説明

ポンプ装置

【課題】ポンプ本体内の内部洩れ油がシャフトシールから外部へ洩れる油洩れ率を下げるとともに、内部洩れ油の冷却効果を得ることができるポンプ装置を提供する。
【解決手段】ポンプ本体11の内部に、ギヤポンプのギヤ12を、このギヤ12と一体のポンプシャフト13により回転自在に軸支し、このポンプシャフト13とポンプ本体11との間に、外部への油洩れを防止するシャフトシール14を設ける。ギヤ12を介しシャフトシール14側とは反対側にてポンプ本体11に嵌着したベアリング15によりポンプシャフト13を回転自在に保持する。ギヤ12に、このギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23に内部洩れした油をギヤ12の反対側の間隙24に移送するポンピング手段25を設ける。このポンピング手段25は、ギヤ12の両側面間に貫通穴27を軸方向に対し回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部洩れ流体に対応できるポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ギヤポンプ装置は、ポンプ本体の内部にて一対のポンプシャフトにより回転自在に軸支された一対のギヤを噛合させ、これらのギヤ間の噛合部を挟んで一側にポンプ吸込側を、他側にポンプ吐出側を設け、一方のポンプシャフトはポンプ本体の外部へ突出させて、エンジンなどにより回転駆動する駆動シャフトとする。
【0003】
この駆動シャフトとポンプ本体との間にはシャフトシール(グランドパッキン)が設けられ、このシャフトシールにより、内部洩れ流体が外部へ洩れることを防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−280182号公報(第2−3頁、図1−2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のポンプ装置では、ポンプ本体内の内部洩れ流体が、シャフトシールからポンプ本体の外部へ洩れるおそれがある。一方、外部への洩れを完全になくすと、ポンプ本体内の内部洩れ流体が停滞することで、冷却作用が得られず、シャフトシールなどが熱影響を受ける問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ポンプ本体内の内部洩れ流体がシャフトシールから外部へ洩れる洩れ率を下げるとともに、内部洩れ流体の冷却効果を得ることができるポンプ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ポンプ本体と、このポンプ本体の内部に回転自在に設けられたポンプ回転体と、このポンプ回転体をポンプ本体に対し回転自在に軸支するポンプシャフトと、このポンプシャフトとポンプ本体との間に設けられ内部洩れ流体の外部への洩れを防止するシャフトシールと、ポンプ回転体およびポンプシャフトの少なくとも一方に設けられポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンプ回転体の反対側の間隙に移送するポンピング手段とを具備したポンプ装置であり、そして、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンピング手段により反対側の間隙に移送することで、シャフトシールにかかる内部洩れ流体圧が必要以上に高くなることをポンピング手段により防止するので、シャフトシールから外部への内部洩れ流体の洩れ率が下がるとともに、ポンプ本体内の内部洩れ流体を停滞させないことで、シャフトシールの温度上昇を抑制できる冷却効果が得られる。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のポンプ装置におけるポンプ回転体が、円板状に形成され、ポンピング手段は、このポンプ回転体の両側面間に軸方向に対し回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成された貫通穴を備えたものであり、そして、ポンプシャフトを一方向に回転させると、回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成された貫通穴にてポンピング作用が得られ、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙にある内部洩れ流体が貫通穴を経て反対側の間隙に移送されるポンピング作用が得られ、また、ポンピング手段を斜めの貫通穴とすることで、その加工形成が容易である。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のポンプ装置において、ポンプ回転体を介しシャフトシール側とは反対側にてポンプ本体に嵌着されポンプシャフトを回転自在に保持するベアリングと、このベアリングを介しポンプ回転体とは反対側に設けられ外部へのドレンポートに連通された低圧部とを具備したものであり、そして、ポンプ回転体のシャフトシール側の間隙からポンピング手段により反対側の間隙に移送された内部洩れ流体が、さらにベアリング内を通ってドレンポートに連通された低圧部に流れることにより、ベアリングを新鮮な内部洩れ流体で冷却する冷却効果が得られ、ベアリングの長寿命化につながる。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のポンプ装置において、ポンプ回転体を介しシャフトシールとは反対側の間隙と低圧部との間を連通する内部洩れ流体排出通路を具備したものであり、そして、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンピング手段により反対側の間隙に移送した後、さらに内部洩れ流体排出通路を通して低圧部に流すことで、内部洩れ流体の流動性が高まり、内部洩れ流体のシャフトシールから外部への洩れがなくなるとともに、シャフトシールを新鮮な内部洩れ流体で冷却する冷却効果が得られ、シャフトシールの長寿命化につながる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンピング手段により反対側の間隙に移送することで、シャフトシールにかかる内部洩れ流体圧が必要以上に高くなることをポンピング手段により防止するので、シャフトシールから外部への内部洩れ流体の洩れ率を下げることができるとともに、ポンプ本体内の内部洩れ流体を停滞させないことで、シャフトシールの温度上昇を抑制できる冷却効果を得ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ポンプシャフトを一方向に回転させると、回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成された貫通穴にてポンピング作用を得ることができ、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙にある内部洩れ流体が貫通穴を経て反対側の間隙に移送されるポンピング作用を得ることができ、また、ポンピング手段を斜めの貫通穴とすることで、その加工形成を容易にできる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、ポンプ回転体のシャフトシール側の間隙からポンピング手段により反対側の間隙に移送された内部洩れ流体が、さらにベアリング内を通ってドレンポートに連通された低圧部に流れることにより、ベアリングを新鮮な内部洩れ流体で冷却する冷却効果を得ることができ、ベアリングの長寿命化を図ることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンピング手段により反対側の間隙に移送した後、さらに内部洩れ流体排出通路を通して低圧部に流すことで、内部洩れ流体の流動性を高めることができるので、シャフトシールから外部への内部洩れ流体の洩れを防止できるとともに、シャフトシールを新鮮な内部洩れ流体で冷却する冷却効果を得ることができ、シャフトシールの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された実施の形態を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係るポンプ装置の第1の実施の形態を示し、容量可変型アキシャルピストンポンプ装置と同軸に設けられたギヤポンプ装置である。
【0016】
このギヤポンプ装置は、パイロット圧油を供給するための補助的な油圧ポンプなどとして用いられるもので、ポンプ本体11の内部に、円板状に形成されたポンプ回転体としてのギヤ12が、このギヤ12と一体のポンプシャフト13により回転自在に軸支され、このポンプシャフト13とポンプ本体11との間には、内部洩れ流体としての内部洩れ油の外部への洩れを防止するシャフトシール14が設けられている。
【0017】
ギヤ12を介しシャフトシール14側とは反対側にてポンプ本体11にはベアリング15が嵌着され、このベアリング15によりポンプシャフト13が回転自在に保持されている。
【0018】
このベアリング15を介しギヤ12と反対側には、容量可変型アキシャルピストンポンプ装置の斜板16が傾転作動される低圧部としての斜板収納部17が設けられ、この斜板収納部17は、容量可変型アキシャルピストンポンプ装置の内部洩れ油を外部へ排出するためのドレンポート(図示せず)に連通されている。このドレンポートは、配管によりポンプ装置の油タンクに連通されている。
【0019】
ポンプシャフト13は、エンジンなどにより駆動される駆動シャフトであり、エンジン出力軸と結合されるスプライン溝部21が、ポンプ本体11から外部に突出された軸部分に形成され、また、ギヤ12を介して内側には、容量可変型アキシャルピストンポンプ装置のシリンダブロックなどを装着するためのスプライン溝部22が設けられている。
【0020】
さらに、ギヤ12は駆動ギヤであり、このギヤ12に対し、従動シャフト(図に現われず)によりポンプ本体11に回転自在に軸支された従動ギヤ(図に現われず)が噛合され、これらのギヤ間の噛合部を挟んで一側にポンプ吸込部(図に現われず)が設けられ、他側にポンプ吐出部(図に現われず)が設けられている。ポンプ吸込部は、油タンクに連通され、ポンプ吐出部は、パイロット油配管などに連通されている。
【0021】
ギヤ12には、このギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23に内部洩れした油をギヤ12の反対側の間隙24に移送するポンピング手段25が設けられている。
【0022】
このポンピング手段25は、図2(a)に示されるようにギヤ12の歯溝26の内周側に複数の長円形の貫通穴27が、ポンプシャフト13と同心円状に配置され、これらの各貫通穴27は、図2(b)に示されるようにギヤ12の両側面間に軸方向に対し回転方向Rとは反対方向に斜めに貫通形成されたものである。
【0023】
あるいは、図3(a)に示されるようにギヤ12の歯溝26の内周側に複数の長円形の貫通穴27が、ポンプシャフト13と同心円状に配置され、これらの各貫通穴27は、図3(b)に示されるようにギヤ12の両側面間に軸方向に対し回転方向Rとは反対方向に斜めに貫通形成され、さらに、これらの各貫通穴27のシャフトシール14側に開口した長円の一端部からギヤ12の側面に沿ってフィン28が鉤状に設けられたポンピング手段25aでも良い。
【0024】
このように、ポンプシャフト13のシャフトシール14近くでポンプシャフト13と交差する方向に突出するギヤ12がある場合は、このギヤ12の両側面間にポンピング作用を有する貫通穴27を形成する。
【0025】
次に、図1に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0026】
ギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23に内部洩れした油をポンピング手段25により反対側の間隙24に移送することで、シャフトシール14にかかる油圧が必要以上に高くなることをポンピング手段25により防止する。
【0027】
これにより、内部洩れ油のシャフトシール14から外部への洩れ率を下げることができるとともに、ポンプ本体11内の内部洩れ油を停滞させないことで、シャフトシール14の温度上昇を抑制できる冷却効果が得られる。
【0028】
このとき、ポンプシャフト13を一方向に回転させると、図2または図3に示されるように、回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成された貫通穴27にてポンピング作用が得られ、ギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23にある内部洩れ油が貫通穴27を経て反対側の間隙24に移送されるポンピング作用が得られる。また、ポンピング手段25を斜めの貫通穴27とすることで、その加工形成が容易であり、簡単にポンピング作用が得られる。
【0029】
さらに、図3に示されるように各貫通穴27に対して突起状または羽根状のフィン28を設けると、これらのフィン28により、ギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23に内部洩れした油を効率良く貫通穴27内に導くことができ、ポンピング効率を上げることができる。
【0030】
また、ギヤ12のシャフトシール14側の間隙23からポンピング手段25により反対側の間隙24に移送された内部洩れ油は、さらにベアリング15内を通って、ドレンポートに連通された斜板収納部17に流れることにより、ベアリング15を新鮮な内部洩れ油で冷却する冷却効果を得ることができ、ベアリング15の長寿命化を図れる。
【0031】
次に、図4は、本発明に係るポンプ装置の第2の実施の形態を示す。なお、図1に示された実施の形態と同様の部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
ギヤ12を介しシャフトシール14とは反対側の間隙24と、低圧部としての斜板収納部17との間に、これらを連通する内部洩れ流体排出通路としての内部洩れ油排出通路29が形成されている。すなわち、ポンピング手段25を介してシャフトシール14と反対側に油戻し経路が形成されている。
【0033】
そして、ギヤ12よりシャフトシール14側の間隙23に内部洩れした油をポンピング手段25により反対側の間隙24に移送した後、さらに内部洩れ油排出通路29を通して斜板収納部17に流すことで、内部洩れ油の流動性を高めることができるので、シャフトシール14から外部への油洩れを防止できるとともに、シャフトシール14を新鮮な内部洩れ油で冷却する冷却効果を得ることができ、シャフトシール14の長寿命化を図れる。
【0034】
以上の第1および第2の実施の形態に示されるように、シャフトシール14にかかる油圧が必要以上に高くなることをポンピング手段25により防止することで、シャフトシール14からの油洩れ率を下げることができるとともに、ポンプ本体11内の内部洩れ油を停滞させないことで、シャフトシール14の温度上昇を抑制できる冷却効果が得られる。また、内部洩れ油がベアリング15内を流れることによりベアリング15の冷却効果を得ることができ、ベアリング15の長寿命化を図ることができる。
【0035】
なお、本発明は、以上の実施の形態に示されるものに限定されるものではなく、シャフトシール14の近くのポンプシャフト13にポンピング手段25を設けても良い。例えば、ポンプシャフト13自体にポンピング用のねじ溝などを形成しても良いし、あるいは、ポンプシャフト13自体にポンピング用の羽根などを形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るポンプ装置の第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】(a)は同上ポンプ装置のポンプ回転体の一例を示す斜視図、(b)は(a)のIIb−IIb線断面図である。
【図3】(a)は同上ポンプ装置のポンプ回転体の他の例を示す斜視図、(b)は(a)のIIIb−IIIb線断面図である。
【図4】本発明に係るポンプ装置の第2の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11 ポンプ本体
12 ポンプ回転体としてのギヤ
13 ポンプシャフト
14 シャフトシール
15 ベアリング
17 低圧部としての斜板収納部
23,24 間隙
25 ポンピング手段
27 貫通穴
29 内部洩れ流体排出通路としての内部洩れ油排出通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体と、
このポンプ本体の内部に回転自在に設けられたポンプ回転体と、
このポンプ回転体をポンプ本体に対し回転自在に軸支するポンプシャフトと、
このポンプシャフトとポンプ本体との間に設けられ内部洩れ流体の外部への洩れを防止するシャフトシールと、
ポンプ回転体およびポンプシャフトの少なくとも一方に設けられポンプ回転体よりシャフトシール側の間隙に内部洩れした流体をポンプ回転体の反対側の間隙に移送するポンピング手段と
を具備したことを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
ポンプ回転体は、円板状に形成され、
ポンピング手段は、このポンプ回転体の両側面間に軸方向に対し回転方向とは反対方向に斜めに貫通形成された貫通穴を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ装置。
【請求項3】
ポンプ回転体を介しシャフトシール側とは反対側にてポンプ本体に嵌着されポンプシャフトを回転自在に保持するベアリングと、
このベアリングを介しポンプ回転体と反対側に設けられ外部へのドレンポートに連通された低圧部と
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のポンプ装置。
【請求項4】
ポンプ回転体を介しシャフトシールとは反対側の間隙と低圧部との間を連通する内部洩れ流体排出通路
を具備したことを特徴とする請求項3記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−63889(P2006−63889A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247252(P2004−247252)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】