説明

ポンプ

【課題】溶着時のバリの飛散を抑制し十分な溶着強度を有するポンプを提供する。
【解決手段】磁気従動部12を有する羽根車1と、羽根車1を回転させる磁気駆動部2と、磁気駆動部2と羽根車1を分離する分離板3と、分離板3とスピン溶着により溶着されて羽根車1を収容したポンプ室4を形成するケーシング5と、を備えたポンプであって、分離板3とケーシング5とにそれぞれ互いに対向する溶着突起部6を突設すると共に、分離板3とケーシング5の溶着突起部6の内周側と外周側とにそれぞれバリ飛散防止壁7を突設し、溶着突起部6の内周側と外周側のそれぞれについて、分離板3に突設したバリ飛散防止壁7とケーシング5に突設したバリ飛散防止壁7とを内外方向にずれた位置に設けると共に、互いのバリ飛散防止壁7が内外方向から見て溶着方向に重なる重なり代Kを備え、前記重なり代Kは溶着代Lよりも長く形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体通路部であるポンプ室を構成するケーシングと構成部であるモータ部と液体通路部を分離するための分離板がスピン溶着で接合されるポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的なポンプとしてDCブラシレスポンプが知られている。図6に示すように、コイル211が巻線されて構成されるステータ部21とロータ部121と制御部22とでポンプPの駆動部が構成されている。該ステータ部21に巻線されたコイル211に電流を流すことによって磁界を発生させ、該コイル211に接続された制御部22によって発生した磁界が制御される。該ロータ部121は、ステータ部21と分離板3を介して回転自在に軸支されており、発生した磁界に追従させるために永久磁石122がロータ部121の一部に固設されている。さらに、該ロータ部121には羽根車1が一体に形成されている。これにより、ステータ部21から発生する磁界にロータ部121が追従し羽根車1を回転させることで液体HがポンプPから吸排水される。
【0003】
また、図6のケーシング5及び分離板3間はパッキン51によってシールされ、ビス等の固着具52によって固着されるのが一般的であるが、固着具52等による部品点数が多くなる問題があった。その問題を解消すべくケーシング5と分離板3との固着手段として溶着構造によって固着する手段が提案されている。(例えば特許文献1参照)
このような構造を採用するポンプPは図7に示すように、駆動機構そのものは図6に示したポンプPと同様であるが、ケーシング5と分離板3に溶着部A,Bを設け、その溶着部A,Bを溶着させることでケーシング5と分離板3を固着させ、パッキン51及びビス等の固着具52の使用を削減し部品点数の削減を実現している。
【0004】
この溶着手段は、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着やスピン溶着等様々な手段があり、溶着部の構造にも様々な工夫がなされている。(例えば特許文献2参照)その中でもスピン溶着がよく用いられており、以下スピン溶着について、図5(a)及び図5(b)(図7における溶着部の詳細図)を用いて説明する。
【0005】
ケーシング側の溶着突起6aと分離板側の溶着突起6bは互いに先端面が面状に当接した状態に対向させ(図5(a)参照)熱や摩擦等を加える。それによりその当接部分の樹脂が互いに溶け合いつつ押圧されることで溶着される(図5(b)参照)。溶着部A,Bで溶けた樹脂はバリ9となるのであるが、このバリ9は溶着突起6a,6bの両側に設けたバリ溜まりCに収容され、バリ9がポンプ完成品の外側又は内部に漏出しないような溶着部A,Bの構造をとっている。
【特許文献1】特開平11−9455号公報
【特許文献2】特開2007−245538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記のようなスピン溶着を行う場合、溶着する際にスピンによる回転力でバリ9が溶着部A,Bから外側に飛散し、隙間S3からバリが漏出してしまう。このような場合は、エアブロー等の後工程が必要となり非常に手間であると共に、バリが内部に飛散した場合は、バリが隙間S4を介してポンプ機構部に侵入しさらには軸受や羽根車の隙間等に侵入してポンプPの性能を低下させる問題もあった。
【0007】
さらに、スピン溶着施工中にバリが隙間S3及びS4に噛み込んでしまい、隙間を生じて適切な溶着が行えないが故にポンプ運転中にポンプ内部を通流する液体Hが溶着部A,Bから漏洩してしまう問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶着時のバリの飛散を抑制し十分な溶着強度を有するポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、液体Hを給排するための羽根11と磁気従動部12とを有する羽根車1と、磁気従動部12に磁気を作用させて羽根車1を回転させる磁気駆動部2と、羽根車1を囲むように該羽根車1と磁気駆動部2との間に配置されて磁気駆動部2と羽根車1を分離する分離板3と、分離板3とスピン溶着により溶着されて羽根車1を回転自在に収容したポンプ室4を形成するケーシング5と、を備えたポンプPであって、分離板3とケーシング5とにそれぞれ互いに対向する溶着突起部6を突設すると共に、分離板3とケーシング5の溶着突起部6の内周側と外周側とにそれぞれバリ飛散防止壁7を突設し、溶着突起部6の内周側と外周側のそれぞれについて、分離板3に突設したバリ飛散防止壁7とケーシング5に突設したバリ飛散防止壁7とを内外方向にずれた位置に設けると共に、互いのバリ飛散防止壁7が内外方向から見て溶着方向に重なる重なり代Kを備え、前記重なり代Kは溶着代Lよりも長く形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、ケーシング5と分離板3のスピン溶着時にバリ9がポンプ完成品の外部に露出するのを回避できるのでエアーブロー等によるバリ取りの後工程をしなくとも外観を損なうこともなく、内部にバリ9が侵入することも回避できるのでポンプPの性能を十分に発揮することを可能とするものである。さらに、適切な溶着が実現できるのでポンプP運転時における漏れを防止することができるものである。
【0011】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記ケーシング5に突設したバリ飛散防止壁7と前記分離板3に突設したバリ飛散防止壁7との間隔S1が所定の距離以下であることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、バリ飛散防止壁同士の隙間S1を介してバリ9が外部に浸出したり又は、内部に侵入したりすることを回避することができるので、上述した効果をさらに高めることを可能とするものである。
【0013】
また、請求項3に係る発明にあっては、請求項1または請求項2に係る発明において、該ケーシング5にはスピン溶着の際に同芯を規定する同芯規定部56を備え、該分離板3には被同芯規定部33を備え、同芯規定部56と被同芯規定部33との間隔S2が所定の距離以下であることを特徴とするものである。
【0014】
このような構成とすることで、スピン溶着時における同芯を維持できるので、溶着突起部6の溶着面同士が内外方向にずれるのを回避し十分な溶着強度を確保することが可能となるものである。
【0015】
また、請求項4に係る発明にあっては、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に係る発明において、内外方向にずれた位置にそれぞれ設けられた前記バリ飛散防止壁7において、前記溶着突起部6側にずれたバリ飛散防止壁7の先端の溶着突起部6側に面取り形状を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
このような構成とすることで、バリ飛散防止壁7の先端とその対向する壁面との隙間8にバリ9が挟まるのを回避することができるので、適切な溶着が実現でき溶着不良を回避することが可能となるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプ製造時におけるスピン溶着を適切且つ十分に行うことが可能となるので、溶着不良による漏れを防止することができると共に、バリ飛散に伴う後工程が不要となるので作業効率を著しく向上させることができる。さらに内部へのバリ飛散も防ぐことができるので、ポンプの性能劣化を回避しポンプ本来の機能を十分に発揮させることを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施形態のポンプは図2に示すように、磁気駆動部2と磁気従動部12を有する羽根車1と樹脂からなる分離板3とポンプ室4と樹脂からなるケーシング5とから構成されている。磁気駆動部2は、ステーターコア212に複数のコイル211を巻いたステータ部21を有し、制御基板221よりなる制御部22を有している。該ステータ部21のコイル211は該制御基板221に接続されると共に、該制御部22によってステータ部21から生じる回転磁界を制御している。該コイル211と制御基板221は、例えばカシメ端子や絡げピンにより接続されるものであるが特に限定されるものではない。さらに、該ステータ部21の下側(すなわちポンプPの中心側)にはポンプP中心に配設された軸14によって回転自在に軸支されている磁気従動部12としてのロータ部121を備えており、該ロータ部121が有底円筒状の円筒部31を一部に有する分離板3に被嵌される。該分離板3及びケーシング5によって後述するポンプ室4を形成しており、該分離板3によってポンプ室4内の液体Hが磁気駆動部2へ侵入するのを防止しているのである。
【0020】
このようにして形成された制御部22をなす制御基板221とステータ部21と分離板3とを共にモールド樹脂M内にモールド成形することにより磁気駆動部2及び分離板3が一体的に成形されている。
【0021】
ポンプ室4は、上述した通り分離板3とケーシング5により形成されており、ロータ部121を一部に有する羽根車1を回転自在に収容するように形成してなるものである。詳しくは、該ケーシング5のポンプ室4側の側面部には羽根車1との干渉を避けるための凹部53が形成してあり、その凹部53と前記分離板3の円筒部31とでポンプ室4が形成されている。ケーシング5の凹部53を形成した側とは反対側の面(すなわちポンプPの外側の面)にはポンプ室4内に液体Hを吸入させる開口穴がケーシング5の裏面(すなわち凹部53を形成した面)にまで貫穿してあり、その開口穴縁辺から円筒状に突設して吸込口54を形成している。ケーシング5の該凹部53が形成された面上の凹部53よりも外方向に位置する箇所に後に詳述する溶着部Aが環状に形成されると共に、ケーシング5に設けられた該溶着部Aと対向する位置には分離板3の溶着部Bが形成されており、その溶着部A,B同士が溶着・固定され(具体的には、スピン溶着がなされ)分離板3とケーシング5が一体形成されることでポンプ室4が形成されているのである。
【0022】
該羽根車1はロータ部121と液体Hを吸排するための羽根11とで構成されており、ロータ部121には一部又は全体に永久磁石122を備えると共に、ロータ部121及び羽根11が一体となって形成されている。分離板3の円筒部31の底面の中心部には、軸14を被嵌するための円筒状の軸受部32が突設してあり、前記羽根車1を軸支するための軸14が被嵌されている。該軸14の円柱側面部の中央近傍には軸受板13が嵌挿されており、該羽根車1と軸14との間に配設されている。このようにして配設された該軸受板13は、軸14と羽根車1との摺動による摩擦抵抗の低減を図り軸支された該羽根車1が回転自在となるのに資するものである。
【0023】
このように構成されることで、コイル211へ通電することによりステータ部21から発生する回転磁界がロータ部121を吸引及び反発することにより羽根車1を回転させ、電力を羽根車1の回転力に変換しているのであり、ポンプPの吸込口54から吸い込んだポンプ室4内の液体Hが羽根車1の回転に伴い昇圧し、その液体Hが吐出口55から吐出されポンプ作用を発揮することとなる。このように構成されたポンプPは、シャワーポンプや燃料電池装置、ヒートポンプ、或いは各種冷却システム等に使用される。
【0024】
次に、前記溶着部A,Bについて図1(a)及び(b)に基づいて詳述する。本実施形態は、上述の通りケーシング5と分離板3とをスピン溶着によって溶着し固着するものであるが、その溶着部A,Bの形状は円環状に溶着突起部6を突設してあり、該溶着突起部6の両側に円環状のバリ飛散防止壁7を平行するように突設してなるものである。便宜上ケーシング5側に突設してある内周側のバリ飛散防止壁7をケーシング内周バリ飛散防止壁71a、外周側のバリ飛散防止壁7をケーシング外周バリ飛散防止壁72aとし、分離板3側に突設してある内周のバリ飛散防止壁7を分離板内周バリ飛散防止壁71b、外周のバリ飛散防止壁7を分離板外周バリ飛散防止壁72bとして、また、スピン溶着における中心軸から外側に向かう方向を内外方向として、さらにバリ飛散防止壁7の突出方向を溶着方向として以後説明する。
【0025】
ケーシング5側の溶着部Aには、ケーシング側溶着突起6aとその両側にケーシング内周バリ飛散防止壁71a及びケーシング外周バリ飛散防止壁72aがケーシング側溶着突起6aと略同じ突出長さにて突設してある。ケーシング側溶着突起6aの内外方向の幅は特に限定されるものではないが、溶着にて十分な強度が得られる程度の幅は最低限必要である。ケーシング内周バリ飛散防止壁71aとケーシング外周バリ飛散防止壁72aはケーシング側溶着突起6aよりも内外方向の幅が薄く形成されているが、これらは本実施形態に限定されない。このようにして突設されたケーシング側溶着突起6aはケーシング内周バリ飛散防止壁71a及びケーシング外周バリ飛散防止壁72aとで挟まれる隙間に、それぞれバリ溜まりCを形成している。
【0026】
分離板3側の溶着部Bも、分離板側溶着突起6bとその両側に分離板内周バリ飛散防止壁71b及び分離板外周バリ飛散防止壁72bが突設されるが、該分離板側溶着突起6bの突出長さは分離板3に突設したそれぞれのバリ飛散防止壁71b,72bの突出長さよりも短く形成してあると共に、分離板内周バリ飛散防止壁71bはケーシング内周バリ飛散防止壁71aよりも外方向にずれて突設してあり且つ分離板外周バリ飛散防止壁72bはケーシング外周バリ飛散防止壁72aよりも内方向にずれて突設してあるものである。また、分離板側溶着突起6bの内外方向の幅はケーシング側溶着突起6aの幅よりも若干薄く形成し、先端側の角部には面取り加工が施されている。さらに、該分離板内周バリ飛散防止壁71b及び該分離板外周バリ飛散防止壁72bはケーシング側溶着突起6a及びケーシング5側のバリ飛散防止壁71a,72aよりも短く形成されており、溶着完了時における該分離板3側のバリ飛散防止壁71b,72bの先端と対向するケーシング側の面とで隙間8を形成するように構成される。
【0027】
スピン溶着は、このように構成したそれぞれの溶着部A,Bの分離板側溶着突起6bとケーシング側溶着突起6aを互いに対向させ且つその先端同士を面状に当接させ、ケーシング5と分離板3側を相対回転させつつ押し付けることで、その溶着部A,Bが一定の距離溶着方向に進む。こうして、スピンが終了し分離板側溶着突起6bとケーシング側溶着突起6aが溶着固定される。詳しくは、ケーシング5と分離板3を相対回転させた場合(すなわちスピン溶着時)に分離板側溶着突起6bとケーシング側溶着突起6aとの間に生じる摩擦熱によって、該分離板側溶着突起6bが溶けやすく形成されているので、該分離板側溶着突起6bが溶融し溶着がなされる。
【0028】
スピン溶着の際に生じたバリ9は、スピンの回転力により円周方向に飛散するものである。しかし本実施形態においては、分離板側溶着突起6bが分離板外周バリ飛散防止壁72b及び分離板内周バリ飛散防止壁71bよりも短く形成されているため、スピン溶着直前の状態(図1(b)参照)においてもケーシング5側と分離板3側に突設されたそれぞれのバリ飛散防止壁7同士が溶着方向に重なり合うように構成されている。すなわち、溶着終了時における溶着方向の移動寸法(すなわち溶着代L)よりも、溶着完了時におけるバリ飛散防止壁7同士が溶着方向に重なる重なり代Kのほうが長くなることになる。このため、バリ9飛散時においてもケーシング5側のバリ飛散防止壁71a,72aとその対向する面との隙間8にバリ9が流出することなく、前記バリ溜まりCにバリが格納される。さらに、分離板側溶着突起6bよりもケーシング側溶着突起6aの方が内外方向に幅広に形成されているので、溶着時にバリ9が分離板3側に流れ出し、より一層バリ9が隙間8に流出しづらくなりバリの漏れ出しを防ぐことが可能となる。
【0029】
さらに、分離板内周バリ飛散防止壁71bとケーシング内周バリ飛散防止壁71aの内外方向の間隔S1及び分離板外周バリ飛散防止壁72bとケーシング外周バリ飛散防止壁72aの内外方向の間隔S1を狭く形成することが好ましい。そのように構成することで、さらにより一層バリ9が隙間S1を介して流出するのを防止する効果が向上するからである。
【0030】
また、分離板3側のバリ飛散防止壁71b,72bの先端に隙間8を形成したことで、スピン溶着施工中に分離板内周バリ飛散防止壁71b及び分離板外周バリ飛散防止壁72bの先端にまでバリ9が飛散したとしてもケーシング5を溶着方向に十分に押し込むことができるので、適切且つ十分な強度を持つ溶着が実現可能となるものである。
【0031】
なお、本実施形態においては分離板側溶着突起6bの溶けやすい形状や溶けやすい溶着突起部6が形成される側は本実施形態に限定されるものではなく、また、ケーシング側溶着突起6aが溶けやすい形状であっても良いものである。さらに、ケーシング内周バリ飛散防止壁71aと分離板内周バリ飛散防止壁71b及びケーシング外周バリ飛散防止壁72aと分離板外周バリ飛散防止壁72bにおいてずれる内外方向は本実施形態に限定されるものではなく、例えばケーシング内周バリ飛散防止壁71aが分離板内周バリ飛散防止壁71bよりも外方向にずれて形成されていてもよく、またその形状も特に限定されるものではない。
【0032】
次に、他の実施形態について図3に基づいて説明する。なお、本実施形態は図1に示す実施形態と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0033】
ケーシング5と分離板3をスピン溶着する際に、ケーシング側溶着突起6aと分離板側溶着突起6bを互いに対向させると共に、同芯を保った状態を維持しつつ相対回転をして押し付ける必要がある。
【0034】
本実施形態では、分離板3側に分離板3から立設してなる被同芯規定部33を円環状に形成すると共に、ケーシング内周バリ飛散防止壁71aの内周面(すなわちケーシング内周バリ飛散防止壁71aの内方向の面)を同芯規定部56としている。該同芯規定部56と該被同芯規定部33の間隔S2は所定の距離を保つように構成されており、このように構成することで、ケーシング5と分離板3側の相対回転時に同芯がずれた場合であっても、同芯規定部56の内外方向のずれを被同芯規定部33が抑止でき、これによって一定以上ずれないので同芯が保たれる。このようにしてスピン溶着回転時における同芯を保つことが可能となる。この間隔S2はケーシング側溶着突起6a及び分離板側溶着突起6bの内外方向の幅よりも十分に狭いことが必要であり、具体的には設計上の寸法で0.1mm以下にすることが好ましく、本実施形態においては0.075mmにて設計されている。
【0035】
なお、同芯規定部56を設ける箇所やその形態は本実施形態に限定されるものではなく、スピン溶着時において同芯を規定する部位があれば同様の効果が得られるものである。
【0036】
さらに他の実施形態について図4に基づいて説明する。なお、本実施形態は図1及び図3に示す実施形態と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0037】
本実施形態における分離板外周バリ飛散防止壁72bと分離板内周バリ飛散防止壁71bにはそれぞれ分離板側溶着突起6bに近い方の角部D(図3参照)に面取り加工を施して成るものである。このように構成することで、スピン溶着施工中に分離板3に設けたそれぞれのバリ飛散防止壁71b,72bの先端にまでバリ9が飛散したとしても、先端部の面積(すなわちケーシングに対向する面の面積)が狭く構成されているので、その部分にバリが滞留せずバリ溜まりCにバリ9を流下させることが可能となり、一方で飛散したバリ9がバリ溜まりCに流下しなかった場合であっても、スピン溶着時にバリ飛散防止壁71b,72b先端に飛散したバリが挟まれることはなく、スピン溶着時においてケーシング5を溶着方向に十分に押し込むことができるので、適切且つ十分な強度を持つ溶着が実現可能となるものである。
【0038】
なお、本実施形態は分離板3側のバリ飛散防止壁71b,72bに面取り形状を設けているが、本実施形態に限定されるものではなく、第一の実施形態にて説明したようにケーシング5側の両側に突設したバリ飛散防止壁71a,72aを挟むように分離板3側のバリ飛散防止壁71b,72bがそれぞれ突設されている場合には、ケーシング側溶着突起6aに近い方のケーシングバリ飛散防止壁71a,72aの角部Dに面取り加工を施す等特に限定されるものではなく、要するに隙間8を形成するバリ飛散防止壁7の先端部の溶着突起6に近い方に面取り形状が形成されていればよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の要部断面図を示し、(a)は溶着直前の溶着部であり、(b)は溶着後の溶着部である。
【図2】同上の横断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示すポンプの要部断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態を示すポンプの要部断面図である。
【図5】従来例の要部断面図を示し、(a)は溶着直前の溶着部であり、(b)は溶着後の溶着部である。
【図6】従来例を示す断面図である。
【図7】さらに別の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
3 分離板
5 ケーシング
6 溶着突起部
6a ケーシング側溶着突起
6b 分離板側溶着突起
7 バリ飛散防止壁
71a ケーシング内周バリ飛散防止壁
71b 分離板内周バリ飛散防止壁
72a ケーシング外周バリ飛散防止壁
72b 分離板外周バリ飛散防止壁
8 先端の隙間
A (ケーシング側の)溶着部
B (分離板側の)溶着部
C バリ溜まり
K 重なり代
L 溶着代
P ポンプ
S1 ケーシング側と分離板側のバリ飛散防止壁間の間隔
S3 外側の隙間
S4 内部の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を給排するための羽根と磁気従動部とを有する羽根車と、磁気従動部に磁気を作用させて羽根車を回転させる磁気駆動部と、羽根車を囲むように該羽根車と磁気駆動部との間に配置されて磁気駆動部と羽根車を分離する分離板と、分離板とスピン溶着により溶着されて羽根車を回転自在に収容したポンプ室を形成するケーシングと、を備えたポンプであって、分離板とケーシングとにそれぞれ互いに対向する溶着突起部を突設すると共に、分離板とケーシングの溶着突起部の内周側と外周側とにそれぞれバリ飛散防止壁を突設し、溶着突起部の内周側と外周側のそれぞれについて、分離板に突設したバリ飛散防止壁とケーシングに突設したバリ飛散防止壁とを内外方向にずれた位置に設けると共に、互いのバリ飛散防止壁が内外方向から見て溶着方向に重なる重なり代を備え、前記重なり代は溶着代よりも長く形成して成ることを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記ケーシングに突設したバリ飛散防止壁と前記分離板に突設したバリ飛散防止壁との間隔が所定の距離以下であることを特徴とする請求項1記載のポンプ。
【請求項3】
該ケーシングにはスピン溶着の際に同芯を規定する同芯規定部を備え、該分離板には被同芯規定部を備え、同芯規定部と被同芯規定部との間隔が所定の距離以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
内外方向にずれた位置にそれぞれ設けられた前記バリ飛散防止壁において、前記溶着突起部側にずれたバリ飛散防止壁の先端の溶着突起部側に面取り形状を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−221942(P2009−221942A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66778(P2008−66778)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】