説明

ポンプ

【課題】フッ素樹脂製のローリングダイヤフラムを備えたポンプで、ローリングダイヤフラムの閉鎖端をピストンの先端側にネジ結合で取付けると、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を容易に防止できない。
【解決手段】ポンプ1は、ピストン30とは別体に構成されたピストンロッド40の先端部に雄ネジ41を設け、ローリングダイヤフラム10の閉鎖端15に前記雄ネジ41に螺合する雌ネジ18を設け、ピストンロッド40の先端部をローリングダイヤフラム10の閉鎖端15にピストン30を挟んでネジ結合し、該ネジ結合のみでローリングダイヤフラム10の閉鎖端15をピストン30の先端側に取付け、ローリングダイヤフラム10の閉鎖端15とピストン30のネジ結合をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造或いは液晶製造に使用される薬液などの液体を定量或いは定量かつ定流量で供給するポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のポンプして、シリンダ内を、液体を吸入及び吐出するポンプ室とピストンを収容する駆動室とに仕切るフッ素樹脂製のローリングダイヤフラムを備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。ローリングダイヤフラムは、シリンダに折返部を経て取付けられる開放端と、シリンダ内に往復動自在に収容されたピストンの先端側に配置される閉鎖端とを設けた筒部を有しており、閉鎖端をピストンの動きに合わせて往復動させることで、筒部がピストンの外周面とシリンダの内周面に密着しながらこれら2面の隙間でローリングし、ポンプ室の容積を変化させる。ポンプは、ピストンの復動に伴いポンプ室の容積が拡大する吸入工程でポンプ室内に液体を吸入し、ピストンの往動に伴いポンプ室の容積が縮小する吐出工程でポンプ室内の液体を吐出する。ここで、ピストンは、外部駆動原によって軸方向に往復動されるピストンロッドの先端部にネジ結合されてシリンダ内で往復動され、このピストンの動きに合わせてローリングダイヤフラムの閉鎖端を往復動させるために、ローリングダイヤフラムの閉鎖端は、ピストンの先端側にネジ結合で取付けられていた。
【特許文献1】特開平9−53566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のポンプでは、ローリングダイヤフラムの閉鎖端をピストンの先端側にネジ結合で取付けるから、ローリングダイヤフラムのピストンへの装着は、ローリングダイヤフラムとピストンの少なくとも一方を回転させて、ローリングダイヤフラムの閉鎖端に設けられた雄ネジをピストンに設けられた雌ネジにねじ込みながら、ローリングダイヤフラムの筒部をピストンに外嵌することで行われるが、この時にローリングダイヤフラムの筒部に捻れによる変形やシワを発生させてしまい、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を招く。また、この問題を解決しようとして、ローリングダイヤフラムの筒部内径とピストン外径とのクリアランス(隙間)を大きく取ると、ローリングダイヤフラムの材料がゴムではなく弾性や柔軟性に乏しいフッ素樹脂であるため、ポンプ駆動時にローリングダイヤフラムの筒部に撓みや折曲りを発生させてしまい、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を招く。したがって、従来のポンプは、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を容易に防止できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明のポンプは、シリンダに折返部を経て取付けられる開放端と、前記シリンダ内に往復動自在に収容されたピストンの先端側に配置される閉鎖端とを設けた筒部を有し、前記シリンダ内を、液体を吸入及び吐出するポンプ室と前記ピストンを収容する駆動室とに仕切るフッ素樹脂製のローリングダイヤフラムを備え、前記ピストンとは別体に構成されたピストンロッドの先端部に雄ネジを設け、前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端に前記雄ネジに螺合する雌ネジを設け、前記ピストンロッドの先端部を前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端に前記ピストンを挟んでネジ結合し、該ネジ結合のみで前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端を前記ピストンの先端側に取付けたことを特徴とする。
【0005】
また、前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端から前記ピストンに向かって突出し、前記雌ネジを有する前記ローリングダイヤフラムと同心なボス部と、前記ピストンの先端面に形成され、前記ボス部を軸方向に摺動可能に嵌合する前記ピストンと同心な凹部とを設けることが好ましい。
【0006】
さらに、突き合い接触する前記ピストンの先端面と前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端との間を前記駆動室に連通する通路を前記ピストンに設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピストンとは別体に構成されたピストンロッドの先端部に雄ネジを設け、ローリングダイヤフラムの閉鎖端に雄ネジに螺合する雌ネジを設け、ピストンロッドの先端部をローリングダイヤフラムの閉鎖端にピストンを挟んでネジ結合し、該ネジ結合のみでローリングダイヤフラムの閉鎖端をピストンの先端側に取付けたから、すなわち、ローリングダイヤフラムの閉鎖端とピストンのネジ結合をなくしたから、ローリングダイヤフラムのピストンへの装着は、ローリングダイヤフラムとピストンの何れも回転させることなく、ローリングダイヤフラムの筒部をピストンに外嵌するだけで行え、ローリングダイヤフラムのピストンへの装着時に、ローリングダイヤフラムの筒部に捻れによる変形やシワを発生させることがなくなる。ひいては、ローリングダイヤフラムの筒部内径とピストン外径とのクリアランスを大きく取る必要もなくなる。したがって、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を容易に防止することができる。また、ローリングダイヤフラムの閉鎖端とピストンを結合するネジのバックラッシュ(隙間)によるローリングダイヤフラムのガタ付きがなくなるから、ポンプの応答性を向上することができる。さらに、ローリングダイヤフラムの閉鎖端とピストンを結合する作業工程がなくなるから、ポンプの組立性、メンテナンス性を向上することができる。
【0008】
また、ローリングダイヤフラムの閉鎖端からピストンに向かって突出し、雌ネジを有するローリングダイヤフラムと同心なボス部と、ピストンの先端面に形成され、ボス部を軸方向に摺動可能に嵌合するピストンと同心な凹部とを設けることにより、ボス部と凹部の嵌合でローリングダイヤフラムとピストンとの心合わせを行うことができ、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下をより確実に防止することができる。
【0009】
さらに、突き合い接触するピストンの先端面とローリングダイヤフラムの閉鎖端との間を駆動室に連通する通路をピストンに設けることにより、ローリングダイヤフラムのピストンへの装着時は通路が、ローリングダイヤフラムの閉鎖端とピストンの先端面の間の空気抜きとして働くから、ローリングダイヤフラムの筒部内径とピストン外径とのクリアランスが小さくても、ローリングダイヤフラムをピストンにスムースに装着することができ、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係るポンプの断面図、図2は本発明の一実施の形態に係るポンプのローリングダイヤフラムとピストンとピストンロッドとの分解状態を示す断面図である。
【0011】
図1に示すポンプ1は半導体製造或いは液晶製造に使用される薬液等の液体を定量かつ定流量で供給するためのダイヤフラムポンプであり、ダイヤフラム10と、ダイヤフラム10を収容するポンプハウジングである円筒状のシリンダ20と、ダイヤフラム10を作動させる往復動部材であるピストン30と、ピストン30とは別体に構成された駆動軸であるピストンロッド40と、ピストンロッド40及びピストン30を介してダイヤフラム10を作動させるリニアアクチュエータ等の外部駆動源50とから構成される。なお、図中CLは紙面上下方向に延伸するポンプ中心軸線を示し、各構成部品10,20,30,40,50の中心軸線はポンプ中心軸線CL上にある。すなわち、各構成部品10,20,30,40,50は同軸上に配置されている。
【0012】
図1,図2に示すように、ダイヤフラムにはPTFE(四フッ化エチレン樹脂)等のフッ素樹脂で形成されて耐薬品性が付与された略カップ状のローリングダイヤフラム10がいられる。ローリングダイヤフラム10は、中間部で内側又は外側に折返された円筒状の筒部11を有している。筒部11は、断面形状がU字形の折返部12と、折返部12の内周側端部及び外周側端部からそれぞれローリングダイヤフラム10の中心軸線を中心とする円筒面内で同方向に延出される内周部13及び外周部14とを設ける。また、筒部11の一端である内周部13の端部を閉鎖端とする円板状の端板部15を設け、筒部11の他端である外周部14の端部を開放端とし、開放端から半径方向外側に突出する円環状のフランジ部16を設ける。筒部11は、例えば厚さ1mm以下、0.1mm以上の薄肉に形成されて可撓性を有し、端板部15及びフランジ部16は、筒部11より十分に厚い厚肉に形成されて剛性を有する。さらに、端板部15には、この中心部から筒部11の内側に向かって突出するローリングダイヤフラム10と同心なボス部17を設ける。ボス部17は円柱状の外形を有し、ボス部17の中心部にはボス部17の先端面に一端を開口し、かつ孔壁面に雌ネジ18を付けた有底円筒状のローリングダイヤフラム10と同心なボス孔19を設ける。
【0013】
図1に示すように、シリンダ20は、円筒状のシリンダ本体21と、シリンダ本体21の一端側(図1の上側)に取付けられる有天円筒状のヘッドカバー22と、シリンダ本体21の他端側(図1の下側)に取付けられ、中心部でピストンロッド40を摺動可能に軸受けする円盤状のロッドカバー23とから構成される。シリンダ本体21は内外面貫通の通気口24を設ける。通気口24は大気に開放するか、図示しない真空ポンプや真空発生器に接続される。また、ヘッドカバー22の周壁部に内外面貫通の吸入口25を設けると共に、ヘッドカバー22の天部中心部に内外面貫通の吐出口26を設ける。吸入口25は図示しない吸入側逆止弁を介して図示しない薬液タンクに接続される。吐出口26は図示しない吐出側逆止弁を介して図示しない薬液供給部に接続される。吸入側逆止弁は薬液タンクから吸入口25への流れを許容し、その逆の流れを阻止する。吐出側逆止弁は吐出口26から薬液供給部への流れを許容し、その逆の流れを阻止する。なお、図中70はシリンダ本体21とロッドカバー23との接合部に設けた0リング等のシールである。
【0014】
図1、図2に示すように、ピストン30は、シリンダ20の内径より小さく、かつローリングダイヤフラム10の内周部13の内径と略同径な直径を有する円柱状に形成されてシリンダ20内に収容され、ピストン30の外周面がシリンダ20の内周面と所定の隙間を設けて対向している。ピストン30の中心部には、ピストン30のヘッドカバー22側の先端面(上端面)に一端を開口し、ローリングダイヤフラム10のボス部17を軸方向に摺動可能に嵌合する有底円筒状のピストン30と同心な第1凹部31と、ピストン30のロッドカバー23側の基端面(下端面)に一端を開口し、ピストンロッド40のピストン30側の先端部(上端部)を挿入する有天円筒状のピストン30と同心な第2凹部32を設ける。第1凹部31と第2凹部32との間に形成される隔壁33の中心部には、第1凹部31と第2凹部32とを連通させるピストン30と同心な円形の貫通孔34を設ける。ピストン30の外周部には、ピストン30の先端面から基端面に貫通する直線状の細長い貫通孔でなる空気通路35を、複数、ピストン30の中心軸線を中心とする同一円周上で等間隔に設ける。
【0015】
図1に示すように、シリンダ20の外部に突出するピストンロッド40の外部駆動原50側の基端部(下端部)は、駆動源50の出力軸と軸継手等を介してポンプ中心軸線CL上で一直線状に結合される。他方、図2にも示すように、シリンダ20の内部に突出するピストンロッド40の先端部には、ピストンロッド40より小径で、外周面にローリングダイヤフラム10の雌ネジ18と螺合する雄ネジ41を付けたボルト部42を設ける。なお、図中60はピストンロッド40のボルト部42に外嵌させてピストンロッド40のボルト部42との段差面43に係合させる円環状の座金、71,72はピストンロッド40のロッドカバー23を貫通する摺動部に設けた0リング等のパッキンである。
【0016】
そして、図1に示すように、ローリングダイヤフラム10はフランジ部16がシリンダ本体21とヘッドカバー22との接合面間で強く挟持されてシリンダ20内に取付けられる。取付け状態(ポンプ組立状態)では、外周部14がシリンダ本体21の内周面と接触してその面に沿ってロッドカバー23側へ延設され、折返部12がシリンダ本体21の内周側に位置し、内周部13が外周部14と平行にヘッドカバー22側へ延設され、端板部15がヘッドカバー22の閉鎖端近傍でその閉鎖端に対し離反対向する。これにより、シリンダ20内がローリングダイヤフラム10によって、吸入口25及び吐出口26と連通したヘッドカバー22側のポンプ室Aと、通気孔24と連通すると共にピストン30を収容したロッドカバー23側の駆動室Bとに仕切られる。
【0017】
また、駆動室Bにおいては、ピストン30がローリングダイヤフラム10の内周部13に軸方向に摺動可能に内嵌される。この嵌合状態(ポンプ組立状態)では、ローリングダイヤフラム10のボス部17とピストン30の第1凹部31が嵌合した状態で、ピストン30の先端面がローリングダイヤフラム10の端板部15の内面と突き合い接触される。これにより、ローリングダイヤフラム10の折返部12はシリンダ本体21の内周面とピストン30の外周面との隙間に位置し、内周部13はピストン30の外周面と接触してその面に沿ってヘッドカバー22側へ延設される。また、突き合い接触するピストン30の先端面とローリングダイヤフラム10の端板部15の内面の間は、ピストン30に設けられた複数の空気通路35によって駆動室Bと連通接続される。
【0018】
ここで、ローリングダイヤフラム10のボス部17とピストン30の第1凹部31との嵌合は、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30とをネジ結合するものではなく、ローリングダイヤフラム10とピストン30との心合わせを行うものである。ローリングダイヤフラム10のボス部17をピストン30の第1凹部31に嵌合するためのローリングダイヤフラム10のボス部17外径とピストン30の第1凹部31内径とのクリアランス(隙間)が大きいと、ローリングダイヤフラム10とピストン30に軸ズレが生じ、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命に影響を及ぼすため、クリアランスは0.5mm以下にすることが好ましい。また、ローリングダイヤフラム10の内周部13をピストン30に外嵌するためのローリングダイヤフラム10の内周部13内径とピストン30外径とのクリアランス(隙間)並びにローリングダイヤフラム10の外周部14をシリンダ20に内嵌するためのローリングダイヤフラム10の外周部14外径とシリンダ20内径とのクリアランス(隙間)が大きいと、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命に影響を及ぼすため、クリアランスは0.2mm以下にすることが好ましい。
【0019】
ピストンロッド40の先端部は、ピストン30の第2凹部32内に挿入され、その先端部に設け、かつ座金60を装着したボルト部42が、貫通孔34を通して、ピストン30の第1凹部31に嵌合したローリングダイヤフラム10のボス部17にあるボス孔19に雌雄のネジ18,41を介してねじ込まれる。これによって、ピストン30とは別体に構成されたピストンロッド40とローリングダイヤフラム10の端板部15とが、ピストン30の隔壁33を挟んでポンプ軸線CL上でネジ結合され、該ネジ結合のみでローリングダイヤフラム10の端板部15をピストン30の先端側に取付けている。
【0020】
次に、上記のように構成されたポンプ1の動作を図1を参照して説明する。
【0021】
外部駆動源50を作動させてポンプ1を駆動すると、ピストンロッド40が上下方向に往復動し、ピストンロッド40が下向きに復動する吸込工程において、ピストン30とローリングダイヤフラム10の端板部15とがピストンロッド40の動きに追従して下向きに復動する。この時に、ローリングダイヤフラム10の筒部11は、内周部13の長さが短くなり、外周部14の長さが長くなり、シリンダ本体21の内周面とピストン30の外周面との隙間で折返部12が下向きに変位しながらローリングし、これに伴ってポンプ室Aの容積が拡大するため、吸入口25からポンプ室Aに液体タンク内の薬液が吸入される。他方、ピストンロッド40が上向きに往動する吐出工程において、ピストン30とローリングダイヤフラム10の端板部15とがピストンロッド40の動きに追従して上向きに往動する。この時に、ローリングダイヤフラム10の筒部11は、内周部13の長さが長くなり、外周部14の長さが短くなり、シリンダ本体21の内周面とピストン30の外周面との隙間で折返部12が上向きに変位しながらローリングし、これに伴ってポンプ室Aの容積が縮小するため、ポンプ室A内の薬液が吐出口26から吐出される。
【0022】
このような吸込工程と吐出工程を交互に繰返すことによってポンプ1は、液体タンク内の液体を薬液供給部に定量かつ定流量で供給することができる。なお、ポンプ1のローリングダイヤフラム10以外の接液部であるシリンダ20のヘッドカバー22はローリングダイヤフラム10と同様にPTFE等のフッ素樹脂で形成されて耐薬品性が付与されていることが好ましい。
【0023】
ポンプ1は駆動室Bを通気口24を介して大気に開放した場合、吸入工程において駆動室Bの容積が縮小しても駆動室B内の圧力上昇を伴わないため、ローリングダイヤフラム10の端板部15の内面をピストン30の先端面に、内周部13の内面をピストン30の外周面に、外周部14の外面をシリンダ本体21の内面に、それぞれ密着させることができ、ポンプ1駆動時のローリングダイヤフラム10の筒部11の撓みや折曲り等を回避することができる。また、駆動室Bを通気口24を介して真空ポンプや真空発生器に接続して負圧を印加した場合、ローリングダイヤフラム10の端板部15の内面をピストン30の先端面に、内周部13の内面をピストン30の外周面に、外周部14の外面をシリンダ本体21の内面に、それぞれより確実に密着させることができる。この際、突き合い接触するローリングダイヤフラム10の端板部15の内面とピストン30の先端面との間は、ピストン30に設けた複数の空気通路35によって、直接に駆動室Bに連通されるから(空気通路35がない場合は内周部13の内面とピストン30の外周面の間を経て駆動室Bに連通される)、ローリングダイヤフラム10の端板部15の内面とピストン30の先端面をさらに確実に密着させることができる。
【0024】
そして、ポンプ1は、シリンダ20に折返部12を経て取付けられる開放端と、シリンダ20内に往復動自在に収容されたピストン30の先端側に配置される閉鎖端である端板部15とを設けた筒部11を有し、シリンダ20内を、液体を吸入及び吐出するポンプ室Aとピストン30を収容する駆動室Bとに仕切るフッ素樹脂製のローリングダイヤフラム10を備え、ピストン30とは別体に構成されたピストンロッド40の先端部に雄ネジ41を設け、ローリングダイヤフラム10の端板部15に雄ネジ41に螺合する雌ネジ18を設け、ピストンロッド40の先端部をローリングダイヤフラム10の端板部15にピストン30を挟んでネジ結合し、該ネジ結合のみでローリングダイヤフラム10の端板部15をピストン30の先端側に取付けたから、すなわち、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30のネジ結合をなくしたから、ローリングダイヤフラム10のピストン30への装着は、ローリングダイヤフラム10とピストン30の何れも回転させることなく、ローリングダイヤフラム30の内周部13をピストン30に外嵌するだけで行え、ローリングダイヤフラム10のピストン30への装着時に、ローリングダイヤフラム10の内周部13に捻れによる変形やシワを発生させることがなくなる。ひいては、ローリングダイヤフラム10の内周部13内径とピストン30外径とのクリアランスを大きく取る必要もなくなる。したがって、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下を容易に防止することができる。また、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30を結合するネジのバックラッシュ(隙間)によるローリングダイヤフラム10のガタ付きがなくなるから、ポンプ1の応答性を向上することができる。また、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30のネジ結合によるローリングダイヤフラム10とピストン30の軸ズレがなくなるから、ポンプ1駆動時にローリングダイヤフラム10の筒部11にローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30のネジ結合によるローリングダイヤフラム10とピストン30の軸ズレによる撓みや折曲りを発生させることがなくなり、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下をさらに防止することができる。さらに、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30を結合する作業工程がなくなるから、ポンプ1の組立性、メンテナンス性を向上することができる。
【0025】
また、ローリングダイヤフラム10の端板部15からピストン30に向かって突出し、雌ネジ18を有するローリングダイヤフラム10と同心なボス部17と、ピストン30の先端面に形成され、ボス部17を軸方向に摺動可能に嵌合するピストン30と同心な第1凹部31とを設けることにより、ボス部17と凹部31の嵌合でローリングダイヤフラム10とピストン30との心合わせを行うことができ、ローリングダイヤフラム10とピストン30の軸ズレがなくなるから、ポンプ1駆動時にローリングダイヤフラム10の筒部11にローリングダイヤフラム10とピストン30の軸ズレによる撓みや折曲りを発生させることがなくなり、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下をさらに防止することができる。
【0026】
さらに、突き合い接触するピストン30の先端面とローリングダイヤフラム10の端板部15との間を駆動室Bに連通する空気通路35をピストン30に設けることにより、ローリングダイヤフラム10のピストン30への装着時は空気通路35が、ローリングダイヤフラム10の端板部15とピストン30の先端面の間の空気抜きとして働くから、ローリングダイヤフラム10の内周部13内径とピストン30外径とのクリアランスが小さくても、ローリングダイヤフラム10をピストン30にスムースに装着することができ、ローリングダイヤフラム10のピストン30への装着時に、ローリングダイヤフラム10の内周部13に圧縮や捻れ(せん断)による変形やシワを発生させることがなくなり、定量性や定流量性等のポンプ性能及びポンプ寿命の低下をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態に係るポンプの断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るポンプのローリングダイヤフラムとピストンとピストンロッドとの分解状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ポンプ
10 ローリングダイヤフラム
11 筒部
12 折返部
15 端板部
17 ボス部
18 雌ネジ
20 シリンダ
30 ピストン
31 第1凹部
35 空気通路
40 ピストンロッド
41 雄ネジ
A ポンプ室
B 駆動室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダに折返部を経て取付けられる開放端と、前記シリンダ内に往復動自在に収容されたピストンの先端側に配置される閉鎖端とを設けた筒部を有し、前記シリンダ内を、液体を吸入及び吐出するポンプ室と前記ピストンを収容する駆動室とに仕切るフッ素樹脂製のローリングダイヤフラムを備え、前記ピストンとは別体に構成されたピストンロッドの先端部に雄ネジを設け、前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端に前記雄ネジに螺合する雌ネジを設け、前記ピストンロッドの先端部を前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端に前記ピストンを挟んでネジ結合し、該ネジ結合のみで前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端を前記ピストンの先端側に取付けたことを特徴とするポンプ。
【請求項2】
前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端から前記ピストンに向かって突出し、前記雌ネジを有する前記ローリングダイヤフラムと同心なボス部と、前記ピストンの先端面に形成され、前記ボス部を軸方向に摺動可能に嵌合する前記ピストンと同心な凹部とを設けることを特徴とする請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
突き合い接触する前記ピストンの先端面と前記ローリングダイヤフラムの閉鎖端との間を前記駆動室に連通する通路を前記ピストンに設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−106675(P2010−106675A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276712(P2008−276712)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】