説明

マイクロアレイ用の機能性多孔質支持体

本発明は、少なくとも1つの多孔質表面(3,4)を有する少なくとも1つの材料(2)を有しており、前記材料表面の細孔(5)内に分子特異的認識部位を有するナノ粒子(6)が含有される、機能性多孔質支持体(1)に関する。本発明は更に、機能性多孔質支持体の製造方法、この機能性支持体を使用して製造される、マイクロタイタープレート、マイクロアレイ、及び循環装置等の機能エレメント、並びに、機能性支持体及び機能エレメントの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの多孔質表面を有する材料を有しており、材料表面の細孔内に分子特異的認識部位を有するナノ粒子が含有される機能性多孔質支持体、及び機能性多孔質支持体の製造方法に関する。本発明は更に、機能性支持体を使用して製造される、マイクロタイタープレート、マイクロアレイ、及びフロー装置等の機能エレメント、並びに、機能性支持体及び機能エレメントの用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医学的作用物質を合成したり核酸や蛋白質を分析したりするために、高度並列化が進んだ固相マイクロ分析法が開発された。一段と強まりを見せるこのマイクロ化傾向を推進しているのは、何よりも特に組み合わせ化学であり、又ハイスループットスクリーニング(HTS)である。今日これらの分野は両方とも、現代の医薬用作用物質探索の支柱に数えられている。例えばHTSにより、ある物質ライブラリーの中に、新薬のベースとして使用できる作用物質があるかどうかが調査されるようになっている。その際には、この物質ライブラリーの各成分が、いずれかの試験法により、ターゲット(目的分子)との反応性に関して調査される。発見された物質は、当該目的分子の機能に影響を与え得る作用物質の可能性のある候補となる。そこでは作用物質の検出が、吸収法、蛍光法、発光法等の光学的方法により行われるか、又はシンチレーションを利用して放射能を検出することにより行われるようになっている。調査しなければならない相互作用が多数あるために、試験システムも、又それと関連した検出方式も、多種多様とならざるを得なくなっている。
【0003】
作用物質探索には、先ず疾患の発生に責任のあるターゲットが突き止められなければならないことが要求される。現代の分子生物学に対する造詣が深まったことにより、最近では疾患の原因となる、乃至は疾患に影響を与える遺伝子の同定がますます進み、適切な薬剤によりこれに影響を与えられるようになっている。特に疾患の発生に責任を持つ遺伝子を同定する目的での生物活性分子の分析におけるマイルストーンは、バイオチップ又はマイクロアレイと呼ばれるマイクロ化された支持体系である。そのようなマイクロアレイ又はバイオチップは、その表面に多数の生物活性分子が、好ましくは整列したパターンに固定化又は合成されることを特徴とする。固定化される生物分子は、例えば核酸、オリゴヌクレオチド、蛋白質、又はペプチド等であるとよい。バイオチップ又はマイクロアレイは、特に感染疾患、癌疾患、及び遺伝疾患の臨床診断に使用される。そのようなバイオチップ又はマイクロアレイにより、調査対象である試料に含まれる核酸及び蛋白質の決定を、大幅に簡素化し、加速化し、並列化し、自動化し、明細化することができる。マイクロアレイを使用することで、実験では例えば数千種類もの遺伝子又は蛋白質を同時に調査することができる。試料分析においてバイオチップ又はマイクロアレイが効率的である理由は、特に必要とされる試料が極微量で済む点、及び高感度測定法を用いて評価を行うことができる点にある。
【0004】
マイクロアレイのマイクロ化の急速な進展に伴い、マイクロアレイを使用して行われる試験システムにも、より一層のマイクロ化が要求される。そのために、ますます小型化が進んでいる検出装置に対しても、一段と高い要求が課せられるようになっている。例えば、極微量レベルでの個別検出方式の場合は、特有の問題が発生することが知られている。例えば発光測定の場合は、試料が微量であることは、光の検出の対象となる信号が微小であることを意味しており、それにより測定感度に著しい支障を生じてしまう。マイクロアレイにおける吸収測定では、何よりも特に液体表面のメニスカス効果による干渉を受けてしまうが、これは極小試料空間においてはメニスカスが極めて可変性に富んだ挙動を示すからである。マイクロアレイにおける蛍光測定では、量的制約こそ皆無であるが、いずれにせよこの測定法の大半においては、マイクロアレイ支持体として多く使用されているプラスチック材料の固有蛍光も同時に検出されてしまうために、達成できる感度に限界がある。
【0005】
従来型のマイクロアレイは通常、ガラス、金属、又はプラスチック等、平板状の固体表面を使用して製造される(Ramsey, Nature Biotechn., No. 16 (1998), p. 40〜44)。しかしながら現在マイクロアレイの製造に導入されている材料は、特に感度や品質に関して問題があり、又そのためにひいては従来の平板状固体表面の使用下で得られる結果の再現性、及び貯蔵性に関して一連の不備を伴うことが判明している(Collins, Sonderheft, Nat. Genetics, (1999), p. 21)。このため、例えば固定化の対象である分子を、従来の固体表面を使用して、得られるスポットの内部でこれらの分子が均一に分散されるように、表面に塗布することは殆ど不可能となっている。特に表面に塗布される、これらの分子を含有した溶液の液滴の表面張力は、表面上のスポットサイズにとり決定的な意味を持つ。例えばこの溶液の表面張力が小さければ、表面が親水性であるケースにおいては、少量しか塗布しない場合ですら、得られるのがミクロンスケールの直径のスポットだけとなり、溶液の液滴が乾燥する間に分子は特にスポットの外縁部に集まってしまう。析出された分子が、スポットの中央ではなく主にその外縁部に存在するために、後になって感度の問題を来たしてしまう。この理由から、特にガラスの場合は、表面にシラン処理が施される場合が多い。しかしその場合も、表面にばらばらに塗布された溶液の液滴が1つに集まるケースが多々あるために、そのようなマイクロアレイを使用して得られる結果の再現性を保証できずにいる。
【0006】
他にも従来技術から、非平板状の表面を使用することにより、マイクロチップの感度を向上させることが知られている。そこには例えば、三次元DNAマイクロアレイとして形成される、ポリマーゲルで改質された顕微鏡のスライドガラスが記載されている(Zlatanova & Mirzabekov, Methods Mol. Biol., No.170 (2001), p.17〜38)。このゲルにより、三次元水性雰囲気がもたらされるが、これは、表面の拡大が達成されるために、特に酵素反応にとり様々な長所を随伴している。表面を拡大する更に別の方法として、デンドリマー等の複合ポリマー構造を使用する方法もある。しかしそのようなポリマー構造の使用は、非常に高価である。それ以外にも、多孔質基板にDNAを貯蔵するためのマイクロチャネルを有している、いわゆる「フロースルー」型のチップが知られている。中空繊維をベースとした同様のシステムが、例えばWO 02/05945及びDE 10015391 A1から知られている。
【0007】
他にもバイオチップの支持体としてメンブレンを使用することも、例えばWO 01/61042及びWO 03/049851に記載されている。もっともメンブレンにはいずれにせよ幾つかの短所が付随する。例えばメンブレンを使用した場合は、スポット間隔が200μm未満のマイクロアレイを製造するのは不可能である。多孔質メンブレンには液体を吸収する特性があるために、個々のスポットをその狭い面積に関して他から区切るのは不可能となっている。
【0008】
上述の様々な問題については、研究開発型製薬業界において、乃至は基礎研究において、定性的ステートメントを得る必要がある場合に限定して、即ち、パラレルアプローチ手法における多数の試料のスクリーニングにおいて、個々のスポット間の信号強度差が検出される場合に限定して、許容される場合もある。しかし臨床診断においては、それとは事情を完全に異にする。臨床診断では、例えば患者1名の試料について、多数の異なる試験法を適用して様々な反応物を使用しながら試験が行われる場合が多いが、その際にそれぞれの試験でパラレルアプローチ手法を採用するケースは比較的少数である。同様に、1つの同じパラメーターだけに関して、異なる患者の多数の試料の試験が必要となる場合も多くある。ハイスループットスクリーニングとは対照的に、例えば患者一人一人の疾患の発症や進行経過を検証できるようにするために、個々の臨床試験には、強く訴えることができる定性的ステートメントを可能とすることが求められるのである。このため臨床診断においては、従来の固体表面との関係で生じる様々な問題が原因となり、得られる測定値に重大な誤りを来たす虞がある。したがって臨床診断においては、得られる結果の精度が、例えば作用物質のハイスループットスクリーニングの場合と比べ、格段と重大な役割を演じるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような背景から、本発明が解決しようとする技術課題は、マイクロアレイの製造に一般に使用されている材料が持つ様々な短所を克服できるようにした、特にマイクロアレイシステム用の支持体材料、及びその製造方法を提示することにあり、又その際には、この支持体材料により、マイクロチップ上のスポット密度が低下することなく、特に従来システムと比較して大幅に拡大された、化学反応を行うためのスポット当たりの活性表面がもたらされるようにするとともに、それにより同時に信号ノイズ比を改善しながら各種検出法の感度の向上が実現されるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、材料の上側に配置される1つの表面と、材料の下側に配置される1つの表面とを有しており、少なくともいずれか一方の材料表面が平板状であるとともに細孔を有しており、更にこれらの細孔内に、好ましくは多孔質表面の少なくとも1つの領域の細孔内だけに、ナノ粒子、特に分子特異的認識部位を有するナノ粒子が配置されている材料を有している、機能性多孔質支持体を提供することにより、上述の技術課題を解決するものである。
【0011】
即ち本発明により提供されるのは、反対側に位置する少なくとも2つの表面を有しており、ナノ粒子が少なくともいずれか一方の表面の細孔内だけに配置されるが、この表面自体には配置されておらず、更にナノ粒子に、好ましい実施形態においては分子特異的認識部位が備えられるようになっている、機能性多孔質支持体である。細孔内に包含されるナノ粒子が、分子特異的認識部位を持たない場合は、後からこれを備えることができるようになっている。ナノ粒子の分子特異的認識部位は、対応する分子、特に生物機能又は生物活性を持つ、例えば蛋白質や核酸等の有機分子に結合することができる。その後でこれらの分子に、別の分子、例えば試料の分析対象である分子を結合させることができるようになっている。適切な条件を適用した場合は、有利なことにも、ナノ粒子に固定化した分子を、再びナノ分子から分離することができる。固定化した分子に結合された分子も、適切な条件下では、再び固定化した分子から分離することができる。即ち本発明に従った支持体においては、従来の平板状表面とは異なり、支持体の表面に固定化されなければならない分子が、支持体の表面に直接固定化されるのではなく、分子特異的認識部位を有するナノ粒子に固定化されるようになっている。本発明においては、ナノ粒子を支持体表面に配置するのではなく、細孔内だけに、即ち支持体表面の細孔の内部に配置することが企図されている。
【0012】
即ち本発明においては、ナノ粒子の存在によって機能化され、またそれ故にアドレス特定が可能となる支持体が調達されるのである。本発明に従って使用されるナノ粒子は、5 nm〜1,000 nmの直径を有しており、又比較的非常に高い表面対容積比を有している。この非常に大きいナノ粒子の表面積により、そこには多数の分子特異的認識部位を配置できるようになり、その結果相応に単位質量当たり大量の生物分子を結合できるようになる。本発明に従った支持体の細孔の1つ1つに、孔径に応じて、多数のナノ粒子を包含させることが可能であるために、本発明においては、それぞれの細孔につき、分析物を結合させるための非常に大きい支持体単位表面積当たりの活性表面積を調達することができる。このため本発明に従った機能性支持体は、支持体単位表面積当たりの細孔数、孔径、及びナノ粒子の可用表面積からもたらされる、非常に大きい活性表面積が持つ長所を有している。
【0013】
分子が平板状の支持体に直接結合される従来型のマイクロアレイシステムと比較して、本発明に従って提供される支持体単位表面積当たりの分析物結合用活性表面は、大幅に拡大される。このため、本発明に従って劇的に拡大される活性表面積により、他にも本発明においては、支持体単位表面積当たりかなり大量の分析物を効率的に結合できるようになり、又その際に単位表面積内の分析物は同時に極めて均一に分散されるようになる。支持体単位表面積当たりの分析物結合量、即ちパッキング密度も、本発明においては、例えば貫通細孔を有する多孔質支持体材料を使用することにより、尚も更に増大することが可能であるために、支持体材料を貫通しない細孔を有する支持体よりも多くのナノ粒子を細孔内に配置できるようになる。このため従来のマイクロアレイ支持体表面と比較して、本発明に従った機能性多孔質支持体により、有利なことにも極めて均一に分散した状態での分析物の著しい高濃度化が可能となる。従来技術において知られているマイクロアレイ支持体表面とは異なり、本発明においては拡大された活性表面積が、いずれにせよ支持体表面にではなく、むしろ多孔質支持体の内部、即ちその細孔内に配置される。
【0014】
支持体の内部に本発明に従って達成される活性表面積の劇的な拡大により、従来の材料と比較して更に一連の長所がもたらされるようになる。本発明に従った機能性支持体の主な長所は、例えば本発明に従った機能性支持体を使用して、マイクロアレイで必要とされるような極度に高いスポット密度を達成できる点にある。例えば本発明においては、ナノ粒子を細孔内に充填する前に、多孔質表面の予め定められた複数の領域において、即ち予め定められたパターンに従って、細孔構造が狙い通りに破壊されることにより、本発明に従った機能性支持体上に個別スポットから成るマイクロアレイの通常のパターン構造を達成できるようにしている。その結果、残されている細孔内にナノ粒子を充填することにより得られるそれぞれのスポットは、非常に良好に他から区切られるようになり、又その際には個々のスポット間の距離を、200μmよりも大幅に小さくする、好ましくは最大でも数ミクロンとすることができる。コア径が数ナノメートルであるナノ粒子を使用する場合は、本発明に従った機能性支持体の内部の劇的に拡大されている活性表面積により、個々のスポット間の距離をナノメートルスケールにすることすらも可能となる。このため本発明に従った機能性支持体を使用して、従来のマイクロアレイ支持体材料で達成されていたスポット密度を遥かに凌駕する極度に高いスポット密度を達成することができる。
【0015】
更に別の長所は、本発明に従った機能性支持体においては、従来のマイクロアレイ支持体材料とは対照的に、個々のスポットが互いに相互作用に入り得ない点にある。これは一方では、分析物が支持体自体ではなく、ナノ粒子に結合されることに、他方では、異なる細孔の内部に配置されているナノ粒子が、1つ又は複数の細孔壁により空間的に互いから仕切られていることによるものであって、それにより個々のスポット間の相互作用が防止されるようになっている。
【0016】
活性表面積が大幅に拡大されること、更にそれに付随して、個々のスポット間に相互作用を来たすことなく、分析物が著しく高濃度化されることにより、本発明に従った機能性支持体を使用する場合は、一般に使用されている検出法の感度も大幅に向上されるようになり、又その際には特に信号ノイズ比も格段と改善されるようになる。試料の検出は、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS法)により、蛍光又は酵素で標識した抗体若しくはDNAプローブを利用して、或いは標識なしで、行うことができるが、その場合は従来型の読出し装置も導入できることが有利である。それにより本発明に従った機能性支持体を使用して、強く訴えることができる再現性を持つ結果を得ることができる。
【0017】
本発明に従った機能性支持体の更に別の特段の長所は、多孔質材料の細孔がナノ粒子の安定した支持体となる点にあるが、これはナノ粒子は、細孔内乃至は細孔壁に非常に良好に付着するからである。それ以外にも細孔の内部に配置されるナノ粒子は、相互に、及び/又は細孔壁と、共有結合により架橋されるようにすることができる。例えばセラミック粒子は、セラミックメンブレンの細孔と、焼結により結合されることができる。それ以外にも、本発明に従った機能性支持体が長期間保存される場合には、これらの細孔が湿室として、ナノ粒子、特に分子特異的認識部位が備えられたナノ粒子にとって最適な条件をもたらすようになる。湿室は、特にナノ粒子に固定化された蛋白質にとっては重要である。本発明に従った機能性支持体の更にもう1つの長所は、その多孔質構造により傑出した対流が保証され、それにより顕著な転化率の向上がもたらされる点にある。
【0018】
本発明に従った機能性多孔質支持体により、それ以外にも、分析物及び試薬の効率的な供給と同様、残留物の効率的な排出も可能となる。本発明においては、例えばマトリックス粒子等の望ましくないより大径の粒子が入り込むのを防止するようになっている1つ又は複数の追加の分離層を、多孔質支持体の表面に塗布することができるために、それにより分析物及び試薬の供給は更に改善されるようになる。それにより、例えばそのような望ましくない大径の粒子が細孔内に入り込んで細孔を目詰まりさせるのが防止されるようになる。
【0019】
本発明に従った機能性支持体に使用されるナノ粒子には、実に様々な分子特異的認識部位を備えられるようになっており、それにより様々な目的のために大きく異なる有機分子を固定化させる可能性がもたらされ、更に有利には、固定化された分子を、適切な条件を適用した場合には、ナノ粒子から再び分離することも可能となる。ナノ粒子は、極端にフレキシブルであると同時に不活性を示す系である。ナノ粒子は、例えば有機ポリマーや無機材料等、全く異なるコアから成ることができる。同時に、シリコン粒子等の無機ナノ粒子である場合は、化学的には不活性であり、機械的には安定しているという長所がもたらされる。サーフマー(Surfmer)や分子インプリンティングポリマーが軟質のコアを有する一方で、シリカコアや鉄コアを有するナノ粒子は、溶媒中で膨潤性を一切示さない。非膨潤性の粒子は、たとえ長時間にわたり何度も溶媒中に懸濁されても、その形態が変化することはない。このため、細孔内に非膨潤性のナノ粒子が包含される本発明に従った機能性多孔質支持体は、溶媒の使用を必要とする分析法、診断法、又は合成法に、ナノ粒子や固定化された生物分子の状態に不利な影響を生じることなく、使用することができる。したがって、そのようなナノ粒子を含有している本発明に従った機能性多孔質支持体は、界面活性剤や塩等の望ましくない物質を含有している複合混合物の中から、固定化しなければならない生物分子を精製する目的でも使用することが可能であり、その際には任意の長い時間にわたる洗浄プロセスにより、そのような物質混合物から固定化の対象である分子を最大限に分離できるようになっている。他方、酸化鉄コアを有する超磁性又は強磁性ナノ粒子については、磁界の中にナノ粒子を磁束線に沿って配置することができる。酸化鉄ナノ粒子のこの特性は、機能性多孔質支持体の内部に、例えばナノスコピックコンダクタートラックを構成するために利用することができる。
【0020】
本発明に従った機能性多孔質支持体は、様々な有機分子、特に生物活性分子の固定化に使用することが可能であり、又その際に生物活性分子である場合は、その生物活性を維持することさえも可能となっている。本発明に従った機能性多孔質支持体を形成するために使用されるナノ粒子には、固定化の対象である分子の生物活性にとり必要な分子領域がこの分子の固有状態と等しい状態で存在できるように、この分子を結合できるようになっている分子特異的認識部位、特に官能性の化学基が備えられるようにするとよい。ナノ粒子表面に存在するこれらの官能基に依存して、有機分子は、必要に応じてナノ粒子と共有結合及び/又は非共有結合により結合することができる。ナノ粒子は様々な官能基を有していることができ、それにより、様々な有機分子又は様々な官能基を有する分子を、好ましい配向で固定化できるようになる。これらの分子は、ナノ粒子に、方向性なしで固定化されても、方向性を付与して固定化されてもかまわないが、実際には、所望される殆ど全ての分子配向が可能である。他にも、有機分子を支持体細孔内に存在するナノ粒子に固定化することにより、分子の安定化が達成されるようになる。有利には、ナノ粒子に固定化された分子は、ナノ粒子から再び分離できるようにもなっている。
【0021】
このため本発明に従った機能性多孔質支持体は、その細孔内に、実に様々なナノ粒子を、特に様々な分子特異的認識部位を有するナノ粒子を含有することができる。それにより、本発明に従った機能性多孔質支持体には、様々な分子機能、特に生物学的機能を課すことが可能となる。即ち本発明に従った機能性多孔質支持体は、ナノ粒子表面に塗布することができる乃至は既に塗布されている様々な分子特異的認識部位に基づいて、様々な有機分子をも含有している乃至は様々な有機分子を備えられるようになっている様々なナノ粒子を、その細孔内に包含できるようになっている。したがって本発明に従った機能性多孔質支持体は、複数種類の異なる蛋白質、又は複数種類の異なる核酸、又は蛋白質と核酸とを同時に、含有することができる。
【0022】
本発明に従った機能性多孔質支持体は、公知の方法を使用して簡単に製造することができる。例えば、ナノ粒子から成る適切な懸濁媒を使用して、まるで溶液のような挙動を示す、又それ故に多孔質支持体材料に容易に塗布することができる安定した懸濁液を、非常に簡単に製造することができる。有利なことにも、様々なナノ粒子懸濁液を、適切な多孔質支持体材料上に、構造化して析出させることも可能であるが、その際には従来のスポッター装置を使用することができる。
【0023】
本発明に従って、それに追加して細孔内のナノ粒子を、結合剤を使用して定着させるようにしてもよい。その際に適切な結合剤を使用した場合は、例えば後の時点に、特にpH値又は温度を変えることによって、本発明に従った機能性支持体の細孔から、ナノ粒子を一部又は完全に分離することができるように、ナノ粒子を細孔内に固定することが可能となる。
【0024】
本発明に従った機能性支持体は、特に自動化が可能な反応工程や洗浄工程における数多くの様々な用途のために使用することができる。本発明に従った機能性支持体を使用して、例えば遺伝子アレイ、蛋白質アレイ、又はマイクロタイタープレート等、医学分析や診断に使用可能な装置を製造することができる。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、他にも電子コンポーネントとして、例えば分子回路として、医学測定及び監視技術、又はバイオコンピュータにおいても使用することができる。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、更に液状媒体から分子を分離するためにも使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
「機能性多孔質支持体」とは、本発明との関連においては、好ましくは板状であり、更に好ましくは反対側に位置する2つの表面を有している、即ち材料の下側に1つの表面を、材料の上側に1つの表面を有している材料であると解釈されるものである。2つの表面の少なくともいずれか一方は、平板状に構成されるとともに細孔を有しており、その際にこれらの細孔の少なくとも一部に、粒径が約5 nm〜1,000 nmのナノ粒子、好ましくは分子特異的認識部位を有するナノ粒子が包含され、更にこれらのナノ粒子は、場合によっては細孔の内部で、固定化及び/又は定着された状態で存在している。例えばナノ粒子は、相互に、及び/又は細孔壁と架橋結合されていることができる。幾つかの実施形態においては、多孔質材料に3つ以上の表面を有する幾何形状を備えられるようになっている。
【0026】
少なくとも1つの多孔質表面を有した材料は、特に機能化されたナノ粒子のアタッチメントとして利用されるようになっている。本発明に従った機能性支持体により、試料の分子の検出が可能となる。この機能性支持体を使用して、適切な条件下で分子がナノ粒子の分子特異的認識部位又はナノ粒子に結合された分子に結合できる場合には、非常に小さい試料における微量分子の検出すらも可能となる。このため、ナノ粒子表面に定着又は固定化された生物活性分子をナノ粒子と一緒に支持体の細孔内に挿入することにより、多孔質の機能性支持体を、例えばバイオチップの製造に使用することができる。
【0027】
「機能性支持体」とは、本発明との関連においては、機能、特にアドレス特定が可能な機能が備えられている支持体を意味するものである。ナノ粒子は結合マトリックスであるために、本発明に従ったナノ粒子を有する機能性支持体は、特にナノ粒子表面に塗布することができる分子特異的認識部位と、これらの分子特異的認識部位を介してナノ粒子に固定化させることができる有機分子のための、結合マトリックスとしての機能を担っている。「アドレス特定が可能な機能」とは、本発明との関連においては、機能性多孔質支持体の細孔内に配置されるナノ粒子を再び発見及び/又は検出できることを意味するものである。ナノ粒子が、多孔質材料の細孔内に侵入可能であるように、例えばマスキング又はダイスを使用して構造化されて多孔質材料の表面に塗布される場合は、支持体表面のマスキング又はダイスにより予め定められている、ナノ粒子が既に塗布されて細孔内にナノ粒子が包含されている領域のxy座標から、構造化されて塗布されたナノ粒子のアドレスが得られるようになる。ナノ粒子が、例えば蛍光助剤、スピン標識、金粒子、放射性標識等の検出標識を用いて標識される場合は、構造化されて塗布されたナノ粒子の検出を、対応する適切な検出法を使用して行うことができる。
【0028】
分子特異的認識部位を有するナノ粒子の場合は、構造化されて塗布されたナノ粒子を再び発見又は検出できるようにしているナノ粒子の表面の分子特異的認識部位からも、構造化されて塗布されたナノ粒子のアドレスが得られるようになっている。構造化されて塗布されたナノ粒子が、有機分子が1つも結合されていない分子特異的認識部位を有するナノ粒子である場合は、支持体表面の特定の細孔領域に形成されたナノ粒子の構造を、これらの特定の細孔領域に含有されるナノ粒子の分子特異的認識部位に特異的に、1つ又は複数の有機分子が結合することにより、再び発見及び/又は検出することができる。もっともこの分子の特異的な結合は、機能性支持体の表面の、細孔に包含されるナノ粒子が皆無である面積部分又はゾーンにおいては行われないようになっている。固定化した有機分子が、例えば蛍光助剤、スピン標識、金粒子、放射性標識等の検出標識を用いて標識される場合は、構造化されて塗布されたナノ粒子の検出を、対応する適切な検出法を使用して行うことができる。
【0029】
塗布されたナノ粒子により形成された構造に、1つ又は複数の有機分子が既に結合されている分子特異的認識部位を有するナノ粒子が含まれている場合は、「アドレス特定が可能」は、これらの生体分子を、更に別の分子の相補的な構造との相互作用により、及び/又は、何らかの測定法により、発見及び/又は検出可能であることを意味している。この場合は、細孔にナノ粒子が包含されている領域だけが信号を表示し、多孔質支持体表面の細孔に包含されているナノ粒子が皆無である面積部分は信号を表示しない。検出法としては、例えば、開発が進み、様々な物質、例えば蛋白質の最重要分析方法の1つとなっているマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS法)を使用することができる。その他の検出法には、光導波路分光法、蛍光法、インピーダンス分光法、放射分析法、及び電気的な方法がある。
【0030】
本発明に従った機能性多孔質支持体の製造には、少なくとも1つの表面に細孔が構成されており、その中にナノ粒子又は分子特異的認識部位を有するナノ粒子を挿入可能であり、又それにより多孔質材料の機能化を可能にするものである限りにおいて、任意の材料を使用することができる。本発明においては同様に、材料の反対側に位置する2つの表面に細孔を備えることが企図されている。本発明に従って使用される多孔質材料の細孔は、例えば片側の表面から反対側の表面まで、材料を貫通して延びたものであるとよい。上側の細孔と下側の細孔は、連絡通路により互いに連通されてもよい。本発明に従って使用される多孔質材料の細孔は、2つの表面の内のいずれか一方だけから、又は両方の表面から、反対側の表面に達することなく、また連絡通路により互いに連通されることなく、一定の深さまで材料内部に延びていてもかまわない。好ましい一実施形態においては、本発明に従った機能性支持体の細孔及び細孔壁にも同様に、分子特異的認識部位が備えられるようになっている。
【0031】
他にも本発明においては、本発明に従った機能性支持体の製造に使用される多孔質材料の細孔構造を、これらの細孔にナノ粒子を充填する前に、変更又は改質することも企図されている。多孔質材料の細孔構造は、例えば予め定められた部位において、即ち予め定められたパターンに基づいて、微細な切れ目を設けたり、ミリング、型彫り又は打抜き加工を行ったり、型押し又は圧力の適用により細孔構造を破壊したりすること等により、変化させることができる。非常に細密でしかも正確な構造を構成するために、レーザーを使用することもできる。レーザー光を用いて、多孔質材料の表面には、融解又は焼除により無孔性の極細線や領域を作製することができる。それにより、多孔質材料の表面に予め定められたパターンを作製することが可能となり、又その際にはレーザー光が当たる領域の細孔構造が破壊されるようになる。
【0032】
本発明に従った機能性支持体の製造に使用される多孔質材料は、自立型であっても非自立型であってもかまわない。使用する多孔質材料が非自立型である場合、この多孔質材料は、例えば無孔性の支持体材料や空隙率を低下した支持体等、更に別の支持体材料に塗布されるとよい。「空隙率の低下」は、この材料のこの表面が、本発明に従ってナノ粒子を包含している細孔を有する多孔質材料の表面と比較して、単位面積当たりの細孔数が有意に少ない、及び/又は孔径が格段と小さいことを意味している。例えば本発明に従った機能性支持体の製造に使用される非自立型メンブレンは、プラスチックフィルムやプラスチック板、又はガラス板やセラミック板等の無機支持体に塗布されるとよい。自立型多孔質メンブレンには、一例として細孔構造を有する非対称ポリマーメンブレンがあるが、そこでは細孔が片側の表面から反対側の表面までメンブレンを貫通して延びており、その際に孔径は、片側の表面から反対側の表面に向かって減少しており、このため、この反対側の表面には、孔径が大幅に小さい細孔だけが存在するか、又は細孔が最早全く存在しないかのいずれかとなっている。そこではメンブレンの細孔が皆無である部分又は細孔数の少ない部分が、メンブレンの多孔質領域のための支持体として機能するようになっている。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明に従った機能性支持体の製造に使用される多孔質材料は、メンブレン、特に微孔性メンブレンである。「微孔性材料」又は「微孔性メンブレン」とは、表面に含まれる細孔の平均直径が約0.001μm〜約100μm、好ましくは約0.01μm〜約30μmの材料又はメンブレンであると解釈されるものである。
【0034】
特に好ましい実施形態において、本発明に従った機能性支持体は、多孔質の、特に微孔性の無機又は有機メンブレンを有している。本発明に従って使用される微孔性無機メンブレンは、セラミック、ガラス、シリコン、金属、金属酸化物、又はこれらの混合物から成るか、又はこれらの内の1つ又は複数を含有したものであることが望ましい。特に好ましい実施形態において、無機微孔性メンブレンは、アルミナ、ジルコニア、又はこれらの混合物から成るか、又はこれらの内の1つ又は複数を含有している。無機メンブレンには、最高で400℃の温度負荷、一部のものについては最高で900℃もの温度負荷をかけることができるために有利である。このため本発明に従った微孔性無機メンブレンをベースとする機能性支持体は、特に高温が使用されるような用途に対して適用することができる。
【0035】
本発明に従って使用される微孔性有機メンブレンは、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、化学改質表面を有するセルロース、又はこれらの混合物から成るか、これらの内の1つ又は複数を含有すると好適である。
【0036】
本発明に従った機能性支持体の更に別の実施形態においては、支持体の少なくとも1つの多孔質表面に更に追加して、例えばマトリックス粒子等の望ましくないより大径の粒子がナノ粒子を包含した細孔内に入り込むのを防止するようになっている、少なくとも1つの分離層が塗布されるようになっている。好ましい実施形態として、両方の多孔質表面のいずれにも、分離層を2つ以上備えるようにするとよい。
【0037】
本発明においては、機能性支持体が構造化されずに構成されてもよいし、又構造化されて構成されてもよいようになっている。本発明の好ましい一実施形態は、構造化されない機能性支持体に関しており、そこでは本発明に従った機能性支持体の多孔質表面の全ての細孔又は殆ど全ての細孔が、分子特異的認識部位を有するナノ粒子により均一に充填されている。この多孔質材料は、貫通細孔、即ち片側の表面から反対側の表面まで多孔質材料を貫通して延びている細孔を有していると好適である。そのような非構造化機能性支持体は、特にフロー装置として、特に液状媒体から特定の分子を分離及び/又は単離するために適したものとなっている。
【0038】
本発明の更に別の特に好ましい実施形態は、本発明に従った機能性支持体の多孔質表面が、予め定められたパターンに基づいて配置される、細孔にナノ粒子、特に分子特異的認識部位を有するナノ粒子が包含されている、複数の定義済みの領域を有することを特徴とする、構造化された機能性支持体に関している。これらの定義済み領域は、特に定義された形状と定義された大きさとを有している。そのような領域は、例えば点状又は線状に構成されるとよい。
【0039】
特に好ましい実施形態においては、ナノ粒子、例えば分子特異的認識部位を有するナノ粒子を包含しているこれらの個々の領域が、無孔性のゾーン、又は少なくとも空隙率が小さいゾーンにより、即ちナノ粒子を包含した細孔が皆無であるゾーンにより、互いから仕切られるようになっている。ナノ粒子を包含した領域が皆無である、若しくはそもそも細孔が皆無であるこれらのゾーンも同様に、定義された形状と定義された大きさとを有している。例えば分子特異的認識部位を有するナノ粒子を包含した細孔を有する定義済み領域を有しており、更にこれらの領域が、細孔又はナノ粒子を一切有していない定義済みゾーンにより互いから仕切られるようになっている、そのような予め定められる構造は、例えば細孔を有する領域と細孔を有さないゾーンとが生じるように、表面の細孔構造が予め定められたパターンに基づき変更されている多孔質材料を、本発明に従った機能性支持体の製造に使用した場合に、得ることができる。ナノ粒子、特に分子特異的認識部位を有するナノ粒子は、その後引き続いて前処理が施された多孔質材料に塗布される。
【0040】
更に別の好ましい実施形態においては、ナノ粒子、例えば分子特異的認識部位を有するナノ粒子を包含しているこれらの個々の領域が、無孔性であるのが望ましい1つのフィルムにより覆われたゾーンにより、互いから仕切られるようになっている。
【0041】
更に別の好ましい実施形態においては、これらの個々の領域が好適にも分子特異的認識部位を有するナノ粒子を包含するとともに、細孔内に分子特異的認識部位を持たないナノ粒子が包含されている多孔質ゾーンにより、互いから仕切られるようになっている。この場合は分子特異的認識部位を持たないナノ粒子が、非特異的結合を回避するために、ポリエチレングリコールを用いて改質されるようにすると好適である。
【0042】
更に別の好ましい実施形態においては、ナノ粒子、例えば分子特異的認識部位を有するナノ粒子を包含しているこれらの個々の領域が、非特異的結合を回避するために、例えばポリエチレングリコールやシラン等の疎水性パーフルオロアルキル化合物を用いて化学改質されている多孔質ゾーンにより、互いから仕切られるようになっている。試料液とこれらのゾーンとの接触を最小限化するために、これらのゾーンの表面も又、超疎水性表面として実施されるとよい。
【0043】
本発明においては、ナノ粒子、特に分子特異的認識部位を有するナノ分子が包含されなければならない全ての定義済み領域の細孔に、同じナノ粒子、例えば同じ分子特異的認識部位及び/又は同じ固定化された有機分子を有するナノ粒子を導入できるようになっている。本発明に従って、個々の定義済み領域の細孔に、異なるナノ粒子、例えば異なる分子特異的認識部位及び/又は異なる固定化された有機分子を有するナノ粒子を充填することも可能である。
【0044】
即ち本発明は、複数の定義済み領域を有しており、その全ての領域の細孔に同じナノ粒子が包含されており、更にナノ粒子を包含しているこれらの領域が、好ましくは細孔が皆無であるゾーン、若しくは包含されるナノ粒子が皆無である細孔を有するゾーンにより、互いから仕切られている、構造化機能性多孔質支持体に関している。他にも本発明は、複数の定義済み領域を有しており、その際に個々の領域が異なるナノ粒子を有しており、更にナノ粒子を包含しているこれらの領域が、好ましくは細孔が皆無であるゾーン、若しくは包含されるナノ粒子が皆無である細孔を有するゾーンにより、互いから仕切られている、構造化機能性多孔質支持体にも関している。そのような構造化機能性支持体は、特にマイクロアレイとしての使用に適したものとなっている。
【0045】
本発明においては、更に別の実施形態として、更に追加して細孔内に包含されるナノ粒子が結合剤により細孔の内部に定着されることが企図されている。使用する結合剤は、荷電状態又は非荷電状態の化学反応基を有する物質であると好適である。この結合剤は、特にナノ粒子を多孔質材料の細孔壁に定着結合させるために利用されるものである。結合剤は、使用される多孔質支持体材料及び結合されるナノ粒子に応じて選択される。当然ながら、例えば支持体の個々の多孔質領域に異なるナノ粒子を定着させなければならない場合、即ち支持体の個々の領域において異なる機能化を実行すべきである場合は、複数の異なる結合剤を使用することができる。本発明の更に別の好ましい実施形態においては、例えば、外部刺激により可変であり、そのために外部から切り換えることができる結合特性を有している結合剤が使用されるようになっている。結合剤の結合特性は、例えば、結合剤の使用下において細孔内に結合されたナノ粒子が遊離して、場合によっては他の多孔質材料の細孔内に転移できるようになるまで、pH値、イオン濃度、及び/又は温度を変えることにより、低下されるようにするとよい。
【0046】
「ナノ粒子」とは、本発明との関連においては、粒子状の結合マトリックスであると解釈されるものであり、好ましい一実施形態においては、これに、第1の官能性化学基を有する分子特異的認識部位が備えられるようになっている。本発明に従って使用されるナノ粒子は、1つの表面を持つ1つのコアを有している。第1官能基を有する分子特異的認識部位は、この表面に配置されるか、又はそこに配置できるようになっている。第1官能基は、例えばいずれかの有機分子の相補的な第2官能基に、共有結合又は非共有結合により結合できるようになっている。この有機分子は、第1官能基と第2官能基間の相互作用により、ナノ分子に固定化され、それにより多孔質支持体の細孔の内部に固定化される、又はそこに固定化できるようになっている。本発明に従って機能性多孔質支持体の製造に使用されるナノ粒子の粒子サイズは、約5 nm〜1,000 nm、好ましくは500 nm未満となっている。
【0047】
他にも本発明においては、有機分子、望ましくは生物活性分子が、場合によってはその生物活性を維持した状態で、ナノ粒子の表面に結合又は固定化されている、若しくは結合又は固定化できるようになっている。好ましい実施形態においては、有機分子、特に生物活性分子が、方向性を付与して結合されている、又は結合されるようになっている。方向性を付与した固定化は、本発明に従った機能性支持体の一連の用途において有利ではあるが、決して必要条件ではない。ナノ粒子に固定化された分子のかなりの割合が、方向性を付与せずに固定化されており、そのために、例えば分子が活性を一切示さないような場合にも、本発明によりもたらされる非常に大きな表面積及びそれにより可能となる分子の著しい高濃度化は、それを補償するようになっている。
【0048】
分子の生物活性とは、分子がその自然細胞環境において有機体内で発揮する全ての機能であると解釈されるものである。これは、分子が例えば蛋白質である場合は、例えば特定の触媒や酵素機能、免疫防御機能、調節機能、及びその類の機能であると言える。分子が核酸である場合、生物機能は、例えば遺伝子生成物のコード化や、核酸が調節性蛋白質の結合モチーフとして使用可能である点に見られる。「生物活性の維持」とは、生物分子がナノ粒子表面への固定化の後も、この分子が適切なin vitro条件下の非固定化状態において、又は、この分子がその自然細胞環境において発揮するのと同じ又は殆ど同じ生物機能を、少なくとも同程度に発揮できることを意味するものである。
【0049】
「方向性を付与して固定化される」又は「方向性を付与した固定化」という用語は、本発明との関連においては、例えば生物活性にとり必要な1つ又は複数のドメインの三次元構造が、非固定化状態に対して変化することなく、かつ、別の固有状態にある細胞反応の相手方との接触時には、この1つ又は複数のドメイン、例えば結合ポケットに、この細胞反応の相手方が自由に到達できるように、分子が、分子内部の定義された位置においてナノ粒子の分子特異的認識部位に結合されること、又は結合されていることを意味している。
【0050】
本発明においては特に、本発明に従った機能性支持体のナノ粒子に固定化される、又は固定化することができる生物分子として、蛋白質、核酸、又はこれらのフラグメントを想定している。核酸は、特に一本鎖又は二本鎖のDNA分子、RNA分子、PNA分子、又はLNA分子であるとよい。
【0051】
「核酸」とは、本発明との関連においては、ホスホジエステル結合により結合された少なくとも2つのヌクレオチドから成る分子であると解釈されるものである。核酸は、デオキシリボ核酸分子、リボ核酸分子、PNA分子、及びLNA分子であるとよい。核酸は、一本鎖としても、又二本鎖としても存在することができる。したがって本発明との関連において、核酸はオリゴヌクレオチドであるとよい。本発明においては、結合された核酸又は結合されるべき核酸は、天然起源のものであっても合成起源のものであってもかまわない。核酸は、本発明においては、野生型核酸に対し、遺伝子工学技術法によっても改変されている、及び/又は、非天然及び/又は特異な核酸ユニットを含有していてもよい。核酸は、別の種類の分子、例えば蛋白質と結合されたものであってもかまわない。
【0052】
PNA(ペプチド核酸又はポリアミド核酸)分子は、負の荷電状態とはならないDNAと同様の作用を示す分子である(Nielsen et al., Science, 254 (1991), p. 1497〜1500;Nielsen et al., Biochemistry, 36 (1997), p. 5072〜5077;Weiler et al., Nuc. Acids Res., 25 (1997), p. 2792〜2799)。PNA配列は、N-(2-アミノエチル)グリシン単位から成る塩基性ポリアミド骨格を有しており、デオキシリボース又はリボース単位、及びリン酸基を有していない。塩基性骨格には、様々な塩基がメチレンカルボニル結合により結合されている。LNA(ロックド核酸)分子は、フラノース環立体配座に、2'-O位を4'-C位と結合するメチレンリンカーによる制約を受けることを特徴とする。LNAは、個別のヌクレオチドとして、核酸、例えばDNA又はRNAに組み込まれる。LNAオリゴヌクレオチドは、PNA分子と同様に、ワトソン・クリック塩基対の規則に支配され、相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。LNA/DNA二重分子やLNA/RNA二重分子は、DNA又はRNAだけにより形成される類似の二重分子と比べ、一段と高い熱安定性を示す。
【0053】
「蛋白質」とは、本発明との関連においては、アミド結合により互いに結合された少なくとも2つのアミノ酸を有している分子であると解釈されるものである。したがって蛋白質は、本発明との関連では、ペプチド、例えばオリゴペプチド又はポリペプチド、又は例えば単離された蛋白質ドメインとすることができる。そのような蛋白質は、天然起源のものであっても、合成起源のものであってもかまわない。蛋白質は、野生型蛋白質に対し、遺伝子工学技術方法により改変されたものとすることができる、及び/又は、非天然及び/又は特異なアミノ酸を含有することができる。蛋白質は、野生型の形態のものに対して誘導されたものであってよく、例えばグリコシル化を含有していてもよいし、短くされたものでも、他の蛋白質と融合されたものでも、又は別の種類の分子、例えば炭水化物と結合されたものであってもよい。本発明に従って、蛋白質は特に、酵素、レセプター、サイトカイン、抗原、又は抗体とすることができる。
【0054】
「抗体」は、本発明との関連においては、分析物(抗原)を特定的に認識してそれに結合するようになっている、1つ又は複数の免疫グロブリン遺伝子により実質的にコード化されているポリペプチド、又はそのフラグメントを意味している。抗体は、例えば正常な免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる分解により作られる一連のフラグメントとして発現する。「抗体」は他にも、改変された抗体、例えばオリゴマー化、還元、酸化、及び標識された抗体も意味している。「抗体」には他にも、抗体全体の改変により、又はDNA組換え技術を使用したデノボ合成により作られる、抗体フラグメントも含まれている。更に「抗体」という用語には、エピトープ抗原決定基に結合することができる正常な分子も、又そのFab、F(ab)')2及びFv等のフラグメントも含まれている。
【0055】
「分子特異的認識部位」とは、本発明との関連においては、ナノ粒子と目的分子である有機分子、特に生物活性分子間の特異的相互作用を可能にするナノ粒子の領域であると解釈されるものである。この相互作用は、ナノ粒子の第1官能基と、目的分子、即ち有機分子の第1官能基に結合する相補的な第2官能基とから成る一対又は複数対の官能基間の、方向性を持った引付け相互作用に依拠するものである。ナノ粒子と有機分子間で相互作用する個々の官能基対は、それぞれナノ粒子と有機分子とに、空間位置を固定して配置されるようになっている。この固定は、剛直な配置方式である必要はなく、むしろ完全にフレキシブルなものとして実施されるとよい。ナノ粒子と有機分子の官能基間のこの引付け相互作用は、ファンデルワールス結合、水素結合、π-π結合、静電的相互作用、又は疎水性相互作用等、非共有結合による結合形態において実施することができる。形態又は形状の相補性に基づくメカニズムの他にも、可逆的共有結合が考えられる。このように、本発明において企図されるナノ粒子の分子特異的認識部位と目的分子間の相互作用は、官能基対間の方向性を持った相互作用、及び、これらの官能基対を形成している各官能基の、ナノ粒子並びに目的分子における相互的な空間配置に依拠するものである。ナノ粒子の表面への分子の固定化は、この相互作用によりもたらされるようになっている。有機分子を表面に結合させる方法については、従来技術から更に別の手段が開示されている。本発明においても、有機分子は別の方法でナノ粒子表面に結合されてもかまわない。
【0056】
本発明においては、分子特異的認識部位が1つ又は複数の第1官能基を有しており、これに結合されている、これに結合されなければならない有機分子、望ましくは生物活性分子が、この第1官能基に結合する相補的な第2官能基を有することが企図されている。本発明の好ましい一実施形態においては、ナノ粒子の表面の分子特異的認識部位の構成要素である、又は分子特異的認識部位の構成要素を形成する第1官能基、及び第1官能基に結合する相補的な第2官能基が、活性エステル、アルキルケトン基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、マレイミド基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、チオール基、チオエステル基、オリゴヒスチジン基、Strep-Tag I、Strep-Tag II、デスチオビオチン、ビオチン、キチン、キチン誘導体、キチン結合ドメイン、金属キレート複合体、ストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン、及びニュートラアビジンから成る群から選択される。
【0057】
他にも本発明においては、分子特異的認識部位が、第1官能基を含有している蛋白質や抗体等の大型分子を有することが企図されている。
【0058】
分子特異的認識部位は、例えば複数の蛋白質、及び/又は抗体、及び/又は核酸から成っており、更にこれらの分子の内の少なくとも1つが第1官能基を含有している分子複合体であってもかまわない。蛋白質は、分子特異的認識部位として、例えば1つの抗体と、これに結合されている1つの蛋白質とを有していることができる。その場合この抗体には、他にもストレプトアビジン基又はビオチン基を含めることができる。抗体と結合される蛋白質は、例えばMHC蛋白質、サイトカイン、CD8蛋白質等のT細胞レセプター、又はリガンドに結合可能なレセプターとすることができる。分子複合体には、例えば他にも複数の蛋白質、及び/又はペプチドが、例えば複合体の内部で更にもう1つの蛋白質と、それに加え1つのペプチドとを結合するようになっているビオチン化蛋白質を含めることができる。第1及び第2官能基は、例えば分子インプリンティングにより作られるようにすることができる。
【0059】
即ち、本発明に従って機能性多孔質支持体の細孔内に包含されるナノ粒子は、その表面に、共有結合又は非共有結合により固定化対象分子の第2官能基と結合される第1官能基を有しているのであるが、この第1官能基は、第2官能基とは異なる官能基である。互いに結合される両方の官能基は、互いに相補性を示さなければならない、即ち、共有結合又は非共有結合により、互いに結合状態に入ることができなければならない。
【0060】
例えば本発明に従って第1官能基としてアルキルケトン基、特にメチルケトン基、又はアルデヒド基を使用する場合は、第2官能基がヒドラジン基、又はヒドラジド基となる。逆に第1官能基としてヒドラジン基又はヒドラジド基を使用する場合は、第2官能基が本発明に従ってアルキルケトン基、特にメチルケトン基、又はアルデヒド基となる。本発明に従って第1官能基としてチオール基を使用する場合は、相補的な第2官能基がチオエステル基となる。第1官能基としてチオエステル基を使用する場合は、第2官能基が本発明に従ってチオール基となる。本発明に従って第1官能基として金属イオンキレート複合体を使用する場合は、相補的な第2官能基がオリゴヒスチジン基となる。第1官能基としてオリゴヒスチジン基を使用する場合は、相補的な第2官能基が金属イオンキレート複合体となる。
【0061】
第1官能基としてStrep-Tag I、Strep-Tag II、ビオチン、又はデスチオビオチンを使用する場合は、相補的な第2官能基としてストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン、又はニュートラアビジンが使用される。第1官能基としてストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン、又はニュートラアビジンを使用する場合は、相補的な第2官能基としてStrep-Tag I、Strep-Tag II、ビオチン、又はデスチオビオチンが使用される。
【0062】
更に別の実施形態として、キチン又はキチン誘導体を第1官能基として使用する場合は、相補的な第2官能基としてキチン結合ドメインが使用される。第1官能基としてキチン結合ドメインを使用する場合は、相補的な第2官能基としてキチン又はキチン誘導体が使用される。
【0063】
上述の第1及び/又は第2官能基は、本発明に従って、1つのスペーサーを用いて固定化対象分子又はナノ粒子コアと結合されたものであるか、若しくは1つのスペーサーを用いてナノ粒子コアに、又は分子内に挿入されるようにするとよい。即ちこのスペーサーは、一方ではコア又は固定化対象分子に対する官能基のスペーサーとして、他方では官能基の支持体として、利用されるようになっている。そのようなスペーサーには、例えばアルキレン基、又は、例えば置換されてヘテロ原子を有している、炭素原子数が2〜50のエチレンオキシドオリゴマーが含まれているとよい。
【0064】
本発明の好ましい実施形態においては、第2官能基が、固定化した分子又は固定化の対象である分子の自然構成要素であることが企図される。この分子は、平均的な大きさの蛋白質、即ちアミノ酸数が約500である大きさが約50 kDAの蛋白質であり、これには、固定化のための第2官能基として基本的に検討される約20〜30の反応性アミノ基が含まれている。これらの反応性アミノ基は特に、蛋白質のN末端のアミノ基である。他にも蛋白質の他の全ての自由アミノ基、特にリシン残基の自由アミノ基も、固定化用として検討対象となる。同様にアルギニンも、そのグアニジウム基又はシステインにより、官能基として使用することができる。
【0065】
それ以外にも本発明においては、第2官能基を、遺伝子工学技術方法や、生化学的、酵素的、及び/又は化学的誘導法、又は化学合成法により、固定化対象分子に挿入することが企図されている。その際に誘導化については、存在する分子の生物活性が固定化の後も維持されるように行われるべきである。
【0066】
固定化対象分子が蛋白質である場合は、例えば非天然アミノ酸が、遺伝子工学技術方法により、又は化学的蛋白質合成の間に、例えばスペーサー又はリンカーと一緒に蛋白質分子に挿入されるようにすることができる。そのような非天然アミノ酸は、アミノ酸機能とR基とを有するとともに、自然に発現する遺伝コードによっては定義されない化合物であるが、これらのアミノ酸がチオール基を有していると特に好適である。
【0067】
本発明の更に別の好ましい実施形態においては、官能基を、固定化対象分子、特に蛋白質に改変することによって、その内部に挿入できるようになっており、又その際には蛋白質の好ましくはC末端又はN末端に、タグ、即ち標識が付加されるようになっている。もっともこれらのタグは、分子内に配置されてもかまわない。特に、少なくとも1つのStrep-Tag、例えばStrep-Tag I、又はStrep-Tag II、又はビオチンを付加することにより、蛋白質を改変することが企図されている。本発明においては、機能的及び/又は構造的等価物についても、それがストレプトアビジン基及び/又はその等価物に結合できるものである限り、Strep-Tagであると解釈される。「ストレプトアビジン」という用語には、本発明の背景においては、その機能的及び/構造的等価物も含まれている。他にも本発明に従って、少なくとも3つのヒスチジン残基を有しているものの、好ましくは1つのオリゴヒスチジン基を有しているヒスチジンタグを付加することにより、蛋白質を改変することも可能である。この場合は蛋白質に挿入されるヒスチジンタグが、金属キレート複合体を有している分子特異的認識部位に結合しうる。
【0068】
このため本発明の好ましい一実施形態においては、例えば非天然アミノ酸や、天然ではあるものの非天然方式により誘導されたアミノ酸、又は特定のStrep-Tagを用いて改変された蛋白質、又は抗体結合型蛋白質を、結合のための相補的な反応性を示すナノ粒子表面と、蛋白質のこの表面への適切な特有の結合、特に非共有結合による結合が行われることにより、蛋白質がこの表面に方向性を付与して固定化されるように、結合させることが企図されている。タグ結合部位を介して生物活性分子を配向した後に、更に追加してこれらの分子が共有結合により、例えば他にもグルタルアルデヒド等の架橋剤を用いて、結合されるようにすることができる。それにより、蛋白質表面はより安定化される。
【0069】
本発明に従った機能性多孔質支持体の製造に使用されるナノ粒子は、表面に分子特異的認識部位が配置されている1つのコアを有している。ナノ粒子の「コア」とは、本発明との関連においては、固定化対象分子の支持体として利用される化学的に不活性な物質であると解釈されるものである。本発明においては、このコアが、コアサイズ5 nm〜1,000 nmまでの圧密な、又は中空粒子となっている。
【0070】
本発明の好ましい実施形態においては、本発明に従って使用されるナノ粒子のコアが、金属等の無機材料、例えばAu、Ag又はNi、シリコン、SiO2、SiO、ケイ酸塩、Al2O3、SiO2・Al2O3、Fe2O3、Ag2O、TiO2、ZrO2、Zr2O3、Ta2O5、ゼオライト、ガラス、酸化インジウム亜鉛、ヒドロキシルアパタイト、Qドット、又はこれらの混合物から成るか、又はこれを含有している。
【0071】
本発明の更に別の好ましい実施形態において、本発明に従って使用されるナノ粒子のコアは、有機材料から成るか、又はこれを含有している。この有機材料は、ポリマー、例えばポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、乳酸ポリエステル、又はこれらの混合物であると好適である。
【0072】
本発明に従って使用されるナノ粒子のコアの製造は、専門分野において広く一般に知られている方法、例えばゾルゲル合成法、乳化重合法、懸濁重合法等を使用して行うことができる。コアの製造後に、例えばグラフト重合、シラン処理、化学誘導等の一般的な方法を使用して、化学改質反応によりコア表面に特異的第1官能基が備えられるようになっている。表面改質されるナノ粒子を単一工程で製造する手段の1つとして、乳化重合法におけるサーフマーの使用が考えられる。更にもう1つの手段として、分子インプリンティングである。
【0073】
「分子インプリンティング」とは、重合の間にモノマーと比較的安定した複合体を形成することができるテンプレートの存在下で行われるモノマーの重合であると解釈されるものである。そのようにして製造された材料は、テンプレートを洗い流した後には、テンプレート分子やテンプレート分子との構造的近縁性を示す分子種、又は、テンプレート分子やその一部との構造的近縁性を示す官能基又はそれらと同じ官能基を有する分子を、再び特異的に結合することができる。即ちテンプレートとは、重合の間にモノマー混合物中に存在している物質であって、形成されるポリマーが親和性を示すようになる物質のことである。
【0074】
本発明においては、表面改質されるナノ粒子の製造が、特に好ましくは乳化重合法によりサーフマーを使用して行われる。サーフマーは、ラテックス粒子の表面に共重合でき、安定化させるようになっている、両親媒性を持つモノマーである(Surfmer = Surfactant (界面活性剤) + Monomer (モノマー))。それに加えて更に反応性サーフマーは、穏やかな条件下で、第一級アミン類(アミノ酸、ペプチド、蛋白質)、チオール、又はアルコール等の求核試薬を用いて反応することができる、機能化が可能な末端基を供用している。それにより、多数の生物活性ポリマーのナノ粒子に到達できるようになる。従来技術並びにサーフマーの適用の限界を再現している刊行物には、例えばUS 5,177,165、US 5,525,691、US 5,162,475、US 5,827,927、及びJP 4018929がある。
【0075】
第1官能基の密度、及びこれらの官能基の相互距離は、本発明に従って固定化の対象であるそれぞれの分子に対して最適化することができる。表面上の第1官能基の環境についても、生物活性分子の高度に特異的な固定化に関して相応に調製することができる。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態においては、他にも適切な検出法を使用してナノ粒子コアを簡単に検出できるようにすることで、本発明に従った機能性支持体の細孔内のナノ粒子により形成される構造を簡単に検出できるようにする様々な追加機能が、このナノ粒子コアにおいて具現されるようになっている。これらの追加機能は、例えば蛍光標識、UV/VIS標識、超磁性機能、強磁性機能、及び/又は放射性標識とすることができる。ナノ粒子の適切な検出法には、例えば蛍光又は紫外-可視光分光法、蛍光又は光顕微法、MALDI質量分析法、光導波路分光法、インピーダンス分光法、電気的な方法、及び放射分析法が含まれる。
【0077】
更に別の実施形態においては、コア表面が、蛍光標識、UV/VIS標識、超磁性機能、強磁性機能、及び/又は放射性標識等の追加機能の付与により改質されたものとすることができるようになっている。本発明の更に別の実施形態においては、ナノ粒子のコアが、第1官能基と上述の追加機能とを併せ持つ有機層又は無機層により表面改質されたものとすることができるようになっている。
【0078】
本発明の更に別の実施形態においては、固定化した分子の立体構造を安定化させる目的で、及び/又は固定化した分子の立体配座の変化を防止する目的で、及び/又は、コア表面に更なる有機化合物が吸着するのを防止する目的で利用される化合物を、コア表面が有することが企図されている。これらの化合物は、ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコール、デキストラン、又はこれらの混合物であると好適である。
【0079】
本発明に従って、それとは別に、又はそれに追加して、ナノ粒子コアの表面でイオン交換機能を具現させることも可能である。イオン交換機能を持つナノ粒子は、それによって障害イオンに結合することができるために、特にMALDI分析の最適化に適したものとなっている。
【0080】
本発明の更に別の実施形態においては、本発明に従って使用されるナノ粒子の表面に固定化される有機分子自体が、適切な検出法を使用して固定化した分子を簡単に検出できるようにする標識を有することが企図されている。これらの標識は、例えば蛍光標識、UV/VIS標識、超磁性機能、強磁性機能、及び/又は放射性標識であるとよい。既述のように、固定化された生物分子中に存在するこれらの標識の検出法として有用なものは、例えば蛍光又は紫外-可視光分光法、MALDI質量分析法、光導波路分光法、インピーダンス分光法、電気的な方法、及び放射分析法である。
【0081】
本発明は同様に、本発明に従った機能性多孔質支持体の製造方法にも関しており、そこではナノ粒子の懸濁液が多孔質支持体材料の表面に塗布されるようになっている。適切な懸濁媒を使用して、ナノ粒子から、まるで溶液のような挙動を示す安定した懸濁液を非常に簡単に調製することができる。本発明においては、好適にも孔径がミクロンスケールである細孔を有する材料、例えば微孔性メンブレンが使用されるために、ナノ粒子は材料の細孔内に比較的容易に侵入する。ナノ粒子が材料の細孔内に侵入した後、引き続いて、細孔内に侵入しなかったナノ粒子、並びに残りの懸濁液が、その時には既に機能化されている支持体材料から、例えば洗浄とそれに続く乾燥により除去される。
【0082】
多孔質支持体材料の表面に塗布される懸濁液のナノ粒子は、分子特異的認識部位、又は既にそれに結合されている有機分子を有していることができる。それにより本発明に従った方法を使用して、分子特異的認識部位を持たないナノ粒子を有する機能性支持体、又は、分子特異的認識部位を持つナノ粒子を有する機能性支持体、又は、有機分子が結合されているナノ粒子を有する機能性支持体を製造することができる。分子特異的認識部位を持たないナノ粒子を有する機能性支持体を製造するのであれば、支持体の細孔内に包含されているナノ粒子に分子特異的認識部位が後から備えられるようにすることができる。分子特異的認識部位を持つナノ粒子を有する機能性支持体を製造するのであれば、ナノ粒子の分子特異的認識部位に有機分子を後から結合させるようにすることができる。当然ながら、異なる機能性ナノ粒子を有する機能性支持体、例えば、分子特異的認識部位を持たないナノ粒子を有する領域、及び/又は分子特異的認識部位を持つナノ粒子を有する領域、及び/又は有機分子が結合されているナノ粒子を有する領域を有している支持体を製造することも可能である。
【0083】
例えば表面の全ての細孔に同じナノ粒子が包含されなければならない、非構造化機能性支持体の製造が求められるのであれば、例えば多孔質材料をナノ粒子懸濁液に浸漬することにより、又はナノ粒子懸濁液を多孔質支持体の上に注ぎ、それから均一に分散させることにより、ナノ粒子懸濁液の塗布が行われるようにすることができる。更に多孔質材料に、ナノ粒子懸濁液を含浸させるようにしてもよい。
【0084】
構造化機能性支持体、即ち、ナノ粒子を包含している細孔がないゾーンにより互いから仕切られている、ナノ粒子を包含している細孔がある領域が表面に配置されている支持体の製造が求められる場合は、ナノ粒子懸濁液を塗布するために、従来のスポッター装置をマスキング又はダイスを使用しながら導入することもできる。他にもスポッター装置を使用して、様々なナノ粒子懸濁液を塗布することによっても、異なるナノ粒子を有する定義済み領域、例えば核酸を固定化させることができるナノ粒子を有する領域や、蛋白質を固定化させることができる領域を有している、機能性支持体を製造することができる。
【0085】
本発明に従った方法の好ましい一実施形態においては、多孔質材料にナノ粒子懸濁液を塗布する前に、予め定められた部位の細孔構造を変化させる目的で何らかの処理が施されるようになっている。これは例えば、微細な切れ目を設けたり、ミリング、型彫り又は打抜き加工を行ったり、型押し又は加圧工程の適用により細孔構造を破壊したりする等により行うことができる。本発明においては同様に、多孔質支持体材料の細孔構造を、予め定められた部位において、レーザーを適用して破壊することも可能であり、その場合はレーザー光を用いて、多孔質材料表面に、例えば熱可塑性材料の場合は融解により、或いは熱可塑性又は非融解性の材料の場合は焼除により、無孔性の極細線や領域を作製することができる。多孔質材料表面のそのような前処理により、多孔質材料に予め定められたパターンを焼き付けることが可能となり、その結果レーザー光が当たる領域の細孔構造が破壊される。
【0086】
本発明に従った機能性支持体の製造方法の更に別の実施形態においては、支持体材料の多孔質表面を、ナノ粒子懸濁液を塗布する前に、これらが材料の細孔内に侵入できるように、結合剤の溶液、懸濁液、又は分散液を用いて処理することも企図されている。細孔の内部に包含されるのではなく、材料の表面に存在している結合剤は、その後適切な処理工程を使用して除去される。細孔内に包含された結合剤は、細孔壁の内部のナノ粒子の付着性を向上させるために利用される。
【0087】
他にも本発明は、少なくとも1つの本発明に従った機能性多孔質支持体を有している機能エレメントにも関している。「機能エレメント」とは、本発明との関連においては、それ単独で、又は複雑な装置の構成部品として、即ちその他の類似の又は異なる種類の機能エレメントと関係して、少なくとも1つの定義済み機能を発揮するエレメント又は装置であると解釈されるものである。本発明においては機能エレメントが、細孔内に少なくとも部分的に定義されているナノ粒子が構造化されて、又は構造化されずに配置されている支持体表面を有している、少なくとも1つの多孔質支持体を有しているが、その際には、有機分子、特に生物機能を持つ分子、例えば核酸、蛋白質、PNA分子、及び/又はLNA分子等の生物活性分子が、ナノ分子に備えられている、及び/又は備えることができる。
【0088】
したがって本発明に従って製造される機能エレメントは、その最も簡単な実施形態においては、本発明に従った機能性多孔質支持体、特に1つの自立型微孔性メンブレンを有する機能性支持体である。
【0089】
好ましい一実施形態において、機能エレメントは、本発明に従った機能性支持体の他にも、少なくとも更にもう1つの構成部品を有しているが、この構成部品は、例えば第2の本発明に従った機能性支持体であるか、又は無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体とすることができる。空隙率を低下した材料とは、本発明との関係では、本発明に従った機能性支持体の多孔質材料の表面積と比較して、表面の単位面積当たりの細孔数が格段と少なくなっている、及び/又は孔径が格段と小さくなっている材料のことである。
【0090】
本発明は特に、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体が、無孔性材料又は空隙率を低下した材料の表面に配置される機能エレメントに関している。無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体は、例えばアタッチメントとして本発明に従った機能性支持体に利用され、それに更に機械的安定性を追加して付与するようになっている固形マトリックスである。少なくとも1つの機能性支持体が表面に配置されている、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体は、例えば球、円筒、棒、線、板、又はフィルム等、任意の大きさ及び任意の形状を有することができる。無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体は、中空体であっても中実体であってもかまわない。中実体は特に、本体が実質的に空洞を有しておらず、完全に、例えば無孔性材料又は空隙率を低下した材料、又はそのような材料を組み合わせたものから成ることができる物体を指している。他にも中実体は、同一の又は異なる無孔性材料又は比較的空隙率を低下した材料から成る連続した層から成るものであってもよい。
【0091】
特に好ましい実施形態において、無孔性材料又は比較的空隙率を低下した材料は、金属、金属酸化物、ポリマー、ガラス、半導体材料、セラミック、及び/又はこれらの混合物であってよい。これは、本発明との関連においては、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体が、完全に上記材料の内のいずれか1つから成るか、これを実質的に含有すること、又は、完全にこれらの材料を組み合わせたものから成るか、これを実質的に含有すること、或いは、そのような支持体の少なくとも表面が、完全に上記材料の内のいずれか1つから成るか、これを実質的に含有すること、又は、完全にこれらの材料を組み合わせたものから成るか、これを実質的に含有することを意味している。他にも本発明においては、無孔性材料又は比較的空隙率を低下した材料から成る支持体の表面が、平板状であるか、又は前もって構造化される、例えば給排部を有することが企図されている。
【0092】
本発明に従った機能エレメントの好ましい実施形態においては、少なくとも1つの機能性支持体により、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体の表面全体が覆われるようになっている。
【0093】
本発明に従った機能エレメントの更に別の実施形態においては、少なくとも1つの機能性支持体により、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体の表面の、予め定められたパターンに基づいて配置される複数の面積部分又は領域が覆われるようになっている。即ちこの実施形態においては、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持体の表面に、本発明に従った機能性支持体を有する複数の領域が配置されるようになっている。これらの領域は、無孔性支持体材料又は空隙率を低下した支持体材料から成るゾーンにより取り囲まれており、好適にもこれらの無孔性ゾーン又は空隙率を低下したゾーンにより互いから区切られるようになっている。
【0094】
一実施形態として、無孔性材料又は空隙率を低下した材料の表面の個々の面積部分が、それと同じ本発明に従った機能性支持体により覆われるようにすることができる。更に別の実施形態として、無孔性材料又は空隙率を低下した材料の表面の個々の面積部分が、異なる機能性支持体により覆われるようにしてもよい。これらの異なる機能性支持体は、例えば様々な分子特異的認識部位を有するナノ粒子、及び/又は、様々な有機分子、特に生物活性分子が結合されているナノ粒子を有していることができる。
【0095】
本発明の更に別の好ましい実施形態は、少なくとも1つの機能性支持体が、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る1つのフレーム内又はフレーム上に配置される機能エレメントに関している。即ちこの無孔性材料又は比較的空隙率を低下した材料から成るフレームは、例えば本発明に従った機能性多孔質支持体の上に載置されて、これに例えば接着されたものであるか、又はその他の方法で結合されたものとすることができる。また、本発明に従った機能性支持体は、他にもこのフレーム内に挟持されるようにしてもよい。このフレームは更に、支持エレメントを例えばグリッドの形状で有していることができ、それによりフレームにより取り囲まれた機能性支持体の表面は、フレームに接続された無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る支持エレメントにより、途切れていることになる。
【0096】
好ましい一実施形態において、本発明に従った機能エレメントは、少なくとも1つの凹所、空所、又は反応チャンバーを有するマイクロタイタープレート又は試験板であるが、多数の異なる分析又は診断の目的で使用することができる複数の凹所が備えられると好適である。
【0097】
好ましい実施形態において、本発明に従ったマイクロタイタープレートは、少なくとも1から96個までの反応チャンバーを有している。本発明に従ったマイクロタイタープレートは、更にそれより多い反応チャンバー、例えば1,536個の反応チャンバーを有しているとより好適である。本発明に従ったマイクロタイタープレートは、数多くの分析又は診断用の試験システムを対象として、化学材料、生物材料、又は生化学材料を使用しながら導入することが可能であり、使用対象として数えられるものには、例えば試料の化学分析、化学反応の実施、分光分析調査用の試料の調製、細胞の培養、蛋白質や核酸等の生物活性分子の検出及び/又は定量化、微生物検出目的又は抗体検出目的での診断試験の実施、液体試料の調査、特に免疫学的、ウイルス学的、又は血清学的なスクリーニング分析の実施、放射免疫測定法の実施、医学的活性を示す作用物質の効果に関する一連の試験の実施等があるが、しかしこれらに限定されない。本発明に従ったマイクロタイタープレートは、組み合わせ化学の方法、例えばペプチドや蛋白質等の有機化合物の合成法を実施する目的でも使用することができる。
【0098】
本発明の一実施形態においては、マイクロタイタープレートの表面全体が、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体から成るか、又はこれを含有することが企図される。本発明に従ったマイクロタイタープレートの更にもう1つの実施形態においては、反応チャンバー、又は反応チャンバーの少なくとも一部、例えば反応チャンバーの底部、側壁、又は、底部及び側壁が、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体から成るか、又はこれを含有することが企図される。
【0099】
本発明に従ったマイクロタイタープレートの反応チャンバーの底部だけが機能性支持体から成り、かつこの機能性支持体が貫通細孔を有する多孔質材料を有している場合、マイクロタイタープレートを本発明に従ってフロー装置としても使用することが可能である。例えば細孔内に包含されたナノ粒子のところで、個々のアミノ酸ユニットから、有機分子、例えばペプチドの合成を実施することができる。その際には先ず、第1アミノ酸ユニットが溶液として反応チャンバーに与えられる。この第1ユニットが、細孔内に到達した後に、機能性支持体の細孔内に包含されているナノ粒子の分子特異的認識部位に結合することによって、これをナノ粒子に固定化させることができる。その後、第1アミノ酸ユニットの余剰量は、場合によっては塩等の他の試薬と一緒に、機能性支持体を貫通して反対側の表面まで延びている細孔を通り排出され、そこから除去される。機能性支持体からの第1アミノ酸ユニットの除去は、例えば適切な洗浄工程により、適切な洗浄液を使用して行うことができる。余剰の第1ユニット及び/又は特定の試薬を効率的に除去する目的で、真空を適用してもよい。引き続いて第2アミノ酸ユニットが反応チャンバーに与えられ、細孔内に侵入した後、適切な反応条件下で固定化された第1アミノ酸ユニットに結合される。余剰の第2ユニットは、その後、場合によっては他の試薬と一緒に、同様に機能性支持体から除去される。このようにして、所望される完全な有機分子、例えばペプチドを合成することが可能であり、又その際には同時に過剰の反応物や残留物を機能性支持体の細孔から除去することができる。
【0100】
更に別の好ましい実施形態においては、本発明に従った機能エレメントがマイクロアレイ装置となっている。「マイクロアレイ装置」とは、本発明との関係では、固形マトリックス上に、固定化された細胞、細胞フラグメント、組織の部分、又は分子を、整列したパターンに配置されるのが望ましいスポットの形状で有している装置であると解釈されるものである。固定化される分子は、特に核酸、オリゴヌクレオチド、蛋白質、ペプチド、抗体、又はこれらのフラグメント等の分子である。そのようなマイクロアレイ装置は、バイオチップとも呼ばれている。本発明に従ったマイクロアレイチップは、核酸チップ又は蛋白質チップであると好適である。
【0101】
本発明においては、本発明に従ったマイクロアレイに、核酸、オリゴヌクレオチド、蛋白質、ペプチド、抗体等が固定化されるスポット、即ち互いから切り離されている個別の領域が、面積1 cm2当たりで約5〜約1,000,000個、好ましくは約20〜約100,000個、備えられるようになっている。
【0102】
本発明の一実施形態においては、本発明に従ったマイクロアレイ装置の表面全体が、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体から成るか、又はこれを含有するようになっている。この場合は、機能性支持体の製造前に、適切な方法、例えばレーザーを使用して、予め定められたパターンに基づきその細孔構造が既に改質又は破壊されており、それによって機能性支持体の表面に、ナノ粒子を包含している多孔質領域を互いから区切る無孔性の線又は領域が存在している、本発明に従った機能性支持体が使用されると好適である。
【0103】
本発明に従ったマイクロアレイ装置の更に別の実施形態においては、本発明に従ったマイクロアレイ装置の表面に予め定められたパターンで配置されるようになっている、本発明に従ったマイクロアレイ装置の表面の互いから区切られた特定の領域だけが、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体から成るか、又はこれを含有することが企図されている。
【0104】
本発明に従ったマイクロアレイ装置は、例えば発現配列タグ(EST)の分析目的や、遺伝子又は他の機能性核酸又は蛋白質の同定及び特性化の目的で使用することができるが、しかしこれに限定されない。
【0105】
更に別の好ましい実施形態において、本発明に従った機能エレメントは、バイオコンピュータの電子コンポーネントとなっている。そのような電子コンポーネントは、例えば分子回路等として、医療技術やバイオコンピュータにその用途を見いだすことができる。本発明に従った機能エレメントは、光情報処理システムにおいては光貯蔵器として存在すると特に好適であり、その場合は本発明に従った機能エレメントに、特に光を直接信号に変換できる固定化された光受容体蛋白質が含まれるようになっている。
【0106】
更に別の好ましい実施形態においては、本発明に従った機能エレメントが、例えば液体(例えば生物試料)から、化合物を制御して分離及び/又は単離する目的で使用可能であるものの、他にもこの液体を精製する目的でも使用可能であるフロー装置となっている。本発明に従ったフロー装置は、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体を有しており、この少なくとも1つの支持体の細孔は、片側の表面から反対側の表面まで支持体を貫通して延びる貫通細孔となっている。
【0107】
本発明に従ったフロー装置は、溶液の浄化目的で、溶液に含有される一定の成分を選択的に除去するために、又は、溶液に含有される一定の化合物を単離及び/又は精製する目的で、使用することができる。その際には本発明に従ったフロー装置を通り、少なくとも一種類の物質を含有しているものの、異なる物質の複合混合物が含有されてもかまわない液体又は溶液が流れるようになっている。溶液は、フルー装置を通り流れる際に、本発明に従った機能性支持体の細孔内に到達する。溶液に含有される単離されなければならない化合物は、支持体の細孔内に包含されたナノ粒子に選択的に固定化され、それにより溶液から除去される一方で、溶液、即ち液状媒体は、溶液のその他の成分と一緒に妨げられずに細孔を通過する。このようにして、選択的に供給される溶液の少なくとも一種類の成分を、溶液から除去することができる。
【0108】
本発明に従った装置の好ましい一実施形態においては、少なくとも1つの本発明に従った機能性支持体が、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成る1つのフレームの上に配置されている。この少なくとも1つの機能性支持体は、一実施形態として、非構造型である、即ち機能性支持体の多孔質表面の全ての細孔又は殆ど全ての細孔が均一に、分子特異的認識部位を有するナノ粒子により満たされているものであるとよい。本発明に従ったフロー装置を、溶液の浄化目的で、即ち特定の物質を含まない溶液を得る目的で、溶液から複数の物質を分離するために使用すべきである場合は、この非構造化機能性支持体のそれぞれの細孔内に、例えば様々な分子特異的認識部位を有する異なるナノ粒子が包含されるとよく、それにより溶液が機能性支持体を通り流れる際に複数の物質を溶液から単一工程で分離できるようになる。当然ながら、例えば溶液からいずれか1つの物質又はいずれか1つの物質分類だけを分離するために、又場合によっては高濃度化するために、非構造化機能性支持体の細孔を同じナノ粒子で均一に満たすようにしてもよい。他にも本発明に従って、貫通細孔を有する1つの構造化された機能性支持体を、本発明に従ったフロー装置に備えることも可能である。更に本発明に従ったフロー装置の幾つかの実施形態においては、機能性支持体の表面に、溶液に含まれる例えばマトリックス粒子等の望まれないより大径の粒子が細孔内に入り込んで、場合によってはこれを目詰まりさせるのを防止するようになっている、少なくとも1つの分離層を塗布することが企図されている。
【0109】
本発明に従ったフロー装置の更に別の実施形態においては、例えば溶液から複数の異なる物質を分離する目的で、又は、物質の分離及び/又は高濃度化の効率を改善する目的で、複数の同じ及び/又は異なる機能性支持体を連続して適切に連結することが企図されている。
【0110】
本発明に従ったフロー装置には、真空発生ユニットが含まれると好適である。真空が発生される場合は、本発明に従った機能性支持体を通り、溶液がより急速かつ効率的に流れることができる。
【0111】
本発明は同様に、本発明に従った機能性支持体の用途にも関しており、本発明に従った機能性支持体は、機能エレメント、例えばフロー装置、マイクロタイタープレート、マイクロアレイ、又は電子コンポーネントの製造に使用されるようになっている。
【0112】
他にも本発明は、本発明に従った多孔質支持体又は本発明に従った支持体を使用して製造される機能エレメントの用途にも関しており、これらは、試料中の分析物の調査、及び/又はその単離、及び/又は試料からのその精製の目的で使用されるようになっている。この場合は本発明に従った機能エレメントが、核酸アレイ、蛋白質アレイ、又はマイクロタイタープレートであると好適である。「分析物」とは、本発明との関連においては、1つ1つの成分の種類及び量を決定しなければならない物質、及び/又は混合物から分離しなければならない物質であると解釈されるものである。分析物は特に、蛋白質、炭化水素及びその類である。本発明の好ましい実施形態において、分析物は、蛋白質、ペプチド、作用物質、有害物質、毒素、殺虫剤、抗原、又は核酸である。「試料」とは、上記で定義した分析物を、単離され、精製された形態で含有するか、又は異なる物質の複合混合物の成分として含有している、水性又は有機溶液、乳化液、分散液、懸濁液であると解釈されるものである。試料は例えば、血液、リンパ液、組織液等の生物学的液体、即ち、生体又は死体の生物、臓器、又は組織から取り出された液体である。しかし試料は、生物(例えば微生物やヒト、動物、又は植物の細胞等)が培養されていた培養培地、例えば発酵培地であってもよい。しかし試料は、本発明の背景においては、他にも単離され、精製された分析物の水溶液、乳化液、分散液、又は懸濁液であってもかまわない。試料は、精製工程において既に処理されたものとすることができるが、精製されていない形態のものでもかまわない。
【0113】
したがって本発明は、分析及び/又は検出法を実施する目的で使用されるという、本発明に従った機能性支持体、又は本発明に従った支持体を使用して製造される機能エレメントの用途にも関しているが、そこではこれらの分析及び/又は検出法が、例えばMALDI質量分析法、蛍光又は紫外-可視光分光法、蛍光又は光顕微法、光導波路分光法、又はインピーダンス分光法等の電気的な方法となっている。分析又は検出法は、他にも例えばペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、又はアルカリホスファターゼを使用する酵素分析法であってもかまわない。
【0114】
本発明は同様に、細胞を培養するための、又は、細胞の接着又は細胞の増殖を制御するための、本発明に従った機能性支持体、又はこの本発明に従った支持体を使用して製造される機能エレメントの用途にも関している。
【0115】
本発明は同様に、有機分子、特に生物活性分子を検出するための、及び/又は単離するための、本発明に従った機能性多孔質支持体、又は本発明に従った機能性支持体を使用して製造される機能エレメントの用途にも関している。例えば、一本鎖の核酸が固定化されているナノ粒子が包含される細孔を有している本発明に従った機能性支持体は、試料中の相補的な核酸を検出するために、及び/又は、この相補的な核酸を試料から単離するために、使用することができる。例えば、ナノ粒子に固定化されている1つの蛋白質を有している本発明に従った機能性支持体、又はこの支持体を使用して製造される機能エレメントは、この固定化されている蛋白質と相互作用する蛋白質を試料から検出するために、及び/又は単離するために、使用することができる。
【0116】
本発明は他にも、医薬製剤を開発するための、本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントの使用にも関している。本発明は同様に、医薬製剤の効果及び/又は副作用を調査するための、本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントの使用にも関している。
【0117】
本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、同様に疾患の診断、例えば病原体の同定、及び/又は疾患の発生につながる突然変異遺伝子の同定にも使用することができる。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、他にも診断上関連した代謝物質、例えば尿中のグルコースの同定にも使用できる可能性がある。
【0118】
本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、同様に発酵プロセスのオンライン又はオフライン監視に使用することができる。
【0119】
本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントの更にもう1つの用途の可能性は、地表水、地下水、及び土壌の微生物汚染の分析にある。同様に本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、食料又は飼料の微生物汚染の分析にも使用することができる。
【0120】
本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントの更にもう1つの好ましい用途は、電子コンポーネントとしての用途、例えば医療技術やバイオコンピュータの分子回路としての用途である。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントの用途が、光情報処理システムにおいて光貯蔵器としての用途であると特に好適であり、その場合は本発明に従った機能性支持体に、光を直接信号に変換することができる、ナノ粒子に固定化された光受容体蛋白質が含まれるようになっている。
【0121】
本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される本発明に従った機能エレメントを使用して、入手可能な出発物質から、完全な物質ライブラリーを製造することも可能である。即ち、本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、組み合わせ化学とも呼ばれる合成化学法においても使用できるようになっている。それにより製造される、異なってはいるものの関連分子構造を有する新しい化合物については、続いて、医薬、触媒、又は材料としての使用可能性に関する分析が行われるようにすることができる。合成対象である化合物が、本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントにおいて合成される。その際には物質が、例えば「スプリット・アンド・コンバイン」法を使用して多工程で組成される。この方法で、例えば20種類を超える出発物質、例えばアミノ酸を使用する場合は、僅か30回の反応工程で、この20種類のアミノ酸を成分とすることができる、可能性のある8,000種類ものトリペプチドの全てを得ることができる。そのような方法を使用して製造される組み合わせライブラリーは、続いて、例えば薬剤研究分野において興味を持たれるような、その生物学的特性に関しても、しかし他にも発光性等の物理特性に関しても、分析されることができる。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントを使用して、液相で実施可能な殆ど全ての反応を実施することができる。反応物の結合又は固定化により、更に別の物質を自由に選択する、又はこれを溶液中に添加する可能性がもたらされるようになる。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメントは、特に自然物質の合成、即ち特に複合化合物の合成に適したものとなっている。
【0122】
本発明は同様に、化学反応又は酵素反応の触媒としての、本発明に従った機能性支持体、又はそのような支持体を使用して製造される機能エレメントの用途にも関しているが、この場合は触媒がナノ粒子上に固定化されるようになっている。
【0123】
本発明においては、他にも本発明に従った機能性支持体、又はこの支持体を使用して製造される機能エレメントの用途として、液体からの化合物の分離、即ちフロー装置としての用途も企図されている。本発明に従った機能性支持体、又はそれから製造される機能エレメント(特にフロー装置)を使用して、例えば分子ライブラリーの合成を自動化することができる。本発明においては、他にも機能性支持体、又はこの支持体を使用して製造される機能エレメントの用途として、液体の浄化がある。
【0124】
本発明を、図1に基づき詳しく説明する。
【0125】
図1には、本発明に従った機能性支持体が図式化された形態で示されている。機能性支持体(1)は、多孔質材料(2)の下側に配置される表面(3)と多孔質材料(2)の上側に配置される表面(4)とを有する多孔質材料(2)を有しており、これらの反対側に位置する両表面(3)及び(4)は、平板状に構成されるとともに、細孔(5)を有している。これらの細孔(5)は、貫通細孔として設計され、即ち、表面(3)から多孔質材料(2)を貫通して反対側に位置する表面(4)まで延びている。細孔(5)内にはナノ粒子(6)が配置されている。これらのナノ粒子(6)は、例えばここには図示されない分子特異的認識部位を有しうる。表面(4)にはそれ以外にも1つの分離層(7)が配置されている。矢印は、例えば分析物や試薬等が含まれうる、図示されない溶液が、機能性支持体(1)の細孔(5)内に供給される向き、並びに、ナノ粒子(6)を包含した細孔(5)を通過した後に機能性支持体(1)から移動する向きを示す。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、本発明に従った機能性支持体を示す。
【符号の説明】
【0127】
1 機能性支持体
2 多孔質材料
3 表面
4 表面
5 細孔
6 ナノ粒子
7 分離層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の上側に配置される表面と、材料の下側に配置される表面とを有する材料を有する機能性多孔質支持体であって、少なくとも一方の表面が平板状であるとともに細孔を有しており、前記細孔内に、好ましくは前記多孔質表面の少なくとも1つの領域の細孔内だけに、ナノ粒子、特に分子特異的認識部位を有するナノ粒子が配置される、前記機能性多孔質支持体。
【請求項2】
前記材料の表面が両方とも平板状であるとともに細孔を有している、請求項1に記載の機能性支持体。
【請求項3】
前記両表面の細孔が互いに連通されていない、請求項2に記載の機能性支持体。
【請求項4】
前記両表面の細孔が複数の連絡通路により互いに連通されている、請求項2に記載の機能性支持体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多孔質表面を有する材料がメンブレンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項6】
前記メンブレンが微孔性メンブレンである、請求項5に記載の機能性支持体。
【請求項7】
前記微孔性メンブレンが無機微孔性メンブレンである、請求項6に記載の機能性支持体。
【請求項8】
前記無機メンブレンが、セラミック、ガラス、シリコン、金属、金属酸化物、又はこれらの混合物から成るか、又はこれらの内の1つ又は複数を含有する、請求項7に記載の機能性支持体。
【請求項9】
前記メンブレンが微孔性ポリマーメンブレンである、請求項5又は6に記載の機能性支持体。
【請求項10】
前記ポリマーメンブレンが、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、化学改質表面を有するセルロース、又はこれらの混合物から成るか、又はこれらの内の1つ又は複数を含有する、請求項9に記載の機能性支持体。
【請求項11】
前記細孔、特に細孔壁が、分子特異的認識部位を有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項12】
前記少なくとも一方の多孔質表面が、予め定められたパターンに基づいて配置される複数の領域を有しており、これらの領域の細孔にナノ粒子が包含される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項13】
前記ナノ粒子を包含した領域がゾーンにより切り離されており、これらのゾーンが1つの無孔性フィルムにより覆われている、請求項12に記載の機能性支持体。
【請求項14】
前記ナノ粒子を包含した領域が、空隙率を低下したゾーン、又は無孔性ゾーンにより互いから仕切られている、請求項12に記載の機能性支持体。
【請求項15】
前記ナノ粒子を包含した領域がゾーンにより互いから仕切られており、前記ゾーンが、非特異的結合を回避するために、及び/又は、試料液と前記ゾーンとの接触を最小限化するために、化合物を用いて改質されている、請求項12に記載の機能性支持体。
【請求項16】
前記各個別領域の細孔に、同じ又は異なるナノ粒子が包含される、請求項12〜15のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項17】
ナノ粒子が細孔内に定着される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項18】
ナノ粒子が結合剤により細孔内に定着される、請求項17に記載の機能性支持体。
【請求項19】
前記結合剤が、荷電状態又は非荷電状態の化学反応基を有している、請求項18に記載の機能性支持体。
【請求項20】
ナノ粒子が、コアと、前記分子特異的認識部位を有する表面とを有している、請求項1〜19のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項21】
前記分子特異的認識部位に、1つ又は複数の生物活性分子が結合されている、請求項20に記載の機能性支持体。
【請求項22】
前記生物活性分子が、共有結合及び/又は非共有結合により結合されている、請求項21に記載の機能性支持体。
【請求項23】
前記分子が、その生物活性を維持した状態で結合されている、請求項21又は22に記載の機能性支持体。
【請求項24】
前記結合されている分子が、蛋白質、核酸、又はこれらのフラグメントである、請求項21〜23のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項25】
核酸が、一本鎖又は二本鎖のDNA分子、RNA分子、PNA分子、又はLNA分子である、請求項24に記載の機能性支持体。
【請求項26】
蛋白質が、抗体、抗原、酵素、サイトカイン、又はレセプターである、請求項24に記載の機能性支持体。
【請求項27】
前記分子特異的認識部位に1つ又は複数の第1官能基が含まれ、前記結合される分子に、前記第1官能基に結合する相補的な第2官能基が含まれる、請求項20〜26のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項28】
前記第1官能基及び前記第1官能基に結合する前記相補的な第2官能基が、活性エステル、アルキルケトン基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、マレイミド基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、チオール基、チオエステル基、オリゴヒスチジン基、Strep-Tag I、Strep-Tag II、デスチオビオチン、ビオチン、キチン、キチン誘導体、キチン結合ドメイン、金属キレート複合体、ストレプトアビジン、ストレプトアクチン、アビジン、及びニュートラアビジンから成る群から選択される、請求項27に記載の機能性支持体。
【請求項29】
前記第1及び第2官能基が、分子インプリンティングにより作製されている、請求項27又は28に記載の機能性支持体。
【請求項30】
前記第1官能基が、スペーサーの部分であるか、又はスペーサーを介してナノ粒子の表面に結合されている、請求項27〜29のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項31】
前記相補的な第2官能基が、スペーサーの部分であるか、又はスペーサーを介して前記分子に結合されている、請求項27〜29のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項32】
ナノ粒子のコアが、有機材料から成るか、又はこれを含有する、請求項20〜31のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項33】
前記有機材料が有機ポリマーである、請求項32に記載の機能性支持体。
【請求項34】
前記有機ポリマーが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、又はこれらの混合物である、請求項32又は33に記載の機能性支持体。
【請求項35】
前記コアが、無機材料から成るか、又はこれを含有する、請求項20〜31のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項36】
前記無機材料が、Au、Ag、Ni等の金属であるか、又は触媒活性金属、特に貴金属、シリコン、SiO2、SiO、ケイ酸塩、Al2O3、SiO2・Al2O3、Fe2O3、Ag2O、TiO2、ZrO2、Zr2O3、Ta2O5、ゼオライト、ガラス、酸化インジウム亜鉛、ヒドロキシルアパタイト、Qドット、又はこれらの混合物である、請求項35に記載の機能性支持体。
【請求項37】
前記コアのサイズが5nm〜1,000nmである、請求項32〜36のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項38】
前記コアが、少なくとも1つの追加機能を有している、請求項32〜37のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項39】
前記追加機能が、前記コア内に係留されており、蛍光標識、UV/VIS標識、超磁性機能、強磁性機能、及び/又は放射性標識である、請求項38に記載の機能性支持体。
【請求項40】
前記コアの表面が、蛍光標識、UV/VIS標識、超磁性機能、強磁性機能、及び/又は放射性標識を有している、前記第1官能基を有する有機層又は無機層により改質されている、請求項38に記載の機能性支持体。
【請求項41】
前記コアの表面が、固定化されている分子の立体構造の安定化、及び/又は立体配座の変化防止、及び/又は、更なる生物活性化合物の前記コアへの吸着防止の目的で利用される化合物を含有する、請求項38〜40のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項42】
前記化合物が、ヒドロゲル、ポリエチレングリコール、オリゴエチレングリコール、デキストラン、又はこれらの混合物である、請求項41に記載の機能性支持体。
【請求項43】
前記結合される分子がマーカーを有している、請求項1〜42のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項44】
前記結合されている分子に、更に分子が結合されている、請求項1〜43のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項45】
前記両多孔質表面の少なくともいずれか一方に、少なくとも更にもう1つの分離層が配置されている、請求項1〜44のいずれか一項に記載の機能性支持体。
【請求項46】
少なくとも1つの請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体を有している、機能エレメント。
【請求項47】
前記少なくとも1つの機能性支持体が、無孔性材料の表面に配置されている、請求項46に記載の機能エレメント。
【請求項48】
前記少なくとも1つの機能性支持体が、前記無孔性材料の表面全体を覆っている、請求項47に記載の機能エレメント。
【請求項49】
前記少なくとも1つの機能性支持体が、前記無孔性材料の表面の予め定められたパターンに基づき配置された複数の面積部分を覆っている、請求項47に記載の機能エレメント。
【請求項50】
前記無孔性材料の表面の前記個々の面積部分が、異なる機能性支持体により覆われている、請求項49に記載の機能エレメント。
【請求項51】
前記異なる機能性支持体に、様々な分子特異的認識配列を有している、及び/又は、様々な生物活性分子が結合されているナノ粒子が含まれる、請求項50に記載の機能エレメント。
【請求項52】
前記無孔性材料の表面の前記機能性支持体により覆われている前記面積部分が、無孔性ゾーン又は空隙率を低下したゾーンにより切り離されている、請求項49〜51のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項53】
前記少なくとも1つの機能性支持体が、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成るフレーム内又はフレーム上に配置される、請求項46に記載の機能エレメント。
【請求項54】
前記フレームにより取り囲まれた前記機能性支持体の表面が、前記フレームに接続された、無孔性材料又は空隙率を低下した材料から成るエレメントを支持することにより途切れている、請求項53に記載の機能エレメント。
【請求項55】
前記無孔性材料及び/又は前記無孔性材料の表面が、金属、金属酸化物、ポリマー、半導体材料、ガラス、セラミック、及び/又はそれらの混合物から成るか、又はこれを含有する、請求項47〜54のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項56】
少なくとも1つの凹所を有するマイクロタイタープレートであり、前記少なくとも1つの凹所が、機能性支持体により完全又は部分的に覆われているか、又は機能性支持体から成る、請求項46〜55のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項57】
マイクロアレイ装置である、請求項46〜55のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項58】
前記マイクロアレイ装置が、核酸チップ、又は蛋白質チップである、請求項57に記載の機能エレメント。
【請求項59】
フロー装置である、請求項46〜55のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項60】
前記フロー装置が、液体からの化合物の分離、高濃度化、及び/又は濃縮のために使用される、請求項59に記載の機能エレメント。
【請求項61】
前記フロー装置が液体の浄化のために使用される、請求項59に記載の機能エレメント。
【請求項62】
バイオコンピュータの電子コンポーネントである、請求項46〜55のいずれか一項に記載の機能エレメント。
【請求項63】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体の製造方法であって、分子特異的識別配列を有するナノ粒子の懸濁液を、材料の多孔質表面に塗布し、ナノ粒子が前記材料の細孔内に侵入した後、残りの懸濁液を除去する、前記方法。
【請求項64】
前記ナノ粒子懸濁液を塗布する前に、前記多孔質材料表面の予め定められた領域の細孔構造を破壊するために、前記多孔質材料表面が処理される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記多孔質材料表面がレーザーを使用して処理される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
細孔内に侵入していないナノ粒子及び前記懸濁液の残りの成分が、液状媒体を使用した洗浄により除去される、請求項63〜65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
請求項46〜62のいずれか一項に記載の機能エレメントを製造するための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体の使用。
【請求項68】
検出法を実施するための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜62のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項69】
前記検出法が、MALDI質量分析法、蛍光又は紫外-可視光分光法、蛍光又は光顕微法、光導波路分光法、インピーダンス分光法又はその他の電気的方法、又は、特にペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、又はアルカリホスファターゼを使用する酵素分析法である、請求項68に記載の使用。
【請求項70】
医薬製剤の開発のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項71】
医薬製剤の効果及び/又は副作用の分析のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項72】
疾患の診断のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項73】
前記機能性支持体又は前記機能エレメントが、病原体の同定のために使用される、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
前記機能性支持体又は前記機能エレメントが、ヒト又は動物の突然変異遺伝子の同定のために使用される、請求項72に記載の使用。
【請求項75】
前記機能性支持体又は前記機能エレメントが、診断上の関連代謝物質の同定のために使用される、請求項72に記載の使用。
【請求項76】
発酵プロセスのオンライン又はオフライン監視のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項77】
試料の微生物汚染の分析のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項78】
前記試料が水又は土壌試料である、請求項77に記載の使用。
【請求項79】
前記試料が食料又は飼料から由来する、請求項77に記載の使用。
【請求項80】
化学反応の触媒としての、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項81】
有機化合物の合成のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項46〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。
【請求項82】
前記有機化合物が、核酸、蛋白質、又はポリマーである、請求項81に記載の使用。
【請求項83】
バイオコンピュータの電子コンポーネントとしての、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項62に記載の機能エレメントの使用。
【請求項84】
液体からの化合物の分離用、及び/又は液体の浄化のための、請求項1〜45のいずれか一項に記載の機能性支持体、又は請求項59〜61のいずれか一項に記載の機能エレメントの使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2007−533983(P2007−533983A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508764(P2007−508764)
【出願日】平成17年4月9日(2005.4.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003744
【国際公開番号】WO2005/105308
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】