説明

ポータブル型ガス警報器

【課題】携帯に便利な小型のものとして構成することができ、使用上の利便性が高く、しかも、防水性に優れたポータブル型ガス警報器を提供すること。
【解決手段】ポータブル型ガス警報器は、手で保持可能な大きさのケーシングの内部における上半部に機能部材が配置されると共に下半部に下方に開口する電池挿入口を有する電池室およびセンサ装着部が並設されて形成されたガス警報器本体と、前記センサ装着部に着脱自在に装着されるガスセンサとからなり、電池室には、2本の柱状の電池が左右に並設された状態で受容され、さらに、裏面に電源端子を有すると共に側面にリング状パッキングが装着された電池蓋が電池挿入口内に収容されて装着されており、電池蓋は、ベース部材とその表面側に回転可能に設けられた回転板状ストッパ部材とを備え、回転板状ストッパ部材の回転軸がベース部材を貫通しない状態で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポータブル型ガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば地下の工事現場や坑道、その他の人が立ち入る場所や作業領域などにおいて、その環境の空気中に一酸化炭素ガスや硫化水素ガスなどの危険性ガスが含有されるおそれがある場合や、空気中の酸素ガス濃度が低下しているおそれがある場合など、環境雰囲気の空気が危険な状態となっている可能性あるいは危険な状態となる可能性がある場合が少なくない。
そして、環境雰囲気の空気において、含有される危険性ガスの濃度が高いことにより、または酸素ガス濃度が低いことにより、人に対して危険な状態となったときには、そのことを直ちに知ることが必要である。
このような要請から、現在までに種々のタイプの携帯用ガス検知器が提案されている (例えば特許文献1参照)。
【0003】
而して、このような携帯用ガス検知器は、例えば目的とする作業などを実行する上で大きな障害とならないよう、十分に小型ものとして構成されていることが要求されると共に、例えばマンホール内などの水が溜まっている場所などのガス測定対象空間の空気の状態を計測するために使用される場合もあることから、水等が外部から侵入することを防ぐ防水構造が採られていることが望ましい。
【0004】
【特許文献1】特開2002−257768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、携帯に便利な小型のものとして構成することができ、使用上の利便性が高く、しかも、防水性に優れたポータブル型ガス警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポータブル型ガス警報器は、手で握って保持することのできる箱型形状のケーシングを備え、このケーシングの内部における上半部にガス検知動作に係る機能部材が配置されていると共に下半部にケーシングの下方に開口する電池挿入口を有する電池室およびセンサ装着部が左右に並設されて形成されたガス警報器本体と、このガス警報器本体のセンサ装着部に着脱自在に装着されるガスセンサとにより構成されており、
電池室には、2本の柱状の電池が左右に並設された状態で受容され、さらに、裏面に電源端子が設けられると共に側面にリング状パッキングが装着された電池蓋が電池挿入口内に収容された状態で装着されており、
電池蓋は、ベース部材とこのベース部材の表面側に回転可能に設けられた回転板状ストッパ部材とを備えており、当該回転板状ストッパ部材の回転軸がベース部材を貫通しない状態で形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のポータブル型ガス警報器においては、ベース部材の表面にはザグリ穴が形成されており、回転板状ストッパ部材の裏面に形成された回転軸部が当該ザグリ穴に挿入されることにより回転板状ストッパ部材が回転可能とされた構成とされていることが好ましい。
【0008】
また、本発明のポータブル型ガス警報器においては、電池蓋は、回転板状ストッパ部材の裏面に形成された円弧状の案内溝およびこの案内溝によって互いに連結された2つの凹所、並びに、ベース部材の表面に形成された、前記案内溝または凹所に収容される突起部により構成された位置規制手段を有し、
回転板状ストッパ部材が回転されることによりベース部材の突起部が回転板状ストッパ部材におけるいずれか一方の凹所に収容され、回転板状ストッパ部材が電池蓋の開閉点となる位置において停止される構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明のポータブル型ガス警報器においては、ケーシングにおける電池挿入口の開口縁部に、切り欠き部が形成されており、
電池蓋には、前記切り欠き部に挿入される突片部分が形成された構成とされていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明のポータブル型ガス警報器においては、2本の柱状の電池が互いに正極および負極が逆方向を向いた状態で装填され、電池蓋の電源端子によって直列に接続される構成とすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明のポータブル型ガス警報器においては、ガス警報器本体におけるセンサ装着部は、検知対象ガスの種類が異なる複数の同形のガスセンサのうちから目的に応じて選択されたいずれか一のガスセンサが他のガスセンサと交換可能とされるよう構成されており、
ガスセンサとして、当該ガスセンサに固有の情報が記録された記憶手段を具えたものが用いられる構成とされていることが好ましい。
また、ガスセンサは温度検知手段を有し、当該温度検知手段により検知される温度情報に基づいて、ガスセンサからのガス検知信号についての温度補償条件が設定される構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポータブル型ガス警報器によれば、基本的には、ケーシングが手に持って保持することのできる大きさのものであり、ケーシング内の上半部にガス検知に係る昨日部材が配置されていると共に下半部に電池室およびセンサ装着部が形成されており、必要とされる構成部材のすべてが、ケーシング内に合理的に配置されている共にセンサ装着部および電池室が並設されて形成されているので、ガス警報器それ自体を小型のものとして構成することができ、従って、優れた携帯性および高い利便性を得ることができる。
しかも、回転板状ストッパ部材の回転軸がベース部材を貫通しない状態で形成されていることにより、回転板状ストッパ部材の回転によるガス警報器本体の電池挿入口に対するロック機能およびロック解除機能が確実に得られる構成のものでありながら、回転部に防水用シール部材を用いることなしに、優れた防水性を得ることができる。
【0013】
電池蓋が、特定の構成の位置規制手段を有することにより、回転板状ストッパ部材を電池蓋の開閉点となる個所において安定した状態で確実に保持することができると共に、ベース部材の突起部が回転板状ストッパ部材におけるいずれか一方の凹所に収容されることによってクリック感を得ることができるので、回転板状ストッパ部材が適正な位置にあることを認識することができる。
【0014】
さらに、本発明のポータブル型ガス警報器によれば、ケーシングにおける電池挿入口の開口縁部に切り欠き部が形成されており、この切り欠き部に挿入される突片部分が電池蓋に形成されていることにより、電池が電池室に装填されていない状態で電池蓋が装着された場合であっても、電池蓋を容易に取り外すことができる。
【0015】
さらにまた、電池室に装填される2本の電池が直列に接続される構成とされていることにより、必要とされる十分な大きさの電力を確保することができる。
【0016】
さらにまた、ガスセンサが当該ガスセンサに固有の情報が記録された記憶手段を有することにより、ガスセンサの装着に伴って、ガス警報器本体の動作環境条件が、装着されたガスセンサに応じたものに自動的に設定されるので、煩雑な操作を行うことが不要であり、高い利便性を得ることができる。
また、温度検知手段よりの温度情報に基づいて温度補償条件が、装着されたガスセンサに応じたものに自動的に設定されることにより、実際の環境条件に即した信頼性の高いガス検知を行うことができるものでありながら、煩雑な操作を行うことが不要であり、高い利便性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明について説明する。
図1は、本発明のポータブル型ガス警報器の一構成例を示す正面図、図2は、図1に示すポータブル型ガス警報器の平面図、図3は、図1に示すポータブル型ガス警報器の背面図、図4は、図1に示すポータブル型ガス警報器の底面図、図5は、図1に示すポータブル型ガス警報器の左側面図、図6は、図1に示すポータブル型ガス警報器の右側面図、図7は、図1のA−Aにおける縦断面図、図8は、図1のB−Bにおける横断面図、図9は、図1のC−Cにおける縦断面図、図10は、図1のD−Dにおける横断面図である。以下、本明細書においては、特に言及する場合を除いて、図1における上下方向を「上下方向」、図1における左右方向を「左右方向」というが、ガス警報器の使用形態を制限するものではない。
【0018】
このポータブル型ガス警報器(以下、単に、「ガス警報器」という。)10は、手で握って保持することができる全体が略箱型形状のケーシング11を備え、ケーシング11の内部における上半部にガス検知動作に係る機能部材が配置されていると共に下半部に電池室13およびセンサ装着部15が左右に並設されて形成されたガス警報器本体10Aを有する。
【0019】
ケーシング11は、背面側ケーシング部材12と、この背面側ケーシング部材12にリング状パッキング25を介して固定用ネジ11Aによって連結固定される正面側ケーシング部材20とにより構成されており、図11に示すように、略円筒状のセンサ装着部15および電池受容部13Aを形成する電池室13が背面側ケーシング部材12単独で形成されている。ここに、リング状パッキング25は、背面側ケーシング部材12と正面側ケーシング部材20との対接面26の全周にわたって配設されている。
正面側ケーシング部材20には、図12に示すように、上半領域において、表示部および警報用発光部を形成する、正面側ケーシング部材20の正面領域全体の25%程度の大きさの比較的に占有面積の大きい正面開口部21および操作部形成用開口部22が上下に並んだ位置に形成されており、裏面における正面開口部21および操作部形成用開口部22の間の位置に、左右に延びる平板状の補強部材23が設けられている。
【0020】
ケーシング11の内部における上半部には、平板状の表示用基板46A、給電用回路および充電用回路を含む平板状の電源基板46Bおよびガスセンサからの信号を処理するガス検知信号処理用回路を含む平板状のCPU基板46Cが、互いに平行にケーシング11の正面および背面に沿って上下方向に延びるよう立体的に配設されており、表示用基板46Aが正面側ケーシング部材20に保持固定されていると共に、電源基板46BおよびCPU基板46Cが背面側ケーシング部材12に保持固定されている。
【0021】
表示用基板46Aには、正面側ケーシング部材20の正面開口部21に対向する領域に、検出されたガスの種類とその濃度が表示される例えば液晶表示パネルからなるパネル状表示機構47およびこのパネル状表示機構47の上方位置に発光ダイオード(図示せず)よりなる警報用発光素子48が配置されていると共に、正面側ケーシング部材20の操作部形成用開口部22に対向する領域に例えば3つのスイッチ素子49A,49B,49Cが左右に並んで配置されている。
そして、各々のスイッチ素子49A,49B,49Cに対応するスイッチ駆動部分54A,54B,54Cが一体に形成されたパネル状の保護用窓部材50が、パネル状表示機構47、警報用発光素子48およびスイッチ素子49A,49B,49Cの配置領域の全域を覆うよう、スイッチ駆動部分54A,54B,54Cの各々が正面側ケーシング部材20の操作部形成用開口部22に挿入された状態で正面開口部21に装着され、これにより、表示部51、警報用発光部52および操作部53が形成されている。
また、パネル状表示機構47の裏面側の位置に導光板が設けられると共に、この導光板を介してパネル状表示機構47に光を照射する発光ダイオード(図示せず)よりなるバックライトが設けられた構成とすることができる。
【0022】
操作部53は、「POWER」と表示されたメインスイッチを構成する第1の操作用ボタン53Aが右側に、「DISP」と表示された切替えスイッチを構成する第2の操作用ボタン53Bが中央に、「AIR」と表示された機能調整用スイッチを構成する第3の操作用ボタン53Cが左側に配列されている。
【0023】
パネル状表示機構47においては、例えば中央位置に検知されたガスの濃度が数値で表示される。また、他の情報を表示するよう自動的または手動操作によって順次に切り替えて表示される構成とすることもできる。
【0024】
CPU基板46Cには、ガス警報器10における各部の動作を制御する機能を有する電子回路が設けられていると共に、例えばガスセンサ55により検知されるログデータ格納用の記憶素子が設けられている。
【0025】
上述したように、ケーシング11の内部における下半部には、電池室13およびセンサ装着部15が形成されており、電池挿入口13Bおよびセンサ装着口15Aが互いに同方向、具体的には下方向に開口し、電池およびガスセンサが同一方向に引き出される構成とされている。
【0026】
このガス警報器10においては、図13に示すように、例えば円筒状のセンサ本体56と、内部にセンサ本体56を保持する円筒状のホルダー部材61およびこのホルダー部材61の一端部に嵌合されるゴム製のグリップ部材65により構成されたアダプター60とが一の構造体として構成されたガスセンサ55が、ガス警報器本体10Aのセンサ装着部15に着脱自在に装着される。図13において、64は、ガス警報器本体10Aに設けられたスリーブ部材16の図示しない係合用装着部に係合される係合用突起であり、68は、ホルダー部材61の外周面に装着されたリング状パッキングである。
【0027】
センサ装着部15には、その内面にガスセンサ保持用のスリーブ部材16が装着されていると共に、上端面すなわちガスセンサ55の装着方向奥側の端面に接続用コネクター部材18が装着されており、各々検知対象ガスの種類が異なるセンサ本体56を具えた複数の同形のガスセンサのうちから目的に応じて選択されたいずれか一のガスセンサが、他のガスセンサと交換可能とされた構成とされている。
また、ガスセンサ55が装着された状態において、センサ本体56のガス銘を外部に露出させる視認用開口部19がセンサ装着口15Aに近接した外面位置に形成されている。
【0028】
センサ本体56は、例えば定電位電解型センサよりなるセンサ素子とこのセンサ素子に一体に設けられた、センサ素子に固有の情報が記録されたメモリおよび温度補償用のサーミスタを有するセンサ基板57とにより構成されており、一端面(図13において下端面)にガス導入口56Aが形成されている。
センサ素子は、各々流体流通路が形成された板状の電極体を有する作用極および対極が電解液保持部材が介在された状態で積重されてなるガス検知電極構造体が、円筒状のセンサケース内に設けられ、センサケースの外周面における互いに周方向に離間して並んだ位置において、作用極および対極の各々に対するピン状の外部リード部材が軸方向に伸びるよう配設されている。
検知対象ガスの種類は、特に限定されるものではなく、例えばPH3 ,SO2 ,CO,H2 S,NH3 ,Cl2 ,O3 等を例示することができる。
【0029】
このガスセンサ55は、ガス警報器本体10Aのセンサ装着口15Aより挿入されて例えば時計回りに回転されることにより、センサ本体56における表示(ガス銘)がセンサ装着部15における視認用開口部19を介して外部に露出された状態で、センサ装着部15におけるスリーブ部材16の係合用装着部によって保持固定されると共に接続用コネクター部材18に電気的に接続される。
ガスセンサ55の装着状態においては、ガスセンサ55はアダプター60のグリップ部材65を除いた部分がガス警報器本体10Aのセンサ装着部15内に収容されてケーシング11の外部に突出する部分が可及的に小さくされた状態とされている。然るに、グリップ部材65は外部に突出していることにより、ガスセンサ55の着脱(交換)は容易に行うことができる。
【0030】
電池室13は、例えば2本の柱状の電池14、具体的には単三形(AAサイズ)の乾電池が左右に並設された状態で受容される電池受容部13Aを有し、この電池受容部13Aに、電池14が互いに正極および負極が逆方向を向いた状態で装填され、さらに、裏面に電源端子45が設けられた特定の電池蓋30が電池挿入口13B内に収容された状態で装着され、これにより、2本の電池14が直列状態で接続される。
電池挿入口13Bの開口縁部分には、ケーシング11の右側壁に切り欠き部13Cが形成されており、例えば電池14が装填されていない状態で電池蓋30が装着された場合であっても、電池蓋30を容易に取り外すことができる。
【0031】
特定の電池蓋30は、図14乃至図16に示すように、略平板状のベース部材31と、このベース部材31の表面側中央位置に回転自在に設けられた回転板状ストッパ部材36と、各々ベース部材31の表面側に例えば超音波溶着によって固定された、回転板状ストッパ部材36をその表面側から支持する左側案内支持部材40および右側案内支持部材42と、ベース部材31の裏面に装着された、各々例えばうずまきバネ状の2つの端子部分が連結されてなる短絡用の電源端子45とにより構成されており、ベース部材31の側面には、リング状パッキング44が設けられている。
【0032】
ベース部材31は、図17に示すように、表面側中央位置に例えばザグリ孔32が形成されており、このザグリ孔32を中心とする回転板状ストッパ部材36の回転領域より径方向外方側に位置される左右両端部に、左側案内支持部材40が装着される円柱状の装着用突起部35A,35Bおよび右側案内支持部材42が装着される円柱状の装着用突起部35C,35Dが形成されている。
ベース部材31には、ザグリ孔32とその径方向に離間した位置(図17においては下方位置)に、ピン状の突起部34が形成されていると共に、この突起部34の形成位置との関係において所定の位置に、断面形状が例えば中心角が90°の扇形状とされた回転規制用ストッパ35が形成されている。
【0033】
回転板状ストッパ部材36は、図18に示すように、表面中央位置に径方向に延びる溝36Cおよび回転板状ストッパ部材36の回転駆動方向を示す表示部が形成された柱状部分36Aと、溝36Cの形成方向外方に突出する鍔部分36Bとを有する。
回転板状ストッパ部材36の裏面には、ベース部材31のザグリ孔32に挿入される回転軸部36D、ベース部材31の回転規制用ストッパ35が受容される凹所37A、およびベース部材31の突起部34が挿入され、円弧状の案内溝39によって連結された2つの位置固定用凹所38A,38Bが形成されており、これにより、回転板状ストッパ部材部材36を電池蓋30の開閉点となる位置において安定した状態で保持する位置規制手段が構成されている。
凹所37Aは、回転板状ストッパ部材36の回転に伴ってベース部材31の回転規制用ストッパ35における円弧状の外縁部分が対接されながら移動されるよう形成された円弧状曲面と、突起部34がいずれかの位置固定用凹所に挿入されている状態において回転規制用ストッパ35のいずれかの平坦面に係止される平坦な係止面37Bによって区画されている。
【0034】
左側案内支持部材40は、図19に示すように、ベース部材31に固定された状態において、内方側に突出する支持片41を有し、この支持片41の裏面とベース部材31の表面との間に回転板状ストッパ部材36の鍔部分36Bが挿通される間隙を形成する。
【0035】
右側案内支持部材42についても基本的な構成は左側案内支持部材40と同様であり、図20に示すように、ベース部材31に固定された状態において、内方側に突出する支持片43を有し、この支持片43の裏面とベース部材31の表面との間に回転板状ストッパ部材36の鍔部分36Bが挿通される間隙を形成する。
また、右側案内支持部材42には、ベース31部材の外縁位置より外方に突出する位置規制用突片42Aが形成されており、この位置規制用突片42Aがケーシング11における電池挿入口13Bの開口縁部分に形成された切り欠き部13Cに挿入される。
【0036】
以上のガス警報器10においては、例えばガスセンサ55により検知されてCPU基板46Cの記憶素子に記録されたガス濃度データを読み出すための赤外線通信ポート28がガス警報器本体10Aの右側面の上半部に形成されている。
また、例えば導電性熱可塑性エラストマー組成物よりなり、それ自体がガス警報器本体10Aに装着される形態の装着部を有するプロテクトカバー70が着脱自在に装着されている。
【0037】
プロテクトカバー70は、図21に示すように、その内面において、ガス警報器本体10Aのケーシング11の一部の外面形状に適合する形状を有する装着部71を有するものであって、正面に、ガス警報器本体10Aの表示部51、警報用発光部52および操作部53を外部に露出させる正面開口部72が形成されていると共に、背面にガス警報器装着用開口部73が形成されている。また、底面には、ガスセンサ装着用開口部74および電池挿入用開口部75が形成されており、右側面に、赤外線通信ポート露出用開口部76が形成されている。
このプロテクトカバー70は、ガス警報器装着用開口部73が人の手によって拡開されてガス警報器本体10Aが通過することのできる状態とされ、それ自体の弾性によって形状が復元されることにより装着部71に受容されるガス警報器本体10Aを保持する。
そして、プロテクトカバー70が装着された状態においては、外部に露出されるガス警報器本体10Aのケーシング11による連続した樹脂表面部分の大きさが所定の大きさ例えば100cm2 以下に規制され、これにより、静電気対策が十分で信頼性の高い防爆性を有するものとなる。また、プロテクトカバー70を構成する材料それ自体の耐衝撃性によって、ガス警報器本体10Aの緩衝材(保護材)としても機能するので、ガス警報器本体10Aが故障または破損することを防止することができ、適正な動作状態に維持することができる。
【0038】
本発明のガス警報器10の一構成例を示すと、ガス警報器本体10Aの縦方向(図1において上下方向)の最大寸法が131mm、横方向(図1において左右方向)の最大寸法が77mm、厚み方向(図1において紙面に対して垂直な方向)の最大寸法が40mmであり、ガス検知動作が可能な状態(ガスセンサ55および2本の電池14が装着された状態)における総重量が240gである。
【0039】
以下、上記ガス警報器10の動作について説明する。
先ず、2本の単三形の乾電池14を電池室13内に装填した状態において、電池蓋30をケーシング11における電池挿入口13Bに装着する。具体的には、回転板状ストッパ部材36の2つの鍔部分36Bが、左側案内支持部材40における支持片41とベース部材31との間の間隙および右側案内支持部材42における支持片43との間の間隙に位置された状態、すなわち、ベース部材31における突起部34が回転板状ストッパ部材36における一方の凹所、図18(B)において上方に位置される位置固定用凹所38Aに収容された状態とした電池蓋30を、位置規制用突片42Aをケーシングの切り欠き部13Cに位置合わせしてその全体が電池挿入口13Bに収容される状態で装着し、その後、回転板状ストッパ部材36を時計周りに回転させることにより回転板状ストッパ部材36の2つの鍔部分36Bを、電池挿入口13Bの開口縁部に係止させた状態、すなわち、ベース部材31における突起部34を案内溝39を介して回転板状ストッパ部材36における他方の凹所、図18(B)において右方に位置される位置固定用凹所38Bに収容させると共に回転規制用ストッパ35の一方の平坦面(図17において左方を向く平坦面)を係止面37Bに係止させた状態とし、これにより、電池蓋30をケーシング11に対してロックする。
また、目的に応じて選択されたガスセンサ55をガス警報器本体10Aのガスセンサ装着部15に装着し、電池14およびガスセンサ55を装着した状態において、第1の操作ボタン53Aを操作してガス警報器本体10Aを動作状態とすると、ガスセンサ55、パネル状表示機構47およびその他各部が動作状態とされると共に、ガスセンサ55におけるセンサ基板57のメモリに記録されたガスセンサ55に固有の情報によりガス警報器本体10Aの動作環境条件が、装着されたガスセンサ55に応じたものに自動的に設定されると共に、サーミスタよりの温度情報により温度補償条件が自動的に設定される。
そして、この状態で環境雰囲気の空気が自然拡散によりガス導入口56Aを介してセンサ本体56に到達し、目的とする検知対象ガスについてその濃度検知が行われ、その結果がパネル状表示機構47に表示される。
【0040】
ガスセンサ55により検知されたガスの濃度は、電流信号または電圧信号としてCPU基板46Cの信号処理回路に送られて処理され、これにより、検知対象ガスの濃度が当該ガスについて設定された基準値(警報点)を超えた時には警報動作信号が発せられ、これにより、警報用発光部52が駆動されて発光による警報が発せられる。
異なる種類のガスについての濃度検知を行う場合には、ガスセンサ55を交換して同様の操作を繰り返して行えばよい。ガスセンサ55の交換には、グリップ部材65を保持して反時計周りに回転させることによりスリーブ部材16の係合用装着部によるロックを解除し、ガスセンサ55を下方に引き出し、他のガスセンサをガス警報器本体10Aのセンサ装着部15に装着することにより、このガスセンサに固有の情報に基づいて、ガス警報器本体10Aの動作環境条件および温度補償条件が、交換されたガスセンサに応じたものに自動的に設定されて、ガス検知動作が可能な状態とされる。
【0041】
実際上、このガス警報器10は、例えば作業者が手に保持するなどして作業者によって携帯されて使用されるが、作業者のいる環境雰囲気が危険性ガスの濃度が高いことにより、あるいは酸素ガス濃度が低いことにより危険な状態となったときには、その旨が、表示部51の表示、並びに、警報用発光部52の発光によって報知されるので、作業者は、直ちに通報あるいは適宜の防護手段を講ずることができ、あるいはその場から退避するなどの対策を講ずることができる。
【0042】
而して、上記ガス警報器10によれば、基本的には、ケーシング11が手に持って保持することのできる大きさのものであり、ガス検知に係る機能部材がケーシング11内の上半部に配置されると共にセンサ装着部15および電池室13がケーシング11内の下半部に形成され、必要とされる構成部材のすべてがケーシング11内に合理的に配置されているので、ガス警報器10それ自体を小型のものとして構成することができ、従って、優れた携帯性および高い利便性を得ることができる。
しかも、上記ガス警報器10においては、(1)ケーシング11が正面側ケーシング部材20および背面側ケーシング部材12がこれらの対接面の全周にわたって配設されたリング状のパッキング25を介して連結されてなること、(2)ガス警報器本体10Aのセンサ装着部15の内面と、ガスセンサ55に係るホルダー部材61の外周面との間にリング状パッキング68が介在すること、および(3)電池蓋30の側面にリング状パッキング44が装着されていることにより、十分に信頼性の高い防水構造が形成されていることに加え、電池蓋30を構成する回転板状ストッパ部材36の回転軸部36Dがベース部材31を貫通しない状態で形成されていることにより、回転板状ストッパ部材36の回転によるガス警報器本体10Aの電池挿入口13Bに対するロック機能およびロック解除機能が確実に得られる構成のものでありながら、回転部に防水用シール部材を用いることなしに、優れた防水性を得ることができる。
従って、外部から水がガス警報器本体10A内に侵入することを確実に防止することができ、例えばガス警報器本体10Aに対して外部から水が侵入するおそれのある環境のガス検知を行うものとして極めて有用なものとなる。
【0043】
また、電池蓋30が特定の構成の位置規制手段を有することにより、回転板状ストッパ部材36を電池蓋30の開閉点となる個所において安定した状態で確実に保持することができると共に、ベース部材31の突起部34が回転板状ストッパ部材36のいずれかの位置固定用凹所38A,38Bに収容されることによってクリック感を得ることができるので、回転板状ストッパ部材36が適正な位置にあることを認識することができる。
【0044】
さらに、ケーシング11における電池挿入口13Bの開口縁部に切り欠き部13Cが形成されており、この切り欠き部13Cに挿入される位置規制用突片42Aが電池蓋30の側面に形成されていることにより、電池14が電池室13に装填されていない状態で電池蓋30が装着された場合であっても、電池蓋30を容易に取り外すことができる。
【0045】
さらにまた、電池室13に装填される2本の電池14が直列に接続される構成とされていることにより、必要とされる十分な大きさの電力を確保することができる。
【0046】
さらにまた、上記ガス警報器10においては、ガスセンサ55の装着に伴って、ガス警報器本体10Aの動作環境条件および温度補償条件が、装着されたガスセンサ55に応じたものに自動的に設定変更されるので、煩雑な操作を行うことが不要であり、高い利便性を得ることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガス警報器の使用方法は、ガス警報器を手で握って保持する方法に限られず、適宜の装着具によって身体に装着して使用することもできる。
また、例えば図22に示すように、一端にガス警報器本体10Aのセンサ装着部15と同一の構成を有するセンサ装着部82を有すると共に他端にガス警報器本体10Aのセンサ装着部15に装着される被装着部85を有する、例えば長さ0.5〜20mのリモートケーブル80を利用して、ガスセンサ55が装着された先端部のみを手で握ってガスセンサ55のガス導入口56Aを任意の方向に指向させて使用すること、あるいは、ガス警報器本体10Aを手で保持してあるいは身体に装着し、ガスセンサ55が装着された先端部を例えばマンホール内などに投入して使用することもできる。
【0048】
さらに、本発明のガス警報器においては、適宜の装着用部材を用いて人の身体に直接的に装着してあるいは人の着衣に装着して使用してもよく、装着用部材としては、例えばクリップ、ピンなどを挙げることができる。
また、ガス警報器における警報報知機構として、例えば警報用ブザー、警報用振動発生器(数十ヘルツ程度の低周波を発する)が設けられた構成とすることができ、この場合には、警報用発光部による発光に加え、警報用ブザーによるブザー音および警報用振動発生器による振動によって警報が発せられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のポータブル型ガス警報器の一構成例を示す正面図である。
【図2】図1に示すポータブル型ガス警報器の平面図である。
【図3】図1に示すポータブル型ガス警報器の背面図である。
【図4】図1に示すポータブル型ガス警報器の底面図である。
【図5】図1に示すポータブル型ガス警報器の左側面図である。
【図6】図1に示すポータブル型ガス警報器の右側面図である。
【図7】図1のA−Aにおける縦断面図である。
【図8】図1のB−Bにおける横断面図である。
【図9】図1のC−Cにおける縦断面図である。
【図10】図1のD−Dにおける横断面図である。
【図11】背面側ケーシング部材の正面図である。
【図12】正面側ケーシング部材の背面図である。
【図13】ガスセンサの一例における構成の概略を示す説明図である。
【図14】電池蓋の一例における構成を示す正面図である。
【図15】図14に示す電池蓋の背面図である。
【図16】図14に示す電池蓋の右側面図である。
【図17】電池蓋を構成するベース部材の構成を示す正面図である。
【図18】電池蓋を構成する回転板状ストッパ部材の構成を示す説明図であって、 (A)正面図、(B)背面図、(C)(A)のa−aにおける断面図である。
【図19】電池蓋を構成する左側案内支持部材の構成を示す説明図であって、(A)正面図、(B)背面図、(C)(A)のb−bにおける断面図である。
【図20】電池蓋を構成する右側案内支持部材の構成を示す説明図であって、(A)正面図、(B)背面図、(C)(A)のc−cにおける断面図である。
【図21】プロテクトカバーの構成を示す斜視図である。
【図22】リモートケーブルがガス警報器に接続された状態を示す説明用斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 ポータブル型ガス警報器
10A ガス警報器本体
11 ケーシング
11A 固定用ネジ
12 背面側ケーシング部材
13 電池室
13A 電池受容部
13B 電池挿入口
13C 切り欠き部
14 電池
15 センサ装着部
15A センサ装着口
16 スリーブ部材
18 接続用コネクター部材
19 視認用開口部
20 正面側ケーシング部材
21 正面開口部
22 操作部形成用開口部
23 補強部材
25 リング状パッキング
26 対接面
28 赤外線通信ポート
30 電池蓋
31 ベース部材
32 ザグリ孔
34 突起部
35 回転規制用ストッパ
35A,35B,35C,35D 装着用突起部
36 回転板状ストッパ部材
36A 柱状部分
36B 鍔部分
36C 溝
36D 回転軸部
37A 凹所
37B 係止面
38A,38B 位置固定用凹所
39 案内溝
40 左側案内支持部材
41 支持片
42 右側案内支持部材
42A 位置規制用突片
43 支持片
44 リング状パッキング
45 電源端子
46A 表示用基板
46B 電源基板
46C CPU基板
47 パネル状表示機構
48 警報用発光素子
49A,49B,49C スイッチ素子
50 保護用窓部材
51 表示部
52 警報用発光部
53 操作部
53A 第1の操作用ボタン
53B 第2の操作用ボタン
53C 第3の操作用ボタン
54A,54B,54C スイッチ駆動部分
55 ガスセンサ
56 センサ本体
56A ガス導入口
57 センサ基板
60 アダプター
61 ホルダー部材
64 係合用突起
65 グリップ部材
68 リング状パッキング
70 プロテクトカバー
71 装着部
72 正面開口部
73 ガス警報器装着用開口部
74 ガスセンサ装着用開口部
75 電池挿入用開口部
76 赤外線通信ポート露出用開口部
80 リモートケーブル
82 センサ装着部
85 被装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手で握って保持することのできる箱型形状のケーシングを備え、このケーシングの内部における上半部にガス検知動作に係る機能部材が配置されていると共に下半部にケーシングの下方に開口する電池挿入口を有する電池室およびセンサ装着部が左右に並設されて形成されたガス警報器本体と、このガス警報器本体のセンサ装着部に着脱自在に装着されるガスセンサとにより構成されており、
電池室には、2本の柱状の電池が左右に並設された状態で受容され、さらに、裏面に電源端子が設けられると共に側面にリング状パッキングが装着された電池蓋が電池挿入口内に収容された状態で装着されており、
電池蓋は、ベース部材、とこのベース部材の表面側に回転可能に設けられた回転板状ストッパ部材とを備えており、当該回転板状ストッパ部材の回転軸がベース部材を貫通しない状態で形成されていることを特徴とするポータブル型ガス警報器。
【請求項2】
ベース部材の表面にはザグリ穴が形成されており、回転板状ストッパ部材の裏面に形成された回転軸部が当該ザグリ穴に挿入されることにより回転板状ストッパ部材が回転可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のポータブル型ガス警報器。
【請求項3】
電池蓋は、回転板状ストッパ部材の裏面に形成された円弧状の案内溝およびこの案内溝によって互いに連結された2つの凹所、並びに、ベース部材の表面に形成された、前記案内溝または凹所に収容される突起部により構成された位置規制手段を有し、
回転板状ストッパ部材が回転されることによりベース部材の突起部が回転板状ストッパ部材のいずれか一方の凹所に収容され、回転板状ストッパ部材が電池蓋の開閉点となる位置において停止されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポータブル型ガス警報器。
【請求項4】
ケーシングにおける電池挿入口の開口縁部には、切り欠き部が形成されており、
電池蓋には、前記切り欠き部に挿入される突片部分が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポータブル型ガス警報器。
【請求項5】
2本の柱状の電池が互いに正極および負極が逆方向を向いた状態で装填され、電池蓋の電源端子によって直列に接続されることを特徴とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポータブル型ガス警報器。
【請求項6】
ガス警報器本体におけるセンサ装着部は、検知対象ガスの種類が異なる複数の同形のガスセンサのうちから目的に応じて選択されたいずれか一のガスセンサが他のガスセンサと交換可能とされるよう構成されており、
ガスセンサは、当該ガスセンサに固有の情報が記録された記憶手段を具えていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポータブル型ガス警報器。
【請求項7】
ガスセンサは温度検知手段を有し、当該温度検知手段により検知される温度情報に基づいて、ガスセンサからのガス検知信号についての温度補償条件が設定されることを特徴とする請求項6に記載のポータブル型ガス警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−249502(P2007−249502A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70953(P2006−70953)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】