説明

マイクロバブル発生装置

【課題】 比較的単純な構造でマクロバブル発生を実現するマイクロバブル発生装置を提供する。
【解決手段】 マイクロバブル噴出基板10と、このマイクロバブル噴出基板10を固定する筐体20とを具備し、前記マイクロバブル噴出基板10の噴出方向外側の面には、微細孔12が形成された陽極酸化多孔層11が設けられ、噴出方向内側の面には、底部が前記微細孔に連通する開口部13が複数設けられ、前記筐体20内には前記開口部13に連通する流路が設けられており、前記流路に少なくとも気体を供給するポンプ部30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロバブル技術の有用性が注目され、そのための研究が各方面でなされはじめている。例えば、半導体産業ではマイクロバブルを用いた洗浄技術に注目しており、この他にもマイクロバブル発生装置を用いて除菌及び脱臭された水(オゾン水)の生成や、超微細気泡を上水殺菌消毒、上下水膜処理、健康・医療機器分野や、湖沼や養殖場の水質浄化、工場・畜産等の各種排水処理、及び、機能水製造などへの利用が検討されている。
【0003】
このようなマイクロバブルを発生させる装置であるマイクロバブル発生装置として、種々の構造が提案されている(特許文献1〜3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−229370号公報
【特許文献2】特開2002−153741号公報
【特許文献3】特開2003−117365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のマイクロバブル発生装置は、構造的に複雑で且つ比較的大がかりな装置であるという問題があった。例えば、家庭の浴槽で気軽に使用できるようなコンパクトで単純な構造のマイクロバブル発生装置の要望があるものの、要望を満足できるものはなかなか出現していない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、比較的単純な構造でマクロバブル発生を実現するマイクロバブル発生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、マイクロバブル噴出基板と、このマイクロバブル噴出基板を固定する筐体とを具備し、前記マイクロバブル噴出基板の噴出方向外側の面には、微細孔が形成された陽極酸化多孔層が設けられ、噴出方向内側の面には、底部が前記微細孔に連通する開口部が複数設けられ、前記筐体内には前記開口部に連通する流路が設けられており、前記流路に少なくとも気体を供給するポンプ部を備えたことを特徴とするマイクロバブル発生装置にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記マイクロバブル噴出基板が、アルミニウム又はチタンからなることを特徴とする第1の態様に記載のマイクロバブル発生装置にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記ポンプ部が、気体と液体との混合物を供給するものであることを特徴とする第1又は2の態様に記載のマイクロバブル発生装置にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、前記開口部が、噴出方向内側ほど径が漸小する円錐台形状であることを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様に記載のマイクロバブル発生装置にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記ポンプ部が前記筐体に内蔵されていることを特徴とする第1〜4の何れか一つの態様に記載のマイクロバブル発生装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るマイクロバブル発生装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るマイクロバブル発生装置の断面図及び要部断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るマイクロバブル噴出基板の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のマイクロバブル発生装置1は、円盤状のマイクロバブル噴出基板10と、円筒状の筐体20と、筐体20内に内蔵されたポンプ30とを具備する。
【0015】
図2に示すように、マイクロバブル噴出基板10は、アルミニウム、チタンなどからなる円盤状部材であり、噴出側の面である表層部が陽極酸化により形成された微細孔層11となっている。微細孔層11は、陽極酸化により形成された酸化物層であり、厚さ方向に所定の深さまで所定のピッチで形成された多数の微細孔12を具備する。
【0016】
また、マイクロバブル噴出基板10の噴射方向とは反対側の面には、所定間隔で複数の開口部13が設けられている。開口部13は、例えば、機械加工により形成されたものであり、マイクロバブル噴出基板10の厚さ方向に完全には貫通しないが、その底部13a(図3参照)が微細孔12に届く程度の深さに形成されている。すなわち、開口部13の底部13aに対向する領域に形成された微細孔12は、開口部13と連通する貫通孔14となり、マイクロバブルが噴出する噴出口となる。
【0017】
開口部13は、形状は特に限定されないが、機械加工で形成することを考慮すると、円柱状又は円錐台状がよく、本実施形態では、円錐台状となっている。すなわち、開口部13は、噴出方向逆側ほど開口径が漸大するテーパー形状となっている。このようなテーパー形状とすることにより、貫通孔14に向かって流体が流れ易くなり、また、貫通孔14からの噴出圧を向上させる効果がある。
【0018】
かかるマイクロバブル噴出基板10の製造方法の一例を図3を参照して説明する。
【0019】
まず、図3(a)に示すように、円盤状の基板41を用意する。基板41は、例えば、アルミニウム、チタンなどの材質とする。本実施形態では、アルミニウム製で5mm厚のものを基板41とした。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、基板41に所定の間隔で円錐台状のテーパー穴である開口部13を形成する。開口部13の形成は、機械加工により行った。開口部13は底部13aの直径が10mmとし、底部13aに対向して形成された薄板部42の厚さは100μm程度とした。なお、開口部13は、所定の間隔で形成し、基板41の機械的強度が保持できるようにした。
【0021】
次に、図3(c)に示すように、基板41の開口部13が形成された面とは反対側の面を陽極酸化し、微細孔層11を形成した。微細孔層11は、酸化アルミニウム(アルマイト)層であり、100nmφの厚さ方向にストレートな微細孔12を多数形成された層である。微細孔12の深さは100μm以上とし、薄板部42を完全に貫通するように形成した。
【0022】
なお、陽極酸化は、常法に従って行えばよいが、例えば、0.1〜1.0Mのシュウ酸を電解液として電解液中に基板41の開口部13とは反対側を浸けた状態で、基板41と対極との間に定電圧(10〜100V)を印加し、所定時間陽極酸化することにより行えばよい。本実施形態では、0.5Mのシュウ酸を電解液として40Vの定電圧を印加して陽極酸化を行い、100nmφ、深さ100μmの微細孔12を形成し、マイクロバブル噴出基板10を製造した。
【0023】
ここで、陽極酸化は、処理する面以外を耐酸性のレジストで覆って、電解液中に浸漬して行ってもよい。また、開口部13に対向する薄板部42の領域以外の表面をレジストで覆って、薄板部42の領域のみを微細孔層11としてもよい。
【0024】
なお、電解液の組成、温度、電圧などの条件を変化させることで、微細孔12の直径、深さ、ピッチを制御することができ、所望の噴出口を形成することができ、所望のマイクロバブルを得ることができる。
【0025】
ここで、マイクロバブルとは、一般的には、数十μm以下の微小な気泡をいうが、数十〜数百nm程度のナノオーダーのバブル、いわゆるナノバブルも包含するものである。
【0026】
また、本発明のマイクロバルブ発生装置では、噴出口となる微細孔の径、ピッチを制御して自己組織的に一定範囲に揃った状態とするのが好ましく、これにより、所望の範囲に揃ったマイクロバブルを得ることができる。ここで、一定範囲に揃ったとは、例えば、±50%の範囲に分布して揃っている状態をいい、例えば、本実施形態では、噴出口の径は100nm付近を中心に50nm〜150nmの範囲に90%以上が分布している。
【0027】
このようなマイクロバブル噴出基板10は、開口部13の底部13aに対向する薄板部42に陽極酸化で形成した微細孔12である貫通孔14を具備する構造としたので、優れた機械的強度を有すると共に、微細な貫通孔14を具備するものとすることができる。また、薄板部42は、接着、接合などにより設けられたものではなく、マイクロバブル噴出基板10に一体的に形成されたものであり、噴出圧力に対する耐圧性、耐久性に優れたものとなる。
【0028】
また、貫通孔14を陽極酸化により形成するので、ナノオーダーの貫通孔14が比較的容易に形成でき、ナノバブルを発生するマイクロバブル発生装置を容易に実現できる。
【0029】
このようなマイクロバブル噴出基板10を固定する筐体20は、上述したマイクロバブル噴出基板10を保持する有底円筒形状を具備し、内部にポンプ30を内蔵する。
【0030】
ポンプ30は、電気駆動のポンプであり、電源コード31を具備すると共に、外部から空気を取り入れるための導入パイプ32が設けられており、導入パイプ32から導入した空気を貫通孔14から噴出するものである。
【0031】
本実施形態では、筐体20内の空間全体がポンプ30の噴出口と貫通孔14とを連通する流路となっているが、ポンプ30の噴出口と貫通孔14との間に適宜形状の流路を設けて、貫通孔14から噴出する空気の圧力を高めるようにしてもよい。
【0032】
なお、ポンプ30は、空気と水との混合物を圧送するものでもよく、この場合、貫通孔14から所望の圧力で空気と水との混合物が噴出されることになる。
【0033】
この場合、空気と水を導入パイプ32を介して送るようにしてもよいし、導入パイプ32から空気を導入するようにすると共に、筐体20を水中に保持して筐体20の外部から水を取り入れ、両者を混合して噴出するようにしてもよく、ポンプ30の機能、構造は特に限定されるものではない。
【0034】
また、ポンプ30は、筐体20に内蔵せずに筐体20とは別途設けてもよいことは言うまでもない。
【0035】
以上説明したマイクロバブル発生装置1は、コンパクトで、例えば、導入パイプ32の取り入れ口を水槽の外に出した状態で、筐体20を浴槽中や各種水槽中に載置するだけで、マイクロバブル発生装置として用いることができ、各種用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 マイクロバブル発生装置
10 マイクロバブル噴出基板
11 微細孔層
12 微細孔
13 開口部
14 貫通孔
20 筐体
30 ポンプ
32 導入パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバブル噴出基板と、このマイクロバブル噴出基板を固定する筐体とを具備し、前記マイクロバブル噴出基板の噴出方向外側の面には、微細孔が形成された陽極酸化多孔層が設けられ、噴出方向内側の面には、底部が前記微細孔に連通する開口部が複数設けられ、前記筐体内には前記開口部に連通する流路が設けられており、前記流路に少なくとも気体を供給するポンプ部を備えたことを特徴とするマイクロバブル発生装置。
【請求項2】
前記マイクロバブル噴出基板が、アルミニウム又はチタンからなることを特徴とする請求項1記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項3】
前記ポンプ部が、気体と液体との混合物を供給するものであることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項4】
前記開口部が、噴出方向内側ほど径が漸小する円錐台形状であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のマイクロバブル発生装置。
【請求項5】
前記ポンプ部が前記筐体に内蔵されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のマイクロバブル発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−224461(P2011−224461A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96359(P2010−96359)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(507314992)株式会社半一 (4)
【Fターム(参考)】