説明

マイクロメカニック構成要素

【課題】気泡をほとんど含むことなくパッケージ化されたマイクロメカニック構成要素を提供する。
【解決手段】マイクロメカニック構成要素110がマイクロメカニック構成部分130と別の構成部分、特にマイクロエレクトロニック回路160とを有しており、前記マイクロメカニック構成部分と前記別の構成部分とが前記保持体120に配置されており,前記保持体に前記マイクロメカニック構成部分と前記別の構成部分との間に少なくともひとつの前記通過開口500が配置されているマイクロメカニック構成要素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロメカニック構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ国特許出願DE19537814A1号明細書にはセンサ−層システムの構造と表面マイクロメカニックにおけるセンサを気密にパッケージ化する方法が記述されている。この場合にはセンサ構造の製作は公知の技術的な方法に基づいている。パッケージ化はシリコンから成る個別のキャップウェーハで行なわれる。このシリコンから成るキャップウェーハは費用のかかる構造化プロセス、例えばKOHエッチングで構造化される。センサキャップはウェーハ平面にてガラス−ろうでセンサウェーハの上に取付けられる。このためにはキャップの十分な保持とシール性とを保証するためには幅の広いボンドフレームが各センサチップの縁に設けられている。
【0003】
センサエレメントは公知技術に相応して保持体(英語ではリードフレーム)に取付られ、金線で接触され、公知の注型成形方法(英語ではトランスファモルディング)で封入される。封入する場合には注入材料、例えば溶融したプラスチックは注入部から封入しようとするエレメントを受容する中空型内へ流入する。封入する場合にはセンサの厚さと形とが問題になる。これは不均一な流れをもたらし、センサエレメントの上下で型室の不均等な充填と、センサ背後における注入材料の渦流とを発生させる。この結果、注入材料に不具合な気泡が閉成される。この現象は例えばV.Motta et alによりMicromachining and Microfabrication Process Technology VI,Proceedings of SPIE Bd.4174(2000)S.377−387に記載されている。
【特許文献1】ドイツ国特許出願DE19537814号明細書
【非特許文献1】Micromachining and Microfabrication Process Technology VI,Proceedings of SPIE Bd.4174(2000)S.377−387
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題はセンサの背後での気泡の形成及び注入材料の渦流を回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、少なくとも1つの優先方向からの材料流が、マイクロメカニック構成要素を一様にパッケージ化するために変向される構造を有するマイクロメカニック構成要素によって解決された。
【発明の効果】
【0006】
マイクロメカニック構成要素の本発明の構成によっては、注入材料の流れが構成要素の周囲に、注型成形型の均等な充填が達成されるように変向される。これによって構成要素は有利な形式でほぼ気泡なしでパッケージ化される。
【0007】
本発明の有利な構成によればマイクロメカニック構成要素がキャップを有するマイクロメカニック構成部分を有し、前記キャップの表面が少なくとも1つの優先方向からの材料流にとって流動的に好適であるように形成されている。有利には前記表面によって層流が好適化され、材料の渦流及びその結果としての材料流の気泡が回避される。
【0008】
本発明の特に有利な構成では、キャップが材料流を変向する少なくとも1つの斜めに面取りされた縁を、特に材料流の源とは反対側に有している。この個所では気泡が特に頻繁に発生し、これは記述した処置によって有利な形式で阻止される。
【0009】
本発明の別の有利な構成ではキャップが材料流を変向させるために刻み目で構造化された少なくとも1つの表面を有している。これによって材料流は公知の源から出発して有利な形式で、提供される流れ横断面又は毛細管力によって変向される。
【0010】
同等の観点から、材料流を変向するために少なくとも1つの構造化された表面を備えた保持体をマイクロメカニック構成要素が有していることが有利である。
【0011】
本発明の他の有利な構成では、マイクロメカニック構成要素は1つの保持体を有し、該保持体が材料流を変向させるために少なくとも1つの通過開口を有している。このようにして有利にはマイクロメカニック構成要素の近くの領域が材料流の一部で、材料流のほかの部分によって気泡が発生させられる前に充填され得るようになる。
【0012】
本発明の別の有利な構成は従属請求項に開示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1には公知技術により封入されたマイクロメカニックセンサの構造が示されている。第1の側面図1Aにおいては内部にある構成要素110を有する注型成形ケーシング100が示されている。構成要素110は電子的構成部分及びマイクロメカニック構成部分が上に取付けられた保持体120を有している。この例では保持体120の上には、ボンド線170によって互いに電気的に接続されたマイクロエレクトロニック回路160とマイクロメカニック構成部分130とがある。マイクロメカニック構成部分130はマイクロメカニック機能エレメント140を有し、該マイクロメカニック機能エレメント140はその上に配置されキャップ150で覆われている。第2の側面図1Bにおいては注型成形ケーシング100と保持体120とマイクロメカニック機能エレメント140を有するマイクロメカニック構成部分130並びにその上に配置されたキャップ150が示されている。
【0014】
図2には図AからFで概略的に公知技術にてマイクロメカニックセンサをパッケージ化する場合の注型成形材料の充填状態が示されている。図2Aには概略的に注入点210を有する注型成形型200が示されている。注入点210からは材料流、つまり注入材料220が型内へ流入する。注型成形型200内には構成要素110が配置されている。図2Bには注入材料220での注型成形型200の充填が示されている。注型成形型200における構成要素110の配置と形状付与とに関連して種々異なる領域における注入は異なる速度で行なわれる。図示の実施例では充填は比較的にゆっくりと前進する上側の注入材料フロント224とこれに対し比較的に速く前進する下側の注入材料フロント226とを生ぜしめる。図2Cには注入材料の充填に際して、キャップ150の背後の注入材料220の渦流によって第1の気泡230が形成されることが示されている。図2Dと2Eとには注入材料フロント224と226とがさらに前進した状態が示されている。下側の注入材料フロント226の速度の方が高いことによってこの材料フロント226はマイクロエレクトロニック回路160を巡って前進し、上側で上側の注入材料フロント224と合体する。この場合には図2Fに示すように、マイクロエレクトロニック回路160の上側には第2の気泡240が発生する。
【0015】
図3にはキャップの縁が斜めに面取りされた本発明によるセンサが示されている。本発明によれば、構成要素110の流動状態を、少なくとも1つの優先方向からの材料流れに対し好適化することが提案されている。これによって渦流を減少させ、ひいては構成要素110の近くにおける第1の気泡230の形成が回避される。ここに示された斜めに面取りされたキャップを有する実施例は注入点210の方向からの材料流に対して流動抵抗を低下させ、流過する有効面を増大する。流れの剥離、ひいてはキャップ300の、注入点210とは反対側における渦流は縁の斜めの面取りによって回避されるか又は少なくとも減少させられる。
【0016】
図4は、構造化されたキャップ表面を有する本発明のセンサが示されている。この第2実施例においては、キャップの流動抵抗の低減又はキャップ表面の構造化による毛細管力の活用が行なわれる。図4Aと図4Bとにおいては構造化されたキャップ400を有する構成要素110が示されている。キャップ400は、上側に細溝又は刻み目を有し、該細溝又は刻み目はほぼ注入点210から発する材料流の方向に延びている。構造したキャップ400を有する図示の実施例は、注入点210の方向からの材料流に対し流動抵抗を減じかつこの材料流のための有効な流過面を増大させる。毛細管力を活用しかつ横断面を変化させることによって材料流、例えば注型成形材料220はキャップ表面の刻み目、細溝又は通路で変向される。これはマイクロメカニック構成要素110の他の表面の上でも、例えば保持体120の上でも可能である。
【0017】
図5には保持体120に通過開口500を有する本発明のセンサが示されている。図5Aは図2Cに相応している。図5Bには、図5Aに比較して保持体120に通過開口500を有するマイクロメカニック構成要素110の本発明の実施例が示されている。通過開口500は有利にはマイクロメカニック構成部材130の、注入点210とは反対側、ひいては材料流の源とは反対側に配置されている。下方領域にて迅速に前進する材料流は通過開口500を通過し、別の注入材料流510を形成する。かつて、すなわち公知技術にて第1の気泡230が発生した領域は、上側の注入材料フロント224の前進速度が低いためにすでに注入材料220で充填されている。したがってここでは気泡はもはや形成されない。注入材料フロント224と226と510は適当な個所で合流する。この個所は気泡が回避されるように選択されるか又は少なくとも、マイクロメカニック構成部分130から十分な距離をおいて位置し、気泡がマイクロメカニック構成要素110に作用を及ぼさないように選択される。さらに注入材料フロント224と226と510が合流する適当な個所は、注型成形型のこの個所に、例えば離型ピンによって排気可能性が与えられるように選択されることもできる。最後に保持体120の面を小さくすることで材料流が流過する横断面は最大化される。
【0018】
さらに図示の実施例以外にも多くの別の実施例が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】公知技術により封入されたマイクロメカニックセンサの構造を示した図。
【図2】公知技術においてマイクロメカニックセンサをパッケージ化する場合の注入材料の充填状態を示した図。
【図3】キャップが斜めに面取りされた縁を有する本発明によるセンサを示した図。
【図4】構造化されたキャップ表面を有する本発明によるセンサを示した図。
【図5】保持体における通過開口を有する本発明によるセンサを示した図。
【符号の説明】
【0020】
100 注型成形ケーシング
110 マイクロメカニック構成要素
120 保持体
130 マイクロメカニック構成部分
140 マイクロメカニック機能エレメント
150 キャップ
160 回路
170 ボンド線
200 注型成形型
210 注入点
220 注入材料
224 注入材料フロント
226 注入材料フロント
230 気泡
240 気泡
300 キャップ
400 キャップ
500 通過開口
510 注入材料フロント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの優先方向からの材料流がマイクロメカニック構成要素(110)を一様に封入するために変向される構造を有していることを特徴とする、マイクロメカニック構成要素。
【請求項2】
キャップ(300,400)を備えたマイクロメカニック構成部分(130)を有し、前記キャップ(300,400)の表面が、前記少なくとも1つの優先方向からの材料流にとって流動的に好適に形成されている、請求項1記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項3】
前記キャップ(300)が材料流を変向するために、少なくとも1つの斜めに面取りされた縁部を特に材料流の源とは反対側に有している、請求項2記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項4】
前記キャップ(400)が材料流を変向させるための刻み目で構造化された表面を備えている、請求項2記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項5】
マイクロメカニック構成要素(110)が保持体(120)を有し、該保持体(120)が材料流を変向させるために少なくとも1つの構造化された表面を有している、請求項1記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項6】
マイクロメカニック構成要素(110)が保持体(120)を有し、該保持体(120)が材料流を変向させるために少なくとも1つの通過開口(500)を有している、請求項1記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項7】
(イ)マイクロメカニック構成要素(110)がマイクロメカニック構成部分(130)と別の構成部分、特にマイクロエレクトロニック回路(160)とを有しており、
(ロ)前記マイクロメカニック構成部分(130)と前記別の構成部分とが前記保持体(120)に配置されており、
(ハ)前記保持体(120)に前記マイクロメカニック構成部分(130)と前記別の構成部分との間に少なくとも1つの前記通過開口(500)が配置されている、
請求項6記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項8】
材料流の源及び優先方向を規定する流入点(220)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載のマイクロメカニック構成要素。
【請求項9】
(イ)保持体(120)が及び/又は
(ロ)該保持体(120)に固定された、キャップ(300,400)を有するマイクロメカニック構成部分(130)と、
(ハ)注入点(220)と、
を有する注型成形でパッケージ化されたマイクロメカニック構成要素において、
(ニ)前記キャップ(300)が少なくとも1つの斜めに面取りされた縁部を、特に前記注入点(220)とは反対側に有しかつ/又は
(ホ)前記キャップ(400)が刻み目で構造された表面を有しかつ/又は
(ヘ)前記保持体(120)に別の構成部分が固定されておりかつ前記保持体(120)が通過開口を有し、該通過開口が前記マイクロメカニック構成部分(130)と前記別の構成部分との間に配置されている、
ことを特徴とする、注型成形でパッケージ化されたマイクロメカニック構成要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−53378(P2007−53378A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221609(P2006−221609)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】