂の特性を改良する点で有用であり、特にポリ乳酸樹脂の透明性や機械特性や耐熱性の改良に特に効果がある。上記特性のさらなる改良の観点から、より好ましくはポリ乳酸樹脂90重量部以下60重量部超及び(B)成分10重量部以上40重量部未満、さらに好ましくはポリ乳酸樹脂85重量部以下65重量部超及び(B)成分15重量部以上35重量部未満である。
正確な配合量を特定する方法の一つにNMRによる特定が挙げられる。例えば、ポリ乳酸とポリメチルメタクリレートの配合量を特定するには、重クロロホルム溶媒中55℃で1H核のNMR測定を行い、ポリ乳酸に由来するピーク(例えばメチン基に由来するピーク)とポリメチルメタクリレートに由来するピーク(例えばメトキシ基に由来するピーク)の強度比から算出することができる。1H核のピークが重複して算出できない場合は、さらに13C核の測定を行い、特定することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、天然由来の有機充填剤を配合することも可能である。天然由来の有機充填剤としては、天然物に由来するものであり、好ましくはセルロースを含むものであって、特に制限されるものではない。
天然由来の有機充填剤の具体例としては、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものが挙げられ、成形性の観点から、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のもの、麻繊維、ケナフ繊維、ジュート繊維が好ましく、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ繊維がより好ましく、紙粉、木粉、ケナフ繊維がさらに好ましく、紙粉が特に好ましい。また、これらの天然由来の有機充填剤は、天然物から直接採取したものを用いてもよいが、地球環境の保護や資源保全の観点から、古紙、廃木材および古衣などの廃材をリサイクルして用いてもよい。
古紙とは、新聞紙、雑誌、その他の再生パルプ、もしくは、段ボール、ボール紙、紙管などの板紙であり、植物繊維を原料として加工されたものであれば、いずれを用いてもよいが、成形性の観点から、新聞紙および段ボール、ボール紙、紙管などの板紙の粉砕品が好ましい。
また、木粉に使用される木材の具体例としては、松、杉、檜、もみ等の針葉樹材、ブナ、シイ、ユーカリなどの広葉樹材などがあり、その種類は問わない。 紙粉としては、特に限定されるものではないが、成形性の観点から、接着剤を含むことが好ましい。接着剤としては、紙を加工する際に通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョンなどのエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、セルロース系接着剤、天然ゴム系接着剤、澱粉糊およびエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤やポリアミド系接着剤などのホットメルト接着剤などを挙げることができ、エマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤およびホットメルト接着剤が好ましく、エマルジョン系接着剤およびポリビニルアルコール系接着剤がより好ましい。なお、これらの接着剤は、紙加工剤用のバインダーなどとしても使用されるものである。また、接着剤には、クレイ、ベントナイト、タルク、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化ネオジウムなどの無機充填剤が含まれていることが好ましく、クレイ、ベントナイト、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカおよびシリカがより好ましい。
また、紙粉としては、成形性の観点から、灰分が5重量%以上であることが好ましく、5.5重量%以上であることがより好ましく、8重量%以上であることがさらに好ましい。上限については、特に限定されるものではないが、60重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。ここで、灰分とは、電気炉などを用いて450℃以上の高温で8時間、有機充填剤10gを焼成した時の残存する灰分の重量の焼成前の紙粉の重量に対する割合である。
また、紙粉としては、紙粉中に5〜20重量%の無機化合物を含有するものが好ましく、無機化合物の元素としてアルミニウム、ケイ素、カルシウムを含有するものがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄を含有するものがさらに好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムを含有するものが特に好ましく、さらにアルミニウムの含有量がマグネシウムの含有量の2倍以上のものが特に好ましい。
アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムの存在量比としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記元素の総数を100とした場合、アルミニウムが1〜60モル%、ケイ素が20〜90モル%、カルシウムが1〜30モル%、硫黄が1〜20モル%、マグネシウムが0〜20モル%であることが好ましく、アルミニウムが10〜55モル%、ケイ素が20〜85モル%、カルシウムが1〜25モル%、硫黄が1〜15モル%、マグネシウムが0〜10モル%であることがより好ましく、アルミニウムが20〜50モル%、ケイ素が25〜80モル%、カルシウムが3〜20モル%、硫黄が2〜10モル%、マグネシウムが0〜8モル%であることがさらに好ましい。これらの元素分析については、天然由来の有機充填剤の単体、天然由来の有機充填剤の灰分のいずれを用いても測定することができるが、本発明においては灰分を用いる。なお、元素分析は、蛍光X線分析、原子吸光法、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分散形X線マイクロアナライザー(XMA)を組み合わせた装置を用いることにより、測定することができるが、本発明においては蛍光X線分析を用いる。
また、紙粉としては、成形性の観点から、表面上に微粒子が付着するセルロースを含むことが好ましい。微粒子とは、特に限定されるものではなく、前述したような接着剤に含まれる無機充填剤であってもよいし、有機物もしくはその他の無機物のいずれであってもよいが、粒子がケイ素とアルミニウムを含有するものが好ましい。微粒子の形状は、針状、板状、球状のいずれでもよい。微粒子のサイズは、特に限定されるものではないが、0.1〜5000nmの範囲に分布していることが好ましく、0.3〜1000nmの範囲に分布していることがより好ましく、0.5〜500nmの範囲に分布していることがさらに好ましく、1〜100nmの範囲に分布していることが特に好ましく、1〜80nmの範囲に分布していることが最も好ましい。なお、ここで特定の範囲に「分布している」とは、微粒子総数の80%以上が特定の範囲に含まれることを意味する。微粒子の付着形態は、凝集状態もしくは分散状態のいずれでもよいが、分散状態で付着していることがより好ましい。上記微粒子のサイズは、天然由来の樹脂と天然由来の有機充填剤を配合した樹脂組成物から得られる成形品を透過型電子顕微鏡により8万倍の倍率で観察することができ、観察する微粒子の総数は、任意の100個とする。
また、紙粉以外のその他の天然物由来の有機充填剤においても、上記特徴、すなわち、灰分量、その組成を有するもの、微粒子が付着したものを選択して用いることが好ましい。
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、その他の有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤等)、滑剤、離形剤、難燃剤、染料および顔料を含む着色剤、核化剤などを添加することができる。
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
本発明の樹脂組成物は、相溶性または混和性に優れ溶融混練可能であることから、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、繊維、シートなどとして利用できる。またフィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸、インフレーションフィルムなどの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。また、これらの物品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、日用品など各種用途に利用することができる。
さらに本発明者らは、ポリ乳酸樹脂とセルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上を配合してなる二軸延伸フィルムが優れた耐熱性を有して、ポリ乳酸のガラス転移温度以上での剛性保持が可能となることを見出し、ここに開示するものである。
本発明の二軸延伸フィルムに用いられるセルロースエステルとは、セルロースの水酸基がエステル化剤によって封鎖されているものを言う。ここで封鎖とは、水酸基とエステル化剤が化学結合してエステル結合を形成することと定義する。高耐熱性を維持するため、炭素数1〜10のエステル化剤を用いることが好ましい。具体的なエステル化剤としては、酸塩化物(例えば塩化アセチル、塩化プロピオニルなど)、酸無水物(例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸など)、カルボン酸化合物(例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、カルボン酸化合物誘導体(例えばアミド化合物、エステル化合物など)、環状エステル(例えばε−カプロラクトンなど)などが挙げられる。
本発明で用いられる具体的なセルロースエステルの種類としては、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート等が挙げられ、相溶性または混和性の観点から中でもセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、さらにはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートがより好ましい。
またセルロースにおける水酸基の置換度(セルロースエステルに置換された水酸基の平均個数)は、グルコース単位あたり0.5〜2.9であることが好ましい。またポリ乳酸とのより良好な相溶性または混和性を付与するためには、置換度は1.8〜2.9であることが好ましく、また2.0〜2.8であることがより好ましい。上記置換度は、アルカリ加水分解により生成したエステル化剤を高速液体クロマトグラフィーに供し定量することによって求めることができる。
本発明におけるポリ(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の単量体を構成単位とするものであり、2種以上の単量体を共重合して用いても構わない。ポリ(メタ)アクリレートを構成するに使用されるアクリレートおよびメタクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノブチルアクリレートなどのアクリレート、およびメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのメタクリレートが挙げられるが、より高い高温剛性を付与するには、ポリメチルメタクリレートを用いることが好ましい。
本発明で用いられるポリ(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が20000〜500000であることが好ましく、100000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が20000未満では成形品の強度が低下する場合があり、重量平均分子量が500000を超えると成形時の流動性が低下する場合がある。
これらの単量体を重合あるいは共重合する方法については特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合等の公知の重合方法を用いることができる。
本発明におけるポリビニル化合物は、ビニル化合物の重合体であり、その中でもガラス転移温度が60℃以上となる化合物をもちいることが必要である。ガラス転移温度が60℃未満の場合、ポリ乳酸と相溶化した場合でもポリ乳酸の耐熱性を向上させる効果が小さくなり好ましくない。ガラス転移温度が60℃以上となるポリビニル化合物の具体例としては、ポリスチレン、ポリ(4−アセチルスチレン)、ポリ(2−メチルスチレン)、ポリ(3−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)、ポリ(2−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシメチルスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシメチルスチレン)等の各種スチレン系重合体、およびポリ(ベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(シクロヘキサノイルオキシエチレン)、ポリ(4−エトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(2−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−メトキシベンゾイルオキシエチレン)、ポリ(4−フェニルベンゾイルオキシエチレン)等の各種ポリビニルエステル等が挙げられるが、ポリ乳酸樹脂との相溶性の観点からポリ(4−ヒドロキシスチレン)(ポリビニルフェノール)を用いることが好ましい。
本発明のポリ乳酸フィルムは、耐熱性の観点からフィルムの長手方向、幅方向の両方向に延伸した二軸延伸フィルムであることが必要である。二軸延伸以外のフィルムをポリ乳酸のガラス転移温度以上で用いた場合、熱変形や熱結晶化が起こり、品質安定性の面から好ましくないためである。
本発明においては、後述の透明性を向上させる目的で、さらにポリ乳酸樹脂と、セルロースエステルおよび/またはポリ(メタ)アクリレートおよび/またはポリビニル化合物(以下、アロイ成分と記す)との相溶性を改良する1種または2種以上の相溶化剤を配合することが好ましい。かかる相溶化剤の好ましい例としては、有機金属化合物および/またはメタクリル樹脂ユニットをグラフトまたは共重合により含む高分子化合物が挙げられる。
有機金属化合物としては、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物が好ましい例として挙げられる。有機チタン化合物の具体例としては、チタンアルコキシドが好ましい例として挙げられ、チタンアルコキシドは一般式Ti(OR)mであらわされる。ここでmは整数でありアルコラート基の配位数をあらわし、一般的には1〜4である。Rは任意のアルキル基から選択される。Rとしては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などがあり、さらにこれらが連続したダイマー、トリマー、テトラマーなどがある。特にチタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラブトキシドテトラマーが好ましい例として挙げられる。有機アルミニウム化合物の具体例としては、アルミニウムアルコレート(トリアルコキシアルミニウム)類、アルミニウムキレート類が挙げられる。アルミニウムアルコレート(トリアルコキシアルミニウム)類としては、たとえばアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等が挙げられ、アルミニウムキレート類としては、たとえばエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等を挙げることができる。特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが好ましく、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートとしては、川研ファインケミカル若しくは味の素ファインテクノ製の“プレンアクト”AL−Mが好ましい例として挙げられる。
メタクリル樹脂ユニットをグラフトまたは共重合により含む高分子化合物としては、少なくとも1種以上のメタクリル樹脂ユニットをグラフト共重合体の分岐鎖として含む場合、または少なくとも1種以上のメタクリル樹脂ユニットをブロック共重合により主鎖中に含む場合がある。中でも市場での入手性の観点から、少なくとも1種以上のメタクリル樹脂をグラフト共重合体の分岐鎖として含む高分子化合物が好ましく、この場合、主鎖となる高分子の例としてはポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル系樹脂などを挙げることができる。
かかるポリオレフィンとは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらα−オレフィンの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、α−オレフィンや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
また、前記ポリスチレンとは、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリル酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、スチレン系モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
さらに、前記アクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、グリシジルメタクリル酸等のアクリル系樹脂モノマーの単独重合体、ランダムまたはブロック等の形態をなす相互共重合体、これらの過半重量と他の不飽和単量体とのランダム、ブロックもしくはグラフト等の共重合体化したものを指し、ここで他の不飽和単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド、スチレン、メチルスチレン、グリシジル置換スチレン等の不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル等のビニルシラン;ジシクロペンタジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエンなどを用いることができる。共重合の場合には、アクリル系樹脂モノマーや他の単量体は、2種に限らず、複数種からなるものであってもよい。
またここでグラフト及び共重合等によって導入されるメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル単独、またはメタクリル酸メチルと他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体の混合物を重合して得られるものであり、好ましくは80重量%以上のメタクリル酸メチルを含有するものである。他の共重合性のビニルまたはビニリデン系単量体としては、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数1〜8のアクリル酸アルキルエステル、スチレン、及びアクリロニトリルが挙げられる。導入されるメタクリル樹脂は、一種に限らず、複数種でも可能である。
メタクリル樹脂をグラフトまたは共重合により変性した高分子の具体例としては、ポリエチレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PE−g−PMMA)(“g”は、グラフトを表す、以下同じ)、ポリプロピレン−g−ポリメタクリル酸メチル(PP−g−PMMA)、ポリ(エチレン/プロピレン)−g−ポリメタクリル酸メチル(EPM−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EEA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/酢酸ビニル)−g−ポリメタクリル酸メチル(EVA−g−PMMA)、ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)、ポリ(アクリル酸エチル/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EA/GMA−g−PMMA)等が挙げられ、特にポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメタクリル酸メチル(EGMA−g−PMMA)が好ましい例として挙げられる。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、各成分を溶媒に溶かした溶液を均一混合し溶媒を除去後、製膜して得ることも可能であるが、溶媒へ原料の溶解、溶媒除去等の工程が不要で、実用的な製造方法である溶融製膜法を採用することが好ましい。溶融製膜法は、各成分を溶融混練することにより製造する方法である。その溶融製膜方法については、特に制限はなく、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機等の通常使用されている公知の混合機を用いて樹脂組成物を得た後、溶融混合樹脂をスリット状の口金に導き、冷却キャスティングドラム上にシート状に押出し、Tダイ法やタッチロールキャスト法等を用いてシートを得る方法等が挙げられる。中でも生産性の観点から、単軸または二軸押出機の使用してシート化することが好ましい。また樹脂の混合順序についても特に制限はなく、例えばポリ乳酸とアロイ成分をドライブレンド後、溶融混練機に供する方法や、予めポリ乳酸とアロイ成分を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とを溶融混練後、製膜する方法等が挙げられる。また必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予めポリ乳酸とその他の添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製後、該マスターバッチとポリ乳酸とアロイ成分とを溶融混練する方法を用いてもよい。また溶融混練時の温度は190℃〜240℃の範囲が好ましく、またポリ乳酸の劣化を防ぐ意味から、200℃〜220℃の範囲とすることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムの結晶化度はフィルムの耐熱性の観点から50%以上であることが好ましく、60%以上がさらに好ましい。結晶化度の上限は特に制限されないが、好ましくは90%以下である。結晶化度の測定は、一般的に知られている密度法、DSC法およびX線回析法等、公知の測定法のいずれを用いても構わないが、例えばX線で解析する際、X線に対する結晶領域と非晶領域の異なる散乱に分離し、それぞれの積分強度を求めることで算出することができる。かかる結晶化度を達成するための方法は特に限定されないが、好ましく用いられる方法として、フィルム成形後に熱処理を行うことが挙げられる。かかる熱処理温度は、ポリ乳酸樹脂組成物の融点以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは100〜150℃である。かかる熱処理は、フィルムを長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、透明性に優れており、フィルムヘイズが好ましい態様において10%以下となり、さらに好ましくは7%以下となり特に好ましくは5%以下となる。ここで、フィルムヘイズとはあらかじめ厚みを測定したフィルムサンプルのヘイズ値厚み10μmのフィルムとした場合の換算値のことを指すが、換算前の実際の測定値においても10%以下であることが好ましい。
ポリ乳酸単体のガラス転移温度は概ね60℃程度であり、60℃を超えると著しく弾性率が低下する傾向となるが、本発明の二軸延伸フィルムはポリ乳酸のガラス転移温度以上での弾性率が高くなり、ガラス転移温度以上で使用時の熱変形等が生じにくくなる等の高温での耐熱性や剛性が著しく改良される。この観点から、本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、80℃での弾性率が300MPa以上となることが好ましく、500MPa以上となることがさらに好ましく、700MPa以上となることが特に好ましい。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルム中には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。ポリ乳酸フィルムの機械的特性の観点から、かかる粒子の添加量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜1重量%である。
また、添加する粒子の平均粒子径は、好ましくは0.001〜10μmであり、さらに好ましくは0.01〜2μmである。平均粒子径がかかる好ましい範囲であると、フィルムの欠陥が生じにくくなり、透明性の悪化、成形性の悪化などを引き起こすことはない。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムには、本発明の目的・効果を損なわない範囲で必要に応じて添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
また、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなどの熱可塑性樹脂やフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質熱可塑性樹脂などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
また、フィルム構成としては、単層であってもかまわないし、表面に易滑性、接着性、粘着性、耐熱性、耐候性など新たな機能を付与するために積層構成としてもよい。例えば、ポリ乳酸樹脂とアロイ成分からなるA層に、樹脂または添加剤の組成の異なるB層、C層を積層した場合には、A/Bの2層、B/A/B、B/A/C、あるいはA/B/Cの3層などが例として挙げられる。さらには必要に応じて3層より多層の積層構成であってもよく、各層の積層厚み比も任意に設定できる。
また、本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、接着性や加工性、特に加工時のフィルムしわ発生を抑制する点から、成形温度での少なくとも一方向の熱収縮率が−10〜10%の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、熱収縮率は−5〜+5%の範囲である。熱収縮率が、この範囲である場合、フィルム表面が膨れて外観を損ねたり、基材と剥離したり、印刷が歪んでしまうなどの問題を生じることなく、良好な加工性を付与できる。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、成形して用いてもよい。該成形品は加熱下での熱変形が著しく抑制され、耐熱容器として使用することができる。成形方法についても特に制限はなく、ストレート成形、フリードローイング成形、プラグアンドリング成形、スケルトン成形、プラグアシスト成形等、公知の各種成形法を用いることができる。
次に、ポリ乳酸樹脂とアロイ成分を配合して二軸延伸フィルムを製造する場合を例にとって具体的に説明する。ポリ乳酸樹脂とアロイ成分を性状に応じた計量装置を用いて所定の比率で二軸押出機に供給する。二軸押出機としては、ポリ乳酸樹脂とアロイ成分を未乾燥で供給可能であるためベント式二軸押出機を好ましく用いることができる。供給されたポリ乳酸樹脂とアロイ成分は樹脂組成物の溶融粘度に応じて押出温度190〜220℃で溶融混合させた後、溶融混合樹脂をスリット状の口金に導き、冷却キャスティングドラム上にシート状に押出し、未延伸フィルムを成型する。Tダイ法を用いた場合、急冷時に静電印加密着法またはタッチロールキャスト法を用いることができ、特に静電印加密着法によると厚みの均一な未延伸フィルムを得ることができる。
次いで未延伸フィルムを延伸装置に送り、同時または逐次二軸延伸などの方法で延伸する。逐次二軸延伸の場合、その延伸順序は、フィルムを長手方向および幅方向の順、またはこの逆の順としてもよい。さらに、逐次二軸延伸においては、長手方向または幅方向の延伸を2回以上行うことも可能である。
延伸方法については特に制限はなく、ロール延伸、テンター延伸等の方法を採用することができる。また延伸時のフィルム形状は、フラット状、チューブ状等、どのようなものであってもよい。フィルムの長手方向および幅方向の延伸倍率は、目的とする耐熱性、加工性、蒸着適性などに応じて任意に設定することができるが、厚み斑を良好とする上で好ましくは1.5〜6.0倍である。延伸温度は、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度以上、融点以下の範囲であれば任意の温度とすることができるが、好ましくは60〜150℃である。
本発明の二軸延伸フィルムの厚みは使用する用途に応じて自由にとることができる。厚みは通常0.5〜300μmの範囲であり、製膜安定性の面から好ましくは1〜200μm、さらに好ましくは5〜180μmである。
本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、コロナ放電処理などの表面処理を施すことにより、必要に応じて接着性や印刷性を向上させることが可能である。また、各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物の種類、塗布方法や厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。必要に応じてエンボス加工などの成形加工、印刷などを施して使用することができる。
上記のようにして得られた本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムは、単一フィルムあるいは複合フィルムにより透明性、耐熱性を必要とする各種工業材料、包装材料として用いることが可能である。
また、本発明のポリ乳酸二軸延伸フィルムからなる成形品もまた、透明性、耐熱性を必要とする各種材料として用いることが可能である。具体的には、食品を始め、衛生、生活雑貨、農業ならびに園芸分野等の様々な容器・包装資材として用いることができる。
本発明の樹脂組成物はバイオマス系材料であるポリ乳酸とセルロースエステルとを配合したものであり、透明性、機械特性、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。さらに、本発明の二軸延伸フィルムでは、ポリ乳酸とセルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上とを配合してなる樹脂組成物を二軸延伸することで、透明性、機械特性、耐熱性に優れたフィルムが得られる。
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[評価方法]
(1)ポリ乳酸の重量平均分子量
日本Warters(株)製、Warters2690を用い、PMMAを標準とし、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒を用いて測定した。
(2)セルロースエステルの置換度
試料0.3gに対し、2NのNaOHを40ml加え、70℃×2時間アルカリ加水分解後、1NHClを80ml加え中和し、溶液を、高速液体クロマトグラフィーでエステル化剤量を定量し、グルコース単位あたりの置換度を求めた。
(3)樹脂組成物のガラス転移点
樹脂組成物のガラス転移温度は、試料約5mgを、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計RDC220型を用い、窒素雰囲気下、−30℃で5分間保持後20℃/分の昇温速度下での測定から求めた。
(4)樹脂組成物の位相差顕微鏡測定
樹脂組成物の分散形態は、試料から厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、10分経過後の状態を位相差光学顕微鏡((株)ニコン製OptiShot、倍率;対物×10(Ph1)、リレー×10)により観察した。
(5)樹脂組成物の光散乱測定
試料から厚み100μmの切片を切り出し、大塚電子(株)製光散乱装置DYNA−3000を用い、下記式に従い構造周期または粒子間距離(Λm)を計算した。Λmは、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。
Λm=(λ/2)/sin(θm/2)
(6)樹脂組成物の光線透過率測定
試料より作成したシートを用い、(株)島津製作所製 分光光度計MPC3100により、波長400nmの可視光線の透過率を測定した。
(7)樹脂組成物の動的粘弾性率測定
試料より作成したシートを140℃に温調された熱風オーブン中で1時間熱処理後、長さ×幅×厚み=40mm×8mm×0.2mmのサンプルを切り出し、セイコーインスツルメンツ(株)製、EXSTAR6000粘弾性測定装置を用い、0℃から2℃/分の昇温速度で昇温し、1Hzの正弦波による動的粘弾性試験を行い、その貯蔵弾性率が1GPaに低下する温度を測定し、かかる温度を耐熱温度とした。
(8)樹脂組成物の機械特性
試料より作成したシートから、長さ×幅×厚み=50mm×10mm×0.2mmのサンプルを切り出し、23℃、50%RHの環境下、オリエンテック社製テンシロンUTA−4を用いて、チャック間距離20mm、引張速度10mm/分で引張強度、引張伸びを測定した。
(9)フィルムの結晶化度
フィルムのX線回析は、厚み50μmのフィルムから2cm×2cmの切片を切り出し、理学電機(株)社製広角X線回折装置(RINT2000/PC)を用い、標準測定モードにて測定した。結晶化度は該データを多重ピーク分離法(SHADOWプログラム)を用いて計算した。
(10)二軸延伸フィルムのフィルムヘイズ
二軸延伸フィルムサンプルの透明性の指標として、あらかじめ厚みを測定したフィルムサンプルのヘイズ値をヘイズメーターHGM−2DP型(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。測定は1水準につき5回行い、5回の測定の平均値から厚み10μmのフィルムとした場合の換算値としてフィルムヘイズ値[%]を求めた。
(11)二軸延伸フィルムの弾性率、破断点応力、破断点伸度
幅10mm、長さ150mmにフィルム試料を切り出し、この試料をJIS Z1702に準じて、オリエンテック(株)社製引張試験機を用い初期長50mm、引張速度300mm/分、加熱オーブン中80℃の条件で引張試験を行い、弾性率(MPa)、破断点応力(MPa)、破断点伸度(%)を測定した。なお、これらの測定値はフィルムの長手方向(MD)5点、幅方向(TD)5点のサンプルによるものである。
使用した樹脂は次のとおりである。
・PLA−1:ポリ乳酸(D体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂)
・PLA−2:ポリ乳酸(D体の含有量が1.4%であり、PMMA換算の重量平均分子量が7万であるポリL乳酸樹脂)
・PLA−3:ポリ乳酸(D体の含有量が0.9%であり、PMMA換算の重量平均分子量が4万であるポリL乳酸樹脂)
・CAP−1:セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製、CAP、アセテート置換度:0.1、プロピオネート置換度:2.6)
・CTA−1:セルローストリアセテート(ダイセル化学工業社製、LT−35、アセテート置換度:2.93)
・CDA−1:セルロースジアセテート(ダイセル化学工業社製、LT−40、アセテート置換度:2.42)
・CEL−1:セルロース(セルロースパウダー、アルドリッチ試薬)
・AL−1:有機アルミニウム化合物(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインテクノ社製、“ブレンアクト”AL−M)
・TI−1:有機チタン化合物(チタンテトライソプロポキシド、東京化成試薬)
・P−1:メタクリル樹脂変性高分子化合物(ポリ(エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸)−g−ポリメタクリル酸メチル(E/EA/MAH−g−PMMA)、日本油脂社製、“モディパー”A8200)
・PMMA:ポリメチルメタクリレート(住友化学工業(株)社製“スミペックス”MGSS)
・PVPh:ポリビニルフェノール(ガラス転移温度:146℃ 丸善石油化学(株)社製“MARUKALYNCUR”S−2P)
・PVAc:ポリ酢酸ビニル(ガラス転移温度:30℃ アルドリッチ試薬)
【実施例1〜7】
表1記載の組成からなる原料を、押出温度210℃に設定した二軸押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した後、ペレット化した。本ペレットはいずれも透明感のあるものであった。
該ペレットから切り出したサンプルについて、樹脂組成物のガラス転移温度を求めた結果を、表1に記した。
該ペレットから厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、その時の構造を位相差光学顕微鏡で観察した結果を表1に記した。
具体的には図1、図2で示したとおりである。実施例1の組成物における各成分の分散形態を示す図1においては、構造が観察されず、さらに、実施例3の組成物における各成分の分散形態を示す図2においては規則的な両相連続構造が観察された。
さらにここで構造が確認された実施例2、3、5について、上記氷水中に急冷し、構造を固定したガットから厚み100μmの切片を切り出し、光散乱装置を用い、構造周期または粒子間距離(Λm)を求めた(表1)。
上記処方で得られたペレットを、押出温度210℃に設定した単軸押出機で溶融後、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、厚み200μmのシートを得た。該シートの波長400nmの可視光線の透過率を求めた(表1)。
図3に、実施例1〜3のシートの写真を示す。該写真によれば、シートを通して背景の文字が鮮明に見えることから、本発明のシートが透明性に優れることがわかる。
また別途、該シートの動的粘弾性試験を行い、耐熱温度を求めた。結果を表1に記した。また別途、該シートから求めた引張強度、引張伸び測定結果を表1に記した。
【実施例8〜15】
次いで該シートを予熱温度90℃で表2中に示す倍率でそれぞれ縦方向への延伸、予熱温度78℃で表2中に示す倍率でそれぞれ横方向への延伸を行い、厚み80μmに調整した後、さらに140℃、10秒間の熱処理を施して二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルム特性を表2に示す。
さらに、該二軸延伸フィルムを50mm×10mm(縦×横)に切り取り、80℃の予熱で縦方向に2倍再延伸し、成形物を作成した。その後、外部から張力、荷重等の力を加えない状態で、設定温度80℃の熱風オーブンに2分間投入し、投入前後の熱変形(熱収縮)を観察した。結果を表2に示す。成形品の熱変形の有無は下記基準により判定した。
熱収縮率が
◎:10%未満
○:10%以上20%未満
△:20%以上35%未満
×:35%以上。
加えて、該二軸延伸フィルムを真空成形(ストレート成形)させた後、外部から張力、荷重等の力を加え、自重のみが加わった状態で、設定温度80℃の熱風オーブンに2分間投入し、投入前後の成形品の自重による熱変形を観察した。結果を表2に示す。成形品の熱変形の有無は下記基準により目視にて判定した。
◎:変形が見られない。
○:一部に反りや垂れ下がりが見られるが、形状を保持。
△:若干の反りや垂れ下がりが見られるものの実用上問題なし。
×:形状を保持できない。
【実施例16〜21】
表3記載の組成からなる原料を、押出温度225℃に設定した二軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明感のあるものであった。
該ペレットから切り出したサンプルについて、樹脂組成物のガラス転移温度を求めた結果を、表3に記した。
該ペレットから厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、その時の構造を位相差光学顕微鏡で観察した結果を表3に記した。
上記処方で得られたペレットを、押出温度210℃に設定した単軸押出機で溶融後、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、厚み200μmのシートを得た。該シートの波長400nmの可視光線の透過率を求めた(表3)。
また別途、該シートの動的粘弾性試験を行い、耐熱温度を求めた。結果を表3に記した。
【実施例22〜26】
次いで該シートを予熱温度90℃で表4中に示す倍率でそれぞれ縦方向への延伸、予熱温度78℃で表4中に示す倍率でそれぞれ横方向への延伸を行い、厚み80μmに調整した後、さらに140℃、10秒間の熱処理を施して二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルム特性を表4に示す。
【実施例27〜30】
次いで、実施例8、11、23、25のように作成した二軸延伸フィルムの80℃での引張試験を行った結果を表5に示す。
【実施例31〜35】
表6記載の組成からなる原料を、押出温度225℃に設定した二軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定した。本ガットはいずれも透明感のあるものであった。
該ペレットから切り出したサンプルについて、樹脂組成物のガラス転移温度を求めた結果を、表6に記した。
該ペレットから厚み100μmの切片を切り出し、210℃に設定されたホットステージ上で再溶融させ、その時の構造を位相差光学顕微鏡で観察した結果を表6に記した。
上記処方で得られたペレットを、押出温度210℃に設定した単軸押出機で溶融後、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し、次いで該シートを予熱温度90℃で表6中に示す倍率でそれぞれ縦方向への延伸、予熱温度85℃で表6中に示す倍率でそれぞれ横方向への延伸を行い、厚み80μmに調整した後、さらに140℃、10秒間の熱処理を施して二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルム特性を表6に示す。
表7に比較例1〜3を示す。
比較例1
セルロースエステルを配合しなかったこと以外は、実施例1〜6および実施例7〜13と同様に溶融混練、溶融製膜を行い、セルロースエステル混合系との比較用サンプルとした。
比較例2
セルロースエステルにかえ、エステル化されていないセルロースを用いた以外は、実施例1〜6と同様に溶融混練、溶融製膜して、セルロースエステル混合系との比較用サンプルとした。
比較例3
ポリ乳酸(PLA−1または2)にかえ、重量平均分子量4万のポリ乳酸(PLA−3)を用いた以外は実施例1〜6と同様に溶融混練、溶融製膜して、PLA−1または2との比較用サンプルとした。
表8に比較例4〜7を示す。
比較例4
セルロースエステルを配合しなかったこと以外は、実施例1〜6および実施例7〜13と同様に溶融混練、溶融製膜、予熱延伸、熱処理を行い、セルロースエステル混合系との比較用サンプルとした。
比較例5
セルロースエステルにかえ、エステル化されていないセルロースを用いた以外は、実施例1〜6および実施例7〜13と同様に溶融混練、溶融製膜を行い、セルロースエステル混合系との比較用サンプルとした。
比較例6
延伸を行わなかった以外は、実施例29〜33と同様に溶融混練、溶融製膜、予熱延伸、熱処理して、延伸フィルムとの比較用サンプルとした。
比較例7
(B)成分にかえ、ポリ酢酸ビニルを用いた以外は、実施例1〜6および実施例7〜13と同様に溶融混練、溶融製膜、予熱延伸、熱処理して、高ガラス転移温度樹脂アロイ系との比較用サンプルとした。
【産業上の利用可能性】
本発明は、各種包装材料、各種産業資材用、各種工業材料用フィルムなどに応用することができるが、その応用範囲が、これらに限られるものではない。








【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとを配合してなるポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂組成物の、波長400nmの可視光線における光線透過率が40%以上である請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとがポリ乳酸樹脂組成物中で相溶化および/または0.01μm以下の相構造を有しているものである請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂組成物が、構造周期0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜3μmの分散構造を有するものである請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートよりなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロースエステルである請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリ乳酸樹脂組成物に、さらにポリ乳酸樹脂とセルローエステルとの相溶性を改良する1種または2種以上の(C)相溶化剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
【請求項7】
(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステルとを溶融混練することを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上を配合してなるポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項9】
(A)成分と(B)成分が相溶化および/または0.01μm以下の相構造を有している請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項10】
構造周期が0.01〜3μmの両相連続構造、または粒子間距離が0.01〜3μmの分散構造を有するポリ乳酸樹脂組成物からなる請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項11】
結晶化度が50%以上である請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項12】
10μm換算のフィルムヘイズ値が10%以下である請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項13】
(A)成分と(B)成分の含有量の和に対する前記(B)成分の含有量が、1重量%以上50重量%未満である請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項14】
(B)成分のセルロースエステルが、セルロースの水酸基を炭素数1〜10のエステル化剤によって封鎖させてなるセルロースエステルである請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項15】
(B)成分のセルロースエステルが、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートよりなる群より選ばれる少なくとも一種のセルロースエステルである請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項16】
(B)成分のポリ(メタ)アクリレートが、ポリメチルメタクリレートであることを特徴とする請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項17】
(B)成分のポリビニル化合物が、ポリビニルフェノールであることを特徴とする請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項18】
(A)(B)成分に、さらにポリ乳酸樹脂と(B)成分との相溶性を改良する1種または2種以上の(C)相溶化剤を配合してなる請求項8に記載のポリ乳酸二軸延伸フィルム。
【請求項19】
(A)重量平均分子量5万以上のポリ乳酸樹脂と(B)セルロースエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ガラス転移温度が60℃以上のポリビニル化合物から選ばれる少なくとも一種以上を配合してなるポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品。
【請求項20】
請求項2〜6のいずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物からなる成形品。

【国際公開番号】WO2004/087812
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504137(P2005−504137)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001390
【国際出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】