説明

マイクロチップ及びその製造方法

【課題】 マイクロチップ内に微量の液体を長期間保存可能で且つ安価なマイクロチップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように基材に取り付けられる蓋とを備え、凹部の容積が1ml以下であるマイクロチップにおいて、蓋の凹部と対向する表面部分と、凹部の内壁とに、水蒸気バリアフィルムが設けられており、真空圧空成形法等で水蒸気バリアフィルムを凹部表面に設けることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微量の試料を一時的若しくは長期的に容器内に保持するためのマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学反応や生化学反応をより少ない反応液や検体でより効率良く実施するために、反応容器を微小にするコンセプトが提案されており、大学、企業などの研究機関で研究及び開発が進められている。μ−TAS(Micro Total Analysis System)と呼ばれる数cm角程度のガラスやシリコン等の材料で作製されたチップ上に送液、混合、反応、分析等の機能部を集積化した化学・生化学分析統合システムも該コンセプトから発明された形態の一つである。μ−TASでは、これまでの分析統合システムに比べてサンプルや試料の量を大幅に減らすことができるため、スループットの時間短縮や廃液の減少が期待される。
【0003】
近年のμ−TAS技術の発展形態として、μ−TAS用のマイクロチップの材料に、ガラスやシリコンに比べてコスト面や加工性で優れる熱可塑性プラスチック樹脂を用いたマイクロチップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1で提案されているようなプラスチック製のマイクロチップではウェル(以下、セルともいう)等で構成される貯蔵部に予め試薬や洗浄液となる溶液を長期間保持することが難しいという課題がある。それゆえ、従来、試料を乾燥した状態で長期間維持するμ−TAS用のマイクロチップが提案されているが(例えば、特許文献2参照)、本発明者らの知るところでは、現在、試薬や洗浄液を液体で長期間に封入することのできるマイクロチップは存在しない。これは、現在提案されている分析統合システムでは、マイクロチップを使用する際に初めて全ての溶液をマイクロチップ内に注入することを前提としているためである。このような従来の分析統合システムに用いる測定装置では、上記のプロセスを実行するための複雑な機構が必要となり、装置設計の際に大きな負担となった。また、測定を行う際に用いるマイクロチップとは別に測定時に必要な全ての溶液を予め別の容器で用意しておく必要があった。
【0005】
このような問題を解決するために、予め微量、例えば1ml以下の溶液を長期間保存できるようなプラスチック製のマイクロチップが要望されている。しかしながら、現在知られている全てのプラスチック樹脂は少なからず透水性を有しており、溶液の長期保存が困難である。また、核酸抽出等の処理では、マイクロチップ内の溶液が収容されるセル等の貯蔵部の表面特性によっては、封入した試薬や洗浄液だけでなく検体中の所望の物質が使用時に貯蔵部表面に吸着したり、あるいは、化学反応を起こす可能性があり、目的物質を抽出することが難しくなる恐れがある。
【0006】
このような問題を解決する方法の一つとして、例えば、無機物をプラスチック製容器の内部表面に蒸着し、容器内部にガスバリア性能を持たせる方法が考えられる(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−340911号公報(第3−4頁、第1−3図)
【特許文献2】特開平5−172804号公報(第4頁、第1図)
【特許文献3】特開2003−95273号公報(第3−7頁、第1−2図)
【特許文献4】実開平5−35660号公報(第4−8頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
μ−TASで用いられるような微細で複雑な内部構造(溶液の貯蔵するセルや流路等)を有するプラスチック製のマイクロチップにおいて、マイクロチップ内部に微量(例えば1ml以下)の溶液を長期保存可能にするために、特許文献3及び4で開示されているプラズマCVD法やIBS法といった方法で無機物の膜をセルや流路等の表面に設けた場合、セル等の表面に形成された無機物の膜に蒸着斑が起こり易くなるという問題が生じる。そのような不均一な膜では、セル等の表面全体に渡ってガスバリア性能が不均一になるだけでなく、膜の応力により膜の一部が破けてしまい、ガスバリア性能を劣化させる恐れもある。また、プラズマCVD法やIBS法で無機物の膜を形成した場合には、製造コストが高くなるという問題も生じる。このような観点から、チップサイズが小さくて且つ内部に微細な構造が形成されているマイクロチップのセル等の表面に無機物の膜を形成する方法として、上述のような蒸着方法やスパッタ方法は不向きであると考えられる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、マイクロチップ内に微量の液体を長期間封入でき、且つ安価に製造可能なマイクロチップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に従えば、凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であるマイクロチップにおいて、該蓋の該凹部と対向する表面部分と、該凹部の表面とに、水蒸気バリアフィルムが設けられていることを特徴とするマイクロチップが提供される。
【0011】
本発明のマイクロチップは、微小量の溶液、具体的には1ml以下の溶液、より好ましくは100μl以下の溶液を長期間密封するための熱可塑性プラスチック製のマイクロチップである。本発明のマイクロチップは、溶液を収容するためのセル等により構成された容積が1ml以下の凹部を有する基材上に蓋を被せて基材の凹部を密閉することにより微少量の溶液をマイクロチップ内に密封するものであり、蓋の凹部と対向する表面部分と凹部の内壁とに無機材料を含有した水蒸気バリア性プラスチックフィルム(以下では、水蒸気バリアフィルムという)を設けることを特徴とする。なお、本発明のマイクロチップでは、蓋の表面に設けられる水蒸気バリアフィルムの領域は、少なくとも蓋の凹部と対向するの表面部分に設けられていれば良く、蓋の凹部と対向する側の表面全体に水蒸気バリアフィルムを設けても良いし、蓋を水蒸気バリアフィルムで作製しても良い。また、基材の凹部に設けられる水蒸気バリアフィルムの領域は、少なくとも基材の凹部表面(底面及び側面)に設けられていれば良く、基材の凹部側の表面全体に水蒸気バリアフィルムを設けても良い。
【0012】
上述のような構造を有するマイクロチップでは、マイクロチップの密封性能が一層向上する。例えば、温度40℃、湿度80%以下の雰囲気下で30日間放置してもマイクロチップ内の溶液の変動量を非常に小さく(例えば、初期封入量に対して1%以下の変動量)することができる。本発明者らの検討によれば、上記溶液の保存能力を有するプラスチック製マイクロチップでは、微小量の溶液を封入した状態において、例えば常温で1年以上放置した場合でも、封入された溶液の濃度等の変動が小さくすることができ、長期に渡って製品の信頼性を得ることができると考えられる。
【0013】
本発明のマイクロチップの水蒸気バリアフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の有機高分子材料と、アルミやセラミックス等の無機材料との複合材料からなるフィルムが好ましい。水蒸気バリアフィルムを構成する有機高分子材料は透明性を有し、無機材料は水蒸気バリア性を有するので、このような水蒸気バリアフィルムを用いることにより、溶液の長期保存が可能となるとともに、マイクロチップ内の溶液の保存状態を目視で確認することも可能になる。また、これらの材料は、食品や医薬品のプラスチック容器に広く使われており、また安価でもある。
【0014】
また、本発明のマイクロチップに用いる水蒸気バリアフィルムの水蒸気バリア性能としては、水蒸気バリアフィルムを単層もしくは複数層を重ねて用いた際に、1,000μl/m・day(温度40℃湿度80%の加速試験環境下)以下のバリア性能を有することが好ましい。このような性能を有するフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンやPET等と無機材料とからなる複合材料で形成された3,000μl/m・dayのバリア性能を有するエコラップ(日本エコラップ株式会社製)や、PETフィルムとアルミニウムとからなる複合材料で形成された100μl/m・dayのバリア性能を有するGXフィルム(凸版印刷株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
また、水蒸気バリアフィルムは、その少なくとも片側にシーラントと呼ばれる熱可塑性プラスチック材料からなる接着層を有することが好ましい。水蒸気バリアフィルムと熱可塑性プラスチックからなる基材の凹部表面とをシーラント層を介して熱溶着することにより、水蒸気バリアフィルムを基材の凹部表面に一体化して設けることができる。なお、水蒸気バリアフィルムと基材の凹部表面との接着性を向上させるため、基材に用いるプラスチック材料とシーラント層に用いる材料とは同一であることが好ましい。
【0016】
また、両面にシーラント層を有する水蒸気バリアフィルムを用いても良い。このような水蒸気バリアフィルムを用いた場合には、水蒸気バリアフィルムを多層化することができ、マイクロチップのバリア性能をより一層向上させることができる。水蒸気バリアフィルムを多層化することにより、例えば、10μl以下の超微少量の溶液を長期保存することが可能になる。
【0017】
本発明の第2の態様に従えば、凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であり、該凹部の表面に水蒸気バリアフィルムが設けられているマイクロチップの製造方法であって、第1金型及び第2金型で画成される空間を所定の温度に加熱することと、該基材を第1金型に取り付けることと、該水蒸気バリアフィルムを第2金型の第1金型側の表面に取り付けることと、第1及び第2金型を閉じて該水蒸気バリアフィルムを該基材と第2金型との間で挟み込むことと、該基材と該水蒸気バリアフィルムとの間の空間を減圧することと、第2金型と該水蒸気バリアフィルムとの間に空気を供給して該水蒸気バリアフィルムを該基材の凹部表面に密着させることと、該水蒸気バリアフィルム及び該基材を冷却して該水蒸気バリアフィルムを該基材の凹部表面に接着することとを含むマイクロチップの製造方法が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法では、第2金型の第1金型側表面に上記基材の凹部の形状とは反転した形状の凸部が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明のマイクロチップは、例えば、図1に示すように、プラスチック製の基材2と蓋1とから構成され、基材2にはセル4及び5、並びに流路6で構成された凹部3が形成されている。図1の例では、マイクロチップの凹部3の表面に水蒸気バリアフィルム7が設けられ、さらに蓋1が水蒸気バリアフィルム7で形成されている。図1の例では、基材2の凹部3上から蓋1を接着することにより、凹部3が密閉される。
【0020】
図1に示すようなマイクロチップを作製する際、基材2に形成された微細な構造の凹部3の表面に水蒸気バリアフィルムを一体化させる方法は任意であるが、本発明では、基材2の凹部3表面に、真空圧空成形法により水蒸気バリアフィルム7を設けることが好ましい。その成形方法の一例を図2に示す。図2を用いて本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法を簡単に説明する。
【0021】
まず、図1に示すような、溶液を収容するためのセル4及び5、並びに流路6等(図1中の凹部3)が形成されたプラスチック製基材2を射出成形法等で作製する。次いで、図2に示すような一対の金型(第1金型21及び第2金型23)を有する成形機を用意し、金型内部(第1金型21及び第2金型23で画成される空間)が、基材2の形成材料および水蒸気バリアフィルム7のシーラント材料のガラス転移以上の温度になるように温調する(加熱する)。次いで、図2(a)に示すように、基材2のセル4及び5の開口部側が第2金型23と対向するようにして、基材2を第1金型21に設置する。なお、図2(a)に示した基材2は、図1中のA−A断面図である。次いで、図2(a)に示すように、基材2の凹部の形状とは反転した形状の凸部27が表面に微細加工されている第2金型23の表面に、真空吸引等により水蒸気バリアフィルム7を貼り付ける。次いで、図2(b)に示すように、水蒸気バリアフィルム7を貼り付けた第2金型23を基材2の凹部表面側からプレスして、水蒸気バリアフィルム7を第2金型23と基材2との間で挟み込む。次いで、図2(b)に示すように、水蒸気バリアフィルム7と基材2との間の空間を真空吸引して減圧する。次いで、図2(c)に示すように、水蒸気バリアフィルム7と第2金型23との間に空気を供給し、その空気圧により水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に密着させて成形する。次いで、金型内部を冷却し水蒸気バリアフィルム7及び基材2を所定の温度以下に冷却することにより、水蒸気バリアフィルム7のシーラントを固化させて水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に接着する。
【0022】
上述のような方法で水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に設けた場合、第2金型23の表面には基材2の凹部の形状とは反転した形状の凸部が形成されているので、水蒸気バリアフィルム7が、図2(d)に示すように、基材2の凹部表面に沿ってトレースするように成形され、基材2の凹部内のコーナー部分の形状もよりシャープな形状で成形することができる。なお、基材2に形成された凹部の形状(セル等の構造)が単純な場合には、第2金型23の表面に基材2の凹部の形状とは反転した形状の凸部を形成しなくても、図2(d)に示すように、水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に沿ってトレースするように成形することは可能である。
【0023】
上述のような方法で水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に設けた場合には、水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面全体に渡ってより均一な厚さで形成することができるので、基材2の凹部表面全体に渡ってより均一なガスバリア性能を有するマイクロチップを作製することができる。また、上述のような方法を用いることにより、水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に沿って過度に延伸することなく一体化させることができる。従って、微細で複雑な構造を有する凹部を基材に形成した場合でも、水蒸気バリアフィルムを破断させることなく凹部表面に設けることができる。また、この成形方法では、水蒸気バリアフィルム7を基材2の凹部表面に接着する際、水蒸気バリアフィルム7と基材2との間を真空吸引するので、水蒸気バリアフィルム7と基材2との間に気泡が発生し難く、高品質な水蒸気バリアフィルムを有するマイクロチップを作製することができる。
【0024】
なお、図2に示すような金型で基材の凹部表面に水蒸気バリアフィルムを成形する場合、第2金型23表面の凸部のサイズ(幅や深さ)は、基材2の凹部のサイズより、所望の水蒸気バリアフィルムの厚み程度は小さくすることが好ましい。具体的には、図2に示すように、基材2のセル5に対応する第2金型23表面の凸部27の幅や高さを、対応する基材2のセル5の幅や深さより、所望の水蒸気バリアフィルムの厚さ分だけ小さくすることが好ましい。基材の凹部のサイズと、それに対応する第2金型表面の凸部のサイズを完全に一致させた場合には、基材と第2金型との間でプレスされる水蒸気バリアフィルムに過度の応力がかかり、水蒸気バリアフィルムが破断する恐れがある。
【0025】
また、プラスチック製基材に形成された凹部表面に上述した方法で水蒸気バリアフィルムを一体化させることにより、マイクロチップの基材の凹部の表面全体に均一なガスバリア性能が得られるだけでなく、マイクロチップを安価に製造することもできる。さらに、本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法で作製されたマイクロチップでは、外部から基材の凹部に検体を注入出する際に、外部から適当な中空針や注射器、あるいはカッター等の刃物を用いることにより、水蒸気バリアフィルムを取り外すことができる。
【0026】
さらに、本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法では、第2金型表面に耐熱性の高いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のプラスチック材料を加工して用いることが好ましい。これにより、水蒸気バリアフィルムを基材の凹部表面に設ける際、基材や水蒸気バリアフィルムに対するダメージを抑制することができる。
【0027】
本発明の第3の態様に従えば、第2の態様に従うマイクロチップの製造方法により作製されたマイクロチップが提供される。
【0028】
本発明の第4の態様に従えば、凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であり、該蓋の該凹部と対向する表面部分と、該凹部の表面とに、水蒸気バリアフィルムが設けられている第1容器と、第2容器と、第1容器の凹部に収容する溶液を第1容器から第2容器に移動させるための移動装置とを備えたマイクロチップが提供される。
【0029】
本発明の第4の態様に従うマイクロチップは、第1及び第2容器を移動装置を介して結合させることにより、第1容器に収容された溶液を第2容器に移動させて、第2容器内で第1容器に収容された溶液に対して反応、精製、抽出、合成、分析、攪拌等の操作を行うためのマイクロチップである。本発明の第4の態様に従うマイクロチップでは、微細で複雑な内部構造を有し、上述した様々な操作を行うための容器(第2容器)と、比較的単純な内部構造を有する溶液保存用の容器(第1容器)とを別々に作製することができるので、各容器の形状や作製が簡便になり製品の信頼性が向上する。
【0030】
また、第1容器に封入された溶液を第2容器に移動させる方法としては、用途等に応じて適宜、任意の方法を用い得る。例えば、ニードルを介して毛細管現象により溶液を移動させる方法、磁性体に試薬や検体などを吸着させて磁力によって溶液を移動させる方法、第1容器及び/又は第2容器、並びに外部に設置したポンプ手段を用いて溶液を移動させる方法などが考えられる。
【0031】
ニードルを介して毛細管現象により溶液を第1容器から第2容器に移動させる方法の一例を図3に示す。図3に示したマイクロチップの例では、図3(a)に示すように、試薬や洗浄液等の溶液を収容する2つのセル38及び39(凹部)を有する第1容器35と、第1容器35の2つのセルに収容された溶液40及び41に対して反応、精製、抽出、合成、分析、攪拌等の操作を行うセル32を有する第2容器31とから構成される。第2容器31の下面には、図3(a)に示すように、第1容器35の2つのセル38及び39に収容された溶液40及び41を個別に第2容器31内のセル32に移動させるための2つニードル33及び34(移動装置)が設けられおり、ニードル33及び34の内孔は、図3(a)に示すように、第2容器31内のセル32と通じている。
【0032】
図3のマイクロチップの例では、図3(b)に示すように、第2容器31の2つのニードル33及び34を、第1容器35のセル38及び39の上部から突き刺すことにより、第1容器35と第2容器31を合体させる。このように第1容器35と第2容器31とを合体させることにより、第1容器35のセル38及び39にそれぞれ収容されている溶液40及び41が、毛細管現象によりそれぞれニードル33及び34を介して第2容器31のセル32内に移動する。そして、第2容器31のセル32内で溶液40及び41を混合させることにより所望の操作を行う。
【0033】
また、第1容器等にポンプ手段を設けて溶液を移動させる例としては、次のようなものが考えられる。溶液が収容される第1容器の外壁の少なくも一部にゴム等の弾力性を有する材料で形成された押圧部材を設け、第1容器と第2容器を合体させて第1容器内のセル(凹部)と第2容器内のセルとが通じている状態にし、第1容器の押圧部材を外部から加圧して第1容器内のセルの容積を減少させる(第1容器内のセルを加圧する)ことにより、第1容器のセルに収容されている溶液を第2容器内に押し出して移動させても良い。このような方法によっても、第1容器内の溶液を円滑に第2容器内に移動させることができる。
【0034】
本発明の第1、第3及び第4の態様に従うマイクロチップでは、上記凹部が複数のセルから構成されることが好ましい。基材の凹部を複数のセルから構成することにより、試料の反応・分析等を行う時に使用する種々の微量(例えば、1ml以下の容量)の試料を別々のセルに封入することができる。
【0035】
また、本発明の第1、第3及び第4の態様に従うマイクロチップでは、所定の上記セルがシール部材により他のセル及び/又は外部から遮断されていることが好ましい。さらに、本発明の第1、第3及び第4の態様に従うマイクロチップでは、上記シール部材が上記所定のセルから取り外し可能であることが好ましい。マイクロチップを搬送する際にマイクロチップ内部に封入された溶液が漏洩したり、あるいは、基材の凹部が複数のセルで構成されている場合には、マイクロチップを搬送する際に各セルに収容された各液体が混交したりする恐れがあるので、セル間及びセルの検体の出入口(外部からの注入出口)は、水蒸気バリア性を有するシール部材を設けることが好ましい。シール部材としては、アルミ箔、エコラップ(日本エコラップ株式会社製)、GXフィルム(凸版印刷株式会社製)等が用い得る。
【0036】
また、マイクロチップの使用時には作業が迅速に行えるように、シール部材はセルから容易に取り外し可能であることが好ましい。例えば、セル(凹部)の検体の出入口(開口部)にシール部材を設けた場合、ニードルやカッター等によりシール部材の一部を切断することにより、容易に外部からセル内に溶液を注入またはセルから溶液を抽出することができる。また、セルの外部からの注入出口にシール部材を設けた場合、さらにシール部材の外側にシリコンゴム等の弾性部材を保護材として設けも良い。このような構造にすると、ニードル等で、弾性部材とシール部材の両方を突き破って溶液を注入出しても、ニードル等を引き抜いた後、弾性部材にできたニードルの刺し跡は弾性部材の弾性作用により塞がる。それゆえ、このような構造のマイクロチップでは、マイクロチップのバリア性能と溶液の注入出の簡便性とを両立させることができる。
【0037】
また、本発明のマイクロチップは、磁性ビーズを用いた核酸の精製、抽出に用いても良い。核酸の精製時にはグアニジン、アルコール等の水溶液を用いるので本発明のような水蒸気バリア性能を有するマイクロチップは好適である。
【発明の効果】
【0038】
本発明の第1及び第3の態様に従うマイクロチップによれば、蓋の凹部と対向する表面部分と、凹部の表面とに、無機材料を含む水蒸気バリアフィルムが設けられているので、マイクロチップ内に微量の溶液を長期間保存することができる。
【0039】
本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法によれば、真空圧空成形法によりマイクロチップの基材の凹部内壁に水蒸気バリアフィルムを形成するので、凹部の内壁に水蒸気バリアフィルムをほぼ均一の厚みで一体化させることができる。それゆえ、基材の凹部壁面全体に渡って均一なガスバリア性能を有するマイクロチップが得られる。また、本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法によれば、水蒸気バリアフィルムをマイクロチップの基材の凹部表面に沿って過度に延伸することなく一体化させることができる。それゆえ、より微細で複雑な形状を有する凹部を基材に形成した場合であっても、水蒸気バリアフィルムを破断させることなく凹部表面に設けることができる。さらに、本発明の第2の態様に従うマイクロチップの製造方法によれば、真空圧空成形法によりマイクロチップの基材の凹部表面に水蒸気バリアフィルムを形成するので、マイクロチップを安価に製造することができる。
【0040】
本発明の第4の態様に従うマイクロチップによれば、微細で複雑な内部形状を有し様々な操作を行う容器(第2容器)と比較的単純な構造を有する溶液保存用の容器(第1容器)とを分割した構造であるので、各容器の形状及び作製がより簡便になり製品の信頼性が向上する。また、本発明の第4の態様に従うマイクロチップによれば、第1の容器内に収容される溶液を第2容器へ移動させるための移動装置を備えており、第1容器内の溶液を円滑に第2容器内に移動させることができるので、第1容器に収容される溶液に対して反応、精製、抽出、合成、分析、攪拌等の操作を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明のマイクロチップ及びその製造方法の実施例について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
[マイクロチップ]
実施例1で作製したマイクロチップの概略構成図を図1に示した。この例で作製したマイクロチップ10は、図1に示すように、蓋1(シール部材)と容器2(基材)とから構成される。マイクロチップの外形は幅60mm、長さ35mm及び厚さ1.0mmとした。
【0043】
容器2には、溶液を収容するための凹部3が形成され、凹部3は、図1に示すように、開口部が四角形状の2つのセル4及び5と、セル4及び5を繋ぐ流路6とから構成される。そして、容器2の内面、すなわち凹部3の表面には、図1に示すように、水蒸気バリアフィルム7が設けられている(図1中の斜線部)。
【0044】
この例では、凹部3内のセル4及び5は同じ形状で形成し、底面積80mm(8mm×10mm)、深さ0.5mmとした。流路6のサイズは、幅1.6mm、長さ2.9mm及び深さ0.5mmとした。なお、容器2はポリプロピレン(PP)製であり、公知の射出成形法を用いて成形した。
【0045】
凹部3の表面に設けた水蒸気バリアフィルム7としては、PETフィルムとアルミニウムとからなる複合材料により形成され、バリア性能が0.01μl/cm・dayであり、片面にPPのシーラントを有するGXフィルム(凸版印刷株式会社製、膜厚42μm)単層を用いた。
【0046】
一方、蓋1は、容器2の凹部3表面に設けた水蒸気バリアフィルム7と同様の材料で形成し、蓋1の厚さを0.04mmとした。なお、この例のマイクロチップでは、基材2の凹部3を蓋1で閉じることにより、凹部3を密閉して溶液を長期保存可能とする。
【0047】
[水蒸気バリアフィルムの成形金型]
この例のマイクロチップの作製過程において、容器2の凹部3の表面に水蒸気バリアフィルム7を設ける際に用いた金型の概略図を図2に示した。この金型は、図2(a)に示すように、固定金型21(第1金型)とプレス金型23(第2金型)とから構成される。固定金型21には、図2(a)に示すように、金型の内部空間25を真空排気するための通気孔22が形成されている。固定金型21のプレス金型23側の表面には、図2(a)に示すように、容器2が真空吸引されて保持されており、容器2の凹部3表面がプレス金型23と対向するように設置されている。
【0048】
プレス金型23はPTFE製であり、プレス金型23の固定金型21側の表面には、図2(a)に示すように、容器2に形成された凹部(セル4及び5等)の形状とは反転した形状の凸部が形成されている。なお、プレス金型23表面の凸部のサイズ(幅や高さ)は、水蒸気バリアフィルムの厚みを考慮して、容器2の凹部のサイズ(幅や深さ)より小さくした。具体的には、プレス金型23表面の凸部27の幅を容器2のセル5の幅よりも0.08mm狭くし、プレス金型23表面の凸部27の高さを容器2のセル5の深さより0.04mm小さくした。
【0049】
また、プレス金型23には、図2(a)に示すように、通気孔24が形成されており、通気孔24を介して真空吸引することによりプレス金型23の表面に水蒸気バリアフィルム7を貼り付ける。なお、この例では、水蒸気バリアフィルム7のシーラント面が容器2側に向くようにして、水蒸気バリアフィルム7をプレス金型23の表面に貼り付けた。
【0050】
[マイクロチップの製造方法]
次に、この例のマイクロチップ10の製造方法を図2を用いて説明する。まず、上述したように公知の射出成形法を用いて、所望の構造の凹部3を有する容器2を成形した。次いで、容器2を、図2(a)に示すように、100℃に温調された金型内部に設置した。具体的には、容器2を、図2(a)に示すように、固定金型21のプレス金型23に対向する面に真空吸引して保持した。ただし、プレス金型23で容器2をプレスした際にプレス金型23の表面の凸部が、それに対応する容器2の凹部に嵌合するような位置に容器2を設置した。また、プレス金型23の表面には、図2(a)に示すように、水蒸気バリアフィルム7を真空吸引して貼り付けた。
【0051】
次いで、図2(b)に示すように、プレス金型23を上昇させて(容器2に向かう方向へ移動させて)、水蒸気バリアフィルム7を容器2とプレス金型23との間に挟み込み、容器2と水蒸気バリアフィルム7との間を通気孔22を介して真空吸引して減圧した。次いで、図2(c)に示すように、プレス金型23と水蒸気バリアフィルム7との間に通気孔24を介して大気を供給し、その空気圧により水蒸気バリアフィルム7を容器2の表面に密着させて水蒸気バリアフィルム7を成形した。
【0052】
水蒸気バリアフィルム7を容器2の凹部3の表面に成形した後、金型内部を30℃に冷却し、水蒸気バリアフィルム7のシーラントを固化させて水蒸気バリアフィルム7を容器2の凹部3表面に固定した。次いで、図2(d)に示すように、プレス金型23を元の位置に戻し、容器2を固定金型21から取り出した。ただし、容器2を固定金型21から取り出す際、容器2の外部に形成された不要な水蒸気バリアフィルム7を容器2から切断して取り出した。このようにして、この例のマイクロチップの容器2を作製した。
【0053】
一方、蓋1は水蒸気バリアフィルムをマイクロチップのサイズ(幅60mm、長さ35mm)に切断して作製した。次いで、蓋1を超音波融着法により容器2の凹部3側の表面に接着した。このようにしてこの例のマイクロチップを作製した。
【0054】
上述のような成形方法(真空圧空成形法)で水蒸気バリアフィルム7を容器2の凹部の表面に成形すると、水蒸気バリアフィルム7が、図2(d)に示すように、容器2の凹部の表面に沿ってトレースするように成形され、凹部内部のコーナー部の形状もよりシャープな形状で成形することができる。それゆえ、この例の成形方法を用いることにより、容器2の凹部表面全体に渡って水蒸気バリアフィルム7をより均一の厚さで設けることができるので、凹部の表面全体に渡ってより均一なガスバリア性能を有するマイクロチップが得られる。
【0055】
また、上述の成形方法を用いることにより、水蒸気バリアフィルムを容器の凹部表面に沿って過度に延伸することなく一体化させることができる。従って、より微細で複雑な凹部を有するマイクロチップの容器に対しても、水蒸気バリアフィルムを破断させることなくより均一な厚さで凹部表面に設けることができる。さらに、上述の成形方法では、水蒸気バリアフィルムを容器の凹部表面に密着させる際、水蒸気バリアフィルムと容器との間を真空吸引するので、水蒸気バリアフィルムと容器との間に気泡が発生し難く、高品質の水蒸気バリアフィルムを有するマイクロチップを作製することができる。
【0056】
次に、上述のような製造方法で作製したマイクロチップにメタノールを封入し、マイクロチップのバリア性能を測定した。なお、メタノールの封入方法は次の通りである。まず、容器2の凹部3(セル4及び5)にメタノール溶液を約200μl注入した。次いで、蓋1(水蒸気バリアフィルム)を容器2の凹部3上から接着し、メタノール溶液をマイクロチップ内に密封した。この際、容器2と蓋1とは超音波融着法を用いて融着した。
【0057】
上述のような方法で作製したメタノール封入マイクロチップに対して、温度40℃、湿度80%の恒温槽に30日間保管して、水蒸気バリア性能を測定したところ、水溶液の重量変化は0.25%となり、マイクロチップに封入したメタノール溶液がほとんど蒸発せず、長期保存可能であることが分かった。
【実施例2】
【0058】
実施例2では、図1に示したマイクロチップの容器2の凹部3表面に、実施例1で用いた水蒸気バリアフィルムを3層重ね合わせて設けた。また、蓋1も同様に水蒸気バリアフィルムを3層重ね合わせて作製した。実施例1で用いた水蒸気バリアフィルムを3枚重ね合わせたこと以外は、実施例1と同様の装置及び方法でマイクロチップを作製した。また、マイクロチップの構造及びサイズも実施例1と同様にした。ただし、この例では、水蒸気バリアフィルムの総厚は128μmとなるので、製造時に用いる成形機のプレス金型表面の凸部の幅を実施例1で用いたプレス金型の凸部より0.2mm狭くした。
【0059】
この例で作製したマイクロチップに対しても実施例1と同様の方法で水蒸気バリア性能を評価した。なお、この例では、マイクロチップの基材の凹部に10μlのメタノールを封入した。その結果、水溶液の重量変化は0.83%であった。この例で作製したマイクロチップにおいても、マイクロチップに封入したメタノール溶液がほとんど蒸発せず長期保存可能であることが分かった。
【実施例3】
【0060】
実施例3で作製したマイクロチップの概略構成図を図3に示した。この例のマイクロチップは、図3(a)に示すように、試薬や洗浄液等の溶液を封入するための保存容器35(第1容器)と、保存容器35に封入された溶液に対して反応、精製、抽出、合成、分析、攪拌等の操作を行うための操作容器31(第2容器)とから構成される。この例のマイクロチップでは、保存容器35の外形を幅60mm、長さ20mm及び厚さ1.0mmとし、操作容器31の外形を幅60mm、長さ15mm及び厚さ1.0mmとした。
【0061】
保存容器35は、図3(a)に示すように、蓋36とプラスチック製の容器37とから構成される。また、容器37には2つのセル38及び39(凹部)が形成されており、セル38及び39のサイズは共に底面積450mm(18mm×25mm)、深さ0.5mmとした。また、この保存容器35では、2つのセル38及び39を蓋36で閉じることにより、図3(a)に示すように、溶液40及び41をそれぞれセル38及び39に密閉する。保存容器35のセル38及び39の表面には、水蒸気バリアフィルム(不図示)が設けられており、蓋36もまたセル38及び39の表面に設けた水蒸気バリアフィルムと同じ材料のフィルムで形成した。なお、この例の水蒸気バリアフィルムには実施例1で用いた水蒸気バリアフィルムと同じ材料のフィルムを用い、保存容器35は実施例1と同様の方法で作製した。
【0062】
操作容器31は、ポリカーボネート製であり、図3(a)に示すように、操作容器31の内部には1つのセル32が形成されている。また、操作容器31の両側面近傍の下面には、図3(a)に示すように、2つのニードル33及び34(移動装置)が取り付けられている。ニードル33及び34の内径φは0.2mmであり、ニードル33及び34内の孔は操作容器31内のセル32と通じている。この2つのニードル33及び34は、図3(b)に示すように、保存容器35と操作容器31とを合体させた際に、ニードル33及び34がそれぞれ保存容器35内のセル38及び39内に突き刺さるような位置に取り付けられている。
【0063】
この例で作製したマイクロチップでは、図3(b)に示すように、操作容器31の下面に取り付けられた2つのニードル33及び34を、保存容器35の蓋36上から突き刺すことにより、保存容器35と操作容器31とを合体させる。この際、図3(b)に示すように、ニードル33及び34がそれぞれ保存容器35のセル38及び39内に突き刺さり、保存容器35のセル38及び39内に収容されている溶液40及び41が、毛細管現象により、それぞれニードル33及び34を介して操作容器31のセル32内に移動する。そして、操作容器31のセル32内で溶液40及び41が混ざり合い、所望の操作(反応、精製、抽出、合成、分析、攪拌等)が行われる。それゆえ、この例で作製したマイクロチップでは、保存容器35内の溶液を円滑に操作容器31内に移動させて、溶液に対して所望の操作を容易に行うことができる。
【0064】
上記実施例では、マイクロチップの基材の凹部の開口部側の表面全体に渡って水蒸気バリアフィルムを設けた例を説明したが、本発明はこれに限定されない。水蒸気バリアフィルムは少なくとも基材の凹部の表面に形成されていれば良く、そのような構造のマイクロチップにおいても上記実施例と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のマイクロチップによれば、蓋で基材の凹部を密閉した際に凹部の開口部を覆う蓋の表面部分と、凹部の表面とに、無機材料を含む水蒸気バリアフィルムが設けられているので、マイクロチップ内に微量の溶液を長期間保存することができる。また、例えば、実施例3で作製したようなマイクロチップでは、微細で複雑な内部形状を有し様々な操作を行う容器と比較的単純な構造を有する溶液保存用の容器とを分けて製造することができるので、容器の形状及び作製が簡便になり製品の信頼性が向上する。
【0066】
本発明のマイクロチップの製造方法によれば、真空圧空成形法によりマイクロチップの基材の凹部表面に水蒸気バリアフィルムを設けるので、基材の凹部表面全体に渡って水蒸気バリアフィルムをより均一の厚さで設けることができ、凹部の表面全体に渡ってより均一なガスバリア性能を有するマイクロチップを作製することができる。また、本発明のマイクロチップの製造方法によれば、真空圧空成形法によりマイクロチップの基材の凹部表面に水蒸気バリアフィルムを設けるので、安価なマイクロチップを作製することができる。
【0067】
以上のことから、本発明のマイクロチップ及びその製造方法は、μ−TAS用のマイクロチップ及びその製造方法として好適である。特に、本発明のマイクロチップ及びその製造方法は核酸抽出用のマイクロチップ及びその製造方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、実施例1で作製したマイクロチップの概略構成図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、実施例1のマイクロチップの容器の凹部表面に水蒸気バリアフィルムを成形する方法の手順を示した図である。
【図3】図3は、実施例3で作製したマイクロチップの概略断面図であり、図3(a)は、マイクロチップの構成部品の概略構成図であり、図3(b)は、マイクロチップの各構成部品を合体させた際の概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1,36 蓋
2,37 プラスチック製容器(基材)
3 凹部
4,5,32,38,39 セル
6 流路
7 水蒸気バリアフィルム
10 マイクロチップ
21 固定金型
23 プレス金型
27 凸部
31 操作容器
33 ニードル
35 保存容器
40,41 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であるマイクロチップにおいて、
該蓋の該凹部と対向する表面部分と、該凹部の表面とに、水蒸気バリアフィルムが設けられていることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項2】
凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であり、該凹部の表面に水蒸気バリアフィルムが設けられているマイクロチップの製造方法であって、
第1金型及び第2金型で画成される空間を所定の温度に加熱することと、
該基材を第1金型に取り付けることと、
該水蒸気バリアフィルムを第2金型の第1金型側の表面に取り付けることと、
第1及び第2金型を閉じて該水蒸気バリアフィルムを該基材と第2金型との間で挟み込むことと、
該基材と該水蒸気バリアフィルムとの間の空間を減圧することと、
第2金型と該水蒸気バリアフィルムとの間に空気を供給して該水蒸気バリアフィルムを該基材の凹部表面に密着させることと、
該水蒸気バリアフィルム及び該基材を冷却して該水蒸気バリアフィルムを該基材の凹部表面に接着することとを含むマイクロチップの製造方法。
【請求項3】
第2金型の第1金型側表面に上記基材の凹部の形状とは反転した形状の凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のマイクロチップの製造方法により作製されたマイクロチップ。
【請求項5】
凹部を有するプラスチック製の基材と、該凹部を密閉するように該基材に取り付けられる蓋とを備え、該凹部の容積が1ml以下であり、該蓋の該凹部と対向する表面部分と、該凹部の表面とに、水蒸気バリアフィルムが設けられている第1容器と、
第2容器と、
第1容器の凹部に収容する溶液を第1容器から第2容器に移動させるための移動装置とを備えたマイクロチップ。
【請求項6】
上記凹部が複数のセルから構成されることを特徴とする請求項1、4及び5のいずれか一項に記載のマイクロチップ。
【請求項7】
所定の上記セルがシール部材により他のセル及び/又は外部から遮断されていることを特徴とする請求項6に記載のマイクロチップ。
【請求項8】
上記シール部材が上記所定のセルから取り外し可能であることを特徴とする請求項7に記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3145(P2006−3145A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177978(P2004−177978)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】