説明

マイクロ機械パーツを製造する方法

【課題】パーツに触れる必要なしにパーツが時計などのデバイス内にいつでも載置できる状態となるように、パーツの機能的部分に触れることを回避させるパーツを、簡単に確実に事前組付けすることを可能にする方法を提供する。
【解決手段】マイクロ機械加工可能材料から構成される基板53を用意するステップと、フォトリソグラフィを用いて、前記基板53の全体にわたって機械パーツを含むパターンをエッチングするステップとを含む、機械パーツを製造する方法に関する。さらにこの方法は、マイクロ機械加工可能材料から構成される部分に触れる必要なしに、前記機械パーツがいつでも載置できる状態となるように、前記機械パーツの上にクリップ91を組み付けるステップと、時計ムーブメントなどのデバイス内に前記機械パーツを載置するために基板53から機械パーツをリリースするステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ機械加工可能材料から構成される機械パーツを製造する方法に関し、より詳細には、時計を製造するために使用されるこのタイプのパーツを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性のシリコン・ベース材料で時計用パーツを製造することが知られている。実際に、結晶シリコンのようなマイクロ機械加工可能物を使用することは、特に電子工学分野内の現行の方法における進歩により、製造精度に関して有利である。このように、ひげぜんまいを製造することは可能であり得るが、マイクロ機械加工可能材料のトライボロジー特性が不十分であることにより、マイクロ機械加工可能材料を時計のすべてのパーツに用いることは未だ可能ではない。さらに、現行の製造方法は、依然として実施が複雑であり、製造されたパーツに直接触れる必要があるため、これらのパーツに対して損傷を与えるリスクがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、パーツに触れる必要なしにパーツが時計などのデバイス内にいつでも載置できる状態となるように、パーツの機能的部分に触れることを回避してパーツを簡単かつ確実に事前組付けすることを可能にする方法を提案することにより、前述のすべてのまたは一部の欠点を解消することである。さらに、この方法により、ほとんどの機械的な時計用パーツに適用することが可能なマイクロ機械パーツを高品質に製造することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本発明は、
a)マイクロ機械加工可能材料から構成される基板を用意するステップと、
b)フォトリソグラフィを用いて、前記基板の全体にわたって機械パーツを含むパターンをエッチングするステップと
を含む、機械パーツを製造する方法において、
c)マイクロ機械加工可能材料から構成される部分に触れる必要なしに、前記パーツがいつでも載置できる状態となるように、前記パーツの上にクリップを組み付けるステップと、
d)時計ムーブメントなどのデバイス内に前記パーツを載置するために前記基板から前記パーツをリリース(釈放)するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法に関する。
【0005】
本発明の他の有利な特徴によれば、
− ステップc)は、e)フォークが前記パーツと協働するように、フォークが取り付けられたサポートの上に前記基板を載置するステップと、f)サポートに載置されたパーツの上にクリップを組み付けるステップとを含む。
− ステップe)は、g)アラインメント手段を用いて前記サポートに対して基板を案内して、前記基板を確実に配向させるステップと、h)基板およびパーツを、少なくとも1つのピンおよびサポートに固定された前記フォークに対してそれぞれ摺動させて、前記少なくとも1つのピンのショルダおよび前記フォークにそれぞれ当接するようにして、クリップの組付けの準備をするステップとを含む。
− アラインメント手段は、ステップg)次いでステップh)の連続性を保証するように、前記少なくとも1つのピンおよび前記フォークよりも高い位置に位置する。
− サポートは、ステップg)の案内を向上させるために複数のアラインメント手段を備える。
− この方法は、ステップb)とステップc)との間に、i)前記エッチングされた基板の上面および下面がアクセス可能な状態になるように、ベースの上に前記エッチングされた基板を載置するステップと、j)前記パーツの外側面の上に、前記マイクロ機械加工可能材料よりも優れたトライボロジー特性を有するコーティングを堆積するステップとをさらに含む。
− ステップh)は、k)アラインメント手段を用いて前記ベースに対して基板を案内して、前記基板を確実に配向させるステップと、i)前記サポートに対して基板を高所に保持するために、前記サポートからある距離を置いて構成された少なくとも1つのピンの肩部に基板が当接するまで、サポートに固定された前記少なくとも1つのピンに対して基板を摺動させるステップとを含む。
− アラインメント手段は、ステップk)次いでステップi)の連続性を保証するように、前記少なくとも1つのピンよりも高い位置に位置する。
− サポートは、ステップk)における案内を向上させるために複数のアラインメント手段を有する。
− ステップb)の際に、少なくとも1つの材料ブリッジが、パーツを基板に固定した状態に保つために、パターン中にエッチングされる。
− 前記少なくとも1つの材料ブリッジは、ステップe)を容易にすることを可能にする脆弱区域を生み出すように、パターンに連結された前記パーツの端部に幅細部分を有する。
− ステップd)は、前記少なくとも1つの材料ブリッジを破断させるように、パーツと基板とを相対移動させることによって達成される。
− 複数のパーツが、同一の基板から製造される。
− 前記マイクロ機械加工材料は、結晶シリコン、結晶シリカおよび結晶アルミナからなる群より選択される。
【0006】
添付の図面を参照として、非限定的な示唆として与えられる以下の説明から、他の特徴および利点がさらに明瞭なものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】フォトリソグラフィおよびエッチングの工程の後の基板の概略図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3】本発明によるベースの上への組付け工程の概略図である。
【図4】コーティング堆積工程の概略図である。
【図5】本発明によるサポートの上への組付け工程の概略図である。
【図6】本発明によるクリップ組付け工程の概略図である。
【図7】本発明の方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図7に図示される例は、全体的に1で示される1つの方法の流れ図を示す。方法1は、マイクロ機械加工可能材料のベースから心部が構成される機械パーツ51を製造するための6つの工程3、5、7、9、11および13から主として構成される。実際に、マイクロ機械加工可能材料は、その1マイクロメートル未満の精度により、例えば時計用のパーツなどの製造に特に有効であり、有利には、通常使用される金属材料の代替となる。
【0009】
以下の説明においては、マイクロ機械加工可能材料は、例えば単結晶シリコン、石英などの結晶シリカ、またはコランダム(合成サファイアとも呼ばれる)などの結晶アルミナであってよい。他のマイクロ機械加工可能材料を想定することが可能であることは、明らかである。
【0010】
工程3は、例えば電子コンポーネントを製造するために使用される単結晶シリコン・ウェハなどのマイクロ機械加工可能材料から構成される基板53を選択することを含む。好ましくは、パーツ51の最終厚さを適合化させるために、薄肉化段階が工程3に含まれる。この段階は、機械的または化学的バック・ラッピング技術によって達成されてよい。
【0011】
工程5は、フォトリソグラフィとその後のエッチングとにより、基板53全体にわたって製造すべき機械パーツ51を含むパターン50を作成することである。有利には、図1および図2において分かるように、パーツ51のサイズよりも基板53のサイズが大きいことにより、複数のパターン50をエッチングすることが可能であり、したがって複数のパーツ51を同一の基板53から製造することが可能である。
【0012】
図1および図2に図示される例においては、各機械パーツ51は、時計用のがんぎ車である。当然ではあるが、方法1により、他の時計用パーツを製造することが可能であり、また、以下において説明されるように、複数の異なるパーツを同一基板53の上に製造することも可能である。
【0013】
工程7は、エッチングされた基板53の上面および下面がアクセス可能な状態になるように、ベース55の上にエッチングされた基板53を載置することを含む。この工程により、前記マイクロ機械加工可能材料よりも優れたトライボロジー特性を有するコーティングをパーツ51の外側面の上に堆積することを含む工程9の実施が、容易になる。実際に、ベース55よりも高い位置に基板53を配置することにより、各パーツ51の上部、厚さ部および下部がアクセス可能となるため、コーティングの堆積が容易になる。
【0014】
工程9により、有利には任意の不十分なトライボロジー特性を有するマイクロ機械加工可能材料に代わるコーティングを、堆積することが可能となる。
【0015】
例えば、このコーティングは、炭素同素体ベースのものであってよい。化学気相成長法(CVD)による合成ダイヤモンドなどの結晶性炭素コーティングの堆積を想定することも可能である。また、物理蒸着法(PVD)によりダイヤモンド状炭素(DLC)などの非晶質炭素を堆積することも可能である。当然ながら、1つまたは複数の他の材料を、炭素の代替としてまたは炭素への追加として使用することが可能である。他の堆積方法を想定することもまた可能である。
【0016】
工程13は、マイクロ機械加工可能材料から構成されるパーツに触れる必要なしに、事前組付けされたパーツ51がいつでも載置できる状態となるように、サポート81を用いてパーツ51上にクリップ91を組み付けることを含む。
【0017】
工程11は、基板53から各パーツ51をリリース(釈放)することを含む。このように、方法1による図面に示される例においては、数十の機械パーツ51を同一の基板53の上に得ることが可能である。図1から図6に図示される例においては、例えば単結晶シリコンから心部が構成されるがんぎ車を得ることが可能であり、以下に説明される実施形態によれば、合成ダイヤモンドから構成される外側面および/または事前組付けされたクリップ91を備えるがんぎ車を得ることが可能である。
【0018】
次に、主要な工程3、5、7、9、11および13より、実施形態がそれぞれ説明される。第1の実施形態においては、方法1は、図7において単線により示される、連続する工程3、5、13および11を含む。第1の工程3は、マイクロ機械加工可能材料から構成される基板53を選択することを含む。
【0019】
第2の工程5は、フォトリソグラフィとその後のエッチングとにより、基板53の全体にわたって製造すべき機械パーツ51をそれぞれが備えるパターン50を作成することを含む。図7の流れ図において示される第1の実施形態によれば、第2の工程5は、3つの段階15、17および19を含む。
【0020】
第1の段階15においては、保護マスクが、基板53の上に構成される。好ましくは、保護マスクは、感光性樹脂を用いて構成される。したがって、保護マスクは、作成すべき各パターン50と一致する形状に前記マスクを構成するように選択的放射を用いて、形成される。この工程15により、非常に正確に基板53の上に選択的に、任意の平坦形状をエッチングすることが可能となる。
【0021】
第2の段階17においては、基板53−保護マスク・アセンブリの異方性エッチングが実施される。好ましくは、深堀り反応性イオンエッチング(DRIE)が利用される。異方性エッチングは、前記保護マスクにより保護されない区域で、ほぼ直線状に基板53をエッチングすることが可能である。好ましくは、第2の段階17の際に、このエッチングは、基板53の全厚にわたって、および場合によってはこのようなエッチングに適したマイクロ機械加工可能材料の結晶軸に沿って、実施される。
【0022】
さらに、本発明によれば、好ましくは、図1および図2に図示されるような各パターン50は、2つの材料ブリッジ57を有する。これらのブリッジにより、工程11に至るまで、基板53に対してパーツ51を定位置に保持することが可能となる。図2において確認できるように、材料ブリッジ57は、リリース(釈放)工程11を容易なものとすることを可能にする脆弱区域を生み出すために、パーツ51のパターンに連結された端部に幅細部分を有する。
【0023】
最後に、第1の実施形態によれば、また第2の段階17は、基板53中に、アラインメント手段の一部を形成する孔59をエッチングするために利用される。図1に図示される例においては、3つの孔59が、互いから約120度の位置におよび基板53の端部付近に形成され、分散配置されているのが分かる。
【0024】
第2の工程5の第3および最終の段階19においては、保護マスクが、基板53の表面から除去される。次いで、図1および図2に図示されるような2つの材料ブリッジ57により基板53に固定されるパーツ51を有する複数のパターン50を含む基板53が、得られる。当然ながら、工程5においては、単一の材料ブリッジ57または3つ以上の材料ブリッジ57を作成することを想定することが可能である。
【0025】
第1の実施形態によれば、第3の工程13は、マイクロ機械加工可能材料から構成されるパーツに触れる必要なしに、事前組付けされたパーツ51がいつでも載置できる状態となるように、サポート81を用いてパーツ51上にクリップ91を組み付けることを含む。工程13は、段階25および27を含む。
【0026】
第1の段階25は、フォーク87が取り付けられたサポート81の上に基板53を載置し、それにより1つのフォーク87の歯82が、各パーツ51と協働して、クリップ91の組付けを容易にすることが含まれる。図5において確認できるように、まず初めに方向Dに沿ってサポート81に基板53を近づけるように移動させることにより、基板53は、アラインメント手段を用いて方向Eに沿って案内されて、それにより基板53は、サポート81に対して確実に配向される。
【0027】
好ましくは、アラインメント手段は、サポート81に対してほぼ垂直に固定されたピン85の延在部内に載置された斜角面コラム80により形成され、この斜角面コラム80は、工程5において基板53中に構成された凹部59の1つと協働する。好ましくは、方法1は、3つのアラインメント手段80、59により、第1の段階25における案内を向上させることを含む。
【0028】
第2におよび最終的に、並進方向Dに沿ってサポート81の方に基板53を近づけ続けることにより、基板53次いで各パーツ51がそれぞれ、共にサポート81に固定される各ピン85および各フォーク87に対して摺動する。第2の期間は、基板53および各パーツ51が、各ピン85の肩部88および、歯82によって画定されたスペース84の底部に形成される各フォーク87の肩部に当接したときに終了する。
【0029】
段階25の終了時である図5において確認できるように、基板53および(依然として基板53に固定されたままの)各パーツ51は、安定的に配置され、その自由度は、並進方向Dの方向に上方にのみとなる。図2の右最上部のパターンの上に示される例においては、フォーク87の3つの歯82を見ることが可能であり、3つの歯82の形状は、がんぎ車51の2つのアームの間の空きスペースに対応する。当然ながら、フォーク87は、製造するパーツ51に応じて適合化される。好ましくは、サポート81は、例えばプラスチック・ポリマーなど、パーツ51に損傷を与えない材料から形成される。
【0030】
好ましくは、アラインメント手段80、59は、第1の局面次いで第2の局面の連続性を保証するように、ピン85およびフォーク87よりも垂直方向に高い位置に位置する。
【0031】
第3の工程13の第2の段階27においては、クリップ91が、各パーツ51の上に組み付けられる。図6に図示される例においては、第1の組み付けられたパーツ51と、右側の、クリップ91がまだ組み付けられていない第2のパーツ51とを見ることができる。当然のことではあるが、図6は、理解をさらに促すために用いられる。実際には、クリップ91の組付けは、ピンセット89を用いた1つごとの組付けに限定されるべきではなく、当然ながら、自動機械を用いて各パーツ51に対して一斉に行うことが可能である。
【0032】
右側のまだ組み付けられていないパーツ51において分かるように、まず初めに、クリップ91は、歯82によって画定されたスペース84内に収容されたパーツ51の穿孔中央部69の方向に、並進方向Fに沿って移動される。好ましくは、中央部69に対するクリップ91の最大並進移動は、スペース84の延在部として構成された孔86の深さによって範囲を限定され、それによりクリップ91は、パーツ51に対して確実に載置される。
【0033】
第2に、すべてのクリップ91が、すべてのパーツ51の上に配置されると、クリップ91およびパーツ51は、例えば、各クリップ91に関連付けされる中央部69の中に各クリップ91を固定する効果を有する各クリップ91の上に存在する接着剤が重合するように、炉内で加熱されることによって、最終的に互いに固着される。
【0034】
このようにして、工程13の終了時に、事前組付けされた各パターン50のパーツ51を含む基板53が得られる。有利には、本発明によれば、数十のパーツ51を依然として共に取り扱うことが可能であり、例えば時計ムーブメントなどのデバイスの生産ラインに直接的に、サポート81と共に、またはサポート81を伴わずに供給することが可能である。
【0035】
第4のおよび最後の工程11は、材料ブリッジ57を破断するために、パーツ51と基板53と間に相対移動を生じさせることを含む。有利には、本発明によれば、この移動は、直接クリップ91を引くことにより達成することが可能であり、これにより、マイクロ機械加工可能材料に触れることなく、各パーツ51を最終載置することが可能になる。したがって、工程11は、ピンセットを用いて手動的に、または自動機械を用いて実現することが可能である。
【0036】
図1および図2に図示される例においては、パーツ51は、がんぎ車であり、クリップ91は、その枢動軸である。しかし、本発明はそれにまったく限定されず、例としては、クリップ91が枢動ピンとは異なる機能パーツであることが可能であるのと同様に、パーツ51は、別のタイプの歯車列、冠歯車、さらにはひげぜんまい−ひげ玉アセンブリであることが可能である。
【0037】
第2の実施形態は、マイクロ機械加工可能材料がパーツ51の意図される用途に対して不十分なトライボロジー特性を有する場合のために提供される。第2の実施形態においては、方法1は、図7において二重線により示されるように、連続する工程3、5、7、9、13および11を含む。第1の工程3、5は、第1の実施形態と比較して変更はない。図7に図示されるように、第2の実施形態は、第1の実施形態におけるように工程5から工程13に進む代わりに、まず工程7および9を経て、その後に工程13に進む。これにより、基板53のパーツ51のそれぞれの上にコーティングを堆積することが可能となるので有利である。
【0038】
第2の実施形態によれば、第3の工程7は、堆積工程9の準備をするために、基板53の上面および下面がアクセス可能な状態になるように、ベース55の上にエッチングされた基板53を載置することを含む。工程7は、段階21および23を含む。
【0039】
図3は、第2の実施形態による一例のベース55を図示する。ベース55は、プレートであり、このプレートの材料は、例えばセラミックなど、工程9の温度に耐えることが可能である。ベース55に対して基板53を高所に保持するために、ベースは、工程5の際に基板53中に構成される孔59と協働するピン61を有する。ベース55と同一の理由により、好ましくは、ピン61は、タングステンまたはタンタルから構成される。
【0040】
好ましくは、概して円筒形のピン61はそれぞれ、低部63を有し、この低部63は、肩部67によって、低部63より小さな部分である高部65に連結される。低部63は、固定的な態様で、ベース55中にほぼ垂直に載置される。高部65の延在部には、以下において言及されるアラインメント手段に属する斜角面コラム60が存在する。
【0041】
図3において分かるように、第1の段階21においては、基板53を方向Aに沿ってベース55に近づけるように移動させることにより、基板53は、アラインメント手段を用いて方向Bに沿って案内され、それにより基板53は、ベース55に対して確実に配向される。
【0042】
好ましくは、アラインメント手段は、凹部59の1つと共同する斜角面コラム60によって形成される。好ましくは、方法1は、3つのアラインメント手段60、59により、第1の段階21における案内を向上させることを含む。
【0043】
第2の段階23においては、並進方向Aに沿って近接移動し続けながら、基板53は、基板53が各ピン61の肩部67にほぼ当接するまで、ピン61の各高部65に対して摺動する。工程7の終了時である図3において分かるように、基板53は、安定的に置かれ、その自由度は、並進方向Aの方に上方にのみとなる。
【0044】
図2に図示される例においては、右最下部のおよび左最上部のパターン50の上に、アラインメント手段コラム60−孔59の変形例を見ることが可能である。この変形例は、基板53の端部のスペースに孔59を構成することが不可能である場合に提供される。この変形例によれば、パターン50の空部とそれぞれ協働する2つのコラム93、97が提供される。好ましくは、2つのパターン50は、互いから可能な限り離れており、各パターン50は、基板53の端部の付近に位置する。図2に図示される例においては、ほぼ三角形状の各コラム93および97が、中心対称に沿ってそれぞれ異なるパターン50と協働して、工程21における案内を向上させることが分かる。好ましくは、この対称は、基板53の中心に対して実現され、図1に図示される例の左最上部および右最下部のパターン50を用いる。
【0045】
好ましくは、アラインメント手段60、59、93、97は、段階21次いで段階23の連続性を保証するように、ピン61よりも垂直方向に高い位置に位置する。
【0046】
第2の実施形態によれば、第4の工程9は、各パーツ51の外側面の上にコーティングを堆積することを含む。上述において説明されたように、例えばコーティングは、特に各パーツ51の摩擦係数を低下させることによって各パーツ51のトライボロジーを向上させる炭素同素体であってよい。図4において矢印Cにより示されるように、工程9においては、基板53を高所に配置する工程7により、および工程5において基板53を貫通するまでエッチングしたことにより、コーティングは、基板53の下方に、基板53の厚さ部分の間に、および基板53の上方に堆積される。
【0047】
工程9の終了時に、基板53は、ベース55から取り外され、次いで第2の実施形態は、第1の実施形態と同一の様式で工程13を実施する。このようにして、工程13の終了時には、堆積によってコーティングされ、クリップ91を事前組付けされた、各パターン50のマイクロ機械加工可能材料からなるパーツ51を含む基板53が得られる。有利には、本発明によれば、数十のパーツ51を依然として共に取り扱うことが可能であり、例えば時計ムーブメントなどのデバイスの組付けラインに直接的に、サポート81と共に、またはサポート81を伴わずに供給することが可能である。
【0048】
第6のおよび最後の工程11は、材料ブリッジ57を破断するために、パーツ51と基板53と間に相対移動を生じさせることを含む。有利には、本発明によれば、この移動は、直接クリップ91を引くことにより実現することが可能であり、これにより、マイクロ機械加工可能材料および/または堆積されたコーティングに触れることなく、各パーツ51を最終組付けすることが可能になる。したがって、工程11は、ピンセットを用いて手動的に、または自動機械を用いて実現することが可能である。第1の実施形態と同様に、第2の実施形態による本発明は、図1および図2に図示されるようながんぎ車に限定されない。
【0049】
当然ながら、本発明は、示された例に限定されず、当業者には明らかになろう様々な変形および変更を行うことが可能である。特に、図7において三重線により示されるように、連続する工程3、5、7、9および11を含む方法1の第3の実施形態を想定することが可能である。この第3の実施形態により、堆積されたコーティングを有するパーツ51が製作されるが、第1および第2の実施形態においては存在するクリップ91などの把持手段を欠いているため、工程11の実施は比較的困難になる。この場合、工程11は、前記パーツを回収するために、材料ブリッジ57が破断するように材料ブリッジ57に対して応力を加えることを含むことが可能である。
【0050】
パーツ51が最終工程11において基板53からようやく取り外されるため、本発明によって各工程間の編成の簡易化をもたらすことが可能であることが、この3つの変形形態により示される。この利点は、各工程間において基板53だけを扱うことにより、数十のパーツ51を移動させることが可能であることである。
【符号の説明】
【0051】
1 方法; 3,5,7,9,11,13 工程;
15,17,19,21,23,24,25,26,27 段階; 50 パターン;
51 機械パーツ; 53 基板; 55 ベース; 57 材料ブリッジ;
59 孔; 60 斜角面コラム; 61 ピン; 63 低部; 65 高部;
67 肩部; 69 孔; 80 斜角面コラム; 81 サポート; 82 歯;
84 スペース; 85 ピン; 86 孔; 87 フォーク; 88 肩部;
89 ピンセット; 91 クリップ; 93 コラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)マイクロ機械加工可能材料から構成される基板(53)を用意する(3)ステップと、
b)フォトリソグラフィを用いて、前記基板の全体にわたって機械パーツ(51)を含むパターン(50)をエッチングする(5)ステップと
を含む、機械パーツ(51)を製造する方法(1)において、
c)マイクロ機械加工可能材料から構成される部分に触れる必要なしに、前記パーツ(51)がいつでも載置できる状態となるように、前記パーツの上にクリップ(91)を組み付ける(13)ステップと、
d)デバイス内に前記パーツを載置するために前記基板(53)から前記パーツ(51)をリリースする(11)ステップと
をさらに含むことを特徴とする、機械パーツを製造する方法。
【請求項2】
前記ステップc)は、
e)フォーク(87)が前記パーツと協働するように、前記フォーク(87)が取り付けられたサポート(81)の上に前記基板(53)を載置する(25)ステップと、
f)前記サポート(81)に載置された前記パーツ(51)の上に前記クリップ(91)を組み付ける(27)ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップe)は、
g)アラインメント手段(80、59、93、97、50)を用いて前記サポートに対して前記基板(53)を案内して(E)、前記基板を確実に配向させるステップと、
h)前記基板(53)および前記パーツ(51)を、少なくとも1つのピン(85)および前記サポート(81)に固定された前記フォーク(87)に対してそれぞれ摺動させて、前記少なくとも1つのピンのショルダ(88)および前記フォークにそれぞれ当接するようにして、前記クリップ(91)の組付けの準備をするステップと
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アラインメント手段(80、59、93、97、50)は、前記ステップg)次いで前記ステップh)の連続性を保証するように、前記少なくとも1つのピンおよび前記フォークよりも高い位置に位置することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サポート(81)は、前記ステップg)における案内を向上させるために複数のアラインメント手段(80、59、93、97、50)を備えることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記アラインメント手段は、前記ステップb)において前記基板(53)中に構成された凹部(59、50)と協働するための、前記サポート(81)に固定された少なくとも1つのコラム(80、93、97)を備えることを特徴とする、請求項3から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各凹部(59)が、前記基板(53)の端部付近に構成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各凹部が、前記パターン(50)中の空きスペースに相当することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップb)と前記ステップc)との間に、
i)前記エッチングされた基板の上面および下面がアクセス可能な状態になるように、ベース(55)の上に前記エッチングされた基板を載置する(7)ステップと、
j)前記パーツの外側面の上に、前記マイクロ機械加工可能材料よりも優れたトライボロジー特性を有するコーティングを堆積する(9、C)ステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ステップh)は、
k)アラインメント手段(60、59、93、97)を用いて前記ベースに対して前記基板(53)を案内して(21、B)、前記基板を確実に配向させるステップと、
i)前記サポートに対して前記基板(53)を高所に保持するために、前記サポートからある距離を置いて構成された少なくとも1つのピン(61)の肩部(67)に前記基板が当接するまで、前記サポート(55)に固定された前記少なくとも1つのピン(61)に対して前記基板(53)を摺動させる(23、A)ステップと
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アラインメント手段(60、59、93、97)は、前記ステップk)次いで前記ステップi)の連続性を保証するように、前記少なくとも1つのピンよりも高い位置に位置することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サポート(55)は、前記ステップk)における案内を向上させるために複数のアラインメント手段(60、59、93、97、50)を有することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記アラインメント手段は、前記ステップb)において前記基板(53)中に構成された凹部(59、50)と協働するための、前記サポート(55)に固定された少なくとも1つのコラム(60、93、97、50)を備えることを特徴とする、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
各凹部(59)が、前記基板(53)の端部付近に構成されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
各凹部が、前記パターン(50)中の空きスペースに相当することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップb)の際に、少なくとも1つの材料ブリッジ(57)が、パーツ(51)を前記基板(53)に固定した状態に保つために、前記パターン(50)中にエッチングされることを特徴とする、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの材料ブリッジは、前記ステップe)を容易にすることを可能にする脆弱区域を生み出すように、前記パーツのパターンに連結された端部に幅細部分を有することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ステップd)は、前記少なくとも1つの材料ブリッジ(57)を破断させるように、前記パーツ(51)と前記基板(53)とを相対移動させることによって達成されることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
基板(53)は、前記ステップa)と前記ステップb)との間で、前記パーツ(51)の最終厚さを適合化させるように薄肉化されることを特徴とする、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
複数のパーツ(51)が、同一の基板(53)から製造されることを特徴とする、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ステップb)は、
前記基板(53)の上に、前記パーツと一致する形状に保護マスクを構成する(15)ステップと、
前記基板−マスク・アセンブリを異方性エッチングする(17)ステップと、
前記保護マスクを除去する(19)ステップと
を含むことを特徴とする、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記保護マスクは、感光性樹脂を用いて構成されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マイクロ機械加工材料は、結晶シリコン、結晶シリカおよび結晶アルミナからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記デバイスは時計であることを特徴とする、請求項1から23のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19844(P2010−19844A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163498(P2009−163498)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(506425538)ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド (46)
【Fターム(参考)】