説明

マイクロバブル又はマイクロナノバブルを用いた空調システム

【課題】コイルフィン部の濡れ性能の低下を防止し、さらに滴下水を貯留する水槽内のヌルや藻の発生を抑制する空調システムを提供する。
【解決手段】冷却コイル部4の上方から純水が滴下するように構成され、その滴下水を貯留する循環水槽7が冷却コイル部4の下部に配設されている。そして、この循環水槽7中には、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器8が設けられ、循環水槽7内の水分中にこのようなナノバブルを発生させることができる。そのため、循環水槽7内のヌルや藻などの発生を抑制し、冷却コイルのコイルフィン部にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有する水が滴下された場合には、コイルフィン部に付着した汚染物質が除去され、濡れ性能の低下を防ぐことができ、所定の熱交換効率を発揮することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子状汚染物質の除去及び省エネルギーを目的に、気化式加湿モジュールや純水(循環水を含む)を滴下しフィン表面を水膜化した熱交換コイルを配置した空調システムにおいて、循環水槽内でマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させ、系内に発生するヌルや藻の発生を抑制し、除去率低下や加湿効率低下の抑制を図ることできる空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超微細化が進む半導体デバイス等の製造工程やバイオロジカルクリーンルームなどにおいては、空気中に含まれる分子状汚染物質(AMC:Airborne Molecular Contaminants)を除去や、温度・湿度等の室内環境を一定に保つ必要があるため、適宜、温湿度調整を行うことが可能な空調システムが利用されている。
【0003】
例えば、温湿度調整の可能な空調システムとしては、特許文献1に記載されたものが知られており、加熱コイルと冷却コイルが配設され、この冷却コイルの上流側と下流側に接触して配設された気化式加湿器を有する構成をしている。さらに、この冷却コイルと気化式加湿器の下部には循環水槽が設置され、気化式加湿器からの滴下水が冷却コイルの上方に循環供給されるよう構成されている。
【特許文献1】特開2005−249367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような空調システムにおいては、対象となる空気中に分子状汚染物質が含まれている場合に、コイルフィン部に汚染物質が付着し、濡れ性能が低下してしまうことにより、所定のAMC除去率や加湿効率を発揮することが困難な状況にあった。また、上記の例で言えば、熱交換コイルである冷却コイルや気化式加湿器に滴下した滴下水を貯留し循環させる循環水槽には、ヌルや藻などが発生していしまい、散水ノズルの詰まりによる滴下水量の低下で濡れ性能がさらに悪化したり、空気側の圧損も上昇することなどが問題となっていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであり、その目的は、気化式モジュールや純水(循環水を含む)を滴下しフィン表面を水膜化した熱交換コイル部の濡れ性能の低下を防止し、さらに滴下水を貯留する水槽内の藻などの発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、温湿度調整に用いる水を循環させる循環系を有する空調システムであって、前記循環系は、循環させる水を貯留する循環水槽を備え、前記循環水槽には、貯留した水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器が配設されたことを特徴とする。
【0007】
以上のような態様では、循環水槽に貯留した水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させることができるので、当該バブルに汚染物質を吸着させることにより循環水槽内を浄化することができ、ヌルや藻などの発生を抑制することが可能となる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の空調システムにおいて、空気温度調整用のコイルと、空気湿度調整用の気化式加湿器の少なくとも一方を備え、前記循環水槽は、前記空気温度調整用のコイル及び/又は空気湿度調整用の気化式加湿器の下部に設置され、前記空気温度調整用のコイル及び/又は前記空気湿度調整用の気化式加湿器には、前記循環系により水が上部から滴下供給され、前記循環水槽が、前記空気温度調整用のコイル及び/又は空気湿度調整用の気化式加湿器から滴下した水を一時的に貯留することを特徴とする。
【0009】
以上のような態様では、循環水槽を熱交換コイルや気化式加湿器の下部に設置し、水をこれらに循環供給しているので、コイルフィン部に付着する汚染物質をマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有する滴下水により除去することができるため、コイルの濡れ性能の低下を防ぐことができ、熱交換効率が向上する。また、このようなバブルを発生させることにより、循環系を流れる水の流量が増加し、流路内の圧損を防止することも可能となる。
【0010】
請求項3に係る発明では、温湿度調整に用いる水を循環させる循環系を有する空調システムであって、前記循環系は、循環させる水を貯留する循環水槽と、前記循環水槽に循環水を供給するための貯留タンクを備え、前記貯留タンク内に貯留水中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器が配設されたことを特徴とする。
【0011】
以上のような態様では、循環水槽の他に、循環水槽に循環水を供給する貯留タンクを設け、そのタンク内に微細気泡発生器を配設しているので、空調システム全体を停止せずとも微細気泡発生器のメンテナンスや交換を容易に行うことが可能となる。また、別途貯留タンクを設置しているので、既存の空調システムに後付として微細気泡発生器を備えた当該貯留タンクを取り付けることも容易に行うことができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2に記載の空調システムにおいて、前記循環系の前記循環水槽内には、オゾンを発生させるオゾン発生器が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の空調システムにおいて、前記循環系の前記貯留タンクには、貯留水中にオゾンを吹き込むオゾン発生器が設けられたことを特徴とする。
【0014】
以上のような態様では、微細気泡発生器により発生したマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有する水中にオゾンを発生させることができるので、当該バブルがオゾンの殺菌効果を飛躍的に向上させる。また、マイクロバブル又はマイクロナノバブルは、自己加圧効果を有するので、濃度の低いオゾンを供給するとしても作用時には高圧化された条件でオゾンが作用する。そのため、高圧化したオゾンと吸着する物質が作用するので、低いオゾン濃度でも汚染物質を分解することが可能となる。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調システムにおいて、前記微細気泡発生器にマイクロバブル又はマイクロナノバブルの発生源となる空気を供給するための空気供給ラインが接続され、前記空気供給ラインは、粒子除去フィルタ、カチオン除去フィルタ、アニオン除去フィルタ、有機物質除去フィルタのうち少なくとも一つを備えることを特徴とする。
【0016】
以上のような態様では、微細気泡発生器へ供給する空気の洗浄化を図ることができるので、外気を当該バブル発生器への供給源とすることで空気中に含まれる粒子や分子状の汚染物質が循環水槽内に供給されるといった問題を解消することができる。すなわち、汚染物質を含有するバブルが循環水槽内に供給されると、当該バブルが気化式加湿器へ滴下されるので、この気化式加湿器の下流に汚染物質が放出される危険性が高まる他、気中と液中間での濃度勾配が小さくなり、分子状汚染物質の除去率の低下を招く恐れがある。そのため、上記の態様により、微細気泡発生器へ供給する空気を粒子除去フィルタなどを用いて除去し当該空気を浄化することで、上記問題を解決の図っている。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の空調システムにおいて、前記空気供給ラインに供給する空気が、前記気化式加湿器を通過した空気であることを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項6に記載の空調システムにおいて、前記気化式加湿器の下流に汚染物質除去用のケミカルフィルタを備え、前記空気供給ラインに供給する空気は、前記ケミカルフィルタを通過した空気であることを特徴とする。
【0019】
以上のような態様では、空気供給ラインを流れ、微細気泡発生器へ供給する空気中の汚染物質が除去されているので、空気供給ラインに設置したカチオン除去フィルタ及びアニオン除去フィルタの寿命を延ばすことが可能となる。また空気供給ラインに供給される空気の純度が高い場合には、カチオン除去フィルタ及びアニオン除去フィルタの設置が不要となるため、イニシャルコストの低減を図ることができる。
【0020】
請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の空調システムにおいて、前記循環水槽又は前記循環水槽からのドレン配管にpH計及び導電率計を設置することを特徴とする。
【0021】
以上のような態様では、循環水槽内のpH値及び導電率を計測することができるので、当該pH値及び導電率に応じて気化式加湿器や熱交換コイルに供給する純水供給量を調整することができ、ランニングコストの低減を図ることも可能となる。すなわち、計測したpH値及び導電率により水に溶解している電解質の量を推定することで、水の浄化度を取得することが可能となり、気化式加湿器等に供給する純水量を調節することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを熱交換コイルや気化式加湿器の下部に設置した循環水槽中に発生させているので、当該水槽内のヌルや藻の発生を抑制することができる。さらにマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有した水分がコイルフィン部に滴下されることにより、コイルフィン部に付着した汚染物質を洗い流すことができるため、熱交換コイルの濡れ性能の低下を防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1.本発明の実施形態]
以下、本発明の実施形態の一例として、冷却コイル及び気化式加湿器の下部に滴下水や結露水を貯留する循環水槽を備えた温湿度調整可能な空調システムについて、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
なお、本発明では、空調システムにおける熱交換コイルや気化式加湿器などに技術的特徴があるわけでなく、冷却コイルや気化式加湿器の滴下水や結露水を貯留する循環水槽内のヌルや藻の発生を抑制する点に特徴がある。すなわち、空調システムの熱交換コイル等の構成は従来型とほぼ同様であり、気化式加湿器や熱交換コイルに滴下水を循環供給する循環水槽内部及び周辺の構成に技術的特徴を有するものである。
【0025】
[1.1.構成]
(1)全体構成
図1は、本発明に循環水槽を備えた空調システムの全体構成例を示す模式図であり、処理空気の取入口及び供給口を有するチャンバ(図示せず)の内部に、プレフィルタ1、中性能フィルタ2、加熱コイル3、冷却コイル部4、第2の加熱コイル5、及び、処理空気をハウジング外へ吐出する送風機6が順次設けられている。
(2)冷却コイル部の構成
【0026】
また、この冷却コイル部4には、例えば、上流側に第1の冷却コイル4aが、その下流側に第2の冷却コイル4bが配設されている。なお、それぞれの冷却コイル4a、bの上流側には、第1,2の気化式加湿器4c、dが配設されており、さらに、冷却コイル4bの下流側には第3の気化式加湿器4eが設けられている。そして、冷却コイル部4の上方から水が滴下するように構成され、その滴下水を貯留する循環水槽7が冷却コイル部4の下部に配設されている。
【0027】
なお、これらの第1、2の冷却コイル4a、b及び第1、2、3の気化式加湿器4c、d、eに供給される水は、空気の流れと対向流となるように、下流側の第3の気化式加湿器4eから上流側の第1の気化式加湿器4cに流れるよう構成されている。また、下流側の第2の冷却コイル4bには、例えば、冷凍機等の冷却水供給装置(図示せず)に接続された第2の冷却水供給ライン22が接続され、上流側の第1の冷却コイル4aには、第1の冷却水供給ライン21が接続されている。そのため、冷却水を循環水槽7を介さず直接冷却コイル4a、bに供給することができる。
【0028】
そして、冷却コイル部4の最下流側に位置する第3の気化式加湿器4eの上方には、純水供給ライン23が接続されており、気化式加湿器に純水が供給できるよう構成されている。また、第2の冷却水供給ライン22が接続された冷却コイル4bの上方には、循環水槽7から水を循環供給するよう第2の滴下水供給ライン25が設けられ、第1の冷却水供給ライン21が接続された冷却コイル4aの上方には、循環水槽7から水を循環供給するよう第1の滴下水供給ライン24が設けられている。すなわち、この滴下水供給ライン24、25によって、第1、2の冷却コイル4a、bの各々を濡れ壁とすることが可能となる。
【0029】
さらに、気化式加湿器4cには、第3の滴下水供給ライン26が接続され、第4の気化式加湿器4dには、滴下水供給ライン27が接続され、循環水槽7内に貯留された水を循環供給することが可能となるよう構成されている。すなわち、循環水槽7から冷却コイル4a、bや気化式加湿器4c〜eに水を循環供給する構成が空調システムが有する循環系に対応する。なお、循環水槽7内の水を冷却コイル4a、bや気化式加湿器4c、d、eの上方から供給させるための動力源となるポンプ28〜31も設置されている。
【0030】
また、この冷却コイル部4の冷却コイル4a、bや気化式加湿器4c〜eは、本発明の特徴部分ではないため、上記の構成に限定せず、他の構成態様を有する実施形態でもよいものとする。例えば、冷却コイルを上記の2段に限定せず、複数段有するものであってもかまわず、また、気化式加湿器の数や配置も限定するものではない。さらに、上記構成例では、冷却コイル4a、bや複数の気化式加湿器4c〜eに循環供給するための水を貯留する循環水槽7が一つであったのに対し、これを冷却コイルごとに分割して構成した実施形態も本発明は包含するものである。
【0031】
なお、本発明は、図1のような循環水槽内の水を循環して気化式加湿器等に滴下する循環式に限定するものでなく、熱交換コイルを用いずに気化式加湿器のみを備え、当該気化式加湿器に純水供給ラインを通じて純水を直接供給する実施形態も包含する。
【0032】
ここで、本発明の技術的特徴部分である循環水槽7内部及び周辺の構成を以下に説明する。まず、図1に記載の循環水槽7を見ても明らかなように、循環水槽7中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器8が設置されている。
【0033】
この微細気泡発生器8とは、循環水槽7内の水を用いてマイクロバブルとマイクロナノバブルを発生させるものであり、このマイクロバブル又はマイクロナノバブルが汚染物質を分解することにより殺菌効果や洗浄効果を期待することができる。すなわち、当該バブルを発生させることにより、このバブルが循環水槽7内に付着するヌルや藻を分解し、これらの発生を抑制することが可能となる。ここで、マイクロバブルとは、発生時に気泡の直径が主に10Mm〜数十Mmの微細な気泡のことをいい、マイクロナノバブルとは、さらに気泡径がナノサイズ(nm)の気泡のことをいう。
【0034】
なお、マイクロバブル及びマイクロナノバブルを発生させる手段として本実施形態では、水と空気を超高速で旋回させることで当該バブルを発生させる超高速旋回方式を用いているが、超音波方式や加圧溶解法等を採用することも可能であり、これに限定するものではない。
【0035】
ここで、本発明が利用している超高速旋回方式とは、微細気泡発生器8内を超高速で旋回させることにより、旋回気体空洞部を形成させ、その旋回気体空洞部を発生器内部と出口付近に生じた旋回速度差により切断することでマイクロバブル及びマイクロナノバブルを発生させるものである。また、このバブルを発生させるために、微細気泡発生器8に空調機外の空気を空気供給ライン12を通じて自吸させ、さらに動力としてポンプ9を用い、循環水槽7内の水を微細気泡発生器8に供給している。
【0036】
なお、発生したマイクロバブル及びマイクロナノバブルは、上述した通り、洗浄効果や吸着作用を有するので、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを含む水を滴下水供給ライン24、25を通じて冷却コイル4a、bのコイルフィン部に滴下することで、フィン表面の汚れを洗い流すことができる。そのため、冷却コイル4a、bの濡れ性能を確保することができ、熱交換効率が低下せず、所定の性能を発揮することが可能となる。
【0037】
また、この微細気泡発生器8の配置に関して、図1では、循環水槽7内の下流側に設置しているが、この形態に限定するものでなく、循環水槽7が図2のように冷却コイルごとに分割されている場合では、当該分割された水槽内にそれぞれ微細気泡発生器8を設置する構成としてもよい。
【0038】
具体的には、図2の通り、循環水槽7aに第1の冷却コイル4aと第2の気化式加湿器4dの滴下水が貯留し、循環水槽7bに第2の冷却コイル4bと第3の気化式加湿器4eの滴下水が貯留し、循環している。また、第1の気化式加湿器4cの下部にも滴下水を貯留する循環水槽7cを設けている。なお、冷却コイルと気化式加湿器の下部に設置された水槽をさらに分割してもよく、水が循環供給されることが可能であれば当該構成に限定されるものではない。
【0039】
また、図3のように、循環水槽7に供給する循環水を貯留する貯留タンク10と、貯留タンク10内の循環水を循環水槽7に供給し、又は循環水槽7から受給するための動力源となるポンプ10a、10bを備え、当該貯留タンク10内に微細気泡発生器8を設置する構成とすることも可能である。このように別途設けた貯留タンク10内に微細気泡発生器8を設置することで、微細気泡発生器8が故障した際も空調システム自体を停止せずに容易にメンテナンスを行うことが可能となり、また当該発生器8の交換も手軽に行うことができる。さらに、既存の空調システムに後付で当該貯留タンク10と共に微細気泡発生器8を装着することもできる。
【0040】
[1.2.作用]
以上のような図1の構成を有する本実施形態の空調システムは、以下のように作用する。なお、取入口からチャンバの内部に導入された処理対象となる空調処理に関しては、本発明の特徴となる作用ではないので省略する。
【0041】
まず、第3の気化式加湿器4eに純水供給ライン23を介して常時、純水が供給され、その滴下水が第1、2の冷却コイル4a、b及び第1〜3の気化式加湿器4c〜eの下部に設置された循環水槽7に貯留される。ここで、循環水槽7内に設置した微細気泡発生器8が、空気供給ライン12を通じて空気を自吸し、ポンプ9により循環水槽7内の水を循環させることで、循環水槽7の水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる。
【0042】
そして、ポンプ28〜31によって、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有した水を前記循環水槽7から順次上流側の第2の冷却コイル4b、第2の気化式加湿器4d、第1の冷却コイル4a、第1の気化式加湿器4cの上部に供給する。具体的には、第2の冷却コイル4bには、ポンプ31によって、循環水槽7から第2の滴下水供給ライン25を介して、滴下水が供給される。また、第2の気化式加湿器4dには、ポンプ30によって、第4の滴下水供給ライン27を介して滴下水が供給される。そして、第1の冷却コイル4aには、ポンプ29によって、第1の滴下水供給ライン24を介して滴下水が供給され、第1の気化式加湿器4cに、ポンプ28により第3の滴下水供給ライン26を介して滴下水が供給される。
【0043】
なお、夏季においては、冷却コイル4aには冷却水供給ライン22を通じて、また冷却コイル4bには冷却水供給ライン21を通じて冷却水が供給され、滴下した冷却水も循環水槽7に貯留されるので、この貯留した水にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含ませて冷却コイル4a、bや気化式加湿器4c〜eに循環供給している。
【0044】
また、図2の循環水槽7を冷却コイルごとに分割して循環水槽7a、bとした場合においても同様に、各循環水槽から上部に有する冷却コイルと気化式加湿器に滴下水を循環供給する。具体的には、まず、第3の気化式加湿器4eに純水供給ライン23を介して常時、純水が供給され、その滴下水が第2の冷却コイル4b及び第3の気化式加湿器4eの下部に設置された循環水槽7bに貯留される。そして、循環水槽7b内に設置した微細気泡発生器8bが、空気供給ライン12bを通じて空気を自吸し、ポンプ9bにより循環水槽7b内の水を当該発生器8bに供給させることで、循環水槽7bの水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる。
【0045】
そして、ポンプ31によって、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有した水を前記循環水槽7bから第2の滴下水供給ライン25を通じて第2の冷却コイル4bに供給する。そして、その滴下水を同様に循環水槽7bに貯留し、ポンプ30によって、第2の気化式加湿器4dに第4の滴下水供給ライン27を介して供給する。
【0046】
なお、この第2の気化式加湿器4dと第1の冷却コイル4aの下部には、分割された循環水槽7aが設置されており、第2の気化式加湿器4dに供給された滴下水がこの循環水槽7aに貯留される。ここで、循環水槽7a内に設置した微細気泡発生器8aが、空気供給ライン12aを通じて空気を自吸し、ポンプ9aにより循環水槽7a内の当該発生器8aに供給させることで、循環水槽7aの水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させている。
【0047】
そして、ポンプ29により、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを含有した水を循環水槽7aから第1の滴下水供給ライン24を通じて第1の冷却コイル4aに供給し、さらに当該水をポンプ28によって第1の気化式加湿器4cに第3の滴下水供給ラインを介して供給する。
【0048】
なお、夏季においては、冷却コイル4aには冷却水供給ライン22を通じて、また冷却コイル4bには冷却水供給ライン21を通じて冷却水が供給され、滴下した冷却水も循環水槽7a、bに貯留されるので、この貯留した水にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを含ませて冷却コイル4a、bや気化式加湿器4c〜eに循環供給している。
【0049】
また、図3のような貯留タンク10を設け、当該タンク10内に微細気泡発生器8を配設した構成では、この微細気泡発生器8により予め貯留タンク10内に補給された純水中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させ、当該バブルを含んだ水を循環水として循環水槽7中にポンプ10aを用いて供給しておく。その後は、図1に示した空調システムと同様に、循環水槽7からポンプ28〜31によって、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを含んだ水が順次上流側の第2の冷却コイル4b、第2の気化式加湿器4d、第1の冷却コイル4a、第1の気化式加湿器4cの上部に供給される。
【0050】
以上のような態様では、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを熱交換コイルや気化式加湿器の下部に設置した循環水槽中に発生させているので、当該水槽内のヌルや藻の発生を抑制することができる。さらに、このようなバブルを含有した水がコイルフィン部に滴下されることにより、コイルフィン部に付着した汚染物質を洗い流すことができるため、熱交換コイルの性能の低下を防ぐことが可能である。
【0051】
[2.他の実施形態]
[2.1.他の実施形態(1)]
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のようなオゾン発生器11を循環水槽7に設置した実施形態も包含する(図4)。
【0052】
具体的には、このオゾン発生器11は、図4の通り、微細気泡発生器8に接続された空気供給ライン12に配設されており、生成するマイクロバブル又はマイクロナノバブルにオゾン発生器11で発生させたオゾンを含有させている。そのため、マイクロバブル又はマイクロナノバブルがオゾンの殺菌効果を飛躍的に高めさせ、水中の菌を不活性化させることが可能となる。
【0053】
なお、オゾン発生器11は、二つの電極間に交流の高電圧を流し、その電極間に空気を通過させることで放電プラズマ中のイオンの持つエネルギーによって酸素をオゾン化する無声放電法が主流であり、本件もこの方式を用いているが、特に限定するものではなく、化学生成法や電解法等を用いることも可能である。
【0054】
また、マイクロバブル又はマイクロナノバブルは、自己加圧効果を有するので、濃度の低いオゾンを供給するとしても作用時には高圧化された条件でオゾンが作用する。つまり、高圧化したオゾンと吸着する物質が作用するので、低いオゾン濃度でも汚染物質を分解することができる。
【0055】
なお、オゾン発生器11の設置位置は、循環水槽7内にオゾンを吹き込むことができれば、図4のような微細気泡発生器8に接続された空気供給ライン12にオゾン発生器11を設置する態様に限定しない。また、図3のように別途貯留タンク10を設ける構成では、当該貯留タンク10内に設置された微細気泡発生器8に接続された空気供給ライン12中にオゾン発生器11を接続するケースも考えられる(図5)。図5の構成の場合では、微細気泡発生器8により発生させるマイクロバブル又はマイクロナノバブルにオゾン発生器11で発生させたオゾンを含有させているため、上記同様、マイクロバブル又はマイクロナノバブルがオゾンの殺菌効果を飛躍的に高めさせ、水中の菌を不活性化させることが可能となる。
【0056】
[2.2.他の実施形態(2)]
なお、本発明は、上記実施形態に限定するものでなく、図6の通り、微細気泡発生器8に接続された空気供給ライン12に粒子除去フィルタ、カチオン除去フィルタ、アニオン除去フィルタ、有機物質除去フィルタのうち少なくとも一つを備える実施形態も包含する。
【0057】
すなわち、微細気泡発生器8へ供給する空気の洗浄化を図るために、空気供給ライン12途中に粒子除去フィルタ13、カチオン除去フィルタ14、アニオン除去フィルタ15、有機物質除去フィルタ16を設置している。具体的には、粒子除去フィルタ13や有機物質除去フィルタ16を設けることにより、微細気泡発生器8への供給源となる外気中の粒子及び分子状の汚染物質を除去することが可能となり、当該汚染物質が循環水槽7内に供給されるいった問題を解決することができる。
【0058】
また、粒子及び分子状汚染物質を除去するだけでなく、カチオン除去フィルタ14及びアニオン除去フィルタ15を空気供給ライン12中に備えることにより、外気中に存在するカチオン(陽イオン)及びアニオン(陰イオン)を吸着除去することができる。つまり、空気を汚染する原因となるイオンを除去することにより、汚染物質を含有するバブルが循環水槽内に供給される問題を解消する。
【0059】
なお、本実施形態は、図2〜図5の実施形態で設置される微細気泡発生器においても、当該発生器に接続される空気供給ラインに、粒子除去フィルタ、カチオン除去フィルタ、アニオン除去フィルタ、有機物質除去フィルタのうち少なくとも一つを備える構成を包含する。
【0060】
また、図6では、第3の気化式加湿器4eの下流に汚染物質除去用のケミカルフィルタ17を設け、気化式加湿器を通過した空気がケミカルフィルタ17を通り、当該フィルタ17を通過した空気の一部がポンプなど(図示しない)を動力源として微細気泡発生器8に供給されるよう構成されている。なお、本発明は、ケミカルフィルタ17を設けなくても、気化式加湿器4c〜eを通過した空気の一部を空気供給ライン12へ供給する実施形態も包含している。
【0061】
そのため、空気供給ライン12を流れ、微細気泡発生器8へ供給される空気中の汚染物質が除去されるので、空気供給ライン12に設置したカチオン除去フィルタ14及びアニオン除去フィルタ15の寿命を延ばすことが可能となる。また、空気供給ライン12に供給される当該ケミカルフィルタ17を通過した空気の純度が高い場合には、カチオン除去フィルタ14及びアニオン除去フィルタ15の設置が不要となるため、イニシャルコストの低減も図ることができる。
【0062】
[2.3.他の実施形態(3)]
また、図1〜図6では図示していないが、本発明は、図7の通り、循環水槽7にドレン配管18を設けており、当該ドレン配管18中にpH計19及び導電率計20を設置する実施形態を包含する。すなわち、循環水槽7からドレン配管18を流れるドレン水のpH値及び導電率を計測することで、当該pH値及び導電率に応じて気化式加湿器や熱交換コイルに供給する純水供給量を調整することができる。
【0063】
すなわち、計測したpH値及び導電率によりドレン水に溶解している電解質の量を推定することで、水の純度を取得することができ、純度が高い場合には気化式加湿器等に供給する純水量を減らすよう調節することが可能となる。そのため、ランニングコストの低減を図ることができる。なお、本実施形態では、図7の通り、pH計19及び導電率計20をドレン配管18中に設けているが、この構成に限定するものでなく、当該pH計19及び導電率計20を循環水槽7内に配設する構成とする実施形態も本発明は包含する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る空調システムの全体構成を示す模式図(1)
【図2】本発明に係る空調システムの全体構成を示す模式図(2)
【図3】本発明に係る空調システムの全体構成を示す模式図(3)
【図4】本発明の他の実施形態(1)に係る空調システムにおいて循環水槽にオゾン発生器が設置された場合の全体構成を示す模式図
【図5】本発明の他の実施形態(1)に係る空調システムにおいて貯留タンクにオゾン発生器が設置された場合の全体構成を示す模式図
【図6】本発明の他の実施形態(2)を示す模式図
【図7】本発明の他の実施形態(3)を示す模式図
【符号の説明】
【0065】
1…プレフィルタ
2…中性能フィルタ
3…第1の加熱コイル
4…冷却コイル部
4a…冷却コイル
4b…冷却コイル
4c〜e…気化式加湿器
5…第2の加熱コイル
6…送風機
7…循環水槽
7a〜c…循環水槽
8…微細気泡発生器
8a…マイクロナノバブル
8b…マイクロナノバブル
9…ポンプ
9a…ポンプ
9b…ポンプ
10…貯留タンク
10a…ポンプ
10b…ポンプ
11…オゾン発生器
12…空気供給ライン
12a…空気供給ライン
12b…空気供給ライン
13…粒子除去フィルタ
14…カチオン除去フィルタ
15…アニオン除去フィルタ
16…有機物質除去フィルタ
17…ケミカルフィルタ
18…ドレン配管
19…pH計
20…導電率計
21…冷却水供給ライン
22…冷却水供給ライン
23…純水供給ライン
24〜27…滴下水供給ライン
28〜31…ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温湿度調整に用いる水を循環させる循環系を有する空調システムであって、
前記循環系は、循環させる水を貯留する循環水槽を備え、
前記循環水槽には、貯留した水分中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器が配設されたことを特徴とする空調システム。
【請求項2】
空気温度調整用のコイルと、空気湿度調整用の気化式加湿器の少なくとも一方を備え、
前記循環水槽は、前記空気温度調整用のコイル及び/又は空気湿度調整用の気化式加湿器の下部に設置され、
前記空気温度調整用のコイル及び/又は前記空気湿度調整用の気化式加湿器には、前記循環系により水が上部から滴下供給され、
前記循環水槽が、前記空気温度調整用のコイル及び/又は空気湿度調整用の気化式加湿器から滴下した水を一時的に貯留することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
温湿度調整に用いる水を循環させる循環系を有する空調システムであって、
前記循環系は、循環させる水を貯留する循環水槽と、
前記循環水槽に循環水を供給するための貯留タンクを備え、
前記貯留タンク内に貯留水中にマイクロバブル又はマイクロナノバブルを発生させる微細気泡発生器が配設されたことを特徴とする空調システム。
【請求項4】
前記循環系の前記循環水槽には、循環水槽中にオゾンを吹き込むオゾン発生器が設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項5】
前記循環系の前記貯留タンクには、貯留水中にオゾンを吹き込むオゾン発生器が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の空調システム。
【請求項6】
前記微細気泡発生器にマイクロバブル又はマイクロナノバブルの発生源となる空気を供給するための空気供給ラインが接続され、
前記空気供給ラインは、粒子除去フィルタ、カチオン除去フィルタ、アニオン除去フィルタ、有機物質除去フィルタのうち少なくとも一つを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の空調システム。
【請求項7】
前記空気供給ラインに供給する空気が、前記気化式加湿器を通過した空気であることを特徴とする請求項6に記載の空調システム。
【請求項8】
前記気化式加湿器の下流に汚染物質除去用のケミカルフィルタを備え、
前記空気供給ラインに供給する空気は、前記ケミカルフィルタを通過した空気であることを特徴とする請求項6に記載の空調システム。
【請求項9】
前記循環水槽又は前記循環水槽からのドレン配管にpH計及び導電率計を設置することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−190754(P2008−190754A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24106(P2007−24106)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000236160)株式会社テクノ菱和 (50)
【Fターム(参考)】