説明

マイクロX線源

本発明は、アノードとして作用するターゲット(2)と、作動中にターゲット(2)と相互作用し且つ電子発生源として機能するカソード(3)とを含んでいるマイクロX線発生源(1)であり、ターゲット(2)は、電子発生源(3)からの電子が到達するスポットを有する金属箔によって実施化され、前記金属箔は、前記スポット(4)において局部的により薄くされていることを特徴とするマイクロX線発生源である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、アノードとして作用するターゲットと、作動中に前記ターゲットと相互作用し且つ電子の発生源として機能するカソードとを含み、前記ターゲットが、前記電子の発生源からの電子が到達する点を有している金属箔として実施化されているマイクロX線発生源に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなマイクロX線発生源は、実際上は良く知られており、それ自体は、ほぼ1μmのような大きさであるスポットのサイズにおいて従来のマイクロX線発生源とは異なっている。
【0003】
このようなマイクロX線発生源は、例えば、マイクロエレクトロニクス製造、材料応力研究、(DNA)構造研究、コンピュータ断層撮影及び地球物理研究における検査及び制御を行うために高い分解能が重要である領域に適用される。
【0004】
公知のマイクロX線発生源においては、ターゲットは、当該ターゲット材が適用される基板形態の熱放散手段と組み合わせて使用される。しかしながら、このような基板も同様にターゲットによって射出される目的のX線とは異なるX線を発生し、これはX線発生源の品質及び達成される分解能を低下させるので、上記の点は不利である。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、マイクロX線発生源を改良して、マイクロX線発生源の出力に関して譲歩することなく比較的高い分解能を達成することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明によるマイクロX線発生源は、金属箔が前記スポットにおいてより薄くされていることを特徴としている。
【0006】
スポット領域のみをより薄くすることによって、極めて集中したX線が発生される領域が提供される。これは、これらのX線の発散を効率良く制限し、従って、本発明によるマイクロX線発生源によって得ることができる分解能が改良される。当該スポットは円形であるが、溝穴形態を採ることもできることは注目されるべき点である。後者の場合には、電子線は、このスポットにおいて往復動することができるかも知れない。
【0007】
本発明の目的を達成する見込みを更に促進するためには、カソードにおいて生じ且つターゲットにおいて導かれる電子が描く経路が、熱放散手段によって制限を受けないことが望ましい。
【0008】
それにもかかわらず適切な熱放散を提供するためには、ターゲットに、スポットのすぐ隣に且つ第一の近辺に、肥厚形態の熱放散手段を設けることが望ましく、これは、より薄い部分からの距離が増すにつれてより厚くなる。
【0009】
効率の良い熱放散に関して、肥厚部分を第一の近辺のすぐ隣の第二の近辺まで延ばすだけで十分であり、前記第二の近辺において、ターゲットは、ほぼ均一な厚みを有することで十分である。この均一な厚みは、例えば、より薄い部分の厚みの少なくとも2倍である。
【0010】
本発明によるマイクロX線発生源はまた、より薄い部分の厚みがせいぜい約2.5μmであるように、100kV−電子発生源を使用して適切に実施化される。これによって、X線ビームが約1μmの直径を有するマイクロX線発生源を実現することができる。
【0011】
このマイクロX線発生源は、ターゲットが真空空間をシールするように実現するのが好ましい。
本発明はまた、マイクロX線発生源において使用するのに適したターゲットの製造のための方法として実施することもできる。本発明に従って、この方法は、相互に重ねた異なる材料層によって構成されたプレートによる構成を特徴としており、当該プレートにおいては、頂部の材料層は、当該頂部材料層のすぐ下の下方層よりもエッチング剤とより速く反応するようにされ、このようなエッチング剤を使用することによって、頂部材料層を下方層まで局部的に下方へエッチングするようになされている。
【好ましい実施形態の説明】
【0012】
以下、非限定的な例示的な実施形態及び図面によって本発明を更に説明する。
図1は、本発明によるマイクロX線発生源の構成の極めて概略的な図である。
図面に示されているマイクロX線発生源は、参照符号1によって示されており、アノードとして作用するターゲット2と、作動中にターゲット2と相互作用し且つ電子発生源として機能するカソード3とを含んでいる。
【0013】
ターゲット2は金属箔の形態で実施されている。適切な材料は、例えば、タングステン、イリジウム又はオスミウムである。
ターゲット2は更に、電子発生源3からの電子がターゲット2の材料とぶつかるスポット4を有している。
【0014】
この図は更に、マイクロX線発生源1には、ターゲット2へ向けられる電子ビームの方向において、分離器5、レンズ6及び偏向器7が設けられても良いことを示している。当業者は、これらの構成部品の機能及び動作によって知ることができるので更なる説明は不要である。
【0015】
この図面は、ターゲット2の金属箔がスポット4において局部的により薄いことを示している。
当業者は更に、ターゲット2には、スポット4のより薄い部分のすぐ隣で且つ第一の近辺Aに、肥厚形態の熱放散手段5が設けられ、当該熱放散手段5は、スポット4のより薄い部分からの距離が長くなるにつれてより厚くされていることが図面から分かるであろう。
【0016】
第一の近辺Aのすぐ隣の第二の近辺においては、ターゲット2は、例えば、100μmのほぼ均一な厚みを有している。
スポット4においては、ターゲット2は、厚みがせいぜい約2.5μmである比較的薄い部分を備えている。
【0017】
この図面は更に、ターゲット2は、カソード3とスポット4との間の電子ビームの経路内に配置された熱放散手段から影響を受けないことを示している。
実際の実施形態においては、スポット4の半径は約2.5μmとすることができ、タングステン箔上のスポットは1900Kの温度まで達することができ、スポット4の厚みは局部的に約2.4μmとすることができる。
【0018】
この図は更に、ターゲット2が真空空間8をシールしており、その中に、カソード3、分離器5、レンズ6及び偏向器プレート7が設けられていることを示している。
最後に、本発明は、ターゲット2を製造する方法として実施することができる。
【0019】
本発明の一つの特徴に従って、このターゲット2は、頂部の材料層が頂部の材料層のすぐ下方の下方層よりもエッチング剤とより速く反応する互いに重ねられた異なる材料層によってプレートを構成し、前記エッチング剤を使用して頂部材料層を局部的に下方の層まで下方へエッチングすることによって製造される。
【0020】
前記ターゲットが形成されるプレートは、例えば、タングステンの層を銅プレート上に蒸着することによって且つ任意的にはタングステン層の自由な側に銅のシール層を適用することによって得られる。後者は、電気メッキによって行うことができる。スポットを形成するためには、銅製の上方層は、適当なエッチング剤を使用して引き続いてエッチングされる。スポットを永久に取り巻いている銅材料は、優れた熱伝導性材料を形成するという事実は良く知られている。銅の代わりにダイヤモンドを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明によるマイクロX線発生源の構成の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードとして作用するターゲット(2)と、作動中にターゲット(2)と相互作用し且つ電子発生源として機能するカソード(3)とを含んでいるマイクロX線発生源(1)であり、前記ターゲット(2)は、電子発生源(3)からの電子が到達するスポットを有する金属箔によって形成され、前記金属箔は、前記スポット(4)において局部的により薄く形成されていることを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロX線発生源であり、
前記ターゲット(2)に、前記スポット(4)のすぐ隣で且つ第一の近辺(A)に、肥厚形態の熱放散手段が設けられており、当該熱放散手段は前記より薄い部分からの距離が長くなるにつれてより厚くなされていることを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロX線発生源であり、
前記第一の近辺(A)のすぐ隣の第二の近辺において前記ターゲットはほぼ均一な厚みを有することを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載のマイクロX線発生源であり、
100kV−電子発生源を使用しているとき、前記より薄い部分の厚みがせいぜい2.5μmであることを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一項に記載のマイクロX線発生源であり、
前記カソード(3)から発生され且つターゲット(2)に向けられる電子の採る経路が熱放散手段によって影響を受けないことを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマイクロX線発生源であり、
前記ターゲット(2)が真空空間(8)をシールしていることを特徴とするマイクロX線発生源。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のマイクロX線発生源(1)における使用に適しているターゲット(2)の製造方法であり、
重ね合わされた種々の材料層からなるプレートによって構成され、頂部の材料層は、当該頂部材料層のすぐ下方の層よりも速くエッチング剤と反応し、当該エッチング剤を使用することによって、頂部材料層が局部的に前記下方層まで下方へエッチングされることを特徴とする製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−533662(P2008−533662A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500648(P2008−500648)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000118
【国際公開番号】WO2006/096052
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(502053029)
【Fターム(参考)】