説明

ポーリング通信システム及びサーバシステム

【課題】多数のデバイスがポーリング通信を行っても、当該ポーリング通信に必要な通信帯域を軽減できるポーリング通信システム及びサーバシステムを提供する。
【解決手段】複数の宅内機器1と接続されて、当該複数の宅内機器1と通信するサーバシステムであって、通常、宅内機器1は、複数のポーリングサーバ5に分散して、ポーリング通信を行う。センターサーバ4は、各宅内機器1と情報の授受を行うイベントが発生した場合に、当該宅内機器1の通信要求を複数のポーリングサーバ5に送信し(1)、宅内機器1によってポーリングサーバ5に質問パケットが送信されると(2)、ポーリングサーバ5はセンターサーバ通信要求があったことを表す応答パケットを返信する(3)。これによって、宅内機器1がセンターサーバ4にパケット要求をし(4)、センターサーバ4から宅内機器1にパケットが送信される(5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスがセンターサーバと接続されてなり、デバイスがセンターサーバからの通信要求を確認するためにポーリングを行うポーリング通信システム及びサーバシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のデバイスの状態を把握するための手段として、ポーリングサーバを備えた通信システムが下記の特許文献1等で知られている。この通信システムは、多数の制御対象機器をセンターサーバで制御・監視するシステムであって、多数の制御対象機器とセンターサーバとの間にゲートウェイを設け、センターサーバから制御対象機器への制御要求や監視要求が発生したか否かを検知するために、ゲートウェイを介してセンターサーバにポーリングを行っている。
【0003】
このような通信システムにおいて、センターサーバと多数の制御対象機器との間にNATルータを備えているシステム環境が考えられるが、当該システム環境では、センターサーバからはNATルータしか認識できず、センターサーバと制御対象機器とが直接的に通信ができない。したがって、NATルータが設けられている制御対象機器側からセンターサーバに対して、自己に対する制御・監視要求が存在するか否かを問い合わせるポーリング通信が必要がある。
【0004】
また、単一のセンターサーバによって複数のデバイスを制御するシステムでは、当該単一のセンターサーバによってポーリング通信及び各デバイスの制御・監視を行っていた。
【特許文献1】特開平2004−280717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した通信システムは、常に通信をする必要がない多数のデバイスであっても、定期的にポーリングサーバに対して通信を行う必要があり、単一のポーリングサーバに接続されるデバイス数が多くなるほど、当該ポーリングサーバに必要な通信帯域が増大し、運用コストが増大してしまう。また、ポーリングサーバに接続する一部の通信回線のみに通信が集中するために、通信障害に備えて高価な回線多重化機構を導入する必要があり、更に運用コストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、多数のデバイスがポーリング通信を行っても、当該ポーリング通信に必要な通信帯域を軽減できるポーリング通信システム及びサーバシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポーリング通信システムは、ポーリング通信のための質問信号を送信し、当該質問信号に対する応答信号を受信する複数のデバイスと、前記複数のデバイスと接続され、前記各デバイスと情報の授受を行うイベントが発生した場合に、当該デバイスの通信要求を送信するセンターサーバと、前記複数のデバイス及び前記センターサーバと接続され、前記センターサーバから通信要求を受信していない場合には、前記センターサーバの通信要求の有無を問い合わせる質問信号を前記各デバイスから受信し、当該デバイスに対する前記センターサーバの通信要求が無いことを表す応答信号を当該デバイスに返信し、前記センターサーバから通信要求を受信した場合には、当該デバイスの質問信号に対して通信要求が有ることを表す応答信号を返信する複数のポーリングサーバとを備え、上述の課題を解決するために、前記複数のデバイスから送信される質問信号を複数のポーリングサーバで分散して受信し、当該複数のポーリングサーバによって質問信号に対する応答信号を当該デバイスに返信する。
【0008】
本発明は、複数のデバイスと接続されて、当該複数のデバイスと通信するサーバシステムであって、各デバイスと情報の授受を行うイベントが発生した場合に、当該デバイスの通信要求を送信するセンターサーバと、センターサーバから通信要求を受信していない場合には、センターサーバの通信要求の有無を問い合わせる質問信号を各デバイスから受信し、当該デバイスに対するセンターサーバの通信要求が無いことを表す応答信号を当該デバイスに返信し、センターサーバから通信要求を受信した場合には、当該デバイスの質問信号に対して通信要求が有ることを表す応答信号を返信する複数のポーリングサーバとを備え、上述の課題を解決するために、各デバイスから送信される質問信号を複数のポーリングサーバで分散して受信し、当該複数のポーリングサーバによって質問信号に対する応答信号を当該デバイスに返信する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数のポーリングサーバを備え、各宅内機器が複数のポーリングサーバに対してポーリング通信を行うので、多数のデバイスがポーリング通信を行っても、当該ポーリング通信に必要な通信帯域を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すネットワーク通信システムは、複数の宅内機器1−1〜1−N(以下、総称する場合には単に「宅内機器1」と呼ぶ)がNAT(Network Address Translation)ルータ2を介してネットワーク3に接続され、単一のセンターサーバ4及び複数のポーリングサーバ5−1〜5−N(以下、総称する場合には単に「ポーリングサーバ5」と呼ぶ。)によってネットワーク3を介して宅内機器1−1〜1−Nを制御・監視等するものである。このセンターサーバ4及びポーリングサーバ5は、本発明に係るサーバシステムに相当する。なお、図1には図示していないが、センターサーバ4は、パーソナルコンピュータや携帯電話等のユーザ端末からのリクエストを受けて、宅内機器1の制御、監視を行うこともできる。
【0012】
このネットワーク通信システムは、機器埋め込み型のネットワーク技術(EMIT(Embedded Micro Internetworking Technology)、以下、EMIT技術と称する。)を利用して、センターサーバ4によって宅内機器1を制御・監視するものである。このEMIT技術は、ユーザ端末、宅内機器1やセンターサーバ4といったネットワーク機器にEMITミドルウェアを組み込み、当該EMITミドルウェア同士の通信によって通信接続を実現するものである。
【0013】
なお、詳細は後述するが、センターサーバ4には、EMITミドルウェア間におけるルーティング処理、宅内機器1の認識処理等を行うOAS(Object Access Server)機能部21が実装され、宅内機器1には、EMITミドルウェア間で各種宅内機器1の制御信号や宅内機器1の状態信号等を送受するMOS(Micro Object Server)機能部11−1〜11−N(以下、総称する場合には、単に「MOS機能部11」と呼ぶ。)が実装され、ユーザ端末には、制御対象の宅内機器1への制御・監視リクエストを出力すると共に宅内機器1の状態表示等を行うOAL(Object Access Library)機能部(図示せず)が実装されている。
【0014】
ネットワーク通信システムは、図1に示すように、センターサーバ4のOAS機能部21から宅内機器1のMOS機能部11への通信の必要がない通常時には、各宅内機器1と複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nとの間でポーリング通信を行っている。このポーリング通信は、センターサーバ4のOAS機能部21が宅内機器1のMOS機能部11に対する通信要求を発生させているか否かを、宅内機器1で問い合わせるために行う。
【0015】
このポーリング通信は、宅内機器1から複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nに質問パケットを送信すると、センターサーバ4からポーリングサーバ5−1〜5−Nに通信要求を送信していない場合、複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nは、ネットワーク3から通信要求を受けていない旨を含む応答パケットを宅内機器1に返信する。
【0016】
また、宅内機器1のMOS機能部11によってイベントを発生させた場合、図2に示すように、宅内機器1のMOS機能部11は、宅内で発生したイベントの識別子等を含むイベントパケットをセンターサーバ4に送信させる。これにより、センターサーバ4のOAS機能部21は、イベントパケットによって宅内機器1のMOS機能部11で認識したイベント発生を認識して、当該イベントに従った処理を行う。
【0017】
更に、センターサーバ4のOAS機能部21から宅内機器1のMOS機能部11に通信をする必要が発生した場合、図3に示すように、先ずセンターサーバ4は、宅内機器1に対するセンターサーバ通信要求をポーリングサーバ5−1〜5−Nに送信する(1)。このセンターサーバ通信要求は、宅内機器1とポーリング通信を行っている複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nのうち、全部又は一部のポーリングサーバ5−1〜5−Nに送信される。
【0018】
次に、宅内機器1がポーリングサーバ5−1〜5−Nに質問パケットを送信すると(2)、センターサーバ通信要求を受信したポーリングサーバ5−1〜5−Nは、センターサーバからの通信要求が有ったことを含む応答パケットを宅内機器1に返信する(3)。
【0019】
この応答パケットを受信すると、宅内機器1のMOS機能部11は、当該通信要求に関するパケットの送信を要求する要求パケットをセンターサーバ4のOAS機能部21に送信し(4)、センターサーバ4のOAS機能部21は、宅内機器1のMOS機能部11から要求パケットを受信したことに応じて、当該要求パケットに対する応答パケットを宅内機器1のMOS機能部11に送信する(5)。そして宅内機器1のMOS機能部11は、応答パケットを受信すると、当該応答パケットを処理して、制御・監視に係わる動作を行う。ここで、MOS機能部11からOAS機能部21へのパケット要求、当該パケット要求に対するOAS機能部21からMOS機能部11へのパケットの送信は、EMITミドルウェアにおけるOAP(Object Access Protocol)に準拠した処理である。
【0020】
また、センターサーバ4は、宅内機器1に応答パケットを送信完了すると同時に、前回にセンターサーバ通信要求を送信したポーリングサーバ5−1〜5−Nにセンターサーバ通信完了を送信する。これによって、ポーリングサーバ5−1〜5−Nは、次に質問パケットが宅内機器1から送信された場合には、センターサーバの通信要求が無いことを含む応答パケットを宅内機器1に返信することになる。
【0021】
このように宅内機器1とポーリングサーバ5−1〜5−Nとの間でポーリング通信を行うと共に、宅内機器1のMOS機能部11とセンターサーバ4のOAS機能部21との間で制御・監視のための通信を行うネットワーク通信システムにおいて、宅内機器1及びセンターサーバ4は、図4に示すように構成される。
【0022】
宅内機器1は、住宅内の温度センサ、煙センサ、湿度センサ、電気錠、ドアホン、照明、防犯センサなどが挙げられる。この宅内機器1は、図4に示すように、MOS機能部11に、アプリケーション処理部12、インターフェースモジュール13が接続されている。
【0023】
アプリケーション処理部12は、例えば温度センサとして機能する場合に、温度値を取得するアプリケーションコードが記憶されており、温度値を保持してMOS機能部11に受け渡す。
【0024】
インターフェースモジュール13は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルにおけるデータリンク層、ネットワーク層、トランスポート層の処理を行う。例えばデータリンク層においてイーサネット(登録商標)に従った処理を行い、ネットワーク層においてIP(Internet Protocol)に従った処理を行い、トランスポート層においてTCP(Transmission Control Protocol)に従った処理を行う。このインターフェースモジュール13の通信プロトコルバージョン、通信速度といった能力は、能力テーブル14に格納されて、センターサーバ4のOAS機能部21によって取得可能となっている。
【0025】
MOS機能部11は、アプリケーション処理部12によるアプリケーション層とインターフェースモジュール13によるトランスポート層との間のEMITミドルウェアとして機能する。このMOS機能部11には、センターサーバ4のOAS機能部21によって、宅内機器1がEMITにおけるオブジェクトであることを識別するために、オブジェクトID11dが与えられている。このオブジェクトID11dは、OAS機能部21と通信するに際して、センターサーバ4に送信するパケットに格納される。
【0026】
MOS機能部11は、機能(function)11a、イベント(event)11b、変数(variable)11cで定義された動作を行う。このMOS機能部11の動作は、サービステーブル11eして定義されており、センターサーバ4のOAS機能部21によって取得可能となっている。
【0027】
宅内機器1が温度センサである場合、機能11aは、温度値の出力機能となり、イベント11bは、例えば温度値が10度以下となったら温度値を出力するイベントとなり、変数11cは、温度値そのものとなる。このような宅内機器1は、温度値が10度以下となるとイベント11bでイベントを発生させ、機能11aによって変数11cの温度値を出力する。また、MOS機能部11は、宅内機器1がドアホンである場合、機能11aは、押しボタンのオンオフ状態出力機能となり、イベント11bは、例えば押しボタンがオン状態となったというイベントとなり、変数11cは、押しボタンのオン又はオフの値となる。
【0028】
また、宅内機器1は、MOS機能部11によって、複数のポーリングサーバ5に対するポーリング通信を行うイベントを発生させて、通信モジュール23から質問パケットを送信させ、応答パケットを受信させても良く、インターフェースモジュール13によって複数のポーリングサーバ5に対するポーリング通信を行うようにしても良い。
【0029】
センターサーバ4は、住宅内の温度センサ、湿度センサ、電気錠、ドアホン、照明、防犯センサ等の宅内機器1を制御・監視するものである。このセンターサーバ4は、OAS機能部21に、サーバ機能部22、通信モジュール23が接続されている。
【0030】
サーバ機能部22は、OAS機能部21及び通信モジュール23を統括制御する。このサーバ機能部22は、ある宅内機器1と通信したい場合には、センターサーバ通信要求を作成してポーリングサーバ5−1〜5−Nに送信させる。
【0031】
通信モジュール23は、宅内機器1のインターフェースモジュール13との間で通信を行うと共に、ポーリングサーバ5−1〜5−Nの間で通信を行う。この通信モジュール23は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルにおけるデータリンク層、ネットワーク層、トランスポート層の処理を行う。例えばデータリンク層においてイーサネット(登録商標)に従った処理を行い、ネットワーク層においてIP(Internet Protocol)に従った処理を行い、トランスポート層においてTCP(Transmission Control Protocol)に従った処理を行う。個々の宅内機器1−1〜1−Nが様々なインターフェースモジュール13で構成されている場合、通信モジュール23は、デバイスアクセスコントローラ21cの制御に従って、宅内機器1ごとの通信プロトコルバージョン、通信速度といった宅内機器1の能力に応じた通信処理を行う。
【0032】
OAS機能部21は、サーバ機能部22の処理と通信モジュール23によるトランスポート層処理との間のEMITミドルウェアとして機能する。このOAS機能部21は、デバイスアクセスサーバ21a、所定のメモリに格納されたサービス情報21b、デバイスアクセスコントローラ21cを備えて構成されている。
【0033】
デバイスアクセスサーバ21aは、クライアント(OAL)との間で通信を行うために、クライアントからのリクエストを通信モジュール23及びサーバ機能部22を介して受信する。そしてデバイスアクセスサーバ21aは、当該リクエストをデバイスアクセスコントローラ21c及び通信モジュール23を介して宅内機器1に送信する動作を制御する。これによって、デバイスアクセスコントローラ21cは、クライアントからの要求を宅内機器1に伝達して、宅内機器1を制御する。
【0034】
デバイスアクセスコントローラ21cは、宅内機器1−1〜1−Nのインターフェース定義及びサービス情報を取得するために、通信モジュール23を介して宅内機器1−1〜1−Nのサービステーブル11e及び能力テーブル14を検索する。これによって、デバイスアクセスコントローラ21cは、各宅内機器1がどのようなサービス(機能11a、イベント11b、変数11c)を有するかを判断して、各宅内機器1のオブジェクトID11dとサービスリストとの対応関係を示すサービス情報21bを作成する。また、デバイスアクセスコントローラ21cは、各宅内機器1がどのような能力(通信プロトコルバーション、通信速度)を有するかを認識する。
【0035】
デバイスアクセスコントローラ21cは、MOS機能部11でイベントが発生して、イベントパケットを通信モジュール23で受信すると、デバイスアクセスコントローラ21cによって当該イベントパケットを解析して、デバイスアクセスサーバ21aに通知する。また、クライアントからのリクエストを宅内機器1に送信する場合には、当該リクエストに応答できるMOS機能部11を、サービス情報21bを参照して認識する。そして、当該リクエストに送信先のオブジェクトID11dを付加し、宅内機器1の能力に合わせて通信モジュール23から宅内機器1にパケットを送信させる。
【0036】
また、OAS機能部21には、他のEMITミドルウェア対応機器が当該OAS機能部21を識別するために、オブジェクトID21dが与えられている。このオブジェクトID21dは、宅内機器1のMOS機能部11や、他のOALが実装されたクライアント(パーソナルコンピュータ)等のEMITミドルウェア対応機器と通信するに際して、送信するパケットに格納される。
【0037】
このようなMOS機能部11を備えた宅内機器1及びOAS機能部21を備えたセンターサーバ4を備えたネットワーク通信システムにおいて、図1に示したように、センターサーバ4からポーリングサーバ5−1〜5−Nに通信要求が送信されていない場合、宅内機器1は、複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nに質問パケットを送信する。このとき、宅内機器1は、図5に示すようなポーリング順位と、接続先となる複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nの接続先情報との対応関係を示すテーブルを参照する。この図5のテーブルをそれぞれの宅内機器1−1〜1−Nで異なるようにすることにより、各宅内機器1−1〜1−Nが異なる複数のポーリングサーバ5の組み合わせでポーリング通信を行うことになる。
【0038】
宅内機器1は、例えば、通常はポーリング順位が「1」のポーリングサーバ5のみとポーリング通信を行い、当該ポーリングサーバ5との間のポーリング通信が失敗した場合にポーリング順位が「2」のポーリングサーバ5とポーリング通信を行っても良く、ポーリング順位が「1」のポーリングサーバ5とポーリング順位が「2」のポーリングサーバ5とを交互に分散してポーリング通信を行っても良い。更に、宅内機器1−1〜1−Nは、自身がポーリング通信を行う複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nと所定のルールに従って時系列に異なるポーリングサーバ5に質問パケットを送信するようにしても良い。
【0039】
これに対し、センターサーバ4には、図6(a)に示すような宅内機器1と当該宅内機器1がポーリング通信を行うポーリングサーバとの対応表と、図6(b)に示すようなポーリングサーバと当該ポーリングサーバと接続するための接続先情報との対応表とが記憶されている。そして、ある宅内機器1と通信したい場合には、当該宅内機器1がポーリング通信を行う何れかのポーリングサーバ5にセンターサーバ通信要求を送信することになる。また、センターサーバ4は、宅内機器1が所定のルールに従って複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nとポーリング通信を行う場合には、当該複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nのうち何れかのポーリングサーバ5にセンターサーバ通信要求を送信する。
【0040】
また、センターサーバ4は、多数のポーリングサーバ5−1〜5−Nが配設されている場合であっても、図6(a)に示す対応表を参照して、通信したい宅内機器1がポーリング通信を行うポーリングサーバ5−1〜5−Nのみにセンターサーバ通信要求を送信することになる。
【0041】
以上のように、本発明を適用したネットワーク通信システムによれば、センターサーバ4から宅内機器1−1〜1−Nに対する通信要求がない場合には、宅内機器1−1〜1−Nと複数のポーリングサーバ5−1〜5−Nとの間でポーリング通信を行わせることにより、ネットワーク3の一部の回線のみにポーリング通信が集中することを回避できる。したがって、ネットワーク3の一部のみに通信が集中して通信帯域が増大することなく、運用コストを抑制でき、通信が集中することにより発生する障害に備えて高価な回線多重化機構を導入する必要を無くすことができる。また、センターサーバ4に対してポーリング通信を行う必要がないので、ポーリング通信に係る質問パケット及び応答パケットの通信に必要な帯域の増加によって宅内機器1の制御・監視に係わるパケットの伝送に遅延が発生することも防止できる。
【0042】
なお、上述した一例では、複数のポーリングサーバ5を設けた場合について説明したが、宅内機器1のポーリング通信の相手が複数になる構成であれば、ポーリングサーバ5の機能をセンターサーバ4に実装し、且つ単一のポーリングサーバ5を設けた構成であっても、宅内機器1のポーリング通信に使用する通信帯域をセンターサーバ4とポーリングサーバ5とに分散できる。
【0043】
また、各ポーリングサーバ5は、自己が使用している通信帯域を認識して、当該通信帯域が所定の帯域よりも高くなった場合には、宅内機器1からの質問信号に対する応答信号の返信を制限しても良い。このように応答信号の返信が制限された場合、宅内機器1は、当該ポーリングサーバ5に対するポーリング通信が失敗したことを判定して、他のポーリングサーバ5に質問信号を送信することになる。
【0044】
つぎに、本発明を適用したセンターサーバ4及びポーリングサーバ5を含む他のネットワーク通信システムについて説明する。なお、下記のネットワーク通信システムに係る記載のうち、上述のネットワーク通信システムで記載されていないことも、上述のEMIT技術を利用したセンターサーバ4及び宅内機器1によって実現可能であることは勿論である。
【0045】
このネットワーク通信システムは、図7に示すように、センターサーバ4に、ユーザ端末である携帯電話30と接続されると共に複数のポーリングサーバ5−1,5−2が接続される。このポーリングサーバ5−1,5−2は、センターサーバ4からのセンターサーバ通信要求を受信するイベントが発生した時に静的コンテンツを生成するCGI(Common Gateway Interface)を起動し、当該起動させたCGIを削除する機能を持つ。
【0046】
センターサーバ4は、携帯電話30とインターネット等の汎用ネットワークN1を介して通信を行うフロントエンドサーバ41と、データベース42と、ポーリングサーバ5−1〜5−N及び宅内機器1と通信を行うバックエンドサーバ43とを備えている。これらフロントエンドサーバ41,データベース42,バックエンドサーバ43は、上述のサーバ機能部22と同様の機能を有している。
【0047】
センターサーバ4は、携帯電話30からある宅内機器1を制御・監視するリクエストを汎用ネットワークN1を介してフロントエンドサーバ41で受信した場合、当該制御・監視対象となる宅内機器1を識別し、データベース42に格納されている宅内機器1とポーリングサーバ5との対応表から、宅内機器1がポーリング通信を行うポーリングサーバ5を識別する。そして、データベース42から識別したポーリングサーバ5に対して、センターサーバ通信要求を送信することによって、ポーリングサーバ5に静的コンテンツを生成させる。
【0048】
図7に示す例では、宅内機器1−2を制御・監視するリクエストが携帯電話30からフロントエンドサーバ41に供給されて、宅内機器1−2がポーリング通信を行うポーリングサーバ5−1に静的コンテンツを生成した様子を示している。一方、宅内機器1−3がポーリング通信を行うポーリングサーバ5−2には、静的コンテンツが生成されていない。
【0049】
ポーリングサーバ5−1は、静的コンテンツを生成する場合、静的コンテンツを有しないポーリングURL(Uniform Resource Locator)51と、静的コンテンツを有するURL52とを含む。そして、次に宅内機器1−2から質問パケットがポーリングサーバ5−1に供給されると、静的コンテンツを含むポーリングURL52から宅内機器1−2に、静的コンテンツが有ることを示す応答パケットを送信する。
【0050】
これによって、宅内機器1−2は、バックエンドサーバ43と通信(Eバス通信)を行って、携帯電話30のリクエストに応じた制御・監視が行われる。
【0051】
このようなネットワーク通信システムは、図8に示すように、携帯電話30からフロントエンドサーバ41にリクエストが要求されていない通常時には、質問パケットとして、宅内機器1−2からポーリングサーバ5−1にhttp head(S1)を送信し、ポーリングサーバ5−1は、静的コンテンツが生成されていないので、応答パケットとして、ポート番号「404」のHTTPのnot found(S2)を返信する。そして、宅内機器1−2及びポーリングサーバ5−1は、所定のポーリング通信の間隔(5秒)となると繰り返して質問パケット(S3)、応答パケット(S4)を送受信する。
【0052】
そして、ステップST1において、携帯電話30のWWW(World Wide Web)ブラウザに対して、宅内機器1−2を制御する操作がなされると、携帯電話30は、制御対象の宅内機器1−2及び制御内容を含むHTTPリクエスト(S5)をフロントエンドサーバ41に送信する。フロントエンドサーバ41は、HTTPリクエスト(S5)に含まれる制御対象の宅内機器1−2及び制御内容を含むリクエスト(S6,Method Request)をバックエンドサーバ43に送信し、バックエンドサーバ43は、データベース42を参照して、宅内機器1−2がポーリング通信を行っているポーリングサーバ5−1を識別する。そして、バックエンドサーバ43は、制御対象がポーリング通信を行っているポーリングサーバ5−1に静的コンテンツを生成する命令(Contents Create)となるセンターサーバ通信要求をポーリングサーバ5−1に送信する。
【0053】
センターサーバ通信要求を受信したポーリングサーバ5−1は、ステップST2において、新規のCGIを起動させて、静的コンテンツを生成してポーリングURL52を構築する。次に宅内機器1−2からポーリングサーバ5−1に質問パケット(S8)が供給されると、ポーリングURL52は、ポート番号「200」のHTTPの応答パケット(S9)を宅内機器1−2に返信する。
【0054】
次に宅内機器1−2は、ポーリングサーバ5−1のバックエンドサーバ43に要求パケット(S10,Ebus polling)を送信し、バックエンドサーバ43は、宅内機器1−2に、先にフロントエンドサーバ41から受信したリクエスト(S6)と同じ制御内容のリクエスト(S11,Method Request)を送信する。このリクエスト(S11)を宅内機器1−2に送信すると、バックエンドサーバ43は、ポーリングサーバ5−1のポーリングURL52を削除すべく、コンテンツ削除要求(S12,Contents Delete)をポーリングサーバ5−1に送信する。
【0055】
ポーリングサーバ5−1は、コンテンツ削除要求(S12)を受信すると、ステップST3において、ステップST2で起動したCGIを終了させて、静的コンテンツを削除することによって、ポーリングURL52を削除する。
【0056】
また、宅内機器1−2は、リクエスト(S11)を受信すると、携帯電話30で指定された制御内容に従った動作を行い、当該動作が完了したことに応じて、動作結果を含む応答パケット(S13,Method reply)をバックエンドサーバ43に送信し、更に、バックエンドサーバ43は、応答パケット(S14)をフロントエンドサーバ41に送信し、フロントエンドサーバ41は、応答パケット(S15)を携帯電話30に送信する。これによって、携帯電話30は、ステップST4において、宅内機器1−2の制御内容に対する動作結果を示す制御操作結果表示を行って、宅内機器1−2の状態をユーザに提示できる。
【0057】
その後、宅内機器1−2とポーリングサーバ5−1とは、通常時の処理に戻り、宅内機器1−2からポーリングサーバ5−1にhttp head(S16,S17)を送信し、ポーリングサーバ5−1は、ポート番号「404」のnot found(S18,S19)を返信する処理を繰り返す。
【0058】
このようなネットワーク通信システムによれば、上述したEMIT技術を利用したネットワーク通信システムと同様に、ポーリング通信と宅内機器1の制御・監視通信とを分離し、ポーリング通信に必要な通信帯域を増大させることを回避できる。
【0059】
更に、このネットワーク通信システムにおいて、宅内機器1でイベントが発生して、宅内機器1から携帯電話30に当該イベントの内容を通知する場合には、図9に示すような処理を行う。
【0060】
先ず、イベントが発生していない通常時において、宅内機器1−2とポーリングサーバ5−1とは、宅内機器1−2からポーリングサーバ5にhttp head(S21,S23,S25)を送信し、ポーリングサーバ5−1は、ポート番号「404」のnot found(S22,S24,S26)を返信する処理を繰り返しているときに、宅内機器1−2でイベントを検知した場合(ステップST11)、宅内機器1−2は、ポーリングサーバ5−1に対する回線とは異なる回線を利用して、イベント(火災)の内容を含むイベントパケット(S27)をフロントエンドサーバ41に送信する。
【0061】
これに応じて、バックエンドサーバ43は、イベントパケット(S27,Event)を受信したことの応答パケット(S30,Event reply)を宅内機器1−2に返信し、フロントエンドサーバ41にイベント転送パケット(S28,Event forward)を送信する。フロントエンドサーバ41は、イベント転送パケット(S28)を受信したことに応じて、携帯電話30にイベントの内容を通知できるメール形式の通知パケット(S29,Event Mail)を携帯電話30に送信して、携帯電話30に、例えば「火災が発生しました」との表示をさせる。
【0062】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を適用したセンターサーバ及び複数のポーリングサーバを含むネットワーク通信システムにおいて、センターサーバから宅内機器への通信要求が発生していない通信時の処理を説明するシステム図である。
【図2】本発明を適用したセンターサーバ及び複数のポーリングサーバを含むネットワーク通信システムにおいて、宅内機器でイベントが発生した時の処理を説明するシステム図である。
【図3】本発明を適用したセンターサーバ及び複数のポーリングサーバを含むネットワーク通信システムにおいて、センターサーバから宅内機器への通信要求が発生した時の処理を説明するシステム図である。
【図4】宅内機器、センターサーバの内部構成図である。
【図5】宅内機器が保持するポーリング通信を行う複数のポーリングサーバを記述したテーブルを示す図である。
【図6】センターサーバが保持するテーブルであって、(a)は宅内機器とポーリングサーバとの対応関係、(b)はポーリングサーバと当該ポーリングサーバの接続先情報との対応関係を示す。
【図7】本発明を適用したセンターサーバ及びポーリングサーバを含む他のネットワーク通信システムのシステム図である。
【図8】本発明を適用したセンターサーバ及びポーリングサーバを含む他のネットワーク通信システムにおいて、携帯電話によって宅内機器を制御・監視するときのシーケンス図である。
【図9】本発明を適用したセンターサーバ及びポーリングサーバを含む他のネットワーク通信システムにおいて、宅内機器でイベントが発生した時のシーケンス図である。
【符号の説明】
【0064】
1 宅内機器
2 NATルータ
3 ネットワーク
4 センターサーバ
5 ポーリングサーバ
11 MOS機能部
11a 機能
11b イベント
11c 変数
11d オブジェクトID
11e サービステーブル
12 アプリケーション処理部
13 インターフェースモジュール
14 能力テーブル
21 OAS機能部
21a デバイスアクセスサーバ
21b サービス情報
21c デバイスアクセスコントローラ
21d オブジェクトID
22 サーバ機能部
23 通信モジュール
30 携帯電話
41 フロントエンドサーバ
42 データベース
43 バックエンドサーバ
51,52 ポーリングURL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーリング通信のための質問信号を送信し、当該質問信号に対する応答信号を受信する複数のデバイスと、
前記複数のデバイスと接続され、前記各デバイスと情報の授受を行うイベントが発生した場合に、当該デバイスの通信要求を送信するセンターサーバと、
前記複数のデバイス及び前記センターサーバと接続され、前記センターサーバから通信要求を受信していない場合には、前記センターサーバの通信要求の有無を問い合わせる質問信号を前記各デバイスから受信し、当該デバイスに対する前記センターサーバの通信要求が無いことを表す応答信号を当該デバイスに返信し、前記センターサーバから通信要求を受信した場合には、当該デバイスの質問信号に対して通信要求が有ることを表す応答信号を返信する複数のポーリングサーバとを備え、
前記複数のデバイスから送信される質問信号を複数のポーリングサーバで分散して受信し、当該複数のポーリングサーバによって質問信号に対する応答信号を当該デバイスに返信すること
を特徴とするポーリング通信システム。
【請求項2】
前記デバイスは、全てのポーリングサーバのうち、一部のポーリングサーバに質問信号を送信することを特徴とする請求項1に記載のポーリング通信システム。
【請求項3】
前記センターサーバは、前記各デバイスに対して複数のポーリングサーバを割り当てたデータベースを有し、当該データベースを参照して、各デバイスに割り当てられた何れかのポーリングサーバに前記通信要求を送信することを特徴とする請求項1に記載のポーリング通信システム。
【請求項4】
前記デバイスは、予め設定された所定のルールに従って時系列に異なるポーリングサーバに質問信号を送信し、
前記センターサーバは、前記デバイスごとに、前記所定のルールに従って当該デバイスが質問信号を送信する複数のポーリングサーバを割り当てたデータベースを有し、当該データベースを参照して、各デバイスに割り当てられた何れかのポーリングサーバに前記通信要求を送信することを特徴とする請求項1に記載のポーリング通信システム。
【請求項5】
前記デバイスには、前記質問信号の送信先のポーリングサーバとして、複数のポーリングサーバが登録されていることを特徴とする請求項1に記載のポーリング通信システム。
【請求項6】
複数のデバイスと接続されて、当該複数のデバイスと通信するサーバシステムであって、
前記各デバイスと情報の授受を行うイベントが発生した場合に、当該デバイスの通信要求を送信するセンターサーバと、
前記センターサーバから通信要求を受信していない場合には、前記センターサーバの通信要求の有無を問い合わせる質問信号を前記各デバイスから受信し、当該デバイスに対する前記センターサーバの通信要求が無いことを表す応答信号を当該デバイスに返信し、前記センターサーバから通信要求を受信した場合には、当該デバイスの質問信号に対して通信要求が有ることを表す応答信号を返信する複数のポーリングサーバとを備え、
前記複数のデバイスから送信される質問信号を複数のポーリングサーバで分散して受信し、当該複数のポーリングサーバによって質問信号に対する応答信号を当該デバイスに返信すること
を特徴とするサーバシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−172048(P2007−172048A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364905(P2005−364905)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】