説明

マグネトロンスパッタ成膜基板の製造方法およびその装置

スパッタ面(7)に沿ってマグネトロン磁界パターン(9)が周期的(My)に移動され、かつ基板(11)がスパッタ面(7)を通過するマグトロンスパッタ成膜において基板に付着する材料量分布を最適化するために、磁界パターン(9)の周期的移動(My)と位相同期して、スパッタ速度が変調配列(3)によって変調される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブル記載の方法ならびに請求項28のプリアンブル記載の装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願と同一の出願人の国際出願公開第00/71774号から、平面基板が、スパッタ面と平行に見て、円軌道内でソースを通過して移動する反応性成膜プロセス用の動作点安定化スパッタソースの制御によって、いわゆるゼーネン効果(Sehnen−Effekt)を補償することが知られている。ゼーネン効果とは、前記基板に基板移動方向に付着した材料量の不均質な分布である。従ってこれは、本質的に一方で円軌道と、他方で基板の平面形成に基づき、様々な基板領域がスパッタ面と平行に見て、スパッタ面に対して様々な距離−および角度比で通過することに由来する。そこから生じる基板の運動方向で異なる基板への成膜速度は、スパッタ面上への基板移動と同期して、処理雰囲気が所定のプロフィルに従って変調されることによって補償される。
【0003】
さらにマグネトロンスパッタが知られている。しかもスパッタ面上で1つまたは複数の、好ましくは自体閉じている、トンネル状にスパッタ面から出て、前記スパッタ面へ再び入る磁界の閉ループが生成される。励起電界との相互作用による前記マグネトロン磁界の公知の電子降下効果に基づき、トンネル状のマグネトロン磁界パターンの領域に、それによって前記ゾーン内でスパッタ速度を上昇させるプラズマ密度の増大を生じる。マグネトロンスパッタで達成されるスパッタ速度は、本質的に非磁界支援スパッタの場合よりも高くなる。しかし、マグネトロン磁界パターンに沿ってスパッタ速度が上昇するため、前記ゾーン内のスパッタ面の中に、いわゆる「レーストラック」(“race track”)として知られているスパッタ侵食溝が生じ、それによってスパッタターゲット材料が粗悪にのみ利用される。
【0004】
まず第一にこの理由から、周知のように、マグネトロン磁界パターンをソースの運転中にスパッタ面上へ移動させ、それによって前記パターンの領域内のスパッタリングの増加を可能な限り全スパッタ面上に時間的に配分する方向に移行している。さらにこの場合は、移動したマグネトロン磁界パターンによる反応性マグネトロンスパッタにおいてターゲット被毒、すなわち粗悪な導電性の反応性プロセスの接続部をもつターゲット表面領域の妨害成膜の本質的な低減が達成される。反応性成膜プロセスにおいて、すなわち金属酸化物層を付着するための反応性プロセスガス、たとえば酸素を供給して、たとえば金属製ターゲットから出発する化合層の製造において、移動したマグネトロン磁界パターンのためにスパッタ表面の均質な周期的侵食が生じ、それによって前記妨害成膜が、たとえば酸化物層によって著しく低減される。これがプロセス安定性を増加させる。そのため多くの場合、移動したマグネトロン磁界パターンによる反応性マグネトロンスパッタにおいて、制御によるプロセス動作点の安定化を考慮する必要がない。
【0005】
通常、マグネトロン磁界パターンの移動は、スパッタ面に沿って1次元または2次元で周期的に実現される。たとえば、長尺ターゲットの場合は、閉ループを形成するパターンを周期的にターゲットの長手方向に無定方向に移動させることができる。その場合、この運動は1次元で周期的である。両次元方向により多く伸長するターゲット配列の場合は、たとえば磁界パターンが一方へも他方へも周期的に無定方向に移動され、これがリサジュー図形に対応するスパッタ面に沿った磁界パターンの移動軌道になる。周期的な磁界パターン移動は、この場合、特に円形ターゲットにおいて、たいてい回転運動によって、循環運動であれ振子回転運動であれ、スパッタ面上に垂直に立つ軸を基準として実現される。
ここで難なく前記軸を基準として磁界パターンは円形にしてはならないことが分かる。
【0006】
スパッタ面と平行の平面内の軸と単純に鏡像対称である回転運動磁界パターンが知られている。このような磁界パターンは、たとえば米国特許公開第4995958号明細書、米国特許公開第5252194号明細書、米国特許公開第6024843号明細書、米国特許公開第6402903号明細書から明らかなように、たとえばハート形、リンゴ形、腎臓形などであり、あるいは、たとえば米国特許公開第6258217号明細書記載の二重鏡像対称形状、たとえば「8」の形を有し、つまり前記平面内で2つの互いに垂直の軸と鏡像対称である。
【0007】
さらに、被成膜基板が成膜過程中にスパッタ面に沿って移動したマグネトロン磁界パターンと共に移動することが知られている。これは特に、装置成膜サイクル中に複数の、しかも多数の基板が成膜される、いわゆるバッチ装置である。
【0008】
成膜厚の局所的分布に対する要件もしくは反応性プロセスにおける基板面に沿ってスパッタリングされる材料分布に対する要件は、多くの場合非常に高い。たとえば投影ディスプレイ用の構成要素に使用されるような光学的成膜において、成膜基板が典型的に平均層厚からせいぜい1%異なる層厚分布をもたなければならず、そしてこれは、典型的に50層までの少ない層のみからなる経済的な成膜の製造を保証するために、少なくとも1000cm2の面積にわたって観察される。光学データ伝送用にこのような成膜基板を使用する際に、平均層厚を基準として、せいぜい0.01%の層厚偏差が要求され、これは少なくとも10cm2の面積にわたる。後者の場合は、このような基板にしばしば多数の、100までの個別層がプロセス時間12〜50時間の間に付着される。
【0009】
基本的にマグネトロン磁界パターンがスパッタ面に沿って周期的に移動され、基板が前記スパッタ面から離間してかつ前記スパッタ面上に移動され、スパッタ面によるマグネトロンソースの使用では、可能な限り大きい基板面を可能な限り小さい層厚変動で−スパッタリング材料の付着量の反応性成膜プロセスで−基板面に沿って得ることが重要である。この関連性で「成膜基板面」を対象として述べるときは、複数のバッチ処理された小型基板の前記のような平面の全体性あるいは大形基板の平面が意味されている。
【0010】
以下、層厚分布について述べるが、層厚分布とは反応性プロセスで必ずしも層厚と直線状に関係する必要のない基板面での反応性プロセスのためのスパッタリング材料量の分布である。
【0011】
前記形式の基板移動による円形マグネトロンソースの使用時に許容される層厚分布を達成するために、今日、基板の移動軌道とスパッタ面との間に静的な、マテリアルフロー分布にスパッタ面と基板との間で影響を及ぼす構成部品、いわゆる開口絞りまたは「シェーパーダイアフラム」(Shaper Blende)が使用される。通常この場合、円板状のスパッタ面と組み合せて、上述したように、磁界パターンが軸を基準としてスパッタ面と垂直に前記軸周りの回転によって周期的にスパッタ面に沿って移動される。
【0012】
シェーパーダイアフラムのようなこの種の構成部品を設けることは、移動した基板上の層厚分布を層厚の平均値から1%未満の偏差によって達成することを可能にするが、このような構成部品によってスパッタ材料の本質的な量が基板に到達する前に絞り出され、それによって均質なスパッタ速度で成膜速度が著しく低減される重要な欠点を受け入れてのみ達成できる。しばしば各スパッタソースと基板移動に適合する必要があり、特にマグネトロン磁界パターンとその移動の各修正時に新規に製造し、反復ステップを利用して最適化する必要のある前記構成部品は、成膜過程中に自体妨害成膜される。プロセス空間中のこのような構成部品の強い加熱によって、たとえばこのような構成部品のたわみのような
熱的に制約される形状変化と共に、上記妨害成膜が剥離し、基板上への堆積によって成膜欠陥をもたらし得る層電圧が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、冒頭に挙げた形式のマグネトロンスパッタ成膜基板用の製造方法を提案し、もしくは本質的に低減されたマテリアルフローの減容(Ausblendung)を導入して、この種の低減された減容で従来達成可能の分布と比較して、スパッタ成膜面に沿ったスパッタリング材料の本質的に改善された分布を有する基板を生じさせるために設計される装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これは、冒頭に述べた形式の製造方法において、請求項1の特徴部の本文に従って、磁界パターンの周期的移動と位相同期して、単位時間あたりに基板上へ付着する材料量が周期的に変化されることによって達成される。
【0015】
本発明は、すでにここで理解し易くするために、その原理をここで図1を利用して説明する。
【0016】
図1において、斜線部の平面Sは、最大スパッタ速度が支配的であるマグネトロンスパッタソースのスパッタ面の場所を示す。従って、このような場所Sは、マグネトロン磁界パターンの領域の一部分に相当する。図1を利用して発生する、本発明により認識かつ考慮される現象が新発見としてのみ説明されるべきなので、増加したスパッタ速度の代表としてマグネトロン磁界パターンの領域において前記場所Sのみを考察することにする。ここで2次元の周期的な移動によって、周期的な移動yz、およびそれと直角の周期的な移動xzは、例示するように、それに沿って場所Sがスパッタ面上へかすめる楕円形の移動軌道が実現される。
【0017】
2次元の周期的に移動した場所Sと共にスパッタ面上および前記スパッタ面に沿って、均質な速度vで基板SUが移動する。場所Sが位置pos.mから次のpos.m+1へ−図1に記入したように−等しい長さを必要とすると仮定すると、基板SU上にXで表した場所Sの状態が生じる。基板SU上でサイクロイドを通過することが難なく分かる。
【0018】
さらにそれによって、場所Sが零通過領域XNよりも長く転回点領域でXWだけ滞留することが分かる。これは結果的に、基板SUの周辺領域もしくは辺縁領域で中心領域よりも多い材料量でスパッタ面から遊離した材料が付着することになる。
【0019】
ここで本発明を図1に新発明として表した条件に適用し、場所Sが領域XWにある場合に常に減少し、場所Sが領域XNでかすめ過ぎる場合は常に増加されるように、周期的かつ位相同期的にSの周期的移動により単位時間あたりに基板上へ付着する材料量を変化させるとき、付着材料の基板SU上の不均質な分布をy方向へ均質化し、もしくは所望の分布比を調整することに成功する。
【0020】
本発明に係る製造方法の好ましい一実施形態において、マグネトロン磁界パターンの周期的移動が2次元に、好ましくは振子回転運動またはスパッタ面に垂直の軸周りの循環回転運動によって実現される。しかしリサジュー図形を実現する意味で、2次元の周期的移動を各々の周期的移動によってそれぞれスパッタ平面内の軸に沿って実現することが充分可能である。
【0021】
さらに、磁界パターンの周期的移動は決して必須に2次元にする必要がない。たとえば
長尺ターゲットに磁界パターンが長尺ターゲットでスパッタ面の長手伸長方向にのみ周期的に移動され、基板がこの方向に垂直に移動するとき、本発明によりスパッタ速度の周期的変化によって、磁界パターンの周期的移動と位相同期して、補償できるターゲット長手伸長方向に前記層厚分布の不均質性が基板に生じる。
【0022】
基板上へ付着する材料量の周期的変化をスパッタ面に沿って局所的に実現することが充分に可能であるにもかかわらず、非常に好ましい実施形態において、付着した材料量が磁界パターンの周期的移動と位相同期して同時に全スパッタ面で変化されることが提案される。
【0023】
定義:
2つの互いに位相同期した周期的信号とは、それぞれ1つの信号の一定数の周期後に再び相互に所定の位相関係にある2つの周期的信号である。所定の時間窓で観察すると、それらの周波数f1およびf2は有理数に相当する係数の1つによって区別される。
【0024】
非常に好ましい方法で全スパッタ面上に付着した材料量は、同時に、スパッタ出力が変化されることによって変化される。
【0025】
スパッタ出力の変化による付着した材料量の変化に代替または補完して、上記の材料量を、局所的または再び全スパッタ面上に反応性ガス流の変化および/または作動ガス流たとえばプロセス空間中のアルゴン流の変化によって、変化させることができる。
【0026】
さらに好ましくはスパッタ面が単一的にただ1種の被スパッタ材料、たとえば金属、合金または金属化合物からなることができ、かつそれらからなり、しかし多分割型ターゲットの使用によって様々な被スパッタ材料の平面部分を有することができる。
【0027】
再び図1を考察すると、さらに新規発明的に、場所Sが基板SUで位置XWを占める場合に、付着した材料量が極小を有することが分かる。そこから、もう1つの好ましい実施形態において位相同期した材料量の周期的変化が経時的に実現され、その周波数スペクトルが周期的な磁界パターン移動の周波数を基準として二重周波数の支配的なスペクトル線を有することが理解される。
【0028】
もう1つの好ましい実施形態において、上記経過は、それに加えて、周期的な磁界パターン移動の周波数でもう1つ別の支配的な周波数線を有することが提案される。これは特に、図1に示すように、スパッタ面の平面図で見て、基板SUが直線状にスパッタ面上へ移動されず、同じ平面図および図1に点線で記入したように、湾曲した軌道で、好ましくはスパッタ面の外部の湾曲中心を有する円軌道で移動される場合で示されている。
【0029】
この場合、基本的にマグネトロン磁界パターンの2次元の周期的移動において、再びスパッタ面に対する平面図でみて、基板の移動方向と垂直である移動成分が基準となる。磁界の周期的移動は、図1の視野でy軸およびx軸にみて区別される場合およびx方向への成分をもつ基板の移動が生じるとき、y方向への周期的な磁界パターン移動がスパッタ速度の周期的変化をもつ位相同期のための基準となる。
【0030】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、マグネトロン磁界パターンがスパッタ面と平行である平面内の軸と鏡像対称に、または2つの互いに垂直のこの種の軸と鏡像対称に形成される。
【0031】
もう1つの好ましい実施形態、すなわち反応性マグネトロンスパッタソース成膜のための実施形態において、スパッタ面と基板との間のプロセス空間内に反応性ガスが準備され
る。
【0032】
決して必須ではないにもかかわらず、さらに好ましくは円形のスパッタ面が使用され、これがマグネトロンソースの全体構造を簡素にする。
【0033】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、スパッタ面と基板との間に上記開口絞りの意味でマテリアルフロー分布に影響を及ぼさない構成部品が準備される。
【0034】
好ましくは、基板上に付着した材料量の位相同期した周期的変化の経過が、基板とスパッタ面との間の相対的運動に依存して、および/または磁界パターンの形状に依存して、および/または周期的な磁界パターン移動に依存して、選択される。
【0035】
スパッタ面を規定するソースターゲットの寿命中にスパッタリングによってスパッタ面の形状が変化する。これは再びターゲットの寿命中に変化する分布がスパッタリング材料のスパッタ面からの磁界パターン移動のサイクル中に、およびそれによってその際に基板面上へ付着した材料量の分布の変化を生じる。ソース自体でのスパッタ特性のこのような変化は、上記の開口絞りのような静的構成部品を設けると修正できなくなる。それに対して本発明は、本発明のもう1つの好ましい実施形態に従って位相同期した周期的変化の経過が時間の中で変化されることによって、このような現象も基板で要求される層厚分布を基準にして捕捉する可能性を拓く。このような位相同期した周期的変化、たとえばその振幅および/または曲線形状の経過の時間的変化は、充分に制御でき、かつ経験値に従って所定のプロセスで行うことができる。しかしもう1つの好ましい実施形態において、これは目下基板に付着した材料量分布が被測定制御量として測定され、この被測定制御量が目標分布と比較され、かつ比較結果すなわち制御差に応じて、位相同期した周期的変化の経過を設定量として材料量分布用の制御回路内で設定されることによって行われる。それによって運転中に生じる材料分布シフトを自動的に捕捉することが可能になる。本発明のもう1つの、さらに好ましい実施形態において、基板は複数回スパッタ面上へ移動される。これは、好ましくは基板が、移動方向であれ無定方向であれ、周期的にスパッタ面上へ案内されることによって生じる。
【0036】
好ましくは基板が、図中スパッタ面の方に向かって直線状に移動される。この場合、第1の別の好ましい形式において、スパッタ面と平行の平面で移動することができ、あるいはもう1つの好ましい形式において、基板が付加的に、図中スパッタ面と平行に、非直線状に、この場合好ましくは円軌道に沿って移動することによって移動することができる。
【0037】
基板が図中スパッタ面の方に向かって直線状に移動するとき、好ましくはかつ上述のように、いずれにせよ経時的に位相同期した材料量の周期的変化が実施され、その周波数スペクトルは、周期的な磁界パターン移動の周波数を基準として2倍の周波数で支配的なスペクトル線を有する。これは基板がスパッタ面と平行の平面で移動される場合も、基板が図中スパッタ面と平行に非直線状に、この場合は特に円軌道に沿って移動される場合にも実施される。
【0038】
ここで基板が図中スパッタ面と平行に非直線状に、好ましくは円軌道に沿って移動されるとき、上述に加えて、磁界パターンの周期的移動と位相同期した、基板上に付着した材料量の変化を、詳細にWO00/71774に説明したように、後者を基板移動と同期的にも変化することを示すことができる。
【0039】
基板移動が図中スパッタ面の方に向かって非直線状に、この場合特に好ましくはスパッタ面の外部に円中心点をもつ円軌道に沿って行われるとき、経時的な材料量の周期的変化が支配的な周波数成分で、二重周波数でも、周期的なパターン移動の周波数に等しい周波
数でも、形成される。さらに本発明に従って、基板に所望の層厚分布プロフィルを目的として製造することも充分に可能であるにもかかわらず、さらに好ましい方法で基板に最適化された均質の層厚分布が実現される。この場合、さらに好ましくは平面マグネトロンスパッタ成膜基板が製造される。
【0040】
マグネトロンスパッタソースと、スパッタターゲットの下側に前記スパッタターゲットのスパッタ面と平行の平面内で周期的に駆動される磁石配列と、基板がスパッタ面上に移動される基板搬送配列とを備える、本発明によるマグネトロンスパッタ成膜装置は、材料量を周期的かつ磁石配列の周期的移動と位相同期して変調する単位時間あたりにソースからスパッタリングされる前記材料量のための変調配列を有する。
【0041】
本発明によるマグネトロンスパッタ成膜装置の好ましい実施形態は、請求項29ないし36に規定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、ここで例を挙げて図面を利用して説明する。
【0043】
図2に、簡素化し、かつ概略的に、本発明に係るマグネトロンスパッタ成膜装置の第1の実施形態を示しており、もしくは本発明による製造方法の第1の変形を示している。
【0044】
詳細に図示しないマグネトロンスパッタソースのターゲット1−好ましくは一体型に材料Mからまたは必要な場合2分割型または多分割型(点線)にそれぞれ材料M1、M2、...からなる−は、電気的な発電機配列3を介して図示しないソースの陽極を基準にして、通常、直流(DC)しかしまた必要な場合はDCおよび交流(AC)またはACのみで給電され、その際に高周波領域Rfになるまで給電される。それによって図1に概略的に記入した電界Eが公知の方法で発生される。ターゲット1の下側に磁石配列5が設けられ、ターゲット1を通る該磁石配列の磁界はスパッタ面7から出る磁力線と共に、再び前記スパッタ面の中へ入る磁力線と共に侵入する。磁力線Hは、閉じたトンネル状のループの形で磁界パターン9を形成する。公知の方法のマグネトロン磁界パターン9は、電界と共に、磁界パターン9の領域に、前記電界により前記領域に生じるスパッタ速度の上昇によって顕著なプラズマ密度の上昇を引き起こす。磁石配列5は、上述のように、殆どたいていの場合に自体閉ループとしてスパッタ面7に磁界パターン9を発生する。
【0045】
さらに図1に概略的に示しているように、ここに図示しない駆動手段により磁石配列5が少なくとも1つの方向に−図1によりy方向へ−周期的にターゲット1に沿って、二重矢印Myで示しているように、無定方向に移動される。ターゲット1の下側の磁石配列5により磁界パターン9は同時にスパッタ面7に沿って移動する。
【0046】
基板11は、スパッタ面7から離間して、該スパッタ面を通過して移動され、その際に少なくとも磁石配列5と共に磁界パターン9の移動方向Myと垂直になる移動成分mxを有する。本発明の基本的原理に従って、スパッタ面7からスパッタリングされる材料の割合は、磁石配列5もしくは磁界パターン9の周期的移動Myと位相同期して周期的に変化すなわち変調される。これは図1記載の実施形態と同様に、磁石配列5とスパッタ面7との間で磁石配列5の移動方向Myに磁石配列5とスパッタ面7との間の侵入する磁気抵抗が局所的に変化もしくは変調されることによって実現できる。概略的に図1に示したように、これは、たとえば局所的に増加する材料挿入物13のターゲット1の磁気抵抗を設けることによって実現することができ、それによってスパッタ面7に沿って局所的に磁界パターン9の磁界強度Hが変調され、それによって局所的にプラズマ密度と共にスパッタ速度が変調される。当業者には、局所的にかつ磁石配列5もしくは磁界パターン9の周期的移動と位相同期して、すなわち、たとえば磁石配列5に電磁石を設けることによって、磁石
配列5の個々の磁石の機械的シフトによって、磁石配列5とターゲット1との間の距離の変調によって、等々によって、スパッタ速度を変調する別の可能性が拓かれる。そのため基本的に図1記載の方法においてスパッタ速度はスパッタ面7に沿って局所的に変調される。
【0047】
図3に、図2の図示と類似の図示において、少なくとも今日明らかに好ましく使用されている本発明の別の基本的な実施形態を示している。すでに図2に記載した対策および部分を利用して、図3に同一の符号で表しているので、再度記載しない。図3に示しているように、磁石配列5の移動Myは、駆動装置15を利用して実現される。ターゲット1のための電気的な発電機配列3は、制御入力部、すなわち変調入力部S3を有する。その出力A17が制御入力部S3と作用接続された経過設定ユニット17は、サイクル的すなわち周期的な、所定のもしくは設定可能の経過を有する発電機配列3のための変調信号を発生する。磁石配列5と共に磁界パターン9の移動Myのサイクル周波数はf1で表しているが、ユニット17で発生される周期的制御信号の周波数f2はn・f1が選ばれ、nは有理数である。周期的に、制御入力部S3に供給される周波数f2の制御信号は、磁石配列5の周期的移動Myと共に周波数f1と位相同期されており、すなわち周期的移動myを基準とする制御信号の位相状態は、それぞれnによって与えられる数に従ってサイクル制御信号の周期に等しくなる。そのために駆動装置15の機械的出力部Aを有するユニット17の入力部または、好ましくは概略的に図示したように、好ましくは必要な場合に調整可能の位相設定ユニット18を介して駆動装置15の電気的入力部E15と作用接続されている。ユニット17に好ましくは、別の入力部S17を設けており、前記入力部のサイクル制御信号経過の量、特に周波数f2は振幅を有する曲線形状等々を調節可能である。
【0048】
さらに図3に点線でかつ概略的に示しているように、スパッタ出力の好ましい変化の代替にまたは付加的に発電機配列3を介し、位相同期してユニット18を介し、スパッタ面7と基板11との間の反応空間の中のアルゴンのような反応性ガスGrおよび/または作動ガスGAの供給量を変化させることができる。その際にこの変化は、大面積に全スパッタ面7を介して行うことができ、または局所的にスパッタ面7の所定の領域に沿って行われる。
【0049】
しかし図2記載の実施形態と異なり、今日好ましいとされる図3記載の実施形態の場合は、局所的にスパッタ速度がスパッタ面7で磁石配列5の周期的移動と位相同期されて変化されず、全ての瞬間的なスパッタ速度がスパッタ面7で磁石配列移動Myと位相同期して変化もしくは変調される。
【0050】
図4に、概略的にかつ平面図で、本発明の枠組の中で好ましく使用される円形マグネトロンスパッタソース21が示されており、そのターゲット23もしくはスパッタ面は、磁界パターン9’によってかすめられている。磁石配列25は、図示した平面図でターゲット23のスパッタ面と平行におかれる軸と鏡像対称に形成されており、図示したように、たとえばハート形である。27により概略的に、本発明に係るx方向に移動した基板を示している。図2もしくは3を利用して説明した磁石配列の周期的移動は、ここで有利であるように2次元の周期的移動として実現されており、好ましくはそれぞれ等周波数で通過する移動成分MyおよびMxにより実現されている。このサイクル的な2次元の移動は、好ましくは、および図4に示したように、軸24周りに磁石配列25の回転によって実現される。
【0051】
もちろん必要な場合は、循環回転の代わりに回転振子運動を導入することができる。さらに、図示した一軸鏡像対称の磁石配列25の代わりに別の磁石配列の形状を使用することができる。特に、すでに冒頭に述べたように、二軸鏡像対称の磁石配列を使用することができ、たとえば回転軸24を有する「8」の形状で、たとえば形状の中心で腎臓の形等
を使用することができる。
【0052】
図5に、図4記載の円形マグネトロンスパッタソースは概略的に断面図で示しており、29で点線で暗示したように、ここに周知の開口絞りが組み立てられるものである。しかしここで強調しておくべきことは、本発明に従って必要な場合はせいぜい1つの開口絞りが使用され、前記開口絞りは、従来使用されていた絞りよりも本質的に少ないスパッタ面からスパッタリングされる材料を減容し、もしくは本発明に従って、さらにこのような構成部品を設けることなく要求される層厚分布が達成されることである。
【0053】
基板27は、好ましくは複数回ソース21を通過して、不変の方向であれ、無定方向に移動するものであれ移動される。
【0054】
上述のように、本発明により使用される変調曲線形状は、前記形状を利用して、磁石配列サイクル移動と位相同期してスパッタ速度もしくはそれぞれ基板上に付着した材料量が変調され、磁石配列の形状およびその移動動特性に依存して、さらに基板移動の移動軌道および動特性に依存して変調される。例として以下3つの事例を詳しく述べることにする。図4および5に、これらの事例の2つを示しており、この場合は、基板27がターゲット23のスパッタ面と平行の平面で移動され、直線状に、記入した軌道A−Bに従って、または非直線状に、軌道A−B’に従って移動され、その際にこれは好ましくは円軌道でターゲット23のスパッタ面の外部にある(図示しない)中心Z周りにある。A−Bによる直線状の軌道上の基板27の移動は、全般的に、いわゆるインライン型成膜装置で与えられている。このようなインライン型成膜装置は、概略的にかつ簡素化して、部分的に図6に示されている。ここで基板27は基板支持体30上にあり、ベルトコンベヤと同様に、1回または複数回、好ましくは複数回、直線状にスパッタソース21を通過して移動される。周知の方法において、すなわち本発明による措置の導入なしに、通常設けられる開口絞りは場所29’に組み込まれるであろう。
【0055】
図7は、概略的に、たとえば図4記載の非直線状の移動軌道A−B’のように構成されており、すなわち基板27が円板状または天蓋状の基板支持体30’上に配置されることによって構成されており、ソース21のスパッタ面の外部に回転中心Zを有する。図7に、29’’で再び周知の方法に従って開口絞りが組み込まれるべき場所を示している。
【0056】
図4に従って基板27は、特殊化した層厚分布で、たいてい可能な限り均質な分布で成膜されるy1〜y2のy方向への伸長を有する領域を含む。本発明に従って、スパッタ出力の変調により回転する磁石配列25の各位置に対するスパッタ速度は、このように変調経過の好適な選択によって基板27上に生じる層厚の均質化を得るために影響を及ぼされ、開口絞りを使用せず、あるいはせいぜい本質的に縮小した減容面積を有する開口絞りを使用して得られる。
【0057】
すでに図1から明らかなように、直線状の移動A−Bの場合で、しかしすでに直線状の移動成分の場合で、付加的な非対称性を修正する必要がなくても、図3のf2による変調基本周波数を磁石配列25の二重回転周波数f1で選択することが有利であることが証明されている。従って好ましくは、この場合に図3記載のユニット17で2f1の場合にその周波数スペクトルで突出するスペクトル振幅を有する変調曲線形状が選択される。磁石配列25もしくは5のf25もしくはf1による回転周波数もしくはサイクル周波数は、基板27もしくは11の移動中にソースを通過して磁石配列5もしくは25が複数のサイクルを通過し、これが磁石配列サイクル周波数の対応する上昇もしくは基板移動速度の減速によって保証されるように高く選択されなければならない。図3記載の移動Myもしくは図4記載の回転の典型的なサイクル周波数は、Hz領域にあり、つまり典型的に0.1および10Hzの間にあり、基板27もしくは5の移動はスパッタソースを通過して、特に
基板が1度だけマグネトロンスパッタソースを通過して移動するとき数秒の時間がかかる。スパッタ面を通過して基板が何度も移動するときは、基板移動をより速く行うことができる。但し、この場合に注意するべき点は、基板がスパッタ面を通過して移動されるサイクルが磁石配列移動のサイクルと非同期的に行われることである。磁石配列の移動サイクルと同期化した基板移動サイクルにおいて、必要な場合に付加的に、基板移動と同期化されたスパッタ速度の変調が使用されなければならない。
【0058】
図8に、層厚分布のシミュレーション経過は、図4に従って移動軌道A−Bを複数回スパッタ面上へ移動される平面基板で示している。この場合Dは、円形のスパッタ面の直径を表し、位置y1およびy2は、図4の基板27の対応する位置を表す。y方向は、図4記載の基板のy方向に相当し、もしくは図2または3記載のy方向に相当する。経過(a)は、スパッタ成膜配列が本発明に係るスパッタ速度変調なしに、かつ開口絞りなしに使用される場合の層厚経過を示す。経過(b)は、さらに本発明により導入されるスパッタ速度変調の使用なしに、しかし図8に示しているように、開口絞り29’を設けて生じる。経過(c)は、磁石配列の周期的移動と位相同期したサイクル変化すなわちスパッタ速度の変調の、本発明に係る使用による結果を示し、これは図3でも図4でも実現されている。変調経過が使用されており、そのスペクトルはサイクル磁石配列移動の二重周波数で重なり合うスペクトル線を有し、特にこの場合は前記基本調波を有する。図8によりシミュレーションした経過は、この間に実際上本質的に実証済みである。開口絞り29’の廃止と、本発明による措置の導入とによって本質的に全てがスパッタ面から遊離した材料が基板に到達し、これが顕著に上昇する成膜速度と共により短い成膜時間およびより高い生産性をもたらす。成膜速度は図8により約18%増大する。これはマグネトロンソースで均質にとどまる平均電気出力で生じ、他方特に図4記載の実施態様でターゲット材料の効率的な利用で生じ、より高い成膜装置の耐用期間を生じる。開口絞りを使用する場合、成膜速度の損失は、最大の使用可能の電気スパッタ出力がターゲットで通常所定のターゲット冷却効率によって制限されているため、簡単に印加電気出力の上昇によって補償できない。
【0059】
本発明の(図示しない)全ての実現形態においてマグネトロンスパッタソースと基板との間に反応性ガスを準備している反応性マグネトロンスパッタ成膜プロセスの場合は、特に過大なソース出力が層品質の損失を生じる。このような過大な出力によって、反応性ガスによりスパッタ面から遊離した材料の反応プロセスが変化され、これが層材料の化学量論の変化を生ぜしめる。この場合たとえば、光吸収は変化した化学量論によって層内のまたは層の中への妨害が上昇し得る。
【0060】
上記3基板移動型の第2のものは、図4に示しているように、非直線状であり、特に円軌道AB’に沿っている。基板の移動軌道は、この場合、直ちに分かるように、移動成分Mxすなわち方向A−Bも、それに対して横方向の移動成分も有し、Myに対応している。基板のy伸長部を基準として基板のy伸長部によっても非対称的な層厚分布を生じる。これは難なく図7の観察が示している。y方向にシフトした基板領域は、異なる速度でスパッタ面の様々な長さ領域にわたり偏心的に配置されたマグネトロンスパッタソースの軸Zを基準として移動される。図8に対応する前記事例の結果は、図9に示している。本発明に係るスパッタ速度変調の使用なしに、かつ開口絞りの使用なしに、図4または図2に示しているような、配列を有する成膜における層厚経過は、(a)で表している。強い不均質な分布(a)を開口絞り29’’で補償するために、この開口絞りは対応して非対称的に成形する必要がある。しかし、本発明に係るスパッタ速度変調の使用なしの、所定の開口絞り29’’による成膜の経過は、経過(b)によって表している。経過(c)は、本発明に係るスパッタ速度変調の使用における層厚分布を示す。この場合、図8の考察と類似して変調サイクル経過が選択されており、この経過は一方でx方向への基板移動に基づき対応して図4のMxがその周波数スペクトルでサイクル磁石配列移動の二重周波数で予
支配的なスペクトル振幅を有し、しかし特に、図7記載のy方向への様々な基板部分の様々な移動勾配に基づいて速度差を考慮するために、サイクル磁石配列移動の周波数と等しい周波数で別の予支配的なスペクトル振幅を有する。
【0061】
磁石配列移動のスパッタ速度変調に相当する予支配的な変調周波数によるスパッタ速度変調において、たとえば「8」の形の2軸対称性磁石配列では、スパッタ速度と共に成膜速度で非対称性が達成できないので、図4記載のシフトした回転軸を有する簡単な鏡像対象磁石配列が使用される。図4記載の簡単な鏡像対称の磁石システムが使用される場合、必要な非対称性は前記磁石システムの設計によって達成することができ、層厚分布のその他の均質化は、図8記載の場合と類似に、すなわち図4記載の方向A−Bへの直線状の移動成分で、周期的な磁石配列移動の周波数を基準とする二重周波数によるスパッタ速度変調を利用して行われる。
【0062】
スパッタ面と平行の直線状の基板軌道でも、さらに基板面と平行の湾曲した基板軌道でも、上述したように、スパッタ速度変調を利用して、特に好ましくは図3記載のスパッタ出力変調によって実現して、非常に良好な層厚分布を達成することができ、開口絞りは使用する必要がない。それによって層厚分布の最適化は、外部変量プロセスパラメータ、すなわち電気スパッタ出力を介して可能になる。本発明により動的な層厚分布補正の最適な機能に本質的なものは、ソースに供給される電気出力を変化させることができる速度もしくは変化速度である。今日の商業的に得られる電源により、難なく小信号挙動におけるアウトプット出力、すなわち典型的に±1または数10%の静的動作点出力だけ、100Hz以上の範囲までの周波数で顕著な信号低下なしに変調することも可能である。それによって自体複雑な10Hz以上の範囲の基本周波数による変調曲線形状と、顕著なより高いスペクトル成分をより大きい精度でかつ本質的な位相シフトなしに実現することができる。これは正確な変調管理と、周期的な磁石配列移動による位相同期にとり重要である。
【0063】
より高い成膜速度もしくはスパッタ速度は、本発明により反応性のマグネトロンスパッタプロセスの場合でも達成することができる。これは相対的プロセスの安定性にとり重要な時定数(内在的にプロセスに制約される、たとえば反応性ガス圧力、スパッタ速度、チャンバ形状、真空ポンプなどによる)は、典型的に100msまたはそれ以上の範囲にある。図4もしくは3記載の磁石配列25もしくは5の数Hzのサイクルもしくは回転周波数において、成膜速度もしくはスパッタ速度の変化に重要な時定数τ=1/(2τf)は、明らかに前記100ms以下にあり、それによって反応プロセスの影響は極小である。換言すれば、反応プロセスは、通常、これが本発明により有効に使用されるスパッタ速度変調によって著しく妨害され得るよりも活性が少なすぎる。
【0064】
図10に、概略的に基板移動の第3の場合を示しており、それにより、できる限り移動軌道の形成に加えて、図4の平面図に表したように、移動軌道はソース21のスパッタ面と平行の方向に見て湾曲しており、好ましくは円軌道に従って湾曲している。この場合に軌道A−BもしくはA−B’を基準としてすでに説明したスパッタ速度変調経過により、この磁石配列の周期的移動と位相同期して−WO00/71774に説明されているように−スパッタ速度がもう1つの変調によって変化されるが、ここでは冒頭に挙げたゼーネン効果を補償するために基板移動と同期化している。
【0065】
本発明により、および特に外部の採用可能のプロセスパラメータ「スパッタ出力」を介した層厚分布の最適化は、それぞれ支配的な諸条件への変調曲線形状の追跡の意味においてターゲットの最新の侵食状態への適合も可能にする。それによって層厚分布の残留依存性もターゲットの寿命にわたって広範囲に除去することができる。分布の影響はスパッタ速度の変化もしくは変調を介して、特にスパッタ出力の変調で実質的に遅滞なく行われるため、原位置制御(In−situ−Regelung)による分布最適化が可能である
。この場合、好適な原位置測定システムを利用して、たとえばいわゆる広帯域スペクトルモニタリングによって瞬間の予支配的な層厚分布が検出され、測定結果が制御量として層厚分布制御用の制御回路に使用される。
【0066】
これは図3に概略的に点線で示している。層厚分布原位置測定システム40により、瞬間の層厚分布が基板11で検出される。比較ユニット42で測定された分布が、目標分布設定ユニット44によって、たとえば表の形で記憶した目標分布と比較される。制御差Δで比較ユニット42の出力は、変調設定ユニット17の制御入力部S17と作用接続され、前記変調設定ユニットでスパッタ速度変調の経過が比較ユニット42の出力部に現れる制御差Δの関数で、許容残留制御偏差によって与えられたとき、測定された層厚分布がそれ以上ユニット44に設定した目標分布Wからずれがなくなるまで調整される。
【0067】
本発明の明細書の流れに沿って、製造される基板に好適な均質の層厚分布を達成することに重点的に注意が向けられていても、難なく、対応するスパッタ速度変調の設計によって、磁石配列の移動サイクルを基準とする基本周波数、曲線形状および位相状態に関して、スパッタ面の平面図で基板の移動方向に対して横方向に見て、その他の所望の層厚分布を基板に実現可能であることが明白である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】概略的かつ物理的厳密さを要求しない、本発明の基礎として認識された移動マグネトロン磁界パターンと、移動基板とを備えるマグネトロンパターンソースにおける関係である。
【図2】概略的かつ簡素化した、本発明に係る方法もしくは本発明に係る装置の第1実施形態である。
【図3】図2の図示と類似の図示における、本発明に係る方法もしくは本発明に係る装置の今日の好ましい実施形態である。
【図4】正面図における、軌道仕様に最適化した本発明の設計を検討するための基礎としての、基板の様々なこれに関する移動軌道を備える、本発明の枠組の中で好ましく使用される円形マグネトロンソースである。
【図5】概略的に断面図による図4記載のソースである。
【図6】概略的かつ最大限簡素化した、図4に示した基板の移動型がソースを基準として実現されたインライン型マグネトロンスパッタ成膜装置である。
【図7】再び概略的かつ最大限簡素化した、図4に示した第2の移動型による、基板が円形軌道上でソースを通過して移動される装置である。
【図8】本発明により実現された、公知の方法で設けられた開口絞り(b)および(c)を備える、いずれの補償措置(a)もない、基板にその移動方向に生じる層厚分布である。
【図9】本発明により実現された、公知の方法で設けられた開口絞り(b)および(c)を備える、いずれの補償措置(a)もない、基板にその運動方向に生じる層厚分布である。
【図10】基板とソースとの間の相対的運動のもう1つの型である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロンスパッタ成膜基板の製造方法において、
・マグネトロンソースでスパッタ面と共にマグネトロン磁界パターンがスパッタ面に沿って周期的に移動され、
・基板が前記スパッタ面から離間してかつ前記スパッタ面上に移動される方法であって、
磁界パターンの周期的な移動と位相同期して、単位時間あたりに基板上へ付着する材料量が周期的に変化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
磁界パターンの周期的移動が2次元に、好ましくはスパッタ面に垂直の軸を基準として回転振子運動または回転循環運動によって行われることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
付着した材料量が同時に全スパッタ面にわたって周期的に変化されることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】
付着した材料量が、スパッタ面と基板との間の空間内への反応性ガス流の変化によって変化されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
付着した材料量が、スパッタ面と基板との間の空間内への作動ガス流の変化によって変化されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
付着した材料量が、スパッタ出力の変化によって変化されることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項7】
位相同期した材料量の周期的変化が経時的に実施され、その周波数スペクトルが磁界の周期的移動の周波数を基準として二重周波数の支配的なスペクトル線を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
経過(Verlauf)が、磁界パターン移動の周期性の周波数でもう1つ別の支配的な周波数線を有することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
マグネトロン磁界パターンが、スパッタ面と平行である平面内の軸と鏡像対称に、または2つの互いに垂直の前記平面内にある軸と鏡像対称に形成されていることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
スパッタ面と基板との間のプロセス空間内に反応性ガスが準備されることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
円形のスパッタ面が使用されることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
スパッタ面がターゲット体の材料により形成されることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
スパッタ面と基板との間にマテリアルフロー分布に影響を及ぼさない構成部品が準備されることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
位相同期した周期的変化の経過が、基板とスパッタ面との間の相対的運動に依存して、および/または磁界パターンの形状に依存して、および/または周期的磁界パターン移動
に依存して、選択されることを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
位相同期した周期的変化の経過が時間の中で変化することを特徴とする、請求項1ないし14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
目下基板に付着した材料量分布が被測定制御量として測定され、目標分布と比較され、かつ比較結果に応じて、制御差として、位相同期した周期的変化の経過を設定量として前記分布のための制御回路内で設定されることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
基板が複数回スパッタ面上へ移動されることを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
基板が周期的に一方向または無定方向へスパッタ面上で移動されることを特徴とする、請求項1ないし17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
基板が図中スパッタ面の方に向かって直線状に移動されることを特徴とする、請求項1ないし18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
基板がスパッタ面と平行の平面で移動されることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
基板が、図中スパッタ面と平行に、非直線状に、好ましくは円軌道に沿って移動されることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
基板が、図中スパッタ面の方に向かって、非直線状に、好ましくはスパッタ面の外部に円中心点をもつ円軌道に沿って移動されることを特徴とする、請求項1ないし18のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
単位時間あたりに付着する材料量の付加的変化が、基板移動と同期化される上記第1の変化に重ね合わされることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項24】
最適化された均質の層厚−および/または化学量論分布のマグネトロンスパッタ成膜基板が製造されることを特徴とする、請求項1ないし23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
マグネトロンスパッタ成膜平面基板が製造されることを特徴とする、請求項1ないし24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
製造された基板が、少なくとも1000cm2の基板面積で、平均層厚値から最大1%の層厚偏差を有することを特徴とする、請求項1ないし25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
製造された基板が、少なくとも10cm2の基板面積で、局所的に付着したスパッタ材料量の平均値から最大0.01%の偏差を有することを特徴とする、請求項1ないし23のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
・マグネトロンソースと、スパッタターゲットの下側に前記スパッタターゲットのスパッタ面と平行の平面内で周期的に駆動される磁石配列と、
・基板搬送配列により基板がスパッタ面上に移動される前記基板搬送配列とを備える、マグネトロンスパッタ成膜装置であって、
単位時間あたりにソースからスパッタリングされる材料量のための、周期的磁石配列移動と位相同期して周期的変調を発生する変調配列を設けることを特徴とする、マグネトロンスパッタ成膜装置。
【請求項29】
磁石配列が、ターゲットのスパッタ面に垂直の軸を基準とする回転振子運動または回転循環運動のために、回転振子駆動装置または回転循環駆動装置と作用接続されていることを特徴とする、請求項28記載の装置。
【請求項30】
変調配列が、単位時間あたりにソースからスパッタリングされる材料量を、同時に全スパッタ面にわたって変調することを特徴とする、請求項28または29のいずれか1項記載の装置。
【請求項31】
変調配列が反応性ガス流−および/または作動ガス流調整装置を含むことを特徴とする、請求項28ないし30のいずれか1項記載の装置。
【請求項32】
変調配列がスパッタターゲットの電源部を含むことを特徴とする、請求項28ないし31のいずれか1項記載の装置。
【請求項33】
磁石配列が軸を基準としてスパッタ面と平行に、または2つの互いに垂直の軸を基準としてスパッタ面と平行に鏡像対称に成形されることを特徴とする、請求項28ないし32のいずれか1項記載の装置。
【請求項34】
マグネトロンソースの領域に反応性ガス貯蔵器と接続されるガス流入口が設けられていることを特徴とする、請求項28ないし33のいずれか1項記載の装置。
【請求項35】
マグトロンソースが円形のターゲットを有することを特徴とする、請求項28ないし34のいずれか1項記載の装置。
【請求項36】
ターゲットがただ1種の材料からなることを特徴とする、請求項28ないし35のいずれか1項記載の装置。
【請求項37】
スパッタ面と基板搬送配列との間に、スパッタ面と搬送配列の直接的な目視接続を妨げる構成部品が何もないことを特徴とする、請求項28ないし36のいずれか1項記載の装置。
【請求項38】
測定装置が、搬送配列で基板に付着したスパッタリング材料量の局所的分布のために設けられており、前記測定装置の出力部が比較ユニットの入力部と作用接続されており、前記比較ユニットの第2入力部が目標分布設定ユニットと作用接続されており、かつ前記目標分布設定ユニットの出力部が変調配列で設けた調整ユニットの制御入力部と作用接続されていることを特徴とする、請求項28ないし37のいずれか1項記載の装置。
【請求項39】
搬送配列が、少なくとも1つの基板収容部を周期的にスパッタ面で通過する駆動装置と作用接続されていることを特徴とする、請求項28ないし38のいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−503181(P2006−503181A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543894(P2004−543894)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000674
【国際公開番号】WO2004/036616
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(596013501)ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】