説明

ポリ(エチレンオキシド)及び光開始剤含有骨格から調製されたコーティング

本出願は、次のa)及びb):a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、少なくとも50重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド);及びb)1種又は2種以上の低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有するもの(上記光開始剤部分は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び上記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する)を含むコーティング組成物を含む医療装置の調製(押出し、射出成形し、又は粉体コーティングし、次いでUV又は可視光を照射することにより架橋する)のための方法を開示する。本出願は、押出された、射出成形された又は粉体コーティングされた医療装置であって、その上にポリ(エチレンオキシド)(PEO)と、所望による非熱可塑性親水性ポリマーと、複数の光開始剤部分の残基を有する低分子量骨格との共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する医療装置をさらに開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出し、射出成形又は粉体コーティングを用いた、医療装置要素を調製するための方法に関する。本発明は、押出しされた、射出成形された、又は粉体コーティングされた医療装置要素にさらに関する。上記医療装置要素は、事前に作製された造形品又は熱可塑性基材ポリマーであって、その上にポリ(エチレンオキシド)(PEO)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物、所望による非熱可塑性親水性ポリマー、並びにPEOに共有結合されている及び/又はPEOに共有結合的に導入された複数の光開始剤部分の残基を有する低分子量骨格の層を有するものにより特徴付けられる。
【背景技術】
【0002】
医療装置は、滑らかな表面が要求されることが多い。医療分野では、簡素なデバイス、例えば、カテーテル、ガイドワイヤー等は、体腔内に、又は皮膚を介して挿入され、そして後に引き抜かれなければならない。患者の治療には、カテーテル法処置又は栄養素搬送システムが含まれることが多く、それらの大部分には、侵襲的な技法が含まれる。上記ケースの全てでは、上記処置の挿入及び引き抜き段階の両方において完全に安定である潤滑性が、患者の快適性に顕著に寄与する。
【0003】
米国特許第5,084,315号明細書は、共有結合的に架橋されていないPEO及びポリウレタンを含む組成物を利用する共押出し等により造形品を調製する方法を開示している。上記製品の表面は、水に接触させると滑らかになるとされている。
米国特許第6,447,835号明細書は、コーティングと共に、チューブを共押出しすることにより、医療装置用のコーティングされた中空の高分子量の管状の要素を調製するための方法を開示する。上記コーティングは、ポリ(エチレンオキシド)を含みうる。
【0004】
上記コーティングはまた、押出し後に、架橋されたアクリルポリマーネットワークを形成するために反応させうるアクリルモノマーを含むことができる。
米国特許第4,684,558号明細書には、電子放射線で架橋させることにより、接着性の架橋をされたポリ(エチレンオキシド)ヒドロゲルシートを製造するための方法が開示されている。
【0005】
米国特許第6,790,519号明細書及び国際公開第2005/079883号パンフレットには、シラノール含有部分を、ポリ(エチレンオキシド)鎖上にグラフト化することにより、架橋されたポリ(エチレンオキシド)ヒドロゲルを製造するための方法が開示されている。ポリ(エチレンオキシド)鎖間の架橋は、シラノール基間の縮合反応により生ずる。
米国特許第7,276,247号明細書には、他のポリ(エチレンオキシド)鎖上にペンダント型光開始剤を有することにより、ポリ(エチレンオキシド)鎖内に存在する不飽和官能基のUV照射により架橋させるための方法が開示されている。
【0006】
国際公開第03/086493号パンフレット及び同第2005/092402号パンフレットには、ポリ(エチレンオキシド)鎖内に末端基として存在する光開始剤及び不飽和官能基を有することにより、ポリ(エチレンオキシド)鎖内に存在する不飽和官能基のUV照射により架橋させるための方法が開示されている。
【0007】
国際公開第2005/035607号パンフレットには、他のポリ(エチレンオキシド)鎖上のペンダント型光開始剤を有し、そしてポリ(エチレンオキシド)鎖内に存在する不飽和官能基のUV照射を用いて架橋させることにより調製された親水性のポリ(エチレンオキシド)組成物を製造するための方法がさらに開示されている。
【0008】
上述の先行技術の文献は、不飽和官能基のラジカル重合を用いて、ポリ(エチレンオキシド)の架橋の課題を主に解決している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特定の骨格であって、当該骨格に共有結合されている及び/又は当該骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有する骨格の適用を含む別の経路を提供する。よって、本発明は、単純性に関する優位性を提供し、そして非常に低い摩擦、優れた凝集力及び優れた接着力に関する優位性を提供する医療装置の調製に関する方法を提供する。
【0010】
よって、本発明は、ポリ(エチレンオキシド)と、低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている骨格とを含む医療装置要素の調製方法を提供する(請求項1参照)。
さらに、本発明はまた、請求項12,13及び14に記載される種々の医療装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、事前に作製されたチューブの医療装置(例えば、カテーテルのチューブ)、熱可塑性基材ポリマーの層、及び共有結合的に架橋されたコーティング組成物を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本発明の方法]
上述のように、本発明は、医療装置要素の調製のための方法に関し、当該方法は、次の各ステップを含む;
(i)事前に作製された造形品及び/又は熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)下記を含むコーティング組成物を準備するステップ;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、一又は複数のポリマー成分のみとしての1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記一又は複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する、及び
(b)1種又は2種以上の低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有する低分子量骨格、ここで、上記光開始剤部分は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び上記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
(iii)ステップ(ii)のコーティング組成物を、ステップ(i)の事前に作製された造形品及び/又は熱可塑性基材ポリマーの上に、上記コーティング組成物の層をその上に有する事前に作製された造形品及び/又は上記基材ポリマーの医療装置要素を提供するように、押出す、射出成形する又は粉体コーティングするステップ、ここで、上記事前に作製された造形品及び上記基材ポリマーの両方が存在する場合、上記事前に作製された造形品は、その上に上記基材ポリマーの層を有する;
(iv)上記コーティング組成物を共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で、上記コーティング組成物を照射するステップ。
【0013】
本発明の第1の主要な態様では、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記コーティング組成物の唯一の又は複数のポリマー成分である。
【0014】
本発明は、1種又は2種以上の光開始剤と、UV又は可視光とを用いて押出し、射出成形し、又は粉体コーティングした後の特有のコーティング組成物の架橋が、以下を有する医療装置要素を提供することを見出したことに基づく:上記コーティング組成物(ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含む)の、上記事前に作製された造形品又は基材ポリマーへの良好な接着力;上記コーティング組成物の良好な凝集力;及び湿潤状態におけるポリ(エチレンオキシド)(PEO)及び任意の非熱可塑性親水性ポリマーの良好な保水性、そしてそれによる長期間の低摩擦に関する優れた特性。従来公知の方法の大部分と比較して、本発明は、エチレン系不飽和部分(例えば、アクリレート、メタクリレート又はビニル部分)を用いた重合及び架橋と完全に独立している;要するに、上記コーティング組成物は、任意のエチレン系不飽和部分、特にアクリレート、メタクリレート及びビニル部分を完全に欠いていることが好ましい。
【0015】
上記コーティングの良好な保水性に関する良好な特性及び長期間の低摩擦に関する優れた特性は、上記ポリマーの架橋及び上記基材ポリマー又は事前に作製された造形品への固定を用いると、PEO鎖のたわみ性が制限されるという事実にいくぶん矛盾する。しかし、高い親水性及び摩擦低減特性と共に、PEOの熱可塑性の性質により、PEOが、本発明及び本発明の製品に特に好適となる。さらに、骨格に共有結合及び/又は共有結合的に導入されるような光開始剤部分の存在により、上述の有用な特性がさらに促進される。
【0016】
[医療装置]
用語「医療装置」は、相当広義で説明されるべきである。医療装置(機器を含む)の好適な例は、カテーテル(例えば、導尿カテーテル)、内視鏡、喉頭鏡、供給用チューブ、排液用チューブ、気管内チューブ、ガイドワイヤー、縫合糸、カニューレ、ニードル、温度計、コンドーム、ウリシース(urisheath)、バリアコーティング、例えば、以下の用途向け、手袋、ステント及び他のインプラント、コンタクトレンズ、体外の血液導管、膜、例えば、以下の用途向け、透析、血液フィルタ、循環補助用デバイス、コンドーム、外傷治療用手当用品及びストーマ袋である。最も関連性のあるのは、カテーテル、内視鏡、喉頭鏡、供給用チューブ、排液用チューブ、ガイドワイヤー、縫合糸、及びステント及び他のインプラントである。本発明の文脈に特に関心がある医療装置は、カテーテル、例えば、導尿カテーテルである。
【0017】
本発明の方法が、非医療用途、例えば、食料品向けの包装、かみそり刃、漁網、配線用の導管、内部コーティングを有する送水管、スポーツ製品、化粧品用添加剤、鋳型離型剤、並びに釣り糸及び網向けの低摩擦表面を有するデバイスの調製用に同様に有用であることがまた想定される。よって、本発明のさらに別の態様において、本明細書に記載され、そして特許請求の範囲に記載される方法及びデバイスを、上記可能性をカバーするように改良することができる。
【0018】
いくつかの医療装置を、組み立てられるか、又は再配置されうる、1又は2以上の医療装置要素で構成することができ、すぐ使用できる医療装置と表す。「医療装置要素」及び「カテーテル要素」への参照は、医療装置又はカテーテルそれ自体(すなわち、1個の医療装置又はカテーテル)、あるいは「すぐ使用できる」医療装置又はカテーテルを意味する。
【0019】
本発明の文脈において、医療装置要素は、事前に作製された造形品及び/又は熱可塑性基材ポリマー並びにコーティング組成物から形成される。上記事前に作製された造形品及び/又は上記熱可塑性基材ポリマーの(共)押出し又は射出成形、並びに共押出し、射出成形又は粉体コーティングによる上記コーティング組成物の同時又は次の適用の際、上記事前に作製された造形品又は上記熱可塑性基材ポリマーの少なくとも一部の表面が、さらに詳細には、下記にて説明するように、上記コーティング組成物で被覆されはじめる。いくつかの実施形態では、上記コーティング組成物(すなわち、親水性のコーティング)が、上記事前に作製された造形品/基材ポリマーの全体(外側)表面を、そしていくつかの他の実施形態では、その表面の一部のみを覆う。最も関連性のある実施形態では、上記コーティング組成物は、医療装置が目的とする身体部分と直接接触する(適切な使用の際)医療装置の表面の少なくとも一部(好ましくは表面全体)を覆う。
【0020】
[事前に作製された造形品]
事前に作製された造形品が含まれる実施形態では、方法は、例えば、造形品上にコーティングを提供するように設計される。多種多様の造形品(例えば、チューブ、ワイヤー、ライン、ステント、カテーテル、ガイド、歯科治療用及び歯科矯正用機器、ニードル、腹腔鏡手術等用の套管針、腹腔鏡用付属品、外科用機器、ガイドワイヤー)が想定されると同時に、種々の異なる材料、例えば、金属及び合金、例えば、ステンレス鋼コア又は典型的なガイド−ワイヤー合金、例えば、Ti合金、例えば、ニチノール及び偽可塑性のβTi−Mo−V−Nb−Al合金が、造形品を構成することができる。さらに、ガラス及びセラミック、熱可塑性ポリマーがまた想定される。好適な材料はまた、下記を含む:熱可塑性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタン、疎水性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(商標))、PVC、ポリアミド、ポリエステル、生分解性ポリエステル、ポリアクリレート、PS、シリコーン、ラテックスゴム;種々の構造、ジブロック(A−B)、マルチブロック(A−B)n又はトリブロック(A−B−A)を有するブロックコポリマー、例えば、SEBS,SIS,SEPS,SBS,SEEPS(当該ブロックコポリマーは、ゴムブロック、典型的には、トリブロックコポリマーに関する中間ブロック(mid−block)上に、無水マレイン酸でグラフトされていることができる);熱可塑性ポリマー、例えば、LDPE,LLDPE,VLDPE,PP,PE、及びエチレン及びプロピレンのコポリマー、メタロセン重合されたポリオレフィン、PS,EMA,EEA,EnBA,PEg−MAH,EVA,EVOH及び無水マレイン酸でグラフトさせたビニルアセテートコポリマー(EVAg−MAH)、又はそれらの(その)組み合わせ、例えば、Orevac(商標)エチレン−ビニルアセテート−無水マレイン酸ターポリマー;及び機能性ポリオレフィンの範囲、例えば、MAH又はGMAのどちらかを有するLotader(商標)エチレン−アクリル酸エステルターポリマー;並びにPE,PP,PS等の無水マレイン酸グラフト化ポリマー。省略形は、例中の表に説明されている。
【0021】
事前に作製された造形品の異なる層間の表面固着を改良し、そして適切な表面固着を得るために、いくつかの戦略がある。ある場合には、一又は複数の極性のPSブロックと共に、1又は2以上のポリオレフィン基を有するジ−又はトリブロックコポリマーが、層間に最適の表面固着を与えることができる。それ以外には、上記基材ポリマーは、当該ポリマー上の官能基を利用する事ができる反応性ポリマーのブレンドの際に変性し、非極性のポリマーを、極性又は親水性のポリマーと混合することができる。上記コーティングの共押出しの後、光硬化の際に、表面固着を改良するために、反応性ポリマーのブレンドをまた用いて、光開始剤と、非極性、極性又は親水性の官能性ポリマーとの間の共有結合を得ることができる。
【0022】
[熱可塑性基材ポリマー]
熱可塑性基材ポリマーが含まれる実施形態では、上記方法は、この基材上にコーティングを適用するように設計される。上記熱可塑性基材ポリマーは、上記医療装置要素の物理的形状を提供するように、又は上記コーティング組成物及び上記事前に作製された造形品の間の好適な界面を提供するように選択される。よって、上記基材ポリマーは、概して、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(商標))、PVC、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、PS、シリコーン、ラテックスゴム、SEBS,SIS,SEPS,SEEPS,EVA,PE、及びエチレンとプロピレンとのコポリマー;熱可塑性ポリマー、例えば、親水性ポリウレタン、疎水性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(商標))、PVC、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、PS、シリコーン、ラテックスゴム;種々の構造、ジブロック(A−B)、マルチブロック(A−B)n又はトリブロック(A−B−A)を有するブロックコポリマー、例えば、SEBS,SIS,SEPS,SBS,SEEPS;当該ブロックコポリマーは、ゴムブロック、典型的には、トリブロックコポリマーに関する中間ブロック上に、無水マレイン酸でグラフトされていることができる;熱可塑性ポリマー、例えば、LDPE,LLDPE,VLDPE,PP,PE、及びエチレンとプロピレンとのコポリマー、メタロセン重合されたポリオレフィン、PS,EMA,EEA,EnBA,PEg−MAH,EVA,EVOH及びEVAg−MAH、又はそれらの組み合わせ、例えば、Orevac(商標)エチレン−ビニルアセテート−無水マレイン酸ターポリマー;機能性ポリオレフィンの範囲、例えば、MAH又はGMAのどちらかを有するLotader(商標)エチレン−アクリル酸エステルターポリマー;PE,PP,PS等の無水マレイン酸グラフト化ポリマー;及びEPOCROS K−シリーズ反応性アクリレート−オキサゾリンコポリマー又はRPS/RAS−シリーズスチレン−オキサゾリンコポリマー、又はスチレン−アクリロニトリル−オキサゾリンコポリマーから選択される。
【0023】
上記熱可塑性基材ポリマーとして用いる場合に、現在、非常に関連性のある材料は、ポリウレタン及びPVC、特にポリウレタン、例えば、疎水性ポリウレタンである。
【0024】
[コーティング組成物]
上記コーティング組成物の主成分は、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)(本発明の第1の主要な態様において、実は、上記組成物の唯一のポリマーである)と、一又は複数の低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有するものとである。上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと組み合わせた、本発明の第2の主要な態様において用いられうる。これらの成分を、下記において、さらに詳細に論ずる。
【0025】
意図する使用にもよるが、特定の特性を達成するために、上記コーティング組成物に添加剤を導入することができる。例えば、1種又は2種以上の添加剤、例えば、流動助剤(flow aid)、艶消し剤、熱安定化剤、表面硬化調整剤、抗菌薬及び重量オスモル濃度上昇化合物を、上記コーティング組成物に添加することができる。上記添加剤及びそれらのポリマー特性を改良するための使用は、当業者に一般的であり且つ周知である。上記他の成分は、上記コーティング組成物の最大10重量%、例えば、最大5重量%の量で用いることができる。
【0026】
上記抗菌薬は、銀塩、例えば、銀スルファジアジン;許容可能なヨウ素源、例えば、ポビドンヨード(PVPヨウ素とも称される);クロルヘキシジン塩、例えば、グルコン酸塩、酢酸塩、塩酸塩等;又は塩若しくは4級の抗菌薬、例えば、ベンズアルコニウムクロリドあるいは他の防腐剤又は抗生物質であることができる。抗菌薬は、例えば、尿力学の試験が実施された場合に、感染のリスクを減らす。
【0027】
人間の腔内に導入するために好適な医療装置又は機器において、重量オスモル濃度上昇化合物、例えば、水溶性非イオン性化合物、例えば、グルコース、ソルビトール、グリセリン、又はウレア;又はイオン性化合物、例えば、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属又は銀のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩又は安息香酸塩;あるいはカルボン酸、例えば、酢酸等を含むことが有利である場合がある。
【0028】
押出し、射出成形又は粉体コーティングを促進するために、上記コーティング組成物中に可塑剤を含むことがさらに望ましい場合がある。上記例では、可塑剤は、上記コーティング組成物の最大10重量%の量で含まれうる。上記可塑剤の例には、カルボン酸系可塑剤、例えば、Jungbunzlauerから購入できる部分エステル化クエン酸及びGrindsted Productから購入できるクエン酸エステル、例えば、GRINDSTED−CITREMが含まれる。本発明の文脈において、可塑剤は、一般的に、低分子量成分として理解されるべきことが理解されるべきである。
【0029】
本明細書の以下から明らかなように、本発明は、(メタ)アクリレートモノマーを用いた架橋を要求しない共有結合架橋法の優位性を採用するので、最も関心がある実施形態には、(メタ)アクリルモノマーは含まれない。残余のアクリレートは、非常に有毒であり、遺伝毒性があり、発癌性である場合があるか、あるいはそれらは、アレルギー、皮膚の発疹、過敏化を引き起こすか、又は局所的に炎症を生じさせうる。従って、残余のエチレン系不飽和モノマー、例えば、アクリレート又は他の反応性モノマーを有する系は避けるのが最良である。
【0030】
実施形態の一つでは、上記コーティング組成物は、好ましくは下記から成る;
20〜99.99重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
0〜10重量%の1種又は2種以上の可塑剤;
0.01〜80重量%の1種又は2種以上の低分子量骨格:及び
0〜5重量%の他の成分。
【0031】
さらに関心がある実施形態では、上記コーティング組成物は、下記から成る;
30〜99.9重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
0〜5重量%の1種又は2種以上の可塑剤、
0.1〜70重量%の1種又は2種以上の低分子量骨格;及び
0〜5重量%の他の成分。
【0032】
特定の実施形態では、上記コーティング組成物は、下記から成る;
40〜99重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
1〜60重量%の1種又は2種以上の低分子量骨格:及び
0〜5重量%の他の成分。
【0033】
別の特定の実施形態では、上記コーティング組成物は、下記から成る;
50〜99重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
0〜10重量%の1種又は2種以上の可塑剤;
1〜50重量%の1種又は2種以上の低分子量骨格:及び
0〜5重量%の他の成分。
【0034】
さらなる実施形態では、上記コーティング組成物は、下記から成る;
40〜94重量%の1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
5〜30重量%の1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマー;
0〜10重量%の1種又は2種以上の可塑剤;
1〜40重量%の1種又は2種以上の低分子量骨格:及び
0〜5重量%の他の成分。
【0035】
[ポリ(エチレンオキシド)(PEO)]
上記コーティング組成物は、主成分の1つとして、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)を含む。
【0036】
用語「ポリマー」(例えば、ポリ(エチレンオキシド)及び非熱可塑性親水性ポリマーを参照するように)は、繰り返し単位及び10kDa(10,000g/モル)超の重量平均分子量を有する有機化合物を表す。逆に(そしてこれと補完的に)、用語「骨格」又は「低分子量骨格」は、上記光開始剤部分が共有結合し、そして最大10kDa(g/モル)の重量平均分子量(上記光開始剤部分を除く)を有する有機化合物を示す。
【0037】
一又は複数の上記ポリ(エチレンオキシド)の主要な要件は、共有結合的に架橋されたコーティング組成物が、親水性液体、例えば、水又はグリセロールで膨潤した場合に非常に滑りやすくなることである。よって、上記一又は複数のPEOの主要な機能は、膨潤されたコーティングに、低摩擦及び高い保水性を与えることである。
【0038】
上記ポリ(エチレンオキシド)(PEO)の重量平均分子量(Mw)は、10,000Da(g/モル)超である。実際には、上記PEOは、任意の好適な重量平均分子量(Mw)に属することができるが、好ましくは100,000〜8,000,000Da(g/モル)、最も好ましくは200,000〜4,000,000Da(g/モル)の範囲に属する。好適なPEOは、Dowから、商標名Polyox(商標)の下で購入することができる。
【0039】
上記ポリ(エチレンオキシド)は、任意のエチレン系不飽和官能基、例えば、アクリレート部分、メタクリレート部分又はビニル部分等を有しないことに留意することが重要である。一方、上記コーティング組成物及び特に上記ポリ(エチレンオキシド)の架橋は、他のメカニズムに基づく。
【0040】
本発明の第一の主要な態様では、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記組成物の唯一のポリマー成分である。よって、上記ポリ(エチレンオキシド)は、上記ポリマー成分の100重量%を構成することが理解されるべきである。
【0041】
[非熱可塑性親水性ポリマー]
本発明の第2の主要な態様では、上記ポリマー成分は、1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと組み合わせた、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)であり、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記ポリマー成分の総量の少なくとも50重量%を構成する。
【0042】
好ましくは、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記ポリマー成分の総量の50〜98%、例えば、55〜90%、又は60〜85重量%を構成し、一方、一又は複数の上記非熱可塑性親水性ポリマーは、残余の部分、すなわち、上記ポリマー成分の総量の2〜50%、例えば、10〜45%、又は15〜40重量%を構成する。上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)の熱可塑性により、上記非熱可塑性親水性ポリマーを含むコーティング組成物全体の十分なフロー特性が提供され、そのため、上記コーティング組成物が、押出し、射出成形及び粉体コーティング用途に非常に有用となる。
【0043】
上記親水性ポリマーの非熱可塑性は、単に一般要件であり、特に有用な非熱可塑性親水性ポリマーは、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリオキサゾリン、及びコポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)から成る群から選択されるものであると考えられる。
【0044】
[骨格に共有結合し、そして/又は当該骨格内に共有結合的に導入された光開始剤部分を有する骨格]
上記コーティング組成物は、主成分の1つとして、1種又は2種以上の低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有するものをさらに含む。
【0045】
上記骨格を、広範囲の直鎖、分岐鎖、環式及び樹状の分子種から選択することができる、すなわち、上記光開始剤部分は、上記骨格に「共有結合している」。共有結合により、複数(すなわち、少なくとも2つ)の光開始剤部分を、一又は複数の上記骨格に結合させることが可能であるべきである。さらに、上記骨格は、光開始剤部分により、共に保持されている2又はいくつかの骨格断片の状態であることができる、すなわち、上記光開始剤部分は、上記骨格の主鎖に、「共有結合的に導入されている」。骨格が、当該骨格に共有結合されている光開始剤部分を有することができ、そして同時に当該骨格内に共有結合的に導入されている光開始剤部分を有することができることが容易に想定されうる。
【0046】
骨格に共有結合している光開始剤部分を有する骨格の実例は、例えば、下記である。
【0047】
【化1】

【0048】
それらの主鎖に共有結合的に導入された光開始剤部分を有する骨格の実例は、例えば、下記である。
【0049】
【化2】

【0050】
上記骨格は、当該骨格に共有結合されている及び/又は当該骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有することができるべきである。「複数」の光開始剤部分は、少なくとも2つの光開始剤部分を意味するが、場合によっては2超(例えば、3、4、5、6又はそれ超)の光開始剤部分を意味する。
【0051】
いくつかの一般的に好ましい実施形態では、上記骨格は、当該骨格に共有結合されている及び/又は当該骨格の中に共有結合的に導入されている少なくとも3つの光開始剤部分を有する。
【0052】
光開始剤部分の「充填率」に関して、上記光開始剤部分は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)と、任意の非熱可塑性親水性ポリマーと、上記1種又は2種以上の低分子量骨格(上記光開始剤部分を含む)との合計量の0.01〜20重量%、例えば、0.05〜15重量%を構成する。
【0053】
用語「低分子量」は、最大10kDa(10,000g/モル)の重量平均分子量(Mw)をその中に有する骨格(上記光開始剤部分を含まず)を指す。好ましくは、上記骨格の重量平均分子量は、50〜10,000Da(g/モル)、例えば、100〜10,000Da(g/モル)、特に250〜8,000Da(g/モル)又は500〜10,000Da(g/モル)の範囲にある。いずれにせよ、上記「骨格」の重量平均分子量は、上記光開始剤部分を含まない骨格の重量か、又は上記光開始剤部分を含まない骨格断片の総重量を指す。
【0054】
上記骨格が、2又は3以上の骨格断片の形態にある場合、当該断片のそれぞれは、少なくとも50g/モル、例えば、少なくとも100g/モルの分子量を有することがさらに好ましい。
【0055】
上記光開始剤部分が、上記コーティング組成物内に均一に分布することを確保するために、上記コーティング組成物内の低分子量骨格と共有結合しているそして/又は当該骨格に共有結合的に導入されている光開始剤部分を含むことが有利であることが証明された。上記光開始剤部分を骨格(場合によっては、2又はいくつかの骨格断片の形態)と共有結合的に結合させることにより、上記光開始剤部分の次の移動が顕著に減少する。さらに、いくつかの理由において、照射後、未反応のまま残る光開始剤部分が、生じたコーティングから移動しないのは明らかである。
【0056】
本発明の実施形態の一つでは、上記骨格は、当該骨格に共有結合している複数(例えば、少なくとも3つ)の光開始剤部分を有する。
本発明の別の実施形態では、上記骨格は、当該骨格内に共有結合的に導入された複数(例えば、少なくとも3つ)の光開始剤部分を有する。
【0057】
本発明の第3の関心がある実施形態では、上記骨格は、少なくとも1の当該骨格に共有結合しており、そして少なくとも1の当該骨格内に共有結合的に導入された複数(例えば、少なくとも3つ)の光開始剤部分を有する。
【0058】
上記骨格は、オリゴマー及び低分子量ポリマー(Mw<10,000)を含む広範囲の構造に基づくことができるが、特に有用な骨格は、ポリエチレングリコール、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、脂肪族ポリエーテルウレタン、ポリエーテルアミン(例えば、HuntsmanからのJeffamines)、及びポリエステルから選択されるものであることが一般的に考えられる。
【0059】
一又は複数の上記骨格は、親水性の又は疎水性のどちらか、あるいは両方(すなわち、両親媒性)であることができる。好ましくは、一又は複数の上記骨格は、上記コーティング組成物内の結合された光開始剤部分の、完全な均一性及び均一な空間的分布を確保するために、上記一又は複数のポリマー成分と相溶する。上記コーティング組成物中の光開始剤部分の均一な分布を達成することができると、硬化させるために必要な光開始剤の量及び/又はUV照射時間が最小となる。
【0060】
10kDa未満の重量平均分子量を有するいくつかの市販の骨格を、下記に列挙する。これらの骨格は、別に規定されている場合を除き、Sigma−Aldrich Chemical Companyから入手できる。いくつかの骨格は、1つ超の範疇に列挙されている。
【0061】
末端基として又は主鎖中のどちらかにおいて、ヒドロキシル基又はアミノ基を含む求核性骨格は、以下を含む:PVOH、ポリ(ジエチレングリコール/トリメチロールプロパン−alt−アジピン酸)、ポリ(ジエチレングリコール/グリセロール−alt−アジピン酸)、PEG、[ジ{ポリ(エチレングリコール)}アジペート]、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラヒドロフラン)、[ポリカプロラクトンジオール]、[ポリカプロラクトントリオール]、[ポリ(ジエチレングリコールフタレート)ジオール]、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、[ポリブタジエン、ジヒドロキシル末端化]、[ヒドロキシル末端基を有するHPEU]、[ポリウレタンジオール溶液(専売のAldrich製品)]、糖、デキストラン、プルラン、キトサンオリゴ糖ラクテート、ゼラチン(Fibrogen)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、[ポリ(テトラヒドロフラン)、ビス(3−アミノ−1−プロピル)末端化]、[ポリ(エチレンイミン)、エチレンジアミンエンドキャップ化]、[ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)、ビス(3−アミノ−1−プロピル)末端化]、[ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)、ビス(2−アミノ−1−プロピル)末端化]、及び[ポリ(プロピレングリコール)、ビス(2−アミノ−1−プロピル)末端化]。特に、樹状ポリオール、例えば、Boltorn H20、Boltorn H30及びBoltorn H40(Perstorp)、並びにStarburst、Priostar DNT−2210及びPriostar DNT−2211(Dendritic Nanotechnologies)が、本発明向けの非常に良好な骨格を構成する。樹状ポリアミン、例えば、Starburstシリーズ、Priostar DNT−2200及びPriostar DNT−2201(Dendritic Nanotechnologies)がまた、本発明向けの良好な骨格を構成する。ハイパーブランチ化ポリ求核性試薬をまた用いることができる。
【0062】
末端基として又は主鎖中のどちらかにおいて、カルボン酸、無水物又はイソシアネート基を含む求電子性骨格には、以下が含まれる:ポリ(アクリル酸)、[ポリ(アクリル酸)ナトリウム塩]、[ポリ(メタクリル酸)ナトリウム塩]、[ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩]、ポリ(アクリル酸−co−マレイン酸)、[ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン−co−アクリル酸)、ジカルボキシ末端化]、ポリスチレン−block−ポリ(アクリル酸)、ゼラチン(Fibrogen)、[ポリ(エチレングリコール)、ジ(カルボキシメチル)末端化]、[ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン)、ジカルボキシ末端化]、[ポリブタジエン、ジカルボキシ末端化]、ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)、[ポリ(エチレンアジペート)、トリレン2,4−ジイソシアネート末端化]、及び[ポリ(プロピレングリコール)、トリレン2,4−ジイソシアネート末端化]。樹状ポリカルボン酸、例えば、Starburstシリーズ、Priostar DNT−2220及びPriostar DNT−2221(Dendritic Nanotechnologies)がまた、本発明向けの良好な骨格を構成する。ハイパーブランチ化ポリ求電子体をまた用いることができる。
【0063】
エステル交換及びアミノ基転移用に好適な骨格には、下記が含まれる:ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)及びポリ(tert−ブチルメタクリレート)。
【0064】
アシル化可能で(acylatable)、電子豊富な芳香族系を含む骨格には、下記が含まれる:ポリスチレン−block−ポリ(アクリル酸)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルカルバゾール)、ポリカーボネート、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、ポリ(2−ビニルナフタレン)及びポリアセナフチレン。
【0065】
グラフト化可能なエーテル結合を含む骨格には、下記が含まれる:PEG、HPEU、[ジ{ポリ(エチレングリコール)}アジペート]、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラヒドロフラン)、及び[ポリ(ジエチレングリコールフタレート)ジオール]。
【0066】
10kDa未満の重量平均分子量を有するさらなる求核性骨格は、少なくとも1種のモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び4−ヒドロキシスチレンのラジカル単独重合により形成することができる。コポリマーが製造される場合、当該コポリマーはまた、比較的不活性な側鎖を有する下記のモノマーを1種又は2種以上含むことができる:スチレン、α−メチルスチレン、リング(ring)−アルキル化スチレン、例えば、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、例えば、アクリルアミド、ビニルアミンのアミド、例えば、N−ビニルホルムアミド、ビニルニトリル、例えば、アクリロニトリル、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、及びハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル。
【0067】
カルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸を含み且つ10kDa未満の重量平均分子量を有するさらなる求電子性骨格は、少なくとも1種のモノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、チグリン酸、イタコン酸、S−ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−スルホエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン(SPE)、及びP−ビニルホスホン酸のラジカル単独重合、ランダム共重合又はブロック共重合により形成することができる。コポリマーが製造される場合、当該コポリマーはまた、上述の「さらなる求核性骨格」の下で言及された、比較的不活性な側鎖を有するモノマーを1種又は2種以上含むことができる。
【0068】
エステル交換及びアミノ基転移用に好適であり、且つ10kDa未満の重量平均分子量を有するさらなる骨格は、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルクロトネート、アルキルチグレート、ジアルキルマレエート塩、ジアルキルフマレート、及びジアルキルイタコネートの基に属する少なくとも1種のモノマーのラジカル単独重合、ランダム共重合又はブロック共重合により形成されうる。コポリマーが製造される場合、当該コポリマーはまた、その側鎖がエステル交換又はアミノ基転移に影響を与えるべきではない下記のモノマーを1種又は2種以上含むことができる:スチレン、α−メチルスチレン、リング−アルキル化スチレン、例えば、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、例えば、アクリルアミド、ビニルアミンのアミド、例えば、N−ビニルホルムアミド、ビニルニトリル、例えば、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、及びハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル。
【0069】
10kDa未満の重量平均分子量を有する、アシル化可能で、電子豊富な芳香族系を含むさらなる骨格は、少なくとも1種のスチレンモノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、リング−アルキル化スチレン、又は4−ヒドロキシスチレンのラジカル単独重合、ランダム共重合又はブロック共重合により形成されうる。コポリマーが製造される場合、当該コポリマーはまた、非アシル化可能な側鎖を有する下記のモノマーを1種又は2種以上含むことができる:(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチルメタクリレート、(メタ)アクリルアミド、例えば、アクリルアミド、ビニルアミンのアミド、例えば、N−ビニルホルムアミド、ビニルニトリル、例えば、アクリロニトリル、ビニルエステル、例えば、ビニルアセテート、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、及びハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル。
【0070】
10kDa未満の重量平均分子量を有するグラフト可能なエーテル結合を含むさらなる骨格は、少なくとも1種のモノマー、PEGメタクリレート、PEGメチルエーテルメタクリレート、PEGエチルエーテルメタクリレート、PEGメチルエーテルアクリレート、PEGフェニルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)アクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレートのラジカル単独重合、ランダム共重合又はブロック共重合により形成されうる。コポリマーが製造される場合、当該コポリマーはまた、1種又は2種以上の非グラフト性モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、リング−アルキル化スチレン、例えば、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリルアミド、例えば、アクリルアミド、ビニルアミンのアミド、例えば、N−ビニルホルムアミド、ビニルニトリル、例えば、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、及びハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、チグリン酸、イタコン酸、S−ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、2−スルホエチルメタクリレート、N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン(SPE)、及びP−ビニルホスホン酸を含むことができる。
【0071】
[光開始剤]
上記光開始剤部分の主要な機能は、上記基材への良好な凝集力及び接着力を得るために、それ自体及び上記基材への、熱可塑性の、親水性コーティングの良好な架橋を確保することである。一又は複数の上記光開始剤の好ましい特性は、(i)ランプ発光スペクトルと光開始剤吸収スペクトルとの間のオーバーラップが良好であること;(ii)上記光開始剤吸収スペクトルと、上記コーティングの他の成分(すなわち、ポリ(エチレンオキシド))の固有の混合された吸収スペクトルとの間のオーバーラップが少ないこと;及び上記部分が共有結合している上記骨格を含む上記光開始剤部分の、上記コーティングの一又は複数のポリ(エチレンオキシド)との相溶性が良好であることである。
【0072】
上記光開始剤は、UV又は可視光源から、光を、ポリマーから水素原子及び他の不安定な原子を引き抜くことができ、よって共有結合架橋を実施することができる反応性ラジカルに有効に変化させるべきである。所望により、アミン、チオール及び他の電子供与体を添加することができる。ラジカル光開始剤を、開裂型(ノーリッシュタイプI反応)又は非開裂型(ノーリッシュタイプII反応が、特別なケースであり、例えば、A.Gilbert,J.Baggott「Essentials of Molecular Photochemistry」、Blackwell,London,1991を参照せよ)のどちらかに分類することができる。励起の際、開裂型光開始剤が、2つのラジカルに自発的に分裂し、そのうち少なくとも1つが、大部分の基材から水素原子を引き抜くために十分な反応性を有する。ベンゾインエーテル(ベンジルジアルキルケタールを含む)、フェニルヒドロキシアルキルケトン及びフェニルアミノアルキルケトンが、開裂型光開始剤の重要な例である。電子供与体の添加は要求されないが、以下の非開裂型光開始剤に関して記載されるものと同様のメカニズムに従って、開裂型光開始剤の総効率を高めることができる。
【0073】
近年、新しい種類のβ−ケトエステル系光開始剤が、Ashland Specialty Chemical,USA(2005)から、M.L Gould,S.Narayan−Sarathy,T.E.Hammond及びR.B.Fechterにより導入されている:RadTech Europe 05,Barcelona,Spain,October 18−20 2005,vol.1,p.245−51,Vincentzから続く「Novel Self−Initiating UV−Curable Resins:Generation Three」。エステルを、多官能性アクリレートに、塩基触媒化マイケル付加させた後、複数の4級炭素原子を有するネットワークが形成され、それぞれが、2つの隣接するカルボニル基を有する。UV又は可視光励起の際、これらの光開始剤は、ノーリッシュタイプI機構により主に開裂し、そして存在する任意の一般的な光開始剤なしでさらに架橋し、そして厚い層を硬化させることができる。上記自己開始系は、本発明の範囲内である。
【0074】
励起された非開裂型光開始剤は、ラジカルに分裂しないが、有機分子から水素を引き抜くか、又はさらに有効には、電子供与体(例えば、アミン又はチオール)から電子をさらに有効に引き抜く。電子移動により、上記光開始剤上にラジカルアニオンが生成し、そして上記電子供与体上にラジカルカチオンが生成する。これに、上記ラジカルカチオンからラジカルアニオンへのプロトン移動が続き、2つの非荷電ラジカルが生成する;上記電子供与体上のこれらのラジカルは、大部分の基材から水素原子を引き抜くために十分な反応性を有する。ベンゾフェノン、チオキサントン、キサントン、アントラキノン、フルオレノン、ジベンゾスベロン、ベンジル及びフェニルケトクマリンが、非開裂型光開始剤の重要な例である。窒素原子に対してα位にC−H結合を有する大部分のアミン及び多くのチオールが、電子供与体として作用する。
【0075】
マレイミドに基づく別の自己開始系はまた、Albemarle Corporation及びBrady Associates LLC、両方ともUSA(2003)から、CK.Nguyen,W.Kuang及びCA.Bradyにより特定されている:RadTech Europe 03,Berlin,Germany,November 3−5,2003,vol.1,p.589−94,Vincentzから続く「Maleimide Reactive Oligomers」。マレイミドは、主に非開裂型光開始剤として作用することによりラジカル重合を開始し、そして同時に、上記マレイミド二重結合の両端のラジカル付加により自発的に重合する。さらに、マレイミドの強いUV吸収が、上記ポリマー中で消失する、すなわち、マレイミドは、光退色する光開始剤である;これにより、厚い層を硬化させることが可能になる。
上記マレイミド含有系は、本発明の範囲内である。
【0076】
いくつかの光開始剤のブレンドは、例えば、J.P.Fouassier:「Excited−State Reactivity in Radical Polymerisation Photo−initiators」,Ch.1,pp.1−61、「Radiation curing in Polymer Science and technology」,Vol.II(「Photo−initiating Systems」),J.P.Fouassier及びJ.F.Rabekにより編集,Elsevier,London,1993に記載されるような相乗的な特性を示す場合がある。簡潔には、[4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン+ベンゾフェノン]、[ベンゾフェノン+2,4,6−トリメチルベンゾフェノン]、[チオキサントン+メチルチオフェニルモルホリノアルキルケトン]のペアーにおいて、ある光開始剤から、他の光開始剤へ効率的なエネルギー移動又は電子移動が行われる。しかし、多くの他の有益な組み合わせが想定されうる。
【0077】
さらに、4−(4−ベンゾイルフェノキシエトキシ)フェニル2−ヒドロキシ−2−プロピルケトンの分子内で共有結合しているIrgacure 2959及びベンゾフェノンが、2つの別個の化合物の単なる混合物よりも相当高い開始効率を与えることが、近年見出された。Vienna University of Technology,Austria(2005)からのS.Kopeinig及びR.Liskaを参照せよ:RadTech Europe 05,Barcelona,Spain,October 18−20 2005,vol.2,p.375−81,Vincentzから続く「Further Covalently Bonded Photoinitiators」。これは、異なる光開始剤が、同一のオリゴマー又はポリマー中に存在する場合に、当該異なる光開始剤が顕著な相乗効果を示すことができることを示している。上記共有結合している光開始剤をまた、本発明に適用することができる。
【0078】
よって、本発明の関心がある実施形態の1つでは、上記光開始剤部分は、少なくとも2種の光開始剤部分を含む。異なる光開始剤の吸光度ピークは、異なる波長のところにあり、当該系により吸収される光の総量が増加することが好ましい。異なる光開始剤は、開裂型の全て、非開裂型の全て、又は開裂型及び非開裂型の混合物であることができる。
【0079】
好ましい開裂型光開始剤は、ベンゾインエーテル(ベンジルジアルキルケタールを含む)、例えば、Irgacure 651(Ciba);フェニルヒドロキシアルキルケトン、例えば、Darocur 1173,Irgacure 127,Irgacure 184、及びIrgacure 2959(全て、Ciba)、並びにEsacure KIP 150及びEsacure One(両方とも、Lamberti);フェニルアミノアルキルケトン、例えば、Irgacure 369(Ciba)、Irgacure 379(Ciba)、及びChivacure 3690(Double Bond Chemical);メチルチオフェニルモルホリノアルキルケトン、例えば、Irgacure 907(Ciba)及びChivacure 3482(Double bond Chemicals);及びモノ−又はジベンゾイルホスフィンオキシド、例えば、Irgacure 819及びDarocur TPO(両方ともCiba)である。
【0080】
好ましい非開裂型光開始剤は、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル安息香酸(=4−カルボキシベンゾフェノン)及びそのエステル、2−ベンゾイル安息香酸(=2−カルボキシベンゾフェノン)及びそのエステル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、2,4,6−トリメチル−ベンゾフェノン、BTDA、Omnipol BP(IGM樹脂)、及び他のベンゾフェノン誘導体;チオキサントン、例えば、Omnipol TX(IGM樹脂)及び2−カルボキシメトキシチオキサントン(Pentagon Fine Chemical);キサントン;アントラキノン;フルオレノン;ジベンゾスベロン;ベンジル及び他のα−ジケト化合物、例えば、カンファーキノン;並びにフェニルケトクマリンである。好ましい所望による電子供与体は、ベンゾカイン(エチル4−アミノベンゾエート)、PVP−DMAEMA、トリベンジルアミン、トリエタノールアミン、2−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、及びN、N−ジメチルエチレンジアミンである。
【0081】
一般的に、最も好ましい光開始剤は、Irgacure 2959、BTDA及びその誘導体、4−カルボキシベンゾフェノン及びその誘導体、2−カルボキシベンゾフェノン及びその誘導体、並びに2−カルボキシメトキシチオキサントン及びその誘導体の群から選択されるものである。
【0082】
[骨格に共有結合させるために好適な光開始剤の改良]
最も一般的な光開始剤、例えば、ベンゾインエーテル(例えば、Irgacure 651、開裂型)、ヒドロキシアルキルフェニルケトン(例えば、Darocur 1173、開裂型)、ベンゾフェノン(例えば、ベンゾフェノン、非開裂型)、及びチオキサントン(例えば、2−イソプロピルチオキサントン、非開裂型)は官能基を有しないので、上記骨格に簡易に結合させることができない。この理由のため、1又は2以上の官能基を有する光開始剤が好ましい。官能基を有する市販の光開始剤の数は制限される。というのは、恐らく、従来から、コーティング組成物中で、単官能性の、重合されていない成分が用いられてきたからである。よって、光開始剤を上記骨格に結合させることができるように、一定の官能性光開始剤をカスタム合成する必要がある場合がある。
【0083】
一方、2つの別個の化合物の間に共有結合を形成させる広大な数の化学反応が公知であり、本発明は、光開始剤上の第1級ヒドロキシル基又はアミノ基(すなわち、強い求核性)、あるいは反応性のカルボン酸誘導体、例えば、無水物又は酸塩化物(すなわち、強い求電子性)に焦点を合わせる。
次の例は、これを具体的に説明する。
【0084】
Irgacure 2959(Ciba)は、求核性の第1級ヒドロキシル基を含む、ノーリッシュタイプI光開始剤である。
【0085】
【化3】

【0086】
より高い求核性が必要な場合には、Irgacure 2959を、スルホン化し、次いで対応する第1級アミンに転化させることができる。例えば、ガブリエル合成(例えば、J.March:「Advanced Organic Chemistry.Reaction,Mechanisms,and Structure」,3.ed.,p.377−9,Wiley−Interscience,New York,1985)を参照せよ。
【0087】
【化4】

【0088】
Irgacure 2959内のヒドロキシル基を、当該Irgacure 2959が遊離のヒドロキシル基及びアミノ基と反応することができるように、いくつかの方式において、求電子性酸誘導体に官能化することができる。
【0089】
1.Irgacure 2959のCr(VI)−酸化に由来する酸:
【化5】

【0090】
2.Irgacure 2959及び無水コハク酸の1:1反応に由来する酸:
【化6】

【0091】
3.Irgacure 2959及び無水マレイン酸の1:1反応に由来する酸:
【化7】

【0092】
これらの酸は、SOCl2で処理することにより、対応する反応性の酸塩化物に好都合に転化させることができる。ケトンのヒドロキシアルキル部分において、酸塩化物部分及び第3級ヒドロキシル基の間の反応を避けるため、生成後すぐに酸塩化物を用いる場合には注意しなければならない。
【0093】
一方、対応する2−ヒドロキシエチルベンゾイルベンゾエート、例えば、下記を形成させるため、大過剰量のエチレングリコールに添加することにより、求電子性の2−,3−又は4−ベンゾイルベンゾイルクロリド(SOCl2と、市販の2−、3−又は4−ベンゾイル安息香酸との間の反応により生成し、非開裂型光開始剤ベンゾフェノンの誘導体である)を、求核性試薬に転化させることができる。
【0094】
【化8】

【0095】
エチレングリコールの代わりにエタノールアミン又はエチレンジアミンを用いる場合には、対応するN−(2−ヒドロキシエチル)ベンゾイルベンズアミド及びN−(2−アミノエチル)ベンゾイルベンズアミドが生成しうる。これらの全ての求核性誘導体は、例えば、ポリ無水物、例えば、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(SMA)(下記を参照せよ)、及びイソシアネートと反応することができる。あるいは、2−,3−又は4−ヒドロキシベンゾフェノン、あるいは2−、3−又は4−アミノベンゾフェノンを購入し、そして直接用いることができるが、これらのヒドロキシル基及びアミノ基の求核性は、上述のエチレングリコール、エタノールアミン及びエチレンジアミン誘導体の求核性よりも相当小さいであろう。
【0096】
チオキサントンはまた、非常に関心がある非開裂型光開始剤である。というのは、それらは、400nm付近を吸収し、そしてUV−A光又は可視のブルーライトにより硬化しうるからである。チオキサントンの誘導体の例は、2−カルボキシメトキシキサントンであり、求電子性酸塩化物に転化することができ、さらに必要に応じて、上述のように過剰量のエチレングリコール(2−ヒドロキシエチルチオキサントン−2−イルオキシアセテートを生成する)、エタノールアミン(N−(2−ヒドロキシエチル)チオキサントン−2−イルオキシアセトアミドを生成する)、又はエチレンジアミン(N−(2−アミノエチル)チオキサントン−2−イルオキシアセトアミドを生成する)と反応させることにより求核性種に転化させることができる。
【0097】
【化9】

【0098】
[光開始剤部分及び骨格の結合の例]
求核性骨格、例えば、16個の遊離のOH基を有するBoltorn H20を、求電子性光開始剤、例えば、4−ベンゾイルベンゾイルクロリドと直接反応させ、光活性なポリエステルを生成させることができる。
【0099】
【化10】

【0100】
Boltorn溶液に酸塩化物が添加される場合には、上記ポリオール上の光開始剤置換の程度を制御することができる。
【0101】
上記求電子性骨格の酸性成分、例えば、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基を、SOCl2又はPCl5で処理することにより、対応する酸塩化物、スルホニルクロリド又はホスホニルクロリドに転化することができる。あるいは、上記酸を、脱水剤、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドで処理して、求核性試薬に対する反応性に関して、酸無水物に類似する種を生成することができる。上記酸塩化物、スルホニルクロリド及びホスホニルクロリド及び対応する無水物を、求核性光開始剤、例えば、Irgacure 2959と反応する方向に活性化し、それぞれのエステル、アミド、スルホニルエステル、スルホンアミド、ホスホニルエステル及びホスホンアミドを生成させる。
【0102】
【化11】

【0103】
光活性なエステル及びアミドを、上記骨格からエステルのエステル交換又はアミノ基転移により、過剰量の光活性な求核性試薬を用いて形成することができる。触媒(例えば、マンガン又は亜鉛塩)を添加することができ、そして除去すべき光不活性成分が、光活性成分よりも低い沸点を有する場合には、平衡状態から、上記光不活性成分を除去するように、減圧を適用することができる。
2つの反応を、次のように表すことができる:
骨格−CO−OR + HO−光開始剤
→ 骨格−CO−O−光開始剤 + HO−R(エステル交換)
骨格−CO−OR + H2N−光開始剤
→ 骨格−CO−NH−光開始剤 + HO−R(アミノ基転移)
【0104】
「骨格−CO−OR」は、例えば、10kDa以下の重量平均分子量を有するポリ(ジエチルマレエート)であることができる。「HO−光開始剤」は、例えば、Irgacure 2959、2−又は4−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシエチル4−ベンゾイルベンズアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ベンゾイルベンズアミド、2−ヒドロキシエチルチオキサントン−2−イルオキシアセテート、又はN−(2−ヒドロキシエチル)チオキサントン−2−イルオキシアセトアミドであることができる。「H2N−光開始剤」は、例えば、Irgacure 2959アミン、N−(2−アミノエチル)−4−ベンゾイルベンズアミド、又はN−(2−アミノエチル)チオキサントン−2−イルオキシアセトアミドであることができる。
【0105】
【化12】

【0106】
エーテル、例えば、PEG又はポリ(プロピレングリコール)を、カルボキシル含有光開始剤のtert−ブチルパーオキシエステルと反応させることによりアシルオキシ化し、エーテルエステル及びtert−ブチルアルコールを得ることができる(J.March:「Advanced Organic Chemistry.Reaction,Mechanisms,and Structure,3.ed.,p.636−7,Wiley−Interscience,New York,1985を参照せよ)。一例として、ベンゾフェノン誘導体(2−ベンゾイルベンゾイルクロリド)との結合を、ここに示す。
【0107】
【化13】

【0108】
【化14】

【0109】
上記反応をまた、BTDA又はノーリッシュタイプI光開始剤の酸塩化物誘導体、例えば、Irgacure 2959酸塩化物を用いて実施することができる。
【0110】
エーテル、例えば、PEG又はポリ(プロピレングリコール)は、パーオキシドの存在下で、光開始剤二重結合をアルキル化(すなわち、付加)させ、対応するアルキル化エーテルを得ることができる。最良の結果は、電子不足アルケン、例えば、無水マレイン酸(C.Walling,E.S.Huyser(1963):「Free radical additions to olefins to form carbon−carbon bonds」,Organic Reactions,13,91−149を参照せよ)を用いて得られる。求核性光開始剤(例えば、Irgacure 2959)は、無水マレイン酸とのエステル化により、電子不足二重結合を獲得することができる。
【0111】
【化15】

【0112】
上記骨格として、イソシアネートキャップ化、低分子HPEUをまた、両末端のところで、求核性光開始剤(例えば、Irgacure 2959)を用いて官能化し、光活性ポリウレタンを生成することができる。
【0113】
【化16】

【0114】
同様に、骨格ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)(SMA)の側鎖を、求核性光開始剤(例えば、Irgacure 2959又は変性されたベンゾフェノン)を用いて変性することができる。
【0115】
【化17】

【0116】
[光開始剤に対する骨格の転化の例]
ベンゾフェノンは、ベンゾイルクロリド及び触媒としてのルイス酸(例えば、AlCl3)を用いて、電子豊富な芳香族部分をin situでフリーデル−クラフツベンゾイル化(benzoylation)することにより生成されうる。芳香族無水物、例えば、無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)及びBTDAは、ベンゾイルクロリドよりも反応性が低いが、それらも用いることができる。上記芳香族部分のパラ位が空いている場合には、当該パラ化合物は、ベンゾイル基の大きさに起因して主要な生成物である(例えば、J.March:「Advanced Organic Chemistry.Reaction,Mechanisms,and Structure」,3.ed.,p.484−7,Wiley−Interscience,New York,1985を参照せよ)。しかし、上記方法をまた、パラ位が空いていない芳香族部分と共に用いることができる。
【0117】
上記芳香族部分は、ビニルピリジン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アルコキシスチレン、アリールオキシスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、及び他のアルキル化スチレンのホモポリマー又はコポリマーの一部であることができる。HPEUの製造に用いられている任意の芳香族ジイソシアネート又は芳香族ジオールをまた、ベンゾイル化することができる。ベンゾイルクロリドの芳香環はまた、それ自体、置換されうる;ベンゾイルクロリド上の電子供与基は、反応速度を速める。
一例として、通常のポリスチレンを用いて、下記の反応が生ずる。
【0118】
【化18】

【0119】
相応じて、α,α−ジアルキル−α−ヒドロキシ置換されたアセトフェノン(すなわち、開裂型光開始剤)はまた、関連性のあるα,α−ジアルキル−α−ヒドロキシアセチルクロリドを用いて電子豊富な芳香族部分をフリーデル−クラフツアシル化することにより、in situで形成されうる。例えば、2−ヒドロキシ−2−プロピルフェニルケトンを製造するために、上記電子豊富な芳香族部分を、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニルクロリド(=2−ヒドロキシイソブチリルクロリド=α−ヒドロキシイソブチリルクロリド)で処理する必要がある。この酸塩化物の前駆体、α−ヒドロキシイソ酪酸は、Sigma−Aldrichから購入できる。
【0120】
【化19】

【0121】
酸塩化物は、一度生成すると、第3級ヒドロキシル基と反応してポリエステルポリ(2−イソブチレート)を生成しないことに注意しなければならない。
【0122】
[主鎖中に導入された光開始剤を有する骨格の合成の例]
2官能の求電子性光開始剤、例えば、BTDAは、ジヒドロキシ−又はジアミノ−末端化、求核性骨格断片、例えば、低分子HPEUと反応して、下記の対応する光開始剤含有骨格を生成することができる。
【0123】
【化20】

【0124】
生じた骨格は、側鎖の代わりに、主鎖中に光開始部分を有する。上記骨格は、本発明の範囲内である。反応は、極性有機溶媒、例えば、DMSO,DMA,DMF,NMP及びピリジン中で実施するのがベストである。
【0125】
光活性なBTDA系ポリ(エステルウレタン酸)の架橋反応は、次の通りである。
【0126】
【化21】

【0127】
下記に示すJeffamine D−230(Huntsman;疎水性;a=2〜3、b=c=0)がまた、BTDAと積極的に反応する。
【0128】
【化22】

【0129】
上述のように、BTDAはまた、低分子量骨格断片、例えば、低分子PEG及び他の低分子量ポリエーテルのヒドロキシル末端基と反応することができる。PEOのBTDA含有骨格との光硬化の際、安定な、架橋された、親水性ポリマーネットワークが形成し、湿潤すると非常に滑りやすくなる。
【0130】
[医療装置要素の調製のための詳細な手順]
[ステップ(i)]
方法の初期のステップでは、上記事前に作製された造形品及び/又は上記熱可塑性基材ポリマーを準備する。
【0131】
「熱可塑性基材ポリマー」の部分から明らかであるように、上記基材ポリマーは、好適な物理的形態、例えば、ペレット、チップ、顆粒等の好適な物理的形態において取引される市販の製品であるのが典型的である。よって、前処理又は調製が必要ないのが通常である。
【0132】
2種又は3種以上の基材ポリマーの混合物を用いる場合、溶融された形態であるか、又は一般的な溶媒に上記ポリマーを溶解させ、次いで、一般的な手順及び一般的な装置、例えば、スプレーコーティング、ローラー乾燥又は非溶媒中の沈殿により、溶媒を取り除くことのどちらかにおいて、当該ポリマーを均質化することが概して望ましい。好ましくは、溶媒溶液をフィルムにキャストし、そして当該溶媒を、任意の一般的な技法により当該フィルムから取り除く。減圧及び/又は高温を用いて、溶媒を除去することができる。得られた均一のブレンドを、溶融処理の前に、チップ化又はペレット化することができる。
【0133】
「事前に作製された造形品」のセクションから、当該造形品は、商業的な供給源から入手できることが多いか、又は従来技術内で当業者に公知であるように容易に調製されることがさらに明確である。非常に関心がある別法として、上記方法が適用されるものと同一のプロセスラインにおけるある実施形態では、上記造形品を、本発明の方法の使用の前に早急に調製することができる。さらに、上記事前に作製された造形品を前処理し、そして本発明の方法において用いる前にさらに事前コーティングすることができる。
【0134】
[ステップ(ii)]
上記医療装置要素の調製におけるコーティング組成物を、一般的な溶媒内でそれらの成分を溶解させることにより調製することができる。次いで、上記溶媒を除去し、一又は複数のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び光開始剤部分を有する一又は複数の骨格、並びに押出し用に準備される任意の添加剤の均一のブレンドを残すことができる。任意の一般的な手順又は装置を、溶媒除去、例えば、スプレーコーティング、ローラー乾燥又は非溶媒、例えば、アセトン又は四塩化炭素中の沈殿のために用いることができる。好ましくは、上記溶媒溶液を、フィルム上にキャストし、そして任意の一般的な技法により当該フィルムから溶媒を除去する。次いで、キャストされたフィルムを周囲〜約70℃の温度において、対流オーブン内で加熱することができる。減圧を用いて、溶媒の除去を補助することができる。生じた均一のブレンドを、溶融処理又は粉体コーティングの前にチップ化又はペレット化することができる。
【0135】
続いて、このペレット化されたコーティング組成物を、以下のステップ(iii)に関して記載するように、上記事前に作製された造形品又は上記熱可塑性基材ポリマーの上に、押出すか、射出成形するか、又は粉体コーティングすることができる。
【0136】
[ステップ(iii)]
このステップは、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーと共に、又は上記事前に作製された造形品上に、ステップ(ii)のコーティング組成物を、上記コーティング組成物の層をその上に有する上記事前に作製された造形品の医療装置要素及び/又は基材ポリマーを提供するように、押出すか、射出成形するか、又は粉体コーティングすることを含み、上記事前に作製された造形品及び基材ポリマーの両方が存在する場合には、上記事前に作製された造形品は、その上に、上記基材ポリマーの層を有する。
【0137】
3つの主要な実施形態が、このステップに含まれる。
第1の主要な実施形態では、事前に作製された造形品のみが、ステップ(i)において準備され、そしてステップ(iii)は、ステップ(i)の事前に作製された造形品の上に、ステップ(ii)のコーティング組成物を、上記コーティング組成物の層をその上に有する上記事前に作製された造形品の医療装置要素を提供するように、押出すか、射出成形するか、又は粉体コーティングすることを含む。
【0138】
第2の主要な実施形態では、ステップ(i)において熱可塑性基材ポリマーのみが準備され、そしてステップ(iii)が、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーと共に、ステップ(ii)のコーティング組成物を、上記コーティング組成物の層をその上に有する上記熱可塑性基材ポリマーの医療装置要素を提供するように、押出すか、又は射出成形することを含む。
【0139】
第3の主要な実施形態では、ステップ(i)において、事前に作製された造形品並びに熱可塑性基材ポリマーが準備され、ステップ(iii)は、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーと共に、上記事前に作製された造形品上で、ステップ(ii)のコーティング組成物を、上記事前に作製された造形品の医療装置要素及び上記熱可塑性基材ポリマーを提供するように、押出すか、又は射出成形することを含み、上記事前に作製された造形品は、その上に上記熱可塑性基材ポリマーの層を有し、そして上記熱可塑性基材ポリマーは、その上に上記コーティング組成物の層を有する。
【0140】
第3の主要な実施形態を、下記に論ずる。
第1の主要な実施形態の第1の変形では、上記コーティング組成物の溶融物を、事前に作製された造形品の表面上に押出す(例えば、例6を参照せよ)。
【0141】
第1の主要な実施形態の第2の変形では、上記コーティング組成物の溶融物を、事前に作製された造形品の表面上に射出成形する。
第1の主要な実施形態の第3の変形では、上記コーティング組成物を、事前に作製された造形品の表面上に粉体コーティングする。
【0142】
第2の主要な実施形態の変形の1つでは、上記熱可塑性基材ポリマーの溶融物及び上記コーティング組成物の溶融物を押出し、上記基材ポリマーの表面上に上記コーティング組成物のコーティングを有する造形品を得る。
【0143】
第2の主要な実施形態の別の変形では、上記熱可塑性基材ポリマーの溶融物及び上記コーティング組成物の溶融物を射出成形し、上記基材ポリマーの表面上に上記コーティング組成物のコーティングを有する造形品を得る。この関心がある変形を、2つのステップの射出成形法において達成することができ、そこでは、上記コーティング組成物の外側の層を最初に成形し、次いで上記熱可塑性基材ポリマーを成形する。
【0144】
第3の主要な実施形態の変形の1つでは、上記基材ポリマーの溶融物及び上記コーティング組成物の溶融物を、事前に作製された造形品の表面上に押出す。
【0145】
第3の主要な実施形態の別形では、上記基材ポリマーの溶融物及び上記コーティング組成物の溶融物を、事前に作製された造形品の表面上に射出成形する。この関心がある変形を、2ステップの射出成形法において達成することができ、そこでは、上記コーティング組成物の外側の層を、ソリッドコアを用いて最初に成形し、次いで、コアとして上記事前に作製された造形品を用いて上記熱可塑性基材ポリマーを成形する。
【0146】
上記コーティング組成物を、任意の一般的且つ市販の押出し装置を用いて押出す/上記基材ポリマーと共に共押出しすることができる。好適な共押出し装置を、例えば、Genca Cable Company,Clearwater,Fla.又はWayne Machine and Die Company,Totowa,NJ.から購入することができ、あるいは必要に応じて、カスタム共押出し装置を、特定の医療装置要素の製作用に設計することができる。
【0147】
あるいは、上記組成物を、事前に作製された形状の製品、例えば、ポリマー製品上にクロスヘッド押出しするか、又は共押出しすることができる。スキン層の押出しは、一般的な工程であり、そこでは、熱可塑性プラスチック材料(ここでは、上記熱可塑性基材ポリマー又は上記コーティング組成物)の溶融物を、固形の、連続した、形作られた表面に、直接、ダイを介して、計量しながら供給する。
さらに、(共)押出し及び射出成形を、米国特許第5,061,424号明細書及び同第6,447,835号明細書に記載されるように実施することができる。
【0148】
上記コーティング組成物を、熱可塑性基材ポリマー又は事前に作製された造形品上にコーティングを提供するように射出成形することができる。上記射出成形の変形は、1つ又は2つの工程のステップであることができる。第1の主要な実施形態の第2の変形(上記を参照せよ)に相当する変形の1つでは、上記コーティング組成物を、上記事前に作製された造形品のソリッドコアを用い、最終製品の逆の形状である型に高圧で注入する。第2の主要な実施形態の第2の変形(上記を参照せよ)に相当する第2の変形では、ステップ(iii)を、2つの下位のステップ、すなわち、ソリッドコアを用いて上記コーティング組成物を第1に成形し、上記ソリッドコアを取り出し、続いて、所望により若干小さいソリッドコアを用いて、上記熱可塑性基材ポリマーを成形することにより達成することができる。
【0149】
第3の主要な実施形態の第2の変形(上記を参照せよ)に相当する第3の変形では、ステップ(iii)を、2つの下位のステップ、すなわち、ソリッドコアを用いて上記コーティング組成物を第1に成形し、上記ソリッドコアを取り出し、続いて、ソリッドコアとして事前に作製された固形製品を用いて、上記熱可塑性基材ポリマーを成形することにより達成することができる。第2の主要な実施形態(上記を参照せよ)の第2の変形に相当する第4の変形では、ステップ(iii)を、2つの下位のステップ、すなわち、あるサイズのキャビティーを用いて、上記熱可塑性基材ポリマーを第1に成形し、続いて、若干大きいキャビティーを用いて、上記熱可塑性基材ポリマー上に上記コーティング組成物を成形することにより達成することができる。
【0150】
第3の主要な実施形態の第2の変形(上記を参照せよ)に相当する第5の変形では、ステップ(iii)を、2つの下位のステップ、すなわち、あるサイズのキャビティー及びコアとしての上記事前に作製された造形品を用いて、上記熱可塑性基材ポリマーを第1に成形し、当該キャビティーを取り出し、続いて、若干大きいキャビティーを用いて、上記熱可塑性基材ポリマー上に上記コーティング組成物を成形することにより達成することができる。一般的な原理に一般的に従う粉体コーティングに関して、一又は複数のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び光開始剤部分を有する一又は複数の骨格を含むペレット化された化合物を、5〜250μmの範囲の粒径に微粉砕することができる。通常、10〜100μmの範囲の粒度分布を有する粉体コーティング組成物が好ましい。
【0151】
上記粉体コーティング組成物は、スプレーにより、又は流動層システムを用いることにより適用されるのが典型的である。金属基材(事前に作製された造形品)の場合には、静電気スプレーにより上記コーティングを適用することが好ましい。スプレーの場合には、好ましい厚さを有する膜を提供するために、上記粉体コーティングを、単一走査又は複数回のパスにおいて適用することができる。
【0152】
スプレーにより、又は流動層システムを用いることにより、あるいは当業界に公知の粉体コーティング適用技術により粉体を適用した後、基材の種類にもよるが、熱可塑性粉体を、約80〜200℃に加熱し、厚さ約5〜250μm、通常は厚さ約10〜100μmの均一なコーティング層を形成する。
【0153】
上記コーティング組成物の乾燥層の厚さは、概して2.5〜500μm、好ましくは2.5〜125μmである。
上記基材ポリマー(存在する場合)の厚さは、典型的には5〜1000μm、さらに典型的には10〜50μm又は100〜500μmである。
【0154】
上記方法により得られる医療装置要素は、指触により又は液体を用いた湿潤化により加湿されるまで乾燥し且つ一般的に非粘着性であり、指触により又は液体を用いた湿潤化により加湿されると、上記医療装置要素は、滑りやすくなり、なめらかな表面となる。
【0155】
本発明の方法は、ロッド又はチューブの形状を有する医療装置要素の調製に特に有用である。例えば、そのようにして調製されたカテーテルは、水含有流体と接触すると即座に滑らかになり、それにより、カテーテル法を受ける患者の快適性に顕著に寄与する。ガイド−ワイヤーの形状の押出されたロッドは、湿潤すると滑らかになり、ひいては容易にスライドすることができる。
【0156】
押出し又は射出成形の後、上記医療装置要素を、例えば、冷気により又は水浴内で冷却する必要がある場合がある。
これを前提に、現在最も好ましいステップ(iii)の実施形態は、(共)押出しを含むものである。
【0157】
[ステップ(iv)]
次のステップでは、上記コーティング組成物を、上記コーティング組成物が共有結合的に架橋するように、UV又は可視光で照射する。UV又は可視光は、100〜750nmの波長を有するものとして規定される。特に関連性のある波長範囲は、100〜250nm及び250〜400nm(両方とも紫外線)、及び400〜750nm(可視光)である。本発明の文脈において、用語「光硬化する」、「光硬化」等は、UV又は可視光を用いて硬化させることを指す。紫外線を用いた硬化が好ましいが、ブルーライト(可視光波長範囲)を用いた硬化を、等しく適用することができる。
【0158】
UV又は可視光を、多色性又は単色性UV又は可視光供給源を用いて適用することができ、一又は複数の上記光開始剤の吸光度に適合する発光スペクトルを有し且つ高強度を有するものが好ましい。反応性モノマーがない場合、上記コーティングの架橋は、UV(又は可視光)が照射された光開始剤に由来するラジカルの2分子の組み合わせのみにより行われる。よって、光の強度が2倍になると、ラジカルの濃度が2倍になるが、架橋反応の量は4倍になる。これが、高い光強度が好ましい理由である。好適な多色性光源は、以下を含む:(i)重水素ランプ、(ii)場合によっては、出力スペクトルに優位に作用する鉄、ガリウム又は他の元素でドープされた水銀ランプ、(iii)キセノンアークランプ(パルス化及び未パルス化の両方)、及び(iv)ハロゲンランプ(主に可視光を発する)。好適な単色性光源は、下記を含む:(v)気体及び固体レーザー(場合によっては、振動数2倍、3倍、4倍又は他の振動数操作手段)(パルス化及び未パルス化の両方)、及び(vi)UV及び可視領域における発光ダイオード(パルス化及び未パルス化の両方)。
【0159】
最適の照射時間及び光の強さは、当業者による慣例の実験により容易に見出されうる。経験的理由(例えば、医療装置の大規模な製造)において、照射時間は、好ましくは300秒以下であるべきであり、そして特に600秒以下であるべきである。
本発明の現在最も好ましい実施形態は、下記を含む。
【0160】
I.次の各ステップを含む医療装置要素を調製するための方法;
(i)熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)コーティング組成物を準備するステップ;
(iii)ステップ(ii)のコーティング組成物及びステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーを、上記コーティング組成物の層をその上に有する上記基材ポリマーの医療装置要素を提供するように共押出しするステップ:
(iv)上記コーティング組成物を、上記コーティング組成物が共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で照射するステップ。
【0161】
II.次の各ステップを含む医療装置要素を調製するための方法;
(i)事前に作製された造形品及び所望による熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)コーティング組成物を準備するステップ;
(iii)事前に作製された造形品の医療装置要素及び、存在する場合には、その上に上記コーティング組成物の層を有する基材ポリマーを提供するように、上記事前に作製された造形品、及び存在する場合には、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーの上に、ステップ(ii)のコーティング組成物を共押出しするステップ、ここで、上記基材ポリマーが存在する場合には、上記事前に作製された造形品は、上記事前に作製された造形品の上に、上記記載ポリマーの層を有する:
(iv)上記コーティング組成物を、上記コーティング組成物が共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で照射するステップ。
【0162】
III.次の各ステップを含む医療装置要素を調製するための方法;
(i)熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)コーティング組成物を準備するステップ;
(iii)ステップ(ii)のコーティング組成物及びステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーを、上記コーティング組成物の層をその上に有する基材ポリマーの医療装置要素を提供するように、射出成形するステップ:
(iv)上記コーティング組成物を、上記コーティング組成物が共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で照射するステップ。
【0163】
IV.次の各ステップを含む医療装置要素を調製するための方法;
(i)事前に作製された造形品及び所望による熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)コーティング組成物を準備するステップ;
(iii)上記事前に作製された造形品の医療装置要素及び、存在する場合には、その上に上記コーティング組成物の層を有する上記基材ポリマーを提供するように、上記事前に作製された造形品及び、存在する場合には、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーの上にステップ(ii)のコーティング組成物を射出成形するステップ、ここで、上記基材ポリマーが存在する場合には、上記事前に作製された造形品は、上記事前に作製された造形品の上に上記基材ポリマーの層を有する:
(iv)上記コーティング組成物を、上記コーティング組成物が共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で照射するステップ。
【0164】
[新規な医療装置]
上述の方法により製造した医療装置要素は、それ自体新規な製品を表すと考えられる。上記医療装置は、光開始剤部分の残基を特徴とし、そして当該残基は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)と、任意の非熱可塑性親水性ポリマーと、上記1種又は2種以上の低分子量骨格との合計量の0.01〜20重量%を構成する。
【0165】
本明細書において、用語「光開始剤部分の残基」は、上記光開始剤部分が所望の作用を実施(すなわち、上記コーティング組成物の架橋、特に、一又は複数の上記ポリ(エチレンオキシド)及び任意の非熱可塑性親水性ポリマーの鎖の架橋を直接又は間接のどちらかで促進する)した後に存在する形態の光開始剤部分を意味する。上記光開始剤部分の残基は、本来の光開始剤と比較して、分子レベルに従って、転移した又は開裂した状態と認められるのが典型的である。
【0166】
上記コーティング内の光開始剤部分の残基の含有率は、NMR(溶液又は固体状態)分光法により測定することができるであろう。というのは、上記光開始剤は、芳香族部位のスペクトルに共鳴が生じ、一方、PEOは脂肪族部位に共鳴を有するからである。例えば、1H−NMRスペクトルから得られた積分強度を用いて、上記コーティング中の他の種類と比較した、上記光開始剤の含有率を測定することができる。あるいは、元素分析及び/又はXPS分析から、上記コーティングの半化学式を導き出すことができ、上記コーティング中の光開始剤の含有率を決定するために直接用いることができる。別の方法は、上記コーティング中の上記光開始剤並びに他の種及び存在物の両方のUV−vis、IR及び/又はNIRスペクトル内の明確に区別できるバンドの強度を用いることである。相対強度を比較することにより、上記光開始剤の含有率を決定することができる。クロマトグラフィー技法、例えば、HPLC、SEC及びLC−MSnもまた、クロマトグラムからの積分強度を比較することにより、コーティング内に存在する光開始剤の含有率を決定するために用いることができる。LC−MSnでは、クロマトグラム内のシグナルの起源(例えば、上記光開始剤から)を同定するために、質量分析を用いる。例えば、SECでは、追加の実験、例えば、NMRが、クロマトグラム内で観察される各シグナルの起源をさらに同定するために必要である。
【0167】
さらに、LC−MS技法と同様であるが、実際のコーティング組成物を分析する前に追加の必要とされる標準及び較正を伴うGC−MS技法を用いることができる。上述の分析技法を利用する前に、上記コーティング中の光開始剤並びに/又は他の種及び存在物の化学系誘導体化が必要であろう。原子吸光測定がまた、コーティング組成物を測定するための分析ツールを提供する。原則として、積分されたシグナルを明確に区別できる任意の分光器及び/又は分光技法を、特定の化学物質の官能基を特定するために選定することができ、そして上記コーティング中に存在する光開始剤の相対量を決定するために、相対元素組成を用いることができる。コーティング中の光開始剤の相対量を決定する前に、下記に要約されるいくつかの実験を実施するべきである。
【0168】
1.加熱及びUV−vis放射、並びに場合によっては関連性のあるそれらの組み合わせの両方の結果として、光開始剤の分解を記述するべきである。上記分解の情報を用いて、上記コーティングを硬化させる前に、上記コーティング中に存在する光開始剤の量を決定することができる。
【0169】
2.上記コーティング内に存在する光開始剤の周囲媒体への拡散。さらに具体的には、コーティング中に存在する1種又は2種以上の光開始剤の、時間の関数としての水性又は高極性媒体への拡散を記述すべきである。さらに、非極性媒体への拡散を記述すべきである。媒体中に含まれる親水性コーティング及び上記コーティングが含まれる時間を考慮すると、上記拡散データを用いて、包含前に上記コーティング中に存在する光開始剤の量を決定することができる。
【0170】
分解及び拡散データを手元に有することにより、処理条件の前に、コーティング内に存在する光開始剤部分の残基の相対量を決定することができる。
【0171】
よって、本発明はまた、熱可塑性基材ポリマーの医療装置要素を含む新規な医療装置であって、上記熱可塑性基材ポリマーの上に次の(a)及び(b)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する医療装置に関する;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記一又は複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、上記光開始剤部分の残基は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び上記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
ここで、上記コーティング組成物は、上記熱可塑性基材ポリマーと共に、(共)押出しされるか又は射出成形され、そして
上記コーティング組成物の共有結合架橋は、上記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の存在の結果として得られたものであり、
上記光開始剤部分は、上記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露することにより、上記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は上記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【0172】
本発明はまた、事前に作製された造形品の医療装置要素を含む新規な医療装置であって、上記事前に作製された造形品の上に次の(a)及び(b)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する医療装置にさらに関する;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記一又は複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、上記光開始剤部分の残基は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び上記1種又は2種以上の低分子量骨格の0.01〜20重量%を構成する;
ここで、上記コーティング組成物は、上記事前に作製された造形品と共に、押出しされるか又は射出成形され、そして
上記コーティング組成物の共有結合架橋は、上記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の結果として得られたものであり、
上記光開始剤部分は、上記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露することにより、上記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は上記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【0173】
本発明は、事前に作製された造形品の医療装置要素を含む新規な医療装置であって、上記事前に作製された造形品の上に熱可塑性基材ポリマーの層を有する医療装置にさらに関し、上記熱可塑性基材ポリマーは、上記熱可塑性基材ポリマーの上に次の(a)及び(b)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、上記一又は複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、上記光開始剤部分の残基は、上記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び上記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;ここで、上記コーティング組成物は、上記事前に作製された造形品と共に、押出しされるか又は射出成形される;そして上記コーティング組成物の共有結合架橋は、上記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の結果として得られたものであり、上記光開始剤部分は、上記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露することにより、上記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は上記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【0174】
上述の考察を受けて、上記コーティング組成物は、エチレン系不飽和モノマーの低分子量残差を含まない。
【0175】
上記事前に作製された造形品、上記熱可塑性基材ポリマーとして、そして上記コーティング組成物の成分として有用な材料は、本発明の方法に関して上述した通りである。
よって、実施形態の一つでは、上記熱可塑性基材ポリマーは、ポリウレタン及びPVCから成る群から選択される。
【実施例】
【0176】
【表1】

【0177】
【表2】

【0178】
【表3】

【0179】
[材料]
PEO Polyox WSR N−80(Mw 200kDa)及びPolyox N−301(Mw 4MDa)を、Dowから購入した。Irgacure 2959を、Ciba Specialty Chemicals(Basel,Switzerland)から購入した。97% BTDAを、Alfa Aesarから購入した。4−ベンゾイル安息香酸、2−ベンゾイル安息香酸及びtert−ブチルパーオキシベンゾエートを、Aldrichから購入した。CuClを、Flukaから購入した。
【0180】
SMA 1000(酸価 465〜495mg KOH/g試料、Mw 5500g/モル)、SMA 2000(酸価 335〜375mg KOH/g試料、Mw 7500g/モル)、及びSMA 3000(酸価 265〜305mg KOH/g試料、Mw 9500g/モル)を、Atofinaから購入した。Boltorn H20(Mn=2100g/モル、多分散性指数(PDI,Polydispersion Index)=1.3)、Boltorn H30(Mn=3500g/モル、PDI=1.5)、及びBoltorn H40(Mn=5100g/モル、PDI=1.8)を、Perstorpから購入した。
【0181】
1−メチルイミダゾール及びピリジンを、Merckから購入した。エチルアセテート、2−プロパノール及びアセトンを、Bie&Berntsen(Denmark)から購入した。DMSO及びチオニルクロリドを、Aldrichから購入した。ベンゼンを、Flukaから購入した。メチルイソブチルケトン(MIBK)を、Bakerから購入した。ジクロロメタンを、AppliChemから購入した。Jeffamine D−230を、Huntsmanから購入した。
全てのパーセンテージ及び部は、特に明記しない限り、重量/重量%である。
【0182】
[接着の主観的評価]
摩擦及び基材への接着を、少なくとも24時間水の中で膨潤させた後、主観的に評価した。2つの層の間の接着に、1〜4の評点をつけた。
1.完全な層間はく離
2.乏しい接着、水膨れが大量にある
3.良好な接着、水膨れがほとんどない
4.非常に良好な接着、滑らかな表面
【0183】
[ゲル凝集の主観的評価]
試料を、少なくとも24時間、脱イオン水に浸漬した。UV硬化されたコーティングのEstane 58212基材への接着を、例1に示すように評点をつけた。同時に、ゲルの凝集を、主観的スケール1〜6で評点づけた。
【0184】
1=架橋せず;コーティングが溶解した
2=破壊され、取り扱うことができない、非常に弱いゆるいゲル
3=いくぶん安定なゲル
4=ある程度安定なゲル
5=ほぼ安定なゲル
6=全体的に安定な及び結合力のあるゲル
【0185】
[例1:SMAにより結合されたIrgacure 2959及びPolyoxから成るコーティング]
[SMA 1000のIrgacure 2959エステルの合成(化合物1)]
1.124gのSMA 1000(平均酸価480mg KOH/gの試料に基づいて、4.81ミリモルの無水物)及び1.373gのIrgacure 2959(6.12ミリモル)を、12gのアセトンに溶解させた。0.503gの1−メチルイミダゾール(6.13ミリモル)を、触媒及び塩基の併用物として添加したところ、溶液が黄色に変化した。混合物を、気密の耐圧ガラス瓶内に70℃で保管した。FT−IRによる1770〜1860cm-1の無水物基の消失が続き、そして63時間後に、反応が本質的に完了したことが示された(データは示されず)。冷却の際、溶液が不透明になり、そして多少の沈殿が観察された。上記溶液を、HClを用いてpH1〜2に酸性化し、そしてIrgacure 2959のSMA 1000酸エステルを、エチルアセテートで抽出した。
【0186】
エチルアセテート相の乾燥及び上記溶媒の蒸発の後、粘稠な、黄色っぽいオイルが残った。当該化合物を、メタノールに溶解し、風袋を測定したペトリ皿に移動し、換気された加熱乾燥機内に入れ、そして70℃で80分間乾燥し、粘性の黄色の化合物を得た;これが、化合物1であった。さらなる作業を行わなかった。収量は、2.00gであった。上記ポリマー中のIrgacure 2959の理論量は、49w/w−%であった。しかし、上記調製物中に存在するIrgacure 2959の最大量は、遊離のIrgacure 2959及び結合されたIrgacure 2959の吸光係数が同一であるとの仮定の下、UV−Vis分光法により、22w/w−%であると測定された。これは、より高い見積もりであった。というのは、Irgacure 2959の最大吸光度の波長における可能性のあるバックグラウンド吸収に関する補正を行わなかったからである。(274〜5nm、メタノール及び1,3−ジオキソラン中)。
【0187】
[試料1Aの調製:Polyoxから成るゲル中の、SMA 1000に結合されたIrgacure 2959]
0.91部の化合物1と、89.18部のPolyox N−301と、9.91部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、最大0.20%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、100℃で1分間、ホットプレスし、厚さ1mmの円形スライスを形成させた。上記スライスの四分の一を、スペーサなしで、100℃において、できるだけ薄いスライスまでさらにホットプレスした。厚さは定期的に測定しなかったが、150〜200μmであった。混合物2の薄いスライスを、エタノールで清浄にあらかじめ拭き取ったEstane 58212のシート上に、約30〜45秒間、100℃及び50バールにおいて積層させた(スペーサは用いなかった)。上記試料を、2つの部分に分け、両方を、透明になるまで、5〜10分間、60〜80℃に加熱した。次いで、一方の試料を、すぐUV硬化させ(1分間)、そして他方の試料を、100%の強度で運転しているFusion I600 H−ランプからおおよそ26cmの距離において5分間硬化させた。上記試料を、実験部分の導入のところで記載されるように、主観的に評価した。
【0188】
[SMA 2000のIrgacure 2959エステルの合成(化合物2)]
1.428gのSMA 2000(平均酸価355mg KOH/gの試料に基づいて、4.52ミリモルの無水物)及び1.151gのIrgacure 2959(5.13ミリモル)を、12gのアセトンに溶解させた。0.421gの1−メチルイミダゾール(5.13ミリモル)を添加すると、溶液が黄色に変化した。混合物を、気密の耐圧ガラス瓶内に、70℃で保管した。FT−IRによる1770〜1860cm-1の無水物基の消失が続き、そして63時間後に、反応が60〜65%完了したことが示された(データは示されず)。よって、反応が、SMA 1000を用いた場合よりも遅かった。上記溶液を、HClを用いてpH1〜2に酸性化し、そしてIrgacure 2959のSMA 2000酸エステルを濾過し、アセトンに溶解させ、風袋を測定したペトリ皿に移動し、換気された加熱乾燥機内に入れ、そして70℃で170分間乾燥し、一部軟らかい領域を有する、主に硬い結晶の物質を得た;これが、化合物2であった。さらなる作業は行わなかった。収量は、1.88gであった。上記ポリマー中のIrgacure 2959の理論量は、41.5w/w−%であった。しかし、上記調製物中に存在するIrgacure 2959の最大量は、UV−Vis分光法により、11w/w−%であると測定された。
【0189】
[試料1Bの調製:Polyoxから成るゲル中の、SMA 2000に結合されたIrgacure 2959]
1.12部の化合物2と、88.99部のPolyox N−301と、9.89部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、最大0.12%のIrgacure 2959を含んでいた。当該混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0190】
[SMA 3000のIrgacure 2959エステルの合成(化合物3)]
1.647gのSMA 3000(平均酸価285mg KOH/gの試料に基づいて、4.18ミリモルの無水物)及び0.991gのIrgacure 2959(4.42ミリモル)を、12gアセトンに溶解させた。0.363gの1−メチルイミダゾール(4.42ミリモル)を添加すると、溶液が黄色に変化した。混合物を、気密の耐圧ガラス瓶内に、70℃で保管した。FT−IRによる1770〜1860cm-1の無水物基の消失が続き、そして63時間後に、反応が60〜65%完了したことが示された(データは示されず)。よって、反応が、SMA 1000を用いた場合よりも遅かったが、SMA 2000とほぼ同じ速度であった。上記溶液を、HClを用いてpH1〜2に酸性化し、そしてIrgacure 2959のSMA 3000酸エステルをメチルイソブチルケトンで抽出した。メチルイソブチルケトン相の乾燥及び上記溶媒の蒸発の後、黄色の物質が残った。当該化合物を、アセトンに溶解し、風袋を測定したペトリ皿に移動し、換気された加熱乾燥機内に入れ、そして70℃で一晩中乾燥し、黄白色の、透明な、もろいガラスを得た;これが、化合物3であった。さらなる作業を行わなかった。収量は、2.22gであった。上記ポリマー中のIrgacure 2959の理論量は、36w/w−%であった。しかし、上記調製物中に存在するIrgacure 2959の最大量は、遊離のIrgacure 2959及び結合されたIrgacure 2959の吸光係数が同一であるとの仮定の下、UV−Vis分光法により、25w/w−%であると測定された。
【0191】
[試料1Cの調製:Polyoxから成るゲル中の、SMA 3000に結合されたIrgacure 2959]
1.33部の化合物3と、88.80部のPolyox N−301と、9.87部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。当該混合物は、最大0.33%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0192】
[試料1A〜Cに関する結果及び考察]
結果を、以下に示す。
【0193】
【表4】

【0194】
Polyoxコーティング(1A〜C)を有する試料において、ゲルの凝集は、次のパターンに従う:SMA 3000(0.33% Irgacure 2959)>SMA 1000(0.20% Irgacure 2959)>SMA 2000(0.12% Irgacure 2959)。この順番は、上記試料内のIrgacure 2959の濃度に従い、一方、SMAポリマーの順序は、ランダムであると思われる。よって、Irgacure 2959の濃度は、ゲルの良好なUV架橋を達成するために、少なくとも0.3%である必要があるが、SMAの種類の影響は、より少ないように見える。
【0195】
試料1Cを5分間UV硬化させたところ、上記基材に強く接着する良好なゲルが生じた。この効果は、より良好な硬化を可能とする、試料1C内のIrgacure 2959の比較的低い濃度に起因することができるか、又は上記効果は、SMAが結合されたIrgacure 2959の、基材及びPolyoxの両方との特に良好な相溶性に起因することができる。
【0196】
[例2:脂肪族の、疎水性ポリウレタンに結合されたPolyox及びIrgacure 2959から成るコーティング]
化合物4及び5が、Bomar Specialties Co(Winsted,CT)によりカスタム合成され、そしてヨーロッパにおいてIGM Resin(Waalwijk,the Netherlands)により流通されている。化合物4は、3つの末端のところがIrgacure 2959で官能化されている、中間分子量の、脂肪族の、3官能性ポリエーテルウレタンであった。化合物4におけるIrgacure 2959の含有率は、Bomarにより示されるように、33.0w/w−%であった。化合物5は、両末端のところがIrgacure 2959で官能化されている、中間分子量の、脂肪族の、直鎖のポリエーテルウレタンであった。化合物5内のIrgacure 2959の含有率は、Bomarにより示されるように、15.5w/w−%であった。FT−IRにより測定されるように、どちらの化合物も、任意のアクリレート基を含まなかった。
【0197】
[試料2Aの調製:Polyoxから成るゲル内の1%の化合物4]
1部の化合物4と、89.1部のPolyox N−301と、9.9部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、0.33%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0198】
[試料2Bの調製:Polyoxから成るゲル内の5%の化合物4]
5部の化合物4と、85.5部のPolyox N−301と、9.5部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、1.65%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0199】
[試料2Cの調製:Polyoxから成るゲル内の10%の化合物4]
10部の化合物4と、81部のPolyox N−301と、9部のPolyoxとを、N−80大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、3.30%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0200】
[試料2Dの調製:Polyoxから成るゲル内の1%の化合物5]
1部の化合物5と、89.1部のPolyox N−301と、9.9部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、0.16%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0201】
[試料2Eの調製:Polyoxから成るゲル内の5%の化合物5]
5部の化合物5と、85.5部のPolyox N−301と、9.5部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、0.78%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0202】
[試料2Fの調製:Polyoxから成るゲル内の10%の化合物5]
10部の化合物5と、81部のPolyox N−301と、9部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。この混合物は、1.55%のIrgacure 2959を含んでいた。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0203】
[試料2A〜Fに関する結果及び考察]
結果を、以下に示す。
【0204】
【表5】

【0205】
試料2A〜Cは、5分のUV硬化の後、上記基材に良好に接着する強いゲルを生じさせた。試料2E〜Fはまた、5分のUV硬化の後、強いゲルを生じさせたが、これらのゲルは、上記基材に接着しなかった。これらの実験は、光活性ポリマーの幾何学的配置が、上記ゲル内の光開始基の絶対的な(sheer)濃度よりも、接着のために重要であることを明らかに実証している。すなわち、3官能性の光活性ポリウレタン化合物4は、上記基材ポリマーを強く接着する一方で、2官能性化合物5は、上記基材ポリマーを強く接着しなかった。ゲル内の0.16%のIrgacure 2959(試料2D)は、5分のUV硬化の後でさえも、ゲルの有効な架橋を誘導するために十分ではないことがまた明らかであり、この結果は、試料1Bに関しても見出される。
【0206】
[例3:光開始剤としてBTDA−Jeffamine縮合ポリマーを有するPolyoxから成るコーティング]
[BTDA−Jeffamine D−230縮合ポリマーの合成(化合物6)]
1.77gの97%BTDA(5.33ミリモル)を、磁気的に攪拌し、そして60℃に加熱して、12gのDMSO内に溶解させた。1.23gのJeffamine D−230(5.35ミリモル)を、かなりの発熱を伴いながら添加した。混合後、数分以内に記録されたFT−IRにより、二無水物及びジアミンの間の反応が瞬間的であったことが示された。
【0207】
当該溶液を、HClを用いてpH1〜2に酸性化し、そしてBTDA−Jeffamine D−230縮合ポリマーをジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン相を乾燥させ、ジクロロメタンを蒸発させた;これが、化合物6であった。上記化合物は、最大11.4%のBTDAを含んでいたが、BTDAの最大吸収(257nm、エタノール中)のところに大きなバックグラウンド吸収があるため、UV−Vis分光法により確認することができなかった。
【0208】
[試料3Aの調製:Polyoxから成るゲル内の、光開始剤としてのBTDA/Jeffamine D−230縮合ポリマー]
1.73部の化合物6と、88.44部のPolyox N−301と、9.83部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。上記試料は、最大0.20%のBTDAを含んでいた。
【0209】
[試料3Aに関する結果及び考察]
結果を、以下に示す。
【0210】
【表6】

【0211】
低濃度の光開始剤を用いたにもかかわらず、1分間のUV硬化の後、試料3Aから比較的強いゲルが生成した。しかし、5分間のUV硬化におけるゲル強度の方が良好であった。
【0212】
[例4:光開始剤として、Boltornに結合されたベンゾフェノンを有するPolyoxから成るコーティング]
[4−ベンゾイルベンゾイルクロリドの合成]
100mLの丸底フラスコ内で、5.00gの4−ベンゾイル安息香酸(22.1ミリモル)、10.0mLのチオニルクロリド(16.31g、137ミリモル)及び1滴のDMFを、100℃に保持されたオイルバスの中で75分間還流させた。反応の際に生成したガス状SO2及びHClの流れを、ゴムチューブ及びガラスピペットを経由して、強攪拌されている1MのNaOH溶液の表面上に向け、そこでは、大部分のガスが吸収され、スルファイト及びクロリドに転化した。水酸化ナトリウムが、系内に逆に吸引されるリスクを考慮し、上記ガラスピペットの先端が水酸化ナトリウム溶液の表面と接触しないように注意した。
【0213】
75分の環流の後、オイルバスを取り出し、そして反応混合物を室温に冷却した。冷却器を取り出し、そして上記丸底フラスコからのゴムチューブの一部を、膜ポンプの入口に向け、そして上記膜ポンプからの出口を、ゴムチューブ及びガラスピペットを経由して、撹拌されている1MのNaOH溶液の方向に向けた。上記ガラスピペットは、最初の実験よりもNaOH溶液から長い距離のところにあるべきである。というのは、上記ポンプを介した気流が、最初の実験に由来するガス状SO2及びHClの自然な流れよりも非常に大きいからである。次いで、吸引を適用し、そして最初の10分間は室温で、次いで、次の10分間は、温かいオイルバス内で反応混合物を穏やかに加熱して、未反応のSOCl2を除去した。合成の次のステップにおいて用いられるまで、パール、イエローの、固形の4−ベンゾイルベンゾイルクロリドを有するフラスコに栓をした。膜ポンプは、500mLの脱イオン水を、当該ポンプを通して、ヒュームフード内のプラスチックバケットのふたの中の2つの小さな穴の1つ内に直接吸引することにより遊離の残余のSOCl2をフラッシュした。
【0214】
[4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステルの合成(化合物7)]
直接取り付けられた蒸留ヘッドを有する250mLの丸底フラスコ内で、2.43gのBoltorn H−20(平均OH価510mg KOH/gの試料に基づいて、22.1ミリモルのOH)を、50mLのピリジン(48.9g;0.618モル)に溶解させた。当該混合物を、磁気スターラーを有するマントルを加熱して蒸留することにより乾燥させた。というのは、水が、ピリジンと低沸点共沸混合物を生成するからである(共沸混合物沸点 93.6℃;共沸混合物は、75.5モル%の水を含む)。水が取り除かれるとすぐに、蒸留温度を、純粋なピリジンの沸点(すなわち115.3℃)まで上げた;この点から、さらに4〜5mLのピリジン/水を、小さな漏斗を介して測定用シリンダー内に集めた。
【0215】
130℃の加熱乾燥機内で乾燥させた100mLの滴下漏斗を、4−ベンゾイルベンゾイルクロリドを含む100mLの丸底フラスコの上に置いた(上記を参照せよ)。Boltorn H−20の温かい無水の溶液を、滴下漏斗に移動し、そして窒素バブラーを、水分を除外するために取り付けた。10〜15mLのBoltorn溶液を、少量のガス状HClのみが、上記液体の上に形成する速度で添加した;これは、上記フラスコ内で磁気攪拌を再度可能にすべきである。上記溶液の残りを、上記フラスコの外側の温度が、約40℃(素手により判断した、外部冷却又は加熱は行わなかった)を超えない速度で添加した。反応混合物は、ブラウンになった。必要に応じて、溶液を、氷浴内で冷却した。反応混合物のBoltorn付加の終端に向かって、反応混合物が、ライトブラウンに見えるピリジニウムクロリドの沈殿により、より濃くなった。約1時間の後、発熱が止まり、そして反応が完了したサインとして、反応混合物が室温になった。
【0216】
過剰量の濃縮HClを添加して、全てのピリジンを水溶性化するためにプロトン化し、そしてBoltornエステルを、水性相から3×50mLのCH2Cl2に抽出した。有機系抽出物を、MgSO4を用いて一晩乾燥し、そしてCH2Cl2を蒸発させた。4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステルは、淡褐色の硬い固体であった。これが、化合物7であった。
【0217】
[試料4Aの調製:Polyoxから成るゲル内の、光開始剤としての4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステル]
1.45部の化合物7と、88.695部のPolyox N−301と、9.855部のPolyoxN−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるように、ホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0218】
[4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステルの合成(化合物8)]
2.48gのBoltorn H−30(平均OH価 500mg KOH/gの試料に基づいて、22.1ミリモルのOH)を、50mLのピリジン(48.9g;0.618モル)に溶解させ、乾燥し、そして5.00gの4−ベンゾイル安息香酸から製造した4−ベンゾイルベンゾイルクロリドと反応させた(ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステル(化合物7)の合成に記載されるのと同様)。4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステルは、淡褐色のろう状物質であった。これが、化合物8であった。
【0219】
[試料4Bの調製:Polyoxから成るゲル内の、光開始剤としての4−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステル]
1.46部の化合物8と、88.69部のPolyox N−301と、9.85部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0220】
[2−ベンゾイルベンゾイルクロリドの合成、バッチNo.1(「2−BBCl−1」と省略する)]
2−BBCl−1の合成を、4−ベンゾイルベンゾイルクロリドの合成(上記を参照せよ)と同様に実施した。しかし、2−BBCl−1は、黄色のオイルであり、そして4−ベンゾイルベンゾイルクロリドのような固体ではなかった。
【0221】
[2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステルの合成(化合物9)]
2.43gのBoltorn H−20(平均OH価 510mg KOH/gの試料に基づいて、22.1ミリモルのOH)を、50mLのピリジン(48.9g;0.618モル)に溶解させ、乾燥し、そして上述のように、5.00gの2−ベンゾイル安息香酸から製造した2−BBCl−1と反応させた。2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステルは、淡褐色の硬い固体であった。これが、化合物9であった。
【0222】
[試料4Cの調製:Polyoxから成るゲル内の、光開始剤としての2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−20エステル]
1.45部の化合物9と、88.695部のPolyox N−301と、9.855部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0223】
[2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステルの合成(化合物10)]
2.48gのBoltorn H−30(平均OH価 500mg KOH/gの試料に基づいて22.1ミリモルのOH)を、50mLのピリジン(48.9g;0.618モル)に溶解させ、乾燥し、そして上述のように、5.00gの2−ベンゾイル安息香酸から製造した2−BBCl−1と反応させた。2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステルは、淡褐色の硬い固体であった。これが、化合物10であった。
【0224】
[試料4Dの調製:Polyoxから成るゲル内の、光開始剤としての2−ベンゾイル安息香酸のBoltorn H−30エステル]
1.46部の化合物10と、88.69部のPolyox N−301と、9.85部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分間及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0225】
[試料4Eの調製:Polyoxから成るゲル内の、Boltorn H−20に結合されていない2−ベンゾイル安息香酸]
0.24部の2−ベンゾイル安息香酸と、1.21部のBoltorn H−20と、88.695部のPolyox N−301と、9.855部のPolyox N−80とを、大気圧において2分間、次いで減圧下で2分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。上記混合物を、試料1Aに関して記載されるようにホットプレスし、積層し、そして1分及び5分間、UV硬化させた。上記試料を、試料1Aに関して記載されるように、主観的に評価した。
【0226】
[試料4A〜Eに関する結果及び考察]
結果を、以下に示す。:
【0227】
【表7】

【0228】
全て結合された光開始剤を有する試料4A〜Dを比較すると、4−BBA(4A−B)のみが、Polyox−コーティングの5分間のUV硬化後に上記基材に対するコーティングの良好な接着を確保することができた一方で、2−BBAは、良好な接着を確保できなかった(4C−D)ことは明らかである。一方、2−BBAは、4−BBAよりも強いPolyoxゲルを生成した。結合していない2−BBA及びH−20を有する試料4Eは、Polyoxにおける他の全ての光開始剤の組み合わせと対照的に、1分間のUV硬化の後強いゲルを生成しなかった;H−20は、そこに結合される光開始剤と共に最小に作用することは明らかである。
【0229】
[例5:光開始剤部分を保持するPEG4000骨格の調製]
4−ベンゾイル安息香酸(2.63g、11.6ミリモル)を、トルエン(100mL)に添加し、そして混合物を45℃まで加熱した。塩化オキサリル(1.85g、14.6ミリモル)を添加し、続いてDMFを数滴添加し、そして反応混合物を、45℃で一晩撹拌した。溶媒を除去した後、残差をさらにトルエン(100mL)に溶解し、CaH2のいくつかの塊を添加し、そして混合物を、1時間、RTにおいて撹拌した。混合物をろ過し、そして溶媒を除去して、粗酸塩化物を残し、すぐにTHF(100mL)に溶解させた。tBuOOH(2.5mL、5.5M、デカン中、14ミリモル)及び30%KOH(3mL、16ミリモル)を同時に添加し、そして反応混合物を、RTで一晩撹拌した。2MのNa2CO3(50mL)を添加し、そして有機層を分離し、そして乾燥した(MgSO4)。次いで、セライトを添加し、そして溶媒を除去した。
【0230】
残差をカラム上に置いた。EtOAc及びヘプタンを用いた溶媒溶離を用いたカラムクロマトグラフィーにより、若干黄色のオイルとして、1.6g(46%)のtert−ブチル4−ベンゾイルベンゾパーオキソエート(peroxoate)が残った;1H−NMR(CDCl3,RT):8.05(d,2H,J=8Hz),7.84(d,2H,J=8Hz),7.79(d,2H,J=8Hz),7.61(t,1H,J=8Hz),7.49(t,1H,J=8Hz),1.43(s,9H);13C−NMR(CDCl3,RT):195.6,163.5,141.7,136.7,133.0,130.7,130.0,129.8,129.0,128.4,84.3,26.2。
【0231】
ClariantからのPEG4000(2g)を、ベンゼン(200mL)に溶解させ、そして新たに調製したCuCl(5mg)を添加した。溶液を環流まで加熱して、そこでベンゼン(25mL)に溶解したtert−ブチル4−ベンゾイルベンゾパーオキソエート(1g,3.4ミリモル)を、液滴として添加し、そして反応混合物を、さらに72時間環流した。反応の際、カラーが、若干グリーンからブルーに変化した。RTまで冷却した後、反応を、2MのNa2CO3(5mL)を用いて急冷し、続いて、水を蒸留により除去した。次いで、混合物をろ過し、そして溶媒をヘプタンに注いだ。一定時間の後、油性物質が、ビーカーの底に生成し、そして残った溶媒を、ベンゾフェノン官能性のPEGを残すように静かに移した;これが、化合物11であった。1H−NMR及びUV−vis測定により、約30重量%のベンゾフェノンの充填率が示された。FT−IR測定により、2つのケト−官能基の存在を確認する1718cm-1及び1645cm-1におけるバンドが示された。
【0232】
[試料5Aの調製:Polyoxから成るゲル内の、PEOに結合されたベンゾフェノン]
化合物11(4部)と、Polyox N−301(88部)と、Polyox N−80(8部)とを、大気圧において10分間、120℃において、Brainder mixer内で混合した。次いで、混合物を、120℃でホットプレスした。上記PEO骨格上のベンゾフェノンの充填率を考慮すると、この混合物は、約1w/w−%の光開始剤を有効に含んでいた。比較のため、Polyox N−301(89部)と、Polyox N−80(10部)と、ベンゾフェノン(1部)とを、化合物11を含む化合物に関するのと同一の条件において混合した。最後に、Polyox N−301(90部)及びPolyox N−80(10部)の化合物を製造し、そしてホットプレスした。全ての3つの化合物の同様の寸法のフィルムを、1時間、Dr.Honle GmbHのUVランプを用いてUV照射した。硬化の際、試料の温度は、フィルムに関する溶融温度超に上昇した。上記フィルムのゲル特性が、それらをペトリ皿に置き、そしてそれらを水で覆うことにより評価された。目視検査は、光開始剤を有しない混合物がゲルを形成しなかった一方で、結合されていないベンゾフェノン及びPEO骨格に結合されたベンゾフェノンの両方を有するフィルムが同様の強度のゲルを生じたことを表していた。
【0233】
[例6:Sumitomo(150〜400kDa)からのPEO 1NF及び脂肪族の、疎水性ポリウレタンに結合したIrgacure 2959]
【0234】
【表8】

【0235】
これらの成分を、ツインスクリューエクストルーダー内で混合した。上記成分を、重量測定フィーダーにより上記エクストルーダーに供給し、ストランド内に押出し、そしてペレット化した。
上記エクストルーダーのプロファイルは、以下の通りであった。
【0236】
【表9】

【0237】
次いで、2つのシングルスクリューエクストルーダーを、シングルクロスヘッドデュアルチューブダイに接続した。エクストルーダーNo.1及びエクストルーダーNo.2の両方を、化合物Aで充填した。ブレンドを、Estane 58212の事前に作製されたチューブ上に押出し、15m/分における速度を用いて、単層を形成した。化合物B、C及びDを用いて、同一の手順を繰返し、そして薄い単層を形成し、そして80及び100%強度において、Fusion 600I H−lampを用いて、インラインUV硬化させた。
【0238】
内層の外層に対する比を、エクストルーダーを速くするか又はスクリュースピードを下げることのいずれかの出力の調整により変化させた。層の厚さを、出力又は引取装置のどちらかを変化させることにより調製した。
2つのエクストルーダーは、同一の温度プロファイルを有していた。
【0239】
【表10】

【0240】
押出し後、コーティングされたチューブを、35cm長の試料にカットした。UV硬化された試料を、少なくとも24時間、0.9%の食塩水内で膨潤させた。上記層のチューブに対する接着及びゲル凝集を、主観的に評価した。
【0241】
最初の3つの化合物は、最も高い強度でUV硬化させた場合に、上記チューブへの接着を向上させた。脂肪族の、疎水性ポリウレタンに結合されたIrgacure 2959の量が最も低い化合物Aは、上記チューブに許容できるように接着させるために、最も高いUV強度が必要であった。脂肪族の、疎水性ポリウレタンに結合されたIrgacure 2959の量が最も高い化合物Dは、大いに低いUV強度で硬化し、上記チューブに適度に接着することができた。
【0242】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の各ステップを含む医療装置要素を調製するための方法;
(i)事前に作製された造形品及び/又は熱可塑性基材ポリマーを準備するステップ;
(ii)下記を含むコーティング組成物を準備するステップ;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、前記複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)1種又は2種以上の低分子量骨格であって、当該低分子量骨格に共有結合されている及び/又は当該低分子量骨格内に共有結合的に導入されている複数の光開始剤部分を有する低分子量骨格、ここで、前記光開始剤部分は、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び前記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
(iii)ステップ(ii)のコーティング組成物を、ステップ(i)の事前に作製された造形品及び/又は熱可塑性基材ポリマーの上に、前記コーティング組成物の層をその上に有する事前に作製された造形品及び/又は前記基材ポリマーの医療装置要素を提供するように、押出す、射出成形する又は粉体コーティングするステップ、ここで、前記事前に作製された造形品及び前記基材ポリマーの両方が存在する場合、前記事前に作製された造形品は、前記事前に作製された造形品の上に前記基材ポリマーの層を有する:
(iv)前記コーティング組成物を共有結合的に架橋させるように、UV又は可視光で、前記コーティング組成物を照射するステップ。
【請求項2】
前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)が、前記組成物の唯一のポリマー成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー成分が、1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと組み合わせた、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリオキサゾリン、及びコポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)から成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記骨格が、ポリエチレングリコール、ポリ(スチレン−co−無水マレイン酸)、脂肪族ポリエーテルウレタン、ポリエーテルアミン及びポリエステルから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記骨格の重量平均分子量が、100〜10,000Da(g/モル)の範囲にある、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリ(エチレンオキシド)が、100,000〜8,000,000Daの範囲、特に200,000〜4,000,000Daの範囲における平均分子量を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング組成物が、下記;
20〜99.99重量%の前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
0〜10重量%の1種又は2種以上の可塑剤;
0.01〜80重量%の前記1種又は2種以上の低分子量骨格;及び
0〜5重量%の他の成分:
から成る、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、下記;
40〜94重量%の前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)(PEO);
5〜30重量%の前記1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマー;
0〜10重量%の1種又は2種以上の可塑剤;
1〜40重量%の前記1種又は2種以上の低分子量骨格;及び
0〜5重量%の他の成分:
から成る、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
事前に作製された造形品が、ステップ(i)において準備され、そして
ステップ(iii)が、ステップ(ii)のコーティング組成物を、ステップ(i)の事前に作製された造形品の上に、前記コーティング組成物の層をその上に有する前記事前に作製された造形品の医療装置要素を提供するように、押出す、射出成形する又は粉体コーティングすることを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
熱可塑性基材ポリマーが、ステップ(i)において準備され、そして
ステップ(iii)が、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーと共にステップ(ii)のコーティング組成物を、前記コーティング組成物の層をその上に有する前記熱可塑性基材ポリマーの医療装置要素を提供するように、押出す又は射出成形することを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
事前に作製された造形品及び熱可塑性基材ポリマーが、ステップ(i)において準備され、そして
ステップ(iii)が、ステップ(i)の熱可塑性基材ポリマーと共に、前記事前に作製された造形品の上に、ステップ(ii)のコーティング組成物を、前記事前に作製された造形品の医療装置要素及び前記熱可塑性基材ポリマーを提供するように、押出す、射出成形する又は粉体コーティングすることを含み、
前記事前に作製された造形品は、その上に前記熱可塑性基材ポリマーの層を有し、そして前記熱可塑性基材ポリマーは、その上に前記コーティング組成物の層を有する、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
熱可塑性基材ポリマーの医療装置要素を含む医療装置であって、
前記熱可塑性基材ポリマーの上に次の(a)及び(b)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する医療装置;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、前記複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、前記光開始剤部分の残基は、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び前記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
ここで、前記コーティング組成物は、前記熱可塑性基材ポリマーと共に、(共)押出しされるか又は射出成形され、そして
前記コーティング組成物の共有結合架橋は、前記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の存在の結果として得られたものであり、
前記光開始剤部分は、前記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露させることにより、前記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は前記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【請求項14】
事前に作製された造形品の医療装置要素を含む医療装置であって、
前記事前に作製された造形品の上に次の(a)及び(b)の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有する医療装置;
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、前記複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、前記光開始剤部分の残基は、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び前記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
ここで、前記コーティング組成物は、前記事前に作製された造形品と共に、押出しされるか又は射出成形され、そして
前記コーティング組成物の共有結合架橋は、前記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の結果として得られたものであり、
前記光開始剤部分は、前記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露させることにより、前記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は前記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【請求項15】
事前に作製された造形品の医療装置要素を含む医療装置であって、
前記事前に作製された造形品の上に熱可塑性基材ポリマーの層を有する医療装置;
ここで、前記熱可塑性基材ポリマーは、前記熱可塑性基材ポリマーの上に、次の(a)及び(b);
(a)1種又は2種以上の非熱可塑性親水性ポリマーと所望により組み合わせた、唯一の又は複数のポリマー成分としての、1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、ここで、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)は、前記複数のポリマー成分の少なくとも50重量%を構成する;及び
(b)複数の光開始剤部分の残基を有する1種又は2種以上の低分子量骨格、ここで、前記光開始剤部分の残基は、前記1種又は2種以上のポリ(エチレンオキシド)、任意の非熱可塑性親水性ポリマー及び前記1種又は2種以上の低分子量骨格の合計量の0.01〜20重量%を構成する;
の共有結合的に架橋されたコーティング組成物の層を有し、
前記コーティング組成物は、前記事前に作製された造形品及び前記熱可塑性基材ポリマーと共に、(共)押出しされるか又は射出成形され、そして
前記コーティング組成物の共有結合架橋は、前記コーティング組成物中の1種又は2種以上の光開始剤の結果として得られたものであり、
前記光開始剤部分は、前記コーティング組成物をUV又は可視光に暴露させることにより、前記低分子量骨格に共有結合されているか、そして/又は前記低分子量骨格の主鎖内に共有結合的に導入されている。
【請求項16】
前記コーティング組成物が、エチレン系不飽和モノマーの低分子量残差を含まない、請求項13〜15のいずれか一項に記載の医療装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−512815(P2010−512815A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540785(P2009−540785)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063984
【国際公開番号】WO2008/071796
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(500085884)コロプラスト アクティーゼルスカブ (153)
【Fターム(参考)】