説明

マクロファージ−刺激タンパク質受容体(RON)の阻害

本発明は、マクロファージ-刺激タンパク質受容体(“MSP-R”又は“RON”)に特異的な抗体を投与することを含む、哺乳動物における腫瘍及び他の疾患を治療する方法に関する。本発明は、RON活性化を阻害する、ヒト抗体を含む、Ronに特異的な抗体又は(of)抗体断片を含有する組成物を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、マクロファージ-刺激タンパク質受容体("MSP-R"又は"RON")に特異的な抗体を投与することを含む、哺乳動物における腫瘍及び他の疾患の治療法に関する。本発明は更に、RON活性化を阻害する、ヒト抗体を含むRONに特異的な抗体又は抗体断片を含有する組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
RONは、受容体チロシンキナーゼのc-metファミリーに属する。RONは、細胞外α鎖及び膜貫通β鎖で構成された、ヘテロ二量体タンパク質である。RONは最初に、1本鎖前駆体として発現され、その後α及びβ鎖へ切断される(1)。β鎖は、MSPの受容体への結合に必要であり、並びにクリングルドメイン2及び3は、RON/MSP相互作用に必要であるとると考えられる。米国公開特許第2003/0073656号。RONの細胞外ドメインは、c-metファミリー受容体の対応するドメインとほとんど相同性がないと思われる。実際、c-metファミリーの他の受容体を刺激する肝細胞増殖因子(HGF)のRON受容体への結合は、チロシンキナーゼ活性を刺激しない。WO02/083047。
【0003】
RONは、細胞の移動、形態変化及び浸潤において役割を有すると考えられる(1)。しかしより以前の刊行物は、悪性転換(transformation)の誘導に関するRONの限定された役割を認めるが、RON活性化による侵襲性増殖の促進を認めている(16)。米国公開特許第2003/0073656号は、RONの活性化は、肝臓、胆道、胆管、胆嚢及び関連する肝胆道系の疾患において、役割を果たし得ると推測している。
【0004】
変異、欠失、遺伝子再構成及び選択的mRNAスプライシングは、いかなるリガンド結合も伴わずにRONの活性化を引き起こすことができる(1)。RONのチロシンキナーゼドメインの変動は、RONの活性化において重要な役割を果たすことができる(1)。様々な癌細胞株由来のRONのクローニングは、RONをコードしているmRNAの様々な欠損に起因したRON活性化を示している。
【0005】
c-metのリガンド(HGF)に加え、RONのリガンド(マクロファージ-刺激タンパク質;MSP、別称HGF-様タンパク質)は、クリングル-ドメインプラスミノーゲン-関連タンパク質ファミリーの一員である(1)。MSPは、その名前が示すように、当初様々な手段によりマクロファージを刺激することが認められた(2,3)。例えばある種のRON-発現マクロファージへのMSPの添加は、形態変化、走化性、マクロピノサイトーシス、ファゴサイトーシス及び免疫メディエーター産生を誘導した(4, 5, 6)。RONは、MSPがRONをリン酸化することが示されている角化細胞のような上皮細胞において発現され、並びに細胞接着/運動性、抗-アポトーシス及び増殖反応を誘起する多くのシグナル伝達経路を活性化することも認められた(7,8)。最近数年間に、RONの過剰発現が、いくつかの上皮腫瘍及び細胞株(例えば、結腸(9, 10, 11)、肺(12)、乳房(13))において認められた。最近の研究においては、肺腫瘍が、その肺にRONを過剰発現するように操作されたトランスジェニックマウスにおいて発生した(14,15)。
RONの阻害は腫瘍又は癌細胞株の増殖を排除することができるかどうかを説明する研究は、まだ報告されていない。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、マクロファージ-刺激タンパク質受容体("MSP-R"又は"RON")に特異的な抗体を投与することを含む、哺乳動物において腫瘍及び他の疾患を治療する方法に関する。本発明は更に、RON活性化を阻害する、ヒト抗体を含む、RONに特異的な抗体又は抗体断片を含有する組成物を提供する。
【0007】
本発明は更に、CDR1の配列番号2 (SYAMH);CDR2の配列番号4 (VISYDGSNKYYADSVKG)、及びCDR3の配列番号6 (FSGWPNNYYYYGMDV)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、RONに特異的な、モノクローナル抗体、又はその断片を提供する。
【0008】
本発明は更に、CDR1の配列番号11 (RSSQSLLHSNGFNYVD);CDR2の配列番号 (FGSYRAS)、及びCDR3の配列番号15 (MQALQTPPWT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的な、モノクローナル抗体、又はその断片を提供する。
【0009】
本発明は更に、CDR1の配列番号50 (RSSQSLLHSNGYNYLD);CDR2の配列番号52 (LGSNRAS)、及びCDR3の配列番号 (MQALQTPRT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的な、モノクローナル抗体、又はその断片を提供する。
【0010】
本発明は更に、CDR1の配列番号20 (SHYWS);CDR2の配列番号23 (YIYYSGSTNYNPSLKS)、及びCDR3の配列番号 (IPNYYDRSGYYPGYWYFDL)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、RONに特異的な、モノクローナル抗体、又はその断片を提供する。
【0011】
本発明は更に、CDR1の配列番号 (TLRSGFNVDSYRIS);CDR2の配列番号 (YKSDSDK)、及びCDR3の配列番号18 (MIWHSSAWV)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的な、モノクローナル抗体、又はその断片を提供する。
【0012】
本発明は更に、RON特異的抗体及び抗体断片をコードしている単離された核酸を提供する。同じく発現ベクター、発現ベクターを含む宿主細胞、及び宿主細胞を培養することを含むRON特異的抗体を作製する方法も提供する。
【0013】
本発明は更に、RON特異的モノクローナル抗体又はその断片を含有する医薬組成物を提供する。このような組成物は、RONに特異的な抗体又はその断片を有効量投与することを含む、RONを発現している哺乳動物腫瘍細胞の増殖を阻害する方法において使用することができる。本発明は更に、RONに特異的な抗体又はその断片を有効量投与することを含む、RONを発現する哺乳動物腫瘍細胞の転移活性を阻害する方法を提供する。本発明は、RONに特異的な抗体又はその断片を哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物においてRON活性により仲介された炎症を治療する方法を提供する。
【0014】
本発明の方法は、RON特異的抗体の投与に加え、小型の有機分子を投与することを更に提供し、ここで小型の有機分子は、化学療法薬、抗-血管新生薬又はRON活性化阻害薬である。
【0015】
本発明の方法は、RON特異的抗体の投与に加え、EGFR又はVEGFRのような、受容体チロシンキナーゼに特異的な1種又は複数の抗体を投与することを更に提供する。
【0016】
本発明は、RONに特異的な抗体又はその断片を含有する、哺乳動物においてRONを発現する腫瘍細胞の増殖の阻害のための治療用組成物を提供する。
【0017】
本発明は更に、RONを前記抗体又は(pr)その断片に接触することを含む、RONの存在を検出する方法を提供する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、RONの活性化を阻害する抗体又はその断片の有効量を投与することによる、RONを発現する腫瘍細胞の成長、増殖、転移活性(すなわち、移動及び/又は浸潤)を阻害する方法を提供する。本発明は、RONに特異的な抗体又はその断片の治療用組成物も提供する。更に本発明は、ヒトRON受容体チロシンキナーゼに対する完全なヒト抗体を提供する。このような抗体は、IMC-41A2、IMC-41A10及びIMC-41B12、並びにその断片を含むが、これらに限定されるものではない。
【0019】
天然の抗体は典型的には、ふたつの同一重鎖及びふたつの同一軽鎖を有し、各軽鎖は、鎖間ジスルフィド結合により重鎖へ共有的に連結され、更に複数のジスルフィド結合がふたつの重鎖を互いに連結している。個々の鎖は、同様のサイズ(110-125個のアミノ酸)及び構造を有するが、機能は異なるドメインに折り畳むことができる。軽鎖は、ひとつの可変ドメイン(VL)及び/又はひとつの定常ドメイン(CL)を含むことができる。重鎖も、ひとつの可変ドメイン(VH)及び/又は、抗体のクラス又はアイソタイプに応じて、3又は4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3及びCH4)を含むことができる。ヒトにおいて、アイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、このIgA及びIgGは更に、サブクラス又は亜型(IgA1-2及びIgG1-4)へ小分類される。
【0020】
一般に、可変ドメインは、ひとつの抗体から次のものへ、特に抗原結合部位の位置で、かなりのアミノ酸配列の可変性を示す。超可変又は相補性決定領域(CDR)と称される3種の領域が、VL及びVHの各々で認められ、これはフレームワーク可変領域と称される変化のより少ない領域により支持される。
【0021】
VL及びVHドメインからなる抗体の一部は、消化されたFv(可変断片)であり、抗原結合部位を形成する。1本鎖Fv(scFv)は、1個のポリペプチド鎖上にVLドメイン及びVHドメインを含む抗体断片であり、ここで一方のドメインのN末端及び他方のドメインのC末端は、柔軟なリンカーにより連結されている(例えば米国特許第4,946,778号(Ladnerら);国際公開公報第88/09344号(Hustonら)参照)。国際公開公報第92/01047号(McCaffertyら)は、バクテリオファージのような、可溶性組換え遺伝子ディスプレイパッケージの表面上のscFv断片のディスプレイを開示している。
【0022】
1本鎖抗体を作製するために使用されるペプチドリンカーは、VL及びVHドメインの適切な三次元フォールディングが生じることが確実であるように選択された柔軟なペプチドであることができる。このリンカーは一般に、10〜50個のアミノ酸残基である。好ましくはこのリンカーは、10〜30個のアミノ酸残基である。より好ましくはこのリンカーは、12〜30個のアミノ酸残基である。最も好ましくは、リンカーは15〜25個のアミノ酸残基である。このようなリンカーペプチドの例は、4個のグリシンそれに続くセリンの反復単位を含む。
【0023】
1本鎖抗体は、それらが由来した完全抗体の定常ドメインの一部又は全てを欠いている。従ってこれらは、完全抗体の使用に関連した問題点のいくつかを克服することができる。例えば1本鎖抗体は、重鎖定常領域と他の生物学的分子の間のある種の望ましくない相互作用とは無関係の傾向がある。加えて1本鎖抗体は、完全抗体よりもかなり小さく、完全抗体よりもより大きい透過性を有することができ、このことは1本鎖抗体が、標的抗原-結合部位へより効率的に局在化及び結合することを可能にする。更に比較的小さいサイズの1本鎖抗体は、おそらく完全抗体よりも、それらがレシピエントにおいて望ましくない免疫応答を誘起することが少ないであろう。
【0024】
各1本鎖が第一のペプチドリンカーにより共有的に連結された1個のVH及び1個のVLドメインを有する、複数の1本鎖抗体は、少なくとも1個又は複数のペプチドリンカーにより共有的に連結され、単一特異性又は多重特異性であることができる、多価1本鎖抗体を形成することができる。多価1本鎖抗体の各鎖は、可変軽鎖断片及び可変重鎖断片を含み、ペプチドリンカーにより少なくとも1個の他の鎖へ連結されている。ペプチドリンカーは、少なくとも15個のアミノ酸残基で構成される。アミノ酸残基の最大数は、約100個である。
【0025】
ふたつの1本鎖抗体が一緒にされ、二価の二量体としても公知であるダイアボディを形成することができる。ダイアボディは、ふたつの鎖及びふたつの結合部位を有し、単一特異性又は二重特異性であることができる。ダイアボディの各鎖は、VLドメインへ結合されたVHドメインを含む。これらのドメインは、同じ鎖上のドメイン間の対形成を防止するのに十分に短いリンカーにより結合され、従って異なる鎖上の相補的ドメイン間の対形成が起動し、ふたつの抗原-結合部位を再現する。
【0026】
3種の1本鎖抗体は一緒にされ、三価の三量体としても公知の、トリアボディを形成する。トリアボディは、VL又はVHドメインのカルボキシ末端へ直接融合されたVL又はVHドメインのアミノ酸末端で、すなわちいかなるリンカー配列も伴わずに構築されている。トリアボディは、環状に、ヘッド-テール様式で配列されたポリペプチドを伴う、3種のFvヘッドを有する。トリアボディの可能な立体配置は、互いに120度の角度で平面に位置した3個の結合部位を伴う平面である。トリアボディは、単一特異性、二重特異性又は三重特異性であることができる。
【0027】
Fab(抗原結合断片)は、VL CL VH CH1ドメインからなる抗体の断片を意味する。引き続きのパパイン消化から単純に生成されたものは、Fabと称され、重鎖ヒンジ領域を保持しない。ペプシン消化後、重鎖ヒンジを保持する様々なFabが作製される。鎖間ジスルフィド結合を伴うそのような断片は、F(ab')2と称され、ジスルフィド結合が保持されない場合は単独のFab'を生じる。F(ab')2断片は、一価のFab断片のものよりも、より高い抗原に対する結合力を有する。
【0028】
Fc(結晶化断片)は、対形成された重鎖定常ドメインを含む抗体の一部又は断片の名称である。IgG抗体において、例えばFcは、CH2及びCH3ドメインを含む。IgA又はIgM抗体のFcは更に、CH4ドメインを含む。このFcは、Fc受容体結合、補体-媒介した細胞毒性及び抗体-依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性化に関連している。複数のIgG様タンパク質の複合体である、IgA及びIgMのような抗体に関して、複合体形成は、Fc定常ドメインを必要とする。
【0029】
最後にヒンジ領域は、抗体のFab及びFc部分を分離し、互いに対する及びFcに対するFabの可動性を提供し、更にこれらふたつの重鎖の共有結合のための複数のジスルフィド結合を含む。
【0030】
従ってRONに特異的な抗体は、抗原に特異的に結合する、天然の抗体、(Fab')2のような二価の断片、Fabのような一価の断片、1本鎖抗体、1本鎖Fv(scFv)、単ドメイン抗体、多価1本鎖抗体、ディアボディ、トリアボディなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の抗体のこのようなドメインは、重鎖もしくは軽鎖可変ドメインを伴う完全な抗体であることができるか、又はこれは天然のドメインと機能的に同じ又は変異体もしくは誘導体、又は例えばin vitroにおいて国際公開公報第93/11236号(Griffithsら)に開示されたような技術を使用し、構築された合成ドメインであることができる。例えば少なくとも1個のアミノ酸を喪失している、抗体可変ドメインに対応するドメインを一緒にすることは可能である。重要な特徴付ける特性は、各ドメインの、相補的ドメインと会合し、抗原-結合部位を形成する能力である。従って用語「可変重鎖及び軽鎖断片」は、特異性に対し重大な影響(material effect)を有さない変種を除外するように構築されてはならない。
【0032】
本明細書において使用される「抗体」及び「抗体断片」は、RON受容体への特異性を保持する修飾を含む。このような修飾は、化学療法薬(例えば、シスプラチン、タキソール、ドキソルビシン)又は細胞毒(例えば、タンパク質又は非-タンパク質有機化学療法薬)のような、エフェクター分子への結合を含むが、これらに限定されるものではない。抗体は、検出可能なレポーター部分との結合により修飾することができる。同じく半減期などの非結合特性に影響を及ぼす変更(例えば、ペグ化)を伴う抗体も含む。
【0033】
タンパク質及び非-タンパク質物質は、当該技術分野において公知の方法により抗体に結合されてもよい。結合法は、直接連結、共有的に結合されたリンカーを介した連結、及び特異的結合対の一員(例えばアビジン-ビオチン)を介した連結を含む。このような方法は、例えばドキソルビシンの結合についてGreenfieldらにより説明されたもの(Cancer Research 50, 6600-6607 (1990))、並びに白金化合物の結合に関して、Arnonら(Adv. Exp. Med. Biol. 303, 79-90 (1991))及びKiselevaらにより説明されたもの(Mol Biol. (USSR) 25, 508-514 (1991))を含む。
【0034】
抗体特異性は、抗原の特定のエピトープに関する抗体の選択的認識を意味する。本発明の抗体又はその断片は、例えば、単一特異性又は二重特異性であることができる。二重特異性抗体(BsAb)は、ふたつの異なる抗原-結合特異性又は部位を有する抗体である。抗体が1種よりも多い特異性を有する場合、認識されたエピトープは、単独の抗原と、又は1種よりも多い抗原と会合することができる。従って本発明は、少なくともひとつはRONに特異性がある、ふたつの異なる抗原へ結合する二重特異性抗体又はその断片を提供する。
【0035】
抗体又はその断片のRONへの特異性は、親和性及び/又は結合力を基に決定することができる。抗原の抗体との解離に関する平衡定数により説明される親和性(Kd)は、抗原決定基と抗体-結合部位の間の結合強度を測定する。結合力は、抗体とその抗原の間の結合の強度の測定値である。結合力は、エピトープと抗体上のその抗原結合部位の間の親和性、及び特定のエピトープの抗原結合部位の数を意味する抗体の価数の両方に関連している。抗体は典型的には、約10-5〜約10-11 L/molの解離定数(Kd)で結合する(例えば、KD<100nM)。約10-4 L/mol未満のKdは一般に、非特異的結合を示すと考えられる。Kd値がより小さくなると、抗原決定基と抗体結合部位の間の結合強度はより強くなる。
【0036】
RONは、RONを発現する細胞由来のような、免疫応答を生じる様々な給源から単離することができる:結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、肝臓、卵巣、腎臓、乳房及び脳、並びに一般には、上皮及び神経内分泌。同じく合成受容体ペプチドは、市販の機械及び対応するアミノ酸配列を用いて得ることができる。尚更なる代わりの方法は、RONをコードしているDNA、例えばcDNA又はその断片を、クローニングし、発現し、得られるポリペプチドを回収し、本発明の抗体を生じる免疫原として使用することである。それに対し抗体が産生されるRONを調製するために、RONをコードしている核酸分子、又はそれらの一部、特にそれらの細胞外部分(特にα及びβ部分)は、標準の組換えDNA技法を用い、宿主細胞において発現するための公知のベクターへ挿入することができる。同様に、RONリガンド、特にMSPに対する抗体を調製することができる。
【0037】
RON及びそのリガンドMSPの配列は、公に入手可能であり、及び容易に抗体調製に使用される。抗体は、RON又はMSPの変種/変異体に対しても作製される。変種及び変異体の細胞外ドメイン上に存在するエピトープに対する抗体が、興味深い。細胞外ドメインにおける109個のアミノ酸のインフレーム欠失により異なる変更されたRON受容体は、構成的に活性化されることが示されている(1)。抗体は、例えばそのような変更されたRON受容体に対して作製されてもよい。
【0038】
RONに特異的な抗体は、哺乳動物をRONで免疫処置することにより調製することができる。可溶性受容体は、それら自身免疫原として使用されるか、又は担体タンパク質もしくは他の対象、例えばビーズ、すなわちセファロースビーズに結合されてもよい。その哺乳動物が抗体産生した後、脾細胞のような、抗体産生細胞の混合物が単離される。モノクローナル抗体は、個々の抗体-産生細胞をこの混合物から単離すること、及び例えばそれらを黒色腫細胞などの腫瘍細胞と融合することにより、それらを不死化することにより作製することができる。得られるハイブリドーマは、培養物中に保存され、モノクローナル抗体を発現し、これは培養培地から採取される。
【0039】
更に、本発明の抗体及び抗体断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖を産生するトランスジェニックマウス(例えばKMマウス、Medarex, サンノゼ、CAより入手)を使用し、標準のハイブリドーマ技術により得ることができる(Harlow & Lane編集、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, 211-213 (1998)、これは本明細書に参照として組入れられている)。好ましい態様において、ヒト抗体産生ゲノムの実質的部分が、マウスのゲノムに挿入され、内在性のマウス抗体の産生を欠損するようにし向けられている。このようなマウスは、完全フロイントのアジュバント中のRONにより皮下(s.c.)的に免疫処置することができる。本発明の抗体は、追加のアミノ酸残基に融合することができる。このようなアミノ酸残基は、恐らく単離を促進する、ペプチドタグであることができる。臓器又は組織に特異的な抗体のホーミングのための他のアミノ酸残基も、企図されている。
【0040】
本発明の抗-RON抗体は、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子から構築されたもののようなファージディスプレイライブラリーから単離することができる。例えば、本発明の可変ドメインは、再構成された可変領域遺伝子を含む末梢血リンパ球から得ることができる。あるいは、CDR及びFW領域のような、可変ドメイン部分は、様々なヒト配列から得ることができる。
【0041】
RONに特異的な抗体は、好ましくは約1x10-9 M-1又は未満、より好ましくは約1x10-10M-1又は未満、最も好ましくは約1x10-11M-1又は未満で、RONへ結合する。
【0042】
RONに特異的な抗体又はその断片は、その受容体の活性化を阻害する。受容体の阻害は、シグナル伝達するための、受容体の固有のキナーゼ活性の活性化を妨害することを意味する。RONの信頼できるアッセイは、受容体リン酸化の阻害である。
【0043】
本発明は、RON阻害の特定の機構に限定されない。このような阻害は例えば、リガンドによるあるエピトープへのアクセスをブロックする抗体によるか、又はリガンド、特にMSPが例え受容体へ結合することができたとしても、受容体を活性化することができないような方法で、RONの立体配置の変化により生じることができる。米国特許第6,165,464号は、リガンドそれ自身への結合、受容体のダウンレギュレーション、受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害、又は細胞傷害性反応の不当化を含む、そのような阻害の様々な可能性のある機構を列記している。ダウンレギュレーションは、RONを発現する、特にRONを過剰発現する(示差的発現を含む)細胞が、それらの表面上のRON受容体チロシンキナーゼの数を減少する場合に生じる。腫瘍細胞浸潤及び転移において機能するマトリックスメタロプロテイナーゼも、本発明の抗体によりダウンレギュレーションされ得る。
【0044】
RON阻害は、成長(増殖及び分化)、血管新生(血管動員、侵襲、及び転移)、並びに細胞運動性及び転移(細胞接着及び浸潤性)の阻害、縮小、失活及び/又は破壊を含む、様々な作用を有する。
【0045】
本発明は、リガンド結合を伴わずに活性化される変種又は変異されたRON受容体チロシンキナーゼに結合し及び失活する抗体も企図している。RON関連疾患に罹患した哺乳動物は、例えば変種受容体の不釣り合いな量で、野生型及び変種RONの両方を発現することがある。興味深いのは、Wangの論文(1)(9)により明らかにされたような、細胞外ドメイン内に欠失を有するもののような、細胞外ドメインが異なる変種/変異体の配列である。従ってRON阻害は、野生型及び/又は変種RON(点変異、欠失、選択的スプライシングなど)に関連し得る。
【0046】
RON活性化は、c-met又はEGFRのような他のRTKとの二量体化及び活性化を介して起こり得る。従って、RON阻害は、RONとEGFR又はc-metのような他のRTKの間のヘテロ二量体化の阻害も含む。このような阻害は、例えばRON及びEGF又はc-metの形成されたヘテロ二量体によるシグナル伝達の阻害も含むことができる。このような二量体化は、それらの受容体へ結合し及び二量体化を誘導するMSP、HGF又はEGFなどによるような、リガンド依存した様式で誘導される。
【0047】
RON阻害のひとつの測定は、受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害である。チロシンキナーゼ阻害は、周知の方法を用いて決定することができる;例えば、組換えキナーゼ受容体の自己リン酸化レベル、及び/又は天然もしくは合成の基質のリン酸化を測定することによる。従ってリン酸化アッセイは、本発明の状況において抗体の阻害を決定する上で有用である。リン酸化は、例えば、ELISAアッセイ又はウェスタンブロットにおいてチロシンリン酸に特異的抗体を用いて検出することができる。チロシンキナーゼ活性に関する一部のアッセイは、Panekらの論文(J. Pharmacol. Exp. Thera. 283: 1433-44 (1997))及びBatleyらの論文(Life Sci. 62:143-50 (1998))に説明されている。
【0048】
加えて、タンパク質発現の検出法は、RON阻害の決定に利用することができる。これらの方法は、タンパク質発現の検出のための免疫組織化学(IHC)、遺伝子増幅の検出のための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、競合的放射性リガンド結合アッセイ、固相マトリックスブロッティング技術、例えばノーザンブロット及びサザンブロット、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)及びELISAを含む。
【0049】
別のものは、RONの下流の基質のリン酸化のRON阻害を測定する。従って、MAPK又はAktのリン酸化レベルを測定することができる。
【0050】
好ましい態様において、本発明の抗体の 1、2、3、4、5種又は6種全ての相補性決定領域(CDR)を有する、RONに特異的な抗体が、哺乳動物へ投与される。ひとつの態様において、投与される抗体は、本発明の抗体の可変領域を有する。図2は、本発明の抗体の配列のまとめを提供する。IMC-41A2、IMC-41A10及びIMC-41B12は、RONのβ細胞外ドメインに結合するが、そのような特異性は、RONの他のドメインへの結合、又は同じドメイン内の異なるエピトープへの結合により生じることもあると考えられる。
【0051】
本発明の単離された抗体のCDRは以下を含む:
【0052】
【表1】

【0053】
RONに特異的な抗体及び抗体断片の変種は、本発明の抗体の可変領域又は超可変領域のアミノ酸配列に実質的に類似したアミノ酸配列を伴うポリペプチドを含む。Pearson及びLipmanの論文(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444-2448 (1988))に従うFASTA検索法により決定される場合、実質的に同じアミノ酸配列とは、比較されたアミノ酸配列に対し少なくとも70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を伴う配列として本明細書において定義され、これは少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%一致している配列を含む。このような抗体は、実質的に同じCDRを有する本発明の抗体と同じ又は類似した結合活性、リガンドブロック、及び受容体阻害活性を有するであろう。
【0054】
RONに特異的な抗体及び抗体断片の変種は、1個又は複数の保存的アミノ酸置換を有する抗体も含む。保存的アミノ酸置換は、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、又はその断片の1、2個又はそれよりも多いアミノ酸の変化による、アミノ酸組成の変化として定義される。この置換は、一般に類似した特性(例えば、酸性、塩基性、芳香性、サイズ、正帯電又は負帯電、極性、非-極性)を持つアミノ酸により、その結果置換は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の特徴(例えば、電荷、等電点、親和性、結合力、立体配置、溶解度)又は活性を実質的に変更しない。このような保存的アミノ酸置換に関して行うことができる典型的置換は、以下のアミノ酸群間であってよい:
グリシン(G)、アラニン(A)、バリン、(V)、ロイシン(L)及びイソロイシン(I);
アスパラギン酸(D)及びグルタミン酸(E);
アラニン(A)、セリン(S)及びトレオニン(T);
ヒスチジン(H)、リシン(K)及びアルギニン(R);
アスパラギン(N)及びグルタミン(Q);
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)。
【0055】
保存的アミノ酸置換は、例えば、分子の選択的及び/又は特異的結合特性に主に寄与する超可変領域に隣接する領域に加え、分子の他の部分、例えば可変重鎖カセットに作製することができる。
【0056】
抗体又はその断片は、直接変異、親和成熟法、ファージディスプレイ、又は鎖シャッフリングによりそれらの結合特性が改善されるものも含む。
【0057】
親和性及び特異性は、CDR及び/又はFW残基の変異、並びに所望の特性を有する抗原結合部位のスクリーニングにより、修飾又は改善され得る(例えば、Yangら、J. Mol. Biol., (1995) 254: 392-403参照)。ひとつの方法は、そうでなければ同一の抗原結合部位の集団において、2〜20個のアミノ酸のサブセットが特定の位置で認められるように、個々の残基又は残基の組合せを無作為化することである。あるいは、変異は、エラー傾向のある(error prone)PCR法により範囲のある残基にわたり誘導することができる(例えば、Hawkinsら、J. MoI. Biol, (1992) 226: 889-96参照)。別の例において、重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子を含むファージディスプレイベクターを、E. coliの突然変異誘発株において増殖することができる(例えば、Lowら、J. Mol. Biol., (1996) 250: 359-68参照)。これらの突然変異誘発法は、当業者に公知の多くの方法の一例である。
【0058】
本発明の抗体の親和性を増大する別の方法は、鎖シャッフリングの実行であり、ここで重鎖又は軽鎖は、無作為に他の重鎖又は軽鎖と対形成し、より高い親和性の抗体を調製する。これらの抗体の様々なCDRも、他の抗体において対応するCDRとシャッフリングすることができる。
【0059】
本発明は更に、IMC-14A2、IMC-14A10及びIMC-14B12抗体により結合されたものと同じRONエピトープ(複数)へ特異的に結合する抗体を提供する。このような抗体は、IMC-14A2、IMC-14A10及びIMC-14B12 RON結合と競合するそれらの能力により同定することができる。これらのエピトープは、RONの細胞外ドメイン上に存在する。
【0060】
加えて本発明は、本抗体又はその断片をコードしている単離されたポリヌクレオチドに加え、発現配列に作動可能に連結されたこれらのポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。これらのヌクレオチドは、図2に列記されている。本抗体又はその断片を発現する発現ベクターを含む組換え宿主細胞も提供される。抗体又はその断片の発現を可能にする条件下で、これらの細胞を培養することを含む、抗体又はその断片を作製する方法も提供される。次にこの抗体又はその断片は、細胞又は細胞培養培地から精製することができる。
【0061】
図2に列記されたヌクレオチドの変種は、本発明の抗体と同じ機能を有する、すなわちRONの活性化をブロックする、抗体又は抗体断片をコードしているものを含む。このような変種は、少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%一致している配列を有する。
【0062】
本発明は、抗体融合タンパク質も提供する。これらの融合タンパク質は、酵素、蛍光タンパク質、ポリペプチドタグ又は発光マーカーをコードしているヌクレオチド配列に隣接するようにクローニングされた図2のヌクレオチド配列によりコードされ得る。
【0063】
本発明のヌクレオチド配列は、以下も含む:(a)図2に示された抗体DNA配列;(b)(i)ストリンジェント条件下、例えば、0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中65℃での、フィルター-結合したDNAへのハイブリダイゼーション、0.1xSSC/0.1%SDS中68℃での洗浄(Ausubel F.M.ら編集、1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol. I, Green Publishing Associates, Inc., and John Wiley & sons, Inc., ニューヨーク、p.2.10.3)で、(a)に示されたヌクレオチド配列へハイブリダイズされ、及び(ii)実質的に同じ機能性を有する抗体又は抗体断片をコードしている:任意のヌクレオチド配列;並びに、(c)中程度にストリンジェントな条件のような、より低いストリンジェント条件下、例えば0.2xSSC/0.1%SDS中42℃での洗浄(Ausubelら、1989、前掲)で、図2に示された抗体配列をコードしているDNA配列へハイブリダイズされるが、依然同じ機能性を実質的に有する抗体又は抗体断片をコードしている、任意のヌクレオチド配列。本発明の抗体の機能性は、RONの活性化をブロックする。
【0064】
本発明は、制御配列に作動可能に連結された本発明の抗体又はその断片をコードしている核酸を含む発現ベクターに加え、そのような発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。これらの宿主細胞は、本発明の抗体又はその断片の発現を可能にする特異的条件下で培養し、その後抗体を宿主細胞から精製することができる。
【0065】
標準の組換え技術及び公知の発現ベクターを使用し、本発明の抗体を発現する。細菌、特にE. Coliにおいてタンパク質を発現するベクターが公知である。このようなベクターは、Dieckmann及びTza goloffの論文(J. Biol. Chem. 260, 1513-1520 (1985))により説明されたPATHベクターを含む。これらのベクターは、アントラニル酸合成酵素(TrpE)をコードしているDNA配列、それに続くカルボキシ末端のポリリンカーを含む。他の発現ベクター系は、β-ガラクトシダーゼ(pEX);λPL;マルトース結合タンパク質(pMAL);及び、グルタチオンS-転移酵素(pGST)を含む−Gene 67, 31 (1988)及びPeptide Research 3, 167 (1990)参照。
【0066】
酵母において有用なベクターを利用することができる。適当な例は、プラスミドである。哺乳動物細胞における発現に適したベクターも公知である。このようなベクターは、SV-40、アデノウイルス、レトロウイルス-由来のDNA配列の周知の誘導体、及び前述のもののような機能的哺乳動物ベクターの組合せに由来したシャトルベクター、並びに機能性プラスミド及びファージDNAを含む。
【0067】
更に真核発現ベクターが、当該技術分野において公知である(例えば、P. J. Southern及びP. Berg、J. Mol Appl. Genet. 1, 327-341 (1982);S. Subramaniら、Mol. Cell. Biol. 1, 854-864 (1981); R. J. Kaufmann及びP. A. Sharp、"Amplification And Expression Of Sequences Cotransfected with A Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene," J. Mol. Biol. 159, 601-621 (1982); R. J. Kaufmann及びP.A. Sharp、" Amplification And Expression Of Sequences Cotransfected with A Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene," J. Mol. Biol. 159, 601-664 (1982);S. I. Scahillら、"Expression And Characterization Of the Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells," Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 4654-4659 (1983);G. Urlaub及びL. A. Chasin、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4216-4220, (1980))。
【0068】
本発明において有用な発現ベクターは、発現されるDNA配列又は断片に作動可能に連結された少なくとも1種の発現制御配列を含む。制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御及び調節するために、ベクター中に挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター、例えば、3-ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター、酵母酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母α接合因子のプロモーター、並びにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス及びシミアンウイルス由来のプロモーター、例えば初期及び後期プロモーター又はSV40、並びに原核細胞又は真核細胞及びそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知の他の配列、又はそれらの組合せである。
【0069】
本発明の抗体、それらの抗体断片をコードしているもののような、制御シグナル及び発現されるべきDNAを含むベクターは、発現のために宿主細胞へ挿入される。いくつかの有用な発現宿主細胞は、周知の原核細胞及び真核細胞を含む。一部の適当な原核宿主は、例えば、E. coli SG-936、E. coli HB 101、E. coli W3110、E. coli X1776、E. coli X2282、E. coli DHI、及びE. coli MRClなどのE. coli、Pseudomonas、Bacillus subtilisのようなBacillus、並びにStreptomycesを含む。適当な真核細胞は、酵母及び他の真菌、昆虫、動物細胞、例えばCOS細胞、リンパ腫、黒色腫のようなリンパ球起源の細胞株(例えばNSO)、及びCHO細胞、組織培養物におけるヒト細胞及び植物細胞を含む。
【0070】
抗体を産生する方法は、抗体の発現を可能にする条件下で、本発明の抗体をコードしている核酸配列を含むベクターを含む宿主細胞を培養することを含む。適当な培地で維持された宿主細胞の発現後、本発明の抗体をコードしているもののような、発現されるべきポリペプチド又はペプチドは、当該技術分野において公知の方法で培地から単離され、精製される。ポリペプチド又はペプチドが培養培地へ分泌されない場合は、宿主細胞は、単離及び精製の前に溶解される。精製された抗体は、同定され、並びにその天然の環境の成分から分離及び/又は回収される。その天然の環境の夾雑成分は、抗体の診断的又は治療的使用と干渉する物質であり、並びに酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非-タンパク質性溶質を含み、一般には除去される。
【0071】
サブクローンにより分泌されるRONに特異的なモノクローナル抗体は、培養培地又は腹水から、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイト(hydrolyapatite)クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティクロマトグラフィーなどの、通常の免疫グロブリン精製法により単離又は精製される。
【0072】
別の態様において、RONに特異的な抗体は、トランスジェニック動物における抗体をコードしている核酸の発現により作製され、その結果この抗体は発現され、回収することができる。例えば、抗体は、回収及び精製を促進する組織特異的様式で発現することができる。ひとつのそのような態様において、本発明の抗体は、授乳時の分泌のために乳腺において発現される。トランスジェニック動物は、マウス、ヤギ及びウサギを含むが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明は、抗-RON抗体を含有する医薬組成物を提供する。ひとつの態様において、組成物は、本明細書に開示された3種の特異的抗体の1種又はそれよりも多くを含む。本発明の抗-RON抗体は、予防又は治療の目的で哺乳動物において使用される場合、医薬として許容される担体を追加的に含有する組成物の形で投与されることが理解される。適当な医薬として許容される担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1種又は複数に加え、それらの組合せを含む。医薬として許容される担体は更に、結合タンパク質の貯蔵寿命又は有効性を増強する、少量の助剤物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、保存剤又は緩衝剤を含有することができる。注射剤組成物も、当該技術分野において公知であり、哺乳動物への投与後に、活性成分の迅速な、持続型の又は遅延型の放出を提供するために製剤される。
【0074】
本明細書において使用される担体は、使用される用量及び濃度で、それに曝露される細胞又は哺乳動物に対し無毒であるような、医薬として許容される担体、賦形剤、又は安定化剤を含む。生理的に許容される担体は、水性pHの緩衝液であることが多い。生理的に許容される担体の例は、リン酸、クエン酸及び他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖、二糖、及びその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトール又はソルビトールなどの、糖アルコール;ナトリウムのような対イオンを形成する塩;並びに/又は、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(登録商標)のような、非イオン性界面活性剤である。
【0075】
活性成分は、各々、例えば界面重合により調製されたマイクロカプセル中、例えばヒドロキシメチルセルロース、もしくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ-粒子、及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルション中に捕獲することもできる。In vivo投与に使用される製剤は、滅菌されなければならない。これは、濾過滅菌膜を通す濾過により、容易に実現される。持続-放出型調製物が調製されてもよい。持続-放出型調製物の適当な例は、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、このマトリックは、例えばフィルム又はマイクロカプセルのような造形品の形である。持続-放出型マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタミン酸エステルのコポリマー、非-分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドで構成された注射可能なミクロスフェア)、並びにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸のようなポリマーは、100日以上分子を放出することができるが、あるヒドロゲルは、より短い期間タンパク質を放出する。
【0076】
カプセル封入された抗体が、長期間体内に残留する場合は、これらは、37℃で水分に曝露された結果として、変性又は凝集することがあり、生物学的活性の喪失及び免疫原性の変化の可能性を生じる。理論的戦略は、関連した機構によって左右される安定化を考案している。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド入れ替えによる分子間S−S結合形成であることが発見された場合、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量の制御、適当な添加剤の使用、及び特異的ポリマーマトリクス組成物の開発により、実現することができる。
【0077】
本発明は、RONに特異的な抗体又はその断片の治療的有効量を、それが必要な哺乳動物へ投与することに関連している治療法を提供する。哺乳動物は、ヒトが好ましい。このような抗体は、様々な技術により得られたキメラ抗体、ヒト化抗体、マウス、ウサギ及びヒトの抗体を含む。好ましい抗体は、欠失又は他の変異を有する細胞外ドメインを含む、RONの細胞外ドメイン上のエピトープへ特異性を有するものである。好ましくは投与される抗体は、ヒト抗体であり、より好ましくはIMC-41A10、IMC-41B12又はIMC-41A2の少なくとも1個のCDR配列を有するものである。これらの方法が有用である状態は、RONを発現している腫瘍、炎症疾患、過増殖性疾患、並びに肝臓、胆道、胆管、胆嚢及び関連する肝胆汁系の疾患を含む。
【0078】
治療は、動物における疾患のいずれかの治療を意味し、これは以下を含む:(1)疾患の素因を有するが、まだ疾患の症状を経験もしくは提示していない哺乳動物における疾患発生の予防;例えば、臨床症状の突発の予防;(2)疾患の阻害、例えばその発症の停止;又は、(3)疾患の緩和、例えば疾患の症状の退縮の引き起こし。
【0079】
本発明の方法において、本発明の抗体の治療的有効量が、それが必要な哺乳動物へ投与される。本明細書において使用される用語「投与」は、本発明の抗体の哺乳動物への、求める結果を実現することができる任意の方法による送達を意味する。これらは、例えば静脈内又は筋肉内に投与することができる。本発明のヒト抗体はヒトへの投与に特に有用であるが、これらは更に他の哺乳動物へも投与することができる。本明細書において使用される用語「哺乳動物」は、ヒト、実験動物、ペット及び家畜を含むが、これらに限定されるものではないことが意図されている。治療的有効量は、哺乳動物へ投与される場合に、キナーゼ活性の阻害又は腫瘍増殖の阻害のような所望の治療作用を生じる点で有効である本発明の抗体の量を意味する。
【0080】
本発明の抗-RON抗体は、腫瘍又は病態の進行を予防、阻害、又は軽減するのに十分な量で、腫瘍又は血管新生に関連した病態に罹患している患者の治療的処置のために投与することができる。進行は、例えば腫瘍又は病態の増殖、侵襲、転移及び/又は再発を含む。これを実現するための適量は、治療的有効量として定義される。この用途のための有効量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的状態に応じて決まるであろう。用法も、病態及び患者の状態により変動し、典型的には単回ボーラス用量又は連続注入から、1日の反復投与(例えば4〜6時間毎)までの範囲であるか、又は担当医及び患者の状態により指示されるものであろう。しかし本発明は特定の投与量に限定されないことは注意しなければならない。
【0081】
本発明の抗体の適量は、本発明において例証されたin vivoデータを基に決定することができる。In vivo実験は、3日毎の約1mg/20gの投与量を使用した。平均のマウスは約0.02kgであり、その体積は約0.008m2である。平均のヒトは約70kgであり、その体積は約1.85m2である。投与量約200mg/m2は、マウスにおいて約40mg/kgに相当し、これはヒトにおいてはおおまかに約2.6mg/kgである。この投与量に見通しをつけるために、別の抗体Erbitux(登録商標)を、約250mg/m2の1週間当たり1回投与量で投与し、これはヒトにおける約6.5mg/kgである。これらの計算及び実験を基に、ヒトへ投与される投与量は、好ましくは約1〜約10mg/kg、より好ましくは約3〜約8mg/kg(1回投与量/週)である。この投与量は、Erbitux(登録商標)の約6〜約7mg/kgに類似している。
【0082】
本発明は最初に、腫瘍増殖を阻害する抗体によるRONのin vivo阻害を明らかにしている。RON抗体は、ヌードマウスにおける皮下でのHT-29細胞増殖を阻害する。好ましくは、腫瘍増殖は、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%抑制される。図1は、40日間にわたるHT-29腫瘍増殖の約50〜60%の減少を示している。
【0083】
RON抗体は、RON、MAPK、及びAKT(例えば、HT-29、Colo205、AGS及びDU145)のMSP-誘導したリン酸化を、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは約80%、最も好ましくは約100%ブロックすることができる。図3において、レーン1及び3のバンドは、ほぼ同一であり、リン酸化を完全にブロックしていることを指摘している。MAPK及びAKTのリン酸化は、各々、細胞の増殖(経時的に細胞数を増加する)、移動(細胞を物質、特にMSPへと移動する、すなわち化学誘引)、浸潤(新たな組織を通り移動する能力)及び生存に重要であると考えられる。接着HT-29及びColo205細胞の増殖は、RON抗体及び10%血清の存在下で、好ましくは約20%〜約30%、より好ましくは約25%阻害される。加えてHT-29及びColo205が、RON抗体及び10%血清の存在下軟寒天上で増殖される場合は、コロニー形成は、HT-29について好ましくは約60%〜約80%、より好ましくは約75%Colo205について約50%〜約70%、より好ましくは60%阻害される。
【0084】
本発明は、RON特異的抗体は、軟寒天上で癌細胞の成長を阻害し、及び増殖を阻害すると同時に、細胞培養条件において接着細胞として増殖することができるという知見を基にしている。RON抗体は、ヌードマウスに注射された場合に、癌細胞株の腫瘍を形成する能力を著しく遅らせることができ、これは、RON受容体チロシンキナーゼの阻害は、結腸癌細胞の増殖に負に作用することを明らかにしている。
【0085】
通常のウェスタンブロット及びフローサイトメトリー手法を使用し、RONは、多くのヒト腫瘍細胞株において発現されることがわかった:結腸(HT-29、Colo205、HCT-116、DLD-1、Sw480、Sw620)、膵臓(BXPC-3、CAPAN-2、ASPC-1、HPAF-II、L3.7p1#7、Hs766T)、前立腺(DU-145、PC-3)、胃(AGS、NCI-N87)、肺(A549、H596)及び肝臓(HepG2、SNU-182)。従って様々な細胞型に由来した腫瘍が、RON抗体の治療的標的である。
【0086】
治療される腫瘍は、原発性腫瘍及び転移性腫瘍、更には難治性腫瘍を含む。難治性腫瘍は、化学療法薬単独、抗体単独、放射線照射単独又はそれらの組合せによる治療に反応することに失敗した又は抵抗性のある腫瘍を含む。難治性腫瘍は、そのような物質による治療により阻害されるが、治療が中断されて5年以内に、時には最大10年又はそれ以降に再発することが明らかな腫瘍も包含している。
【0087】
治療することができる腫瘍は、脈管化された腫瘍に加え、脈管化されない、又はまだ実質的に脈管化されない腫瘍を含む。従って治療することができる固形腫瘍の例は、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経膠腫及びリンパ腫を含む。そのような腫瘍の例の一部は、類表皮腫、扁平上皮腫、例えば頭部及び頸部の腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、小細胞及び非-小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍を含む。他の例は、カポジ肉腫、CNS新生物、神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫及び脳転移、黒色腫、胃腸管及び腎臓の癌腫及び肉腫、横紋筋芽細胞腫、膠芽腫、好ましくは多形性膠芽腫、及び平滑筋肉腫を含む。特に興味深いのは、結腸、膵臓、前立腺、胃、肺及び肝臓の癌である。
【0088】
従ってヒト抗-RON抗体は、脈管化された腫瘍もしくは新生物又は血管新生疾患を有する対象の治療に有効であることができる。このような腫瘍及び新生物は、例えば悪性腫瘍及び新生物、例として芽細胞腫、癌腫又は肉腫、並びに高度に脈管化された腫瘍及び新生物を含む。本発明の方法により治療される癌は、例えば、脳、尿生殖路、リンパ系、胃、結腸直腸、喉頭及び肺及び骨の癌を含む。非限定的例は更に、類表皮腫瘍、扁平上皮腫瘍、例えば頭部及び頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、前立腺腫瘍、乳房腫瘍、肺腺癌並びに小細胞及び非-小細胞肺腫瘍を含む肺腫瘍、膵臓腫瘍、甲状腺腫瘍、卵巣腫瘍、及び肝臓腫瘍を含む。この方法は、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、及びヒト悪性角化細胞のような悪性角化細胞の増殖を抑制することにより治療することができる皮膚癌を含む、脈管化された皮膚癌の治療にも使用される。治療することができる他の癌は、カポジ肉腫、CNS新生物(神経芽細胞腫、毛細血管芽細胞腫、髄膜腫及び脳転移)、黒色腫、胃腸管及び腎臓の癌腫及び肉腫、横紋筋芽細胞腫、多形性膠芽腫を含む膠芽腫、及び平滑筋肉腫を含む。
【0089】
本発明の別の局面において、抗-RON抗体は、腫瘍-関連した血管新生を阻害する。受容体チロシンキナーゼによる血管内皮細胞の刺激は、腫瘍の脈管化に関連している。典型的には、血管内皮は、傍分泌様式で刺激される。
【0090】
抗新生物薬は、RON抗体と個別に又は複合体として投与することができる。現在当該技術分野において公知又は評価されている抗新生物薬は、例えば、有糸分裂阻害薬、アルキル化薬、代謝拮抗薬、インターカレーション抗生物質、増殖因子阻害薬、細胞周期阻害薬、酵素、トポイソメラーゼ阻害薬、抗生存(anti survival)物質、生物学的反応修飾剤、抗-ホルモン薬、及び抗-血管新生薬を含む様々なクラスに群別することができる。
【0091】
多くの公知の抗新生物薬は、小型の有機分子である。本発明の態様は、トポイソメラーゼ阻害薬を、RONに結合する抗体と組合せて投与する方法を含む。これらの阻害薬は、トポイソメラーゼI又はトポイソメラーゼIIの阻害薬であることができる。トポイソメラーゼI阻害薬は、イリノテカン(CPT-11)、アミノカンプトテンシン、カンプトテンシン、DX-8951f、トポテカンを含む。トポイソメラーゼII阻害薬は、エトポシド(VP-16)、及びテニポシド(VM-26)を含む。他の物質は、トポイソメラーゼ阻害活性及び抗新生物薬としての有効性に関して現在評価されている。抗新生物薬は、アルキル化剤又は代謝拮抗薬である。アルキル化剤の例は、シスプラチン、シクロホスファミド、メルファラン、及びダカルバジンを含むが、これらに限定されるものではない。追加の小型の有機分子は、タキソール、ドキソルビシン、アクチノマイシン-D、メトトレキセート、ゲムシタビン、オキシプラチン、フルオロウラシル(5-FU)、ロイコウリン(leucourin)(LU)、シスプラチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、エポチロン、シスプラチン/カルボプラチン及びペグ化されたアドリアマイシンなどの、細胞毒及び/又は化学療法薬を含む。小型有機分子は、以下のような組合せで投与することができる:(CPT-11;5-FU;LU);(パクリタキセル;5-FU);及び、(CPT-11;5-FU;LU)。
【0092】
抗新生物薬は、放射線照射も含む。抗新生物薬が放射線照射である場合、放射線源は、治療される患者に対し外部(外部ビーム放射線療法-EBRT)又は内部(近接照射療法-BT)のいずれかであることができる。抗新生物薬の投与量は、例えば薬物の種類、治療される腫瘍の種類及び重症度、薬物の投与経路を含む、多くの因子により左右される。しかし本発明は、いずれか特定の投与量に限定されるものではないことは強調されなければならない。放射線照射は、他の抗新生物薬と組合せることができる。
【0093】
本発明の別の局面において、抗-RON抗体又は抗体断片は、特に抗体がインターナリゼーションされる場合は、抗-腫瘍薬又は検出可能なシグナル発生薬に化学的に又は生合成的に連結することができる。抗体に連結された抗-腫瘍薬は、それに抗体が結合した腫瘍又はそれに抗体が結合した細胞の環境を破壊又は損傷するいずれかの薬剤を含む。例えば抗-腫瘍薬は、化学療法薬及び放射性同位元素のような毒性物質である。適当な化学療法薬は、当業者に公知であり、アントラサイクリン(例えば、ダウノマイシン及びドキソルビシン)、メトトレキセート、ビンデシン、ネオカルジノスタチン、シスプラチン、クロラムブシル、シトシンアラビノシド、5-フルオロウリジン、メルファラン、リシン及びカリケアミシンを含む。これらの化学療法薬は、常法を用い抗体に結合される(例えば、Hermentin及びSeiler、Behring Inst. Mitt. 82:197-215(1988)参照)。
【0094】
RON抗体は、癌患者へ放射性同位元素と共に投与することもできる。抗腫瘍薬としての使用に適した放射性同位元素も、当業者に公知である。例えば、131I又は211Atが使用される。これらの同位体は、常法を用いて、抗体へ結合される(例えば、Pedleyら、Br. J. Cancer 68, 69-73(1993)参照)。あるいは、抗体へ結合された抗腫瘍薬は、プロドラッグを活性化する酵素である。この方法において、一旦抗体複合体が投与されると、腫瘍部位へ到達するまではその不活性型であり続け、そこでこれはその細胞毒型へ変換されるプロドラッグが、投与される。実際に抗体-酵素複合体が、患者へ投与され、治療される組織の領域内での局在化が可能である。その後プロドラッグは、細胞毒薬物への転換が治療される組織の領域で生じるように、患者へ投与される。あるいは抗体に結合された抗腫瘍薬は、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-4(IL-4)又は腫瘍壊死因子α(TNF-α)のような、サイトカインである。抗体は、サイトカインを腫瘍へ標的化し、その結果サイトカインは、他の組織に影響を及ぼすことなく、腫瘍の損傷又は破壊を媒介する。サイトカインは、通常の組換えDNA技術を用い、 DNAレベルで抗体へ融合される。インターフェロンも使用することができる。
【0095】
本発明は、有効量の本発明の抗体を哺乳動物へ投与することを含む、哺乳動物における非-癌性過増殖性疾患を治療する方法も提供する。本明細書に明らかにされた「過増殖性疾患」は、受容体のRONファミリーの一員を発現する非-癌細胞の過剰な増殖により引き起こされる状態と定義される。過増殖性疾患により生成された過剰な細胞は、RONを正常レベルで発現するか、又はこれらはRONを過剰発現することがある。
【0096】
本発明に従い治療することができる過増殖性疾患の種類は、RONのリガンド又はそのようなリガンドの変異体により刺激されるいずれかの過増殖性疾患である。過増殖性疾患の例は、乾癬、光線性角化症、及び脂漏性角化症、疣、ケロイド瘢痕、及び湿疹を含む。パピロマウイルス感染症のような、ウイルスにより引き起こされた過増殖性疾患も含まれる。例えば、乾癬は、多くの異なる変形及び重症度で生じる。様々な型の乾癬は、膿様疱疹(膿疱性乾癬)、皮膚の重度の腐肉(紅皮症性乾癬)、液滴-様斑点(滴状乾癬)及び平坦な炎症病巣(インバース乾癬)のような特徴を示す。あらゆる型の乾癬(例えば、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、紅斑性乾癬、関節症性乾癬、類乾癬、掌蹠膿疱症)の治療が、本発明により企図されている。
【0097】
過増殖性疾患の治療のための先に説明された本発明の抗体の投与は、任意の通常の治療薬と組合せることができる。例えば過増殖性疾患が乾癬である場合、様々な通常の全身性及び局所性薬剤が利用可能である。乾癬の全身性薬剤は、メトトレキセート、及び経口レチノイド、例えばアシトレチン、エトレチネート、及びイソトレチノインを含む。他の乾癬の全身性治療は、ヒドロキシ尿素、NSAID、スルファサラジン、及び6-チオグアニンを含む。抗生物質及び抗微生物薬を使用し、乾癬を引き起こし、発赤拡大及び増悪する、感染症を治療又は予防することができる。乾癬の局所用薬剤は、アントラリン、カルシポトリエン、コールタール、コルチコステロイド、レチノイド、ケラトライティックス(keratolytics)、及びタザロテンを含む。局所用ステロイドは、軽度から中等度の乾癬のために処方される最も一般的な治療法のひとつである。局所用ステロイドは、皮膚表面へ塗布されるが、一部は乾癬病巣へ注射される。
【0098】
過増殖性疾患の治療は更に、光線療法と組合せた抗-RON抗体の投与を含む。光線療法は、過増殖性疾患の症状を軽減する波長の光の投与に加え、化学療法薬の光活性化(光線化学療法)を含む。過増殖性疾患の治療の更なる考察については、国際公開公報第02/11677号(Teufelら)(Treatment of hyperprolierative diseases with epidermal growth factor receptor antagonists)を参照のこと。
【0099】
本発明において、適当な方法又は経路を使用し、本発明の抗-RON抗体を投与し、並びに任意に抗-新生物薬及び/又は他の受容体のアンタゴニストを同時投与することができる。本発明に従い使用される抗-新生物薬の用法は、患者の新生物状態の治療に最適に適していると考えられる用法を含む。異なる悪性疾患は、特異的抗-腫瘍抗体及び特異的抗-新生物薬の使用を必要とし、これは患者毎をベースに決定されるであろう。投与経路は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、皮下、又は筋肉内投与を含む。投与されるアンタゴニストの投与量は、例えば、アンタゴニストの種類、治療される腫瘍の種類及び重症度、並びにアンタゴニストの投与経路を含む、多くの要因に左右される。しかし本発明は、具体的投与の方法又は経路に限定されないことは強調されるべきである。
【0100】
特に癌の治療のための抗-RON抗体は、腫瘍増殖もしくは腫瘍-関連した血管新生に関与するRTKの活性又はそれらに関連した下流のシグナル伝達エレメントを阻害する、細胞内RTKアンタゴニストと共に投与することができる。細胞内RTKアンタゴニストは、好ましくは小型分子である。小型分子の一部の例は、有機化合物、有機金属化合物、有機化合物及び有機金属化合物の塩、並びに無機化合物を含む。小型分子中の原子は、互いに共有結合及びイオン結合により連結されている;前者は、小型有機化合物の典型、例えば小型分子チロシンキナーゼ阻害薬であり、及び後者は小型無機化合物の典型である。小型有機分子中の原子の配置は、鎖、例えば炭素-炭素鎖又は炭素-ヘテロ原子鎖を表すか、又は炭素原子を含む環、例えばベンゼンもしくは多環式系、又は炭素及びヘテロ原子の組合せ、すなわちピリミジンもしくはキナゾリンのようなヘテロ環を表すことができる。小型分子は、任意の分子量を有することができるが、これらは一般に、それらの分子量が650Dを超えないことを除いて、他の点では生物学的分子と考えられる分子を含む。小型分子は、ホルモン、神経伝達物質、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂質及びそれらの誘導体のような天然に認められる化合物に加え、従来の有機合成、生物媒介した合成、又はそれらの組合せのいずれかにより合成的に作製された化合物の両方を含む。例えばGanesan、Drug Doscov. Today 7(1): 47-55 (Jan. 2002);Lou、Drug Discov. Today, 6(24): 1288-1294 (Dec. 2001)を参照のこと。
【0101】
より好ましくは、本発明の細胞内RTKアンタゴニストとして使用される小型分子は、キナーゼドメインを有するEGFRの細胞内結合領域、又はEGFR活性化のシグナル伝達経路に関連したタンパク質への結合に関してATPと競合する細胞内RONアンタゴニストである。そのようなシグナル伝達経路の例は、ras-マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)-Akt経路、ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)経路、及びシグナルトランスデューサー及び転写アクチベーター(STAT)経路を含む。このような経路に関連したタンパク質(及びそれに本発明の小型分子RONアンタゴニストが結合することができる)の非限定的例は、GRB-2、SOS、Ras、Raf、MEK、MAPK、及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を含む。
【0102】
本明細書に説明された特に癌の治療法は、他の抗体の投与により実行することもできる。例えば、EGFRに対する抗体、例えばErbitux(登録商標)(セツキシマブ)も、特に結腸癌の治療のために投与することができる。Erbitux(登録商標)MAbは、ヒトEGFRの細胞外ドメインに特異的に結合する、組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体である。Erbitux(登録商標)は、EGFRアンタゴニストであり、これはEGFRへのリガンド結合をブロックし、受容体活性化を妨げ、及びEGFRを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する。Erbitux(登録商標)は、難治性であるか又はイリノテカンベースの化学療法に忍容性がない、上皮増殖因子受容体-発現する、転移性結腸直腸癌を伴う患者の治療における、イリノテカンと組合せた又は組合せない使用が承認されている。Erbitux(登録商標)は、乾癬の治療にも有効なことが示されている。
【0103】
併用のための他の抗体は、Herceptin(登録商標)(トラスツマブ)(HER2を発現している乳癌細胞、又は他の癌細胞でのHER2発現に対し)及びAvastin(登録商標)(ベバシツマブ)(血管新生を阻害する抗体)を含む。他の抗体は、以下のCDR配列を有する、IGFRに特異的な2F8及びA12である:
【0104】
【表2】

【0105】
本明細書に説明された治療法は、他のペプチドの投与と共に実行されてもよい。例えば、MSP変種は、この変種がRONに結合するが、RONを活性化しないか、又は少なくともMSPを競合的に阻害する場合に投与することができる。例えば米国公開特許第2003/0073656号を参照のこと。
【0106】
RON抗体の他の抗体及び/又は小型有機分子との投与は、同時に、又は個別に、同じ又は異なる経路により行うことができる。
【0107】
本発明の抗-RON抗体は、RONアンタゴニスト、及び/又は他のRTKのアンタゴニスト、例えばRTKリガンドをブロック又はそうでなければRTKを阻害する抗体と共に投与することができる。他のそのようなRTKの例は、EGFR、c-met及びVEGFRを含む。
【0108】
本発明のひとつの態様において、抗-RON抗体は、VEGFRアンタゴニストと組合せて使用される。本発明のひとつの態様において、抗-RON抗体は特異的にVEGFR-2/KDR受容体と結合する受容体アンタゴニストと組合せて使用される(PCT/US92/01300、1992年2月20日に出願;Termanら、Oncogene 6: 1677-1683 (1991)参照)。別の態様において、抗-RON抗体は、VEGFR-1/Flt-1受容体に特異的に結合する受容体アンタゴニストと組合せて使用される(Shibuya M.ら、Oncogene 5, 519-524 (1990))。特に好ましいのは、VEGFR-1又はVEGFR-2の細胞外ドメインに結合し、及びリガンド(VEGF又はP1GF)により結合をブロックし、及び/又はVEGF-誘導したもしくはP1GF-誘導した活性化を阻害する抗原-結合タンパク質である。例えば、Mab IMC-1121は、可溶性の細胞表面に発現されたKDRに結合する。Mab IMC-1121は、ヒトFabファージディスプレイライブラリーから得られたVH及びVLドメインを含む(国際公開公報第03/075840号参照)。別の例において、ScFv 6.12は、可溶性の細胞表面に発現されたFlt-1に結合する。ScFv 6.12は、マウスモノクローナル抗体MAb 6.12のVH及びVLドメインを含む。MAb 6.12を産生しているハイブリドーマ細胞株は、ATCC番号PTA-3344として寄託されている。
【0109】
このようなRTKの別の例は、インスリン-様増殖因子受容体(IGFR)である。ある腫瘍細胞において、RTK機能の阻害は、他の増殖因子受容体シグナル伝達経路のアップレギュレーションにより、特にRON刺激により補償することができる。更にIGFRシグナル伝達の阻害は、腫瘍細胞のある治療薬への感度の増大を生じる。RON又はIGFRのいずれかの刺激は、Akt及びp44/42を含む、共通の下流のシグナル伝達分子のリン酸化を生じるが、程度は異なる。従って本発明の態様において、IGFRアンタゴニスト(例えば、IGF又はIGFRへ結合し、その受容体を阻害する抗体)は、本発明の抗体と同時投与することができ、これにより、共通の下流のシグナル伝達経路の二次インプットがブロックされる(例えば、Akt及び/又はp44/42の活性化を阻害する)。IGFRに特異的なヒト抗体の例は、IMC-A12である(国際公開公報第2005/016970号参照)。
【0110】
RONと組合せて標的化され得る別の受容体は、EGFRである。EGFRは、前述のようなErbitux(登録商標)などの抗体で、又は小型有機分子で、標的化される。小型分子RTKアンタゴニストの一例は、IRESSA(商標)(ZD 1939)であり、これはEGFRを阻害するためにATP-擬態として機能するキノザリン誘導体である。米国特許第5,616,582号(Zeneca Limited);国際公開公報第96/33980号(Zeneca Limited)のp.4参照;更に、Rowinskyらの、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ, CA, 2001年5月12-15日)でのAbstract 5参照;Anidoらの、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ, CA, 2001年5月12-15日)でのAbstract 1712を参照のこと。小型分子EGFRアンタゴニストの別の例は、TARCEVA(商標)(OSI-774)であり、これは4-(置換されたフェニルアミノ)キノザリン誘導体[6,7-ビス(2-メトキシ-エトキシ)-キナゾリン-4-イル]-(3-エチニル-フェニル)アミン塩酸塩]EGFR阻害薬である。国際公開公報第96/30347号(Pfizer Inc.)の例えば2頁12行から4頁34行及び19頁14-17行を参照のこと。同じくMoyerら、Cancer Res., 57: 4838-48 (1997);Pollackら、J. Pharmacol, 291: 739-48 (1999)参照のこと。TARCEVA(商標)は、EGFRのリン酸化を阻害することにより機能し、並びにその下流のPI3/Akt及びMAP(マイトジェン活性化タンパク質)キナーゼシグナル伝達経路は、p27-媒介した細胞-周期停止を生じることができる。Hidalgoら、37th Annual Meeting of ASCO(サンフランシスコ, CA, 2001年5月12-15日)でのAbstract 281参照。前記小型有機分子もRONを阻害することができる。
【0111】
腫瘍形成に関連した増殖因子受容体の他の例は、血小板-由来の増殖因子(PDGF)、神経増殖因子(NGF)、及び線維芽細胞増殖因子(FGF)の受容体である。これらの受容体は、RONと組合わせて標的化することができる。
【0112】
別の態様において、RONアンタゴニストは、1種又は複数の適当なアジュバント、例えばサイトカイン(例えばIL-10及びIL-13)、又はケモカイン、腫瘍-関連抗原及びペプチドなどであるが、限定されない他の免疫刺激因子などと組合せて投与することができる。
【0113】
併用療法において、抗-RON抗体は、他の物質による療法の開始の前、同時、又は後に、更にはそれらの組合せ、すなわち抗-新生物薬療法の開始の前及び同時、前及び後、同時及び後、又は前、同時及び後に、投与される。例えば抗-RON抗体は、放射線療法の開始前1〜30日、好ましくは3〜20日、好ましくは5〜12日の間投与することができる。本発明の好ましい態様において、化学療法は、抗体療法と同時に、又はより好ましくは続けて投与される。
【0114】
本発明は更に、それに標的又はレポーター部分が連結されている本発明のRON抗体又は抗体断片を企図している。標的部分は、結合対の第一の一員である。抗-腫瘍物質は、例えばそのような対の第二の一員に結合され、これにより抗原-結合タンパク質が結合される位置に向けられる。このような結合対の一般的例は、アビジン及びビオチンである。好ましい態様において、ビオチンは、本発明の抗原-結合タンパク質に結合され、これによりアビジンもしくはストレプトアビジンに結合されている抗-腫瘍物質又は他の部分の標的を提供する。あるいは、ビオチン又は他のそのような部分は、例えば検出可能なシグナル-産生物質がアビジン又はストレプトアビジンに結合されているような診断システムにおいて、レポーターとして使用される本発明の抗原-結合タンパク質へ連結される。
【0115】
検出可能なシグナル-産生物質は、診断目的でin vivo及びin vitroにおいて有用である。シグナル産生物質は、通常電磁気放射線照射の測定である、外部手段により測定可能である測定可能なシグナルを生じる。ほとんどの部分について、シグナル産生物質は、酵素もしくは発色団であるか、又は蛍光、リン光もしくは化学発光により光を放出する。発色団は、紫外又は可視領域の光を吸収する色素を含み、基質又は酵素触媒された反応の分解産物であることができる。
【0116】
更に本発明の範囲に、当該技術分野において周知である、調査法又は診断法のための本抗体のin vivo及びin vitroにおける使用が含まれる。診断法は、本発明の抗体を備えるキットを含む。このようなキットは、ある種の癌の型のリスクのある個体における細胞上のRONの過剰発現を検出することにより、そのような個体を確定することにおいて有用である。加えて本発明の抗体は、RONを同定するそれらの能力のために研究用に実験室において使用することができる。
【0117】
本発明は、治療的有効量のヒト抗-EGFR抗体を含む、腫瘍増殖及び/又は腫瘍-関連した血管新生を阻害するキットも含む。これらのキットは更に、例えば腫瘍形成又は血管新生に関連した別の増殖因子受容体(例えば、先に説明された、VEGFR-1/Flt-1、VEGFR-2、PDGFR、IGFR、NGFR、EGFR、FGFRなど)の適当なアンタゴニストも含むことができる。あるいは又は加えて本発明のキットは、更に抗-新生物形成性物質を含むことができる。本発明の状況において適当な抗-新生物形成性物質の例は、本明細書に説明されている。本発明のキットは更に、アジュバントを含むことができ;その例も先に説明されている。
【0118】
本発明は更に、IMC-41A2、IMC-41A10もしくはIMC-41B12、又はその断片と同じ機能を有する抗体の同定及び単離の方法を提供し、ここでこのライブラリーのスクリーニングは、固形支持体に結合したリガンド結合機能を含むRONを有するアフィニティマトリックスを提供すること、このアフィニティマトリックスを抗体断片のライブラリーと接触すること、及びアフィニティマトリックスに結合しなかった抗体断片からアフィニティマトリックスへ結合した抗体断片を分離することを含む。
【0119】
固形支持体は、RONが接着することができる非-水性マトリックスを意味する。本明細書において包含された固相の例は、ガラス(例えば微細孔性ガラス(CPG)など)、多糖(例えばアガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール及びシリコンで一部又は全体が形成されたものを含む。ある態様において、状況に応じて固相は、アッセイプレートのウェルを備えることができ;他の場合に、これは精製カラム(例えば、アフィニティクロマトグラフィーカラム)である。この用語は、米国特許第4,275,149号に開示されたもののような、個別の粒子の不連続固相も含む。
【0120】
本明細書に列記された特許及び参考文献は全て、それらの全体が本明細書に参照として組入れられている。
【実施例】
【0121】
下記実施例は、単に例証目的で提供され、いかなる意味においても本発明の範囲を限定する意図はない。これらの実施例は、ベクター及びプラスミドの構築に、そのようなベクター及びプラスミドへのポリペプチドをコードしている遺伝子の挿入、又はプラスミドの宿主細胞への導入おいて使用される方法のような、通常の方法の詳細な説明は含まない。このような方法は、当業者に周知であり、Sambrook, J.、Fritsch, E. F.及びManiatis, T.の「Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press」(1989)を含む、多くの出版物において説明されている。
【0122】
材料及び方法
2種のFab抗-RON抗体(IMC-41A10及びIMC-41B12)の開発及び特徴決定
ファージディスプレイライブラリーからのヒト抗-RON Fab抗体の選択 この選択のために、3.7x1010種のクローンを含む大きいヒトFabファージディスプレイライブラリーを使用した。このライブラリーストックは、対数期に増殖し、M13K07ヘルパーファージで救済し、2YTAK培地(アンピシリン100μg/ml及びカナマイシン50g/mlを含有する2YT)中で30℃で一晩増幅した。このファージ調製物を、4%PEG/0.5M NaCl中で沈殿させ、Fcタンパク質500μg/mlを含有する3%無脂肪ミルク/PBS中に再懸濁し、37℃で1時間インキュベーションし、抗-Fc Fab断片を展示しているファージを捕獲し、他の非特異的結合をブロックした。
【0123】
RON-Fc(PBS中10μg/ml;Sigma-Aldrich)被覆したMaxisorp Starチューブ(Nunc, Rosklide, デンマーク)を、最初に3%ミルク/PBSで、37℃で1時間ブロックし、次に先のファージ調製物と共に室温で1時間インキュベーションした。これらのチューブを、PBST(0.1% Tween-20を含有するPBS)で20回洗浄し、その後PBSで20回洗浄した。結合したファージを、100mMトリエチルアミン(Sigma, セントルイス, MO)の新たに調製した溶液1mにより室温で10分間溶出した。ファージは、100mMトリエチルアミンで溶出し、Tris.HCl(pH7.4)で中和し、これを再感染するために使用し、中間対数期TG1細胞10mlと共に37℃で30分間振盪せずにインキュベーションし、その後30分間振盪した。感染したTG1細胞をペレット化し、いくつかのラージ2YT AGプレート上に播種し、30℃で一晩インキュベーションした。これらのプレート上で増殖したコロニーを全て、2YTA培地の3〜5mlへ擦過し、グリセロール(最終濃度:10%)と混合し、等分し、-70℃で貯蔵した。次の選択ラウンドについて、ファージストック100μlを、2YT AG培地25mlに添加し、中間対数期まで増殖した。この培養物を、M13K07ヘルパーファージで救済し、増幅し、沈殿し、イムノチューブ上に固定されたRON-Fcの濃度を下げ及び結合プロセス後の洗浄回数を増やした、前述の方法に従う選択に使用した。
【0124】
RONへ結合したファージからファージFab抗体を検出するためのELISA 個々のTG1クローンを採取し、96ウェルプレートにおいて37℃で増殖し、前述のようにM13K07ヘルパーファージで救済した。増幅されたファージ調製物を、1/6容量の18%ミルク/PBSにより、室温で1時間ブロックし、RON-Fc又はFc (1μg/mlx100μl)で被覆したMaxi-sorp 96-ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)へ、100μl/ウェルで添加した。室温で1.5時間インキュベーションした後、これらのプレートを、PBSTで3回洗浄し、1:5000希釈したマウス抗-M13ファージ-HRP複合体(Amersham Pharmacia Biotech, ピスカタウェイ, NJ)と共にインキュベーションした。これらのプレートを5回洗浄し、TMBペルオキシダーゼ基質(KPL, ガイサースバルグ, MD)を添加し、マイクロプレートリーダー(Molecular Device, サニーベール,CA)を用い吸光度450nmで読みとった。
【0125】
可溶性Fab断片の発現及び精製 個々のクローンのプラスミドを用い、非サプレッサーE. coli宿主HB2151を形質転換した。HB2151におけるFab断片の発現は、1mMイソプロピル-1-チオ-D-ガラクトピラノシド(Sigma)を含有する2YTA培地におけるこの細胞の30℃での培養により誘導した。これらの細胞のペリプラズム抽出物を、20%(w/v)ショ糖、200mM NaCl、1mM EDTA及び0.1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する25mM Tris(pH7.5)中への細胞ペレットの再懸濁、それに続く4℃で穏やかに攪拌しながら1時間のインキュベーションにより調製した。15,000rpmで15分間遠心した後、可溶性Fabタンパク質を、プロテインGカラムを製造業者(Amersham Pharmacia Biotech)のプロトコールに従い使用するアフィニティクロマトグラフィーにより上清から精製した。
【0126】
MSP/RON相互作用をブロックするFab抗体を検出するELISA Maxi-sorp 96-ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)を、MSP(R&D Systems)(1μg/mlx100μl)により、室温で1.5時間かけて被覆した。ウェルを洗浄後、これらを3%PBS/ミルクでブロックした。Fab又は完全IgGへ変換された抗-RONファージ抗体を、RON-Fc(25ng/ウェル)と共に室温で1時間プレインキュベーションした。その後Fab/RON-Fc又はIgG/RON-Fc混合物を、MSP-被覆したウェルに添加し、室温で1.5時間インキュベーションした。数回洗浄後、RONに結合したが、MSP/RON相互作用はブロックしない抗-RON Fab又はIgGを検出するために、抗-ヒトIgG, Fab-特異性-HRP結合された抗体の1:1000希釈物を、このプレートに、室温で1.5時間添加した。
【0127】
DNA BstN Iパターン分析及びヌクレオチド配列決定 選択の各ラウンド後の抗-RONファージFabクローンの多様性を、制限酵素消化パターン(すなわち、DNAフィンガープリント)により分析した。個々のクローンのFab遺伝子挿入物を、以下のプライマーを用いて、PCR増幅した:PUC 19リバース、5' AGCGGATAACAATTTCACACAGG 3';及びfdtet配列、5' GTCGTCTTTCCAGACGTTAGT 3'。この増幅産物を、多-切断酵素BstN Iにより消化し、3%アガロースゲルで分析した。各消化パターンからの代表的クローンのDNA配列は、ジデオキシヌクレオチド法での配列決定により決定した。
【0128】
IgG抗体を産生するためのFab重鎖及び軽鎖断片のクローニング IMC-IMC-41 A10及びIMC-41B12 Fab候補の重鎖及び軽鎖遺伝子をコードしているDNA配列を、PCRにより増幅し、グルタミン合成酵素系発現ベクター(Lonza Biologies plc, Slough, バークシャイアー, 英国)へクローニングした。IMC-41A10及びIMC-41B12重鎖及び軽鎖の可変領域に関するDNA配列及びタンパク質配列を、図1に示した。操作した免疫グロブリン発現ベクターを、グルタミン合成酵素選択用い、NSO細胞へ安定して形質移入し、クローンを抗-Fc ELISAにより抗体発現についてスクリーニングした。完全長IgG1抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィー(Poros A;PerSeptive Biosystems Inc., フォスターシティ, CA)により精製した。
【0129】
BIAcore分析 可溶性Fab及び抗体タンパク質のRONへの結合速度論を、BIACORE 3000 (BIAcore, ピスカタウェイ, NJ)を用いて決定した。組換えRON-Fcを、センサーチップ上に固定し、Fab又は抗体を様々な濃度で注入した。センサーグラムを得、速度定数を決定するためにBIA Evaluation 2.0ソフトウェアを用い評価した。親和定数KDを、速度定数Koff/Konの比から計算した。相互作用の「Kon/M/S」及び「Koff/S」速度を用い、抗体/受容体相互作用の親和性(Kd, M)を決定した。IMC-41A10に関するKd、Kon、及びKoff速度は、1.5e-9、8.4e4及び1.3e-4であった。IMC-41B12に関して、これらは1e-10、1.7e6及び1.7e-4であった。
【0130】
RON細胞表面発現のフローサイトメトリー 接着性癌細胞株由来の 1,000,000個の細胞を、PBS+5%FCS中で、5μg IMC-41A10と共に、4℃で30分間インキュベーションした。PBS+5%FCSの洗浄後、細胞を、抗-ヒトIgGフィコエリスリン-結合された二次抗体(Jackson Immuno Research)と共に4℃で30分間インキュベーションした。PBS+5%FCSで洗浄後、細胞を、FACSvantage SEフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用する、フローサイトメトリーで分析した。
【0131】
ウェスタンブロット及び免疫沈降 細胞を、10-cm又は6-ウェル培養皿に播種し、集密度70〜80%になるまで増殖した。単層を、PBSで2回洗浄し、血清-非含有培地中で一晩培養した。その後抗体を、新鮮な血清-非含有培地へ添加し、37℃で30〜60分間インキュベーションした。細胞を、リガンドと共に10分間インキュベーションし、その後氷上に配置し、氷冷したPBSで洗浄した。細胞を、50mM Tris-HCl(pH7.4)、150mM NaCl、1%Triton X-100、1mM EDTA、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル、0.5mM Na3VO4、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチン、及び1μg/mlアプロチニン中で、氷上で10分間溶解した。溶解液を、4℃での遠心により透明化した。その後可溶化したRONを、この溶解液から免疫沈降した。抗体RONクローンC-20(Santa Cruz Biotechnology, サンタクルス, CA)又はIMC-41 A10を、4μg/mlの溶解液400μlと共に4℃で一晩インキュベーションした。プロテインA-アガロースビーズの4℃で2時間の添加により、免疫複合体を沈降させ、ペレット化し、溶解緩衝液で3回洗浄した。プロテインA-アガロースビーズへ結合した免疫沈降物を、変性ゲル試料緩衝液へ剥がした。溶解液又は免疫沈降物を、変性ゲル電気泳動のために処理し、4〜12%アクリルアミドゲル上を流し、ウェスタンブロットによりニトロセルロースメンブレンにブロッティングした。チロシン-リン酸化されたタンパク質を、抗-ホスホRON抗体(Biosource)及び抗-マウス-ホースラディッシュペルオキシダーゼ二次抗体を使用し、ブロット上で検出した。RONは、モノクローナル抗体RON C-20(Santa Cruz Biotechnology)により検出した。ホスホ-Akt及び総Akt抗体は、PharMingen (BD Biosciences, サンディエゴ, CA)から入手した。MAPKリン酸化に関して、ホスホ-p44/42及び総p44/42抗体は、Cell Signaling Technologyから購入した。バンドは、X-線フィルム(Eastman Kodak, ロチェスター, NY)上で、増強された化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biotech)により視認した。
【0132】
IC50及びED50の決定のためのELISA 抗-RON抗体、IMC-41 A10及びIMC-41B12の組換えヒトRON受容体への結合能及びMSP/RON相互作用のブロック能を、ELISAを用いて測定した。ELISAプレート上に固定された受容体により、IMC-41 A10及びIMC-41B12のRONへの結合のED50値は、各々、0.15nM及び0.10nMであった。同じELISAフォーマットを使用し、IMC-41 A10及びIMC-41B12は、それらのMSP/RON相互作用のブロック能について2nMのIC50値を共有した。
【0133】
細胞増殖アッセイ 増殖阻害に関して、癌細胞株由来の10,000個の細胞を、完全培地中の24-ウェルプレートに播種した。24時間後、100nMの抗-RON IMC-41 A10抗体を、3つ組でプレートへ添加し、更に3日間培養した。各ウェルに関する細胞(結合した及び懸濁した)の総数を、コールターカウンターを用いて決定した。
【0134】
ヒト腫瘍異種移植片モデル 腫瘍異種移植片を、マトリゲル(Collaborative Research Biochemicals, ベッドフォード, MA)と混合した5x106個HT-29細胞の、5〜6週齢のメス無胸腺(nu/nu)マウス(Charles River Laboratories, ウィルミントン, MA)の左側腹への皮下注射により確立した。腫瘍を、サイズ150〜300mm3まで大きくし、その後マウスを無作為に各群12匹の動物群に分けた。マウスを、対照抗体(ヒトIgG)又はモノクローナル抗-RON IMC-41A10抗体により、投与量1mgで、3日毎の腹腔内注射により処置した。動物の処置は、試験期間は継続した。腫瘍を、カリパーで毎週2回計測し、腫瘍容積を下記式により計算した:(π/6(w1xw2xw2))、式中w1は最大腫瘍直径を表し、w2は最小腫瘍直径を表す。腫瘍容積は、Mann-Whitney U検定を用いて解析し、及びSigmaStat (version 2.03;Jandel Scientific, サンラフェル, CA)の統計学的パッケージを用いてコンピュータ解析した。
【0135】
【表3】

【0136】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、IMC-41A10の投与後のマウスにおける時間に対する腫瘍サイズをプロットするチャートを提供する。
【図2A】図2Aは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2B】図2Bは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2C】図2Cは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2D】図2Dは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2E】図2Eは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2F】図2Fは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2G】図2Gは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2H】図Hは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図2I】図2Iは、本発明の抗体の配列番号を含む、様々な配列番号を規定する。
【図3】図3は、IMC-41A10による、MSP誘導したリン酸化の阻害を図示するウェスタンブロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR1の配列番号2 (SYAMH);CDR2の配列番号4 (VISYDGSNKYYADSVKG)、及びCDR3の配列番号6 (FSGWPNNYYYYGMDV)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、RONに特異的なモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項2】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項1記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項3】
CDR1の配列番号11 (RSSQSLLHSNGFNYVD);CDR2の配列番号13 (FGSYRAS)、及びCDR3の配列番号15 (MQALQTPPWT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的なモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項4】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項3記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号7の重鎖可変領域配列又は配列番号16の軽鎖可変領域配列を含む、請求項4記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項6】
前記抗体が、該配列を伴う重鎖及び軽鎖の両方を含む、請求項5記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号9の重鎖配列及び配列番号18の軽鎖配列を含む、請求項6記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項8】
CDR1の配列番号50 (RSSQSLLHSNGYNYLD);CDR2の配列番号52 (LGSNRAS)、及びCDR3の配列番号54 (MQALQTPRT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的なモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項9】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項8記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項10】
前記抗体が、配列番号41の重鎖可変領域配列又は配列番号42の軽鎖可変領域配列を含む、請求項9記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項11】
前記抗体が、前記配列を伴う重鎖及び軽鎖の両方を含む、請求項10記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項12】
前記抗体が、配列番号56の重鎖配列又は配列番号58の軽鎖配列を含む、請求項11記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項13】
CDR1の配列番号20 (SHYWS);CDR2の配列番号23 (YIYYSGSTNYNPSLKS)、及びCDR3の配列番号24 (IPNYYDRSGYYPGYWYFDL)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、RONに特異的なモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項14】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項13記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項15】
CDR1の配列番号16 (TLRSGFNVDSYRIS);CDR2の配列番号17 (YKSDSDK)、及びCDR3の配列番号18 (MIWHSSAWV)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、RONに特異的なモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項16】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項15記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項17】
前記抗体が、配列番号25の重鎖可変領域配列又は配列番号35の軽鎖可変領域配列を含む、請求項16記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項18】
前記抗体が、該配列を伴う重鎖及び軽鎖の両可変領域を含む、請求項17記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号27の重鎖配列を有する、請求項18記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項20】
前記抗体が、配列番号37又は39の軽鎖配列を有する、請求項19記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項21】
配列番号1、3、5、8、10、12、14、17、19、21、23、26、29、31、33、36、38、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択される核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項22】
対照配列に作動可能に連結された、請求項21記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項22記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項24】
抗体の発現を可能にする条件下で、請求項23記載の宿主細胞を培養することを含む、抗体を作製する方法。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか1項記載のモノクローナル抗体又はその断片、及び医薬として許容される担体を含有する、医薬組成物。
【請求項26】
特異的結合を得るために、試料を請求項1〜20のいずれか1項記載の抗体又はその断片と接触させステップ、及びそのような結合を検出するステップを含む、試料中のRONの存在を検出する方法。
【請求項27】
RONに特異的な抗体又はその断片の有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、RONを発現している哺乳動物腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項28】
RONに特異的な抗体又はその断片の有効量を哺乳動物に投与するステップを含む、RONを発現している哺乳動物腫瘍細胞の転移活性を阻害する方法。
【請求項29】
RONに特異的な抗体又は抗体断片を哺乳動物に投与するステップを含む、哺乳動物においてRON活性により仲介された炎症を治療する方法。
【請求項30】
小型有機分子を投与するステップを更に含む、請求項27〜29のいずれか1項記載の方法であって、当該小型有機分子は、化学療法薬、抗血管新生薬又はRON活性化阻害薬である、前記方法。
【請求項31】
前記抗体が、小型有機分子に結合される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
受容体チロシンキナーゼに特異的な1種又は複数の抗体を投与するステップを更に含む、請求項27〜31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記受容体チロシンキナーゼが、EGFR又はVEGFRである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記腫瘍細胞が、結腸、膵臓、前立腺、胃、肺、肝臓、卵巣、腎臓、乳房及び脳からなる群より選択される、請求項27、28及び30〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍細胞が結腸に由来する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記腫瘍細胞が、上皮細胞又は神経内分泌細胞である、請求項27、28及び30〜33のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記のRONに特異的な抗体又はその断片がヒト抗体である、請求項27〜36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記抗体が、MSPのRONへの結合を阻止する、請求項27〜37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記抗体が、投与量約1〜約10mg/Kgで投与される、請求項27〜38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記抗体が、投与量約3〜約8mg/Kgで投与される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が、CDR1の配列番号2 (SYAMH);CDR2の配列番号4 (VISYDGSNKYYADSVKG)、及びCDR3の配列番号6 (FSGWPNNYYYYGMDV)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、請求項27〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、CDR1の配列番号11 (RSSQSLLHSNGFNYVD);CDR2の配列番号13 (FGSYRAS)、及びCDR3の配列番号15 (MQALQTPPWT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、請求項27〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、配列番号7の重鎖可変領域配列又は配列番号16の軽鎖可変領域配列を含む、請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、CDR1の配列番号50 (RSSQSLLHSNGYNYLD);CDR2の配列番号52 (LGSNRAS)、及びCDR3の配列番号54 (MQALQTPRT)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、請求項27〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記抗体が、配列番号41の重鎖可変領域配列又は配列番号42の軽鎖可変領域配列を含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、CDR1の配列番号20 (SHYWS);CDR2の配列番号23 (YIYYSGSTNYNPSLKS)、及びCDR3の配列番号24 (IPNYYDRSGYYPGYWYFDL)からなる群より選択される1種又は複数の重鎖CDR配列を含む、請求項27〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、CDR1の配列番号16 (TLRSGFNVDSYRIS);CDR2の配列番号17 (YKSDSDK)、及びCDR3の配列番号18 (MIWHSSAWV)からなる群より選択される1種又は複数の軽鎖CDR配列を含む、請求項27〜40のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
前記抗体が、CDR1、CDR2及びCDR3配列を含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
前記抗体が、配列番号25の重鎖可変領域配列又は配列番号35の軽鎖可変領域配列を含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
前記抗体が、該配列を伴う重鎖及び軽鎖の両可変領域を含む、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記抗体が、配列番号27の重鎖配列及び配列番号37又は39の軽鎖配列を含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
RONに特異的な抗体又はその断片を含有する、哺乳動物においてRONを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する治療用組成物。
【請求項57】
前記抗体又はその断片がヒト抗体である、請求項56記載の治療用組成物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−508858(P2008−508858A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513435(P2007−513435)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016920
【国際公開番号】WO2005/120557
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(500581021)イムクローン システムズ インコーポレイティド (7)
【Fターム(参考)】