説明

マスキングテープの貼付方法および貼付装置

【課題】剥離を容易に行うことができるように基板にマスキングテープを貼付する。
【解決手段】貼付装置は、塗布液が塗布される基板上の非塗布領域にマスキングテープを貼付する。具体的には、切断手段は、マスキングテープを先細形状となるように切断する。接着手段は、マスキングテープの接着面を基板に接着させる。このように、マスキングテープを剥離する際における剥がし初めの部分を先細形状となるようにマスキングテープを切断することによって、マスキングテープの剥離が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスキングテープの貼付方法および貼付装置に関し、より特定的には、基板に塗布される塗布物をマスクするために用いられるマスキングテープの貼付方法および貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に塗布液を塗布する処理工程において、塗布が不要な基板の領域(非塗布領域)に塗布液が付着しないようにマスキングテープを用いることがある。例えば、特許文献1には、ガラス等の基板の表面に有機EL層を形成するための塗布液を塗布する際に、非塗布領域にマスキングテープを貼付し、非塗布領域に塗布液が塗布されないようにする構成が記載されている。
【特許文献1】特開2006−216414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マスキングテープは剥離することが前提で貼付されるものであるので、剥離が容易になるようにマスキングテープを貼付することが望ましい。
【0004】
それ故、本発明の目的は、剥離を容易に行うことができるように基板にマスキングテープを貼付することができるマスキングテープの貼付方法および貼付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明は、塗布液が塗布される基板上にマスキングテープを貼付する貼付方法である。本塗布方法は、切断工程と、接着工程とを備えている。切断工程においては、マスキングテープを先細形状となるように切断する。接着工程においては、マスキングテープを基板に接着させる。
【0006】
また、第2の発明においては、切断工程において、マスキングテープの幅方向に対して斜めに一直線に当該マスキングテープを切断するようにしてもよい。
【0007】
また、第3の発明においては、接着工程において、切断工程による切断部分が、塗布液が塗布されない位置となるようにマスキングテープを基板に接着させてもよい。
【0008】
また、第4の発明は、塗布液が塗布される基板上にマスキングテープを貼付する貼付装置である。貼付装置は、切断手段と、接着手段とを備えている。切断手段は、マスキングテープを先細形状となるように切断する。接着手段は、切断手段によって切断されたマスキングテープを基板に接着させる。
【0009】
また、第5の発明においては、切断手段は、マスキングテープの幅方向に対して斜めに一直線に当該マスキングテープを切断する切断刃を有していてもよい。
【0010】
また、第6の発明においては、接着手段は、切断手段による切断部分が、塗布液が塗布されない位置となるようにマスキングテープを基板に接着させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
第1および第4の発明によれば、マスキングテープを剥離する際における剥がし初めの部分を先細形状となるようにマスキングテープを切断することによって、マスキングテープの剥離が容易になる。
【0012】
また、第2および第5の発明によれば、マスキングテープを切断するための切断刃の形状を簡易にすることができ、マスキングテープを貼付するための構成を簡易化することができる。
【0013】
また、第3および第6の発明によれば、先細形状となっているマスキングテープの切断部分には、塗布液が塗布されない。つまり、塗布液をマスクする用途としては上記切断部分を用いないようにすることによって、非塗布領域に塗布液が塗布されることを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1A〜図1Cは、本発明の一実施形態に係るマスキングテープの貼付装置を示す図である。図1Aは貼付装置の上面図であり、図1Bは貼付装置の側面図であり、図1Cは貼付装置の正面図である。図1A〜図1Cに示す貼付装置は、塗布液を塗布する前の基板にマスキングテープを貼り付けるとともに、塗布後の基板からマスキングテープを剥離するものである。なお、本実施形態では、マスキングテープを剥離する剥離装置と貼付装置とが一体として構成される例を説明するが、他の実施形態では、貼付装置は剥離装置と別体として構成されてもよい。
【0015】
貼付装置は、テーブル1、テーブル移動機構2、第1レール3、貼付ユニット4、剥離ユニット5、ユニット移動機構6、第2レール7、および支持部材8を備える。マスキングテープの貼付および剥離を行う対象となる基板は、テーブル1の上面(載置面)に載置される。テーブル1の載置面はXY平面と平行である。テーブル1は、その下面がテーブル移動機構2の上部に固着される。テーブル移動機構2は、X軸方向に延びる第1レール3上に設置され、第1レール3に沿って滑動可能である。これによって、テーブル移動機構2は、テーブル1をX軸方向に平行移動させることができる。また、テーブル移動機構2は、テーブル1の中心であるZ軸を中心に回転可能であり、Z軸を中心にテーブル1を回転させることができる。
【0016】
一方、支持部材8は、テーブル1の移動可能領域の上方で2本の第2レール7を支持する。各第2レール7は、Y軸方向に延びる向きに支持される。支持部材8および2本の第2レール7からなる組は2組設けられる。ユニット移動機構6は、第2レール7に沿って滑動可能なように4本(2組)の第2レール7に接続される。これによって、ユニット移動機構6はY軸方向に平行移動することが可能である。貼付ユニット4および剥離ユニット5は、ユニット移動機構6に固着される。図1A〜図1Cでは、ユニット移動機構6に対してY軸負方向側に貼付ユニット4が固着され、ユニット移動機構6に対してY軸正方向側に剥離ユニット5が固着される。貼付ユニット4および剥離ユニット5は、それらの下面がテーブル1の上面よりも高い位置(Z軸に関して正方向の位置)に配置される。以上によって、ユニット移動機構6は、テーブル1の移動可能領域の上方において貼付ユニット4および剥離ユニット5をY軸方向に移動させることが可能である。
【0017】
図2Aは、貼付ユニット4の内部構成を模式的に示す図で、図1AにおいてY軸正方向視の図である。図2Aに示すように、貼付ユニット4は、筐体10、供給リール11、回収リール12、ガイドローラ13〜15、可動ローラ16、調整ローラ17、テープ分離部材18、エアシリンダ19、可動部材20、および切断部21を備える。貼付ユニット4は、基板にマスキングテープ24を貼付するものである。
【0018】
図2Aに示す筐体10の内部において、供給リール11、回収リール12、各ガイドローラ13〜15、および調整ローラ17は、筐体10によってその回転軸が支持される。マスキングテープ24は、供給リール11に巻き付けられて収納されている。なお、本実施形態では、供給リール11は、マスキングテープ24をベーステープ25に貼り付けて1本のテープとした状態で収納している。つまり、供給リール11に巻き付けられているテープは、マスキングテープ24とベーステープ25との2層からなる構成である。供給リール11に巻き付けられているテープは、ガイドローラ13〜15、テープ分離部材18の先端部分、および調整ローラ17を順に通って回収リール12に巻き付けられる。
【0019】
図2Aにおいて、テープ分離部材18は、筐体10の下面に形成された開口部26付近に配置される。切断部21は、マスキングテープ24を切断するための切断刃22を有しており、ガイドローラ15とテープ分離部材18の先端部分との間に配置される。
【0020】
図2Bは、マスキングテープ24と切断刃22との位置関係を示す図である。図2Bは、マスキングテープ24の上方から切断刃22およびマスキングテープ24をみた図である。図2Bに示されるように、切断刃22は、マスキングテープ24の幅方向に対して斜めに配置される。換言すれば、切断刃22は、マスキングテープの長手方向(マスキングテープ24の送り方向)から所定角度だけ角度を付けて配置される。本実施形態では、切断刃22は、所定角度θが45°となるように配置される。角度θは、切断刃22の刃面とマスキングテープ24の長手方向とのなす角度のうち鋭角となる方の角度である。これによって、マスキングテープ24の幅方向に対して角度を付けてマスキングテープ24を切断することができる。
【0021】
図2Aの説明に戻り、可動ローラ16は、テープ分離部材18の先端部分近傍に配置される。可動部材20は、その一端で可動ローラ16の回転軸を支持する。可動部材20の他端は、伸縮動作を行うエアシリンダ19に接続される。可動部材20の支点23は筐体10に固定されており、可動部材20は支点23を中心に回転可能に支持される。これらのエアシリンダ19および可動部材20によって、エアシリンダ19の伸縮動作に応じて可動ローラ16を上下方向に移動させる(正確には、支点23を中心とした円弧上を移動させる)ことができる(図2Aに示す矢印参照。)。なお、可動ローラ16は、筐体10の下面よりも下方に突出した位置まで移動することが可能である。詳細は後述するが、可動ローラ16は、マスキングテープ24を基板に接着させるために用いられる。すなわち、本実施形態においては、可動ローラ16が請求項に記載の接着手段に相当する。
【0022】
図3は、剥離ユニット5の内部構成を模式的に示す図で、貼付ユニット4と同様に図1AにおいてY軸正方向視の図である。図3に示すように、剥離ユニット5は、筐体30、供給リール31、回収リール32、ガイドローラ33〜35、調整ローラ36、可動ローラ37、エアシリンダ38、および可動部材39を備える。剥離ユニット5は、基板に貼付されたマスキングテープを剥離するものである。
【0023】
図3に示す筐体30の内部において、回収リール32、供給リール31、各ガイドローラ33〜35、および調整ローラ36は、筐体30によってその回転軸が支持される。剥離テープ41は、供給リール31に巻き付けられて収納されている。剥離テープ41は、基板に貼り付けられたマスキングテープ24にその粘着面を接着することによってマスキングテープ24を基板から剥離するために用いられる。なお、マスキングテープ24を完全に覆うことができるように、剥離テープ41の幅はマスキングテープ24の幅よりも広い。また、剥離テープ41は、上述したマスキングテープ24とは異なり、他のテープに貼り付けられていない1層の構成である。剥離テープ41は、ガイドローラ33および34、可動ローラ37、ガイドローラ35、および調整ローラ36を順に通って回収リール32に巻き付けられる。
【0024】
また、可動ローラ37は、筐体30の下面に形成された開口部42付近に配置される。剥離テープ41は、可動ローラ37によって、粘着面がマスキングテープの方向を向くように案内される。可動部材39は、その一端で可動ローラ37の回転軸を支持する。可動部材39の他端は、伸縮動作を行うエアシリンダ38に接続される。可動部材39の支点40は筐体30に固定されており、可動部材39は支点40を中心に回転可能に支持される。これらのエアシリンダ38および可動部材39によって、エアシリンダ38の伸縮動作に応じて可動ローラ37を上下方向に移動させる(正確には、支点40を中心とした円弧上を移動させる)ことができる(図3に示す矢印参照。)。なお、可動ローラ37は、筐体30の下面よりも下方に突出した位置まで移動することが可能である。
【0025】
なお、図3においては、供給リール31から回収リール32までの全区間で剥離テープ41が張設されていると、可動ローラ37が上下方向に移動することによって、剥離テープ41に余計な力が加えられたり剥離テープ41がたるんだりすることがある。そこで、他の実施形態では、剥離ユニット5は、供給リール31から供給された剥離テープ41(供給リール31および回収リール32に巻き取られていない部分の剥離テープ41)の長さを調節する機構をさらに備えていてもよい。具体的には、ガイドローラ33〜35または調整ローラ36を、剥離テープ41に加えられる張力に応じて(換言すれば、可動ローラ37の移動に応じて)移動するようにしてもよい。これによって、供給リール31および回収リール32に巻き取られていない部分の剥離テープ41の長さを一定とすることができ、剥離テープ41に余計な力が加えられたり剥離テープ41がたるんだりすることを防止することができる。
【0026】
次に、以上のように構成される貼付装置が有機EL(Electro Luminescence)表示装置の製造工程において用いられる場合を例として貼付装置の動作を説明する。有機EL表示装置を製造する際、基板(ガラス基板)に対して正孔輸送材料や有機EL材料といった塗布液が塗布される。ここで、塗布が不要な基板領域に塗布液が塗布されることを防止するために、マスキングテープを基板に貼り付ける工程(貼付工程)が行われる。次に、マスキングテープが貼り付けられた基板に対して塗布液を塗布する工程(塗布工程)が行われる。さらに、塗布工程が完了した基板からマスキングテープを剥離する工程(剥離工程)が行われる。貼付装置は、上記貼付工程および剥離工程において用いられる。
【0027】
図4A〜図4Cを用いて、有機EL表示装置の製造工程の概要を説明する。図4Aは、貼付工程が施された基板を示す図である。本実施形態における貼付工程においては、貼付装置は2本のマスキングテープ24を基板50に貼り付ける。図4Aに示すように、1本のマスキングテープ24は、略正方形の基板50の一辺から所定長さ離れた位置に当該一辺と平行に貼り付けられる。もう1本のマスキングテープは、当該一辺に対向する辺から所定長さ離れた位置に当該対向する辺と平行に貼り付けられる。なお、マスキングテープ24を基板に貼り付ける際の貼付装置の具体的な動作については後述する(図6A〜図6C参照)。貼付工程が完了した基板は、図示しない塗布装置に搬送されて塗布工程が施される。
【0028】
図4Bは、塗布工程が施された基板を示す図である。図4Bにおいて点線で囲まれる斜線領域51は、塗布液が塗布された領域を示す。塗布工程においては、図4Bに示すように、マスキングテープ24が貼り付けられた基板50に対して塗布液が塗布される。塗布方法としては、例えばノズルから塗布液を基板50に向けて吐出する方法が考えられる。図4Bでは、マスキングテープ24に垂直な方向(図4Bにおける上下方向)のストライプ状に塗布液が塗布される。塗布工程が完了した基板50は、貼付装置に搬送されて剥離工程が施される。
【0029】
図4Cは、剥離工程が施された基板を示す図である。図4Cにおいて斜線で示される領域52〜54は、塗布液が塗布された基板領域を示す。剥離工程においては、塗布液が塗布された後の基板50から貼付装置の剥離ユニット5によってマスキングテープ24が剥離される。なお、マスキングテープ24を基板から剥離する際の貼付装置の具体的な動作については後述する(図8A〜図8D参照)。図4Cに示すように、領域52と領域53との間の基板領域は、マスキングテープ24が貼り付けられていた領域であるので、塗布液が付着していない。領域53と領域54との間の基板領域についても、領域52と領域53との間の基板領域と同様に塗布液が付着していない。本貼付装置は、以上のようにマスキングテープを用いることによって、塗布不要な基板領域に塗布液が付着することを防止することができる。なお、図4Cに示す一点鎖線領域55は、1枚の有機EL表示装置として用いられる領域であり、一点鎖線領域55の外側の領域は切断されて破棄される。
【0030】
なお、有機EL表示装置を製造する際、基板50に対して正孔輸送材料や赤、緑、および青色の有機EL材料といった塗布液が塗布される。図5は、有機EL表示装置の製造工程を示す図である。具体的な製造工程の順序は、基板Pの上面にバンク(壁)を形成した後、本実施形態の貼付装置を用いて各塗布液の塗布工程毎に貼付工程および剥離工程が行われる(図5参照)。例えば、赤色の有機EL材料を基板Pに塗布する際は、塗布工程前にマスキングテープ24が貼り付けられ、塗布工程後にマスキングテープ24を剥離して、ベーク処理が行われる。そして、他の色の有機EL材料についても赤色の有機EL材料の場合と同様に、貼付工程、塗布工程、剥離工程、およびベーク処理工程が行われる。
【0031】
次に、貼付工程における貼付装置の動作を詳細に説明する。貼付工程においては、まず、貼付装置の動作開始前にテーブル1に基板が載置される。なお、詳細は後述するが、マスキングテープ24はX軸方向と平行に貼り付けられる。したがって、マスキングテープ24を貼り付ける方向が所望の方向となるように、テーブル1上の基板はテーブル移動機構2の回転動作によってその向きが調整される。初期状態において、テーブル1は、例えば図1Aに示す位置のように、2つの支持部材8の間の外側に配置される。初期状態における貼付ユニット4は、2つの支持部材8の間にテーブル1が位置する場合にテーブル1の直上空間となる位置に配置される。
【0032】
以上に示した初期状態から、まず、ユニット移動機構6により貼付ユニット4を所定位置とした後、テーブル1の移動が開始される。すなわち、テーブル1は、貼付ユニット4に近づく方向(図1AではX軸正方向)に移動する。さらに、テープの送り動作が開始される。すなわち、貼付ユニット4の供給リール11、回収リール12、および調整ローラ17が回転駆動を開始する。これによって、供給リール11からテープが供給されるとともに、回収リール12にテープが巻き取られて回収される。なお、供給リール11、回収リール12、および調整ローラ17によるテープの送り速度は、テーブル1の移動速度と等しくなるように設定される。
【0033】
図6A、図6Bおよび図6Cは、貼付工程の動作時における筐体10の開口部付近の様子を示す図である。なお、図6A〜図6Cにおいては、図面を見やすくする目的で筐体10、エアシリンダ19および可動部材20の記載を省略している。テーブル1が貼付ユニット4直下の所定位置に達すると、切断部21はマスキングテープ24を切断する(図6A)。具体的には、切断部21は、切断刃22をマスキングテープ24へ向けて突出させてマスキングテープ24に食い込ませることによってマスキングテープ24を切断する。ここで、ガイドローラ15からテープ分離部材18へ送られてくるテープは、マスキングテープ24およびベーステープ25の2層からなる。切断刃22は、マスキングテープ24およびベーステープ25のうちでマスキングテープ24のみを切断する厚さまで食い込むように調整されている。したがって、切断部21によってマスキングテープ24は切断されるが、ベーステープ25は切断されない。
【0034】
また、図2Bに示したように、切断刃22は、マスキングテープ24に対して角度を付けて配置されている。したがって、マスキングテープ24の切断部分24aは、マスキングテープ24の幅方向に対して平行ではなくなる。なお、図6Bおよび図6Cでは、マスキングテープ24の切断部分24aを斜線で示している。
【0035】
マスキングテープ24が切断部21によって切断された後、テープがさらに送られると、マスキングテープ24の切断部分24aがテープ分離部材18の先端に達する。テープ分離部材18の先端ではベーステープ25が鋭角に折り曲げられるので、マスキングテープ24はベーステープ25から剥離される。これによってマスキングテープ24の先端部分(切断部分24a)がマスキングテープの先端から突出し、当該切断部分24aが稼働ローラ16の下方に達する。可動ローラ16は、マスキングテープ24の切断部分24aが可動ローラ16の下方に達したタイミングで、エアシリンダ19の伸縮動作によって下方(Z軸負方向)に移動する(図6B)。可動ローラ16は、基板50の上面付近まで移動することによってマスキングテープ24の先端部分を基板50に接触させる。これによって、マスキングテープ24の先端部分の下面(粘着面)が基板50に貼り付けられる。なお、マスキングテープ24の先端部分を貼り付けるX軸方向の位置は、テーブル1の移動を調整することによって任意の位置に設定することができる。マスキングテープ24を基板50に接触させると、可動ローラ16は上方に移動して元の位置に戻る。
【0036】
また、可動ローラ16が上下方向に移動している間もテーブル1の移動動作およびテープの送り動作は継続されている。したがって、マスキングテープ24の先端部分が基板50に貼り付けられると、続いて供給されるマスキングテープ24が先端部分から順に基板50に貼り付けられていく(図6C)。一方、マスキングテープ24を切断してから所定長さのテープが送られると、切断部21は再度マスキングテープ24を切断する。なお、この所定長さは、基板50に貼り付けるマスキングテープ24の長さである。切断部21による再度の切断が行われた後、テープがさらに送られることによってマスキングテープ24が終端まで基板50に貼り付けられる。なお、可動ローラ16を上下方向に移動させることによって、マスキングテープ24の終端を基板50に接触させるようにしてもよい。また、マスキングテープ24の貼り付け動作中、可動ローラ16をマスキングテープ24を介して基板50に押しつけたままとしてもよい。以上の動作によって、1本のマスキングテープ24を基板50に貼り付ける処理が完了する。
【0037】
図7は、基板50に貼り付けられたマスキングテープ24の先端部分付近を示す図である。図7に示すように、基板50の塗布領域51を確実にマスクするため、マスキングテープ24は、塗布液が塗布される領域51(図7に示す斜線領域)に切断部分24aが含まれないように貼り付けられる。したがって、切断部分24aの長さL2が基板50の端から領域51までの長さL1よりも小さくなるように、マスキングテープ24を切断する角度θを設定する必要がある。なお、切断部分24aの長さL2は、マスキングテープの長手方向(幅方向に垂直な方向)に関する長さである。また、上記角度θは、90°未満であればよいが、上記長さL2が長さL1よりも小さくなる範囲で、小さくすることが好ましい。例えば、上記長さL2が長さL1の1/2以上となるようにしておけば、切断部分24aが領域51に含まれず、かつ、角度θを小さくすることができる。
【0038】
以上の動作によって、X軸方向に沿ってマスキングテープ24を貼り付けることができる。複数本のマスキングテープ24を基板に貼り付ける場合には、貼付装置は上記の動作を複数回繰り返す。なお、マスキングテープ24を貼り付けるY軸方向の位置は、ユニット移動機構6によって貼付ユニット4をY軸方向に予め移動させることによって任意の位置に設定することができる。
【0039】
なお、本実施形態においては、マスキングテープ24を送る速度と等しい速度でテーブル1を移動させるようにしたが、他の実施形態においては、マスキングテープ24を送る速度と等しい速度で貼付ユニット4を移動させるようにしてもよい。
【0040】
次に、剥離工程における貼付装置の動作を説明する。剥離工程においては、まず、貼付装置の動作開始前にテーブル1に基板50が載置される。基板50は、剥離すべきマスキングテープ24がX軸方向を向くように載置される。テーブル1上の基板50の向きはテーブル移動機構2の回転動作によって調整される。剥離工程におけるテーブル1の初期位置は、貼付工程と同様、2つの支持部材8の間の外側の位置である。また、初期状態において、剥離ユニット5は、基板50から剥離すべきマスキングテープ24の延長線上に可動ローラ37が位置するように配置される。基板50から剥離すべきマスキングテープ24の位置と可動ローラ37の位置とがY軸方向に関して同じになるように剥離ユニット5が配置される。
【0041】
以上に示した初期状態から、まず、テーブル1の移動が開始される。テーブル1は、剥離ユニット5に近づく方向(図1AではX軸正方向)に移動する。さらに、剥離テープ41の送り動作が開始される。すなわち、剥離ユニット5の供給リール31、回収リール32、および調整ローラ36が回転駆動を開始する。これによって、供給リール31から剥離テープ41が供給されるとともに、回収リール32に剥離テープ41が巻き取られて回収される。なお、供給リール31、回収リール32、および調整ローラ36による剥離テープ41の送り速度は、テーブル1の移動速度と等しくなるように設定される。
【0042】
図8A、図8B、図8C、および図8Dは、剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図である。なお、図8A〜図8Dにおいては、図面を見やすくする目的で筐体30、エアシリンダ38および可動部材39の記載を省略している。
【0043】
初期状態からテーブル1が移動することによって、基板50に貼り付けられたマスキングテープ24の先端部分が可動ローラ37の直下位置に達する(図8A)と、可動ローラ37はエアシリンダ38の伸縮動作によって下方(Z軸負方向)に移動する。図3および図8A等に示すように、可動ローラ37は、基板50の方向へ凸となるように剥離テープを張設している。したがって、可動ローラ37が基板50の上面付近まで移動することによって、剥離テープ41の粘着面はマスキングテープ24の先端部分に接触する(図8B)。これによって、剥離テープ41とマスキングテープ24とが接着される。剥離テープ41をマスキングテープ24に接触させると、可動ローラ37は上方に移動して元の位置に戻る。このとき、マスキングテープ24の先端部分は剥離テープ41に接着されているので、マスキングテープ24の先端部分は基板50から剥離される(図8C)。このとき、マスキングテープ24の先端部分は先細形状となっているので、マスキングテープ24の先端部分を基板50から容易に剥離することができる。
【0044】
また、可動ローラ37が上下方向に移動している間もテーブル1の移動動作および剥離テープ41の送り動作は継続されている。したがって、剥離テープ41がマスキングテープ24の先端部分に接着すると、剥離テープ41が続いて供給されることによって、マスキングテープ24は先端部分から順に剥離テープ41に接着されていく(図8D)。すなわち、剥離テープ41の送り動作によって可動ローラ37が回転すると、マスキングテープ24は先端部分から順に剥離テープ41に接触するので両者が接着されていく。その後もテーブル1の移動動作および剥離テープ41の送り動作は継続されるので、マスキングテープ24は終端まで剥離テープ41に接着されて基板50から剥離される。剥離テープ41に接着されたマスキングテープ24は、剥離テープの送り動作によって筐体30の内部に回収され、ガイドローラ35および調整ローラ36を通って回収リール32に回収される。なお、マスキングテープ24の上面には塗布物が付着しているが、マスキングテープ24が回収される際、この上面は剥離テープ41によって覆われている。したがって、マスキングテープ24の上面に付着した塗布物が落下して基板に付着するおそれがない。
【0045】
以上の動作によって、1本のマスキングテープ24を基板50から剥離する処理が完了する。なお、複数本のマスキングテープ24を基板50から剥離する場合には、貼付装置は上記の動作を複数回繰り返す。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、切断刃22をマスキングテープの幅方向に対して斜めに配置することで、マスキングテープ24を斜めに切断する。したがって、マスキングテープ24を剥離する際における剥がし初めの部分を先細形状とすることで、マスキングテープ24を剥がしやすくなる。出願人による実験では、マスキングテープ24を幅方向に水平に切断した場合(上記角度θ=90°の場合)には上記剥離ユニット5による剥離率は40%であったのに対して、マスキングテープ24を幅方向に対して斜めに切断した場合(具体的には、角度θ=45°とした場合)には剥離率が70%となった。なお、本実施形態のように、マスキングテープ24を剥離する際における剥がし初めの部分を鋭角とすることで、上記剥離ユニット5のような装置によってマスキングテープ24を剥離する場合のみならず、人の手で剥離作業を行う場合も剥離が容易になる。以上のように、本実施形態によれば、剥離を容易に行うことができるように基板にマスキングテープ24を貼付することができる。
【0047】
なお、マスキングテープを剥離する方法としては、マスキングテープに紫外線を照射して接着力を低下させて剥離する方法もあるが、有機ELを製造する場合には塗布液に紫外線を照射することができないため、当該方法を用いることができない。本実施形態の方法は、有機ELを製造する場合のように、マスキングテープに紫外線を照射して接着力を低下させて剥離する方法を用いることができない場合に、特に有効である。
【0048】
なお、上記実施形態においては、マスキングテープの切断部分が一直線になるように切断した。ここで、他の実施形態では、マスキングテープは、先細形状となるように切断されればよい。ここで、先細形状とは、切断部分に向かってマスキングテープの幅方向の長さが減少している形状を意味する。幅方向の長さが減少することで基板の粘着力が低下することにより、本発明の特徴とする効果を得ることができる。図9A、図9B、および図9Cは、マスキングテープ24の切断部分の他の形状を示す図である。貼付装置は、図9Aに示すような山型にマスキングテープ24を切断してもよい。なお、この場合、切断刃22の形状を山型にする必要があるので、切断刃22の形状が簡易である点で上記実施形態に利点がある。また、貼付装置は、図9Bに示すようなV字型にマスキングテープ24を切断するようにしてもよい。なお、図9Bの場合には、2カ所の先端のいずれかが剥離できずに残るおそれがあるので、上記実施形態や図9Aに示すように、先端から次第にマスキングテープの幅が広くなるような形状の方がより確実にマスキングテープ24を剥離することができる。また、先細形状とは、先鋭形状に限らず、切断部分の先端が尖っていない形状を含む概念である。例えば、図9Cに示すように、切断部分は曲線で構成されてもよく、具体的には、先端部分が半円(半楕円)形状であってもよい。なお、マスキングテープを曲線で切断するためには切断刃22の形状が複雑になるので、切断刃22の形状が簡易である点で上記実施形態に利点がある。
【0049】
なお、上記実施形態においては、有機EL材料を塗布する場合に貼付装置を用いる場合を例として説明したが、本発明に係る貼付装置は、耐塗布液として基板に貼り付けたマスキングテープを剥離する場合に適用することが可能である。例えば、有機EL材料を塗布する場合に限らず、PDP(Plasma Display Panel)の蛍光材料、レジスト液、SOG(Spin On Glass)液等を基板に塗布する際に用いられるマスキングテープを剥離する場合にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、耐塗布物として用いられるマスキングテープを基板から剥離する貼付装置において、剥離を容易に行うことができるように基板にマスキングテープを貼付すること等を目的として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】本実施形態に係るマスキングテープの貼付装置の上面図
【図1B】本実施形態に係るマスキングテープの貼付装置の側面図
【図1C】本実施形態に係るマスキングテープの貼付装置の正面図
【図2A】貼付ユニット4の内部構成を模式的に示す図
【図2B】マスキングテープ24と切断刃22との位置関係を示す図
【図3】剥離ユニット5の内部構成を模式的に示す図
【図4A】貼付工程が施された基板を示す図
【図4B】塗布工程が施された基板を示す図
【図4C】剥離工程が施された基板を示す図
【図5】有機EL表示装置の製造工程を示す図
【図6A】貼付工程における筐体10の開口部付近の様子を示す図
【図6B】貼付工程における筐体10の開口部付近の様子を示す図
【図6C】貼付工程における筐体10の開口部付近の様子を示す図
【図7】基板50に貼り付けられたマスキングテープ24の先端部付近を示す図
【図8A】剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図
【図8B】剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図
【図8C】剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図
【図8D】剥離工程における筐体30の開口部付近の様子を示す図
【図9A】マスキングテープ24の切断部分の他の形状を示す図
【図9B】マスキングテープ24の切断部分の他の形状を示す図
【図9C】マスキングテープ24の切断部分の他の形状を示す図
【符号の説明】
【0052】
1 テーブル
2 テーブル移動機構
3 第1レール
4 貼付ユニット
5 剥離ユニット
6 ユニット移動機構
7 第2レール
8 支持部材
10 筐体
11、31 供給リール
12、32 回収リール
13〜15、33〜35 ガイドローラ
16、37 可動ローラ
17、36 調整ローラ
18 テープ分離部材
19、38 エアシリンダ
20、39 可動部材
21 切断部
22 切断刃
23、40 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液が塗布される基板上にマスキングテープを貼付する貼付方法であって、
前記マスキングテープを先細形状となるように切断する切断工程と、
先細形状に切断された前記マスキングテープを前記基板に接着させる接着工程とを備える、貼付方法。
【請求項2】
前記切断工程においては、前記マスキングテープの幅方向に対して斜めに一直線に当該マスキングテープを切断する、請求項1に記載の貼付方法。
【請求項3】
前記接着工程においては、前記切断工程による切断部分が、前記塗布液が塗布されない位置となるように前記マスキングテープを前記基板に接着させる、請求項1に記載の貼付方法。
【請求項4】
塗布液が塗布される基板上にマスキングテープを貼付する貼付装置であって、
前記マスキングテープを先細形状となるように切断する切断手段と、
前記切断手段によって先細形状に切断された前記マスキングテープを前記基板に接着させる接着手段とを備える、貼付装置。
【請求項5】
前記切断手段は、前記マスキングテープの幅方向に対して斜めに一直線に当該マスキングテープを切断する切断刃を有する、請求項4に記載の貼付装置。
【請求項6】
前記接着手段は、前記切断手段による切断部分が、前記塗布液が塗布されない位置となるように前記マスキングテープを前記基板に接着させる、請求項4に記載の貼付装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公開番号】特開2008−126115(P2008−126115A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311932(P2006−311932)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】