説明

マグネシウム又はマグネシウム合金の鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の製造方法

【課題】マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に対して耐食性に優れるマグネシウム又はマグネシウム合金鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金の鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の製造方法は、けい酸カルシウム質成形体に、飽和濃度から0.25モル/リットルまでの濃度のアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させた後、乾燥する工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム又はその合金を鋳造する鋳造装置において、これら金属の溶湯と直接接触する部位に使用されるけい酸カルシウム質耐熱材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金等の融点が概ね800℃以下である低融点金属を鋳造する鋳造装置においては、金属の溶湯の移送、給湯又は保持等を行うための注湯ボックス、樋又は保持炉等の内張り材、あるいはフロート、スパウト、ホットトップリング、トランジションプレート等の付属部材として、種々の耐熱材料を加工したものが使用されているが、中でも耐熱性が良好で、軽量でありながらも強度が高く、更に加工性に優れることなどから、炭素繊維で補強したけい酸カルシウム質耐熱材料が広く利用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、マグネシム及びマグネシウム合金は、けい酸カルシウム質を浸食する作用が極めて強い。そのため、けい酸カルシウム質を、鋳造装置においてマグネシム又はマグネシウム合金の溶湯と直接接触する部位の構成材料として使用するには、何等かの対策を講ずる必要がある。その対策として、例えば、窒化ホウ素質をはじめとする既存の耐熱性コーティング材でけい酸カルシウム質をコーティングする方法や、けい酸カルシウム質にアルカリ金属フッ化物を溶解してなる処理液を含浸させる方法等が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭63−53145号公報
【特許文献2】特開2007−268598公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の耐熱性コーティング材でコーティングする方法においては、溶湯の移動によるコーティング部への応力負荷や、基材との熱膨張率の差に起因してコーティング部が剥離しやすく、耐食効果が不十分となるという問題がある。また、アルカリ金属フッ化物を含浸させる方法においては、アルカリ金属がケイ酸カルシウムの耐熱性を低下させる作用を有するため、600℃以上の温度に曝されると熱による損傷を受けやすく、耐久性が低下するという問題がある。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に対して耐食性に優れるマグネシウム又はマグネシウム合金鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に対するけい酸カルシウム質の耐食性を向上させるべく検討したところ、けい酸カルシウム質成形体に、所定濃度に調整したアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させて乾燥することで、マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に浸食され難いけい酸カルシウム質耐熱材料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、けい酸カルシウム質成形体に、飽和濃度から0.25モル/リットルまでの濃度のアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させた後、乾燥する工程を含む、マグネシウム又はマグネシウム合金鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、けい酸カルシウム質成形体に、特定濃度のアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させて乾燥するという簡便な方法により、マグネシウム又はマグネシウム合金の溶湯に対して優れた耐食性を発現し得るマグネシウム又はマグネシウム合金鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例における浸食試験の試験方法を説明するための模式図である。
【図2】実施例の浸食試験における切断方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において「けい酸カルシウム質成形体」とは、けい酸カルシウム水和物をマトリックスとする成形体をいう。
本発明においては、けい酸カルシウム質成形体として、アルミニウム等の低融点金属の鋳造に用いられているもの、あるいは市販のけい酸カルシウム質成形体などを使用することができるが、ゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)及びトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)から選ばれる少なくとも1種のけい酸カルシウム水和物結晶をマトリックスとするものが好適である。なお、けい酸カルシウム質成形体の市販品としては、(株)エーアンドエーマテリアル製のキルナイト#1000、トンネライト、レセパルH、ハイラック等が例示される。
【0011】
けい酸カルシウム水和物をマトリックスとする成形体は、例えば、石灰質原料及びけい酸質原料を主原料とし、必要に応じてその他の原料とともに湿式で混合して所定の形状に成形した後、水熱養生してけい酸カルシウム水和物を生成させ、硬化することで製造することが可能である。
石灰質原料及びけい酸質原料としては、従来公知の材料を使用することができるが、石灰質原料としては、例えば、消石灰や生石灰が例示され、またけい酸質原料としては、珪石粉末等の結晶質シリカや、マイクロシリカ、珪藻土等の非晶質シリカが例示される。石灰質原料とけい酸質原料の割合は、C/S比(CaOとSiO2とのモル比)が0.5〜1.5の範囲内であることが好ましい。マトリックスを形成するけい酸カルシウム水和物結晶としてゾノトライトの生成を所望する場合はC/Sを0.9〜1.1とし、けい酸カルシウム水和物結晶としてトバモライトの生成を所望する場合はC/Sを0.5〜1.0とするのがよい。
【0012】
本発明で使用するその他原料としては、例えば、繊維原料、充填材、添加材が例示される。
繊維原料には、けい酸カルシウム質成形体の強度等の物性を向上させるための補強繊維と、成形助材としての繊維原料とがある。補強繊維は、固形分原料全体(水分を除く、以下同様)に占める割合が0.1〜10質量%の範囲で添加できる。補強繊維としては、炭素繊維や、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、セラミックス繊維等の無機質繊維が好適である。また、成形助材としての繊維原料には、パルプ、ポリビニルアルコール(PVA)繊維等の有機質繊維がある。
固形分原料全体に占める補強繊維の割合は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%である。0.1質量%未満であると補強効果が不十分となる傾向にあり、他方10質量%を超えると成形し難く、また表面が粗雑になりやすい傾向にある。固形分原料全体に占める有機質繊維の割合は、0.1〜5質量%であることが好ましい。補強繊維の繊維長は3〜10mmが好ましく、また繊維径は3〜15μmが好ましい。パルプは、カナディアンフリーネスで300〜700程度が好ましい。
【0013】
充填材は、けい酸カルシウム質成形体の製造工程における成形性を向上させるために、あるいは得られたけい酸カルシウム質成形体の強度や耐熱性等の物性を向上させるために、必要に応じて用いられる原料であり、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、ワラストナイトからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。充填材の形状は、粉末状でも、繊維状であってもよく、適宜選択することができる。固形分原料全体に占める充填材の割合は、充填材の種類により適宜設定することが可能であるが、60質量%以下であることが好ましい。
【0014】
また、添加材として、予め合成したゾノトライト、予め合成したトバモライト等のけい酸カルシウム水和物結晶を用いることができる。添加材は、けい酸カルシウム質成形体の製造工程における成形性を向上させるために、あるいは得られたけい酸カルシウム質成形体の強度や耐熱性等の物性を向上させるために、必要に応じて用いられる原料である。添加材は、水熱養生により石灰質原料とけい酸質原料とを反応させてマトリックスを形成する際にマトリックスの一部を構成する原料であるのに対し、充填剤はマトリックスの一部を構成する原料ではない点で相違する。固形分原料全体に占める添加材の割合は、1〜15質量%であることが好ましい。1質量%未満であると成型性向上効果が十分発揮され難い傾向にあり、他方15質量%を超えると強度が低下しやすい傾向にある。また、固形分原料全体に占める添加材と充填材との合計割合は、31質量%以下であることが好ましい。
【0015】
上記した各原料に水を加え均一に混合して原料スラリーを得た後、その原料スラリーを成形することで未硬化状態の成形体を得ることができる。なお、成形体は、公知の成形方法を適用して板状等の所望形状にすることができる。
水の添加量は、原料スラリーの成形方法によって適宜設定することが可能であるが、原料合計100質量部に対する水の添加量は、例えば、成形方法として押出成形法を用いる場合には20〜50質量部であり、成形方法としてモールド・プレス法を用いる場合には200〜500質量部であり、成形方法として抄造法を用いる場合には1000〜2000質量部である。
【0016】
次いで、未硬化状態の成形体に対して水熱養生を行うことにより、石灰質原料、けい酸質原料及び水分が反応してマトリックスであるけい酸カルシウム水和物を形成することができる。そして、水熱養生後の未硬化状態の成形体を硬化することで、けい酸カルシウム質成形体を得ることができる。
水熱養生は、オートクレーブを用い、所定の温度の飽和水蒸気圧力下において所定時間行うのがよい。例えば、マトリックスを形成するけい酸カルシウム水和物結晶がゾノトライトの場合は190〜220℃の飽和水蒸気圧力で2〜20時間であり、マトリックスを形成するけい酸カルシウム水和物結晶がトバモライトの場合は150〜200℃の飽和水蒸気圧力で2〜15時間である。なお、添加材として予め合成したゾノトライトや予め合成したトバモライトを使用した場合、これらもマトリックスの一部を形成する。
【0017】
本発明で使用するけい酸カルシウム質成形体は、見掛け密度が好ましくは0.5〜1.2g/cm3、より好ましくは0.7〜1.0g/cm3である。0.5以下であると強度が不十分で破損しやすい傾向にあり、他方1.2を超えると断熱性が低下する傾向にある。
【0018】
けい酸カルシウム質成形体の見掛け密度を上記範囲内にするには、原料スラリーを成形して未硬化状態の成形体を得る際の圧力を調整すればよい。圧力は、原料スラリーの成形方法によって適宜設定することができるが、例えば、押出成形法の場合、押出圧力は概ね5〜15MPaであり、またモールド・プレス法の場合、加圧力は概ね1〜10MPaであり、更に抄造法の場合、抄き上げたグリーンフィルムをメーキングロールに巻き取る際のカウンター圧(線圧)が概ね50〜120Kg/cmである。
【0019】
本発明においては、けい酸カルシウム質成形体として加熱処理したものを用いることができる。加熱処理は、含浸処理前でも含浸処理後でも良いが、加熱処理により成形体に含まれる結晶水や有機質繊維を予め取り除くことができる。また、鋳造する際にガスが発生すると、金属溶湯に気泡を巻き込んだり、突沸して金属溶湯が飛散することがあるが、加熱処理によりこれらを防止することも可能である。更に、けい酸カルシウム質成形体を600〜800℃程度に過熱すると、長さが0.1〜1%程度収縮するが、加熱処理することで使用時の収縮が抑制され、亀裂等による破損も防止できる。
【0020】
加熱処理の温度は、好ましくは200〜800℃、より好ましくは400〜600℃である。200℃未満であるとガス発生防止や収縮低減効果が不十分となる傾向にあり、他方800℃を超えると強度が低下しやすくなる。
加熱処理の雰囲気は空気中でも良いが、炭素繊維を含む場合は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、けい酸カルシウム質成形体に、アルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸処理するが、アルカリ金属塩化物の溶液を含浸処理すると、加熱する際に亀裂が発生しやすく、また成形体が脆弱化するため好ましくない。
アルカリ土類金属塩化物としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムが好適であり、これらは単独で又は組み合わせて使用することができる。アルカリ土類金属塩化物は、溶液として用いるため、無水物でも、水和物であってもよい。溶媒は水が最も一般的であるが、エチルアルコール等のアルコール、アセトン等のケトン等の有機溶媒も使用可能である。
【0022】
アルカリ土類金属塩化物の溶液の濃度は、飽和濃度から0.25モル/リットルまでの濃度で使用されるが、耐食性向上の観点から、好ましくは飽和濃度から0.30モル/リットル、より好ましくは飽和濃度から0.50モル/リットル、特に好ましくは飽和濃度から0.70モル/リットルである。なお、「モル/リットル」のリットルとは、溶液の体積ではなく、溶媒の体積をいう。
【0023】
アルカリ土類金属塩化物の溶液の含浸量は濃度により適宜設定することが可能であるが、けい酸カルシウム質成形体1平方メートルあたり、好ましくは1〜4kg、より好ましくは1〜3.5kg、特に好ましくは1〜3kgである。含浸量が少な過ぎても、また多過ぎても、耐食効果が不十分となりやすいので、上記範囲内とすることが好ましい。ここで、本発明において「含浸量」とは、含浸前後のけい酸カルシウム質成形体質量の変化量(Kg)をけい酸カルシウム質成形体の表面積で除した値をいい、具体的には下記式により求めることができる。
含浸量(Kg/m2)=[含浸後のけい酸カルシウム質成形体の質量(Kg)−含浸前のけい酸カルシウム質成形体の質量(Kg)]/けい酸カルシウム質成形体の全表面積(m2
【0024】
けい酸カルシウム質成形体にアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させる場合、けい酸カルシウム質成形体を所望の形状に予め加工しても良い。例えば、けい酸カルシウム質成形体を板状で使用する場合、所定の大きさに切断した後に含浸処理してもよく、またフロート、スパウト、ホットトップリング、トランジションプレートの様な切削加工品は、加工完了後に含浸処理しても良い。
【0025】
けい酸カルシウム質成形体にアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸する方法としては、例えば、浸漬、刷毛塗り、スプレー等の公知の方法を採用することができる。なお、含浸処理は、けい酸カルシウム質成形体の全表面に行うことが望ましいが、マグネシウム又はマグネシウム合金が直接接触する面のみに行うこともできる。
【0026】
けい酸カルシウム質成形体にアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させた後、乾燥して溶媒を取り除くが、乾燥方法は特に限定されず、公知の加熱乾燥手段を採用することができる。加熱乾燥を行う場合の温度は、100〜300℃が好適である。
【0027】
このようにして、本発明に係るけい酸カルシウム質耐熱材料が得られるが、けい酸カルシウム質耐熱材料は鋳造装置においてマグネシム又はマグネシウム合金の溶湯と直接接触する部位の構成材料として専ら使用される。かかる部位としては、金属の溶湯の移送、給湯又は保持等を行うための注湯ボックス、樋又は保持炉等の内張り材、あるいはフロート、スパウト、ホットトップリング、トランジションプレート等の付属部材等が例示される。
マグネシウム合金としては、例えば、アルミニウム、亜鉛等の融点が概ね800℃以下である低融点金属との合金が例示され、マグネシウムの含有率は適宜選択することが可能である。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例で使用した材料は以下のとおりである。
(1)けい酸カルシウム質成形体
レセパルH:マトリックスが主としてゾノトライトからなり、充填材としてワラストナイトを、繊維原料として炭素繊維を、それぞれ含有するけい酸カルシウム質成形体(株式会社エーアンドエーマテリアル製)
トンネライト:マトリックスが主としてゾノトライトからなり、充填材としてワラストナイトを、繊維原料としてパルプ及びガラス繊維を、それぞれ含有するけい酸カルシウム質成形体(株式会社エーアンドエーマテリアル製)
【0029】
(2)アルカリ土類金属塩化物
塩化マグネシウム6水和物:関東化学株式会社製(試薬、鹿1級)
塩化カルシウム2水和物:関東化学株式会社製(試薬、鹿1級)
塩化バリウム2水和物:関東化学株式会社製(試薬、鹿1級)
【0030】
(実施例1〜20、比較例1〜8)
(1)含浸処理液の調製
塩化マグネシウム6水和物(MgCl2・6H2O)、塩化カルシウム2水和物(CaCl2・2H2O)、及び塩化バリウム2水和物(BaCl2・2H2O)の3種のアルカリ土類金属塩化物のそれぞれに精製水を加えて液温を20℃に調整して、表1に示すアルカリ土類金属塩化物の飽和水溶液を作製した。
【0031】
【表1】

【0032】
次に、上記飽和水溶液を精製水で希釈し、表2〜6に示す各濃度の含浸処理液を作製した。
【0033】
(2)けい酸カルシウム質成形体の熱処理
けい酸カルシウム質成形体として、レセパルHと、トンネライトを用意し、タテ10cm×ヨコ10cm×厚さ2.5cmの大きさに加工した。次いで、けい酸カルシウム質成形体を、窒素雰囲気下又は空気雰囲気下、電気炉中で3時間熱処理した後、電気炉内で自然冷却した。
【0034】
(3)けい酸カルシウム質耐熱材料の製造
熱処理したけい酸カルシウム質成形体と、熱処理を施していないけい酸カルシウム質成形体の表面に、直径10mm、深さ10mmの穴を開けた。次に、その穿孔面を上にして、液面から穿孔面までの深さが5cmとなるようにけい酸カルシウム質成形体を処理液に浸漬した。浸漬時間は概ね30秒から5分であり、そのときの含浸量を表2〜6に示す。なお、含浸量は下記式(1)より、またけい酸カルシウム質成形体の表面積は下記式(2)により、それぞれ求めた。
【0035】
含浸量(Kg/m2)=[含浸後のけい酸カルシウム質成形体の質量(Kg)−含浸前のけい酸カルシウム質成形体の質量(Kg)]/けい酸カルシウム質成形体の全表面積(m2) ・・・(1)
けい酸カルシウム質成形体の表面積(m2)=[タテ(m)×ヨコ(m)×2]+[タテ(m)×厚さ(m)×2]+[ヨコ(m)×厚さ(m)×2]+[穴の直径(m)×穴の深さ(m)×3.14] ・・・(2)
【0036】
次に、含浸処理したけい酸カルシウム質成形体を105℃のオーブンで乾燥し、けい酸カルシウム質耐熱材料を得た。
【0037】
(4)浸食試験
図1に示すように、けい酸カルシウム質耐熱材料1の穴の略中央部に、タテ6mm×ヨコ6mm×厚さ3mmのマグネシウム合金2(AZ31)を置き、上記穴に直径10mm×高さ10mmのカーボン製円柱3を挿入し、更に円柱上面にタテ40mm×ヨコ40mm×高さ25mmの鉄塊4を載置した。鉄塊4を載置して荷重をかけた状態のけい酸カルシウム質耐熱材料を、アルゴンガスを導入した電気炉内に収容し、電気炉を室温から毎分25℃の速度で800℃まで昇温してマグネシウム合金を溶融させた。次いで、800℃で1時間保持した後、加熱を停止し室温まで自然冷却した。そして、図2に示すように、けい酸カルシウム質耐熱材料1の穿孔部底面の中心5を通過するII−II切断線に沿って、直径が測定できるように該耐熱材料1を切断し、その直径に対する浸食長さの割合を観察して下記の基準により評価した。
【0038】
評価基準
◎:マグネシウム合金がけい酸カルシウム質耐熱材料に全く浸食していない。
○:マグネシウム合金の、けい酸カルシウム質耐熱材料の穿孔部底面の直径に対する浸食長さの割合が10%未満である。
△:マグネシウム合金の、けい酸カルシウム質耐熱材料の穿孔部底面の直径に対する浸食長さの割合が10%以上50%未満である。
×:マグネシウム合金の、けい酸カルシウム質耐熱材料の穿孔部底面の直径に対する浸食長さの割合が50%以上である。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
表2〜6から、けい酸カルシウム質成形体に、所定濃度のアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸処理することにより、マグネシウム合金の溶湯に対する耐食性が大幅に向上することが確認された。
【符号の説明】
【0045】
1:けい酸カルシウム質耐熱材料
2:マグネシウム合金
3:カーボン製円柱
4:鉄塊
5:試験体の穿孔部底面の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
けい酸カルシウム質成形体に、飽和濃度から0.25モル/リットルまでの濃度のアルカリ土類金属塩化物の溶液を含浸させた後、乾燥する工程を含む、マグネシウム又はマグネシウム合金の鋳造装置用けい酸カルシウム質耐熱材料の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属塩化物が塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び塩化バリウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶液の含浸量がけい酸カルシウム質成形体1平方メートルあたり、1〜4Kgである、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記けい酸カルシウム質成形体の見掛け密度が0.5〜1.2g/cm3である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記けい酸カルシウム質成形体が200〜800℃の温度で加熱処理したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−195650(P2010−195650A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44357(P2009−44357)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】