説明

マイクロカプセル製造方法、マイクロカプセル製造装置、およびマイクロカプセルシート

【課題】 マイクロカプセル自体に対する細かい処理を達成する。
【解決手段】 紙などの基材1を支承して2次元的に移動させるXYステージと、基材1の上方から第1のシェル材を含む液滴、コア材を含む液滴、第2のシェル材を含む液滴をそれぞれ供給し、基材1の表面に付着させる3つの液滴供給ノズルを有するノズル装置3と、付着した液滴を乾燥させて第1のシェル膜、第2のシェル膜を形成する乾燥装置4とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材を微細なシェルに封じ込めてなるマイクロカプセルを製造するための方法およびその装置、およびマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなるマイクロカプセルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、有効成分の劣化防止、作業性の向上、必要な時にコア物質を放出、徐放性(少しずつコア物質を放出)という機能に着目して、マイクロカプセルが種々の分野で使用されるようになってきている。
【0003】
そして、マイクロカプセルの製造方法としては、特許文献1に記載されているように、相分離法、液中硬化被覆法、インシチュー(In Situ)重合法、界面重合法などが知られている。
【特許文献1】特開2003−344881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相分離法は、ポリマー溶液に分離させた着色荷電粒子と分散媒とからなるコア物質のまわりにポリマーの濃厚相を分離させる方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0005】
液中硬化被覆法は、ポリマー溶液中のコア物質のまわりにポリマーの硬化試験薬等を適用することによりポリマーを硬化させる方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0006】
インシチュー(In Situ)重合法は、コア物質を分散させたエマルジョンの内相或いは外相の何れか一方からモノマーや重合触媒を供給し、コア物質をポリマーで覆う方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0007】
界面重合法は、コア物質を分散させたエマルジョンの内相および外相の双方からモノマーを供給する方法であるから、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができないという不都合がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができるマイクロカプセル製造方法、マイクロカプセル製造装置を提供することを第1の目的とし、これらのマイクロカプセル製造方法、マイクロカプセル製造装置により製造されたマイクロカプセルを用いるマイクロカプセルシートを提供することを第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のマイクロカプセル製造方法は、第1のシェル材を含む液滴を基材に付着させて第1のシェル膜を形成し、コア材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させてコア層を形成し、コア層を包含するように、第2のシェル材を含む液滴を基材に付着させて第2のシェル膜を形成する方法である。ここで形成されるコア層は1層のみでもよいが、2層以上であってもよい。
【0010】
この場合には、第1のシェル材、第2のシェル材として任意の材質のものを採用することができるので、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができる。
【0011】
本発明のマイクロカプセル製造装置は、第1のシェル材を含む液滴を基材に付着させて第1のシェル膜を形成する第1シェル膜形成手段と、コア材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させてコア層を形成するコア層形成手段と、コア層を包含するように、第2のシェル材を含む液滴を基材に付着させて第2のシェル膜を形成する第2シェル膜形成手段とを含むものである。
【0012】
したがって、第1シェル膜形成手段によって第1のシェル膜を形成し、コア層形成手段によってコア層を形成し、第2シェル膜形成手段によって第2のシェル膜を形成することにより、マイクロカプセルを形成することができる。ここで形成されるコア層は1層のみでもよいが、2層以上であってもよい。
【0013】
この場合には、第1のシェル材、第2のシェル材として任意の材質のものを採用することができるので、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができる。
【0014】
本発明のマイクロカプセルシートは、基材の所定範囲のみに、第1のシェル膜と第2のシェル膜とでコア層を包囲してなるマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなるものである。
【0015】
この場合には、必要な範囲のみにマイクロカプセルを配列でき、マイクロカプセルの無駄を排除することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロカプセル製造方法は、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができるという特有の効果を奏する。
【0017】
本発明のマイクロカプセル製造装置は、マイクロカプセル自体に対する細かい処理を行うことができるという特有の効果を奏する。
【0018】
本発明のマイクロカプセルシートは、マイクロカプセルの無駄を排除することができるという特有の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明のマイクロカプセル製造方法、マイクロカプセル製造装置、およびマイクロカプセルシートの実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明のマイクロカプセル製造装置の一実施形態を示す概略図である。
【0021】
このマイクロカプセル製造装置は、紙などの基材1を支承して2次元的に移動させるXYステージ(図示せず)と、基材1の上方から第1のシェル材を含む液滴、コア材を含む液滴、第2のシェル材を含む液滴をそれぞれ供給し、基材1の表面に付着させる3つの液滴供給ノズルを有するノズル装置3と、付着した液滴を乾燥させて第1のシェル膜、第2のシェル膜を形成する乾燥装置4とを有している。
【0022】
前記液滴供給ノズルは、インクジェットプリンタに使用されているインクノズルのように、例えば、ピエゾ素子などを用いて液滴溜り部の容積を増減させることにより、液滴タンクからの液体の吸引、吸引した液体の液滴としての吐出を行うものである。そして、液体の吸引、液滴としての吐出を行うのであるから、吐出量を高精度に制御することができる。
【0023】
また、ノズル装置3は、3つの液滴供給ノズルを有している関係上、同一位置で順次3つの液滴供給ノズルを動作させるために、3つの液滴供給ノズルの配列に対応させて往復動されるよう構成されている。
【0024】
前記乾燥装置4としては、例えば、赤外線ヒータを採用することができる。
次いで、図2を参照して、図1のマイクロカプセル製造装置の作用を説明する。
XYステージによって基材1を所定位置に移動させ、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちの1つを駆動して、第1のシェル材を含む液滴を基材1に付着させる。この状態では、液滴はほぼ半球状である{図2中(A)参照}。
【0025】
次いで、乾燥装置4を動作させれば、先ず表面が乾燥して膜が形成され、その後も乾燥動作を継続することにより、内部の溶剤などが蒸発し、最初に形成された膜が凹状にされる{図2中(B)参照}。ただし、シェル材、液滴の種類などによっては、膜が単に扁平にされるだけの場合もある。
【0026】
その後、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちの他の1つを駆動して、コア材を含む液滴を第1のシェル膜上に付着させる{図2中(C)参照}。
【0027】
その後、ノズル装置3の3つの液滴供給ノズルのうちのさらに他の1つを駆動して、第2のシェル材を含む液滴を、コア層を覆うように付着させる。
【0028】
次いで、乾燥装置4を動作させれば、第2のシェル材を含む液滴が乾燥され、第2のシェル層が形成される{図2中(D)参照}。
【0029】
以上のようにして、基材1上にマイクロカプセルを製造することができる。
【0030】
また、基材1をXYステージによって移動させることができるので、基材1上の所望の領域のみに、所定のパターンでマイクロカプセルを配列することができる(図3参照)。
【0031】
上記のように製造されたマイクロカプセルの用途として、ノーカーボン(感圧複写)紙、圧力測定フィルム、トナーなどの記録材料、シール&ロック剤などの接着剤、金属粒子の絶縁、熱膨張剤、熱媒体、調光ガラスなどの工業材料、サーモクロミツク(感温液晶、感温染料)、磁気泳動などの表示材料、農薬、人工飼料(ビタミン類)、人工種子などの農林水産品、芳香剤、マッサージクリーム、口紅などの香粧、化粧品、およびビタミシ類、活性炭、人工臓器(酵素)、DDS(ドラッグデリバリーシステム)などの医薬、医療品が例示できる。
【0032】
そして、これらの用途に応じて、シェル材、コア材を適宜選択することが必要になる。特に、本発明の製造方法、製造装置により製造されるマイクロカプセルにおいては、第1のシェル材と第2のシェル材とを互いに独立に選択することができるので、用途に応じて、例えば、一方のシェル材として透光性のあるものを採用し、他方のシェル材として透光性のないものを採用するような対処が可能となる。
【0033】
また、シェル材としては、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダなどの天然高分子、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロースなどの半合成高分子、ポリビニルアルコールナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、メラミン−ホルマリンなどの合成高分子、ワックスなどの油脂類、コロイダルシリカなどの無機物、など様々な物質が単体若しくは、複合体で用途に応じて使用可能である。もちろん、シェル材に染料や顔料等を混入し色を付けることも可能である。
【0034】
基材1としては、例えば、医薬品用途では可溶性かつ可食性のものを採用することができる。また、基材1としてのフィルム上に配列されたマイクロカプセルを別の基材に転写してシート状のものとすることも可能である。さらに、基材1としてのフィルム上に配列されたマイクロカプセルを別のバインダで補足してシート状とし、その後、フィルムを溶解除去して提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のマイクロカプセル製造装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明によるマイクロカプセルの製造プロセスを説明する概略図である。
【図3】基材に対するマイクロカプセルの配置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0036】
1 基材
3 ノズル装置
4 乾燥装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシェル材を含む液滴を基材(1)に付着させて第1のシェル膜を形成し、コア材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させてコア層を形成し、コア層を包含するように、第2のシェル材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させて第2のシェル膜を形成することを特徴とするマイクロカプセル製造方法。
【請求項2】
第1のシェル材を含む液滴を基材(1)に付着させて第1のシェル膜を形成する第1シェル膜形成手段(3)(4)と、コア材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させてコア層を形成するコア層形成手段(3)と、コア層を包含するように、第2のシェル材を含む液滴を第1のシェル膜に付着させて第2のシェル膜を形成する第2シェル膜形成手段(3)(4)とを含むことを特徴とするマイクロカプセル製造装置。
【請求項3】
基材(1)の所定範囲のみに、第1のシェル膜と第2のシェル膜とでコア層を包囲してなるマイクロカプセルを所定のパターンで配列してなることを特徴とするマイクロカプセルシート。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−155067(P2008−155067A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116454(P2005−116454)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】