説明

マイクロチップ

【課題】
試薬の変質等により検量線が変わってくるため検査対象となる物質の正確な値を反映していないという問題があった。そのため一定期間ごとに検量線を作成しなおす必要があった。 本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって同一チップで同時に検体の測定と標準物質を測定できるので標準物質に基づく検量線の作成が行えるマイクロチップを提供することである。
【解決手段】
検体導入部と標準物質が導入される標準物質保持部と、所定の用量の検体を秤量する検体秤量部と、標準物質を秤量する用量がそれぞれ異なる2以上の標準物質秤量部と、所定の用量の試薬が充填される検体試薬保持部および標準物質試薬保持部と、試薬と検体を混合する検体混合部と、試薬と標準物質を混合する2以上の標準物質混合部と検体検出孔と、2以上の標準物質検出孔とを有するマイクロチップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに好適に使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に示されるようマイクロチップはその内部に流体回路を有しており、該流体回路は、たとえば、検査・分析の対象となるサンプル(血液等)を処理するための、あるいは該サンプルと反応させるための液体試薬を保持する液体試薬保持部、サンプル(あるいはサンプル中の特定成分)や液体試薬を計量する計量部、サンプル(あるいはサンプル中の特定成分)と液体試薬とを混合する混合部、混合液について分析および/または検査するための検出部などの各部と、これら各部を適切に接続する微細な流路(たとえば、数百μm程度の幅)とから主に構成される。
【0004】
このような流体回路を有するマイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、数cm角で厚さ数mm程度のチップ内で行なえることから、サンプルおよび試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、サンプルを採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
【特許文献1】特開2007−33225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、測定する物質と同じか共通の性質を有する物質、または、反応に共通性のある物質(同じ生物作用を引き起こす薬物など)を濃度等が既知である標準物質とし、複数用量(重量もしくは体積を含む)又は濃度を用いた測定に基づき検量線をあらかじめ作成し検査対象となる物質の濃度や活性を算出していた。しかしながら、試薬の変質、ロットの違い、日差等により検量線が変わってくるため検査対象となる物質の正確な値を反映していないという問題があった。そのため一定期間ごとに検量線を作成しなおすか、あるいは、測定機器の校正(キャリブレーション)を行う必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検体が導入される検体導入部と、検体導入部に接続され所定の用量の検体を秤量する検体秤量部と、所定の用量の試薬が充填される検体試薬保持部と、検体試薬保持部および検体秤量部に接続され試薬と検体を混合する検体混合部と、検体混合部に接続される検体検出孔と、所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、標準物質保持部に接続され標準物質を秤量する用量がそれぞれ異なる2以上の標準物質秤量部と、所定の用量の試薬が充填される2以上の標準物質試薬保持部と、標準物質試薬保持部に対応し、および各標準物質秤量部に対応して接続され試薬と標準物質とを混合する2以上の標準物質混合部と、各標準物質混合部に対応して接続される2以上の標準物質検出孔と、を有するマイクロチップである。
【0007】
さらに本発明のマイクロチップは、検体秤量部および標準物質秤量部と、検体混合部および標準物質混合部と、検体検出孔および標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする。
【0008】
さらに本発明のマイクロチップは、検体秤量部で秤量される用量が、2以上の標準物質秤量部で秤量される最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、検体が導入される検体導入部と、検体導入部に接続され前記検体を秤量する検体秤量部と、試薬が充填される検体試薬保持部と、検体試薬保持部および検体秤量部に接続され試薬と前記検体を混合する検体混合部と、検体混合部に接続される検体検出孔と、
所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、標準物質保持部に接続される標準物質を秤量する用量がそれぞれ同一の2以上の標準物質秤量部と、試薬の用量がそれぞれ異なるよう充填される2以上の標準物質試薬保持部と、各標準物質試薬保持部に対応し、および各標準物質秤量部に対応して接続され試薬と標準物質を混合する2以上の標準物質混合部と、各標準物質混合部に対応して接続される2以上の標準物質検出孔
とを有するマイクロチップである。
【0010】
さらに本発明のマイクロチップは、検体秤量部および標準物質秤量部と、検体混合部および標準物質混合部と、検体検出孔および標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明のマイクロチップは、検体試薬保持部の用量が試薬の用量が、それぞれ異なるよう充填されている2以上の前記標準物質試薬保持部の最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、検体が導入される検体導入部と、検体導入部に接続され検体を秤量する検体秤量部と、試薬が充填される検体試薬保持部と、検体試薬保持部に接続され試薬を秤量する検体試薬秤量部と、検体試薬秤量部および検体秤量部に接続され前記試薬と検体を混合する検体混合部と、前記検体混合部に接続される検体検出孔と、所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、標準物質保持部に接続される標準物質を秤量する用量がそれぞれ同一の2以上の標準物質秤量部と、試薬が充填される2以上の標準物質試薬保持部と、標準物質試薬保持部に対応し、接続され試薬を秤量する用量がそれぞれ異なる2以上の標準物質試薬秤量部と、各標準物質試薬秤量部に対応し、および各標準物質秤量部に対応して接続され試薬と標準物質とを混合する2以上の標準物質混合部と、標準物質混合部に対応し接続される2以上の標準物質検出孔と、を有するマイクロチップである。
【0013】
さらに本発明のマイクロチップは、検体秤量部および前記標準物質秤量部と、検体試薬秤量部および標準物質試薬秤量部と、検体混合部および標準物質混合部と、検体検出孔および標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明のマイクロチップは、検体試薬秤量部で秤量される用量が、2以上の標準物質試薬秤量部で秤量される最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする。
【0015】
本明細書において、「部材Aと部材Bが接続される」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、マイクロ流路や各機能ブロックを介して間接的に接続される場合も含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロチップによれば同一チップで同時に検体の測定と標準物質を測定できるので標準物質に基づく検量線の作成が行える。したがって試薬の変質、ロット間差、日差等検量線の変動要因を除くことができ、検査対象となる物質の正確な値を求めることができる。そのため一定期間ごとに検量線を取り直すことや、測定機器の校正を行う手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1の実施形態)
本発明のマイクロチップのような内部に流体回路を有するマイクロチップにおいては、流体回路内での、検体および液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、ならびに検体、液体試薬および混合液の各部位への移動などの一連の操作は、マイクロチップに対して適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、たとえば、マイクロチップを載置するためのマイクロチップ搭載部を有する遠心装置を用いて行なわれる。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るマイクロチップ100の平面図である。マイクロチップにおける流体回路の最上流部には、開口部として検体導入部1が測定対象である未知の濃度の検体(例えば人体より採血した全血等)をマイクロチップ流体回路内に導入するために設けられている。検体を当該流体回路に導入後遠心力が印加されても検体が漏れ出ないよう開口部である検体導入部をシールにて封止する。
【0019】
また、検体導入部1は、直接検体を導入するだけでなく検体が入っている筒状中空のキャピラリを収容できるようになっていてもよい。この場合キャピラリを開口部に収容するとともにキャピラリの先端は流体回路内に挿入されることによって検体が漏れ出ないようになっている。なお、キャピラリの内壁には空気中に当該キャピラリを放置しても血液が凝固しないよう血液抗凝固剤が塗布されている。
【0020】
次に検体導入部1からマイクロ流体回路に導入された検体は遠心力を印加されることによって検体導入部1に接続された血漿血球分離部に送液される。検体が血液である場合、更に所定の方向に遠心力を印加し比重の差により血液の成分である血球と血漿に分離される。なお、検体がすでに分離されておりこのように分離作業の必要が無ければ当該機能ブロックを省略してもよい。
【0021】
次に所定の方向の遠心力を印加することにより検体は、検体導入部1もしくは血漿血球分離部から検体秤量部2に送液される。検体秤量部2は所定の用量になるように設計されており、測定者はその用量を知ることができる。送液された検体は所定の方向の遠心力が印加され検体秤量部2からあふれ出す、遠心力の印加が終了すると検体秤量部2に所定の用量の検体が残り秤量される。
【0022】
本マイクロ流体回路には検体および標準物質と所定の反応をする試薬が充填される検体試薬保持部3が構成されている。例えば試薬には酵素液、発色液、ラテックス試薬あるいは抗原・抗体反応液が用いられている。所定の反応とは、検体と試薬の反応と標準物質と試薬の反応が同一の反応であることが好ましい。検体試薬保持部3には所定の量の試薬が充填されるようになっている。これまでの遠心力の印加によって試薬が当該検体試薬保持部3から流出しないように設計されている。反応させる試薬の種類が複数の場合当該検体該試薬保持部Cもそれに併せて増やせばよい。
【0023】
次に所定の方向に遠心力を印加することにより検体秤量部2で秤量された検体と検体試薬保持部3で保持されていた試薬は検体混合部4へ送液される。そして遠心力の印加する方向を変更し検体と上記所定量の試薬とを混合する。検体と試薬とを混合することにより測定対象となる未知の濃度の混合液を作製する。なお、複数種の試薬と混合する場合は当該混合部Dを複数箇所設けても良い。
【0024】
次に検体混合部4で混合された検体を含む混合液を所定の方向の遠心力を印加することで検体検出孔5に送液する。そして当該検体検出孔に対して、例えばマイクロチップの下側(または上側)からマイクロチップ表面に対して略垂直方向の検出光を照射し透過率、反射率等を測定することにより、当該検体検出孔内に収容された検査・分析対象である検体を含む混合液の検査・分析(例えば、当該混合液中の特定成分の検出)が行われる。
【0025】
一方開口部として標準物質保持部6a、6b、6cが測定対象である既知の濃度の標準物質をマイクロチップ流体回路内に導入するために複数個設けられている。標準物質としては例えば、常用参照標準物質であるJSCC常用酵素、IFCC血漿タンパク国際標準物質、もしくは校正溶液が用いられる。既知の濃度の標準物質を当該流体回路に導入後遠心力が印加されても検体が漏れ出ないよう開口部である検体導入部をシールにて封止する。もしくは検体導入部1と同様にキャピラリを収容するタイプでもよい。ここでは導入される標準物質の濃度が同一であるとする。また後述する標準物質秤量部7a、7b、7cで同用量に分けることが可能であれば標準物質保持部6a、6b、6cは単数であっても良い。
【0026】
次に標準物質保持部6a、6b、6cからマイクロ流体回路に導入された標準物質は遠心力を印加されることによって検体と同様、標準物質保持部6a、6b、6cに接続された血漿血球分離部に送液される。標準物質自体は分離しないが当該血漿血球分離部を設けることによって検体と同様の操作が補償されより確かな測定結果を得ることが可能となる。なお、検体がすでに分離されておりこのように分離作業の必要が無ければ当該機能ブロックを省略してもよい。
【0027】
次に所定の方向の遠心力を印加することにより検体は、標準物質保持部6a、6b、6cもしくは血漿血球分離部から標準物質秤量部7a、7b、7cに送液される。標準物質秤量部7a、7b、7cは所定の用量になるように設計されており、測定者はその用量を知ることができる。送液された検体は所定の方向の遠心力が印加され標準物質秤量部7a、7b、7cからあふれ出させることにより秤量部に所定の用量を残存させる。標準物質秤量部7a、7b、7cと検体秤量部2と異なるのは、秤量する用量がそれぞれ異なるように複数設けられていることである。例えば図1に示すよう平面上の面積を変えることにより用量を変える場合もあるが図2に示すよう深さ方向を変えることによって用量を変えてもよい。深さ方向に変更することにより標準物質秤量部7a、7b、7cの面積を小さくすることも可能でありチップの小型化を図れる。既知の濃度とそれから得られた吸光度等の結果を複数プロットすることで検量線を作成することができる。ここで標準物質秤量部7a、7b、7cと検体秤量部2の用量を検体秤量部で秤量される用量が2以上の標準物質秤量部7a、7b、7cで秤量される用量の間に設定されているとよい、さらに検体秤量部と標準物質秤量部で秤量される用量が同一に成るようにするとよい。用量の範囲が目的となる検体で想定される用量の範囲になる確率が高くなるのでより確実な測定が可能となる。
【0028】
本マイクロ流体回路には標準物質秤量部7a、7b、7cと後述する標準物質混合部9a、9b、9cに接続するよう標準物質試薬保持部8a、8b、8cが構成されており、検体試薬保持部3と同様に標準物質試薬保持部8a、8b、8cには所定の量の検体測定に用いた試薬と同様の試薬が充填されるようになっている。なお、検体試薬保持部3および標準物質試薬保持部8a、8b、8cには既知の濃度で同濃度の試薬が同用量充填されている。さらに1つの試薬保持部から同用量に分けられるよう検体混合部4および標準物質混合部9a、9b、9cにそれぞれ接続する試薬を秤量できる検体試薬秤量部と標準物質試薬秤量部を設けてもかまわない。
【0029】
次に所定の方向に遠心力を印加することにより各標準物質秤量部7a、7b、7cで秤量された既知の濃度の標準物質と標準物質試薬保持部8a、8b、8cで保持されていた試薬は標準物質混合部9a、9b、9cへ送液される。そして遠心力の印加する方向を変更し標準物質と上記所定量の試薬とを混合する。標準物質と所定の用量の試薬とを混合することにより測定対象となる複数の既知の濃度の混合液を作製する。
【0030】
次に標準物質混合部9a、9b、9cで混合された標準物質を含む混合液を所定の方向の遠心力を印加することで標準物質検出孔10a、10b、10cに送液する。そして当該標準物質検出孔10a、10b、10cは検体検出孔5と同様光を照射し透過率、反射率等を測定することにより、当該検体検出孔内に収容された検査・分析対象である標準物質を含む混合液の検査・分析が行われる。
【0031】
あらかじめ濃度や活性がわかっている標準物質に基づく複数の標準物質検出孔の吸光度等の複数の組の結果から図3に示すような検量線を作成し、その検量線をもとに検体検出孔の結果から検体の濃度もしくは活性を求める。
【0032】
同一基板上に同一機能を有する検体秤量部と標準物質秤量部を、検体試薬秤量部と標準物質試薬秤量部、検体混合部と標準物質混合部を、検体検出孔と標準物質検出孔を所定の位置を中心とした同心円周上に配置する。ここで同心円周上とは同一の半径の円周上に配置されていることに限らず、同一の中心(遠心力の中心)円周上であれば異なる半径であっても同一の効果を奏する。
【0033】
本チップは、上記の様に検体処理を行う検体導入部1、検体秤量部2、検体試薬保持部3、検体混合部4、検体検出孔5で構成される検体ユニット部分101と、標準物質の処理を行う標準物質保持部6a、6b、6c、標準物質秤量部7a、7b、7c、標準物質試薬保持部8a、8b、8c、標準物質混合部9a、9b、9c、標準物質検出孔10a、10b、10cで構成される標準物質ユニット102a、102b、102cから成り、溶液は、それぞれのユニット内で同じ処理操作で送液されるので、1回の操作で検体の処理と標準物質の処理ができ、同一チップで同時に検体の測定と標準物質の測定に基づく検量線の作成が行える。検査対象となる物質の正確な値を求めることができる。ここで標準物質ユニットは単一でなく2以上であるほうが望ましい。単一の用量では対照実験にはなるが正確な濃度の定量には役立たない。
【0034】
なお、各標準物質ユニット102a、102b、102cはそれぞれ図1に示すようにそれぞれ対応する標準物質保持部6aと標準物質秤量部7aとが対応するように接続され、標準物質混合部9aには標準物質秤量部7aと標準物質試薬保持部8aとが対応するように接続され、標準物質混合部9aと標準物質検出孔10aとがそれぞれ対応するように接続されている。同様に標準物質保持部6bと標準物質秤量部7bとが対応するように接続され、標準物質混合部9bには標準物質秤量部7bと標準物質試薬保持部8bとが対応するように接続され、標準物質混合部9bと標準物質検出孔10bとがそれぞれ対応するように接続されている。また、標準物質保持部6cと標準物質秤量部7cとが対応するように接続され、標準物質混合部9cには標準物質秤量部7cと標準物質試薬保持部8cとが対応するように接続され、標準物質混合部9cと標準物質検出孔10cとが対応するように接続されている。前述のように各標準物質ユニットは2以上の整数N個設けられればよく各ユニットは標準物質保持部6nと標準物質秤量部7nとが対応するように接続され、標準物質混合部9nには標準物質秤量部7nと標準物質試薬保持部8nとが対応するように接続され、標準物質混合部9nと標準物質検出孔10nとが対応するように接続されている。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係るマイクロチップ200の平面図である。第1の実施形態のマイクロチップ100と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号番号を付して示している。本実施形態のマイクロチップ200では、検体試薬保持部21と、標準物質秤量部22a、22b、22cおよび標準物質試薬保持部23a、23b、23cが設けられている。検体試薬保持部21は、検体試薬保持部3と同様に所定の量の試薬が充填されるようになっており検体秤量部2及び検体混合部4のみに接続している。標準物質秤量部22a、22b、22cは第1の実施形態で示した標準物質秤量部7a、7b、7cと異なり標準物質秤量部22a、22b、22cで秤量される標準物質の用量が全て同じになるよう設計されている。標準物質試薬保持部23a、23b、23cは標準物質秤量部22a、22b、22cおよび標準物質混合部9a、9b、9cに接続されている。標準物質試薬保持部23a、23b、23cは複数個設けられており、それぞれの保持部に異なる用量の試薬が充填されようになっている。この場合保持部の大きさをそれぞれあらかじめ変更しておいても良い、例えば平面上の面積を変えても良いし図2で代用するように深さ方向に変更することも可能でありチップの小型化を図れる。また保持部のサイズが同じでも充填される試薬の用量をそれぞれ変更するものでもよい。秤量される標準物質の用量が標準物質秤量部22a、22b、22cでは同一であることから溶質である標準物質の用量が一定になる。一方標準物質が溶け込む溶媒である試薬の用量を標準物質試薬保持部23a、23b、23cで変更する。したがってそれぞれの標準物質の濃度が変更される。標準物質秤量部22a、22b、22cで秤量される標準物質の用量および標準物質試薬保持部23a、23b、23cの試薬の用量は既知なので測定を行えばそれに基づいた検量線を算出することができる。
【0036】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態に係るマイクロチップ300の平面図である。第2の実施形態のマイクロチップ200と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号番号を付して示している。本実施形態のマイクロチップ300では、検体試薬秤量部31と、標準物質試薬秤量部32a、32b、32cが設けられている。検体試薬秤量部31は、検体試薬保持部21と検体混合部4とに接続され検体試薬保持部21に充填される試薬の用量を秤量できる様になっている。一方標準物質試薬秤量部32a、32b、32cは、複数個設けられており、それぞれの標準物質試薬保持部23a、23b、23cと標準物質混合部9a、9b、9cとに接続され、標準物質試薬保持部23a、23b、23cに充填される試薬の用量を秤量できるようになっており、それぞれ秤量する用量を異なるものとしている。例えば図5で示すよう平面上で面積を変えても良いが、図2で代用するように深さ方向で変更することも可能でありチップの小型化を図れる。したがってそれぞれの標準物質の濃度が変更される。標準物質秤量部22a、22b、22cで秤量される標準物質の用量および標準物質試薬保持部23a、23b、23cの試薬の用量は既知なので測定を行えばそれに基づいた検量線を算出することができる。
【0037】
検体試薬秤量部31で秤量される用量が2以上の標準物質を溶かし込むための試薬の用量の間に設定されているとよい。さらに検体試薬秤量部31と各試薬部で設定される用量が同一に成るようにするとよい。用量の範囲が目的となる検体で想定される用量の範囲になる確率が高くなるのでより確実な測定が可能となる。
【0038】
第2の実施形態および第3の実施形態は、第1の実施形態とは異なり溶質である標準物質の用量を変更するのではなく、標準物質を溶け込ませる試薬の用量を変化させた場合である。これらの実施例は第1の実施形態と比してチップ作製時の秤量部の容積ばらつきや、遠心力印加時の秤量ばらつきなどの秤量時の誤差が小さくなりより正確な検量線を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るマイクロチップの一例を示す図である。
【図2】本発明に係るマイクロチップの一部の断面図である。
【図3】本発明に係るマイクロチップにて得られた結果に基づく検量線のグラフである。
【図4】本発明に係るマイクロチップの第2の実施形態を示す図である。
【図5】本発明に係るマイクロチップの第3の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
100,200,300 マイクロチップ、101 検体ユニット部分、1 検体導入部、2 検体秤量部、3 検体試薬保持部、4 検体混合部、5 検体検出孔、102a,102b,102c 標準物質ユニット、6a,6b,6c 標準物質保持部、7a,7b,7c 標準物質秤量部、8a,8b,8c 標準物質試薬保持部、9a,9b,9c 標準物質混合部、10a,10b,10c 標準物質検出孔、21 検体試薬保持部、22a,22b,22c 標準物質秤量部、23a,23b,23c 標準物質試薬保持部、31 検体試薬秤量部、32a,32b,32c 標準物質試薬秤量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が導入される検体導入部と、
前記検体導入部に接続され所定の用量の前記検体を秤量する検体秤量部と、
所定の用量の試薬が充填される検体試薬保持部と、
前記検体試薬保持部および前記検体秤量部に接続され前記試薬と前記検体を混合する検体混合部と、
前記検体混合部に接続される検体検出孔と、
所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、
前記標準物質保持部に接続され前記標準物質を秤量する用量がそれぞれ異なる2以上の標準物質秤量部と、
所定の用量の試薬が充填される2以上の標準物質試薬保持部と、
前記標準物質試薬保持部に対応し、および前記各標準物質秤量部に対応して接続され前記試薬と前記標準物質とを混合する2以上の標準物質混合部と、
前記各標準物質混合部に対応して接続される2以上の標準物質検出孔と、
を有するマイクロチップ。
【請求項2】
前記検体秤量部および前記標準物質秤量部と、前記検体混合部および前記標準物質混合部と、前記検体検出孔および前記標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記検体秤量部で秤量される用量が、2以上の前記標準物質秤量部で秤量される最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする請求項1もしくは請求項2のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項4】
検体が導入される検体導入部と、
前記検体導入部に接続され前記検体を秤量する検体秤量部と、
試薬が充填される検体試薬保持部と、
前記検体試薬保持部および前記検体秤量部に接続され前記試薬と前記検体を混合する検体混合部と、
前記検体混合部に接続される検体検出孔と、
所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、
前記標準物質保持部に接続される前記標準物質を秤量する用量がそれぞれ同一の2以上の標準物質秤量部と、
試薬の用量がそれぞれ異なるよう充填される2以上の標準物質試薬保持部と、
前記各標準物質試薬保持部に対応し、および前記各標準物質秤量部に対応して接続され前記試薬と前記標準物質を混合する2以上の標準物質混合部と、
前記各標準物質混合部に対応して接続される2以上の標準物質検出孔
とを有するマイクロチップ。
【請求項5】
前記検体秤量部および前記標準物質秤量部と、前記検体混合部および前記標準物質混合部と、前記検体検出孔および前記標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする請求項4に記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記検体試薬保持部の用量が、試薬の用量がそれぞれ異なるよう充填されている2以上の前記標準物質試薬保持部の最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする請求項4もしくは請求項5のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項7】
検体が導入される検体導入部と、
前記検体導入部に接続され前記検体を秤量する検体秤量部と、
試薬が充填される検体試薬保持部と、
前記検体試薬保持部に接続され前記試薬を秤量する検体試薬秤量部と、
前記検体試薬秤量部および前記検体秤量部に接続され前記試薬と前記検体を混合する検体混合部と、
前記検体混合部に接続される検体検出孔と、
所定の濃度の標準物質が導入される標準物質保持部と、
前記標準物質保持部に接続される前記標準物質を秤量する用量がそれぞれ同一の2以上の標準物質秤量部と、
試薬が充填される2以上の標準物質試薬保持部と、
前記標準物質試薬保持部に対応し、接続され前記試薬を秤量する用量がそれぞれ異なる2以上の標準物質試薬秤量部と、
前記各標準物質試薬秤量部に対応し、および前記各標準物質秤量部に対応して接続され前記試薬と前記標準物質とを混合する2以上の標準物質混合部と、
前記標準物質混合部に対応し接続される2以上の標準物質検出孔と、
を有するマイクロチップ。
【請求項8】
前記検体秤量部および前記標準物質秤量部と、前記検体試薬秤量部および前記標準物質試薬秤量部と、前記検体混合部および前記標準物質混合部と、前記検体検出孔および前記標準物質検出孔と、を同一基板上で所定の位置を中心とした同心円周上に配置したことを特徴とする請求項7に記載のマイクロチップ。
【請求項9】
前記検体試薬秤量部で秤量される用量が、2以上の前記標準物質試薬秤量部で秤量される最大用量と最小用量の間に設定されていることを特徴とする請求項7もしくは請求項8のいずれかに記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−91362(P2010−91362A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260461(P2008−260461)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】