説明

マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する石膏ボード

本発明は、2つのカバー層及び石膏コアを含む石膏ボードであって、その際、石膏コアが、親油性カプセルコアと、モノマーの全質量を基準として30〜100質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、モノマーの全質量を基準として0〜70質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有する1種以上のモノマー(モノマーII)であって、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー、モノマーの全質量を基準として0〜40質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)の重合によって形成されたカプセル壁とを有するマイクロカプセル、並びに−60〜160℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種のポリマーPを含有する石膏ボードに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、2つのカバー層及び石膏コアを含み、その際、石膏コアがマイクロカプセルを含有し、そのカプセルコアが親油性物質であり、且つそのカプセル壁がアクリル酸及び/又はメタクリル酸若しくはそれらのエステルを基礎とするポリマーである石膏ボード、並びにその製造法に関する。
【0002】
近年、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱体の分野において多岐にわたる進歩が起こっている。その用途は、包装材料、テキスタイル類、熱媒液から石膏ボードのような建設資材にまで及ぶ。潜熱蓄熱体−PCM(phase change material)とも呼ばれることが多い−の機能の仕方は、固/液相転移の際に生じる変換エンタルピーに基づいており、これは周囲へのエネルギー吸収又はエネルギー放出を意味する。それゆえに、これは規定された温度範囲内において温度を一定に保持するために使用されることができる。例えば、マイクロカプセル化された潜熱蓄熱体を含有する石膏ボードは、部屋の受動的空調を可能にする。
【0003】
適用分野に応じて、マイクロカプセルの大きさ及び密度に様々な要求が課せられる。WO2006/018130は、堆積層用のペレット及び流過される用途のための、例えば熱交換器用のペレットの製造を記載する。該ペレットは、マイクロカプセルと造膜性ポリマーとの混合物を押出することによって得られる。
【0004】
建築用途においては、それに対して、マイクロカプセル粉末に重点が置かれている。例えば、DE−A−10139171並びにEP1291475は、石膏ボード中でのマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料の使用を教示している。マイクロカプセル壁は、メチルメタクリレートとブタンジオールジアクリレートとを保護コロイドとしての無機固体粒子の存在下で重合することによって形成される。
【0005】
しばしば、潜熱蓄熱材料として、相転移を超えると溶融する有機ワックスが使用される。係るマイクロカプセルが石膏のような多孔質建築材料中で使用される場合、不十分な密度を有するカプセルでは長期の期間にわたって水が僅かに漏出することが観察され得る。しかしながら、このような発散は、殊に内部空間では所望されていないことから、本発明の基礎を成しているのは、課題としてのローエミッションの石膏ボードである。
【0006】
この問題に対処する一つの試みは、壁の密度がより高いマイクロカプセルを開発することである。例えば、WO2008/046839は、カプセル壁の密度を高める付加的な高分子電解質被覆を有するマイクロカプセルを教示する。
【0007】
さらに、古い欧州出願09165134.9は、メチルメタクリレートとペンタエリトリトール−テトラアクリレートとから形成された壁を有するマイクロカプセルを記載する。この新しい壁ポリマーによって、15〜105℃の温度範囲内での改善された蒸発率が達成されることができていた。
【0008】
それでも、石膏ボード/マイクロカプセルの系全体をローエミッションにする更なる解決法が探されるべきであった。それゆえ本発明の課題は、長期の期間にわたっても潜熱蓄熱材料の低エミッションを示すマイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を含有する石膏ボードを提供することであった。
【0009】
それに従って、2つのカバー層及び石膏コアを含む石膏ボードであって、その際、石膏コアが、親油性カプセルコアと、
モノマーの全質量を基準として30〜100質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として0〜70質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)、
モノマーの全質量を基準として0〜40質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
の重合によって形成されたカプセル壁とを有するマイクロカプセル、
並びに−60〜160℃の範囲内のガラス転移温度Tg、有利には−60〜100℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種のポリマーPを含有する石膏ボードが見出された。さらに、本出願は該石膏ボードの製造法に関する。
【0010】
さらに、本出願は上記のマイクロカプセルとポリマーPを含有する水性混合物の噴霧乾燥によって得られるマイクロカプセル粉末並びにその製造法に関する。
【0011】
石膏コア中に含まれる本発明によるマイクロカプセルは、親油性カプセルコアとポリマー製カプセル壁を包含する。主としてカプセルコアは、95質量%より多くが親油性物質から成る。カプセルの平均粒径(光散乱によるZ平均)は1〜50μmである。有利な一実施形態によれば、カプセルの平均粒径は1.5〜15μm、有利には4〜10μmである。その際、有利には粒子の90%が、2倍の平均粒径より小さい平均粒径を有する。
【0012】
カプセルコア対カプセル壁の質量比は、一般的に50:50〜95:5である。70:30〜93:7のコア/壁の比が有利である。
【0013】
カプセル壁のポリマーは、一般的に、モノマーの全質量を基準として、少なくとも30質量%、有利な形態では少なくとも50質量%、且つ特に有利な形態では少なくとも60質量%並びに一般的に最大で100質量%、好ましくは最大で90質量%、且つ特に有利な形態では最大で80質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)を重合により導入して含有する。
【0014】
さらに、カプセル壁のポリマーは、モノマーの全質量を基準として、好ましくは少なくとも10質量%、有利には少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも20質量%並びに一般的にはせいぜい70質量%、好ましくはせいぜい50質量%、且つ特に有利な形態ではせいぜい30質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)を重合により導入して含有してよい。
【0015】
それ以外に該ポリマーは、モノマーの全質量を基準として、40質量%までの、有利には30質量%までの、殊に10質量%までの、特に有利には1〜5質量%の、モノマーIとは異なる一価不飽和の非イオン性の1種以上のモノマー(モノマーIII)を重合により導入して含有してよい。
【0016】
好ましくは、カプセル壁はグループIとグループIIのモノマーからのみ構成されている。
【0017】
モノマーIとして、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸が適している。有利なモノマーIは、メチル−、エチル−、n−プロピル−及びn−ブチルアクリレート並びに相応するメタクリレートである。特に有利なのは、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレート並びにイソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s−ブチルメタクリレート及びt−ブチルメタクリレートである。一般にメタクリレートが有利である。
【0018】
さらに、1種以上のモノマーIと、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有する1種以上のモノマー(モノマーII)が共重合されることができる。適したモノマーIIは、水に溶けないか又は溶け難いが、しかし、好ましくは親油性物質中で良好な乃至制限された溶解度を有する。難溶性とは、20℃で60g/lより小さい溶解度と解される。少なくとも2つの二重結合とは、モノマーが一般に2つ、3つ、4つ又は5つのエチレン性二重結合を有すること、好ましくはビニル基又はビニリデン基を有することを意味する。それらは重合中にカプセル壁の架橋を引き起こす。2つの非共役二重結合を有する1種以上のモノマー及び/又は2つより多い非共役二重結合を有する1種以上のモノマーが共重合されることができる。
【0019】
2つの非共役エチレン性二重結合を有する適したモノマーは、ジビニルベンゼン及びジビニルシクロヘキサンである。有利なのは、ジオールとアクリル酸又はメタクリル酸とのジエステル、そのうえまた、これらのジオールのジアリルエーテル及びジビニルエーテルである。例として、エタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、メタリルメタクリルアミド、アリルアクリレート及びアリルメタクリレートが挙げられる。特に有利なのは、プロパンジオールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート及びヘキサンジオールジアクリレート並びに相応するメタクリレートである。
【0020】
2つより多い非共役エチレン性二重結合を有する有利なモノマーは、ポリオールとアクリル酸及び/又はメタクリル酸とのポリエステル、そのうえまた、これらのポリオールのポリアリルエーテル及びポリビニルエーテルである。有利なのは、3つ及び/又は4つのラジカル重合性二重結合を有するモノマーである。有利なのは、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、ペンタエリトリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアクリレート及びペンタエリトリトールテトラアクリレート並びにそれらの工業用混合物である。
【0021】
モノマーI及びIIとは異なるそれ以外のモノマー(III)として、一価不飽和モノマー、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピロリドン及びスチレン又はα−メチルスチレン、イタコン酸、ビニルホスホン酸、無水マレイン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、メタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート及びジエチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。有利なのは、一価不飽和の非イオン性のモノマー、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルピロリドン及びスチレン又はα−メチルスチレンである。
【0022】
有利には、カプセル壁が、
モノマーの全質量を基準として50〜90質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として10〜50質量%の、2つより多い非共役エチレン性二重結合を有する1種以上のモノマー(モノマーII)、並びに
モノマーの全質量を基準として0〜30質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成されているマイクロカプセルが使用される。
【0023】
本発明により使用されるマイクロカプセルは、いわゆるin situ重合によって製造されることができる。マイクロカプセル形成の原理は、モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド及びカプセル化されるべき親油性物質から、該モノマー、及び親油性物質が分散相として存在する水中油型エマルションを製造することに基づいている。一実施形態に従って可能なのは、ラジカル開始剤を分散後に初めて添加することである。引き続き、モノマーのラジカル重合を加熱によって引き起こし、且つ該重合を場合により更なる温度上昇によって制御し、その際、発生するポリマーが、親油性物質を包囲するカプセル壁を形成する。この一般的な原理は、例えばDE−A−10139171に記載されており、この内容を明示的に引用する。
【0024】
一般に、マイクロカプセルは、少なくとも1種の有機保護コロイド及び/又は無機保護コロイドの存在下で製造される。有機保護コロイドも無機保護コロイドもイオン性又は中性であってよい。その際、保護コロイドは、単独でも、数種の同じく又は異なって荷電した保護コロイドと混合して使用されることもできる。有利には、マイクロカプセルは、無機保護コロイドの存在下で、殊に有機保護コロイドと組み合わせて製造される。
【0025】
有機保護コロイドは、有利には、73mN/mの水の表面張力を最大で45〜70mN/mに下げ、ひいては閉じられたカプセル壁の形成を保証し、並びに0.5〜50μm、好ましくは0.5〜30μm、殊に0.5〜10μmの範囲内の有利な粒径を有するマイクロカプセルを形成する水溶性ポリマーである。
【0026】
有機アニオン性保護コロイドは、アルギン酸ナトリウム、ポリメタクリル酸及びそれらの共重合体、スルホエチルアクリレートとスルホエチルメタクリレートの、スルホプロピルアクリレートとスルホプロピルメタクリレートの、N−(スルホエチル)−マレインイミドの、2−アクリルアミド−2−アルキルスルホン酸の、スチレンスルホン酸並びにビニルスルホン酸の共重合体である。有利な有機的にアニオン性の保護コロイドは、ナフタレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物並びに特にポリアクリル酸及びフェノールスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物である。
【0027】
例えば有機中性保護コロイドは、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、アラビアゴム、キサンタン、カゼイン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリビニルアセテート並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。ポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリビニルアセテートは、例えば商標Mowiol(R)としてKuraray Specialities Europe(KSE)から販売されている。有利な有機中性保護コロイドは、ポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリビニルアセテート並びにメチルヒドロキシ−(C1〜C4)−アルキルセルロースである。
【0028】
適したメチルヒドロキシ−(C1〜C4)−アルキルセルロースは、例えばメチルヒドロキシエチルセルロース又はメチルヒドロキシプロピルセルロースである。特に有利なのはメチルヒドロキシプロピルセルロースである。このようなメチルヒドロキシ−(C1〜C4)−アルキルセルロースは、例えば商品名Culminal(R)でHercules/Aqualon社より入手可能である。
【0029】
有利にはマイクロカプセルの製造は、本質的な構成成分として、モノマー、ラジカル開始剤、保護コロイド及びカプセル化されるべき親油性物質を包含する水中油型エマルションを製造し、且つ重合を引き起こすことによって行われる。場合により、重合を温度の上昇によって制御し、その際、発生するポリマーが、親油性物質を包囲するカプセル壁を形成する。
【0030】
有利には、無機保護コロイドは、無機固体粒子、いわゆるPickering系である。その際、係るPickering系は、固体粒子のみから成るか又は付加的に水中での粒子の分散性又は親油性相による粒子の湿潤性を改善する助剤から成っていてよい。作用様式及びその使用は、EP−A−1029018並びにEP−A−1321182に記載されており、これらの内容を明示的に引用する。
【0031】
無機固体粒子は、金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、ニッケル、チタン、アルミニウム、ケイ素、バリウム及びマンガンの塩、酸化物及び水酸化物であってよい。挙げられるべきものは、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び硫化亜鉛である。ケイ酸塩、ベントナイト、ヒドロキシアパタイト及びハイドロタルサイトも同様に挙げられる。特に有利なのは、SiO2を基礎とするシリカ、ピロリン酸マグネシウム及びリン酸三カルシウムである。
【0032】
SiO2を基礎とする適したシリカは高分散性シリカである。高分散性シリカは、微細な固体粒子として水中で分散されることができる。あるいはまた、水中のシリカのいわゆるコロイド状分散液を使用することも可能である。係るコロイド状分散液は、シリカのアルカリ性水性混合物である。アルカリ性pH領域内では、粒子は膨潤しており、且つ水中で安定している。保護コロイドとしてこれらの分散液を使用するために好ましいのは、水中油型エマルションのpH値が酸でpH 2〜7に調整される場合である。有利なシリカのコロイド状分散液は、pH 9.3で70〜90m2/gの範囲内の比表面積を有する。
【0033】
SiO2を基礎とする保護コロイドとして有利なのは、平均粒径が8〜11の範囲内のpH値の場合に40〜150nmの範囲内にある高分散性シリカである。例として、Levasil(R)50/50(H.C.Starck)、Koestrosol(R)350(CWK Bad Koestritz)、及びBindzil(R)50/80(Akzo Nobel Chemicals)が言及される。
【0034】
好ましくは、WO2009/077525に記載されるように、SiO2を基礎とする保護コロイドとメチルヒドロキシ−(C1〜C4)−アルキルセルロースとの組合せが使用され、この内容を明示的に引用する。
【0035】
一般的に保護コロイドは、水相を基準として0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜10質量%の量で使用される。その際、無機保護コロイドについては、有利には、水相を基準として0.5〜15質量%の量が選択される。有機保護コロイドは、有利には、エマルションの水相を基準として0.1〜10質量%の量で使用される。その際、有利な一実施形態に従って使用されるメチルヒドロキシ−(C1〜C4)−アルキルセルロースは、有利には、SiO2を基礎とする保護コロイドを基準として0.5質量%〜1.5質量%、殊に0.6質量%〜0.8質量%の量で使用される。
【0036】
ラジカル的に進行する重合反応のためのラジカル開始剤として、当業者に一般的に知られている油溶性のペルオキソ化合物及びアゾ化合物が、モノマーの質量を基準として0.2〜5質量%の量で適切に使用されることができる。このようなラジカル開始剤はWO2009/077525の中で挙げられており、この開示内容を明示的に引用する。さらに、重合のために当業者に公知の調節剤、例えばt−ドデシルメルカプタン又はエチルヘキシチオグリコレートを通常の量で添加することも可能である。
【0037】
一般に、重合は20〜100℃、好ましくは40〜95℃で実施する。所望の親油性物質に依存して、水中油型エマルションは、コア材料が液状/油状である温度で形成されるべきである。相応して、分解温度がこの温度より高いラジカル開始剤が選択されなければならず、且つ重合も同様にこの温度を2〜50℃上回って実施されなければならないことから、分解温度が親油性物質の融点より高いラジカル開始剤を場合により選択する。重合の反応時間は、ふつう1〜10時間であり、たいてい2〜5時間である。
【0038】
90〜99質量%の転化率における実際の重合反応に続けて、一般に、ニオイ担体、例えば残存モノマー及びその他の揮発性有機成分をほぼ含まない水性マイクロカプセル分散液にすることが好ましい。これは自体公知の方法で物理的に蒸留による除去(殊に水蒸気蒸留によって)又は不活性ガスを用いたストリッピングによって行われることができる。それにまた、WO99/24525に記載されているように化学的に行われることもでき、好ましくは、例えばDE−A−4435423、DE−A−4419518及びDE−A−4435422に記載されているようにレドックス開始剤による重合によって行われることもできる。
【0039】
さらにまた残存モノマーの含有量を下げるために、一実施形態に従って、ラジカル開始剤を新たに添加する必要があり、これが後重合の開始を定義付ける。有利な一実施形態に従って、カプセル形成に続いて後重合を、ラジカル開始剤としてペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム及び/又はペルオキソ二硫酸カリウムを用いて引き起こす。
【0040】
ペルオキソ二硫酸の塩は水溶性であり、且つ後重合を水相中若しくは水相の中から開始させる。ペルオキソ二硫酸の塩は、モノマーの質量を基準として0.2〜5質量%の量で適切に使用される。その際、それらを一度に又はある一定の時間にわたって計量供給することが可能である。
【0041】
必要ならば、後重合は、亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤の添加によって、比較的低い温度でもなお実施されることができる。還元剤の添加は、残存モノマー含有量をさらに低下させることができる。
【0042】
このようにして0.5〜100μmの範囲内の平均粒径を有するマイクロカプセルを製造することができ、その際、粒径は自体公知の方法で、剪断力、攪拌速度、及びその濃度により調整されることができる。有利なのは、0.5〜50μm、有利には0.5〜30μm、殊に3〜7μmの範囲内の平均粒径(光散乱によるZ平均)を有するマイクロカプセルである。
【0043】
親油性物質は、有利には潜熱蓄熱材料である。潜熱蓄熱材料は、定義によれば、熱伝達が行われる温度範囲内で相転移を示す物質である。好ましくは、親油性物質は−20℃〜120℃の温度範囲内で固/液相転移を示す。
【0044】
適切な物質として、例示的に次のものが挙げられる:
− 脂肪族炭化水素化合物、例えば飽和又は不飽和のC10〜C40−炭化水素、該炭化水素は、分枝鎖状又は有利には線状であり、例えばn−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン並びに環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン;
− 芳香族炭化水素化合物、例えばベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、o−又はn−テルフェニル、C1〜C40−アルキル置換された芳香族炭化水素、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ヘキサデシルベンゼン、ヘキシルナフタレン又はデシルナフタレン;
− 飽和又は不飽和のC6〜C30−脂肪酸、例えばラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸又はベヘン酸、有利には、デカン酸と、例えばミリスチン酸、パルミチン酸又はラウリン酸より成る共融混合物;
− 脂肪アルコール、例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ヤシ脂肪アルコールのような混合物並びにα−オレフィンのヒドロホルミル化及び更なる反応によって得られる所謂オキソアルコール;
− C6〜C30−脂肪アミン、例えばデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン又はヘキサデシルアミン;
− 脂肪酸のC1〜C10−アルキルエステルのようなエステル、例えばプロピルパルミテート、メチルステアレート又はメチルパルミテート並びに有利にはそれらの共融混合物又はメチルシンナメート;
− 天然及び合成のワックス、例えばモンタン酸ワックス、モンタンエステルワックス、カルナウバワックス、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、ポリビニルエーテルワックス、エチレンビニルアセテートワックス又はフィッシャー・トロプシュ法に従った硬質ワックス;
− ハロゲン化炭化水素、例えばクロロパラフィン、ブロモオクタデカン、ブロモペンタデカン、ブロモノナデカン、ブロモエイコサン、ブロモドコサン。
【0045】
さらに、これらの物質の混合物が、所望の範囲外への融点低下をもたらさないか、又は該混合物の溶融熱が有意義な適用にとって低くなりすぎない限りにおいて適している。
【0046】
例えば、純粋なn−アルカン、80%より大きい純度を有するn−アルカン、又は工業用留出物として発生し且つそれ自体市販されているようなアルカン混合物の使用が好ましい。
【0047】
さらに、無極性物質の場合に生じることが時にある結晶化遅延を防止するために、親油性物質に該物質に可溶性の化合物を添加することが好ましくあり得る。好ましくは、US−A5456852に記載されているように、実際のコア物質より20〜120K高い融点を有する化合物を使用する。適した化合物は、上記で親油性物質として言及された脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド並びに脂肪族炭化水素化合物である。これらは、カプセルコアを基準として0.1〜10質量%の量で添加される。
【0048】
蓄熱体が所望されている温度範囲に応じて潜熱蓄熱材料が選択される。例えば、穏和な気候における建設資材中の蓄熱体には、有利には、固/液相転移が0〜60℃の温度範囲内にある潜熱蓄熱材料を使用する。そのため一般には屋内適用のために15〜30℃の転移温度を有する単独物質又は混合物を選択する。
【0049】
有利な潜熱蓄熱材料は、脂肪族炭化水素、特に有利には上記で例示的に列挙された脂肪族炭化水素である。殊に、炭素原子14〜20個を有する脂肪族炭化水素並びにそれらの混合物が有利である。
【0050】
マイクロカプセルは、直接的に水性マイクロカプセル分散液として又は該マイクロカプセル分散液の噴霧乾燥によって得られる粉末の形態で加工されることができる。
【0051】
マイクロカプセル分散液の噴霧乾燥は、慣例の方法で実施されることができる。一般的には、熱気流の入口温度が100〜200℃、好ましくは120〜160℃の範囲内にあり、且つ熱気流の出口温度が30〜90℃、好ましくは60〜80℃の範囲内にあるように行われる。熱気流中の水性ポリマー分散液の噴霧は、例えば一成分ノズル若しくは多成分ノズルによるか又は回転ディスクを介して行われることができる。ポリマー粉末の分離は、通常、サイクロン又はフィルターセパレーターを使用して行われる。噴霧される水性ポリマー分散液と熱気流は、好ましくは並流で運搬される。
【0052】
場合により、噴霧乾燥のために噴霧助剤を添加して、該噴霧乾燥を軽減するか又は所定の粉末特性、例えば低粉塵性、易流動性又は改善された再分散性を調整する。当業者には多数の噴霧助剤がよく知られている。これに関する例は、DE−A19629525、DE−A19629526、DE−A2214410、DE−A2445813、EP−A407889又はEP−A784449に見出されることができる。好ましい噴霧助剤は、例えば、ポリビニルアルコール型の水溶性ポリマー又は部分加水分解されたポリビニルアセテート、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース及びメチルヒドロキシプロピルセルロース、デンプン及びデンプン誘導体、オリゴ糖、糖及び糖誘導体、例えばマルトデキストリン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンのコポリマー、ゼラチン、有利にはポリビニルアルコール及び部分的に加水分解されたポリビニルアセテート並びにメチルヒドロキシプロピルセルロースである。
【0053】
本発明によれば、石膏コアはさらに、−60℃〜160℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するポリマーPを含有する。その際、ポリマーPは、一実施形態によれば水溶液中で使用されることができるか又は更なる一実施形態によれば水性分散液の形態で使用されることができる。その際、ポリマーP並びに2種以上のポリマーPより成る混合物も使用することが可能である。
【0054】
高分子結合剤としてのポリマーPの水性分散液は一般に知られている。これらは、水性分散媒中の分散相として、複数の互いに組み合わさったポリマー鎖から成るポリマーコイル、いわゆるポリマーマトリックス又はポリマー粒子を、分散分布した状態で含有する流動系である。ポリマー粒子の質量平均径は、頻繁に10〜1000nmの範囲内にあり、しばしば50〜500nm又は100〜400nmの範囲内にある。
【0055】
本発明によれば、そのガラス転移温度が−60℃〜+160℃、一般に−60℃〜+100℃、しばしば−20℃〜+100℃且つ頻繁には0℃〜+100℃であるポリマーPを使用することが可能である。ガラス転移温度(Tg)とは、ガラス転移温度の限界値を指し示しており、G.Kanig(Kolloid−Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymere,Vol.190,page 1,equation 1)によれば、該ガラス転移温度は分子量の増大とともに該限界値に向かう傾向にある。ガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中間点測定、DIN53765)に従って測定される。
【0056】
ここで、当業者であれば、モノマーの組成を目的に合わせて選択することによって−60℃〜+160℃の範囲内のガラス転移温度を有するポリマーを製造することが可能である。
【0057】
Foxの式(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,4thedition,Volume 19,Weinheim(1980),pp.17,18)により、ガラス転移温度Tを推断することができる。低度に架橋した若しくは未架橋の混合ポリマーの高いモル質量の場合でのガラス転移温度に関して、次の良好な近似が適用される:

[式中、X1,X2,・・・,Xnは、質量分率1,2,・・・,nであり、且つTg1,Tg2,・・・,Tgnは、そのつどモノマー1,2,・・・,nの1つだけから構成されたポリマーのケルビン単位におけるガラス転移温度を意味する]。このガラス転移温度は、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH,5thed,Weinheim,Vol.A21(1992),p.169又はJ.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook 3rd ed,J.Wiley,New York 1989から公知である。
【0058】
有利なのは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーのラジカル乳化重合によって形成される−60℃〜100℃の範囲内のガラス転移温度を有するポリマーPである。
【0059】
有利なポリマーPは、一般に<30g/lの水溶解度(25℃及び1bar)を有するエチレン性不飽和モノマーA少なくとも80質量%、殊に少なくとも90質量%を含むエチレン性不飽和モノマーMから形成されており、その際、該モノマーAの30質量%まで、例えば5〜25質量%が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルで置き換えられていてもよい。それ以外に該ポリマーは、モノマーAとは異なるモノマーB0.5〜20質量%をなお含有する。これ以降、モノマーに関する全ての量の値は、モノマーM100質量%を基準とした質量%値である。
【0060】
モノマーAは、一般にモノエチレン性不飽和若しくは共役ジオレフィンである。モノマーAの例は:
− α,β−エチレン性不飽和C3〜C6−モノカルボン酸又はC4〜C8−ジカルボン酸とC1〜C10−アルコールとのエステルである。好ましくは、これらは、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等;
− ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、4−クロロスチレン、2−メチルスチレン等;
− 好ましくは炭素原子1〜10個を有する脂肪族カルボン酸のビニルエステル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、バーサチック酸ビニルエステル等;
− オレフィン、例えばエチレン又はプロピレン;
− 共役ジオレフィン、例えばブタジエン又はイソプレン;
− 塩化ビニル又は塩化ビニリデン;
− 無水マレイン酸
である。
【0061】
有利なポリマーPは、以下に列記したポリマークラスI〜VIから選択されている:
I)スチレンとアルキル(アクリレート)とのコポリマー、すなわち、モノマーAとしてスチレン及び少なくとも1種のアクリル酸のC1〜C10−アルキルエステル及び場合により1種以上のメタクリル酸のC1〜C10−アルキルエステルを重合により導入して含有するコポリマー;
II)スチレンとブタジエンとのコポリマー、すなわち、モノマーAとしてスチレン及びブタジエン並びに場合によりC1〜C8−アルカノールの(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルを重合により導入して含有するコポリマー;
III)アルキル(メタ)アクリレート(純粋なアクリレート)のホモポリマー及びコポリマー、すなわち、モノマーAとして少なくとも1種のアクリル酸のC1〜C10−アルキルエステル及び/又はメタクリル酸のC1〜C10−アルキルエステルを重合により導入して含有するホモポリマー及びコポリマー、殊にモノマーAとしてメチルメタクリレート、少なくとも1種のアクリル酸のC1〜C10−アルキルエステル及び場合によりメタクリル酸のC2〜C10−アルキルエステルを重合により導入して含有するコポリマー;
IV)脂肪族カルボン酸のビニルエステルのホモポリマー及び脂肪族カルボン酸のビニルエステルとオレフィン及び/又はアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、すなわち、モノマーAとして炭素原子2〜10個を有する脂肪族カルボン酸の少なくとも1種のビニルエステル及び場合により1種以上のC2〜C6−オレフィン及び/又は場合により1種以上のアクリル酸及び/又はメタクリル酸のC1〜C10−アルキルエステルを重合により導入して含有するホモポリマー及びコポリマー;
V)スチレンとアクリロニトリルとのコポリマー
VI)オレフィンと無水マレイン酸とのコポリマー。
【0062】
該クラスI〜IVのコポリマー中の一般的なアクリル酸のC1〜C10−アルキルエステルは、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0063】
該クラスIの一般的なコポリマーは、モノマーAとして、それぞれモノマーAの全量を基準として、スチレン20〜80質量%且つ殊に30〜70質量%、及び少なくとも1種のアクリル酸のC1〜C10−アルキルエステル、例えばn−ブチルアクリレート、エチルアクリレート又は2−エチルヘキシルアクリレート20〜80質量%、殊に30〜70質量%を含有する。
【0064】
該クラスIIの一般的なコポリマーは、モノマーAとして、それぞれモノマーAの全量を基準として、スチレン30〜85質量%、好ましくは40〜80質量%且つ特に有利には50〜75質量%、及びブタジエン15〜70質量%、好ましくは20〜60質量%且つ特に有利には25〜50質量%を含有し、その際、上述のモノマーAの5〜20質量%は、C1〜C8−アルカノールの(メタ)アクリル酸エステル及び/又はアクリロニトリル若しくはメタクリロニトリルで置き換えられていてもよい。
【0065】
該クラスIIIの一般的なコポリマーは、モノマーAとして、それぞれモノマーAの全量を基準として、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%のメチルメタクリレート、及びC1〜C10−アルカノールのアクリル酸エステル、殊にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びエチルアクリレート及び場合によりC2〜C10−アルカノールのメタクリル酸エステルの中から選択された少なくとも1種の更なる、好ましくは1種又は2種の更なるモノマー、及び場合によりC2〜C10−アルカノールの(メタ)アクリル酸エステルを20〜80質量%且つ好ましくは30〜70質量%の全量で重合により導入して含有する。
【0066】
クラスIVの一般的なホモポリマー及びコポリマーは、モノマーAとして、それぞれモノマーAの全量を基準として、脂肪族カルボン酸のビニルエステル、殊にビニルアセテート30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%且つ特に有利には50〜100質量%、及びC2〜C6−オレフィン、殊にエチレン0〜70質量%、好ましくは0〜60質量%且つ特に有利には0〜50質量%、及び場合によりC1〜C10−アルカノールの(メタ)アクリル酸エステルの中から選択された1種又は2種の更なるモノマーを1〜15質量%の量で重合により導入して含有する。
【0067】
上述のポリマーの中では、クラスIV、V及びVIのポリマーが特に適している。
【0068】
有利なのは、脂肪族カルボン酸のビニルエステル、殊にビニルアセテートのホモポリマーである。特別な実施形態は、保護コロイド、例えばポリビニルピロリドン及びアニオン性乳化剤で安定化させる形態である。係る実施態様は、WO02/26845に記載されており、これを明示的に引用する。
【0069】
モノマーBとして基本的には、上述のモノマーとは異なり、且つモノマーAと共重合可能な全てのモノマーが考慮に入れられる。このようなモノマーは当業者に公知であり、且つ一般にポリマーの特性の変性に用いられる。
【0070】
有利なモノマーBは、炭素原子3〜8個を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、殊にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、それらのアミド、例えばアクリルアミド及びメタクリルアミド、それらのN−アルキロールアミド、例えばN−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド、それらのヒドロキシ−C1〜C4−アルキルエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−及び3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−及び3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート及び、好ましくは2〜200の範囲内のオリゴマー化度のオリゴアルキレンオキシド鎖、好ましくはポリエチレンオキシド鎖を有するモノエチレン性不飽和モノマー、例えばオリゴエチレングリコールのモノビニルエーテル及びモノアリルエーテル、並びにアクリル酸、マレイン酸又はメタクリル酸とオリゴエチレングリコールとのエステルの中から選択される。
【0071】
酸基を有するモノマーの割合は、好ましくは、モノマーMを基準として10質量%より高くなく、且つ殊に5質量%より高くなく、例えば0.1〜5質量%である。ヒドロキシアルキルエステル及びオリゴアルキレンオキシド鎖を有するモノマーの割合は、これらを含有する限りにおいて、モノマーMを基準として、好ましくは0.1〜20質量%の範囲内に、且つ殊に1〜10質量%の範囲内にある。アミド及びN−アルキロールアミドの割合は、これらを含有する限りにおいて、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内にある。
【0072】
上述のモノマーB以外に、更なるモノマーBとして、架橋性モノマー、例えばグリシジルエーテル及びグリシジルエステル、例えばビニル−、アリル−及びメタリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレート、上述のエチレン性不飽和カルボン酸のジアセトニルアミド、例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアセチル酢酸と上述のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステルとのエステル、例えばアセチルアセトキシエチル(メタ)アクリレートも考慮に入れられる。モノマーBとしてさらに、非共役の2つのエチレン性不飽和結合を有する化合物、例えば多価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和C3〜C10−モノカルボン酸とのジ−及びオリゴエステル、例えばアルキレングリコールジアクリレート及びアルキレングリコールジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、並びにさらにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート、N,N’−ジビニルイミダゾリン−2−オン又はトリアリルシアヌレートが考慮に入れられる。架橋性モノマーの割合は、一般に、全モノマー量を基準として1質量%を超えず、且つ殊に0.1質量%を超過しない。
【0073】
さらに、モノマーBとして、ビニルシラン、例えばビニルトリアルコキシシランも適している。これらは、所望される限りにおいて、ポリマーの製造の際に全モノマー量を基準として0.01〜1質量%の量で使用される。
【0074】
水性ポリマー分散液は、殊にエチレン性不飽和モノマーのラジカル的に開始される水性乳化重合によって得られる。この方法は、既に数多く記載されており、それゆえ当業者に十分に知られている[例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.8,page 659−677,John Wiley & Sons Inc.,1987;D.C.Blackley,Emulsion Polymerisation,pages 155−465,Applied Science Publishers Ltd.,Essex,1975;D.C.Blackley,Polymer Latices,2nd Edition,Vol.1,pages 33−415,Chapman & Hall,1997;H.Warson,The Applications of Synthetic Resin Emulsions,pages 49−244,Ernest Benn Ltd.,London,1972;D.Diederich,Chemie in unserer Zeit 1990,24,pages 135−142,Verlag Chemie,Weinheim;J.Piirma,Emulsion Polymerisation,pages 1−287,Academic Press,1982;F.Hoelscher,Dispersionen synthetischer Hochpolymer[Dispersions of Synthetic High Polymers],pages 1−160,Springer−Verlag,Berlin,1969及び特許文献DE−A4003422号を参照されたい]。通常、ラジカル的に開始される水性乳化重合は、エチレン性不飽和モノマーを、しばしば表面活性物質の併用下で、水性媒質中に分散分布させ、且つ少なくとも1種のラジカル重合開始剤を用いて重合させて行われる。しばしば、この得られた水性ポリマー分散液において、反応しなかったモノマーの残留含有量は、当業者に同様に公知の化学的及び/又は物理的な方法[例えばEP−A771328、DE−A19624299、DE−A19621027、DE−A19741184、DE−A19741187、DE−A19805122、DE−A19828183、DE−A19839199、DE−A−19840586及び19847115を参照されたい]によって下げられ、ポリマー固体含有量は、希釈若しくは濃縮によって所望の値へと調整されるか、又はこの水性ポリマー分散液に、更なる慣用の添加物質、例えば抗菌剤若しくは泡止め剤が添加される。しばしば、この水性ポリマー分散液のポリマー固体含有率は、30〜80質量%、40〜70質量%又は45〜65質量%である。同様に、このポリマー分散液から製造されたポリマー粉末並びにこのポリマー粉末を水中に再分散させることよって得られる水性分散液が有利である。
【0075】
水性ポリマー分散液のみならず、該分散液から製造された粉末も、例えばBASF−Aktiengesellschaft(Ludwigshafen,Germany)のACRONAL(R)、STYRONAL(R)、BUTOFAN(R)、STYROFAN(R)及びKOLLICOAT(R)並びにWacker Chemie−GmbH社(Burghausen)のVINNOFIL(R)及びVINNAPAS(R)、及びRhodia S.A.社のRHODIMAX(R)の商標名でそのうえ市販されている。
【0076】
乳化重合のための表面活性物質として、ふつう乳化重合用に使用される乳化剤及び保護コロイドが考慮に入れられる。有利な乳化剤は、保護コロイドとは異なり一般に2000g/モルより下の分子量を有し、且つ分散液中のポリマー若しくは重合されるべきモノマーMを基準として0.2〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の量で使用されるアニオン性及び非イオン性の乳化剤である。
【0077】
このような保護コロイドは、例示的に既に上でマイクロカプセル形成の所で挙げられている。
【0078】
アニオン性乳化剤に数えられるのは、US−A−4,269,749に記載されるように、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C20)の、エトキシ化アルカノールの硫酸半エステル(EO度:2〜50、アルキル基:C8〜C20)及びエトキシ化アルキルフェノールの硫酸半エステル(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C20)の、アルキルスルホン酸(アルキル基:C8〜C20)の、スルホン化モノ−及びジ−C6〜C18−アルキルジフェニルエーテルの、並びにアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C4〜C20)のアルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。更なる適したアニオン性乳化剤は、Houben,Weyl,Methoden der organischen Chemie,Volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe,Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961,pp.192−208に見出される。
【0079】
適した非イオン性乳化剤は、芳香脂肪族又は脂肪族の非イオン性乳化剤、例えばエトキシ化モノ−、ジ−及びトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C9)、長鎖アルコールのエトキシレート(EO度:3〜50、アルキル基:C8〜C36)、並びにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド−ブロックコポリマーである。有利なのは、長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル基:C10〜C22、平均エトキシ化度:3〜50)であり、且つこの中で特に有利なのは直鎖状又は分枝鎖状のC12〜C18−アルキル基及び8〜50のエトキシ化度を有するオキソアルコール及び天然アルコールを基礎とするものである。
【0080】
当然のことながら、ポリマーの分子量は、調節剤を少量で、一般には、重合されるべきモノマーMを基準として2質量%までの量で添加することによって調整されることができる。調節剤として、殊に有機チオ化合物、そのうえまたアリルアルコール及びアルデヒドが考慮に入れられる。クラスIのブタジエン含有ポリマーが製造される場合、頻繁に調節剤は0.1〜2質量%の量で使用され、好ましくは有機チオ化合物、例えばt−ドデシルメルカプタンが使用される。
【0081】
重合の完了後、使用されるポリマー分散液は、該分散液の本発明による使用前に、頻繁にアルカリ性に、好ましくはpH値7〜10の範囲に調整される。中和のために、アンモニア又は有機アミンが使用されることができ、並びに好ましくは水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化カルシウムが用いられることができる。
【0082】
ポリマー粉末Pの製造のために、水性ポリマー分散液は、公知の方法で、乾燥法に、好ましくは慣用の乾燥助剤の存在下で供される。有利な乾燥法は噴霧乾燥である。必要とされる場合には、乾燥助剤は、乾燥されるべき分散液のポリマー含有率を基準として1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の量で使用される。
【0083】
乾燥されるべきポリマー分散液の噴霧乾燥は、一般に、既にマイクロカプセル分散液について記載したように行われ、しばしば慣用の乾燥助剤、例えばビニルピロリドンのホモポリマー及びコポリマー、アクリル酸及び/又はメタクリル酸と、ヒドロキシ基を有するモノマー、ビニル芳香族モノマー、オレフィン及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルアルコール及び殊にアリールスルホン酸−ホルムアルデヒド−縮合生成物並びにこれらの混合物の存在下で行われる。
【0084】
そのうえまた、乾燥されるべきポリマー分散液に、この乾燥プロセス中に慣用の固化防止剤(凝結防止剤)、例えば微細な無機酸化物、例えば微細なシリカ又は微細なケイ酸塩、例えばタルクを添加してよい。
【0085】
更なる有利な実施形態によれば、水溶性又は部分的に水溶性であり、且つ0℃〜160℃の範囲内のガラス転移温度を有するポリマーPが適している。ここで、部分的に水溶性とは、>10g/lの溶解度(25℃及び1bar)と解される。天然高分子結合剤、例えばデンプン、デンプン誘導体及びセルロース並びに合成高分子結合剤が適している。このような結合剤は、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又は少なくとも60%の加水分解度を有する部分加水分解されたポリビニルアセテート、並びにビニルアセテートとビニルピロリドンとのコポリマー、そのうえまたポリビニルアセテートとポリエーテル、殊にエチレンオキシドとのグラフトポリマーである。ポリビニルアセテートとエチレンオキシドとのグラフトポリマーが特に好ましいことが判明している。係るグラフトポリマーは、例えばEP−A1124541に記載されており、この教示を明示的に指摘する。
【0086】
このようなポリマーは、例えばBASF SEのKOLLIDON(R)及びKOLLICOAT(R)及びLUVISKOL(R)の商標名でそのうえ市販されている。
【0087】
一般的に知られているように、石膏スラリーは、添加剤を有する水中にβ型硫酸カルシウム半水和物を連続的に添加し、且つ常時混合することによって製造される。マイクロカプセルは、分散液としても、有利には粉末としても、他の物質と一緒に加工されることができ、そうして石膏スラリーが得られる。同様にポリマーPは、粉末としてのみならず、分散液若しくは水溶液としても、他の物質と一緒に加工されることができ、そうして石膏スラリーが得られる。
【0088】
有利には、マイクロカプセルとポリマーは事前に混合され、且つ水性混合物として石膏ボードの製造のために使用される。その際、一実施形態によれば、マイクロカプセル粉末をポリマーPの水溶液若しくは分散液と混合し、その後に石膏スラリーと混合することが可能である。更なる一実施形態によれば、水性マイクロカプセル分散液と粉末の形態のポリマーPを混合し、その後にこの混合物を石膏スラリーと混合することが可能である。有利な一実施形態によれば、水性マイクロカプセル分散液は、ポリマーPの水性分散液若しくは水溶液と事前に混合され、且つ引き続き石膏スラリーと混合される。
【0089】
好ましくは、ポリマーPとマイクロカプセルの水性混合物は噴霧乾燥され、且つこの噴霧乾燥されたポリマー変性されたマイクロカプセル粉末は石膏ボードの製造のために使用される。その際、噴霧乾燥は、上でマイクロカプセルについて記載したように行われる。このようにして得られた噴霧乾燥されたマイクロカプセルは改善された密度を有する。ポリマーPが皮膜形成し、それにより付加的なポリマー層がカプセルの周りに形成され、これが壁を部分的に又は完全に覆うことが推測される。−60℃〜100℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するポリマーPの水性ポリマー分散液の混合物の噴霧乾燥によって得られるマイクロカプセルは新規である。
【0090】
それゆえ本発明は、親油性カプセルコアと、
モノマーの全質量を基準として30〜100質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として0〜70質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)、
モノマーの全質量を基準として0〜40質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成されたカプセル壁とを有するマイクロカプセル、
及び−60〜100℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するポリマーPを含有する水性混合物の噴霧乾燥によって得られる、好ましくは20〜500μmの平均粒径を有するマイクロカプセル粉末にも関する。
【0091】
有利なのは、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーのラジカル乳化重合によって形成される−60℃〜100℃の範囲内のガラス転移温度を有するポリマーPである。
【0092】
有利なポリマーPは、一般に<30g/lの水溶解度(25℃及び1bar)を有するエチレン性不飽和モノマーA少なくとも80質量%、殊に少なくとも90質量%を含むエチレン性不飽和モノマーMから形成されており、有利には上述のものであり、その際、該モノマーAの30質量%まで、例えば5〜25質量%が、アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルで置き換えられていてよい。それ以外に該ポリマーは、モノマーAとは異なるモノマーB、殊に上述のモノマー0.5〜20質量%をなお含有する。
【0093】
有利なポリマーPは、上で列挙されるポリマークラスI〜VI、殊にポリマークラスIV、V及びVIの中から選択されている。
【0094】
さらに、本発明はマイクロカプセルとポリマーPの水性分散液を含有する水性混合物を噴霧乾燥することによる、これらのマイクロカプセルの製造法に関する。
【0095】
ポリマーP(固体)の割合は、そのつどマイクロカプセル(同様に固体として計算)100質量部を基準として、通常は1〜30質量部、有利には2〜20質量部、殊に5〜15質量部である。噴霧乾燥のために予定された混合物の希釈は実質的に任意である。しかしながら、15〜45%の全固体含有率を有する水性混合物を使用することが好ましい。
【0096】
マイクロカプセルは、石膏を基準として5〜50質量%の量で使用される。
【0097】
本発明による石膏ボードは、2つのカバー層及び石膏コアを含む。
【0098】
好ましいカバー層は、セルロースを基礎とする厚紙シート並びに織布又はフリース、いわゆる"不織布"である。このようなフリースの材料は、ガラス繊維、例えばポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等から成るポリマー繊維である。特に有利には、カバー層としてガラス繊維フリースが使用される。このような建築用ボードは、例えばUS4,810,569、US4,195,110、US4,394,411、EP755903、EP503383及びEP427063から公知である。有利なのは、両面がガラス繊維フリースから成るカバー層を有する石膏ボードである。
【0099】
その際、建築用ボード、殊に石膏ボード(乾燥物質)の全質量を基準として、5〜40質量%、殊に20〜35質量%のマイクロカプセル粉末が組み込まれる。マイクロカプセル化された潜熱蓄熱材料を有する石膏ボードの製造は一般的に公知であり、且つEP−A1421243の中で記載されており、これを明示的に引用する。通常これらは、水性石膏スラリーを不連続的に又は有利には連続的に2つのカバー層の間に導入して製造され、その際、ボードが形作られる。石膏スラリーは、添加剤を有する水中にβ型硫酸カルシウム半水和物を連続的に添加し、且つ常時混合することによって製造される。マイクロカプセルは、硫酸カルシウムと一緒に計量供給されることができるのに加えて、既に水性分散液として存在してもよい。
【0100】
添加剤として一般に、鉱物性成分を基準として2質量%まで、当業者に公知の液化剤、遅延剤及び/又は促進剤が使用されることができる。
【0101】
そのようにして得られた石膏スラリーは、カバー層上に施与、例えば噴霧され、且つ第2のカバー層で被覆される。初期の硬化の間に、建築用ボードはプレス中で、例えば幅1.2〜1.25m及び厚さ9.25、12.5、15.0、18.0又は25mmのストリップに形作られる。これらのストリップは数分以内に硬化し、そしてボードに切断される。この段階で、該ボードは、一般にその質量の3分の1を水分としてなお含有する。この残留水を除去するために、該ボードは約250℃までの温度で熱処理に供される。このために例えばトンネル乾燥器を用いる。
【0102】
そのようして得られた石膏ボードは750〜950kg/m3の密度を有する。
【0103】
本発明による石膏ボードはまた、長期の期間にわたって比較的低い温度でも良好な密度を有する。
【0104】
次の例は、本発明をより詳細に説明するものである。実施例における百分率の値は、別記されない限り、質量パーセントである。
【0105】
マイクロカプセル分散液の粒径は、Malvern Particle Sizer 3600E型を用いて、文献中に示されている標準測定法に従って測定した。D[v、0.1]値は、粒子の10%がこの値に至るまでの粒径(体積平均に従う)を有することを表す。相応して、D[v、0,5]値は、粒子の50%が、且つD[v、0,9]値は、粒子の90%がこの値より小さい/同じ粒径(体積平均に従う)を有することを意味する。スパン値は、差分(D[v、0.9]〜D[v、0.1])とD[v、0,5]からの商より生じる。
【0106】
マイクロカプセル分散液の製造
実施例1
水相:水680g
50質量%のシリカゾル(約80m2/gの比表面積)110g
26000g/モルの平均分子量を有するメチルヒドロキシプロピルセルロースの5 質量%の水溶液8g
2.5質量%の亜硝酸ナトリウムの水溶液2.1g
水中で20質量%の硝酸溶液4.0g
油相
約26℃の融点を有する実質的に直鎖状のパラフィンの混合物308,0g
ヘキサデカン(工業用)123.2g
約65℃の融点を有する工業用パラフィン8.8g
メチルメタクリレート66.0g
ペンタエリトリトールテトラアクリレート(工業用、Cytec社)44.0g
添加物1
脂肪族炭化水素中のt−ブチルペルピバレートの75%の溶液0.92g
供給材料1:
5質量%のペルオキソ二硫酸ナトリウムの水溶液22.0g
水30.0g
水相を40℃で装入し、該水相に、溶融され且つ均質に混合された油相を加え、そして40分間、高速溶解攪拌機(ディスク直径5cm)により3500rpmで分散した。添加物1を加えた。エマルションを馬蹄形撹拌機により60分攪拌しながら70℃に加熱し、さらに60分間にわたり90℃に加熱し、且つ90℃で60分間維持した。生じたマイクロカプセル分散液に、攪拌しながら供給材料1を90分かけて90℃で計量供給し、且つ引き続き2時間、この温度で攪拌した。次いで室温に冷却し、且つ水酸化ナトリウム水溶液で中和した。
【0107】
7.2μmの平均粒径及び43.6%の固体含有率を有するマイクロカプセル分散液が得られた。
【0108】
試験の概要
実施例1から得られたマイクロカプセル分散液そのつど100gを、以下の実施例A〜Fに挙げたポリマー溶液又はポリマー分散液と混ぜた。得られたマイクロカプセルポリマー混合物の密度を調べるために、得られた混合物のそのつど約2gを2時間のあいだ105℃で乾燥して、場合により存在する残留水を除去した。次いで質量(mo)を算出した。180℃に1時間加熱した後、冷却後に質量(m1)を算出した。m0を基準とし且つ100を掛けた質量差分(m0-m1)は蒸発率(%)を示す。値が小さければ小さいほど、マイクロカプセルはより密度が高い。
【0109】
実施例A−比較例−本発明によらない、ポリマーなし
実施例1より得られたマイクロカプセル分散液の蒸発率は67.3%である。
【0110】
実施例B
Mowiol(R)−18−88溶液(水中で10質量%)16.8gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0111】
マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0112】
180℃での蒸発率は17.9%であった。
【0113】
実施例C
デンプン溶液(水中で50質量%)3.4gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0114】
マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0115】
180℃での蒸発率は54.2%であった。
【0116】
実施例D
オレフィン/無水マレイン酸コポリマーの26質量%の水性分散液6.5gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0117】
マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0118】
180℃での蒸発率は43.1%であった。
【0119】
実施例E
デンプン溶液(50質量%)2.55g及びオレフィン/無水マレイン酸コポリマーの水性分散液(水中で26質量%)1.6gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0120】
マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0121】
180℃での蒸発率は18.3%であった。
【0122】
実施例F
Mowiol−40−88溶液(水中で10質量%)16.8gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0123】
マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0124】
180℃での蒸発率は14.5%であった。
【0125】
上記の実施例の場合、蒸発率を測定するためのサンプル調製の手順に基づき、乾燥後のカプセルがポリマーの巨視的な皮膜により覆われることを排除することはできない。個々のカプセルの密度を試験するために、蒸発率の2回目の測定をさらに行った。
【0126】
実施例1から得られたマイクロカプセル分散液そのつど100gを、以下の実施例G〜Jに挙げたポリマー溶液又はポリマー分散液と混ぜた。得られたマイクロカプセルポリマー混合物の密度を調べるために、そのつど得られた混合物を20%の全固体含有率に希釈し、且つこの混合物の約0.5gを約2gの砂上に滴下した。そのようにして調製したサンプルの蒸発率を180℃で測定した。砂上に加えることで表面積が増大し且つカプセルは引き離されることから、測定結果が、カプセル全体にわたった凝集物及び層としての皮膜の形成によって影響を及ぼされることはない。
【0127】
180℃での蒸発率の測定
前処理のために、砂/マイクロカプセル/ポリマーサンプル2gを金属皿中で2時間のあいだ105℃で乾燥し、場合により存在する残留水を除去した。次いで質量(mo)を算出した。180℃に1時間加熱した後、冷却後に質量(m1)を算出した。m0を基準とし且つ100を掛けた質量差分(m0-m1)は蒸発率(%)を示す。値が小さければ小さいほど、マイクロカプセルはより密度が高い。
【0128】
実施例G(本発明によらない)
実施例1に従って製造したマイクロカプセル分散液100gを、一般規定に従って、ポリマーを添加せずに処理した。
【0129】
砂/マイクロカプセルサンプルの蒸発率を測定した。
【0130】
180℃での蒸発率は41%であった。
【0131】
実施例H
Luviskol(R)K90溶液(ポリビニルピロリドン、K値90、水中で10質量%のポリマー溶液、製造元BASF SE)17.4gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0132】
砂/マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0133】
180℃での蒸発率は27.4%であった。
【0134】
実施例I
Acronal(R)290D分散液(固体50質量%、製造元BASF SE)5gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0135】
砂/マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0136】
180℃での蒸発率は32.2%であった。
【0137】
実施例J
Luviskol VA64溶液(水中で50質量%のポリマー溶液)4gを、一般規定に従って、実施例1のマイクロカプセル分散液100gと混ぜた。
【0138】
砂/マイクロカプセル/ポリマーサンプルの蒸発率を測定した。
【0139】
180℃での蒸発率は34.4%であった。
【0140】
実施例B〜F若しくはHに従って製造したポリマー/マイクロカプセルより成る水性混合物は、通常の量で、例えば固体対石膏半水和物の1:9〜5:5の混合比で石膏スラリーに加えることができ、且つコンベヤーベルト上でボードに加工することができる。
【0141】
実施例K
実施例1に記載されるマイクロカプセル分散液1000gに、Mowiol(R)−18−88溶液(水中で10質量%)168gを混ぜ、且つ平均粒径が50〜250μmの粉末へと噴霧乾燥した。得られた粉末を石膏スラリーに、カプセル粉末対石膏半水和物の30:70の比で攪拌導入した。この石膏混合物から、加熱炉中での乾燥によって石膏ボードを製造した。
【0142】
吸引カップを用いた空気分析により明らかになったのは、空気に取り込まれたパラフィン量が、実施例1からのカプセル分散液の噴霧乾燥によるものであって、しかしながら、更なるポリマーを事前に添加せずに製造していたマイクロカプセル粉末を用いて製造した比較ボードの4分の1だったことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのカバー層及び石膏コアを含む石膏ボードにおいて、該石膏コアが、親油性カプセルコアと、
モノマーの全質量を基準として30〜100質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として0〜70質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)、
モノマーの全質量を基準として0〜40質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成されたカプセル壁とを有するマイクロカプセル、
並びに−60〜160℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種のポリマーPを含有することを特徴とする石膏ボード。
【請求項2】
前記マイクロカプセルのカプセル壁が、
モノマーの全質量を基準として50〜90質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として10〜50質量%の、2つより多い非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)並びに
モノマーの全質量を基準として0〜30質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成されていることを特徴とする、請求項1記載の石膏ボード。
【請求項3】
前記ポリマーPが、−60℃〜100℃の範囲内のガラス転移温度を有し、且つ1種以上のエチレン性不飽和モノマーMから乳化重合によって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の石膏ボード。
【請求項4】
前記ポリマーPが、脂肪族カルボン酸のビニルエステルのホモポリマー又は脂肪族カルボン酸のビニルエステルとオレフィン及び/又はアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項5】
前記結合剤ポリマーが、スチレンとアクリロニトリルとのコポリマーであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項6】
前記ポリマーPが、水溶性であるか又は部分的に水溶性であり、且つ0℃〜160℃の範囲内のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項7】
前記石膏ボードを製造するために、マイクロカプセルと前記ポリマーPより成る水性混合物を使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項8】
前記石膏ボードを製造するために、マイクロカプセルと前記ポリマーPより成る水性混合物の噴霧乾燥によって得られるマイクロカプセル粉末を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項9】
前記カバー層が、セルロースを基礎とする厚紙シート、織布又はフリースの中から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項10】
100質量部を基準として1〜30質量部のポリマーP(固体)を使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の石膏ボード。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の石膏ボードの製造法において、マイクロカプセル及びポリマーPを含有する石膏スラリーをカバー層に施与し、第2のカバー層で覆い、且つ硬化後に切断し、且つ乾燥させ、好ましくは50℃〜250℃の範囲内の温度で、殊に50℃〜150℃の範囲内の温度で乾燥させることを特徴とする方法。
【請求項12】
親油性カプセルコアと、
モノマーの全質量を基準として30〜100質量%の、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C24−アルキルエステル、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の中から選択された1種以上のモノマー(モノマーI)、
モノマーの全質量を基準として0〜70質量%の、少なくとも2つの非共役エチレン性二重結合を有し、水に溶けないか又は溶け難い1種以上のモノマー(モノマーII)、
モノマーの全質量を基準として0〜40質量%の、1種以上の他のモノマー(モノマーIII)
から形成されたカプセル壁とを有するマイクロカプセル、
及び−60〜100℃の範囲内のガラス転移温度Tgを有するポリマーPを含有する水性混合物の噴霧乾燥によって得られるマイクロカプセル粉末。
【請求項13】
マイクロカプセル及びポリマーPを含有する水性混合物を噴霧乾燥することを特徴とする、請求項12記載のマイクロカプセルの製造法。

【公表番号】特表2013−506774(P2013−506774A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531355(P2012−531355)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064349
【国際公開番号】WO2011/039177
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】