説明

マスクフィルム、感光性樹脂印刷版の製造方法、感光性樹脂印刷版

【課題】2種類以上の異なる形状の印刷パターンを、それぞれ所望の形状に露光・硬化させることを可能にするバック露光用のマスクフィルムを得る。
【解決手段】活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域32、33、34を有するマスクフィルム31。活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域のうちの、1つの領域の活性光線透過率が活性光線透過率Xであり、当該活性光線透過率Xの領域は、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物の露光工程において共に用いられる画像層の非画像部に対応する領域であり、前記活性光線透過率Xの領域以外の、2つ以上の領域は、前記画像層を介してフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に活性光線を照射したときに、2種以上の印刷パターンを形成し得る、画像層のパターン形成画像部に対応する領域であり、当該2以上の領域における活性光線透過率は、前記活性光線透過率Xよりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクフィルム、感光性樹脂印刷版の製造方法、及び感光性樹脂印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光性樹脂印刷版を製造する方法としては、所望の印刷パターン形成させるためのレリーフ露光用の画像層であるネガフィルムと、バック露光用のマスクフィルムとを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
前記感光性樹脂印刷版の製造方法においては、支持体と感光性樹脂組成物層からなる印刷版用感光性樹脂構成体の支持体側にマスクフィルムを、感光性樹脂組成物層側にネガフィルムを各々配置し、先ず、マスクフィルム側からバック露光してシェルフを形成し、続いてネガフィルム側からレリーフ露光して印刷パターンを形成する工程を有する。
また、画像層として前記ネガフィルムに代替して赤外線アブレーション層を用いる製造技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−116852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、所望の印刷パターンが得られないことがある。
例えば、画像層が、幅広い網点率の網点パターンを形成するパターン形成画像部を含む場合、低い網点率のパターン(ハイライト部)を形成するためのレリーフ露光エネルギーは、高い網点率のパターン(シャドウ部)を形成するために必要とされるレリーフ露光エネルギーよりも多く必要とされる。
これは、画像層の低網点率パターン形成用領域の活性光線透過率が、高網点率パターン形成用領域の活性光線透過率よりも小さく、高い網点率のパターンに比べてレリーフ露光に用いられる活性光線の反射や吸収によるエネルギーロスが大きいことに起因するものであると推考される。
【0005】
図1に、支持体12と感光性樹脂組成物層10からなる印刷版用感光性樹脂構成体の支持体12側に、活性光線透過部14と活性光線遮蔽部15とを具備するマスクフィルム13を、感光性樹脂組成物層側に画像層となるネガフィルム16を、それぞれ配置した概略構成図を示す。
図1中、領域17は、比較的低い網点率のパターン形成領域を示しており、領域18は、比較的高い網点率のパターン形成領域を示している。
例えば、ハイライト部を形成するのに必要とされる多い露光エネルギーに合わせて照射すると、図1に示すように、所望の網点率のシャドウ部を形成するための露光エネルギー量よりも過剰なエネルギーが照射されてしまい、図1中の印刷パターン11dに示すように、結果として所望の網点率よりも大きい網点率になってしまったり、網点間の空間の深度が浅くなったり、網点同士が接続されてしまったりしてしまったり、という画像形成不良が発生する。
【0006】
一方、シャドウ部を形成するのに必要とされる少ない露光エネルギーに合わせると、図2に示すように、所望のハイライト部を形成するために必要とされる露光エネルギーが与えられず、図2中の印刷パターン21cに示すように、未硬化部が発生してしまうという画像形成不良が発生する。
また、低い網点率のパターンを幅2mm程度以下の凸パターン、高い網点率のパターンを幅2mm程度以下のパターンに形成する場合には、十分に鮮明な画像形成が行われないおそれがある。
【0007】
そこで本発明においては、種々の印刷パターンを所望の形状に、露光・硬化可能な、バック露光用のマスクフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、それぞれ異なる3つ以上の活性光線透過率の領域を有するマスクフィルムを用いることによって、上記の目的を達成し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は下記の通りである。
【0009】
〔1〕
活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域を有するマスクフィルム。
〔2〕
前記活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域のうちの、1つの領域の活性光線透過率が活性光線透過率Xであり、
当該活性光線透過率Xの領域は、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物の露光工程において共に用いられる画像層の非画像部に対応する領域であり、
前記活性光線透過率Xの領域以外の、2つ以上の領域は、前記画像層を介してフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に活性光線を照射したときに、2種以上の印刷パターンを形成し得る、画像層のパターン形成画像部に対応する領域であり、当該2以上の領域における活性光線透過率は、前記活性光線透過率Xよりも高い前記〔1〕に記載のマスクフィルム。
〔3〕
前記画像層のパターン形成画像部の面積が36mm2以上の場合は、対応するマスクフィルムの領域が、当該パターン形成用画像部の領域よりも、外周幅にして0.5mm以上10mm以下大きく領域を選択し、
前記パターン形成画像部の面積が36mm2未満の場合は、対応するマスクフィルムの領域が当該パターン形成画像部の領域よりも、外周幅にして1mm以上20mm以下大きく領域を選択した前記〔2〕に記載のマスクフィルム。
〔4〕
前記画像層のパターン形成画像部が、2種以上の網点率のパターンを形成する網点パターン形成画像部を有している前記〔2〕又は〔3〕に記載のマスクフィルム。
〔5〕
前記網点パターン形成画像部が、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率50%未満の印刷パターンを形成するための網点パターン形成画像部を2種以上含み、
当該2種以上の網点パターン形成画像部に対応するマスクフィルムの各領域の活性光線透過率が、それぞれ下記式(I)を満たす前記〔4〕に記載のマスクフィルム。
活性光線透過率(%)
=100(%)−対応する網点パターン形成画像部の網点率(%)・・・(I)
〔6〕
前記マスクフィルムが、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C1の領域、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%以上50%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C2の領域、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率50%以上の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C3の領域、
からなる群より選択される少なくとも2種類以上の活性光線透過率の領域を有し、
各活性光線透過率C1〜C3、及び前記活性光線透過率Xが、下記式(II)を満たす前記〔4〕に記載のマスクフィルム。
活性光線透過率C1>活性光線透過率C2
>活性光線透過率C3>活性光線透過率X・・・(II)
〔7〕
対応する前記画像層の前記パターン形成画像部が、
幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部と、
幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部と、
を含み、
前記幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率が、
前記幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率よりも低い前記〔2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のマスクフィルム。
〔8〕
少なくとも支持体、感光性樹脂組成物が、この順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置し、前記支持体側に、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のマスクフィルムを配置する工程と、
前記支持体側から前記マスクフィルムを介して、前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、
前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、
未露光部分を除去する現像工程と、
を、有する感光性樹脂印刷版の製造方法。
〔9〕
少なくとも、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のマスクフィルム、感光性樹脂組成物、がこの順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置する工程と、
前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、
前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、
未露光部分を除去する現像工程と、
を、有する感光性樹脂印刷版の製造方法。
〔10〕
2つ以上の異なる高さのシェルフと、
各シェルフ上に形成された印刷パターンと、
を、有する感光性樹脂印刷版。
〔11〕
前記印刷パターンが2種以上の異なる網点率の網点パターンを含み、
網点率が高い網点パターンの下のシェルフの高さが、網点率の低いパターンの下のシェルフの高さよりも低い前記〔10〕に記載の感光性樹脂印刷版。
〔12〕
前記印刷パターンが凹パターンと凸パターンとを含み、
前記凹パターンの下のシェルフの高さが、凸パターンの下のシェルフの高さよりも低い、前記〔10〕又は〔11〕に記載の感光性樹脂印刷版。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2種類以上の異なる形状の印刷パターンを、それぞれ所望の形状に露光・硬化させることを可能にするバック露光用のマスクフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のマスクフィルムを用い、露光エネルギーを多くした場合の露光パターンの概略断面図を示す。
【図2】従来のマスクフィルムを用い、露光エネルギーを少なくした場合の露光パターンの概略断面図を示す。
【図3】本実施形態のマスクフィルムの一例の概略図を示す。
【図4】本実施形態のマスクフィルムの一例と、画像層との対応関係を説明するための概略図を示す。
【図5】本実施形態のマスクフィルムを用いてバック露光を行った場合に形成されるシェルフの一例の概略断面図を示す。
【図6】本実施形態のマスクフィルムを用いてバック露光を行った場合に形成されるシェルフの他の一例の概略断面図を示す。
【図7】本実施形態のマスクフィルムを用いて得られるシェルフと印刷パターンの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、図を参照して詳細に説明する。
なお、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
また、各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
さらに、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0013】
〔マスクフィルム〕
本実施形態のマスクフィルムは、活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域を有している。
図3は、本実施形態のマスクフィルムの概略図を示す。
マスクフィルム31は、所定の領域に、第1の活性光線透過率の領域32、第2の活性光線透過率の領域33、第3の活性光線透過率の領域34を具備しており、これらの領域32〜34は、それぞれの活性光線透過率が異なっている。
「活性光線」とは、感光性樹脂組成物を硬化させることができる光線を意味し、具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、及び太陽光等が挙げられる。
「活性光線透過率」とは、前記活性光線の照射強度を100としたときの、透過光強度の数値を言う。
具体的には、使用する活性光線の光源と活性光線測定器の間に被測定物を配置したときに得られる強度を、使用する活性光線の光源と活性光線測定器の間に何も配置しないときに得られる強度で割った値を100倍した値である。
【0014】
マスクフィルムの材料としては、厚さ50μm〜200μmのポリエステルフィルムが好適に使用可能であるが、特に限定されるものではない。
【0015】
前記マスクフィルムに、所定の活性光線透過率を有する領域を形成する方法を下記に挙げるが、これらに限定されるものではない。
(1)所望の活性光線透過率となる網点率の網点画像をマスクフィルムの所定領域に形成する方法。
(2)活性光線に吸収を有する活性光線吸収剤をマスクフィルムの所定領域に含有させる方法。
(3)皮膜を形成することが可能な樹脂の中に活性光線吸収剤を分散させた塗料をマスクフィルムの所定領域に塗布する方法。
(4)マスクフィルム表面の所定領域を粗面化することにより照射された光を散乱させ、所望の活性光線透過率の領域を得る方法。
(5)活性光線に対する透過部と遮光部とを作製することが可能な銀塩フィルム、サーマルフィルム、インクジェットフィルム等にデジタルデータをマスクフィルムの所定領域に直接描画することで活性光線透過領域と活性光線遮蔽領域からなる網点画像を形成する方法。
【0016】
前記活性光線吸収剤としては、可視光領域から紫外光領域に吸収を有する染料又は紫外線吸収剤、特に波長300nm〜400nmの領域の光に吸収を有する材料が好ましい。
活性光線吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、クロム酸鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、アリザニンレーキ、ベンジジンイエロー、ナフトールオレンジ、クロセインスカーレット、レークレッド、ローダミン等の染料又は顔料、さらにはベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本実施形態のマスクフィルムは、その一例として、前記活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域のうちの、1つの領域の活性光線透過率が活性光線透過率Xであるものが挙げられる。
前記活性光線透過率Xの領域は、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物の露光工程において共に用いられる画像層の非画像部に対応した領域に相当する。
前記活性光線透過率Xの領域以外の、その他の2つ以上の領域は、前記活性光線透過率Xよりも高い、各々異なる活性光線透過率を有している。
前記活性光線透過率Xの領域以外の、その他の2つ以上の領域は、前記画像層を介してフレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に活性光線を照射したときに、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に2種以上の異なる印刷パターンを形成し得る、画像層のパターン形成画像部に対応した領域に相当する。
【0018】
前記「画像層」とは、当該画像層を介して感光性樹脂組成物に活性光線を照射したときに、所望の印刷パターンを形成させるものである。具体的にはパターン形成画像部と非画像部とを有する層である。
例えば、パターン形成画像部と非画像部とを有するネガフィルムや、赤外線アブレーションすることで所望のパターン形成画像部を形成する赤外線アブレーション層等が挙げられる。
前記「パターン形成画像部」とは、前記画像層において、当該パターン形成画像部を介してフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に活性光線を照射し硬化させたときに、感光性樹脂組成物に所望の硬化パターンを形成し、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に印刷パターンを形成し得る、画像層の構成部分である。形成される印刷パターンは、所定の網点率の網点パターン、凸パターン、凹パターンに大別される。網点パターンとは単位面積当たりに規則的に配置された特定形状の印刷パターンを意味する。また、網点率とは、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に形成された単位面積当たりの凸部の割合(0〜100%)を意味する。前記凸パターンとは、印刷版から被印刷体に転写されたインク等によって被印刷体に目的の画像を形成し得るパターンを意味し、具体的には罫線、細線、ベタ、独立点、文字パターン等が挙げられる。前記凹パターンとは、印刷版から被印刷体に転写されたインク等によって、インクが転写されなかった部分が目的の画像を形成し得るパターンを意味し、具体的には白抜き罫線、白抜き細線、白抜き文字等が挙げられる。
前記「非画像部」とは、前記画像層において、当該非画像部を介してフレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に活性光線を照射しても活性光線がフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に実質的に到達せず、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に硬化パターンが形成されない画像層の構成部分である。
なお、画像層の前記パターン形成画像部は、活性光線を実質的に透過しない「活性光線の遮蔽部」を具備しているが、これは画像の一部を形成し得る部分(例えば網点画像の白抜き部分に相当する部分)である点において、前記非画像部とは区別される。
【0019】
図4は、マスクフィルム31と画像層45との対応関係の一例を説明する概略図を示す。
本明細書中、マスクフィルムと画像層との「対応」については、両者が共通の感光性樹脂印刷版の作製工程において用いられ、図4中の破線に示すように感光性樹脂組成物を介して立体的に、互いの所定の位置が略重なる関係にあることを言う。
具体的に、図4においては、マスクフィルムの活性光線透過率Xの領域は、画像層の非画像部48に対応し、マスクフィルムの第1の活性光線透過率の領域42は、画像層の高網点率パターン形成領域46に対応し、マスクフィルムの第2の活性光線透過率の領域43は、画像層の低網点率パターン形成領域47に対応している。
【0020】
本実施形態のマスクフィルムを構成する活性光線透過率Xの領域は、画像層の非画像部に対応していれば特に制限されるものではない。
例えば、図5に示すように、活性光線透過率Xの領域56、第1の活性光線透過率の領域54、第2の活性光線透過率の領域55を有するマスクフィルム53を介して、感光性樹脂組成物層50に硬化部51を形成させたとき、活性光線透過率Xの領域は、実質的に活性光線が透過せず、硬化部51を形成しないようにしてもよく、図6に示すように、各硬化部51を連結する厚さ0.1mm〜2mm程度の薄い硬化部を形成するようにしてもよい。
なお、図5、図6の硬化部51は、シェルフに相当する。
「シェルフ」とは、印刷パターンが存在する側とは反対側に存在し得る、一定の厚みを有する土台となる層を意味する。具体的には、画像層のパターン形成画像部を介して感光性樹脂組成物に活性光線を照射せしめて得られる印刷パターンを支える感光性樹脂組成物の硬化物層である。
【0021】
画像層の非画像部に対応した、マスクフィルムの活性光線透過率Xの領域、及び画像層のパターン形成画像部に対応した、所定の活性光線透過率の領域の大きさは、それぞれ、画像層の非画像部、及びパターン形成画像部に対応していれば特に制限されないが、前記画像層のパターン形成画像部の面積が36mm2以上の場合は、対応するマスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域が、当該パターン形成画像部の領域よりも、外周幅にして0.5mm以上10mm以下大きく選択され、前記パターン形成画像部の面積が36mm2未満の場合は、対応するマスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域が、当該パターン形成画像部の領域よりも、外周幅にして1mm以上20mm以下大きく選択されることが、印刷パターンを支えるシェルフを適切に形成し得る観点から好ましい。
すなわち、図4を示して上述したマスクフィルムと画像層の対応関係は、互いの所定領域が完全に一致していることを要求するものではなく、最終的に目的とする印刷版の印刷パターンとシェルフを実用上良好なものにするために適宜調整することができる。
また、上述したように、上記画像層のパターン形成画像部に対応するマスクフィルムの所定の領域以外の領域であって、画像層の非画像部に対応するマスクフィルムの領域は、活性光線透過率Xの領域であることが好ましい。
画像層のパターン形成画像部の形態によっては、対応するマスクフィルムの所定の領域の活性光線透過率の定義が重複し、2通りの活性光線透過率を採用し得る場合があるが、該重複部分の活性光線透過率には、適宜設定することが可能である。例えば、それぞれの活性光線透過率の平均値を採用することや、いずれかの活性光線透過率を採用することが可能である。設計上簡易に所望の印刷パターンを形成する観点からは、相対的に高い活性光線透過率を採用することが好ましい。
【0022】
画像層のパターン形成画像部が、2種以上の網点率のパターンを形成する網点パターン形成画像部を有することにより、効果的に所望の形状の印刷パターンを形成し得える。
なお、上記のように画像層のパターン形成画像部が、2種以上の網点率のパターンを形成する網点パターン形成画像部を有している場合、当該網点パターン形成画像部の領域に対応するマスクフィルムの領域は、前記網点率に応じて選択される活性光線透過率を有しているものとする。
また、画像層が、網点画像以外の画像を形成する領域を有する場合、当該領域に対応するマスクフィルムの活性光線透過率は、前記2種以上の網点率のパターンを形成する網点パターン形成画像部に対応する領域のマスクフィルムの活性光線透過率と同一又は異なる値を、適宜設定することができる。
【0023】
次に、本実施形態のマスクフィルムについて、具体的な形態例を挙げて説明する。
<第1の形態のマスクフィルム>
第1の形態のマスクフィルムは、対応関係にある画像層のパターン形成画像部が、前記網点パターン形成画像部を有し、かつ当該網点パターン形成画像部が、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に、網点率50%未満の印刷パターンを形成するための網点パターン形成画像部を2種以上含んでいるものとし、当該2種以上の網点パターン形成画像部に対応するマスクフィルムの各領域の活性光線透過率が、それぞれ、記式(I)を満たしているものとする。
活性光線透過率(%)
=100(%)−対応する網点パターン形成画像部の網点率(%) ・・・(I)
このようにマスクフィルムの所定の領域の活性光線透過率を選択することにより、2種類以上の網点率50%未満の印刷パターンを、後述する理由により、効果的に形成し得る。
【0024】
前記式(I)を満たすマスクフィルムを用いてバック露光を行うことにより、図7に示すように、網点率が相対的に低い印刷パターン、すなわち画像層77の低網点率パターン形成領域78を介して露光形成される印刷パターンを支えるシェルフ(符号71a)の高さを、相対的に網点率の高い印刷パターン、すなわち画像層77の高網点率パターン形成領域79を介して露光形成される印刷パターンを支えるシェルフ(符号71b)の高さよりも、相対的に高く形成することが可能になる。
【0025】
上述のようにマスクフィルムの所定の領域の活性光線透過率を、式(I)を満たすようにすることにより、画像層側から照射する活性光線の照射エネルギーを、(活性光線の反射や吸収によるエネルギーロスが大きい)相対的に低い網点率の印刷パターンを所望の形状に形成し得るような、照射エネルギーに合わせても、相対的に高い網点率の印刷パターンが、所望の網点率よりも大きい網点率になってしまったり、網点間の空間の深度が浅くなったり、網点同士が接続されてしまったりする、という画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
また、画像層側から照射する活性光線の照射エネルギーを、相対的に高い網点率の印刷パターンを所望の形状に形成し得るような照射エネルギーに合わせても、相対的に低い網点率の印刷パターンを形成するために必要とされる露光エネルギーが十分に与えられずに未硬化部が発生してしまうという、画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
画像層の網点パターン形成画像部に対応するマスクフィルムの領域の画像は、上記式(I)を満たす網点率の画像であれば特に制限されないが、対応する網点パターン形成画像部の網点画像の活性光線の透過部と活性光線の遮蔽部を反転させた網点画像とすることが、マスクフィルム側の網点画像を簡易に形成し得る観点から好ましい。
【0026】
<第2の形態のマスクフィルム>
第2の形態のマスクフィルムは、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C1の領域;
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%以上50%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C2の領域;
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率50%以上の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C3の領域;
からなる群より選択される少なくとも2種類以上の領域を有し、
各活性光線透過率C1〜C3、及び活性光線透過率Xが、下記式(II)を満たすマスクフィルムである。
活性光線透過率C1>活性光線透過率C2
>活性光線透過率C3>活性光線透過率X・・・(II)
上記式(II)を満たすマスクフィルムを用いることにより、少なくとも2種類以上の範囲の網点率の印刷パターンを効果的に形成することができる。
【0027】
上記式(II)を満たすマスクフィルムを用いてバック露光を行うことにより、図7に示すように、網点率が相対的に低い印刷パターン、すなわち画像層77の低網点率パターン形成領域78を介して露光形成される印刷パターンを支えるシェルフ(符号71a)の高さを、相対的に網点率の高い印刷パターン、すなわち画像層77の高網点率パターン形成領域79を介して露光形成される印刷パターンを支えるシェルフ(符号71b)の高さよりも相対的に高く形成することが可能になる。
【0028】
上述のようにマスクフィルムの活性光線透過率を、式(II)を満たすように選択することにより、結果として、画像層側から照射される活性光線の照射エネルギーを、(活性光線の反射や吸収によるエネルギーロスが大きい)相対的に低い網点率の印刷パターンを所望の形状に形成し得るような照射エネルギーに合わせても、相対的に高い網点率の印刷パターンが、所望の網点率よりも大きい網点率になってしまったり、網点間の空間の深度が浅くなったり、網点同士が接続してしまったりするという各種画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
また、画像層側から照射される活性光線の照射エネルギーを、相対的に高い網点率の印刷パターンを所望の形状に形成し得るような照射エネルギーに合わせても、相対的に低い網点率の印刷パターンを形成するために必要とされる露光エネルギーが十分に与えられず、未硬化部が発生してしまうという画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
【0029】
<第3の形態のマスクフィルム>
第3の形態のマスクフィルムは、
対応する前記画像層の前記パターン形成画像部が、
幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部と、
幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部と、
を含んでいるものとし、
前記幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率が、
前記幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率よりも低いマスクフィルムである。
【0030】
上記要件を満たすマスクフィルムによれば、画像層を介してフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に活性光線を照射して、フレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に、幅2mm以下の凹パターンと幅2mm以下の凸パターンの両方を形成せしめようとしたときに、該凹パターンを支えるシェルフの高さを、該凸パターンを支えるシェルフの高さよりも低く形成せしめることが可能となる。
凹パターンを支えるシェルフの高さを、凸パターンを支えるシェルフの高さよりも低く形成せしめることにより、画像層側から照射される活性光線の照射エネルギーを、(活性光線の反射や吸収によるエネルギーロスが大きい)幅2mm以下の凸パターンを所望の形状に形成し得るような照射エネルギーに合わせても、幅2mm以下の凹パターンが、所望の凹パターンよりも狭いパターンになってしまったり、凹パターンの空間の深度が浅くなったり、凹パターンを形作る凸部同士が接続し画像が潰れてしまったり、という画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
また、画像層側から照射される活性光線の照射エネルギーを、幅2mm以下の凹パターンを所望の形状に形成し得るような照射エネルギーに合わせても、幅2mm以下の凸パターンを形成するために必要とされる露光エネルギーが十分に与えられず、未硬化部が発生してしまうという画像形成不良の発生を抑制することが可能になる。
凹パターン及び凸パターンが幅2mm以下であれば、上記画像形成不良の発生の抑制に効果を奏するが、好ましくは凹パターン及び凸パターンが幅1mm以下の場合、さらに好ましくは凹パターン及び凸パターンが0.5mm以下の場合、さらに効果を奏する傾向にある。
なお、画像層が凹パターン形成画像部及び凸パターン形成画像部以外の画像領域を有する場合、該領域に対応するマスクフィルムの活性光線透過率は、前記凹パターン形成画像部及び凸パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率と同一又は異なる値を適宜設定することが可能である。
【0031】
〔感光性樹脂印刷版の製造方法〕
上述した本実施形態のマスクフィルムは、上述したような所定の画像層(ネガフィルム、アブレーション層等)と組み合わせ、感光性樹脂組成物に所定のパターンを露光形成することにより、感光性樹脂印刷版を作製できる。
(第1の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法)
第1の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、少なくとも支持体(ベースフィルム)、感光性樹脂組成物がこの順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の、感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置し、前記支持体側に本実施形態のマスクフィルムを配置する工程と、支持体側から前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、未露光部分を除去する現像工程と、を有する。
第1の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法によれば、図7に示すように、2種以上の印刷パターン71c、71dと、当該印刷パターンに応じて高さの異なるシェルフ71a、71bとを有する感光性樹脂印刷版を製造することができる。
また、第1の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法によれば、所望の形状に硬化させるために必要な活性光線のエネルギーが異なっている2種以上の印刷パターンを、画像形成不良を生じることなく、所望の形状に露光・硬化させ、形成することができる。
【0032】
本実施形態の第1の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法において、印刷版用感光性樹脂構成体としては、支持体(ベースフィルム)、感光性樹脂組成物、が積層されたものであれば特に制限されず、必要に応じて感光性樹脂組成物の層から見て支持体(ベースフィルム)が存在しない側に、所定の保護フィルムが存在していてもよいし、保護フィルム上にさらに所定のカバーフィルムが存在していてもよい。
カバーフィルムが存在する場合は、カバーフィルムを剥離してから画像層を配置することが好ましい。
使用する感光性樹脂組成物が液状の感光性樹脂組成物の場合、保護フィルムを有していることが好ましい。
また、感光性樹脂組成物の層が2種類の感光性樹脂組成物の層の積層体であってもよく、感光性樹脂組成物の層とベースフィルムとの間に所定の粘着層や接着層を有していてもよい。
画像層を配置する工程の後に、画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射する工程が実施され、マスクフィルムを配置する工程の後にベースフィルム側から前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射する工程が実施され、画像層側およびマスクフィルム側からの活性光線照射工程の後に未露光部分を除去する現像工程が実施されれば、その順序は特に制限されない。
【0033】
(第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法)
第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、少なくとも本実施形態のマスクフィルム、感光性樹脂組成物が、この順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置する工程と、前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、未露光部分を除去する現像工程とを有する。
【0034】
第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、本実施形態のマスクフィルムがベースフィルム(支持体)としての役割も担っている。
本実施形態の第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、印刷版用感光性樹脂構成体が、本実施形態のマスクフィルム、感光性樹脂組成物、が積層されたものであれば特に制限されず、必要に応じて感光性樹脂組成物の層から見てマスクフィルムが存在しない側に保護フィルムが存在していてもよいし、保護フィルム上にさらにカバーフィルムが存在していてもよい。カバーフィルムが存在する場合は、カバーフィルムを剥離してから画像層を配置することが好ましい。
使用する感光性樹脂組成物が液状の感光性樹脂組成物の場合、保護フィルムを有していることが好ましい。
また、感光性樹脂組成物の層が2種類の感光性樹脂組成物の層の積層体であってもよく、感光性樹脂組成物の層とマスクフィルムとの間に粘着層や接着層を有していてもよい。
画像層を配置する工程の後に、画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射する工程が実施され、マスクフィルムを配置する工程の後に前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射する工程が実施され、画像層側及びマスクフィルム側からの活性光線照射工程の後に未露光部分を除去する現像工程が実施されれば、その順序は特に制限されない。
【0035】
(本実施形態の感光性樹脂印刷版の製造方法に用いる部材、材料)
上述した第1の形態及び第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法に用いる部材や材料について説明する。
<感光性樹脂組成物>
感光性樹脂組成物は、活性光線を照射することで硬化が可能であれば特に制限されず、固体状の感光性樹脂組成物であってもよいし、液状の感光性樹脂組成物であってもよい。
感光性樹脂組成物の層の厚みは、最終的に印刷版として実用上十分な厚さが確保できれば、特に限定されるものではなく、通常0.5mm〜10mmの範囲であることが好ましい。
本実施形態のマスクフィルムを用いたバック露光によって、図7に示すように、印刷パターン(71c、71d)に応じてシェルフ(71a、71b)の高さを相対的に異ならせることにより、2種類以上の異なる形状の印刷パターンをそれぞれ所望の形状に形成できる効果を確実に発揮する観点から2mm〜10mmであることがより好ましく、3.5mm〜10mmであることがさらに好ましい。
【0036】
[固体状の感光性樹脂組成物]
前記固体状の感光性樹脂組成物としては、例えば、熱可塑性エラストマーや天然ゴムや親水性共重合体等のポリマーと重合性モノマーと光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記熱可塑性エラストマーとは、20℃でゴム弾性を示し、塑性変形し難く、押出機等で組成物を混合する際に熱により可塑化するエラストマーを意味する。
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・イソプレンブロックコポリマー、スチレン・エチレン/ブチレンブロックコポリマー等が挙げられる。
すなわち、少なくとも1つの共役ジエンユニットもしくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする第1の重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする第2の重合体ブロックとを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体;EPDM(エチレンプロピレンゴム)、プロピレン・エチレン/プロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;フッ素系熱可塑性エラストマー;シリコン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲で、共役ジエンブロックの完全水素添加物のスチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体や、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体等を併用してもよい。
【0038】
感光性樹脂組成物の材料としては、少なくとも1つの共役ジエンユニットもしくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1つのビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする重合体ブロックとを含む熱可塑性エラストマーブロック共重合体、及び/又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)、プロピレン・エチレン/プロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系熱可塑性エラストマーが、良好な成形性を得る観点から好ましい。
なお、本明細書中において、「主体とする」とは、重合体ブロック中に50質量%以上含有されていることを意味し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0039】
感光性樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマーの含有量は、印刷版用感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性を確保する観点から、感光性樹脂組成物の全量を100質量%としたとき、50質量%以上が好ましく、印刷版用感光性樹脂構成体の良好な成形性を確保する観点から95質量%以下が好ましい。
また、上記観点から、60質量%以上90質量%以下の範囲がより好ましく、70質量%以上90質量%以下の範囲がさらに好ましい。
【0040】
前記熱可塑性エラストマーを構成する共役ジエンユニットを主体とする重合体ブロックが、例えばビニル芳香族炭化水素−ブタジエンのブロック共重合体である場合、これを構成する共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素は、均一に分布していてもよく、不均一(例えばテーパー状)に分布していてもよい。
均一に分布した部分及び/又は不均一に分布した部分は、各共重合体ブロック中において複数個共存していてもよい。
前記熱可塑性エラストマーを構成するブロック共重合体としては、例えば、下記の一般式群(1)で表される直鎖状ブロック共重合体、又は下記の一般式群(2)で表される直鎖状ブロック共重合体若しくはラジアルブロック共重合体を包含するものが挙げられる。
(A−B)n、A−(B−A)n、A−(B−A)n−B、B−(A−B)n・・・(1)
[(A−B)km−X、[(A−B)k−A]m−X、[(B−A)km−X、[(B−A)k−B]m−X・・・(2)
Aは、ビニル芳香族炭化水素ユニットを主体とする重合体ブロックを示す。
Bは、1つの共役ジエンユニット若しくは共役ジエンユニット水素添加物を主体とする重合体ブロックを示す。
Xは、四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、ポリハロゲン化炭化水素化合物、カルボン酸エステル化合物、ポリビニル化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、アルコキシシラン化合物、ハロゲン化シラン化合物、エステル系化合物等のカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基からなる群より選ばれるいずれかを示す。
なお、上記式中、n、k及びmは1以上の整数を示し、例えば1〜5である。
【0041】
前記熱可塑性エラストマーを構成する共役ジエンユニットとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3―ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンの単量体が挙げられる。
特に、最終的に目的とする感光性樹脂印刷版の耐摩耗性の観点から、1,3−ブタジエンが好ましい。これらの共役ジエンユニットは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記熱可塑性エラストマーを構成する共役ジエンを主体とする重合体ブロックの、共役ジエン総量中のビニル含有量、例えば、1,2−ブタジエンや3,4−イソプレンの含有量は、特に限定されない。
【0043】
また、前記共役ジエンユニット水素添加物とは、共役ジエンユニットの水素添加物を意味し、水素添加方法については特に限定されない。
上述した共役ジエンユニットの水素添加物は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記熱可塑性エラストマーを構成する前記ビニル芳香族炭化水素ユニットとしては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、p−メチルスチレン、第三級ブチルスチレン、α−メチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等の単量体が挙げられる。特に、感光性樹脂構成体を比較的低温で平滑に成型できる観点から、スチレンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記熱可塑性エラストマーを構成するブロック共重合体全体、すなわち上記一般式群(1)、(2)に示すような、重合体ブロックAとBの双方を含むブロック共重合体中におけるビニル芳香族炭化水素ユニットの含有量は、感光性樹脂構成体の良好な成形性を確保する観点から、25質量%以下が好ましい。
一方において、感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性が高いという観点から、ビニル芳香族炭化水素ユニットの含有量は、13質量%以上が好ましい。ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素ユニットの含有量は、紫外線分光光度計(例えば、日立製作所製UV200)を用いて波長262nmに対する吸収強度を測定することにより求められる。
【0046】
前記熱可塑性エラストマーとして、オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる場合は、目的とする感光性樹脂印刷版について、高解像度特性を得る観点から、エチレンユニット成分が50質量%以上90質量%以下であり、かつジエンユニット成分が10質量%以下であるものが好ましい。さらには、エチレンユニット成分が60質量%以上80質量%以下であり、かつジエンユニット成分が5質量%以下であることがより好ましい。
エチレンユニット成分やジエンユニット成分の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定できる。
【0047】
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される熱可塑性エラストマーの数平均分子量(Mn)は、感光性樹脂構成体の耐コールドフロー性を確保する観点から、2万〜25万が好ましく、3万〜20万がより好ましく、4万〜15万がさらに好ましい。
数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算分子量である。
【0048】
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される熱可塑性エラストマーは、軟化温度が50℃以上250℃以下であることが好ましく、60℃以上250℃以下であることがより好ましく、80℃以上200℃以下であることがさらに好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらにより好ましい。
軟化温度が50℃以上であれば、常温下で固体であるため、シート状や円筒状に加工したものを変形させることなく容易に取り扱うことができる。
また軟化温度が250℃以下であると、通常の加工装置によりシート状や円筒状に加工でき、さらには混合する他の化合物の変質や分解を防止できる。
軟化温度は、動的粘弾性測定装置により測定できる。具体的には対象物の温度を室温から上昇させ、粘性率が大きく変化する(粘性率曲線の傾きが変化する)最初の温度により定義する。
【0049】
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される親水性共重合体は、水溶性又は水膨潤性を有し、カルボン酸基、アミン若しくはアミノ基、水酸基、燐酸基、スルフォン酸基等の親水性基、又はそれらの塩を有することが好ましい。
例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、カルボキシル基を含有する脂肪族共役ジエンの重合体、燐酸基、又はカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルフォン酸基を含有するポリウレタン等が挙げられる。これらの親水性共重合体は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
親水性共重合体は、ゲル分率が高いほど感光性樹脂印刷版としての耐摩耗性を高めるため好ましく80%〜99%が好適である。
前記ゲル分率は、親水性共重合体の重合後の濃度が約30%の分散液をテフロン(登録商標)シート上に適当量滴下し、130℃で30分乾燥させ、乾燥物を0.5g取り、25℃のトルエン30mLに浸漬させ、振とう機を用いて3時間浸透させた後320SUSメッシュでろ過し、不透過分を130℃で1時間乾燥させた後の質量を0.5gで割った質量分率(%)から求められる。
ゲル分率は、感光性樹脂印刷版の強度の観点からも80%以上が好ましい。
前記固体状の感光性樹脂組成物において、親水性共重合体と熱可塑性エラストマーを併用する場合、親水性重合体と熱可塑性エラストマーの存在比率は質量比率で1:3〜3:1の間であることが好ましく、1:2〜2:1の範囲であることがより好ましい。
この比率であれば、現像時間が短縮できるだけでなく、感光性樹脂構成体の耐吸湿性が保持され保管性の観点から好ましい。
【0050】
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される重合性モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ビニルトルエン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;N−置換マレイミド化合物等が挙げられる。
特に、種類の豊富さ、価格、赤外線加工性等の観点から、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体が好ましい。
上記重合性モノマーの含有量は、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、目的とする感光性樹脂印刷版の凸部において高い耐カケ性を得るという観点から、1質量%以上とすることが好ましく、感光性樹脂印刷版の高い柔軟性を得るという観点からは50質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上30質量%以下の範囲がより好ましく、4質量%以上20質量%以下の範囲がさらに好ましい。
重合性モノマーの数平均分子量(Mn)は、不揮発性確保の観点から100以上であり、ポリマー等の他成分との相溶性の観点から1000未満であることが好ましく、また、重合性モノマーは、重合性不飽和基を有する有機化合物であることが好ましい。
数平均分子量は、200以上800以下であることがより好ましい。
ここで、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したポリスチレン換算分子量であるものとする。
【0051】
前記固体状の感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤は、光のエネルギーを吸収し、ラジカルを発生する化合物であり、崩壊型光重合開始剤、水素引抜き型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ミヒラーケトン;ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン、トリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9−フェニルアクリジン;アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等のアゾ化合物類が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、0.1質量%〜10質量%の範囲とすることが好ましく、0.5質量%〜5質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0052】
市販の固体状の感光性樹脂組成物を有する印刷版用感光性樹脂構成体としては、旭化成イーマテリアルズ社製の「AFP」(登録商標)や「AWP」(登録商標)等が挙げられる。
【0053】
[液状の感光性樹脂組成物]
前記液状の感光性樹脂組成物としては、20℃においてプラストマーである樹脂と、上述した重合性モノマーと、上述した光重合開始剤とを含む感光性樹脂組成物が挙げられるがこれに制限されない。
【0054】
前記液状の感光性樹脂組成物に含有される20℃においてプラストマーである樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリイソプレン等の炭化水素類;アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;脂肪族ポリカーボネート、ポリカーボネートジオール等のポリカーボネート類;ポリジメチルシロキサン等のシリコン類;(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体の重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、適宜上記20℃においてプラストマーである樹脂の共重合体を用いてもよい。
上述した20℃でプラストマーである樹脂は、最終的に目的とする感光性樹脂印刷版の耐刷性の観点からウレタン結合を有していることが好ましく、さらに印刷版の印刷インキ耐性の観点からエーテル結合、カーボネート結合、エステル結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を有しているものが好ましい。
上記20℃でプラストマーである樹脂は、最終的に目的とする感光性樹脂印刷版の機械的物性を確保する観点から、分子内に重合性不飽和基を有している樹脂であることが好ましい。特に好ましい化合物としては、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有する樹脂が挙げられる。重合性不飽和基の含有数を1分子あたり平均で0.7以上とすることは、感光性樹脂印刷版の良好な機械強度を実現する観点から好適である。1分子あたり0.7以上が好ましく、1を超える量がより好ましい。
また、1分子あたりの重合性不飽和基数の上限については特に限定しないが、好ましい範囲としては20以下である。1分子あたりの重合性不飽和基数を20以下とすることは、感光性樹脂印刷版表面近傍でのクラック等の発生を抑制する観点から好適である。1分子あたりの平均重合性不飽和基の含有数は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
なお、上記において分子内とは、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合等も含まれる。また、重合性不飽和基とは、ラジカル又は付加重合反応に関与する重合性官能基である。
入手可能な市販の液状の感光性樹脂組成物を有する印刷版用感光性樹脂構成体としては、旭化成イーマテリアルズ社製の「APR」(登録商標)等が挙げられる。
【0055】
<補助添加成分>
上述した固体状の感光性樹脂組成物、及び液状の感光性樹脂組成物は、所望の機能に応じ、補助添加成分を含有してもよい。
補助添加成分としては、可塑剤、極性基含有ポリマー、熱重合防止剤、酸化防止剤、微粒子、界面活性剤、シリコンオイル等の表面処理剤、含フッ素モノマー、石油ワックス類、炭化水素鎖を有するモノマー、光ルミネセンスタグ(外部エネルギー源によって励起され、得られたエネルギーを光及び/又は放射線の形で放出する物質)、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、炭素系材料、染料・顔料等が挙げられる。
補助添加成分全成分の添加量は、感光性樹脂組成物全量を100質量%としたとき、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.5質量%〜40質量%であることがより好ましい。
【0056】
<支持体(ベースフィルム)>
前記支持体(ベースフィルム)としては、固体状又は液状の感光性樹脂組成物を支持することができるものであれば特に制限されるものではない。例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニルエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等、ニッケルやアルミニウム等の金属が挙げられる。
特に、厚さが75〜300μmの範囲である寸法安定なポリエステル樹脂が好ましい。
【0057】
<保護フィルム>
前記保護フィルムとしては、活性光線透過性のフィルムであり、感光性樹脂組成物の層とネガフィルム又は赤外線アブレーション層等の画像層との粘着を防止する機能を有しているものであれば特に制限されず、例えば、厚さが0.01μm〜0.5mmのポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタラートフィルム等が挙げられる。
【0058】
<カバーフィルム>
カバーフィルムは、感光性樹脂組成物の層や保護フィルムや画像層を覆うように配置されるものが好ましく、例えば厚さ0.1mm〜1mmのポリプロピレンフィルムやポリエチレンテレフタラートフィルム等が挙げられるがこれに制限されない。
【0059】
<画像層>
画像層には、ネガフィルム、赤外線アブレーション層が挙げられる。
赤外線アブレーション層としては、赤外線アブレーションされなかった領域は活性光線を遮蔽し、赤外線アブレーションされた領域は活性光線を透過するものであれば特に制限されず、例えばバインダーポリマーと赤外線吸収物質、及び活性光線遮蔽物質で構成される層であることが好ましい。
また、赤外線吸収物質と、活性光線遮蔽物質は同じでも異なっていてもよい。
赤外線吸収物質には通常750〜2000nmの範囲で強い吸収を持つ単体、あるいは化合物が使用される。その例として、カーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム等の無機顔料や、ポリフタロシアニン化合物、シアニン色素、金属チオレート色素等の色素類が挙げられる。特にカーボンブラックは粒径が13〜85nmの広い範囲で使用が可能であり、粒径が小さいほど赤外線に対する感度が高くなるため好ましい。これらの赤外線吸収材料は使用する赤外線レーザーで除去可能な感度を有する範囲で添加されることが好ましい。一般的には10〜80質量%の添加が効果的である。
活性光線遮蔽物質としては、紫外線吸収剤やカーボンブラック、グラファイト等が好適な例である。一般的に添加量は、光学濃度が2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上である。なお、カーボンブラックのように赤外線吸収と非赤外線遮蔽を兼ね備えたものはその材料として特に好ましい。これは先のバインダーポリマーから分離しない特長を表すため好適である。
【0060】
(本実施形態の感光性樹脂印刷版の製造方法に含まれる各工程)
上述した第1の形態及び第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法に含まれる各工程について説明する。
<画像層を配置する工程>
印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部を有する画像層を配置する。
この工程においては、本実施形態のマスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域が、対向して配置される画像層の2種以上のパターン形成画像部のうち、所定のパターン形成画像部に対応する位置に配置されれば特に制限されない。
なお、印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物と画像層との粘着による生産性低下を防止するために、感光性樹脂組成物と画像層との間に保護フィルムを配置することが好ましい。
先にマスクフィルムが配置された場合は、当該マスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域に対応する位置に、画像層の2種以上のパターン形成画像部のうち、上述したような所定のパターン形成画像部が、配置されるようにする。
【0061】
<マスクフィルムを配置する工程>
印刷版用感光性樹脂構成体の支持体(ベースフィルム)側に、本実施形態のマスクフィルムを配置する工程においては、画像層の2種以上のパターン形成画像部のうち、所定のパターン形成画像部に対応する位置に、マスクフィルムの上述した所定の活性光線透過率の領域が来るように配置されれば特に制限されず、印刷版用感光性樹脂構成体の支持体(ベースフィルム)と所定のガラス板との間に挟んで使用する方法や、所定のガラス板に貼り付ける方法や、所定のガラス板と所定の活性光線照射用光源との間の空間に、機械的に保持して配置する方法等が挙げられるがこれに制限されない。
先に画像層が配置された場合は、画像層の2種以上のパターン形成画像部のうち、上述したような所定のパターン形成画像部に対応する位置に、マスクフィルムの上述した所定の活性光線透過率の領域が来るように配置する。
【0062】
また、画像層の2種以上のパターン形成画像部のうち、所定のパターン形成画像部に対応する位置に、本実施形態のマスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域を配置する手段、あるいは本実施形態のマスクフィルムの所定の活性光線透過率の領域に、画像層の2種以上のパターン形成画像部のうちの、所定のパターン形成画像部を配置する手段としては、目視により位置合わせをする方法や、パターン形成画像部とマスクフィルムのパターンのデジタルデータを用いて機械的に位置合わせする方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
<活性光線照射工程(バック露光工程、レリーフ露光工程)>
本実施形態のマスクフィルムを介して活性光線を照射し、バック露光を行い、図7に示すように、感光性樹脂組成物にシェルフ71a、71bを形成する。
また、画像層を介して活性光線を照射し、レリーフ露光を行い、図7に示すように、感光性樹脂組成物に印刷パターン71c、71dを形成する。
活性光線は、感光性樹脂組成物を硬化せしめることが可能であれば特に制限されない。一般的には例えば波長200〜400nmの紫外線が広く用いられている。活性光線の強度も感光性樹脂組成物を硬化せしめることが可能であれば特に制限されないが、生産性の観点から3〜70mW/cm2の光が一般的に用いられる。
「露光工程」とは、感光性樹脂組成物層に活性光線を照射して、所望の印刷パターン又はシェルフを形成する工程である。
装置の仕様によって、活性光線の光源から画像層又はマスクフィルムを介して直接活性光線を照射してもよく、活性光線の光源と画像層(又はマスクフィルム)との間に活性光線を完全に遮断しない支持体や所定のフィルム(後述の感光性樹脂構成体の支持体や、感光性樹脂構成体自体を支持するガラス板等を含む)を介してもよい。
【0064】
<現像工程>
現像工程は、未露光部分を除去する工程であり、公知の方法が使用できる。
具体的には、(i)版を現像液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部を溶解、または掻き落とす現像方式、(ii)スプレー等で版面に現像液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解、又は掻き落とす現像方式、(iii)40〜200℃で樹脂を加熱することにより不織布等の基材で吸収させる基材接触式現像方式、(iv)ガスや流体により剪断力によって掻き落とす方式、等が挙げられる。
感光性樹脂印刷版の製造の際の現像方式は、前述の各方式を単独で行ってもよいし、2つ以上組み合わせて行ってもよい。
現像液としては、例えば有機溶剤や、界面活性剤を含む水系現像液等が挙げられる。
現像液は、未露光の感光性樹脂組成物を選択的に除去することができるものを適宜使用すればよい。
熱可塑性エラストマーを主体とする感光性樹脂組成物の場合は有機溶剤が現像液として好適であり、親水性共重合体を含む感光性樹脂組成物や20℃で液状の感光性樹脂組成物の場合、水系現像液が好適である。
有機溶剤としては、例えばヘプチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類;石油留分、トルエン、デカリン等の炭化水素類にプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合した溶媒;テトラクロルエチレン等の塩素系有機溶剤に、プロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類を混合した溶媒;等を使用することができ、好ましくは現像性の点から炭化水素類又は炭化水素類にアルコール類を混合した溶媒である。
界面活性剤を含む水系現像液としては、以下のものに限定されないが、例えばノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の界面活性剤を一種類以上含有するもの等が挙げられる。
【0065】
<後処理工程>
上述した第1又は第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法においては、必要に応じて後処理工程を行ってもよい。
後処理工程としては、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、太陽光等の活性光線源により処理する方法(以下、「後露光」と記す。)、熱処理法、電子線処理法が挙げられる。
特に生産性・コストの点から後露光を行うことが好ましい。
後露光方法としては、例えば、感光性樹脂印刷版の凹凸形状を持つ表面側を大気中で露光したり、水等の液体中で露光したりする方法等が挙げられ、版面汚れ持続性の点から、大気中で露光する方法が好ましい。
露光の際の強度は特に制限はないが、例えば1〜50mW/cm2が挙げられる。このときの露光強度はオーク製作所製のUV照度計MO−2型機でUV−35フィルターを用いた数値である。
後露光においては、少なくとも波長300nm以下の活性光線を、現像後の感光性樹脂組成物(感光性樹脂印刷版)の版面に露光処理することが好ましい。必要に応じて、300nm以上の活性光線を併用しても構わない。
これらの波長の異なる活性光線を併用する場合は、同時に露光処理しても、別々に露光処理しても構わない。
熱処理法としては、例えば感光性樹脂版や印刷版をヒーターや赤外線ヒーターで加熱したり、加熱オーブン中に入れたりする方法等が挙げられ、凹凸形状を持つ表面側の加熱温度としては、得られる感光性樹脂印刷版の固体維持性の点から40〜130℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。加熱する時間としては、特に限定されないが生産性の点から短い方が好ましい。
電子線処理方法としては、例えば感光性樹脂印刷版の凹凸形状を持つ表面側を、10〜5MeVの高エネルギー電子線照射装置や5MeV〜300keVの中エネルギー電子線照射装置、300keV未満の低エネルギー電子線照射装置で処理する方法等が挙げられ、低コストの点から低エネルギー電子線照射装置での処理が好ましい。
また、後処理工程は2つ以上を採用することも可能である。そのような実施形態の場合、後処理工程のうちの少なくとも一つを版面用処理液の付着後或いは付着と同時に行えば足りる。例えば、後露光を行った後、版面用処液を付着させ、その後熱処理を行うことも可能である。さらに、後処理工程の2つ以上を同時に行うことも可能である。例えば、加熱ヒーター中で後露光処理を行うこと、多量の赤外線と紫外線を同時に発するランプで熱処理と後処理を同時に行うことも可能である。
【0066】
〔感光性樹脂印刷版〕
本実施形態の感光性樹脂印刷版は、2つ以上の異なる高さのシェルフと、各シェルフ上に形成された印刷パターンとを有する感光性樹脂印刷版である。
本実施形態の感光性樹脂印刷版を製造する方法としては特に制限されないが、本実施形態のマスクフィルムを用いることが好ましく、上述した第1又は第2の形態の感光性樹脂印刷版の製造方法で製造されることがより好ましい。
本実施形態の感光性樹脂印刷版は、前記印刷パターンが2種以上の異なる網点率の網点パターンを含み、網点率が高い網点パターンの下のシェルフの高さが、網点率の低いパターンの下のシェルフの高さよりも低い感光性樹脂印刷版であることが好ましい。
また、他の一例として、前記印刷パターンが凹パターンと凸パターンを含み、凹パターンの下のシェルフの高さが、凸パターンの下のシェルフの高さよりも低い感光性樹脂印刷版であることも好ましい。
【実施例】
【0067】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
〔製造例1〕
<感光性樹脂組成物の製造>
1000gのポリ(3−メチル−1,5−ペンタンジオールアジペート)ジオール(水酸基価:37KOHmg/g)と、1000gのポリオキシエチレン(EO)−オキシプロピレン(PO)ブロック共重合ジオール(水酸基価:44KOHmg/g、EO含量30質量%)との混合物に対して、45ppmのジブチル錫ジラウレート(以下BTLと略して記載する)を加え40℃で均一になるまで攪拌し、次いで148.5gのトリレンジイソシアネート(以下TDIと略して記載する)を加えてさらに攪拌し、均一となったところで80℃まで昇温の後約4〜5時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー前駆体とした。
さらに、436.0gのポリ(オキシプロピレン)グリコールモノメタアクリレート(平均分子量380、以下PPMAと略して記載する)を加えて約2時間反応させた後、サンプルを一部取り出してIR分光測定器によりイソシアネート基消失を確認し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた数平均分子量が17000のポリウレタン系不飽和プレポリマーを得た。
得られた不飽和プレポリマー74質量部、ラウリルメタクリレート6質量部、ポリプロピレン(平均n=5)グリコールモノメタクリレート6質量部、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルアクリレート12質量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.75質量部、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン(ジメチルベンジルケタール)0.25質量部、ベンゾフェノン0.2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1質量部を混合し、60℃で2時間程度の攪拌混合を行うことによって、感光性樹脂組成物Aを得た。
得られた感光性樹脂組成物Aの20℃における粘度は80Pa・sであった。
なお、前記粘度は、温度20℃、湿度70%の恒温恒湿室内に一日放置し、同室内においてB形粘度計形式B8H(株式会社東京計器製)を用いて測定した。
【0069】
〔実施例1〕
<画像層の作製>
250μm、500μm、750μm、1000μmの線幅の凸部を形成するための凸パターン形成画像部と、250μm、500μm、750μm、1000μmの白抜き線幅の凹部を形成するための凹パターン形成画像部の両方を銀塩フィルム上に作製し、ネガフィルム(画像層)とした。
また、凸パターン形成画像部と凹パターン形成画像部は、それぞれ一辺が100mm(面積:10000mm2)のものと、一辺が5mm(面積:25mm2)のものの2種類を作製した(計16個の画像部を作製した)。
【0070】
<マスクフィルムの作製>
上述したネガフィルム(画像層)に対応するマスクフィルムとして、(1)ネガフィルムの凸パターン形成画像部に対応する領域に活性光線透過率が90%となるような平網画像領域(30〔lpi〕)を有し、(2)ネガフィルムの凹パターン形成画像部に対応する領域に活性光線透過率が60%となるような平網画像領域(30〔lpi〕)を有し、(3)それ以外の領域は活性光線透過率が0%であるマスクフィルムを作製した。
【0071】
また、ネガフィルム(画像層)のパターン形成画像部が、一辺100mmの領域である場合には、当該領域に対応するマスクフィルムの領域は一辺105mmとし、ネガフィルム(画像層)のパターン形成画像部が一辺5mmの領域である場合には、当該領域に対応するマスクフィルムの領域は一辺15mmとした。
【0072】
ここで、上記マスクフィルムの活性光線透過率は、後述の印刷版の製造で用いられる370nmに中心波長領域を有する紫外線蛍光灯に対するものであり、当該活性光線透過率は、オーク製作所社製の紫外線強度計「UV−MO2」にオーク製作所社製のフィルター「UV−35」を取り付けた測定器により測定した。
具体的には、紫外線蛍光灯と紫外線強度計の間に紫外線強度計の測定部全域を覆うようにマスクフィルムの測定したい箇所を配置したときに得られた強度の値を、紫外線蛍光灯と紫外線強度計の間に何も配置しないときに得られた強度の値で割り、100倍した値をマスクフィルムの各領域の活性光線透過率とした。
【0073】
<露光工程>
まず、AWF−110E(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製、製版機)の下面ガラスの上に、上記ネガフィルム(画像層)を配置し、ネガフィルム(画像層)上に、ポリエチレンフィルムをカバーフィルムとして配置した。
カバーフィルム上に、上述した〔製造例1〕で得られた感光性樹脂組成物Aを、厚さ7mmになるように配置した。
感光性樹脂組成物A上に片面粘着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを支持体として配置した。
支持体上に上記マスクフィルムの各領域がネガフィルム(画像層)の対応する領域に合致するように配置し、マスクフィルム上に上面ガラスを配置した。
AWF−110Eの上面ガラス側に備わっている紫外線蛍光灯を稼動させ、上面ガラスとマスクフィルムを介して感光性樹脂組成物層に833mJの紫外線を照射し、シェルフ層を形成した。
AWF−110Eの下面ガラス側に備わっている紫外線蛍光灯を稼動させ、下面ガラスとネガフィルムを介して感光性樹脂組成物層に330mJの紫外線を照射し、レリーフ層を形成した。
【0074】
<現像工程>
AWF−110W(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製、ドラム式スプレー現像機)に現像剤W−10(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製、アニオン界面活性剤水溶液)を1.5質量%、表面処理剤A−10(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製、ベンゾフェノン含有ノニオン界面活性剤水溶液)を0.5質量%、消泡剤SH−4(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製、シリコン系消泡剤)を0.3質量%加えた水溶液を作製した。
現像液温度30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間10分で現像を実施し、感光性樹脂印刷版を得た。
【0075】
<後露光工程>
紫外線蛍光灯、殺菌灯の双方を装備したAWF−I型後露光機(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製)の水槽に水を貯めて用いる水中後露光において、それぞれの光源から照射される露光量が感光性樹脂硬化物表面で2500mJ/cm2となる露光時間で、後露光を行った。
【0076】
<乾燥工程>
AWF−I型乾燥機(商標・旭化成イーマテリアルズ(株)製)を用いて、感光性樹脂印刷版表面の水分が無くなるまで約10分間乾燥を行った。
【0077】
<評価>
凸パターン、凹パターン共に、所望の形状を有する感光性樹脂印刷版が得られた。
また、凸パターンの下のシェルフ層の厚みは5.9mmであり、凹パターンの下のシェルフ層の厚みは4.9mmであった。
実施例1で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、凸パターンおよび凹パターンともに良好な印刷結果が得られた。
【0078】
〔実施例2〕
ネガフィルム(画像層)として、30〔lpi〕の網点率3.7%、6.0%、12.3%、18.1%、23.5%、34.2%、44.7%、54.2%、64.2%、74.4%、81.9%、91.7%、96.5%の網点パターン形成画像部(各々一辺が20mmの正方形の領域)をそれぞれ有するネガフィルムを用いた。
マスクフィルムとして、(1)ネガフィルム(画像層)の網点率が50%以上の網点パターン形成画像部に対応する領域には、ネガフィルムの網点パターン形成画像部の領域を、外周幅にして2mm広げた各領域に活性光線透過率が50%の平網画像領域(30lpi)を有し、(2)ネガフィルムの網点率が50%未満の網点パターン形成画像部に対応する領域には、当該ネガフィルムの網点画像パターンの領域を、外周幅にして2mm広げた各領域に活性光線透過率が下記式(I)の関係を満たす平網画像を有し、(3)それ以外の領域には網点率100%の画像領域を有するマスクフィルムを用いた。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂印刷版を得た。
活性光線透過率=100(%)−対応する網点形成画像部の網点率(%)・・・(I)
【0079】
〔実施例3〕
マスクフィルムとして、(1)ネガフィルム(画像層)の網点率が10%未満の網点パターン形成画像部に対応する領域には、当該ネガフィルムの網点パターン形成画像部を、外周幅にして2mm広げた領域に活性光線透過率が90%となるような平網画像を有し、(2)ネガフィルムの網点率が10%以上50%未満の網点パターン形成画像部に対応する領域には、当該ネガフィルムの網点パターン形成画像部を、外周幅にして2mm広げた領域に活性光線透過率が70%となるような平網画像を有し、(3)ネガフィルムの網点率が50%以上の網点パターン形成画像部に対応する領域には、当該ネガフィルムの網点パターン形成画像部を、外周幅にして2mm広げた領域に活性光線透過率が60%となるような平網画像を有し、(4)それ以外の領域(画像部の非画像部に対応した領域)には網点率100%の画像領域を有するマスクフィルムを用いた。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で感光性樹脂印刷版を得た。
感光性樹脂印刷版の網点画像はいずれの網点率においても良好に形成されていた。
実施例3で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、印刷不良は見られず、階調ムラのない良好なグラデーションパターンが印刷されていた。
【0080】
〔比較例1〕
この例においては、マスクフィルムを用いず、シェルフ層を形成するための照射光強度を、凸パターンのシェルフ層を形成するために最適な照射光強度に統一した。
すなわち、マスクフィルムを用いずに、シェルフ層を形成するための紫外線照射量を750mJ(幅250μmの凸パターンを形成するために最適なシェルフ層形成のための露光量)とし、及びレリーフ層を形成するための紫外線照射量を780mJにした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法により感光性樹脂印刷版を作製した。
<評価>
凸パターンは実施例1と同等のものが得られたが、凹パターンの白抜き深度が、実施例1よりも浅く不十分となった。
比較例1で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、凹パターンの白抜き線が所望の幅で印刷されない部分や、白抜き線が印刷されない部分が発生した。これら形成不良、印刷不良は、凹パターンの白抜き幅が狭い250μmのパターンで顕著に確認された。
【0081】
〔比較例2〕
この例においては、マスクフィルムを用いず、シェルフ層を形成するための照射光強度を、凹パターンのシェルフ層を形成するために最適な照射光強度に統一した。
すなわち、マスクフィルムを用いずに、シェルフ層を形成するための紫外線照射量を500mJ(幅250μmの凹パターンを形成するために最適なシェルフ層形成のための露光量)とし、レリーフ層を形成するための紫外線照射量を330mJにした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法により感光性樹脂印刷版を作製した。
<評価>
凹パターンは実施例1と同等のものが得られたが、凸パターンに露光量が不十分であったことに起因する形成不良が見られた。
比較例2で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、凸パターンが印刷されない部分が発生した。これら形成不良、印刷不良は凸パターンの幅が狭い250μmのパターンで顕著に確認された。
【0082】
〔比較例3〕
マスクフィルムを用いずに、シェルフ層を形成するための紫外線照射量を750mJ(網点率3.7%の網点画像を形成するために最適なシェルフ層形成のための露光量)とし、レリーフ層を形成するための紫外線照射量を780mJにした。
その他の条件は、実施例2と同様の方法により感光性樹脂印刷版を作製した。
<評価>
低網点率のパターンは良好に形成されたが、高網点率のパターンは網点間の凹部の深度が浅い部分や、凹部が埋まってしまった部分があった。
比較例3で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、高網点率のパターンでは所望の網点率よりも高い網点率の画像が印刷された箇所や、網点同士が連結してしまう箇所があった。また、隣接する網点率の画像との階調にムラがあった。
【0083】
〔比較例4〕
マスクフィルムを用いずに、シェルフ層を形成するための紫外線照射量を500mJ(網点率96.5%の網点画像を形成するために最適なシェルフ層形成のための露光量)とし、レリーフ層を形成するための紫外線照射量を330mJにした。
その他の条件は、実施例2と同様の方法により感光性樹脂印刷版を作製した。
<評価>
高網点率のパターンは良好に形成されたが、低網点率のパターンの中に露光が不十分であることに起因するパターン形成不良が発生していることが確認された。
比較例4で得られた感光性樹脂印刷版を用いて印刷テストを実施したところ、低網点率のパターンは所望の網点率よりも低い網点率の画像が印刷された箇所や、一部の網点が印刷されていない箇所があった。
また、隣接する網点率の画像との階調にムラがあった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のマスクフィルムは、感光性樹脂印刷版を製造するためのバック露光に用いるマスクフィルムとして産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0085】
10 感光性樹脂組成物層
11a シェルフ
11b シェルフ
11c 印刷パターン
11d 印刷パターン
12 支持体
13 マスクフィルム
14 マスクフィルムの活性光線透過部
15 マスクフィルムの活性光線遮蔽部
16 画像層
17 低網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
18 高網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
19 画像層の非画像部
21a シェルフ
21b シェルフ
21c 印刷パターン
21d 印刷パターン
31 マスクフィルム
32 第1の活性光線透過率の領域
33 第2の活性光線透過率の領域
34 第3の活性光線透過率の領域
41 マスクフィルム
42 第1の活性光線透過率の領域
43 第2の活性光線透過率の領域
44 活性光線透過率Xの領域
45 画像層
46 高網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
47 低網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
48 非画像部
50 感光性樹脂組成物層
51 感光性樹脂組成物層の硬化部
52 支持体
53 マスクフィルム
54 マスクフィルムの第1の活性光線透過率の領域
55 マスクフィルムの第2の活性光線透過率の領域
56 マスクフィルムの活性光線透過率Xの領域
71a シェルフ
71b シェルフ
71c 印刷パターン
71d 印刷パターン
72 支持体
73 マスクフィルム
74 マスクフィルムの第1の活性光線透過率の領域
75 マスクフィルムの第2の活性光線透過率の領域
76 マスクフィルムの活性光線透過率Xの領域
77 画像層
78 低網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
79 高網点率パターン形成用領域(網点パターン形成画像部)
80 画像層の非画像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域を有するマスクフィルム。
【請求項2】
前記活性光線透過率が各々異なる3つ以上の領域のうちの、1つの領域の活性光線透過率が活性光線透過率Xであり、
当該活性光線透過率Xの領域は、フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物の露光工程において共に用いられる画像層の非画像部に対応する領域であり、
前記活性光線透過率Xの領域以外の、2つ以上の領域は、前記画像層を介してフレキソ印刷版用の感光性樹脂組成物に活性光線を照射したときに、2種以上の印刷パターンを形成し得る、画像層のパターン形成画像部に対応する領域であり、当該2以上の領域における活性光線透過率は、前記活性光線透過率Xよりも高い請求項1に記載のマスクフィルム。
【請求項3】
前記画像層のパターン形成画像部の面積が36mm2以上の場合は、対応するマスクフィルムの領域が、当該パターン形成用画像部の領域よりも、外周幅にして0.5mm以上10mm以下大きく領域を選択し、
前記パターン形成画像部の面積が36mm2未満の場合は、対応するマスクフィルムの領域が当該パターン形成画像部の領域よりも、外周幅にして1mm以上20mm以下大きく領域を選択した請求項2に記載のマスクフィルム。
【請求項4】
前記画像層のパターン形成画像部が、
2種以上の網点率のパターンを形成する網点パターン形成画像部を有している請求項2又は3に記載のマスクフィルム。
【請求項5】
前記網点パターン形成画像部が、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率50%未満の印刷パターンを形成するための網点パターン形成画像部を2種以上含み、
当該2種以上の網点パターン形成画像部に対応するマスクフィルムの各領域の活性光線透過率が、それぞれ下記式(I)を満たす請求項4に記載のマスクフィルム。
活性光線透過率(%)
=100(%)−対応する網点パターン形成画像部の網点率(%)・・・(I)
【請求項6】
前記マスクフィルムが、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C1の領域、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率10%以上50%未満の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C2の領域、
フレキソ印刷版用感光性樹脂組成物に、網点率50%以上の印刷パターンを形成するための画像層の網点パターン形成画像部に対応する、活性光線透過率C3の領域、
からなる群より選択される少なくとも2種類以上の活性光線透過率の領域を有し、
各活性光線透過率C1〜C3、及び前記活性光線透過率Xが、下記式(II)を満たす請求項4に記載のマスクフィルム。
活性光線透過率C1>活性光線透過率C2
>活性光線透過率C3>活性光線透過率X・・・(II)
【請求項7】
対応する前記画像層の前記パターン形成画像部が、
幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部と、
幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部と、
を含み、
前記幅2mm以下の凹パターンを形成する凹パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率が、
前記幅2mm以下の凸パターンを形成する凸パターン形成画像部に対応する領域の活性光線透過率よりも低い請求項2乃至4のいずれか一項に記載のマスクフィルム。
【請求項8】
少なくとも支持体、感光性樹脂組成物が、この順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置し、前記支持体側に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマスクフィルムを配置する工程と、
前記支持体側から前記マスクフィルムを介して、前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、
前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、
未露光部分を除去する現像工程と、
を、有する、感光性樹脂印刷版の製造方法。
【請求項9】
少なくとも請求項1乃至7のいずれか一項に記載のマスクフィルム、感光性樹脂組成物、がこの順で積層された印刷版用感光性樹脂構成体の感光性樹脂組成物側に、2種以上のパターン形成画像部と非画像部とを有する画像層を配置する工程と、
前記マスクフィルムを介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するバック露光工程と、
前記画像層を介して前記感光性樹脂組成物に活性光線を照射するレリーフ露光工程と、
未露光部分を除去する現像工程と、
を、有する感光性樹脂印刷版の製造方法。
【請求項10】
2つ以上の異なる高さのシェルフと、
各シェルフ上に形成された印刷パターンと、
を、有する感光性樹脂印刷版。
【請求項11】
前記印刷パターンが2種以上の異なる網点率の網点パターンを含み、
網点率が高い網点パターンの下のシェルフの高さが、網点率の低いパターンの下のシェルフの高さよりも低い請求項10に記載の感光性樹脂印刷版。
【請求項12】
前記印刷パターンが凹パターンと凸パターンとを含み、前記凹パターンの下のシェルフの高さが、凸パターンの下のシェルフの高さよりも低い、請求項10又は11に記載の感光性樹脂印刷版。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78445(P2012−78445A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221710(P2010−221710)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】