説明

マスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤

【課題】
花粉症やインフルエンザ感染防止において、従来の場合のマスクや眼鏡、ゴーグルの花粉やウイルスを遮断する効果を、より確実なものにし、装着後の肌の炎症の軽減と回復を促すマスク外用剤を提供する。
【解決手段】
膏体基剤中に加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される繭由来成分やセリシンを配合し、該配合した半固形製剤又は液剤をマスク本体や眼鏡及びゴーグル装着部分に塗り、肌とマスクや眼鏡及びゴーグル装着部分の隙間から花粉及びウイルスの進入を防止するマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉症やウイルス感染に対する予防法として使用するマスクや眼鏡及びゴーグル使用時に花粉やウイルスが、粘膜に吸着したり、体内に吸い込まれないように補助的作用を有する外用製剤の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、国内の花粉症患者は、急激に増加しており、現在では、全人口の20%〜30%(約2400〜3600万人)が罹患していると推定される。特に、2月上旬から4月中旬のスギ、4月から5月上旬にかけてのヒノキの花粉は、日本の代表的な花粉症発症の原因花粉(抗原)として知られている。
花粉症とは、花粉が原因となって引き起こされるアレルギー症状を指し、その花粉によるアレルギー症状の代表的なものとして、アレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎が有る。
又、インフルエンザは毎年冬から春先にかけて流行し、学校での集団感染や重症化する症例が多くなり、予防と万延対策が重要になってきている。
最近では動物と人間とのウイルス遺伝子の混合が起こり、次々に変種が誕生し、その中でも人への毒性が強く、死亡率も高い鳥インフルエンザウイルスの中でもH5N1型が韓国、香港、ベトナムと東アジアで大きな被害を出している。
【0003】
日本に花粉症が急激に増加した原因として以下の可能性が考えられる。
(1)アレルギー体質となりやすい食生活の変化
(2)体の抵抗力の低下
(3)ストレス
(4)ディーゼルエンジンの排出粒子
近年は新型ヒトインフルエンザのパンデミックが数十年起こっていないこと、死亡率の減少などからインフルエンザは風邪の一種で恐れる病気ではないと認識する人が多くなったが、これは誤解でありインフルエンザの症状はいわゆる風邪と呼ばれる症状の中でも別格と思えるほどに重く、区別して取り扱われる。パンデミック化したインフルエンザは人類にとって極めて危険なウイルスである。
【0004】
花粉症は、上記(1)〜(4)の説のいくつかが重なって、体に変化を及ぼして花粉症が引き起こされているものと考えられる。
インフルエンザは咳、くしゃみなどによる飛沫感染が主であり、経口・経鼻で呼吸器系に感染する。但し飛沫感染(空気感染)や接触感染など違った形式によるものもある。
【0005】
花粉症が引き起こされない為には、下記の対策が考えられる。
(1)花粉が目や鼻の粘膜に付かないようにする。
A.外出時もしくは帰宅時
イ.外出時にはマスクや眼鏡、ゴーグルを使用する(特許文献1)。
ロ.外出から帰宅したとき、家の外で衣服の表面や頭部についた花粉をよく払ってから家の中に入る。
ハ.うがい・手洗い・洗髪・洗顔して花粉を除去する。
B.家の周辺もしくは室内
イ.花粉が付着しないように洗濯物は、外に干さない。
ロ.花粉が室内に入らないように窓を開けない。
ハ.掃除機をこまめに掛けて花粉を除去する。
C.飲食
イ.普段から出来るだけ青野菜(ビタミン類)を摂るようにする。
ロ.酒を控える(花粉症を悪化させない為)。
(2)減感作療法を用いる。
(抗原特異的)減感作療法とは、抗原を皮下注射して花粉症を引き起こさないようにする治療法である。初回濃度は、抗原の10倍の希濃度系列により皮内陽性反応を呈する100倍低濃度(0.05ml/回,1週間に1回,約4週間)より開始し、抗原液を順次増量する。このようにすることが、通常の外来抗原に対してアレルギー反応を抑制しようとする療法である。
(3)肥満細胞が活性化されてアレルギーを引き起こす物質が放出されるのを抑える薬を使用する。
(4)肥満細胞から放出された物質が鼻や目を攻撃するのを抑える薬を使用する。
【0006】
インフルエンザの予防手段としては日常生活上の注意とワクチンを使用した予防接種がある。具体的な感染予防対策を下記に示す。
(1)免疫力を落とさない(偏らない十分な栄養や睡眠休息を十分にとる)。
(2)物理的な方法でウイルスへの接触や体内への侵入を減らす(石鹸による手洗いの励行や手で目や口を触らないこと、手袋やマスクの着用)。
(3)感染の可能性が考えられる場所に長時間いることを避ける(人ごみや感染者のいる場所)。
(4)換気をこまめに行ない部屋の湿度(50〜60%)を保つ(ウイルスを追い出し、飛沫感染の確立を大幅に減らす)。
(5)うがいを実行する(ウイルスは口や喉の粘膜に付着してから体内に侵入する)。
(6)感染者が使用した鼻紙やマスクは密封し廃棄する。
【0007】
ところで、花粉症は、花粉の進入(粘膜の付着)→花粉の成分(抗原)に対する抗体(IgE)の生産→抗体の肥満細胞への結合→再び花粉の進入→肥満細胞上で花粉の成分(抗原)と抗体の反応→肥満細胞が活性化してアレルギーを引き起こす物質の放出→目や鼻を攻撃→花粉症が発症、の過程を経て発症する。
これらの一連の過程で最終的に花粉症として発症するため、これらのどこの段階を抑えても花粉症を一応抑えられるが、最も理想的な方法は、初期段階で花粉が粘膜に付着するのを防ぐことである。
インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型があり、現在ヒトの間で流行している型は、A型のソ連型(H1N1亜型)・香港型(H3N2亜型)、B型の3タイプである。C型もヒトに感染するが、流行は起こりにくいとされている。
主な感染経路は、患者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むこと(飛沫感染)である。また、ウイルスが付着した手を介した感染(接触感染)もある。
これらの感染を防ぐには予防接種や咳エチケット(咳やくしゃみをするときは、ハンカチ・ティッシュやマスクを口と鼻にあて、他のヒトに直接飛沫がかからないようにする)、手洗い・うがいの励行)の3点がポイントとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−187508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の花粉症の必然的に用いる予防対策では次のような問題点がある。
花粉が目や鼻の粘膜に付かない用にする方法は、外出時のマスクや眼鏡、ゴーグルをかけることは、違和感があるものの、通常の日常生活で容易に実施できるが、花粉の多い空間での長時間滞在によってはマスクや眼鏡、ゴーグルをかけた肌の隙間から花粉が進入することで完全に防ぐことが出来ず、その効果も不十分であると言わざるを得ない。
また、肌とマスクや眼鏡、ゴーグルの隙間を少なくして花粉の侵入を防ごうとすると肌に強く押し付けたり、付属のゴムひも等で強く圧迫するために装着部に障害(血流障害による発赤、傷)や違和感(肌の一時的な陥没)を伴い、更に長時間の装着によって息苦しさから精神的不安を伴う。
インフルエンザの必然的な予防対策ではマスク装着があり、上記花粉症の場合と同様なマスク使用時の問題点に加えてウイルスのマスク透過に対する遮断効果を高める目的でガーゼ層を厚くしたり密にしたりといった物理的処理に加えて抗ウイルス効果を有する物質の化学的処理によりガーゼ自体の通気性を抑え、結果として長時間装着によって息苦しくなり、マスクをずらして呼吸することによって感染する危険性が高い。
また、マスクを掛けた状態での呼吸作用によってマスク自体の表面の繊維間に飛散可能な不十分な状態で吸着された花粉やウイルスがマスクを外す段階で飛散し、その結果、飛散した花粉やウイルスが鼻腔粘膜や目の粘膜更に口腔粘膜に付着し、症状を悪化させる。
【0010】
このように、花粉症の予防対策には花粉が鼻や目の粘膜に付着しないようにマスクやメガネ、ゴーグルを掛ける方法が一番安全且つ簡便で効果的であるが、マスクや眼鏡、ゴーグルをかけた場合の肌との隙間が呼吸時に花粉を吸引するといった問題点があり、それを解決するために装備品を強く肌に押し付けることによって肌への障害が発生し、更に呼吸困難な状況となりマスク装着を不安定にし、さらにマスク除去時にマスク外側表面に吸着した花粉が再飛散し、粘膜に付着しやすくなる状況を作り出しているのが現状である。
インフルエンザもウイルスが鼻や口を通して体内に侵入するのを防ぐためにフィルター機能や殺ウイルス効果を持つ各種のマスクを装着する方法が一般的であるが、上記の花粉症の場合と同様な問題点が提起されている。
本発明が解決しようとする課題は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、花粉症やインフルエンザ感染防止において、従来の場合のマスクや眼鏡、ゴーグルの花粉やウイルスを遮断する効果を、より確実なものにし、装着後の肌の炎症の軽減と回復を促すマスクや眼鏡及びゴーグル用に塗布する外用製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、研究を重ねた結果、本発明は、花粉症及びインフルエンザ予防のために、マスクや眼鏡及びゴーグル用に塗布してマスクや眼鏡、ゴーグルの花粉やウイルスを遮断し、装着後の肌の炎症の軽減と回復を促す外用製剤に想到したもので、その手段は次のとおりのものである。
すなわち、花粉及びインフルエンザウイルスがマスクや眼鏡及びゴーグルを装着した肌との隙間から進入し粘膜に付着するのをガードする目的で、その前段階でのマスクや眼鏡及びゴーグルの肌との接触面及びその周辺に外用製剤による被膜層を作り、装着物と肌との密着度(密封度)を高めたものであり、たとえ僅かでも、進入した物に対しては基剤の吸着作用により花粉或いはウイルスをトラップして粘膜との接触を予防することを特徴としたものである。
また、基剤中に抗ウイルス作用を有する物質を添加することによってトラップしたウイルスを殺し、より確実な感染予防効果を期待したものである。更に、基剤中に抗不安、鎮静、リラックス効果を有するハーブ等を添加することによってマスクの装着を長時間確実なものにし、結果として感染予防を確実なものにしたものである。そして、ハーブ自体に抗ウイルス作用を有するものを使用すればマスクフィルターを通過してマスクと肌の空間に侵入したウイルスを抑制することも可能である。更にマスクの繊維自体に吸着作用を維持できれば、マスク自体の外部繊維に不十分な状態で吸着した花粉やウイルスがマスクを外す段階で再飛散することを防止できる。
【0012】
すなわち、請求項1の発明は、膏体基剤中に加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される繭由来成分を配合し、該配合した半固形製剤又は液剤をマスク本体や眼鏡及びゴーグル装着部分に塗り、マスク自体及び肌とマスク、眼鏡、ゴーグル装着部分との隙間から花粉及びウイルスの進入を防止することを特徴とするマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、 前記配合した半固形製剤又は液剤は、クリーム、ジェル、軟膏液剤、スプレー剤から選択されることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、繭由来成分としてセリシンを配合し、該セリシンは、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末等から選択される繭由来の蛋白質であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、前記外用剤中に、抗ウイルス作用を有するリナロール、ゲラニオール、メントール、カルバクロール、チモールから選択される精油成分を配合したことを特徴とする。
リナロールとしてはラベンダー、コリアンダー、プチグレイン、タイム・ケモタイプ・リナコールが含まれ、シトロネロールとしてはゼラニウム、ローズオットーが含まれ、ゲラニオールとしてはパロマローザが含まれ、α―テルピネオールとしてはユーカリラジアータ、ニアウリ、ラベンサラが含まれ、テルピネン−4−olとしてはティートリー、マジョラムが含まれ、メントールとしてはペパーミント、スペアミントが含まれ、カルバクロールとしてはオレガノが含まれ、チモールとしてはタイム、オレガノが含まれる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、外用剤中に鳥インフルエンザウイルスに反応する抗体(H5N1型反応抗体)、インフルエンザウイルスに反応する抗体(H1N1,H1N2,H2N2,H3N2)を含有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、前記外用製剤中に殺ウイルス作用を持つクラゲ等の体を覆う粘液、例えば、糖たんぱく質の一種、クニウムチン、或いは、トロロアオイの粘液物質、カンゾウ、バンランコンといた生薬エキスを含有することを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤において、前記外用製剤中に抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有するセントジョンズワート、パッションフラワー、ホップ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、レモンパベーナ、ローズから選択されるハーブ由来の精油成分及びモミ、カヴァ、バレリアン(セイヨウカノコソウ)の精油成分を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤によれば、外用基剤の中に、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される一種以上の物質とセリシンを含有し、花粉やウイルスがマスク、眼鏡、ゴーグルと肌の隙間から呼吸作用によって進入し、鼻、目及び口腔の粘膜に付着しないようにマスク自体、及び、肌とマスク、ゴーグル、眼鏡との隙間に薄い粘着性膜を作りガードし、特に、セリシンのクリーム剤や液剤はウイルスを吸着する機能が優れていて、鼻、目及び口腔に侵入する前にマスク等に吸着してしまうという効果がある。さらに、鼻や鼻口近傍の皮膚や粘膜において花粉自体のはぜ割れを防止して、抗原が花粉から出てこないように花粉自体を膜で被覆するものである。また、インフルエンザウイルスを粘着性膜で捕獲して体内への侵入を防止し、更に抗ウイルス作用を有する物質やウイルスに反応する抗体を基剤に含有させることによってウイルス自体の活性を落とし、その後のアレルギー症状の発現を抑制とウイルス感染を予防するという効果を奏する。更に抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有する精油成分を基剤に配合することによって密封に近いマスク装着による不安と息苦しさを開放し、マスクの長時間に亘る装着を容易なものにし、結果として花粉症やウイルス感染症の予防をより確実にするといった効果を発揮する。
【0015】
また、請求項2〜7の発明のマスク用外用製剤によれば、請求項1の効果に加えマスク自体にこの外用製剤を処理することによって、マスク自体のフィルターとしての予防効果をさらに確実に高めることができると共にマスク自体の繊維に不十分に吸着された花粉やウイルスがマスクを外す段階で飛散し、結果的に花粉やウイルスを口や鼻口から吸入したり、目や鼻の粘膜に付着することになるといった最悪の結果を回避するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1乃至3についてのスギ花粉のトラップ(補足)試験結果の[表1]の図
【図2】本発明の実施例1乃至3についての花粉侵入阻止率の[表2]の図
【図3】本発明の実施例2についての抗菌試験結果の[表3]の図
【図4】本発明の実施例3についてのマスク装着に伴う不快感改善試験結果の[表4]の図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴は、花粉及びインフルエンザウイルスがマスクや眼鏡及びゴーグルを装着した肌との隙間から進入し粘膜に付着するのをガードする目的で、その前段階でのマスクや眼鏡及びゴーグルの肌との接触面及びその周辺に外用製剤による被膜層を作り、装着物と肌との密着度(密封度)を高めたものであり、たとえ僅かでも、進入した物に対しては基剤の吸着作用により花粉或いはウイルスをトラップして粘膜との接触を予防することを実現したものである。
次ぎに、本発明の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1の外用製剤は、マスク用クリーム剤で、その組成は以下のようなものである。
[実施例1:マスク用クリーム剤の組成]
加水分解シルク液・・・・・・・・・・・・・ 2.0 W/W%
バンランコンエキス・・・・・・・・・・・・ 0.1 W/W%
カンゾウエキス・・・・・・・・・・・・・・ 0.1 W/W%
クニウムチン・・・・・・・・・・・・・・・ 1.0 W/W%
レモンバーム(精油)・・・・・・・・・・・ 0.1 W/W%
ステアリンサン・・・・・・・・・・・・・・ 2.0 W/W%
ステアリルアルコール・・・・・・・・・・・ 5.0 W/W%
還元ラノリン・・・・・・・・・・・・・・・ 1.0 W/W%
スクワラン・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.0 W/W%
オクチルドデカノール・・・・・・・・・・・ 3.0 W/W%
プロピレングリコール・・・・・・・・・・・ 5.0 W/W%
精製水・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 適量
計 100.0 W/W%
【0019】
実施例1:マスク用クリーム剤の製法
バンランコンエキスとカンゾウエキスを精製水に攪拌下に溶解し、これを調製液(1)とする。次に、別途、プロピレングリコールにオクチルドデカノール、スクワラン、還元ラノリンを順次添加し、加温攪拌しながらステアリルアルコール、ステアリンサン、クニウムチンを添加し、これを調製液(2)とする。そして、前記調製液(1)に前記調製液(2)を添加し、10分後にクニウムチンを添加し、更に10分間加温下で加水分解シルク液を攪拌下に添加して製する。
【0020】
実施例1では繭由来成分として単独の加水分解シルク液を用いたが、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末等から選択される繭由来の蛋白質であればよい。さらに、繭由来成分としてセリシンを、単独、或いは前記加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末等と混合して配合してもよい。なお、該セリシンは、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末等から選択される繭由来の蛋白質である。特に、セリシンのクリーム剤や液剤はウイルスを吸着する機能が優れていて鼻、目及び口腔に侵入する前にウイルスを吸着してしまうという作用がある。
また、抗ウイルス作用を有するリナロール、ゲラニオール、メントール、カルバクロール、チモールから選択される精油成分を配合してもよく、これらにはリナロールとしてはラベンダー、コリアンダー、プチグレイン、タイム・ケモタイプ・リナコールが含まれ、シトロネロールとしてはゼラニウム、ローズオットーが含まれ、ゲラニオールとしてはパロマローザが含まれ、α―テルピネオールとしてはユーカリラジアータ、ニアウリ、ラベンサラが含まれ、テルピネン−4−olとしてはティートリー、マジョラムが含まれ、メントールとしてはペパーミント、スペアミントが含まれ、カルバクロールとしてはオレガノが含まれ、チモールとしてはタイム、オレガノが含まれる。
また、鳥インフルエンザウイルスに反応する抗体(H5N1型反応抗体)、インフルエンザウイルスに反応する抗体(H1N1,H1N2,H2N2,H3N2)を含有させてもよい。
更に、実施例1では殺ウイルス作用を持つクラゲ等の体を覆う粘液として、糖たんぱく質の一種のクニウムチン、生薬エキスであるバンランコンエキス、カンゾウエキス等を配合したが、トロロアオイの粘液物質等を含有させてもよい。
これらの物質を配合することにより、花粉やウイルスの吸込みを阻止するとともに、補足したウイルスを減少させることができる。
【実施例2】
【0021】
実施例2の外用製剤は、マスク用液剤で、その組成は以下のようなものである。
[実施例2:マスク用液剤の組成]
柿の葉抽出エキス・・・・・・・・・・・・・・0.3W/W%
ペパーミント・・・・・・・・・・・・・・・・0.1W/W%
加水分解シルク液・・・・・・・・・・・・ ・・1.0W/W%
ローズ(精油)・・・・・・・・・・・・・・・0.1W/W%
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0W/W%
エチルアルコール・・・・・・・・・・・・・・1.0W/W%
精製水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
計 100.0W/W%
【0022】
実施例2:マスク用液剤の製法
精製水に柿の葉エキスを加えて、十分に混合攪拌し、これを調製液(1)とする。グリセリンにエチルアルコール、ローズ、ペパーミントを順次加え、これを調整液(2)とする。そして、調製液(1)に調製液(2)を加え、約10分間十分に攪拌したのち加水分解シルク液を攪拌下に添加して製する。
【0023】
本実施例も、実施例1と同様に、殺・抗ウイルス作用を有する物質を配合しても良く、更に、抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有する物質として、本実施例ではペパーミントやローズ精油を配合したが、セントジョンズワート、パッションフラワー、ホップ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、レモンパベーナ等から選択されるハーブ由来の精油成分及びモミ、カヴァ、バレリアン(セイヨウカノコソウ)の精油成分を配合してもよい。
【実施例3】
【0024】
実施例3の外用製剤は、マスク用スプレー剤で、その組成は以下のようなものである。
[実施例3:マスク用スプレー剤の組成]
緑茶抽出エキス・・・・・・・・・・・・・・・0.2W/W%
ラベンダー油(精油)・・・・・・・・・・・・0.1W/W%
加水分解シルク液・・・・・・・・・・・・・・2.0W/W%
グリセリン・・・・・・・・・・・・・・・・・1.0W/W%
エチルアルコール・・・・・・・・・・・・・・1.0W/W%
精製水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・適量
計 100.0W/W%
【0025】
実施例3:マスク用スプレー剤の製法
緑茶抽出エキスを精製水に溶解し、ラベンダー油、エチルアルコール及びグリセリンを混合したものを攪拌下に添加する。最後に加水分解シルク液を加え、10分間攪拌・練合して製する。
なお、本実施例も実施例1及び2で述べたように、殺・抗ウイルス作用を有する物質や抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有する物質を配合しても良い。
【0026】
ここで、本発明の前記実施例1乃至3の外用製剤の特徴の一つは、外用製剤基剤中に花粉又はウイルスに対する吸着被膜ガード層を形成し、且つ、ウイルス自体を捕獲・抑制或いは殺す成分を配合したものであるが、吸着被膜ガード層の成分としては、更に、肌に無害に口、目、鼻孔周辺部位の肌に延びやすく、粘膜刺激性も無くかつ、抗酸化作用のあるものが好ましく、具体的には、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末がよい。
ここで、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末は合成の粘性物質に比較して、抗原性が低く、安全に使用でき、また、花粉やウイルスをガード被膜で吸着・トラップしやすく、その持続性に優れ、更に、皮膚及び粘膜の強化・再生作用を有する点で、大きな差がある。
【0027】
なお、上記の実施例の組成中、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末に含有されるペプチドは少なすぎると花粉やウイルスに対する吸着被膜ガード層の吸着効果が悪く、多すぎると製剤化が難しくなるので加水分解シルク液の場合、窒素として0.015〜2.5%、加水分解シルクエチル液は7.0〜16.0%、加水分解シルク末では13.0〜18.0%程度がよい。
【0028】
次に、実施例1のマスク用クリーム剤について、スギ花粉に対するトラップ(補足)効果を確認する試験を行い、その結果を説明する。

[スギ花粉の実施例1乃至3の製剤によるトラップ試験]
被検体:(1)マスクにマスク用クリーム製剤(実施例1)を塗布
(2)マスクにマスク用液剤(実施例2)を塗布
(3)マスクにマスク用スプレー剤(実施例3)をスプレー(散布)
(4)マスク(比較例2)
(5)ポリエステル製不織布(比較例3)
(6)無処置(比較例1)
【0029】
試験方法:
直径3.5cm、長さ20cmのプラスチック製円筒の先端に四層不織布マスク[ポリエステル不織布・ポリプロピレン不織布・ノーズフィルター(ポリエチレン)]を10cm×10cmにカットしたマスク素材(比較例2)を被せ、先端から約2cmの位置で輪ゴムで簡易固定した。
更に、先端から10cmの位置をカットし、直径5cmの円形フィルター(ろ紙)をセットしビニールテープで密封固定した。次に、交流用100V(AC)パワーコンパクトクリーナー(TV-660BL:株式会社オーム電機製)の吸引口を上記円筒の開放下部にセットした状態で密封空間(3.5cm2×20cmのポリ容器)の底に固定した。
5gのスギ花粉をビニール袋内で叩き出したものを密封空間であるポリ容器内で開放し、スギ花粉を密封容器内に充満させた。その後クリーナーのスイッチを10秒間入れ、フィルター上に吸着した花粉数を拡大鏡を用いてカウントした。この操作を5回繰り返し実施し、その平均値を求めた。
被検体は円筒先端部から3cmの位置までマスクでカバーする前に、それぞれ実施例1乃至3を均一に塗布した。比較例3として不織布(ポリエステル製)単独使用を設定し、何も処置しないものをコントロール(比較例1)とした。
【0030】
実施例1の試験結果:
試験結果を図1の[表1]及び図2[表2]に示す。
比較例1の無処理のコントロールでは5回の試験実施の花粉累積数1318個、平均値263.6個であった。比較例3の不織布単独では累積数528個、平均値105.6個であり比較例1(コントロール)に対する花粉阻止率は59.9%であった。比較例2のマスク地では累積数168個、平均値33.6個であり、阻止率87.3%であった。 これに対してマスクと実施例1のクリーム処理をした場合は累積花粉数3個であり、花粉阻止率は99.8%であり、実施例2、実施例3の液状の製剤で処理した場合は、累積花粉数11個及び10個で、花粉阻止率は、実施例1の99.8%よりやや阻止率は劣るが、99.2%であった。
以上の結果からマスクに本発明の実施例1のクリーム製剤を処理すること、また、実施例2及び実施例3の液剤やスプレー剤で処理することによって、花粉に対する遮断効果をより確実にできることが明確になった。
【0031】
実施例2のマスク用液剤の抗菌試験
被検体:マスク用液剤(実施例2)
試験方法:
試験管内の大腸菌群の菌液10mlに実施例2を1ml(実施例2-1)、2ml(実施例2-2)及び3ml(実施例2-3)をそれぞれ添加し、良く混合攪拌した後、シャーレ上に形成させたデソキシコーレイト培地上に各攪拌菌を塗布した。処理したシャーレを恒温器内で35℃48時間培養し、培地上に形成されたコロニーをカウントした。 黄色ブドウ球菌についてはマンニット食塩培地を用いて培養条件は35℃48時間で上記と同様に処理した。尚、比較例4のコントロールとして実施例2を各菌液に添加しない群を設定した。
【0032】
実施例2の試験結果:
試験結果を図3の[表3]に示す。
培養試験の結果、実施例2のマスク用液剤を添加しない比較例4(コントロール)では大腸菌群数は1800であったが、実施例2-1の1ml添加群では150、実施例2-2の2ml添加群では80、更に実施例2-3の3ml添加群では0であった。
同様に黄色ブドウ球菌では比較例4の無添加で360,実施例2-1の1ml添加群で20、実施例2-2の2ml及び実施例2-3の3ml添加群では共に0であった。
無添加の比較例4のコントロール群に対する実施例2の添加群の各菌に対する抑制率は下記の通りであった。
大腸菌群に対する抑制効果:実施例2-1の1ml添加群で91.7%、実施例2-2の2ml添加群で95.6%、実施例2-3の3ml添加群で100%であった。
黄色ブドウ球菌に対する抑制効果:実施例2-1の1ml添加群で94.4%、実施例2-2の2ml添加群で100%、実施例2-3の3ml添加群で100%であった。
以上の結果から実施例2の添加量に相関して大腸菌群及び黄色ブドウ球菌に対する抑制効果も高くなったことからMLは菌に対する抑制効果は確実なものであり、菌より活性の弱い各種のウイルスに対しても効果が期待できるものと考えられた。
【0033】
実施例3のマスク用スプレー剤のマスク装着による不快感改善試験
被検体:マスク用スプレー剤(実施例3)
被験者:53〜58歳男性ボランティア 5名
試験方法:
ウイルス対策用の立体構造のマスク(D社製)の内側(口側)に実施例3を1回及び2回軽くスプレーしたものを被験者にしっかりと装着させ、1時間毎に5時間後までマスクを掛けた状態での不快感を下記の不快指数表に従って各自に判定させた。尚、比較例5のコントロールとして実施例3を全くスプレーせずにマスク単独で使用した場合の不快感を上記と同様な方法で判定させた。又、不快指数表で求めた判定を不快指数点数として記録し参考指標とした。
不快指数表:
(−) :息苦しくなく、不快感無し・・・・・・(0点)
(+) :少し息苦しく、軽度に不快感・・・・(10点)
(++) :息苦しく、不快感・・・・・・・・・(20点)
(+++) :息苦しく、非常に不快感・・・・・・(30点)
(++++):非常に息苦しく、マスクを外す・・・(40点)
【0034】
実施例3の試験結果:
試験結果を図4の[表4]に示す。
スプレー処理をしない比較例5のコントロール群ではマスクを装着して2時間後から徐々に息苦しさを唱える被験者が増え始め、4時間後で一人更に5時間後で5人中3人がマスクを外す結果となった。不快指数点数の平均値も時間の経過とともに高くなり、特に3時間後を境にして急激に不快指数点数の増加が認められた。
これに対して、実施例3のスプレー1回群ではマスク装着3時間目に5人中1人が軽度の不快感を認め、4時間目に2人、5時間目に3人の軽度の不快感を唱えたもののマスクを外す例は全く認められなかった。スプレー2回群ではマスク装着最終時間の5時間目でやっと軽度の不快感を唱える被験者(1名)を認める程度であった。
以上の結果から、不快感を意識せずにマスク装着できる限度は3時間と思われたが、実施例3のスプレーによりマスク装着による不快感が減少し、結果として長時間のマスク装着を可能にしたことはウイルスや花粉から感染症や花粉症の発症を予防するマスク対策の確実性が高まったものと考えられた。
【0035】
以上のように、本発明の各実施例のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤によれば、外用基剤の中に、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される一種以上の物質、又は、セリシンを含有させ、花粉やウイルスがマスク、眼鏡、ゴーグルと肌の隙間からの呼吸作用によって進入し、鼻、目及び口腔の粘膜に付着しないように肌とマスク、ゴーグル、眼鏡との隙間に薄い粘着性膜を作りガードし、さらに、鼻や鼻口近傍の皮膚や粘膜において花粉自体のはぜ割れを防止して、抗原が花粉から出てこないように花粉自体を膜で被覆する。また、インフルエンザウイルスを粘着性膜で捕獲して体内への侵入を防止し、更に抗ウイルス作用を有する物質やウイルスに反応する抗体を基剤に含有させることによってウイルス自体の活性を抑え、その後のアレルギー症状発現の抑制とウイルス感染を予防する。更に抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有する精油成分を基剤に配合することによって密封に近いマスク装着による不安と息苦しさを開放し、マスクの長時間の装着を容易なものにしている。
更に、マスク自体にこの外用製剤を処理することによって、マスク自体のフィルターとしての予防効果をさらに確実に高めることができると共にマスク自体の外部繊維に不十分に吸着された花粉やウイルスがマスクを外す段階で飛散し、結果的に花粉やウイルスを口や鼻口から吸入したり、目や鼻の粘膜に付着することになるといった最悪の状態を回避する。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、前記の各実施例に限定されるものでないことは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体基剤中に加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される繭由来成分を配合し、該配合した半固形製剤又は液剤をマスク本体や眼鏡及びゴーグル装着部分に塗り、マスク自体及び肌とマスク、眼鏡、ゴーグル装着部分との隙間から花粉及びウイルスの進入を防止することを特徴とするマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項2】
前記配合した半固形製剤又は液剤は、クリーム、ジェル、軟膏液剤、スプレー剤から選択されることを特徴とする請求項1に記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項3】
前記繭由来成分としてセリシンを配合し、該セリシンは、加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末等から選択される繭由来の蛋白質であることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項4】
前記外用剤中に、抗ウイルス作用を有するリナロール、シトロネロール、ゲラニオール、α―テルピネオール、メントール、カルバクロール、チモールから選択される精油成分を配合したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項5】
前記外用剤中に鳥インフルエンザウイルスに反応する抗体、インフルエンザウイルスに反応する抗体を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項6】
前記外用製剤中に殺ウイルス作用を持つクラゲ等の体を覆う粘液やトロロアオイの粘液物質、カンゾウ、バンランコンといた生薬エキスを含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。
【請求項7】
前記外用製剤中に抗不安、鎮静、リラックスといった精神安定作用を有するセントジョンズワート、パッションフラワー、ホップ、ラベンダー、リンデン、レモングラス、レモンバーム、レモンパベーナ、ローズから選択されるハーブ由来の精油成分及びモミ、カヴァ、バレリアンの精油成分を含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のマスクや眼鏡及びゴーグル用の花粉及びウイルス対策外用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−4991(P2011−4991A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151647(P2009−151647)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(593095070)有限会社日本健康科学研究センター (12)
【Fターム(参考)】