説明

ポンプ式泡吐出容器

【課題】泡吐出後の泡あるいは液体のポンプ内部への逆流によって生じる使用性低下の改善されたポンプ吐出容器を提供する。
【解決手段】上方末端に係止部を設けた棒状弁体40によって気液混合部と液室との連通を制御するポンプ式泡吐出容器において、気液混合部の下方において、その内側方向へと張り出すように、該棒状弁体40の係止部外周面と当接可能な可撓性の部材からなる弁座部36を設け、且つノズルヘッド22の上昇直後において、液室の上方開口端が該棒状弁体40と当接するよりも先に、該可撓性弁座部36が該棒状弁体40と当接する構成とすることによって、該泡又は液体の空気通路内への逆流が著しく低減され、ポンプ式泡吐出容器の使用性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルヘッドを押し下げることによって容器本体内の発泡性液体と空気とを混合して形成した泡を泡吐出口から吐出するポンプ式泡吐出容器、特に泡吐出後の泡あるいは液体のポンプ内部への逆流によって生じる使用性低下の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体の上部に設けられたノズル体のノズルヘッドを押し下げることによって、容器本体内に収容された発泡性液体と、容器外から吸入した空気とを混合して泡を形成し、ノズルヘッド内部の泡通路を介して容器外部へと泡を吐出するポンプ式の泡吐出容器として、従来から様々な構成の容器が提案されている。なお、このような従来のポンプ式泡吐出容器においては、通常、ノズルヘッドが液用ピストン及び空気用ピストンと連動して上下動が可能となっている。
【0003】
すなわち、ノズルヘッドの上昇に伴って、液用シリンダに摺接する液用ピストンが上昇することで容器本体内の発泡性液体が液室内に吸入され、これと同時に空気用シリンダに摺接する空気用ピストンが上昇することで容器外の空気が空気室内に吸入される。さらに、ノズルヘッドの下降に伴って、液用ピストンが下降することで液室内の発泡性液体が気液混合室へと送り込まれ、これと同時に空気用ピストンが下降することで空気室内の空気が気液混合室へと送り込まれる。そして、気液混合室へと送り込まれた発泡性液体と空気とが混合されることによって泡が形成され、形成された泡はノズルヘッド部の下流側末端に設けられた泡吐出口から吐出される。
【0004】
ここで、以上のような従来のポンプ式泡吐出容器においては、気液混合室内に残留した泡あるいは液体が、気液混合室と空気室とを結ぶ空気通路内へと逆流してしまう場合があった。そして、この場合、空気通路内へと流れ込んだ泡又は液体が乾燥によって固化し、流路を狭め、あるいは塞いでしまい、気液混合室への空気の供給量が減少して泡質が低下してしまったり、さらにはポンプの押し下げに要する圧力が増大してしまう等、ポンプ式泡吐出容器としての使用性が低下してしまう問題が生じていた。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には、上方末端に略すり鉢状の係止部を設けた棒状弁体によって、液室の混合室側出口と同時に空気通路の混合室側出口も閉鎖する構成とすることで、混合室内に残存した泡又は液体の空気通路内への逆流を妨げるポンプ式泡吐出容器が提案されている。なお、通常、ポンプ式泡吐出容器は、ノズルヘッド下降の際に泡を吐出する構成であるため、ノズルヘッドが下死点にある状態においては、液室の混合室側出口及び空気通路の混合室側出口がともに開放されている。すなわち、特許文献1に記載のポンプ式泡吐出容器においては、ノズルヘッドが下死点から上昇を始めた後、空気通路の混合室側出口と液室の混合室側出口が、棒状弁体によって同時に閉鎖されることになる。ここで、ノズルヘッドが下死点から再度上昇を始める際には、これに伴って液室及び空気室の容積が大きくなるため、一時的に液室及び空気室が減圧状態となる。このため、特許文献1に記載のポンプ式泡吐出容器においても、ノズルヘッドが上昇を開始してから、液室及び空気通路の混合室側出口が棒状弁体によって閉鎖されるまでの間、該混合室に残存した泡あるいは液体が、減圧状態となった空気通路及び空気室内にも逆流してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2581644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みて行われたものであり、すなわち、その解決すべき課題は、泡吐出後の泡あるいは液体のポンプ内部への逆流によって生じる使用性低下の改善されたポンプ式泡吐出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、前記従来技術の課題に鑑み鋭意検討を行なった結果、上方末端に係止部を設けた棒状弁体によって気液混合部と液室との連通を制御するポンプ式泡吐出容器において、気液混合部の下方において、その内側方向へと張り出すように、該棒状弁体の係止部外周面と当接可能な可撓性の部材からなる弁座部を設け、且つノズルヘッドの上昇直後において、液室の上方開口端が該棒状弁体と当接するよりも先に、該可撓性弁座部が該棒状弁体と当接する構成とすることによって、該泡又は液体の空気通路内への逆流が著しく低減され、ポンプ式泡吐出容器の使用性が改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかるポンプ式泡吐出容器は、容器本体と、該容器本体の口部に装着される吐出ポンプ体とを備え、該吐出ポンプ体の上方に設けられたノズルヘッド部を上下動させることで、該容器本体内に収容された発泡性液体と空気とを気液混合部内で混合して泡を形成するとともに、該泡を該ノズルヘッド部に設けられた泡吐出口から吐出するポンプ式泡吐出容器であって、
前記吐出ポンプ体は、
前記容器本体内と連通可能な筒状の液用シリンダと、
前記液用シリンダ内の内側方向に設けられた弁座部と当接可能であり、これによって前記液用シリンダ内と前記容器本体内との連通を開閉可能とする吸液弁体と、
前記液用シリンダ部内の内壁面と摺接して上下動が可能であり、該液用シリンダとの間隙を液室として構成するとともに、その上方向への移動によって前記容器本体内の発泡性液体を該液室内へと吸入し、且つその下方向への移動によって該液室内の発泡性液体をその上方に設けられた開口端を通じて上方の気液混合部へと圧送する筒状の液用ピストンと、
前記液用シリンダよりも大径で、且つ該液用シリンダの外側を略同心状に取り巻く有底筒状の空気用シリンダと、
前記空気用シリンダ内の内壁面と摺接して上下動が可能であり、該空気用シリンダとの間隙を空気室として構成するとともに、その上方向への移動によって、上方の外部空間と連通可能に設けられた吸気孔を通じて該空間内の空気を該空気室内へと吸入し、且つその下方向への移動によって、その上方に設けられた送気孔を通じて該空気室内の空気を上方へと圧送する筒状の空気用ピストンと、
前記吸気孔を開閉可能とする吸気弁体と、
前記送気孔を開閉可能とする送気弁体と、
前記送気孔を通じて前記空気室内と連通し、上方の気液混合部へと空気を導入する空気通路と、
前記液用ピストンの上方開口端を通じて液室内と連通するとともに、前記空気通路を介して空気室内と連通し、前記液室内から導入された発泡性液体と前記空気室内から導入された空気とを混合して泡を形成する筒状の気液混合部と、
前記液用シリンダと前記液用ピストンとの間に介在し、該液用シリンダと該液用ピストンとの間隙を拡げる方向へと付勢するスプリングと、
前記液用シリンダと前記液用ピストンとにより形成された空間内に設けられ、その上方末端が該液用ピストン部の上方開口端を貫通しており、且つその貫通した上方末端において、該液用ピストンの上方開口端の径よりも大きな外径に拡径された略すり鉢状の係止部が設けられた棒状の弁体であって、該係止部分の外周面と該液用ピストンの上方開口端の内周面とが当接可能であり、これによって該液用ピストン内と該気液混合部内との連通を開閉可能とする棒状弁体と、
前記気液混合部の下方において、その筒状内側方向へと周状に張り出すように設けられ、前記棒状弁体の係止部の外周面と当接が可能であり、これによって該気液混合部内と前記液室及び該空気通路との連通を開閉可能とする、少なくとも下方向への可撓性を有する板状の部材からなる弁座部であって、且つ該棒状弁体の係止部の外周面と前記液用ピストンの上方開口端の内周面とが当接しない状態で、該棒状弁体の係止部の外周面との当接が可能である可撓性弁座部と、
前記気液混合部内と連通し、且つ前記液用ピストン及び前記空気用ピストンと連動して上下動が可能であって、その下方向への移動によって、該気液混合部内で形成された泡をその反対側末端に設けられた泡吐出口から吐出するノズルヘッドと
を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記ポンプ式泡吐出容器において、
前記液用シリンダ内に設けられた弁座部と前記吸液弁体は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接せずに該液用シリンダ内と前記容器本体内との連通を開放し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接して該液用シリンダ内と該容器本体内との連通を閉塞する一次弁を構成し、
前記空気用ピストンに設けられた吸気孔と前記吸気弁体は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、該吸気弁体が該吸気孔へと当接せずに前記空気室内と前記空気用ピストン上方の外部空間との連通を開放し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接して該空気室内と該空気用ピストン上方の外部空間との連通を閉塞する二次弁を構成し、
前記空気用ピストンに設けられた送気孔と前記送気弁体は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、該送気弁体が該送気孔へと当接して前記空気室内と前記空気通路との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッド部の下方向への移動の際、互いに当接せずに該空気室内と該空気通路との連通を開放する三次弁を構成し、
前記液用ピストンの上方開口端の内周面と前記棒状弁体の係止部の外周面は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接して前記液室と前記気液混合部内との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッド部の下方向への移動の際、互いに当接せずに該液室と該気液混合部内との連通を開放する四次弁を構成し、
前記気液混合部に設けられた可撓性弁座部と前記棒状弁体の係止部の外周面は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接して前記液室及び空気導入路と該気液混合部内との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接せずに該液室及び該空気導入路と該気液混合部内との連通を開放する五次弁を構成し、且つ
前記ノズルヘッドが下死点にある状態から上方向へと移動する際に、前記五次弁における可撓性弁座部が、前記四次弁における液用ピストン部の上方開口端よりも先に前記棒状弁体の係止部の外周面へと当接することによって、一時的に前記五次弁が閉塞され、且つ前記四次弁が開放された状態となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポンプ式泡吐出容器によれば、気液混合部の下方において、その内側方向へと張り出すように、該棒状弁体の係止部外周面と当接可能な可撓性の部材からなる弁座部を設け、且つノズルヘッドの上昇直後において、液室の上方開口端が該棒状弁体と当接するよりも先に、該可撓性弁座部が該棒状弁体と当接する構成とすることによって、該泡又は液体の空気通路内への逆流が著しく低減され、ポンプ式泡吐出容器の使用性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかる泡吐出容器の吐出ポンプ体の断面図である(ノズルヘッドが上昇端にある状態の正面断面図)。
【図2】本発明の一実施形態にかかる可撓性弁座部36の平面図及び断面図である((A):平面図,(B):正面図)。
【図3】本発明の一実施形態にかかる吐出ポンプ体におけるノズルヘッド移動時の可撓性弁座部の作用の説明図である((A):下降端,(B):上昇直後,(C):上昇中及び上昇端)。
【図4】本発明の一実施形態にかかる吐出ポンプ体のノズルヘッド部上昇端、下降時、上昇時における作動状態の説明図を示す((a):上昇端,(b)下降時,(c):上昇時)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施形態を説明する。
ポンプ式泡吐出容器の構成
本実施形態にかかるポンプ式泡吐出容器は、液体が収容される容器本体と、該容器本体の上端の口部に着脱自在に装着される吐出ポンプ体と、該吐出ポンプ体と連通して容器本体の内部へと延びた管体とを備えている。
図1に、本発明の一実施形態にかかる吐出容器の吐出ポンプ体10の断面図(ノズルヘッドが上昇端にある状態の正面断面図)を示す。
【0014】
本実施形態にかかる吐出ポンプ体10の下方に設けられたスカート状のベースキャップ部20は、その内周面に雌ネジが形成されている。一方、発泡性液体を収容する容器本体の口部(図示しない)には、その外周面に雄ネジが設けられており、ベースキャップ20の雌ネジと螺合することによって、吐出ポンプ体10が容器本体に着脱自在に装着される。
【0015】
ここで、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10は、ベースキャップ部20と、操作部及び吐出部となるノズルヘッド部22と、液用シリンダ24A及び空気用シリンダ24Bを構成する二重シリンダ24と、液用ピストン26と、空気用ピストン28とを、主な構成部品としているものである。なお、これらの構成部品は、通常の場合、いずれも合成樹脂素材より形成され、例えば、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂を単独で、あるいは適宜混合して用いることができる。
【0016】
以下、吐出ポンプ体10における各構成部品の具体的な構造について説明する。
二重シリンダ24は、一つの部品として合成樹脂を用いて射出成形法等によって一体成形されたものである。すなわち、同心的に配置された大径の空気用シリンダ24Bと小径の液用シリンダ24Aとが一体的に成形されたものであり、また、空気用シリンダ24Bの上端開口縁部には、容器本体の口部上端に載置される円環状のフランジ部24aが形成されている。
【0017】
二重シリンダ24の空気用シリンダ24Bは、フランジ部24aに続いて、容器本体口部の内径と同等あるいはわずかに小径の外径を有する短い大径部分と、それよりわずかに小径で均一な内径のシリンダ壁とからなる筒状の部分である。空気用シリンダ24Bのシリンダ壁の下端からは、さらに上方に反転して、連結部分24bが径方向内方に延びている。
【0018】
二重シリンダ24の液用シリンダ24Aは、その上端が連結部分24bの径方向内端に連なって該連結部分24bから下方に延びており、円筒形のシリンダ壁24cの下端に、後述する筒状係止体32の下端の受け部となる円環状の台座部24dが形成され、その下方でボール弁30の弁座となる漏斗状のボール弁座部24eが形成され、さらにその下方に、容器本体内から液用シリンダ24A内部へと発泡性液体を導くための管体12を圧入するための円筒形の下側筒状部24fが形成されている。また、下側筒状部24fに圧入された管体12は、容器本体内の底部付近まで延びている。
【0019】
空気用ピストン28及び液用ピストン26は、それぞれが別個の部品として合成樹脂を用いて射出成形法等によって成形され、その後で一つのピストン体として同心的に連結されているものである。二重シリンダ24に対して、空気用ピストン28の摺動シール部28aが空気用シリンダ24Bのシリンダ壁内面に沿って摺動するように設置され、また、液用ピストン26の摺動シール部26cが液用シリンダ24Aのシリンダ壁24c内面に沿って摺動するように設置されている。空気用ピストン28の上端にはノズルヘッド部22が連結されている。
【0020】
空気用ピストン28は、軸心部の上部小径部28bと、該上部小径部28bと同心的に配置された下部大径部28cとを、中間連結部28dを介して一体的に形成したものである。下部大径部28cの上端から径方向内側に中間連結部28dが形成され、該中間連結部28dの内側周縁部から上部小径部28bが上方に立ち上がっている。上部小径部28bの上端部には、内径がわずかに縮径された縮径部28eが設けられ、該上部小径部28bと該縮径部28eとによって段部が形成されている。そして、この段部に当接するように後述する可撓性弁座部36が嵌め込まれ、位置決めされる。縮径部28eの内面には、縦リブ28fが放射状に設けられている。該縦リブ28fは、下面が下方外方に向けて傾斜した傾斜面として構成されている。下部大径部28cの下端には、空気用シリンダ24Bのシリンダ壁内面との間で充分に気密性を確保でき、且つ、該空気用シリンダ24Bの内面に対して上下方向に摺動できるように、摺動シール部28aが一体的に形成されている。
【0021】
液用ピストン26は、全体が略円筒形状をしており、その軸心中空部の上端部の内面側には、内径が上方に向かって大径となる漏斗状の液室弁座部26aが形成されている。液用ピストン26の下端部には、液用シリンダ24Aのシリンダ壁24c内面を液密状態で上下動する摺動シール部26cが形成されていて、該摺動シール部26cの内側には、後述するコイルスプリングの上端側の受け部となるように円環状の平面部が形成されている。
【0022】
空気用ピストン28と液用ピストン26は、液用ピストン26の上端部分が空気用ピストン28の上部小径部28bの下部内側に圧入されることで、一つのピストン体として一体的に連結されている。このように一体化されたピストン体26及び28は、前記二重シリンダ24に対し、空気用ピストン28を空気用シリンダ24B内に挿入し、液用ピストン26を液用シリンダ24A内に挿入することによって、一体的に上下動が可能なように組み付けられている。
【0023】
なお、液用ピストン26と液用シリンダ24Aとの間には、コイルスプリング(図1中点線で示す)が介装されている。すなわち、液用シリンダ24Aの下端付近と液用ピストン26の下端付近との間に、後述する筒状係止体32の下端に形成された円環状の受け部32aを介して、コイルスプリングが介装されている。このため、ピストン体26及び28は、コイルスプリングのバネ力によって二重シリンダ24に対して常に上方に付勢されている。
【0024】
また、以上の容器構成により、液用シリンダ24Aと液用ピストン26との内側の空間として液室Aが形成され、空気用シリンダ24Bと空気用ピストン28及び液用ピストン26とにより囲まれた空間として空気室Bが形成されている。また、液用ピストン26の上端部と空気用ピストン28の上部小径部28b上部に形成された段部内面との間に、後述する可撓性弁座部36が嵌入されており、空気用ピストン28の縮径部28e、可撓性弁座部36、後述する棒状弁体40先端の係止部40a及び多孔体ホルダ38とによって囲まれた空間として混合室Cが形成されている。なお、液用ピストン26上方の外側と空気用ピストン28の上部小径部28bの内側及び可撓性弁座部36の下面に囲まれた空間として、空気室Bから混合室Cへと空気を送り込むための空気通路Dが形成されている。
【0025】
すなわち、空気用ピストン28の上部小径部28bは、その上端部近傍の段部内側に可撓性弁座部36が嵌め込まれ、一方、該上部小径部28bの下部内側は、液用ピストン26の嵌入部となっている。また、液用ピストン26の上部外面の前記嵌入部に対応する箇所には、縦方向溝が円周方向に複数本設けられており、これによって、液用ピストン26の上部外面と空気用ピストン28の内面との間に空気通路Dが形成されている。
【0026】
液用ピストン26の上部外面の嵌入部に対応する箇所には、前記縦方向溝を形成するための縦方向リブが設けられており、該縦方向リブは空気用ピストン28の上部小径部28bへと圧入可能なように、その外面を結ぶ仮想円の外径が空気用ピストン28の上部小径部28bの内径と略等しくされている。なお、空気通路Dを形成するための縦方向溝あるいは縦方向リブについては、液用ピストン26上部外面の嵌入部に対応する部分ではなく、空気用ピストン28の内面側に設けてもよい。
【0027】
〈可撓性弁座部〉
図2に、本発明の一実施形態にかかる可撓性弁座部36の平面図及び断面図((A):平面図,(B):横方向断面図)を示す。
可撓性弁座部36は、略円筒状の部品であって、外円周部36aと、中央に設けられた孔を周状に取り囲み、外円周部36aから内方に張り出した比較的厚みの小さい可撓性の弁座部分36bとによって構成されている。ここで、可撓性の弁座部分36bは、合成樹脂等の可撓性を有する素材によって、少なくとも下方向への可撓性を有した状態で設けられている。
【0028】
可撓性弁座部36の外円周部36aの外径は、空気用ピストンの上部小径部28bの内径に略等しくなるように形成されており、また、外円周部36aの内径は空気用ピストンの縮径部28eの内径に略等しくなるように形成されている。他方、可撓性弁座部36における可撓性の弁座部分36bの内径は、棒状弁体40の先端に設けられた略すり鉢状の係止部40aと当接可能なように、該係止部40a先端の最大外径よりも小さくなるように形成されている。
【0029】
可撓性弁座部36の外円周部36aは、空気用ピストン28の上部小径部28bの上方に嵌入され、上部小径部28bと縮径部28eとの間に形成された段部に当接して位置決めされる。なお、可撓性弁座部36の下面は液用ピストン26の上面よりも上方に位置しており、可撓性弁座部36の下面と液用ピストン26上面との間隙として、混合室Cへと連通する水平方向の空気通路Dを形成している。そして、可撓性弁座部36における弁座部分36bの先端部近傍が空気通路Dの出口、すなわち、混合室Cへの連通口となる。
【0030】
ここで、可撓性弁座部36の弁座部分36bの先端は、棒状弁体40の先端に設けられた略すり鉢状の係止部40aと当接することによって、混合室Cと液室A及び空気通路Dとの連通を閉鎖可能としている。なお、後述するように、液用ピストン26上端部に設けられた漏斗状の液室弁座部26aと、棒状弁体40の係止部40aとが当接することによって、混合室Cと液室A内との連通は閉鎖可能とされている。そして、本実施形態のポンプ吐出体10においては、棒状弁体の係止部40aが、液室弁座部26aと当接しない状態で、可撓性弁座部の弁座部分36bと当接することが可能である。
【0031】
すなわち、可撓性弁座部36bは、棒状弁体の係止部40aに対して、液室弁座部26aよりも近い位置まで張り出しているため、液室弁座部40aと係止部40aとが当接するよりも先に、可撓性弁座部36aと係止部40aとが当接することになる。なお、可撓性弁座部36aは、少なくとも下方向への可撓性を有しており、棒状弁体の係止部40aと当接した後、該係止部40aによってさらに下方向へと押し付けられることによって下方向へと撓むため、該係止部40aがさらに液室弁座部26aと当接することを可能としている。なお、本実施形態のポンプ吐出体10を使用した際の、可撓性弁座部36bの具体的な作用については後述する。
【0032】
以下、本実施形態にかかるポンプ吐出体10における他の構成についての説明を続ける。
空気用ピストン28に連結されるノズルヘッド部22は、側壁部が内筒部22aと外筒部22bの二重壁に形成されており、内筒部22a内を通って上方で屈曲するL字形の貫通孔として、泡通路Eが形成されている。空気用ピストン28及び液用ピストン26を組み付けた二重シリンダ24にベースキャップ部20を冠着した後、ノズルヘッド部22の内筒部22aの下端部に空気用ピストン28の縮径部28eの上端を嵌め込んで固着することで、ノズルヘッド部22と空気用ピストン28及び液用ピストン26は一体的に連結され、空気用ピストン28の縮径部28eの上部内側に形成された混合室Cと、ノズルヘッド部22内部の泡通路Eとが連通される。
【0033】
ノズルヘッド部22内の泡通路Eには、空気用ピストン28との連結に先立って、シート状の多孔体38a,38bを両端に張設した多孔体ホルダ38が、混合室Cの下流側に挿着されている。多孔体ホルダ38は、例えば、合成樹脂製の糸を編んだ網体をシート状の多孔体38a,38bとして、筒状の合成樹脂製スペーサ38cの両端に溶着して取付けたものでよい。また、上流側(混合室Cに近い側)の多孔体38aの網目よりも下流側(泡吐出口22cに近い側)の多孔体38bの網目の方が細かくなるように形成されていることが、泡質の点から望ましい。
【0034】
吐出ポンプ体10を容器本体の口部と挟持して固定するためのベースキャップ部20については、中央部を開口した頂壁部20aと、頂壁部20aの外周縁部から垂下したスカート部20bと、頂壁部20aの開口縁部から直立した直立壁20cとからなり、頂壁部20aの下面には、空気用シリンダ24Bのフランジ部24aの内面と接触する環状筒部と、それよりも小径の環状筒部がそれぞれ垂下形成されている。ベースキャップ部20のスカート部20bは、内周面が雌ネジ部となっており、容器本体の口部の外周面に形成された雄ネジ部に螺合されることで、ベースキャップ20は容器本体の口部に冠着される。
【0035】
また、本実施形態の吐出ポンプ体10においては、液用シリンダ24Aの下端付近の略漏斗状のボール弁座部24e上にボール弁30が載置され、一次弁を構成している。すなわち、液室Aの常圧あるいは加圧時に、該ボール弁30はボール弁座部24eに当接して、液用シリンダ24Aの下端口を閉鎖し、一方、液室Aの負圧状態に、該ボール弁30がボール弁座部24eから離れ、液用シリンダ24eの下端口を開放する。
【0036】
また、空気用ピストン28の中間連結部28dの外周側下面と、液用ピストン26の外周面に形成された環状突部26b上面との間には、軟質合成樹脂製の弾性弁体34が設けられている。弾性弁体34は、空気用ピストン28の中間連結部28dに開設された吸気孔28gと、空気用ピストン28及び液用ピストン30の圧入連結部分に形成された空気通路Dの入口側(空気室B側)とに対し、空気室Bの負圧時にのみ吸気孔28gを連通し(二次弁)、且つ空気室Bの加圧時にのみ空気室Bと空気通路Dとを連通する(三次弁)。
【0037】
ここで、弾性弁体34は、円筒状の筒状基部34aに対し、該筒状基部34aの下端部近傍から外方に延びる薄肉で円環状の外方弁部34bと、該筒状基部34aの下端部近傍から内方に延びる薄肉で円環状の内方弁部34cとを一体的に形成したものである。また、弾性弁体34は、空気用ピストン28の中間連結部28dにより筒状基部34aが固定されている状態であり、外方弁部34bの上面側外縁部が、吸気孔28gよりも径方向外側で中間連結部28dの下面(空気室B側)に接触すると共に、内方弁部34cの下面側内縁部が、液用ピストン26に形成された環状突部26bの上面と接触するように、空気室Bの上部に設置されている。弾性弁体34の内方弁部34cは、その上方の中間連結部28dの下面に対して、上方へ変位するのに十分な間隔を有している。
【0038】
吸気孔28gの開閉を行なう二次弁においては、空気室Bが常圧あるいは加圧状態であると、外方弁部34bの外縁部が中間連結部28dの下面に接触して、空気室Bと外気の連通路である吸気孔28gを閉鎖している。ここで、空気用ピストン28が上昇することで空気室Bが負圧になると、弾性弁体34の外方弁部34bが下方に変位(弾性変形)して中間連結部28dの下面から離れることにより、吸気孔28gを開口する。
【0039】
一方で、空気室Bと空気通路Dとの連通を制御する三次弁においては、空気室Bが減圧あるいは常圧の状態では、内方弁部34cの内縁部が液用ピストン26の環状突部26bに接触して、空気室Bから空気通路Dへの入口部分を閉鎖している。そして、空気用ピストン32が下降して空気室Bが加圧されると、弾性弁体34の内方弁部34cが上方に変位(弾性変形)して環状突部26bから離れることにより、空気通路Dの入口を開口する。ここで、弾性弁体34は、空気室Bが減圧あるいは常圧状態においては、空気室Bから空気通路Dへの入口部分を閉鎖していることから、ノズルヘッド部22が空気用ピストン28とともに上昇している際には、該空気室Bから空気通路Dへの入口部分は閉鎖されていることになる。また、空気通路Dの体積はノズルヘッド部22の上昇によっても変化しないため、ノズルヘッド上昇時において、空気通路Dは常圧状態が維持されることになる。
【0040】
なお、液用ピストン26及び空気用ピストン28に対して、上方から固着するノズルヘッド部22は、その外筒部22bが、空気が通過できる隙間を有し、ベースキャップ部20の直立壁20cの先端部により案内されている。ベースキャップ20の直立壁20cの内周縁とノズルヘッド部22の外筒部22bとの外周面との間隙を介して、容器本体内のヘッドスペース(発泡性液体の液面よりも上方の空間部)へと外部の空気を導入するため、空気用シリンダ24Bのシリンダ壁上部に空気孔24gが開設されている。また、空気用ピストン28の摺動シール部28aは、空気用ピストン28が上限位置にある状態で、空気孔24gを内側から覆って閉鎖するように、断面が浅いコの字形状となるように形成されている。そして、空気用ピストン28が下方へ移動することで空気孔24gが摺動シール部28aから開放されて、外気と容器本体内とが連通する。
【0041】
また、本実施形態の吐出ポンプ体10においては、液用ピストン26と液用シリンダ24Aとによって形成される空間内には、合成樹脂製の棒状弁体40が設けられている。また、液用シリンダ24Aの下方には、棒状弁体40の上昇を制限する合成樹脂製の筒状係止体32が設けられている。そして、棒状弁体40の先端に設けられた係止部40aと、液用ピストン26上端部に設けられた漏斗状の液室弁座部26aとによって、ノズルヘッド部22を下降した際に、液室A(液用ピストン26)の上端出口が開口される(四次弁)。
【0042】
すなわち、液用ピストン26の上端付近の内周面に形成されている略漏斗状の液室弁座部26aに対して、棒状弁体44の上端付近の外周面には、さらに大径で略すり鉢状の係止部40aが、少なくともその最大外径部が液用ピストン26の液通路弁座部26aの最小内径部よりも大径になるように形成されており、この棒状弁体40の係止部40aと液用ピストン26の液通路弁座部26aとによって四次弁が構成されている。なお、ノズルヘッド部22が下死点にある状態では、係止部40aと液室弁座部26aとは当接しないため、液用ピストン26の上端出口は開放されており、ノズルヘッド22の上昇に伴って液室弁座部26aが上昇して係止部40aと当接することによって、初めて液用ピストン26の上端出口が閉鎖される。ここで、液用ピストン26の上端出口が閉鎖されるまでの間、液用ピストン26の上昇によって液室A内の容積は少しずつ増大しているため、一時的に液室A内は減圧状態となる。
【0043】
また、棒状弁体40の小径の下端部には、その上部に対して段差を形成するような径大部40bが下端を先細りとした状態で形成されており、この径大部40bが筒状係止体32によって所定の範囲のみ上下動可能なように保持されている。これによって、棒状弁体40は、液用シリンダ24Aに対して所定の範囲のみ上下動可能なように保持されており、また、棒状弁体40によって、液用ピストン26及び空気用ピストン28の上限位置が規制されている。なお、棒状弁体40の小径の下端部は、筒状係止体32によって保持された状態で上下動する際、その動きが妨げられない程度に摩擦抵抗を生じるよう構成されていることが好ましい。そのように構成することで、ノズルヘッド22の上昇に伴って液室弁座部26aが上昇して係止部40aと当接する時に、摩擦抵抗によって係止部40aが液室弁座部26aに押し付けられるため、弁座部26aに当接した係止部40aが浮き上がるような不具合を生ずることながなく、好適に密封することができる。
【0044】
すなわち、筒状係止体32は、液用シリンダ24A下方の台座部24dに支えられた状態で立設されており、その下端部には円環状の受け部32aが形成されている。また、円環状受け部32aの上方は液通路となる縦方向の開口溝(又は割溝)を放射状に複数本設けた開口筒部32bが形成され、さらにその上方は完全な(無孔の)円筒部32cが形成されている。そして、無孔円筒部32cの上端には、続いて内向環状突起32dが形成されている。なお、下端の円環状受け部32aはコイルスプリングの下端側の受け部となっている。
【0045】
筒状係止体32の上端に形成された内向環状突起32dによって棒状弁体40の下端の径大部40bを係止し、棒状弁体40の上昇を阻止することで、棒状弁体40の係止部40aが液用ピストン26の液通路弁座部26aに当接することと共働して、コイルスプリングにより上方に付勢されている液用ピストン26及び空気用ピストン28の上限位置が規制されている。なお、この筒状係止体32の下端部によって、一次弁におけるボール弁34の上昇距離が規制されている。
【0046】
可撓性弁座部の作用
つづいて、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10について、可撓性弁座部36の周辺部分を拡大した断面図を図3(A)〜(C)に示し、可撓性弁座部の作用について説明する。なお、図3(A)はノズルヘッドが下降端にある状態、(B)はノズルヘッド下降端から上昇した直後の状態、(C)はノズルヘッド上昇中及び上昇端にある状態の要部拡大断面図である。
【0047】
図3(A)〜(C)に示すように、本実施形態の吐出ポンプ体10には、空気通路Dの混合室C側出口近傍に、可撓性弁座部36が設けられている。可撓性弁座部36は、外円周部36aと、下方内側に設けられた可撓性の弁座部分36bとからなっている。ここで、可撓性の弁座部分36bの内径は、棒状弁体40の先端に設けられた略すり鉢状の係止部40aと当接可能なように、該係止部40a先端の最大外径よりも小さくなるように形成されている。このため、例えば、図3(B),(C)に示されるように、可撓性弁座部分36bが係止部40aと当接することによって、空気通路D及び液室Aと、混合室Cとの連通が閉鎖される(五次弁)。
【0048】
図3(A)に示すように、ノズルヘッド部22が押し下げられ、下降端にある状態においては、可撓性弁座部分36bは係止部40aと当接しておらず、空気通路Dと混合室Cとは連通した状態にある。また、液室弁座部26aも係止部40aと当接しておらず、液室Aと混合室Cも連通した状態にある。すなわち、ノズルヘッド部22の下降時には、液室Aからの発泡性液体と空気通路Dからの空気とが、ともに混合室Cに送り込まれ、互いに混合して泡を形成し、泡通路Eを通じて泡吐出口22cから吐出されることになる。
【0049】
ここで、従来の吐出ポンプ体においては、ノズルヘッド部が下降端にある状態で、混合室に残留した泡あるいは液体が、内壁を通じて空気通路Dへと逆流してしまうことで、泡吐出容器の使用が悪化してしまうという恐れがあった。これに対して、本実施形態の吐出ポンプ体10では、混合室Cと空気通路Dとの連通口よりも上方において、内側方向へと張り出すように可撓性弁座部分36bが設けられており、該可撓性弁座部分36bが空気通路Dに対して庇様の役割を果たすため、混合室Cに残留した泡あるいは液体が、空気通路Dへと直接逆流しにくい構成となっている。すなわち、可撓性弁座部分36bが内側方向へと張り出していることによって、上方の混合室Cに残留した泡又は液体が、重力等によって空気通路Dへと流れ込む恐れが小さい。
【0050】
つづいて、図3(B)に示すように、ノズルヘッド部22が下降端(図3(A)の状態)から上昇した直後、可撓性弁座部分36bは、液室弁座部26aよりも先に係止部40aと当接し、これによって一次的に空気通路Dと液室Aとの連通のみが開放された状態となる。ここで、図3(B)の状態においては、ノズルヘッド部22の上昇によって液室Aの容積がわずかに増大しているため、液室Aは一時的に減圧状態となる。一方で、空気通路Dにおいては、ノズルヘッド22の上昇時には空気室Bとの連通が三次弁によって常に閉鎖されており、且つ空気通路Dの体積もノズルヘッド部22の上昇によっては変化しないため、常圧状態にある。すなわち、図3(B)の状態では、液室Aのみが減圧状態となっており、他方、空気通路Dは常圧状態であることから、混合室C内、例えば、可撓性弁座部分36bの下方の空間に泡又は液体が残存していた場合であっても、該泡又は液体は優先的に液室A内へと引き込まれることになる。
【0051】
したがって、本実施形態の吐出ポンプ体10においては、ノズルヘッド部22が下降端から上昇した直後、可撓性弁座部分36bが液室弁座部26aよりも先に係止部40aと当接する構成とし、一時的に液室Aのみを減圧状態とすることによって、図3(B)に示されるように、混合室C近傍に残存した泡又は液体を優先的に液室A内へと吸入させることができるため、泡又は液体が空気通路D内へと逆流することがほとんどない。なお、液室A内へと逆流した泡又は液体は、液室A内の発泡性液体と同化するため、泡吐出容器の使用性に対する影響はない。
【0052】
また、図3(C)に示すように、ノズルヘッド部22の上昇をさらに続けると、可撓性弁座部分36bが下方向へと撓むことによって、液室弁座部26aも係止部40aと当接することになる。そして、この状態では、液室A、混合室C、空気通路Dのいずれの間の連通も閉鎖された状態となる。また、ノズルヘッド部22が上昇端に達した際も、図3(C)と同様の状態となる。ここで、通常のポンプ式泡吐出容器は、使用後、ノズルヘッドが上昇端にある状態に置かれることが比較的多いものの、本実施形態の吐出ポンプ体10においては、このようにノズルヘッドが上昇端にある場合においても、液室A、混合室C、空気通路Dのいずれの間の連通も閉鎖された状態となるため、液室Aあるいは混合室Cから、空気通路Dへと液体又は泡が流入することもほとんどない。
【0053】
また、本実施形態の吐出ポンプ体10においては、可撓性弁座部36の弁座部分36bは、予め先端部を屈曲させた形状としている。これによって、可撓性弁座部分36bが、略すり鉢状をした棒状弁体の係止部40aに対し、その屈曲位置において確実に当接するため、安定した密封性を得ることができる。なお、可撓性弁座部分36bの先端を屈曲させた形状とすることは必須ではなく、例えば、略直線状であっても構わない。可撓性弁座部分36bは、係止部40aと当接されて押し下げられることで、さらに下方向へと撓むため、上方向への反力が生じる。このため、図3(C)に示すように、例えば、ノズルヘッドが上昇端にある状態において、可撓性弁座部分36bが係止部40aに押し付けられて密着するので、さらに密封性を高めることができる。
【0054】
ポンプ式泡吐出容器の作動状態
本実施形態にかかる吐出ポンプ体10は、概略以上のように構成されている。
つづいて、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10の作動状態について、以下に説明する。
本実施形態のポンプ式泡吐出容器においては、その組み立て完成時から容器本体内に液体が充填されており、消費者が使用を開始する直前まで、例えば、図4(a)に示すように、空気用ピストン28及び液用ピストン26が、コイルスプリングの付勢力によって上限位置まで上昇している状態となっている。また、容器本体内のヘッドスペースへの外気導入手段として空気用シリンダ24Bのシリンダ壁の上部に開設された空気孔24gは、空気用ピストン28の摺動シール部28aによって閉じられている。
【0055】
ここで、一次弁においては、ボール弁30がボール弁座部24eに当接して、液室Aの下端入口が閉鎖されている。また、二次弁においては、弾性弁体34の外方弁部34bが吸気孔28gよりも外周側の中間連結部28dの下面に接触して、吸気孔28gが閉鎖されている。また、三次弁においては、弾性弁体34の内方弁部34cが液用ピストン26の環状突部26bの上面に接触して、空気通路Dの入口が閉鎖されている。また、四次弁においては、棒状弁体40先端の係止部40aが漏斗状の液通路弁座部26aと当接し、液室Aの上端出口が閉鎖されるともに、五次弁においては、係止部40aと可撓性弁座部36bとが当接して、空気通路Dの出口が閉鎖されている。
【0056】
このような状態から、消費者が使用を開始して、ノズルヘッド部22を押し下げると、図4(b)に示すように、ノズルヘッド部22とともに空気用ピストン32と液用ピストン30とが一体に下降を開始する。これに対して、棒状弁体40は、縮径部28eの上端部内面に設けられた縦リブ28fと当接するまでは下降しない。したがって、四次弁においては、ノズルヘッド部22とともに空気用ピストン28と液用ピストン26が下降し始めると、棒状弁体40の係止部40aと液用ピストン26の液室弁座部26aとが離れて、液室Aの上端出口が開放される。また、五次弁においても同様に、ノズルヘッド部22の下降とともに可撓性弁座部36bが一体に下降するため、棒状弁体40の係止部40aと可撓性弁座部36bとが離れて、空気通路Dの出口が開放される。
【0057】
なお、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10においては、縦リブ28fの下面が半径方向外方へ向かって傾斜していることによって、棒状弁体40の係止部40aは、常に液用ピストン26の中央付近へと案内されるため、液室弁座部26aと棒状弁体40との間に形成される間隙が周方向で略均等となり、液室Aから混合室Cへと発泡性液体が圧送される際に周方向に均等に流れることで、空気と液体の混合が均一となり、良好な泡を生成することができる。
【0058】
一方、液用シリンダ24Aの下方の一次弁においては、ボール弁30がボール弁座部24eに当接したままであり、液室Aの下端が閉鎖されている。また、空気用ピストン28の下降によって加圧された空気室Bの空気圧によって、弾性弁体34は中間連結部28d側への押圧力を受けている。このため、二次弁において、中間連結部28dに筒状基部34aが固定された弾性弁体34は、その外方弁部34bが中間連結部32dの下面にさらに強く押しつけられており、吸気孔28gは閉鎖状態を維持している。また、三次弁においては、内方弁部34cが上方へと撓んで、液用ピストン26の環状突部26bの上面から離れるため、空気通路Dの入口が開放される。
【0059】
このため、消費者が使用を開始して、最初にノズルヘッド部22を押し下げた際には、空気室Bから混合室Cへと空気が送り込まれるとともに、液体が未だ内部に満たされていない液室Aからは空気のみが混合室Cへと送り込まれる。このため、ノズルヘッド部22内の泡通路Eを通じ、泡吐出口22cからは空気のみが吐出されることとなる。
【0060】
以上のような最初のノズルヘッド部22の押し下げを解除すると、図4(c)に示すように、コイルスプリングの付勢力によって液用ピストン26が上昇し、これと一体に空気用ピストン28も直ちに上昇する。これにわずかに遅れて、上昇した液用ピストン26の液室弁座部26aが棒状弁体40の係止部40aへと当接して上方へ付勢するために、棒状弁体40も上昇を開始して、最終的に、液用ピストン26及び空気用ピストン28は、図4(a)に示す上限位置にまで戻る。なお、ノズルヘッド部22の上昇時における可撓性弁座部36aの作用については、図3(A)〜(C)を用いて先に説明した通りである。
【0061】
ここで、ノズルヘッド部22の押し下げを解除し、空気用ピストン28と液用ピストン26とが一体に上昇することによって、空気室Bが負圧状態となるとともに、四次弁においては、棒状弁体40の係止部40aと液用ピストン26の液室弁座部26aとが当接して、液室Aの上端出口が閉鎖され、さらに液用ピストン26と一体に棒状弁体40も上昇することから、液室Aも負圧状態となる。そして、液室Aが負圧状態になることによって、一次弁においては、ボール弁30がボール弁座部24eから離れて液室Aの下端入口が開放される。また、二次弁及び三次弁における弾性弁体34は、その外方弁部34bが下方へと撓んで中間連結部28dの下面から離れ、その内方弁部34cが下方へと復帰して液用ピストン26の環状突部26bの上面へと接触するため、吸気孔28gが開放されるとともに、空気通路Dの入口が閉鎖される。
【0062】
この結果、負圧状態となった液室Aには、管体12を介して容器本体内の発泡性液体が吸い上げられるとともにに、ノズルヘッド部22の内筒部22aの外周面とベースキャップ20の直立壁20cの内周面との間隙から進入した外部の空気が、吸気孔28gを通過して空気室Bへと吸入され、泡出しの準備状態となる。なお、容器本体内から液室Aへと発泡性液体が吸い上げられることで、その分だけ容器本体のヘッドスペースの容積が増加するため、このままではヘッドスペースが負圧状態となるものの、ノズルヘッド部22の押し下げが解除されて上昇している間は、空気孔24gは開放されたままであり、ノズルヘッド部22の内筒部22aの外周面とベースキャップ20の直立壁20cの内周面との間隙から進入した外部の空気が、空気孔24gを通じて直ちに容器本体内へ吸い込まれるため、このような容器本体内のヘッドスペースの負圧状態は直ちに解消される。
【0063】
以上のようにして、液室A内に発泡性液体が満たされ、且つノズルヘッド部22が上限位置まで戻った状態で、再びノズルヘッド部22を押し下げると、空気用ピストン28、液用ピストン26、及び一次弁から五次弁の各逆止弁は、先述の押し下げ操作時と同様に作動する。この結果、液用ピストン26及び空気用ピストン28の下降に伴って、液室Aと空気室Bが加圧されることによって、液室Aからの発泡性液体が棒状弁体の係止部40aと液室弁座部26a及び可撓性弁座部36aとの間隙を通って混合室Cに液体が送り込まれるとともに、空気室Bからの空気が空気通路Dを通じて混合室Cへと圧送され、両者は混合室Cで混合して泡が形成される。
【0064】
つづいて、再びノズルヘッド部22の押し下げ操作を解除すると空気用ピストン28、液用ピストン26、及び一次弁から五次弁の各逆止弁は、先述の押し下げ操作の解除時と同様に作動する。この結果、液室Aには、再び容器本体内の発泡性液体が管体12を介して吸い込まれるとともに、空気室Bには、容器外部の空気が吸気孔28gから吸い込まれ、泡出しの準備状態となる。そして、これ以後、ノズルヘッド部22の押し下げ操作とその解除を繰り返すことによって、ノズルヘッド部22の先端に設けられた吐出部22cから所望の量の泡を吐出させることができる。
【0065】
なお、以上のようにして混合室C内において形成された泡は、つづいてノズルヘッド部22内の泡通路Eにおいて配設されたシール状の多孔体38a,38bを、目の粗い方(38a)から目の細かい方(38b)へと順に通過して、さらに細かく均質な泡に再形成され、最終的にノズルヘッド部22の先端に設けられた泡吐出口22cから吐出される。
【0066】
ここで、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10においては、ノズルヘッド部22が上限位置で停止した状態において、可撓性の弁座部36bが、棒状弁体40の係止部40aと当接し、空気通路Dの出口を閉鎖しているので、泡を吐出した後、混合室C内に残った泡又は液体が下方へ流れ落ちた場合であっても、空気通路Dへと逆流する恐れがない。また、ノズルヘッドの押し下げを解除し、上昇した直後において、混合室Cに残存した泡又は液体が、優先的に液室A内へと引き込まれるために、泡又は液体が空気通路Dへと逆流することがほとんどない。このため、本実施形態にかかる吐出ポンプ体10は、空気通路D内へと逆流した液体が固着して空気通路Dを塞いだり、又は通路幅を狭くしてしまったりすること等によって、動作不良を生じさせることがなく、常に空気の供給量を安定化することができ、これによって、良好な泡質の泡を安定して吐出することができる。
【0067】
以上、本発明にかかるポンプ式泡吐出容器の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に示した具体的な構造のみに限定されるものではなく、発泡性液体と空気とを混合室内において混合して泡を形成するポンプ式泡吐出容器であれば、そのポンプ機構についても、上記実施形態に示した機構に限定されず、他の従来公知のポンプ機構によって実施することも可能であり、また、他の構成部分については具体的な用途等に応じて適宜設計変更することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 吐出ポンプ体
12 管体
20 ベースキャップ部
22 ノズルヘッド部
24 二重シリンダ(24A:液用シリンダ,24B:空気用シリンダ)
26 液用ピストン
28 空気用ピストン
30 ボール弁
32 筒状係止体
34 弾性弁体
36 可撓性弁座部
38 多孔体ホルダ
40 棒状弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、該容器本体の口部に装着される吐出ポンプ体とを備え、該吐出ポンプ体の上方に設けられたノズルヘッド部を上下動させることで、該容器本体内に収容された発泡性液体と空気とを気液混合部内で混合して泡を形成するとともに、該泡を該ノズルヘッド部に設けられた泡吐出口から吐出するポンプ式泡吐出容器であって、
前記吐出ポンプ体は、
前記容器本体内と連通可能な筒状の液用シリンダと、
前記液用シリンダ内の内側方向に設けられた弁座部と当接可能であり、これによって前記液用シリンダ内と前記容器本体内との連通を開閉可能とする吸液弁体と、
前記液用シリンダ部内の内壁面と摺接して上下動が可能であり、該液用シリンダとの間隙を液室として構成するとともに、その上方向への移動によって前記容器本体内の発泡性液体を該液室内へと吸入し、且つその下方向への移動によって該液室内の発泡性液体をその上方に設けられた開口端を通じて上方の気液混合部へと圧送する筒状の液用ピストンと、
前記液用シリンダよりも大径で、且つ該液用シリンダの外側を略同心状に取り巻く有底筒状の空気用シリンダと、
前記空気用シリンダ内の内壁面と摺接して上下動が可能であり、該空気用シリンダとの間隙を空気室として構成するとともに、その上方向への移動によって、上方の外部空間と連通可能に設けられた吸気孔を通じて該空間内の空気を該空気室内へと吸入し、且つその下方向への移動によって、その上方に設けられた送気孔を通じて該空気室内の空気を上方へと圧送する筒状の空気用ピストンと、
前記吸気孔を開閉可能とする吸気弁体と、
前記送気孔を開閉可能とする送気弁体と、
前記送気孔を通じて前記空気室内と連通し、上方の気液混合部へと空気を導入する空気通路と、
前記液用ピストンの上方開口端を通じて液室内と連通するとともに、前記空気通路を介して空気室内と連通し、前記液室内から導入された発泡性液体と前記空気室内から導入された空気とを混合して泡を形成する筒状の気液混合部と、
前記液用シリンダと前記液用ピストンとの間に介在し、該液用シリンダと該液用ピストンとの間隙を拡げる方向へと付勢するスプリングと、
前記液用シリンダと前記液用ピストンとにより形成された空間内に設けられ、その上方末端が該液用ピストン部の上方開口端を貫通しており、且つその貫通した上方末端において、該液用ピストンの上方開口端の径よりも大きな外径に拡径された略すり鉢状の係止部が設けられた棒状の弁体であって、該係止部分の外周面と該液用ピストンの上方開口端の内周面とが当接可能であり、これによって該液用ピストン内と該気液混合部内との連通を開閉可能とする棒状弁体と、
前記気液混合部の下方において、その筒状内側方向へと周状に張り出すように設けられ、前記棒状弁体の係止部の外周面と当接が可能であり、これによって該気液混合部内と前記液室及び該空気通路との連通を開閉可能とする、少なくとも下方向への可撓性を有する板状の部材からなる弁座部であって、且つ該棒状弁体の係止部の外周面と前記液用ピストンの上方開口端の内周面とが当接しない状態で、該棒状弁体の係止部の外周面との当接が可能である可撓性弁座部と、
前記気液混合部内と連通し、且つ前記液用ピストン及び前記空気用ピストンと連動して上下動が可能であって、その下方向への移動によって、該気液混合部内で形成された泡をその反対側末端に設けられた泡吐出口から吐出するノズルヘッドと
を備えることを特徴とするポンプ式泡吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ式泡吐出容器において、
前記液用シリンダ内に設けられた弁座部と前記吸液弁体が、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接せずに該液用シリンダ内と前記容器本体内との連通を開放し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接して該液用シリンダ内と該容器本体内との連通を閉塞する一次弁を構成し、
前記空気用ピストンに設けられた吸気孔と前記吸気弁体は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、該吸気弁体が該吸気孔へと当接せずに前記空気室内と前記空気用ピストン上方の外部空間との連通を開放し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接して該空気室内と該上方外部空間との連通を閉塞する二次弁を構成し、
前記空気用ピストンに設けられた送気孔と前記送気弁体は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、該送気弁体が該送気孔へと当接して前記空気室内と前記空気通路との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッド部の下方向への移動の際、互いに当接せずに該空気室内と該空気通路との連通を開放する三次弁を構成し、
前記液用ピストンの上方開口端の内周面と前記棒状弁体の係止部の外周面は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接して前記液室と前記気液混合部内との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッド部の下方向への移動の際、互いに当接せずに該液室と該気液混合部内との連通を開放する四次弁を構成し、
前記気液混合部に設けられた可撓性弁座部と前記棒状弁体の係止部の外周面は、前記ノズルヘッドの上方向への移動の際、互いに当接して前記液室及び空気導入路と該気液混合部内との連通を閉塞し、且つ該ノズルヘッドの下方向への移動の際、互いに当接せずに該液室及び該空気導入路と該気液混合部内との連通を開放する五次弁を構成し、且つ
前記ノズルヘッドが下死点にある状態から上方向へと移動する際に、前記五次弁における可撓性弁座部が、前記四次弁における液用ピストン部の上方開口端よりも先に前記棒状弁体の係止部の外周面へと当接することによって、一時的に前記五次弁が閉塞され、且つ前記四次弁が開放された状態となることを特徴とするポンプ式泡吐出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−197098(P2012−197098A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62181(P2011−62181)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】