説明

マフラー

【課題】排気ガスによる熱影響を抑制して薄型化および小型化を促進でき、かつ製作を容易にできるマフラーを提供すること。
【解決手段】マフラー10を、ベース部材14およびカバー部材15により内部にマフラー室が形成されるマフラー本体11と、マフラー室内に収容されてマフラー本体11の排気入口19近傍に位置したバッフル12とを備えて構成し、このバッフル12には、排気入口19から流入する排気ガスの流れを変える案内部28を、バッフル12の一部の切り起こし加工によって一体に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型作業機などに搭載されるエンジン用のマフラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーンソーや刈払機などの携帯型作業機の駆動源としてエンジンが用いられる場合が多く、エンジンには当然、消音用のマフラーが取り付けられている。このようなマフラーとしては、マフラー本体を貫通する複数のボルトによってエンジン本体に取り付けられるのが一般的であり、マフラー本体でのボルトによる締め付け部分の強度を向上させ、かつマフラー本体内へ流入直後の排気ガスを所定方向に流すためのバッフル(仕切筒ともいう)を有しているものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
前記特許文献1に記載のバッフルは、マフラー本体に設けられた排気入口を覆うとともに、マフラー室を仕切るように設けられており、エンジンからの排気ガスは一旦、バッフルで覆われた空間内に入り込んだ後、バッフルの所定位置に穿設された複数の孔からマフラー室に流出するようになっている。
【0004】
【特許文献1】実公平3−32737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マフラー室を仕切るような従来型のバッフルを採用したのでは、排気入口から流入した排気ガスが排気入口と対向するマフラー本体の内壁面に直に衝突するため、この内壁面を過度に加熱することになり、耐久性が低下する。内壁面の加熱による耐久性低下は、携帯型作業機の小型化の要求に伴ってマフラーの薄型化を進めようとした場合に、排気入口と内壁面とが一層近接することで、内壁面がより加熱され易くなることから、特に問題となる。
【0006】
このような問題を避けるためには、排気ガスの流れを所定の方向に変える案内板を排気入口の近傍に設けることが考えられる。この案内板を設けることにより、排気入口から流入した排気ガスは、流入直後に案内板に当たって所定の方向に流れるため、排気入口と対向したマフラー本体の内壁面には排気ガスが直接当たることがなく、過度に加熱される心配がない。そして、過度に加熱されることがないことにより、マフラー本体の厚みも薄くできて薄型化を促進でき、また、マフラー本体に使用する材料の肉厚自身も薄くできて、軽量化も促進できる。
【0007】
ところが、そのような案内板はマフラー本体に対してスポット溶接等によって固着されることになるため、製作に手間がかかったり、溶接代を十分に確保する必要があるために、小型化を十分に達成できなかったりという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、排気ガスによる熱影響を抑制して薄型化および小型化を促進でき、かつ製作を容易にできるマフラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るマフラーは、内部にマフラー室が形成されたマフラー本体と、マフラー室内に収容されてマフラー本体の排気入口近傍に位置したバッフルとを備え、前記マフラー本体の排気入口または前記バッフルには、前記排気入口から流入する排気ガスの流れを変える案内部が、前記マフラー本体または前記バッフルの一部の切り起こし加工によって一体に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係るマフラーは、請求項1に記載のマフラーにおいて、前記マフラー本体には、排気ガスを排気出する排気出口が設けられ、排気出口近傍にはメッシュ状のスパークアレスターが設けられ、このスパークアレスターは、その一部が前記バッフルに当接することで位置決めされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上において、請求項1の発明によれば、排気入口から流入した排気ガスは、案内部によって流れの向きが変えられるため、排気入口に対して近接対向したマフラー本体の内面に直接排気ガスが当たることがなく、当該内面が過度に加熱されることがなくて熱影響を抑制でき、このことにより、対向する内面を排気入口側に一層近づけることができるなど、薄型化を促進できる。また、案内部は切り起こしによって設けられるので、別部材を溶接等で固着する場合に比して溶接代等を不要にでき、よってマフラーの小型化も促進でき、しかも製作を容易にできる。
【0012】
請求項2の発明によれば、バッフルを配置するだけでスパークアレスターを位置決めでき、ずれないようにできるので、専用の位置決め部分を設ける必要がなく、位置決め構造を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るマフラー10を示す全体斜視図、図2は、マフラー10を示す分解斜視図、図3は、マフラー10の断面図であり、図1のIII−III線断面図である。
【0014】
本実施形態のマフラー10は、携帯型作業機としてのチェーンソーに搭載されるエンジン用であり、エンジンの下方に配置される。ただし、本発明のマフラーとしては、チェーンソーに限らず、カットオフソーや、刈払機、エンジンブロワー等、任意の携帯型作業機に適用可能である。
【0015】
具体的にマフラー10は、平面四角形で薄型箱状のマフラー本体11と、マフラー本体11内に収容されたバッフル12と、マフラー10からの火の粉の排出を防止するスパークアレスター13(図3)とを備えている。
【0016】
マフラー本体11は、図2に示すように、上方のベース部材14と、ベース部材14の周縁に連続して設けられた嵌合部14Aに嵌合するカバー部材15とで構成され、互いに分割可能に設けられている。カバー部材15およびベース部材14は板金製であり、各部材14,15に用いられる板金の板厚は、本実施形態では、0.4mm程度である。そして、図3に示すように、各部材14、15の嵌合によって形成されるマフラー本体11の内部空間がマフラー室16になっている。
【0017】
ベース部材14およびカバー部材15には、互いに対応した位置に一対のボルト孔17,18がそれぞれ設けられており、これらのボルト孔17,18に挿入される図示しないボルトにより、マフラー10全体がエンジンに固定される。
【0018】
また、ベース部材14には、ボルト孔17で挟まれた位置に排気入口19が設けられている。エンジンからの排気ガスは、この排気入口19からマフラー室16に入り込む。さらに、ベース部材14において、排気入口19と隣接した隅部には、板金の切り絞り加工等によって形成されたフード20付きの排気出口21が設けられている。マフラー室16内の排気ガスは、この排気出口21から排出される。
【0019】
この排気出口21部分において、ベース部材14の内面には、図3に示すように、フード20と略反対向きの形状をしたプレート部材22が例えばスポット溶接等で固着されている。プレート部材22の固着面側には、ベース部材14の内面から所定幅の隙間を形成するため段差部22Aが設けられており、この隙間を利用してスパークアレスター13が挿入されている。
【0020】
バッフル12は、マフラー室16内において排気入口19に対応した位置に配置されており、ベース部材14の内面に当接される第1面状部23、カバー部材15の内面と当接する第2面状部24、および第1、第2面状部23,24間に介装される一対の帯状の立上部26を備えている。バッフル12も板金製であり、用いられる板金の板厚は、本実施形態では、1.2mm程度である。
【0021】
バッフル12の第1、第2下面状部23,24には、マフラー本体11のボルト孔17,18に対応した計4つの貫通孔25が設けられており、この貫通孔25に前述のボルトが挿通される。図3において、バッフル12の各貫通孔25には、マフラー本体11のボルト孔17,18周縁に形成されたバーリング部分が嵌り込み、また、カバー部材15に設けられた突状部15Aが第2面状部24の開口部27に嵌り込んでいる。このことにより、マフラー10の組立時において、バッフル12がマフラー室16内でずれることなく位置決めされ、ボルトを確実に挿通させることが可能である。さらに、このことによって、バッフル12が図3に示される以外の方向で組み込まれることを防いでいる。
【0022】
そして、マフラー10がバッフル12を通るボルトによりエンジンに取り付けられるに際しては、バッフル12が貫通孔25を取り巻くように立上部26を備えていることで、ボルトの締め付けに対して良好に抗することができ、ボルトの締め付けによるマフラー本体11の変形を抑制することが可能である。つまり、バッフルは、ボルト締め付け部分を補強する補強部材として機能している。
【0023】
また、バッフル12の第1面状部23には、図4にも示すように、板金の切り起こし加工による舌片状の案内部28が一体に設けられている。案内部28は、排気入口19に対応した位置にあり、先端側が図中下向きとなるように第1、第2下面状部23,24間に折り曲げられた状態で傾斜している。
【0024】
この案内部28により、排気入口19から流入した排気ガスはその向きが変えられ、マフラー室16内を排気入口19から見て対角方向に流れた後、マフラー室16内全体に拡がる。従って、バッフル12は、排気ガスの流れを変える部材としても機能しており、この機能によって、排気ガスが排気入口19と近接対向するカバー部材15の内面に直接当たるのを防止し、カバー部材15の内面が過度に加熱されるのを抑制している。
【0025】
図5には、バッフル12の展開図が示されている。板金の打抜加工等で得られた展開状態のバッフル12は、図中の1点鎖線部分の曲げにより立体的なバッフル12として組み立てられる。この際、案内部28などは、切り起こし加工で予め曲げておき、その後に、全体が打ち抜かれてもよく、あるいは、全体が打ち抜かれた後に、曲げられてもよく、加工手順は任意である。なお、図5中には、組立後の立上部26に対応した部位を2点鎖線で第2面状部24上に示してある。
【0026】
ところで、スパークアレスター13は、金属製のメッシュシートであるが、本実施形態では、図3に示すように、プレート部材22の隙間に挿入された状態では、その挿入方向の基端側の端部がバッフル12に当接し、スパークアレスター13が隙間から抜け出すのを防止している。つまりバッフル12は、スパークアレスター13の位置決め部材としても機能している。
【0027】
以上のようなマフラー10は、図2に示す向きとは上下反対の向きで、次のようにして組み立てられる、すなわち、予めベース部材14にプレート部材22を固着しておき、固着した際に生じる隙間にスパークアレスター13を挿入しておく。次いで、立体的に組み立てられたバッフル12をベース部材14内の所定位置に配置し、その上からカバー部材15をベース部材14に対して嵌合する。そして、組み立てられたマフラー10は、ボルト孔17,18に挿通される2本のボルトによりエンジンに取り付けられる。
【0028】
そして、このようなマフラー10では前述したように、バッフル12に案内部28が設けられているため、排気入口19から流入した排気ガスの流れを案内部28によって変えることができ、排気入口19に対して近接対向したカバー部材15の内面に直接排気ガスを当てるのを防止できる。従って、カバー部材15の内面が過度に加熱されることがなくて熱影響を抑制でき、その内面を排気入口19側に一層近づけることができてマフラー10の薄型化を促進できる。また、案内部28は切り起こしによって設けられているので、別部材を溶接等で固着する場合に比して溶接代等を不要にでき、マフラー10の小型化も促進でき、しかも製作を容易にできるのである。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、案内部28がバッフル12の一部を切り起こして設けられていたが、図6に示すように、ベース部材14の一部を切り起こして設けてもよく、このような場合には、切り起こしによって形成される開口部分が排気入口19となる。ただし、ベース部材14はバッフル12に比して板厚が薄いため、このベース部材14と一体で案内部28を設ける際には、案内部28の部分に必要に応じて別プレートを固着するなど、板厚を厚くして耐熱性を向上させておくことが望ましい。また、このような場合のバッフルとしては、ボルトの締め付けによる変形を防止できる補強部材としての構造を有していればよい。
【0030】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、チェーンソー、カットオフソー、刈払機、エンジンブロワーなどの携帯型作業機に搭載されるエンジンのマフラーとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るマフラーを示す全体斜視図。
【図2】マフラーの分解斜視図。
【図3】マフラーの断面図であり、図1のIII−III線断面図。
【図4】バッフルの断面図であり、図2のIV−IV線断面図。
【図5】バッフルの展開図。
【図6】本発明の変形例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
10…マフラー、11…マフラー本体、12…バッフル、13…スパークアレスター
、16…マフラー室、19…排気入口、21…排気出口、28…案内部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にマフラー室が形成されたマフラー本体と、
マフラー室内に収容されてマフラー本体の排気入口近傍に位置したバッフルとを備え、
前記マフラー本体の排気入口または前記バッフルには、前記排気入口から流入する排気ガスの流れを変える案内部が、前記マフラー本体または前記バッフルの一部の切り起こし加工によって一体に設けられている
ことを特徴とするマフラー。
【請求項2】
請求項1に記載のマフラーにおいて、
前記マフラー本体には、排気ガスを排気出する排気出口が設けられ、
排気出口近傍にはメッシュ状のスパークアレスターが設けられ、
このスパークアレスターは、その一部が前記バッフルに当接することで位置決めされている
ことを特徴とするマフラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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