説明

マスタオシレータシステムおよびレーザ装置

【課題】安定したレーザ光を出力する。
【解決手段】マスタオシレータシステムは、光共振器の一方の共振器ミラーとして機能するグレーティングと、前記共振器ミラー間の光路上に配置された光学素子と、前記光学素子の姿勢を調節することで前記光共振器内を進行するレーザ光の前記グレーティングへの入射角を調節する姿勢制御機構と、を備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスタオシレータシステムおよびレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置(以下、「露光装置」という)においては解像力の向上が要請されている。このため露光用光源から放出される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を放出するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を放出するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
次世代の露光技術としては、露光装置側の露光用レンズとウエハ間を液体で満たして、屈折率を変えることによって露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が研究されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射され得る。この技術をArF液浸露光(又はArF液浸リソグラフィー)という。
【0004】
KrFエキシマレーザ装置やArFエキシマレーザ装置の自然発振幅は約350〜400pmと広い。そのため、露光装置において投影レンズが使用されると色収差が発生して解像力が低下する場合がある。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から放出されるレーザビームのスペクトル線幅(スペクトル幅)を狭帯域化する必要がある。近年では、ガスレーザ装置のレーザ共振器内に狭帯域化素子(エタロンやグレーティング等)を有する狭帯域化モジュール(Line Narrow Module)が設けられることで、スペクトル幅の狭帯域化が実現されている。このようにスペクトル幅が狭帯域化されるレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7088758号明細書
【特許文献2】米国特許第7154928号明細書
【特許文献3】米国特許第6393037号明細書
【特許文献4】米国特許第6856638号明細書
【特許文献5】米国特許第6859305号明細書
【概要】
【0006】
本開示の一態様によるマスタオシレータシステムは、光共振器の一方の共振器ミラーとして機能するグレーティングと、前記共振器ミラー間の光路上に配置された光学素子と、前記光学素子の姿勢を調節する姿勢制御機構と、を備えてもよい。
【0007】
本開示の他の態様によるマスタオシレータシステムは、上述の態様において、前記光学素子が、プリズムであってもよい。また、前記姿勢制御機構が、前記プリズムにおける前記レーザ光の2つの入出射面をそれぞれ含む2つの面が交差する軸を傾けるように前記プリズムの姿勢を調節してもよい。
【0008】
本開示の他の態様によるレーザ装置は、上述のマスタオシレータシステムと、前記マスタオシレータシステムから出力されたレーザ光を増幅する増幅装置と、を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、実施の形態によるレーザ装置の構成例を概略的に示す。
【図2】図2は、実施の形態によるマスタオシレータシステムの構成を概略的に示す側視図である。
【図3】図3は、実施の形態によるマスタオシレータシステムの構成を概略的に示す上視図である。
【図4】図4は、実施の形態による姿勢制御機構の側視図である。
【図5】図5は、図4に示された姿勢制御機構の上視図である。
【図6】図6は、図4におけるプリズムの回転軸とレーザ光の入出射面との関係を示す。
【図7】図7は、実施の形態による他の姿勢制御機構の側視図である。
【図8】図8は、図7に示された姿勢制御機構の上視図である。
【図9】図9は、実施の形態によるプリズムを交換して倍率を変更する機構を含む第1例のマスタオシレータシステムの構成を概略的に示す。
【図10】図10は、図9に示されるマスタオシレータシステムの第1例によるビーム幅調節器の構成を概略的に示す。
【図11】図11は、図9に示されるマスタオシレータシステムの第2例によるビーム幅調節器の構成を概略的に示す。
【図12】図12は、実施の形態によるプリズムを交換して倍率を変更する機構を含む第2例のマスタオシレータシステムの構成を概略的に示す。
【図13】図13は、図12に示されるマスタオシレータシステムの第1例によるビーム幅調節器の構成を概略的に示す。
【図14】図14は、図12に示されるマスタオシレータシステムの第2例によるビーム幅調節器の構成を概略的に示す。
【図15】図15は、実施の形態によるプリズムを交換して倍率を変更する機構を含む第3例のマスタオシレータシステムの構成を概略的に示す。
【図16】図16は、実施の形態による複数の光路調節プリズムのうちの1つがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部を含むマスタオシレータシステムの構成例を示す。
【図17】図17は、図16の他の配置例を示す。
【図18】図18は、実施の形態による4つの光路調節プリズムのうち間に位置する2つの光路調節プリズムがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部の構成例を示す。
【図19】図19は、実施の形態による4つの光路調節プリズムのうちレーザ出力端側から2つの光路調節プリズムがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部の構成例を示す。
【図20】図20は、実施の形態による複数の光路調節プリズムのうちの移動しないプリズムがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部を含むマスタオシレータシステムの構成例を示す。
【図21】図21は、実施の形態による他の波面調節部の上視図である。
【図22】図22は、図21に示される波面調節部の側視図である。
【図23】図23は、実施の形態によるファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置の概略構成を模式的に示す。
【図24】図24は、実施の形態によるリング共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置の概略構成を模式的に示す。
【図25】図25は、図24に示す構成をレーザ光の光路を軸として90°回転した際の断面図である。
【図26】図26は、実施の形態によるスペクトル検出器の概略構成を模式的に示す。
【図27】図27は、実施の形態によるスペクトル検出器の他の概略構成を模式的に示す。
【図28】図28は、スペクトル純度E95を説明するための図である。
【実施の形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示の一例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。なお、以下の説明では、下記目次の流れに沿って説明する。
【0011】
目次
1.概要
2.用語の説明
3.レーザ装置
3.1 構成
3.2 動作
3.3 作用
4.狭帯域化レーザ装置(マスタオシレータシステム)
4.1 狭帯域化モジュール
4.1.1 プリズムの姿勢を調節可能な狭帯域化モジュール
4.1.1.1 プリズムの姿勢を調節する機構
4.1.1.1.1 第1例
4.1.1.1.2 第2例
4.1.2 プリズムを交換して倍率を変更する機構を含む狭帯域化レーザ装置
4.1.2.1 第1例
4.1.2.1.1 ビーム幅調節部
4.1.2.1.1.1 第1例
4.1.2.1.1.2 第2例
4.1.2.2 第2例
4.1.2.2.1 ビーム幅調節部
4.1.2.2.1.1 第1例
4.1.2.2.1.2 第2例
4.1.2.3 第3例
4.1.2.4 第4例
4.1.2.4.1 1つのプリズムが交換可能な場合
4.1.2.4.2 2つ以上のプリズムが交換可能な場合(その1)
4.1.2.4.3 2つ以上のプリズムが交換可能な場合(その2)
4.1.2.4.4 移動しないプリズムをビーム幅調節器として用いる場合
4.2 波面調節部
7.その他
7.1 増幅装置
7.1.1 ファブリペロ共振器を含む実施形態
7.1.2 リング共振器を含む実施形態
7.2 スペクトル検出器
7.2.1 モニタエタロン分光器
7.2.2 グレーティング型分光器
7.3 スペクトル純度E95
【0012】
1.概要
以下で例示する実施の形態は、マスタオシレータの光共振器内に配置された光学要素の姿勢を制御し得る。これにより、安定したレーザ発振を実現し得る。
【0013】
2.用語の説明
つぎに、本開示において使用される用語を、以下のように定義する。上流とは、レーザ光の光路に沿って光源に近い側をいう。また、下流とは、レーザ光の光路に沿って露光装置に近い側をいう。プリズムとは、三角柱またはそれに類似した形状を有し、レーザ光を含む光を透過し得るものをいう。プリズムの底面および上面は、三角形またはそれに類似した形状であるとする。プリズムの底面および上面に対して略90°に交わる3つの面を側面という。直角プリズムの場合、これらの側面のうち他の2面と90°に交わらない面を斜面という。なお、プリズムの頂辺を削るなどして形状を変形したものについても、本説明におけるプリズムに含まれ得る。光軸とは、レーザ光の進行方向に沿ってレーザ光のビーム断面の略中心を通る軸であってもよい。
【0014】
3.レーザ装置
本開示の一実施の形態によるレーザ装置を、以下に図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態では、狭帯域化レーザ装置をマスタオシレータシステムとして備えたレーザ装置を例に説明する。
【0015】
3.1 構成
図1は、実施の形態によるレーザ装置の構成例を概略的に示す。レーザ装置100は、半導体露光用レーザであってもよい。レーザ装置100は、発振段(マスタオシレータ)と増幅段(増幅装置)とを備えた2ステージレーザ装置であってもよい。
【0016】
図1に示されるように、レーザ装置100は、コントローラ10と、マスタオシレータシステム20と、増幅装置50と、スペクトル検出部60と、を備えてもよい。レーザ装置100は、高反射ミラー41および42などの光学系と、シャッタ機構70とをさらに備えてもよい。レーザ装置100は、コントローラ10に接続された記憶部11をさらに備えてもよい。
【0017】
コントローラ10は、レーザ装置100全体を制御してもよい。コントローラ10は、マスタオシレータシステム20に接続されてもよい。また、コントローラ10は、増幅装置50、スペクトル検出部60、およびシャッタ機構70に接続されてもよい。さらに、コントローラ10は、露光装置80のコントローラ81に接続されてもよい。
【0018】
マスタオシレータシステム20は、レーザ光L1を出力してもよい。レーザ光L1は、パルス光であってもよい。
【0019】
高反射ミラー41および42などの光学系は、マスタオシレータシステム20と増幅装置50との間の光路上に配置されてもよい。増幅装置50は、光学系を介して入射したレーザ光L1を増幅してもよい。増幅装置50は、エキシマガスなどをゲイン媒質として内部に含んでもよい。増幅装置50は、コントローラ10からの制御の下で動作してもよい。
【0020】
スペクトル検出部60は、増幅装置50より下流の光路上に配置されてもよい。スペクトル検出部60は、ビームスプリッタ61と、集光レンズ62と、スペクトル検出器63とを含んでもよい。ビームスプリッタ61は、増幅装置50から出力されたレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。集光レンズ62は、ビームスプリッタ61によって分岐されたレーザ光L1の光路上に配置されてもよい。スペクトル検出器63の入力部は、集光レンズ62の集光位置または集光位置付近に配置されてもよい。スペクトル検出器63は、入力されたレーザ光L1のスペクトル波形からスペクトル線幅を検出してもよい。スペクトル検出器63は、検出したレーザ光L1のスペクトル線幅をコントローラ10へ出力してもよい。
【0021】
シャッタ機構70は、スペクトル検出部60より下流の光路上に配置されてもよい。シャッタ機構70は、シャッタ71と、駆動機構72とを含んでもよい。駆動機構72は、レーザ光L1の光路に対してシャッタ71を出し入れしてもよい。駆動機構72は、コントローラ10からの制御の下で動作してもよい。シャッタ71が開の状態でシャッタ機構70を通過したレーザ光L1は、露光装置80に導かれてもよい。
【0022】
3.2 動作
つづいて、図1に示されるレーザ装置100の概略動作を、以下に説明する。コントローラ10は、露光装置80のコントローラ81から、露光用のレーザ光L1の出力を要求する露光命令を受信してもよい。この露光命令には、レーザ光L1に要求するスペクトル線幅の目標値(目標スペクトル線幅)が含まれていてもよい。コントローラ10は、露光命令を受信すると、シャッタ機構70を駆動して、シャッタ71を閉じてもよい。また、コントローラ10は、レーザ光L1のスペクトル線幅が要求された目標スペクトル線幅となるように、波面調節部22およびビーム幅調節部32を駆動してもよい。記憶部11は、波面調節部22および/またはビーム幅調節部32の制御値を、目標スペクトル線幅に対応づけて格納していてもよい。制御値と目標スペクトル線幅とは、制御テーブルのデータ形式で管理されていてもよい。あるいは、記憶部11は、目標スペクトル線幅から制御値を算出するための関数やパラメータ等を格納していてもよい。コントローラ10は、記憶部11から読み出した関数やパラメータを用いて、目標スペクトル線幅を達成するための制御値を算出してもよい。コントローラ10は、得られた制御値を、波面調節部22およびビーム幅調節部32へ適宜送信してもよい。また、コントローラ10は、マスタオシレータシステム20内の増幅器23を励起状態に駆動してもよい。これにより、マスタオシレータシステム20から、スペクトル線幅が目標スペクトル線幅に略調整されたレーザ光L1が出力され得る。
【0023】
コントローラ10は、マスタオシレータシステム20のレーザ発振に同期して、増幅装置50を励起状態に駆動してもよい。これにより、マスタオシレータシステム20から出力されたレーザ光L1が増幅装置50によって増幅され得る。
【0024】
増幅後のレーザ光L1は、スペクトル検出部60のビームスプリッタ61に入射してもよい。スペクトル検出部60は、増幅後のレーザ光L1のスペクトル線幅を検出してもよい。検出されたスペクトル線幅は、コントローラ10へ送信されてもよい。コントローラ10は、検出されたスペクトル線幅が目標スペクトル線幅に近づくように、波面調節部22およびビーム幅調節部32のうち少なくとも一方をフィードバック制御してもよい。
【0025】
3.3 作用
以上のように、コントローラ10は、露光装置80から目標スペクトル線幅を受信すると、目標スペクトル線幅を達成するための波面調節部22とビーム幅調節部32との制御値を記憶部11内のデータを用いて求め、波面調節部22とビーム幅調節部32とに送信してもよい。これにより、マスタオシレータシステム20が、略目標スペクトル線幅で発振し得る状態に迅速に調整され得る。また、コントローラ10がスペクトル検出部60によって検出されたスペクトル線幅に基づいてマスタオシレータシステム20をフィードバック制御することで、マスタオシレータシステム20が目標スペクトル線幅で安定して発振し得る。
【0026】
4.狭帯域化レーザ装置(マスタオシレータシステム)
つぎに、図1に示すマスタオシレータシステム20について、図面を参照して詳細に説明する。図2は、マスタオシレータシステム20の構成を概略的に示す側視図である。図3は、マスタオシレータシステム20の構成を概略的に示す上視図である。
【0027】
図2および図3に示すように、マスタオシレータシステム20は、出力結合ミラー21と、波面調節部22と、増幅器23と、狭帯域化モジュール30とを含んでもよい。狭帯域化モジュール30は、ビーム幅調節部32と、グレーティング31とを含んでもよい。
【0028】
グレーティング31と出力結合ミラー21とは、光共振器を形成してもよい。グレーティング31は、波長選択部としても機能してよい。増幅器23は、光共振器内を往復するレーザ光L1を増幅してもよい。波面調節部22は、光共振器内を往復するレーザ光L1の波面を調節してもよい。ビーム幅調節部32は、光共振器内を往復するレーザ光L1のビーム断面を拡大または縮小してもよい。増幅器23、波面調節部22およびビーム幅調節部32は、コントローラ10からの制御の下で動作してもよい。
【0029】
波面調節部22は、凹面シリンドリカルレンズ222と、凸面シリンドリカルレンズ221とを含んでもよい。凹面シリンドリカルレンズ222の曲面の曲率と、凸面シリンドリカルレンズ221の曲面の曲率とは、同じであってもよい。凹面シリンドリカルレンズ222と凸面シリンドリカルレンズ221とは、曲面が互いに向かい合うように配置されてもよい。波面調節部22は、凸面シリンドリカルレンズ221および/または凹面シリンドリカルレンズ222をレーザ光L1の光路に沿って移動する不図示の移動機構を備えてもよい。凸面シリンドリカルレンズ221および凹面シリンドリカルレンズ222の距離を変化させることで、レーザ光L1の波面を制御することができる。
【0030】
増幅器23は、レーザチャンバ231と、ウィンドウ232および234と、一対の放電電極233aおよび233bとを備えてもよい。レーザチャンバ231の内部は、レーザ媒質としてのエキシマガスで満たされていてもよい。放電電極233aおよび233bには、コントローラ10からの制御の下で、励起電力が供給されてもよい。
【0031】
4.1 狭帯域化モジュール
つぎに、狭帯域化モジュール30について、いくつか例を挙げて説明する。
【0032】
4.1.1 プリズムの姿勢を調節可能な狭帯域化モジュール
図2および図3に示すように、狭帯域化モジュール30は、複数のプリズム321、322および323と、グレーティング31とを備えてもよい。複数のプリズム321〜323およびグレーティング31は、台座321a〜323aおよび31aにそれぞれ固定されてもよい。台座321a〜323aおよび31aのうち少なくとも1つ、たとえばプリズム322の台座322aは、プリズム322のレーザ光L1のビーム軸(光軸)に対する傾き(以下、姿勢という)を調節可能な姿勢制御機構40に設置されてもよい。台座321a〜323aおよび31aのうち少なくとも1つ、たとえばプリズム321の台座321aは、プリズム321および台座321aを図3の紙面と平行な面内で回転可能な回転テーブル321bに保持されてもよい。台座31a、323a、姿勢制御機構40および回転テーブル321bは、架台311に固定されてもよい。
【0033】
4.1.1.1 プリズムの姿勢を調節する機構
ここで、姿勢制御機構40について、いくつか例を挙げて説明する。
【0034】
4.1.1.1.1 第1例
図4および図5は、第1例による姿勢制御機構40の構成を概略的に示す。図4は、姿勢制御機構40の側視断面図である。図5は、姿勢制御機構40の上視図である。図6は、プリズム322の回転軸AXとレーザ光L1の入出射面との関係を示す。
【0035】
図4および図5に示すように、姿勢制御機構40は、平板がU字状に折り曲がった形状の姿勢調節板43と、2つのボルト44および45とを含んでもよい。姿勢調節板43は、略平行に離間して配置された2つのプレート部43aおよび43bを含んでもよい。プレート部43aおよび43bは、一方の端で連結部43cを介してつながっていてもよい。連続部43cは、この部分の剛性を下げるために一部が他の部分よりも薄く構成されていてもよい。
【0036】
プリズム322を搭載する台座322aは、プレート部43aに固定されてもよい。プレート部43aには、穴と螺子切されたネジ穴が形成されていてもよい。穴には、ボルト44が貫通していてもよい。ボルト44の先端は、プレート部43bに形成されたネジ溝に係合してもよい。ネジ穴には、ボルト45がはめ込まれてもよい。ボルト45の先端は、プレート部43bに接してもよい。2つのボルト44および45のねじ込み量を調節することで、プレート部43bに対するプレート部43aの傾きを調節し得る。その結果、台座322aに設置されたプリズム322の姿勢を調整し得る。この調整によって、光共振器内のレーザ光L1のグレーティング31への入射角が調整されてもよい。
【0037】
姿勢制御機構40は、プリズム322におけるレーザ光L1が入射したり出射したりする面322b、322cをそれぞれ含む2つの面が交差する軸322dを傾けるように、プリズム322の姿勢を調節してもよい。プリズムにおいてレーザ光が入射したり出射したりする面を、単に入出射面と呼ぶことがある。本例では、説明の明確化のため、2つの入出射面322bおよび322cが交差する軸を軸322dとする。たとえば姿勢制御機構40は、プリズム322におけるレーザ光L1の入出射面322bおよび322cのうち一方の入出射面(ここでは増幅器23側の入出射面322bとする)を含む面と垂直な軸AXを中心として、プリズム322を回転可能であってもよい。図6では、説明の簡略化のため、軸AXがプリズム322の入出射面322bと垂直であってプリズム322の頂点の1つを通るとする。この構成によれば、プリズム322の回転によって、レーザ光L1の光軸に対する入出射面322bの傾きが変化しない。そのため、プリズム322の光軸に対する姿勢調整が簡略化し得る。
【0038】
4.1.1.1.2 第2例
図7および図8は、第2例による姿勢制御機構140の構成を概略的に示す。図7は、姿勢制御機構140の側視図である。図8は、姿勢制御機構140の上視図である。
【0039】
図7および図8に示すように、姿勢制御機構140は、略平行に離間して配置された2つのプレート143aおよび143bと、1つ以上のバネ143dと、軸部材143cと、ボルト44とを含んでもよい。1つ以上のバネ143dは、プレート143bに対してプレート143aを弾性的に引き寄せるように保持してもよい。軸部材143cは、プレート143bに対するプレート143aの回転軸として機能してもよい。ボルト44は、プレート143aに形成されたネジ穴に係合してもよい。ボルト44の先端は、プレート143bに接してもよい。ボルト44のねじ込み量を調節することで、プレート143bに対するプレート143aの傾きを調節し得る。その結果、台座322aに設置されたプリズム322の姿勢を調整し得る。
【0040】
軸部材143cは、たとえば図8におけるプリズム322の入出射面322bおよび322cのうち一方の入出射面(ここでは増幅器23側の入出射面322bとする)を含む面と垂直な方向に配置されてもよい。それにより、図6を用いて説明した場合と同様、プリズム323の回転によって、レーザ光L1の光軸に対する入出射面322bの傾きが変化しない。そのため、プリズム322の光軸に対する姿勢調整が簡略化し得る。
【0041】
4.1.2 プリズムを交換して倍率を変更する機構を含む狭帯域化レーザ装置
また、ビーム幅調節部32は、複数の倍率の異なる光学系を備え、それぞれを交換可能としてもよい。なお、以下の構成において、上述と同様の構成には、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0042】
4.1.2.1 第1例
図9は、プリズムを交換して倍率を変更する機構を含む第1例によるマスタオシレータシステム20Aの構成を概略的に示す。図9に示されるように、マスタオシレータシステム20Aは、出力結合ミラー21と、波面調節部22と、増幅器23と、狭帯域化モジュール30Aとを含んでもよい。狭帯域化モジュール30Aは、狭帯域化モジュール30のビーム幅調節部32の代わりに、ビーム幅調節部32Aを備えてもよい。
【0043】
ビーム幅調節部32Aは、光路調節プリズム321と、移動ステージ331と、スライドレール332と、ストッパ333と、移動機構334と、ビーム幅調節器303−1、303−2とを備えてもよい。ビーム幅調節器は2つに限らず更に備えてもよい。また、ビーム幅調節器303−1、303−2は、それぞれ姿勢制御機構40または140と同様の姿勢制御機構を備えてもよい。ビーム幅調節器303−1、303−2のそれぞれの倍率は異なっていてもよい。また、ビーム幅調節部32Aは、ビーム幅調節器が配置されていない空間302を含んでもよい。移動機構334は、レーザ光L1の光路と垂直方向に配設されたスライドレール332に沿って移動ステージ331を移動させてもよい。これにより、レーザ光L1の光路上に、ビーム幅調節器303−1、303−2、または空間302の何れかが選択的に配置されてもよい。移動ステージ331の移動は、スライドレール332の両端にそれぞれ設けられたストッパ333によって制限されてもよい。
【0044】
ビーム幅調節器303−1、303−2または空間302から出射したレーザ光L1の光軸は、これらの何れかに入射したレーザ光L1の光軸の延長と一致してもよい。すなわち、ビーム幅調節器303−1、303−2は、レーザ光L1の光軸をほとんど変更せず、ビーム幅のみを変更してもよい。光路調節プリズム321は、光共振器内を往復するレーザ光L1の光路およびグレーティング31への入射角度を決定してもよい。光路調節プリズム321は、不図示の台座321a上に固定されてもよい。ビーム幅調節部32Aおよびグレーティング31は、不図示の架台311上に固定されてもよい。
【0045】
また、マスタオシレータシステム20Aは、ドライバ12および13と、電源14とを備えてもよい。ドライバ12は、コントローラ10の制御の下、移動機構334を駆動してもよい。ドライバ13は、コントローラ10の制御の下、波面調節部22を駆動してもよい。電源14は、コントローラ10の制御の下、増幅器23の放電電極233aおよび233bへ、励起電力を供給してもよい。
【0046】
ビーム幅調節部32Aは、移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、ビーム幅調節器303−1、303−2、または空間302の何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれのビーム幅調節器303−1、303−2に設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。なお、空間302の倍率は“1”である。
【0047】
異なるビーム幅調節器303−1、303−2がレーザ光L1の光路上にセットされた際のアライメントは、姿勢制御機構40、140等を用いて予め調節されていてもよい。それにより、移動ステージ331を移動していずれのビーム幅調節器に切り替えたとしても、すでにアライメントが調節されているため、マスタオシレータシステム20Aが迅速に所望の性能でレーザ発振することができる。
【0048】
4.1.2.1.1 ビーム幅調節部
ここで、ビーム幅調節部の例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0049】
4.1.2.1.1.1 第1例
まず、直角プリズムを用いて構成された縮小系のビーム幅調節器の一例を説明する。図10は、第1例によるビーム幅調節器303−1の構成を概略的に示す。なお、直角プリズムを用いて構成された他の倍率の縮小系のビーム幅調節器も、以下と同様の構成であってよい。
【0050】
図10に示されるように、縮小系のビーム幅調節器303−1は、架台341と、2つのプリズム342および343と、キューブプリズム344と、姿勢制御機構40−1とを含んでもよい。プリズム342および343の少なくとも1つは、姿勢制御機構40−1上に固定されてもよい。姿勢制御機構40−1およびキューブプリズム344は、架台341に固定されてもよい。架台341は、図9に示される移動ステージ331に設置されてもよい。
【0051】
プリズム342および343は、直角プリズムであってもよい。レーザ出力端側からプリズム342を透過したレーザ光L1の光軸は、プリズム343を透過することで、元の光軸と平行な光軸となってもよい。この際、レーザ光L1のビーム幅は縮小されてもよい。キューブプリズム344は、元の光軸から外れたレーザ光L1を、元の光軸の延長上に戻してもよい。これにより、レーザ出力端側からグレーティング31へ向けてビーム幅調節器303−1を透過するレーザ光L1のビーム幅が、レーザ光L1の光軸を変更せずに縮小され得る。
【0052】
姿勢制御機構40−1は、たとえばレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、プリズム342および/または343を回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、プリズム342および/または343の回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0053】
4.1.2.1.1.2 第2例
また、プリズムを用いて構成された拡大系のビーム幅調節器の一例を、図面を用いて詳細に説明する。図11は、第2例によるビーム幅調節器303−2の構成を概略的に示す。なお、直角プリズムを用いて構成された他の倍率の拡大系のビーム幅調節器も、以下と同様の構成であってよい。
【0054】
図11に示されるように、拡大系のビーム幅調節器303−2は、架台345と、キューブプリズム346と、2つのプリズム347および348と、姿勢制御機構40−2とを含んでもよい。プリズム347および348の少なくとも1つは、姿勢制御機構40−2上に固定されてもよい。姿勢制御機構40−2およびキューブプリズム346は、架台345に固定されてもよい。架台345は、図9に示される移動ステージ331に設置されてもよい。
【0055】
プリズム347および348は、直角プリズムであってもよい。レーザ出力端側からキューブプリズム346を透過したレーザ光L1の光軸は、元の光軸と平行な光軸となってもよい。プリズム347および348は、元の光軸から外れたレーザ光L1を、元の光軸の延長上に戻してもよい。この際、レーザ光L1のビーム幅は拡大されてもよい。これにより、レーザ出力端側からグレーティング31へ向けてビーム幅調節器303−2を透過するレーザ光L1のビーム幅が、レーザ光L1の光軸を変更せずに拡大され得る。
【0056】
姿勢制御機構40−2は、たとえばグレーティング31側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、プリズム347および/または348を回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、プリズム347および/または348の回転軸をグレーティング31側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0057】
4.1.2.2 第2例
図12は、プリズムを交換して倍率を変更する機構を含む第2例によるマスタオシレータシステム20Bの構成を概略的に示す。図12に示されるように、マスタオシレータシステム20Bは、図9に示されるマスタオシレータシステム20Aと同様の構成において、狭帯域化モジュール30Aが狭帯域化モジュール30Bに置き換えられてもよい。狭帯域化モジュール30Bは、狭帯域化モジュール30Aと同様の構成において、ビーム幅調節部32Aがビーム幅調節部32Bに置き換えられてもよい。
【0058】
ビーム幅調節部32Bは、ビーム幅調節部32Aと同様の構成において、ビーム幅調節器303−1、303−2がビーム幅調節器303−3a、303−3bに置き換えられてもよい。ビーム幅調節器は2つに限らず更に備えてもよい。また、ビーム幅調節器303−3a、303−3bは、それぞれ姿勢制御機構40または140と同様の姿勢制御機構を備えてもよい。ビーム幅調節器303−3a、303−3bの倍率は、それぞれ異なっているとよい。
【0059】
ビーム幅調節器303−3a、303−3bは、レーザ出力端側から入射したレーザ光L1の光軸に対して、グレーティング31側へ出射するレーザ光L1の光軸を、たとえば距離Ys1分、平行にシフトしてもよい。各ビーム幅調節器303−3a、303−3bでの光軸のシフト方向およびシフト量(距離Ys1)は、同一であるとよい。また、光路調節プリズム321およびグレーティング31の位置は、光軸のシフトに応じて位置合わせされているとよい。その構成によれば、ビーム幅調節器303−3a、303−3bを入れ換えた場合でも、レーザ光L1の光軸のシフト量が同じであるため、マスタオシレータシステム20Bが迅速に所望の性能でレーザ発振することできる。
【0060】
ビーム幅調節部32Bは、移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、ビーム幅調節器303−3a、303−3bの何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれのビーム幅調節器303−3a、303−3bに設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。
【0061】
異なるビーム幅調節器303−3a、303−3bがレーザ光L1の光路上にセットされた際のアライメントは、後述する姿勢制御機構40−3、40−4等を用いて予め調節されていてもよい。それにより、移動ステージ331を移動していずれのビーム幅調節器に切り替えたとしても、すでにアライメントが調節されているため、マスタオシレータシステム20Bが迅速に所望の性能でレーザ発振することができる。
【0062】
4.1.2.2.1 ビーム幅調節部
ここで、ビーム幅調節部の例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0063】
4.1.2.2.1.1 第1例
まず、直角プリズムを用いて構成された縮小系のビーム幅調節器の一例を説明する。図13は、第1例によるビーム幅調節器303−3の構成を概略的に示す。なお、直角プリズムを用いて構成された他の倍率の縮小系のビーム幅調節器も、以下と同様の構成であってよい。
【0064】
図13に示されるように、縮小系のビーム幅調節器303−3は、架台351と、2つのプリズム352および353と、姿勢制御機構40−3とを含んでもよい。プリズム352は、姿勢制御機構40−3上に固定されてもよい。姿勢制御機構40−3およびプリズム353は、架台351に固定されてもよい。架台351は、図12に示される移動ステージ331に設置されてもよい。
【0065】
プリズム352および353は、直角プリズムであってもよい。レーザ出力端側からプリズム352を透過したレーザ光L1の光軸は、プリズム353を透過することで、元の光軸と平行な光軸となってもよい。この際、レーザ光L1のビーム幅は縮小されてもよい。これにより、レーザ出力端側からグレーティング31へ向けてビーム幅調節器303−3を透過するレーザ光L1のビーム幅が縮小され得る。また、プリズム352および353を透過したレーザ光L1の光軸は、所定距離(光軸シフト量Ys2)分、元の光軸と平行にシフトしてもよい。
【0066】
姿勢制御機構40−3は、たとえばレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、プリズム352を回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、プリズム352の回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0067】
4.1.2.2.1.2 第2例
つぎに、直角プリズムを用いて構成された拡大系のビーム幅調節器の一例を説明する。図14は、第2例によるビーム幅調節器303−4の構成を概略的に示す。なお、直角プリズムを用いて構成された他の倍率の拡大系のビーム幅調節器も、以下と同様の構成であってよい。
【0068】
図14に示されるように、拡大系のビーム幅調節器303−4は、架台355と、2つのプリズム356および357と、姿勢制御機構40−4とを含んでもよい。プリズム357は、姿勢制御機構40−4上に固定されてもよい。姿勢制御機構40−4およびプリズム356は、架台355に固定されてもよい。架台355は、図12に示される移動ステージ331に設置されてもよい。
【0069】
プリズム356および357は、直角プリズムであってもよい。レーザ出力端側からプリズム356を透過したレーザ光L1の光軸は、プリズム357を透過することで、元の光軸と平行な光軸となってもよい。この際、レーザ光L1のビーム幅は拡大されてもよい。これにより、レーザ出力端側からグレーティング31へ向けてビーム幅調節器303−4を透過するレーザ光L1のビーム幅が拡大され得る。また、プリズム356および357を透過したレーザ光L1の光軸は、所定距離(光軸シフト量Ys2)分、元の光軸と平行にシフトしてもよい。
【0070】
姿勢制御機構40−4は、たとえばグレーティング31側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、プリズム357を回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、プリズム357の回転軸をグレーティング31側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0071】
4.1.2.3 第3例
つぎに、図1に示されたマスタオシレータシステム20の第3例を、以下に図面を参照して詳細に説明する。第3例では、グレーティング31へのレーザ光L1の入射光路を調節する光路調節プリズム321を、ビーム幅調節部に用いてもよい。図15は、第3例によるマスタオシレータシステム20Cの構成を概略的に示す。図15に示されるように、マスタオシレータシステム20Cは、図9に示されるマスタオシレータシステム20Aと同様の構成において、狭帯域化モジュール30Aが狭帯域化モジュール30Cに置き換えられてもよい。狭帯域化モジュール30Cは、グレーティング31直前の光路調節プリズム321が省略されるとともに、ビーム幅調節部32Aがビーム幅調節部32Cに置き換えられてもよい。
【0072】
図15に示されるように、ビーム幅調節部32Cは、複数の光路調節プリズム36aと、36bとを備えてもよい。光路調節プリズムは2つに限らず更に備えてもよい。光路調節プリズム36a、36bは、それぞれ姿勢制御機構40−5、40−6に設置されてもよい。姿勢制御機構40−5、40−6は、移動ステージ331上に固定されてもよい。
【0073】
レーザ光L1の光路上に光路調節プリズム36aが配置された場合に光路調節プリズム36aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1の光軸と、光路調節プリズム36bが配置された場合に光路調節プリズム36bから出射するレーザ光L1の光軸とは、実質的に同じであってもよい。ただし、光路調節プリズム36aが配置された場合に光路調節プリズム36aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1のビーム幅と、光路調節プリズム36bが配置された場合に光路調節プリズム36bから出射するレーザ光L1のビーム幅とは、異なるとよい。ビーム幅調節部32Cは、移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、光路調節プリズム36a、36bの何れかを選択的に配置してもよい。
【0074】
光路調節プリズム36aは、たとえば直角プリズムであってもよい。光路調節プリズム36aを設置する姿勢制御機構40−5は、たとえばレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、光路調節プリズム36aを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム36aの回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0075】
また、光路調節プリズム36bは、たとえば分散プリズムであってもよい。光路調節プリズム36bを設置する姿勢制御機構40−6は、たとえば光路調節プリズム36b内を透過するレーザ光L1の光路と平行な軸を中心として、光路調節プリズム36bを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム36bの回転軸を光路調節プリズム36b内を透過するレーザ光L1の光路と平行な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0076】
ビーム幅調節部32Cは、移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、光路調節プリズム36a、36bの何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれの光路調節プリズム36a、36bに設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。
【0077】
異なる光路調節プリズム36a、36bがレーザ光L1の光路上にセットされた際のアライメントは、姿勢制御機構40−5、40−6等を用いて予め調節されていてもよい。それにより、移動ステージ331を移動していずれの光路調節プリズムに切り替えたとしても、すでにアライメントが調節されているため、マスタオシレータシステム20Cが迅速に所望の性能でレーザ発振することができる。
【0078】
4.1.2.4 第4例
また、複数の光路調節プリズムを用い、それらのうちのすくなくとも1つがビーム幅調節器として用いられてもよい。以下、複数の光路調節プリズムを用いる場合を第4例として、図面を用いて詳細に説明する。
【0079】
4.1.2.4.1 1つのプリズムが交換可能な場合
まず、複数の光路調節プリズムのうちの1つがビーム幅調節器として用いられる場合を説明する。図16および図17は、複数の光路調節プリズムのうちの1つがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部32Dを含むマスタオシレータシステム20Dの構成例を示す。
【0080】
図16および図17に示されるように、狭帯域化モジュール30Dのビーム幅調節部32Dは、複数の光路調節プリズム321、362、363a、363bおよび364を含んでもよい。これらのうち、光路調節プリズム363aおよび363bは、レーザ光L1の光路に対して入れ換え可能であるとよい。図16は、光路調節プリズム363aが光路上に配置された場合を示し、図17は、光路調節プリズム363bが光路上に配置された場合を示す。
【0081】
レーザ光L1の光路上に光路調節プリズム363aが配置された場合に光路調節プリズム363aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1の光軸と、光路調節プリズム363bが配置された場合に光路調節プリズム363bから出射するレーザ光L1の光軸とは、実質的に同じであってもよい。ただし、光路調節プリズム363aが配置された場合に光路調節プリズム363aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1のビーム幅と、光路調節プリズム363bが配置された場合に光路調節プリズム363bから出射するレーザ光L1のビーム幅とは、異なるとよい。
【0082】
光路調節プリズム363aおよび363bは、それぞれ姿勢制御機構40−7、40−8上に固定されてもよい。姿勢制御機構40−7および40−8は、それぞれレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、光路調節プリズム363aおよび363bを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸がそれぞれ調節され得る。また、光路調節プリズム363aおよび363bの回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0083】
光路調節プリズム363aおよび363bは、移動ステージ331に搭載されてもよい。ビーム幅調節部32Dは、駆動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、光路調節プリズム363aおよび363bの何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれの光路調節プリズム363aおよび363bに設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。
【0084】
4.1.2.4.2 2つ以上のプリズムが交換可能な場合(その1)
また、複数の光路調節プリズムのうちの複数がビーム幅調節器として用いられてもよい。図18は、4つの光路調節プリズムのうち、間に位置する2つの光路調節プリズムがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部32Eの構成例を示す。
【0085】
図18に示されるように、ビーム幅調節部32Eは、複数の光路調節プリズム321、362a、362b、363a、363bおよび364を含んでもよい。これらのうち、光路調節プリズム362aおよび363aと、光路調節プリズム362bおよび363bとは、レーザ光L1の光路に対して入れ換え可能であるとよい。図18は、光路調節プリズム362aおよび363aが光路上に配置された場合を示す。
【0086】
レーザ光L1の光路上に光路調節プリズム363aおよび362aが配置された場合に光路調節プリズム362aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1の光軸と、光路調節プリズム363bおよび362bが配置された場合に光路調節プリズム362bから出射するレーザ光L1の光軸とは、実質的に同じであってもよい。ただし、光路調節プリズム363aおよび362aが配置された場合に光路調節プリズム362aからグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1のビーム幅と、光路調節プリズム363bおよび362bが配置された場合に光路調節プリズム362bから出射するレーザ光L1のビーム幅とは、異なるとよい。
【0087】
光路調節プリズム362aおよび363aのうち少なくとも1つは、姿勢制御機構40−9上に固定されてもよい。図18は、光路調節プリズム363aが姿勢制御機構40−9上に固定されている場合を示す。姿勢制御機構40−9は、レーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、光路調節プリズム363aを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム363aの回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0088】
同様に、光路調節プリズム362bおよび363bのうち少なくとも1つは、姿勢制御機構40−10上に固定されてもよい。光路調節プリズム362bおよび363bは、たとえば分散プリズムであってもよい。光路調節プリズム363bを設置する姿勢制御機構40−10は、たとえば光路調節プリズム363b内を透過するレーザ光の光路と平行な軸を中心として、光路調節プリズム363bを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム363bの回転軸を光路調節プリズム363b内を透過するレーザ光の光路と平行な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0089】
光路調節プリズム362a、362b、363aおよび363bは、移動ステージ331に搭載されてもよい。ビーム幅調節部32Eは、図示しない移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、光路調節プリズム362aおよび363aと、光路調節プリズム362bおよび363bとの何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれの光路調節プリズムの組合せに設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。
【0090】
4.1.2.4.3 2つ以上のプリズムが交換可能な場合(その2)
また、複数の光路調節プリズムのうち、レーザ出力端側に位置する光路調節プリズムを含む複数の光路調節プリズムがビーム幅調節器として用いられてもよい。図19は、4つの光路調節プリズムのうち、レーザ出力端側から2つの光路調節プリズムがビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部32Fの構成例を示す。
【0091】
図19に示されるように、ビーム幅調節部32Fは、複数の光路調節プリズム321、362、363a〜363cおよび364a〜364cを含んでもよい。これらのうち、光路調節プリズム363aおよび364aと、光路調節プリズム363bおよび364bと、光路調節プリズム363cおよび364cとは、レーザ光L1の光路に対して入れ換え可能であるとよい。図19は、光路調節プリズム363aおよび364aが光路上に配置された場合を示す。
【0092】
レーザ光L1の光路上に光路調節プリズム363aおよび364aが配置された場合と、光路調節プリズム363bおよび364bが配置された場合と、光路調節プリズム363cおよび364cが配置された場合とは、実質的に同じ光軸で光路調節プリズムからグレーティング31へ向けてレーザ光L1が出射されてもよい。ただし、光路調節プリズム363aおよび364aが配置された場合と、光路調節プリズム363bおよび364bが配置された場合と、光路調節プリズム363cおよび364cが配置された場合とは、それぞれグレーティング31へ向けて出射するレーザ光L1のビーム幅が異なるとよい。
【0093】
光路調節プリズム363aおよび364aのうち少なくとも1つは、姿勢制御機構40−11上に固定されてもよい。図19は、光路調節プリズム364aが姿勢制御機構40−11上に固定されている場合を示す。姿勢制御機構40−11は、レーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、光路調節プリズム364aを回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム364aの回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0094】
同様に、光路調節プリズム363bおよび364bのうち少なくとも1つは、姿勢制御機構40−12上に固定されてもよく、また、光路調節プリズム363cおよび364cのうち少なくとも1つは、姿勢制御機構40−13上に固定されてもよい。
【0095】
光路調節プリズム363a〜363cおよび364a〜364cは、移動ステージ331に搭載されてもよい。ビーム幅調節部32Fは、図示しない移動機構334によって移動ステージ331を移動することで、レーザ光L1の光路上に、光路調節プリズム363aおよび364aと、光路調節プリズム363bおよび364bと、光路調節プリズム363cおよび364cとの何れかを選択的に配置してもよい。これにより、それぞれの光路調節プリズムの組合せに設定された倍率で、グレーティング31へ入射するレーザ光L1のビーム幅が変更され得る。
【0096】
4.1.2.4.4 移動しないプリズムが姿勢制御機構に設置される場合
移動しない光路調節プリズム、たとえば光路調節プリズム362が姿勢制御機構に設置されてもよい。図20は、移動しない光路調節プリズム362がビーム幅調節器として用いられたビーム幅調節部32Gを備えるマスタオシレータシステム20Gの構成例を示す。
【0097】
図20に示されるように、狭帯域化モジュール30Gのビーム幅調節部32Gは、光路調節プリズム362が姿勢制御機構40−14に設置された構成を備えてもよい。姿勢制御機構40−14は、不図示の架台311に固定されてもよい。姿勢制御機構40−14は、レーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸を中心として、光路調節プリズム362を回転させてもよい。これにより、グレーティング31へ入射するレーザ光L1の光軸が調節され得る。また、光路調節プリズム362の回転軸をレーザ出力端側の入出射面を含む面に対して垂直な軸とすることで、光軸を所望の光軸となるよう調整することが容易となる。
【0098】
4.2 波面調節部
波面調節部22および出力結合ミラー21は、これらの機能を併せ持つ波面調節部26に置き換えられてもよい。図21および図22は、波面調節部26の構成例を示す。図21は、波面調節部26の上視図である。図22は、波面調節部26の側視図である。
【0099】
波面調節部26は、一面が半筒状に突出した曲面で構成された凸面シリンドリカルレンズ261と、一面が半筒状に窪んだ曲面で構成された凹面シリンドリカルレンズ262と、架台263とを備えてもよい。凹面シリンドリカルレンズ262は、これをレーザ光L1の光軸に沿って移動させる移動機構が設けられてもよい。凸面シリンドリカルレンズ261は、架台263に固定されてもよい。凸面シリンドリカルレンズ261の曲面と対向する面には、部分反射コート261aが設けられてもよい。部分反射コート261aが形成された面は、マスタオシレータシステム20のレーザ出力端として機能してもよい。
【0100】
移動機構は、たとえば移動ステージ264と、レール265と、突起部266と、ステッピングモータ267とを備えてもよい。凹面シリンドリカルレンズ262は、移動ステージ264に固定されてもよい。レール265は、レーザ光L1の光路に沿って延在するように、架台263に固定されてもよい。移動ステージ264は、レール265上にスライド可能に設置されてもよい。突起部266は、移動ステージ264から突出していてもよい。ステッピングモータ267は、突起部266をレール265の延在方向に沿って進退させてもよい。これにより、移動ステージ264上の凹面シリンドリカルレンズ262がレーザ光L1の光路に沿って移動してもよい。その結果、凹面シリンドリカルレンズ262と凸面シリンドリカルレンズ261との間の距離が調節されてもよい。
【0101】
図21および図22に示されるように、以上のような構成を備えた波面調節部26は、凸面シリンドリカルレンズ261と凹面シリンドリカルレンズ262との間の距離を調節することで、レーザ光L1の波面を調節し得る。
【0102】
7.その他
7.1 増幅装置
つぎに、図1に示す増幅装置50について、図面を用いて詳細に説明する。増幅装置50は、パワーオシレータやパワー増幅器や再生増幅器など、種々の増幅装置であってよい。また、増幅装置50は、1つの増幅装置であってもよいし、複数の増幅装置を含んでいてもよい。
【0103】
7.1.1 ファブリペロ共振器を含む実施形態
まず、ファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを増幅装置50として用いた場合を例に挙げる。図23は、ファブリペロ共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置50Aの概略構成を模式的に示す。図23に示されるように、増幅装置50Aは、チャンバ53を備えてもよい。増幅装置50Aは、レーザ光の一部を反射し、一部を透過するリアミラー51と、レーザ光の一部を反射し、一部を透過する出力カプラ58とを備えてもよい。リアミラー51と出力カプラ58とは、光共振器を形成してもよい。ここで、リアミラー51の反射率は出力カプラ58の反射率よりも高いことが好ましい。出力カプラ58は、増幅後のレーザ光L1の出力端であってもよい。
【0104】
増幅装置50Aは、レーザ光L1のビームプロファイルを調整するスリット52をさらに備えてもよい。チャンバ53には、ウィンドウ54および57が設けられてもよい。ウィンドウ54および57は、チャンバ53の機密性を保持しつつ、レーザ光L1を透過させてもよい。このチャンバ53内には、エキシマガスなどのゲイン媒質が封入されていてもよい。ゲイン媒体は、例えばKrガス、Arガス、Fガス、Neガス、およびXeガスのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに、チャンバ53内には、一対の放電電極55および56が設けられてもよい。放電電極55および56は、レーザ光L1が通過する領域(増幅領域)を挟むように配置されていてもよい。放電電極55および56間には、不図示の電源からパルス状の高電圧が印加されてもよい。高電圧は、レーザ光L1が増幅領域を通過するタイミングに合わせて、放電電極55および56間に印加されてもよい。放電電極55および56間に高電圧が印加されると、放電電極55および56間に、活性化されたゲイン媒質を含む増幅領域が形成され得る。レーザ光L1は、この増幅領域を通過する際に増幅され得る。
【0105】
7.1.2 リング共振器を含む実施形態
つぎに、リング共振器を備えたパワーオシレータを増幅装置50として用いた場合を例に挙げる。図24および図25は、リング共振器を備えたパワーオシレータを用いた増幅装置90の概略構成を模式的に示す。図24は増幅装置90の側視図を、図25は増幅装置90の上視図を示す。増幅装置90の出力段には、増幅装置90から出力されたレーザ光L1を遮断するシャッタ98がさらに設けられてもよい。
【0106】
図24および図25に示されるように、増幅装置90は、高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと、出力カプラ91と、チャンバ92とを備えてもよい。高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと出力カプラ91とは、チャンバ92内の増幅領域をレーザ光L1が複数回通過するマルチパスを形成してもよい。出力カプラ91は、部分反射ミラーであってもよい。チャンバ92は、高反射ミラー91a、91b、97aおよび97bと出力カプラ91とが形成する光路上に配置されてもよい。なお、増幅装置90は、内部を進行するレーザ光L1のビームプロファイルを調整する不図示のスリットをさらに備えていてもよい。チャンバ92内には、増幅領域を満たすようにエキシマガスなどのゲイン媒質が封入されていてもよい。ゲイン媒体は、例えばKrガス、Arガス、Fガス、Neガス、およびXeガスのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0107】
上記の構成において、例えばマスタオシレータシステム20から出力されたレーザ光L1は、高反射ミラー41および高反射ミラー42を介して増幅装置90に入射してもよい。入射したレーザ光L1は、まず、高反射ミラー91aで反射され、一部は出力カプラ91を透過し、高反射ミラー91bで反射された後、ウィンドウ93を介してチャンバ92内に入射してもよい。チャンバ92内に入射したレーザ光L1は、電圧が印加された2つの放電電極94および95間の増幅領域を通過する際に増幅されてもよい。増幅後のレーザ光L1は、ウィンドウ96を介してチャンバ92から出射してもよい。出射したレーザ光L1は、高反射ミラー97aおよび97bで反射されることで、ウィンドウ96を介して再びチャンバ92内に入射してもよい。その後、レーザ光L1は、チャンバ92内の増幅領域を通過する際に再び増幅されてもよい。増幅後のレーザ光L1は、ウィンドウ93を介してチャンバ92から出射してもよい。
【0108】
このようにチャンバ92内の増幅領域を2回通過したレーザ光L1は、その後、その一部が出力カプラ91を介して出力されてもよい。また、出力カプラ91で反射された残りのレーザ光は、再度、高反射ミラー91b、97aおよび97bと出力カプラ91とが形成する光路を進行して増幅されてもよい。
【0109】
7.2 スペクトル検出器
つぎに、図1に示されるスペクトル検出器63について説明する。
【0110】
7.2.1 モニタエタロン分光器
まず、モニタエタロンを用いたスペクトル検出器63を、図面を用いて詳細に説明する。図26は、スペクトル検出器63の概略構成を模式的に示す。図26に示されるように、スペクトル検出器63は、拡散板631と、モニタエタロン632と、集光レンズ633と、イメージセンサ635(またはフォトダイオードアレイでもよい)とを備えてもよい。
【0111】
集光レンズ62を通過したレーザ光L1は、まず、拡散板631に入射してもよい。拡散板631は、入射したレーザ光L1を散乱させてもよい。この散乱光は、モニタエタロン632に入射してもよい。このモニタエタロン632は、レーザ光L1を透過する基板の表面に部分反射膜がコーティングされた2枚のミラーが所定の間隔となるようにスペーサを介して張り合わされたエアギャップエタロンであってもよい。モニタエタロン632は、入射した散乱光のうち所定の波長の光を透過してもよい。この透過光は、集光レンズ633に入射してもよい。イメージセンサ635は、集光レンズ633の焦点面に配置されてもよい。集光レンズ633によって集光された透過光は、イメージセンサ635に干渉縞を発生させ得る。イメージセンサ635は、発生した干渉縞を検出してもよい。この干渉縞の半径の2乗は、レーザ光L1の波長と比例関係にあり得る。そのため、検出した干渉縞からレーザ光L1全体のスペクトルを検出し得る。各々のスペクトル線幅、ピーク強度及び波長は、検出したスペクトルから図示せぬ情報処理装置によって求められてもよいし、コントローラ10で算出されてもよい。
【0112】
なお、集光レンズ633とイメージセンサ635との間に、遮光板634を設けてもよい。これにより、迷光を低減し、高精度に干渉縞を検出し得る。
【0113】
7.2.2 グレーティング型分光器
つぎに、グレーティング型分光器を用いたスペクトル検出器63Aを、図面を用いて詳細に説明する。図27は、スペクトル検出器63Aの概略構成を模式的に示す。図27に示されるように、スペクトル検出器63Aは、図示しない拡散板と、分光器633aとを備えてもよい。分光器633aは、凹面ミラー635aと、グレーティング636aと、凹面ミラー637aと、イメージセンサ(ラインセンサ)638aとを備えてもよい。
【0114】
レーザ光L1は、まず、拡散板に入射してもよい。拡散板は、入射したレーザ光L1を散乱してもよい。この散乱光は、集光レンズ62に入射してもよい。集光レンズ62の焦点面付近には、分光器633aの入射スリット634aが配置されてもよい。入射スリット634aは、集光レンズ62の焦点面より多少上流側に位置していてもよい。集光レンズ62で集光された散乱光は、入射スリット634aを介して凹面ミラー635aに入射してもよい。凹面ミラー635aは、入射した散乱光を略平行光に変換して反射してもよい。この反射光は、グレーティング636aに入射してもよい。グレーティング636aは、入射した略平行光を回折してもよい。この回折光は、凹面ミラー637aに入射してもよい。凹面ミラー637aは、入射した回折光を集光するように反射してもよい。凹面ミラー637aの焦点面には、イメージセンサ638aが配置されていてもよい。その場合、凹面ミラー637aによって集光された反射光は、イメージセンサ638aに結像され得る。イメージセンサ638aは、結像位置における光の強度分布を検出してもよい。反射光の結像位置は、レーザ光L1の波長と比例関係にあり得る。そのため、検出された結像位置からレーザ光L1全体のスペクトルを検出し得る。各々のスペクトル線幅、ピーク強度及び波長は、検出したスペクトルから図示せぬ情報処理装置によって求められてもよいし、コントローラ10で算出されてもよい。
【0115】
7.3 スペクトル純度E95
ここで、図28を用いて、スペクトル純度E95について説明する。図28に示されるように、スペクトルSp全体の光エネルギーをSa、線幅Δλcに含まれる光エネルギーをSbとすると、スペクトル純度E95は、以下の式(1)で表現されるスペクトル純度Jが95%となる線幅Δλcと定義し得る。
J=Sb/Sa …(1)
【0116】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0117】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0118】
100 レーザ装置
10 コントローラ
11 記憶部
12、13 ドライバ
14 電源
20、20A、20B、20C、20D マスタオシレータシステム
21 出力結合ミラー
22 波面調節部
221 凸面シリンドリカルレンズ
222 凹面シリンドリカルレンズ
23 増幅器
231 レーザチャンバ
232、234 ウィンドウ
233a、233b 放電電極
30 狭帯域化モジュール
31 グレーティング
32、32A〜32G ビーム幅調節部
31a、321a、322a、323a 台座
322b、322c 入出射面
322d 軸
311 架台
322、323 プリズム
36a、36b、…、321、362a、362b、363a〜363c、364a〜364c 光路調節プリズム
321b 回転テーブル
302 空間
303−1、303−2、303−3、303−3a、303−3b、303−4 ビーム幅調節器
331 移動ステージ
332 スライドレール
333 ストッパ
334 移動機構
341、345、351、355 架台
342、343、348、347、352、353、356、357 プリズム
344、346 キューブプリズム
40、140、40−1〜40−13 姿勢制御機構
43 姿勢調節板
43a、43b プレート部
43c 連結部
44、45 ボルト
143c 軸部材
143d バネ
41、42 高反射ミラー
50 増幅装置
60 スペクトル検出部
61 ビームスプリッタ
62 集光レンズ
63 スペクトル検出器
70 シャッタ機構
71 シャッタ
72 駆動機構
80 露光装置
81 コントローラ
26 波面調節部
261 凸面シリンドリカルレンズ
261a 部分反射コート
262 凹面シリンドリカルレンズ
263 架台
264 移動ステージ
265 レール
266 突起部
267 ステッピングモータ
L1 レーザ光
AX 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光共振器の一方の共振器ミラーとして機能するグレーティングと、
前記共振器ミラー間の光路上に配置された光学素子と、
前記光学素子の姿勢を調節する姿勢制御機構と、
を備えるマスタオシレータシステム。
【請求項2】
前記光学素子は、プリズムであり、
前記姿勢制御機構は、前記プリズムにおけるレーザ光の2つの入出射面をそれぞれ含む2つの面が交差する軸を傾けるように前記プリズムの姿勢を調節する、請求項1記載のマスタオシレータシステム。
【請求項3】
前記姿勢制御機構は、前記共振器内で前記グレーティングに入射するレーザ光の入射角を調節する、請求項2記載のマスタオシレータシステム。
【請求項4】
前記光共振器内で前記グレーティングに入射するレーザ光のビーム幅を調節するビーム幅調節部をさらに備える、請求項2記載のマスタオシレータシステム。
【請求項5】
前記ビーム幅調節部は、1つ以上のビーム幅調節器と、該1つ以上のビーム幅調節器を前記光共振器内を伝播するレーザ光の光路に対して選択的に出し入れ可能な移動機構と、
を含む、
請求項4記載のマスタオシレータシステム。
【請求項6】
各ビーム幅調節部は、前記光学素子として1つ以上のプリズムを含み、
前記移動機構は、前記1つ以上のプリズムの少なくとも1つを前記光路に対して選択的に出し入れし、
前記姿勢制御機構は、前記1つ以上のプリズムの少なくとも1つの姿勢を調節する、
請求項5記載のマスタオシレータシステム。
【請求項7】
前記光共振器内を伝播するレーザ光を増幅する増幅器をさらに備える、請求項2記載のマスタオシレータシステム。
【請求項8】
請求項2記載のマスタオシレータシステムと、
前記マスタオシレータシステムから出力されたレーザ光を増幅する増幅装置と、
を備えるレーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−70029(P2013−70029A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156767(P2012−156767)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】