説明

マスカントのリサイクル方法

【課題】一度使用したマスカントを廃棄せずに再利用する。
【解決手段】マスカント12が、ロータブレード10のルート部14に適用され、コーティング材が、ブレード10のエアフォイル部分16に塗布される。コーティング工程が完了した後、余分なコーティング材がブレード10から取り除かれる。その後、例えば、回収容器上でブレード10をたたくことによって、マスカント12がルート部14から取り除かれる。使用済みマスカントの異なった大きさの集塊は、混合機に移され、所定の時間の間混合される。混合工程により、マスカントの塊の大きさが均等になる。その後、混合されたマスカントは、第1の断面積を有する複数の開口部を備えたふるいに移され濾される。混合されてふるいにかけられたマスカントが、再利用できる形状になっていない場合には、混合および濾すステップが繰り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング工程におけるマスキング材(マスカント:maskant)の使用に関し、特に、使用済みのマスカントのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジン内のロータブレードの一部分にコーティングを塗布することは、一般的な製造工程および修理工程である。修理工程においては、ロータブレードの1つまたは複数の部分にコーティング材が付着しないように、ロータブレードのこれらの部分にマスキング材(マスカント)を適用することが要求される。コーティングが基材に接着した後、マスカントは取り除かれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、マスカントは一度だけ用いられ、その後廃棄されていた。当業者であれば、マスカントが比較的高価な材料であることが分かるであろう。使用済みのマスカントは適切に廃棄されなければならないため、その結果、付加的な労力とコストが生じてしまう。
【0004】
マスカントを2回以上使用することを可能にする使用済みマスカントのリサイクル方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、以下の(1)〜(3)のステップを含むマスカントのリサイクル方法が提供される。(1)使用済みマスカントの集塊(agglomeration)を回収するステップ。各集塊は、ある体積寸法を有する。(2)ふるいまたは他の濾し器(ストレーナ)を用いて使用済みマスカントの集塊を濾すステップ。(3)マスカントの集塊を混合するステップ。混合するステップは、マスカントの集塊の体積寸法を減少させるように実行される。いくつかの実施態様においては、本発明の方法は、複数の混合するステップおよび濾すステップを含む。
【0006】
本発明により、マスカントを複数回使用することが可能になる。マスカントを複数回使用できることにより、マスカントが用いられる基材をコーティングするコストが著しく減少する。また、マスカントを複数回使用できることにより、コーティング工程において生じる廃棄物の量が著しく減少する。当業者であれば、発生する廃棄物の量が減少することによって大きな費用便益および環境的な利益が生じることが理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
基材の所定の部分にコーティング材が付着しないようにするためにマスカントが用いられるコーティング工程、およびコーティング工程の結果、マスカントが永続的に使用できないようにならないあらゆるコーティング工程において本発明のマスカントのリサイクル方法を用いることができる。
【0008】
図示したロータブレード10を基材の例として用いると、マスカント12(点線で示す)が、ロータブレード10のルート部14に適用され、コーティング材が、ロータブレード10のエアフォイル部分16に塗布される。ロータブレード10は、コーティング工程(例えば、拡散など)にさらされる。コーティング工程が完了した後、余分なコーティング材が、ブレード10から取り除かれることが望ましい。その後、例えば、回収容器上でブレード10をたたくことによって、マスカント12がルート部14から取り除かれる。この時点では、使用済みマスカントは、通常、種々の異なった大きさの集塊(すなわち、塊(lump))である。マスカントの塊は、混合機に移され、所定の時間の間混合される。混合工程により、マスカントの塊の平均の体積寸法が減少し、その結果、体積寸法がより均等になる。
【0009】
混合するステップの後、混合されたマスカントは、所定の大きさのふるい、または他の濾し器(すなわち、第1の断面積を有する複数の開口部、あるいは特定サイズのふるい目を備えるふるい)に移される。ふるいのサイズは、用いられるマスカントおよび行われる工程に応じて異なる。混合されたマスカントは、次いで、ふるいを通過する小さい物質を取り除くためにふるいによって濾される。これらの物質は、混入物質、コーティング材、およびマスカント材料の微粉などを含んでいる場合がある。
【0010】
マスカント材料およびコーティング工程に応じて、混合されてふるいにかけられたマスカントは、マスカントとして再利用が許容される形状になる。許容される形状になった場合には、マスカントは、通常のマスカントの手順によって後に用いることができるように適切に保管される。
【0011】
しかし、いくつかの用途においては、混合されてふるいにかけられたマスカントは、さらに1回または複数回の混合するステップおよび濾すステップにかけられる。例えば、第2の混合するステップが必要である場合は、一度混合されてふるいにかけられたマスカントは、混合機に移され、2回目の混合が所定の時間の間行われる。混合工程により、ここで再び、マスカントの塊の平均の体積寸法が減少し、その結果、体積寸法がより均等になる。
【0012】
第2の混合するステップの後、混合されたマスカントは、所定の大きさの第2のふるい(すなわち、第2の断面積を有する複数の開口部を備えたふるい)に移される。第2のふるいは、第1のふるいに比べて大きさが細かくなっている。すなわち、第2のふるいの開口部(またはふるい目のサイズ)は、第1のふるいと比べて断面積がより小さい。2度混合されたマスカントは、次いで、第2のふるいを通過する小さい物質を取り除くためにふるいによって濾される。
【0013】
マスカントの材料およびコーティング工程に応じて、2度混合されてふるいにかけられたマスカントは、マスカントとしての再利用が許容される形状になる。許容される形状になった場合には、マスカントは、通常のマスカントの手順によって後に用いることができるように適切に保管される。許容される形状になっていない場合は、混合および濾すステップが繰り返される。
【0014】
以下の実施例により、本発明の方法を説明する。しかし、本発明の方法は、実施例において開示された材料に限定されない。
【0015】
マスカント(例えば、APV Engineered Coatings社(アメリカ合衆国、オハイオ州、アークロン、ファイアーストーン パークウェイ 1390)から市販されているM8番のマスカント)は、ロータブレード10のルート部14に適用される。コーティング材(アルミニド:aluminideなど)は、ロータブレード10のエアフォイル部分16に塗布される。ロータブレード10は、アルミニドがエアフォイル基材中に拡散するコーティング工程にさらされる。コーティング工程が完了した後、ロータブレード10にブラッシングを施して余分なコーティング材がロータブレード10全体から取り除かれる。その後、マスカントは、回収容器上でブレード10をたたくことにより、ブレード10から取り除かれる。ブレード10から取り除かれたマスカントの塊は、混合機に移され、所定の時間の間混合される。
【0016】
混合するステップの後、混合されたマスカントは4mmふるいに移される。次いで、混合されたマスカントは、ふるいを通過する小さい物質を取り除くためにふるいの中で濾される。ふるいを通過した材料は、廃棄される。
【0017】
混合されてふるいにかけられたマスカントは、混合機に移され、2回目の混合が所定の時間の間行われる。第2の混合するステップの後、混合されたマスカントは、0.100mmふるいに移され、第2のふるいを通過する小さい物質を取り除くためにふるいの中で濾される。2度混合されてふるいにかけられたマスカントは、その後、ふるいから移されて、後に用いるまで保管される。
【0018】
詳細な実施態様に沿って、本発明を図示、説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の形状および詳細に対する種々の変更がなされることを理解されるであろう。例えば、本発明の方法は、1回または複数回の混合するステップおよび1回または複数回の濾すステップを含む。混合するステップや濾すステップの順番および回数は、用いられる用途に適合するように変更され得るとともに、本明細書に記載された実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガスタービンエンジン内で通常用いられるロータブレードおよびエアフォイルのルート部分に適用されたマスカントを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みのマスカントの集塊を回収するステップと、
ふるいの中で前記使用済みマスカントの集塊を濾すステップと、
前記濾されたマスカントの集塊を混合するステップと、
を含み、
前記混合するステップが、前記濾されたマスカントの集塊を第1の体積寸法から第2の体積寸法に変えるように実行され、前記第2の体積寸法が、前記第1の体積寸法より小さいことを特徴とするマスカントのリサイクル方法。
【請求項2】
使用済みのマスカントの集塊を回収するステップと、
第1の断面積を有する複数の開口部を備えた第1の濾し器の中で前記使用済みマスカントの集塊を濾すステップと、
前記濾されたマスカントの集塊を混合するステップと、
第2の断面積を有する複数の開口部を備えた第2の濾し器の中で前記使用済みマスカントの集塊を濾すステップと、
を含み、
各集塊が、ある体積寸法を有し、
前記混合するステップが、前記濾されたマスカントの集塊の前記体積寸法を減少させるように実行され、
前記第2の断面積が、前記第1の断面積より小さいことを特徴とするマスカントのリサイクル方法。
【請求項3】
前記第1の濾し器および前記第2の濾し器が、ふるいであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスカントの集塊を濾す前に、前記回収されたマスカントの集塊を混合するステップをさらに含み、前記混合するステップが、前記回収されたマスカントの集塊の前記体積寸法を減少させるように実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
使用済みのマスカントの集塊を回収するステップと、
前記回収されたマスカントの集塊を濾すステップと、
前記濾されたマスカントの集塊を混合するステップと、
前記混合されたマスカントの集塊を濾すステップと、
を含み、
各集塊が、ある体積寸法を有し、
前記混合するステップが、前記濾されたマスカントの集塊の前記体積寸法を減少させるように実行されることを特徴とするマスカントのリサイクル方法。
【請求項6】
前記回収されたマスカントの集塊を濾す前に、前記回収されたマスカントの集塊を混合するステップをさらに含む請求項5に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−224092(P2006−224092A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−365722(P2005−365722)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】