説明

マルチエンジン設備および当該設備の動作方法

本発明は、マルチエンジン設備および前記マルチエンジン設備の動作方法に関する。前記マルチエンジン設備は、複数の、駆動的に機能ユニットに属する内燃機関を有しており、各内燃機関は、適応可能なエンジン制御装置と、前記内燃機関の動作パラメータを測定する少なくとも1つのセンサとを有しており、各エンジン制御装置は、それぞれ付属する前記内燃機関を特定の動作パラメータで動作させるとともに、前記各内燃機関の動作中の前記動作パラメータを、最適化によって、現時点での動作条件に適応させるために設けられており、前記エンジン制御装置は、信号によって互いに接続されているので、前記エンジン制御装置間では、前記内燃機関の最適化に関して情報の交換が保証されているとともに、前記エンジン制御装置は、内燃機関の最適化の結果に基づいて、少なくとも1つのさらなる内燃機関の最適化を行うために、それぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチエンジン設備および当該マルチエンジン設備の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウンシュヴァイク工科大学の内燃機関研究所におけるDr.-Ing. H.Mohrの講義「大型エンジンおよびガスエンジン」のための2009年の講義録第3章からは、マルチエンジン設備の例が知られている。
【0003】
前記マルチエンジン設備は、複数の内燃機関を備えており、各内燃機関は、エンジン制御装置を備えることが可能である。当該エンジン制御装置は、動作継続中に、内燃機関の調整もしくは動作パラメータを、内燃機関の周囲条件、設備の影響、および定格など、内燃機関の現時点での動作条件に適応させるために設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、速度および質に関して向上するように動作の最適化を行う、各内燃機関のためのマルチエンジン設備を提供することにある。さらに、本発明は、当該マルチエンジン設備の動作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、請求項1に記載のマルチエンジン設備もしくは請求項8に記載の方法によって解決される。本発明のさらなる構成は、それぞれ従属請求項において定義されている。
【0006】
本発明の第1の態様によると、複数の、駆動的に機能ユニットに属する内燃機関を有するマルチエンジン設備が提供される。各内燃機関は、適応可能なエンジン制御装置と、内燃機関の定格を測定する少なくとも1つのセンサと、を有している。各エンジン制御装置は、それぞれ付属する内燃機関を特定の動作パラメータで動作させるとともに、各内燃機関の動作中の動作パラメータを、最適化によって、内燃機関の現時点での動作条件に適応させるために設けられている。内燃機関の各エンジン制御装置は、信号によって互いに接続されているので、エンジン制御装置間では、当該内燃機関のその時々の最適化に関して情報の交換が保証されており、エンジン制御装置は、複数の内燃機関の内の1つの内燃機関の最適化の結果に基づいて、複数の内燃機関の内の少なくとも1つのさらなる内燃機関の最適化を行うために、それぞれ設けられている。
【0007】
各内燃機関のエンジン制御装置が、本発明に基づいてネットワーク化されることによって、最適化の結果を相互に交換することが可能になるので、本発明に係るマルチエンジン設備においては、各内燃機関の速度および質に関する動作の最適化は改善される。
【0008】
言い換えると、本発明に係るマルチエンジン設備における内燃機関間の情報交換によって、内燃機関の「経験」が、マルチエンジン設備の1つまたは複数のその他の内燃機関に伝達されるので、前記1つまたは前記複数のその他の内燃機関は、動作挙動において最適化される。
【0009】
本発明の一実施形態によると、動作中の内燃機関であって、そのエンジン制御装置がまさに例えば、存在する燃料および周囲条件などの動作条件に最適化している内燃機関は、その最適化の結果を、マルチエンジン設備の1つまたは複数の残りの内燃機関であって、スタンバイ状態にあるか、または最初に挙げた内燃機関の動作状況にまだ達していない内燃機関に転送することができる。
【0010】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、内燃機関の各エンジン制御装置は、それぞれ、複数の内燃機関の内1つの内燃機関の通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づいて、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関の最適化を行うために設けられている。
【0011】
これは、本発明の一実施形態等によると、特別な動作条件(例えば、高い冷却水の温度、または、高い周囲温度などの厳しい周囲条件)に基づいて、動作中の内燃機関がすでにアラームまたは停止に陥っており、当該内燃機関はその「経験」を、マルチエンジン設備の1つまたは複数の残りの内燃機関に転送可能であり、それによって、該当する残りの内燃機関の各エンジン制御装置は、場合によっては媒体の温度を慎重に低下させるか、またはわずかな動的荷重応答(Lastaufschaltung)のみを許容する場合に利点を有する。
【0012】
この「経験の交換」によって、マルチエンジン設備における不必要な動作アラームおよび場合によっては関連する緊急停止は回避され、その結果、当該設備の動作の安全性もしくは動作の信頼性は向上する。
【0013】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、内燃機関の各エンジン制御装置はそれぞれ、さらなる内燃機関の定格を測定する複数のセンサの内少なくとも1つのセンサが動作に障害を有している場合に、それぞれ付属する内燃機関と同時に、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関を制御するために設けられている。
【0014】
これは、本発明の一実施形態等によると、内燃機関において、エンジン制御装置の1つまたは複数のセンサまたは部分の故障が発生し、この障害を有する内燃機関が、「緊急動作」の枠内において、マスタースレーブ方式で運転される可能性がある場合に利点を有する。その場合、障害を有する内燃機関は、動作中のその他の内燃機関と同じ出力および回転数を有するようにされ、前記その他の内燃機関のエンジン制御装置は、全ての制御命令を、「緊急動作」中の内燃機関に転送する。
【0015】
例えば、本発明の一実施形態によると、2つのL型内燃機関が、ただ1つのV型内燃機関であるかのように運転される。各L型内燃機関は、それぞれ仮のV型内燃機関の一面を表している。
【0016】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、当該設備はさらに負荷制御装置を有している。エンジン制御装置は、それぞれ双方向において、負荷制御装置と信号によって接続されており、当該負荷制御装置は、マルチエンジン設備の現時点での駆動負荷を、各内燃機関の動作パラメータおよび/または定格に基づいて細分化して、複数の内燃機関の内1つの内燃機関または複数の内燃機関に配分するために設けられている。
【0017】
言い換えれば、本発明の一実施形態によると、適応的エンジン制御装置が、負荷制御装置によって実現したマルチエンジン設備の負荷マネジメントに連結され得る。各エンジン制御装置は、例えば上位プログラムなどの論理によって、負荷マネジメントに対して、内燃機関の負荷分散の提案を行う。
【0018】
整備状況および動作状況(例えばウォームアップ時間)などの、エンジン特有の所与状況を考慮することによって、マルチエンジン設備を、その効率および動作の信頼性において、さらに最適化して動作させることができる。
【0019】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、負荷制御装置は、複数の内燃機関の内1つの内燃機関のエンジン制御装置によって、該当する内燃機関にとって問題があると認識された駆動負荷領域を、該当する内燃機関のために残しておくとともに、対応する駆動負荷割合を有する、残された駆動負荷領域を、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関に移動させるために設けられている。
【0020】
言い換えれば、例えば内燃機関が特定の負荷領域において問題を有している場合、当該負荷領域は負荷マネジメントによって回避されるとともに、その他の内燃機関によってカバーされる。
【0021】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、各エンジン制御装置は、それぞれ双方向において互いに信号で接続されている。
【0022】
エンジン制御装置を双方向において信号によって接続すること、もしくは連結することによって、有利な方法で、エンジン制御装置間における包括的なデータ交換もしくは情報交換が保証されるので、1つの内燃機関の全ての有用な情報が、連結しているその他の全ての内燃機関に利用され得る。これによって、マルチエンジン設備の動作の安全性および故障の安全性が補足的に向上する。
【0023】
本発明に係るマルチエンジン設備の一実施形態によると、各エンジン制御装置は、それぞれイーサネット(登録商標)接続によって、互いに信号で接続されている。
【0024】
このような規格化された接続は、一方では、長年の経験と定義された伝達プロトコルとに従って、非常に確実、安定、かつ安価であり、他方では、エンジン制御装置を、インターネット(ワールドワイドウェブ)などを通じて、エンジン製造者および/またはマルチエンジン設備の所有者、例えば船舶所有者の中央コンピュータとさらにネットワーク化する可能性を提供する。
【0025】
本発明の第2の態様によると、マルチエンジン設備を、上述した本発明の1つ、複数、または全ての実施形態に従って、あらゆる考えられる組合せにおいて動作させるための方法が提供される。当該方法には、最適化によって、複数の内燃機関の内1つの内燃機関を動作させるための動作パラメータを、当該内燃機関の現時点での動作条件に適応させることと、内燃機関の最適化の結果に基づいて、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関を動作させるための動作パラメータの最適化を実施することとが含まれている。
【0026】
本発明に係るネットワーク化と、最適化結果の相互交換とによって、本発明に係る方法は、マルチエンジン設備の各内燃機関について、その速度および質に関して改善された動作最適化を得られる。
【0027】
言い換えれば、本発明に係るマルチエンジン設備内で、内燃機関間で本発明に基づいて情報交換を行うことによって、1つの内燃機関の「経験」は、マルチエンジン設備の1つまたは複数のその他の内燃機関に伝達されるので、前記1つまたは複数のその他の内燃機関は、動作挙動において最適化される。
【0028】
本発明の一実施形態によると、動作中の内燃機関であって、そのエンジン制御装置がまさに例えば、存在する燃料および周囲条件などの動作条件に最適化している内燃機関は、その最適化の結果を、マルチエンジン設備の1つまたは複数の残りの内燃機関であって、スタンバイ状態にあるか、または最初に挙げた内燃機関の動作状況にまだ達していない内燃機関に転送することができる。
【0029】
本発明に係る方法の一実施形態によると、当該方法はさらに、複数の内燃機関の内1つの内燃機関の通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づいて、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関を動作させるための動作パラメータの最適化を行う。
【0030】
これは、本発明の一実施形態等によると、特別な動作条件(例えば、高い冷却水の温度、または、高い周囲温度などの厳しい周囲条件)に基づいて、動作中の内燃機関がすでにアラームまたは停止に陥っており、当該内燃機関はその「経験」を、マルチエンジン設備の1つまたは複数の残りの内燃機関に転送可能であり、それによって、該当する残りの内燃機関の各エンジン制御装置は、場合によっては媒体の温度を慎重に低下させるか、またはわずかな動的荷重応答(Lastaufschaltung)のみを許容する場合に利点を有する。
【0031】
この「経験の交換」によって、マルチエンジン設備における不必要な動作アラームおよび場合によっては関連する緊急停止は回避され、その結果、当該設備の動作の安全性もしくは動作の信頼性は向上する。
【0032】
本発明に係る方法の一実施形態によると、当該方法にはさらに、複数の内燃機関の内少なくとも2つの内燃機関を、両方の内燃機関の内1つの内燃機関のエンジン制御装置を用いて、同時に制御することが含まれる。当該制御は、2つの内燃機関の内残りの内燃機関において、残りの内燃機関の定格を測定するセンサの内少なくとも1つのセンサが、動作の障害を有している場合に行われる。
【0033】
これは、本発明の一実施形態等によると、内燃機関において、エンジン制御装置の1つまたは複数のセンサまたは部分の故障が発生し、この障害を有する内燃機関が、「緊急動作」の枠内において、マスタースレーブ方式で運転される可能性がある場合に利点を有する。その場合、障害を有する内燃機関は、動作中のその他の内燃機関と同じ出力および回転数を有するようにされ、前記その他の内燃機関のエンジン制御装置は、全ての制御命令を、「緊急動作」中の内燃機関に転送する。
【0034】
例えば、本発明の一実施形態によると、2つのL型内燃機関が、ただ1つのV型内燃機関であるかのように運転される。各L型内燃機関は、それぞれ仮のV型内燃機関の一面を表している。
【0035】
本発明に係る方法の一実施形態によると、当該方法にはさらに、マルチエンジン設備の現時点での駆動負荷を、各内燃機関の動作パラメータおよび/または定格に基づいて細分化して、複数の内燃機関の内1つの内燃機関または複数の内燃機関に配分することが含まれる。
【0036】
言い換えれば、本発明の一実施形態によると、適応的エンジン制御装置が、負荷制御装置によって実現したマルチエンジン設備の負荷マネジメントと、データの交換を行う。各エンジン制御装置は、例えば上位プログラムなどの論理によって、負荷マネジメントに対して、内燃機関の負荷分散の提案を行う。
【0037】
整備状況および動作状況(例えばウォームアップ時間)などの、エンジン特有の所与状況を考慮することによって、マルチエンジン設備を、その効率および動作の信頼性において、さらに最適化して動作させることができる。
【0038】
本発明に係る方法の一実施形態によると、当該方法にはさらに、複数の内燃機関の内1つの内燃機関のエンジン制御装置によって、該当する内燃機関にとって問題があると認識された駆動負荷領域を、該当する内燃機関のために残すこと、および、対応する駆動負荷割合を有する、残された駆動負荷領域を、複数の内燃機関の内少なくとも1つのさらなる内燃機関に移動させることが含まれる。
【0039】
言い換えれば、例えば内燃機関が特定の負荷領域において問題を有している場合、当該負荷領域は負荷マネジメントによって回避されるとともに、その他の内燃機関によってカバーされる。
【0040】
以下に、本発明を好ましい実施形態に基づき、添付された図を用いて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例に基づく、マルチエンジン設備の概略的斜視図である。
【図2】図1のマルチエンジン設備の、内燃機関に関連する部分を拡大した図である。
【図3】図1のマルチエンジン設備のエンジン制御装置の一実施形態の概略的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1から図3に示したように、マルチエンジン設備1は、本発明の一実施形態によると、複数の、駆動的に機能ユニットに属する、ここではコモンレールエンジンとして構成された内燃機関10を有している(図1および図2を参照)。各内燃機関10は適応的なエンジン制御装置20を有しており、当該エンジン制御装置は、内燃機関10の定格、例えば回転数、出力、および温度など、を測定するセンサ21を少なくとも1つ備えている。
【0043】
特に図2および図3に示したように、各エンジン制御装置20はさらに、制御ユニット22、噴射制御ユニット23、ローカルもしくは各内燃機関10に取り付けられた操作パネル24、追加スイッチキャビネット25、およびリモート操作パネル26を有している。
【0044】
エンジン制御装置20の全ての構成要素は、CAN(コントローラエリアネットワーク)などのシステムバス27、およびイーサネット(登録商標)接続によって、互いに、およびゲートウェイモジュールもしくはエンジン制御装置20のインターフェイスモジュール28と、電気的に信号によって連結されている(図3を参照)。図3の双方向矢印から明らかであるように、システムバス27の全ての接続は、双方向接続として実現している。
【0045】
さらに図3から明らかであるように、各エンジン制御装置20のインターフェイスモジュール28はさらに、遠隔に配置された中央コンピュータなどのオンラインサービスモジュール29と信号によって連結されている。さらに、故障に対する安全性を高めるために、バックアップ操作パネル24’を設けても良い。
【0046】
図1から明らかであるように、マルチエンジン設備1はさらに、負荷制御装置30を有しており、当該負荷制御装置は、双方向の信号接続によって、データ交換のために、各エンジン制御装置20に連結されている。
【0047】
詳細には、制御ユニット22は、好ましくは特にエンジンの制御ならびにアラームシステムおよび安全性システムの制御を行っている。さらに、インターフェイスモジュール28は、好ましくは特に、ゲートウェイもしくはネットワークインターフェイス、特に自動データ測定(例えば測定データ把握)、およびコンフィギュレーションマスターユニットの機能を果たしている。ローカル操作パネル24(もしくはバックアップ操作パネル24’)およびリモート操作パネル26は、好ましくは特に、オペレータを経由したデータおよび制御命令の入力など、データ表示および操作の機能を果たしている。オンラインサービスモジュール29は、好ましくは特に、データ診断およびメンテナンス機能を支援している。
【0048】
追加スイッチキャビネット25は、好ましくは特に、冷却剤の制御など、媒体の制御と、マルチエンジン設備1のポンプ制御とを実現する。さらに、追加スイッチキャビネット25は、好ましくは、アラームシステムおよび安全性システムと、オンラインサービスモジュール29とに対するデータバスインターフェイスを有する。加えて、追加スイッチキャビネット25は、好ましくは、駆動制御システム、ギア、負荷制御装置30などの出力もしくは負荷マネジメント、発電機制御、ポンプ始動機、予熱ユニット、ノズル冷却ユニット、および温度制御弁に対して規格化されたハードウェアインターフェイスを有する。
【0049】
各エンジン制御装置20は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアおよび/またはファームウェアを経由して、それぞれ付属の内燃機関10を特定の動作パラメータ(給気圧、燃料の噴射量および噴射時点など)で動作させるため、および、各内燃機関10の動作中の動作パラメータを、最適化(最適化アルゴリズム)を用いて、内燃機関10の現時点での動作条件に適応させるために設けられている。
【0050】
図1および図3から明らかであるように、内燃機関10の各エンジン制御装置20は、そのそれぞれのインターフェイスモジュール28および双方向のイーサネット(登録商標)接続によって、互いに信号によって接続されているので、エンジン制御装置20の間では、そのそれぞれの最適化に関する情報交換が保証されている。このとき、エンジン制御装置20はそれぞれ、ソフトウェアおよび/またはハードウェアおよび/またはファームウェアを経由して、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10の最適化結果に基づいて、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10の最適化を行うために設けられている。
【0051】
言い換えると、本発明に係るマルチエンジン設備10における内燃機関10間の情報交換によって、内燃機関10の「経験」が、マルチエンジン設備1の1つまたは複数のその他の内燃機関10に伝達されるので、前記1つまたは前記複数のその他の内燃機関10は、動作挙動において最適化される。
【0052】
動作中の内燃機関10であって、そのエンジン制御装置20がまさに例えば、存在する燃料および周囲条件などの動作条件に最適化している内燃機関は、その最適化の結果を、マルチエンジン設備1の1つまたは複数の残りの内燃機関10であって、スタンバイ状態にあるか、または最初に挙げた内燃機関10の動作状況にまだ達していない内燃機関に転送することができる。
【0053】
エンジン制御装置20は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアおよび/またはファームウェアを経由して、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10の通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づいて、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10の最適化を行うために、さらにそれぞれ設けられている。
【0054】
したがって、例えば、特別な動作条件(例えば、高い冷却水の温度、または、高い周囲温度などの厳しい周囲条件)に基づいて、動作中の内燃機関10がすでにアラームまたは停止に陥っている場合に、当該内燃機関10はその「経験」を、マルチエンジン設備1の1つまたは複数の残りの内燃機関10に転送することができるので、該当する残りの内燃機関10の各エンジン制御装置20は、場合によっては媒体の温度を慎重に低下させるか、またはわずかな動的荷重応答(Lastaufschaltung)のみを許容する。
【0055】
エンジン制御装置20は、さらなる内燃機関10の定格を測定する複数のセンサ21の内少なくとも1つのセンサ21が動作に障害を有している場合に、ソフトウェアおよび/またはハードウェアおよび/またはファームウェアを経由して、それぞれ付属する内燃機関10と同時に、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10を制御するために、さらにそれぞれ設けられている。
【0056】
したがって、例えば、内燃機関10において、エンジン制御装置20の1つまたは複数のセンサ21または部分の故障が発生した場合、この障害を有する内燃機関10は、「緊急動作」の枠内において、マスタースレーブ方式で運転可能である。その場合、障害を有する内燃機関10は、動作中のその他の内燃機関10と同じ出力および回転数を有するようにされ、前記その他の内燃機関10のエンジン制御装置20は、全ての制御命令を、「緊急動作」中の内燃機関10に転送する。
【0057】
負荷制御装置30は、ソフトウェアおよび/またはハードウェアおよび/またはファームウェアを経由して、マルチエンジン設備1の現時点での駆動負荷を、各内燃機関10の動作パラメータおよび/または定格に基づいて細分化して、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10または複数の内燃機関10に配分するために設けられており、当該負荷制御装置は、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10のエンジン制御装置20によって、該当する内燃機関10にとって問題があると認識された駆動負荷領域を、該当する内燃機関10のために残しておくとともに、対応する駆動負荷割合を有する、残された駆動負荷領域を、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10に移動させる。
【0058】
言い換えれば、適応的エンジン制御装置20が、負荷制御装置30によって実現したマルチエンジン設備1の負荷マネジメントに連結されており、各エンジン制御装置20は、例えば上位プログラムなどの論理によって、負荷マネジメントに対して、内燃機関10の負荷分散の提案を行う。例えば内燃機関10が特定の負荷領域において問題を有している場合、当該負荷領域は負荷マネジメントによって回避されるとともに、その他の内燃機関10によってカバーされる。
【0059】
本発明に係るマルチエンジン設備1の動作方法の実施形態を以下に示す。
【0060】
本発明に係るマルチエンジン設備1の動作方法において、少なくとも、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10を動作させるための動作パラメータが、最適化によって、内燃機関10の現時点での動作条件に適応させられるとともに、内燃機関10の最適化の結果に基づき、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10を動作させるための動作パラメータの最適化が行われる。
【0061】
さらに、本発明に係る方法においては、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10の、通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づいて、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10を動作させるための動作パラメータの最適化が行われ得る。
【0062】
さらに、本発明に係る方法においては、複数の内燃機関10の内少なくとも2つの内燃機関10、10が同時に、エンジン制御装置20を用いて、2つの内燃機関10、10の内1つの内燃機関によって制御され得るが、それは、2つの内燃機関10、10の内もう一方の内燃機関において、当該もう一方の内燃機関10の定格を測定する複数のセンサ21の内、少なくとも1つのセンサ21が、動作に障害を有している場合である。
【0063】
さらに、本発明に係る方法においては、マルチエンジン設備1の現時点での駆動負荷が、各内燃機関10の動作パラメータおよび/または定格に基づいて細分化して、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10または複数の内燃機関10に配分され得る。
【0064】
最後に、本発明に係る方法においては、複数の内燃機関10の内1つの内燃機関10のエンジン制御装置20によって、該当する内燃機関10にとって問題があると認識された駆動負荷領域は、該当する内燃機関10のために残され、対応する駆動負荷割合を有する、残された駆動負荷領域は、複数の内燃機関10の内少なくとも1つのさらなる内燃機関10に移動させられ得る。
【符号の説明】
【0065】
1 マルチエンジン設備
10 内燃機関
20 エンジン制御装置
21 センサ(複数)
22 制御ユニット
23 噴射制御ユニット
24 ローカル操作パネル
24’ バックアップ操作パネル
25 追加スイッチキャビネット
26 リモート操作パネル
27 システムバス
28 インターフェイスモジュール
29 オンラインサービスモジュール
30 負荷制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の、駆動的に機能ユニットに属する内燃機関(10)を有するマルチエンジン設備(1)において、
各内燃機関(10)は、適応可能なエンジン制御装置(20)を有しており、前記エンジン制御装置は、前記内燃機関(10)の定格を測定する少なくとも1つのセンサ(21)を有しており、
各エンジン制御装置(20)は、それぞれ付属する前記内燃機関(10)を特定の動作パラメータで動作させるとともに、前記各内燃機関(10)の動作中の前記動作パラメータを、最適化によって、前記内燃機関(10)の現時点での動作条件に適応させるために設けられており、
前記内燃機関(10)の前記各エンジン制御装置(2)は、信号によって互いに接続されているので、前記エンジン制御装置(20)間では、前記内燃機関のその時々の最適化に関して情報の交換が保証されており、前記エンジン制御装置は、複数の前記内燃機関(10)の内の1つの内燃機関(10)の最適化の結果に基づいて、複数の前記内燃機関(10)の内の少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)の最適化を行うために、それぞれ設けられていることを特徴とするマルチエンジン設備(1)。
【請求項2】
前記内燃機関(10)の前記各エンジン制御装置(20)は、複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)の通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づいて、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)の最適化を行うために、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項3】
前記内燃機関(10)の前記各エンジン制御装置(20)は、さらなる前記内燃機関(10)の定格を測定する複数のセンサ(21)の内少なくとも1つのセンサ(21)が動作に障害を有している場合に、それぞれ付属する前記内燃機関(10)と同時に、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも1つのさらなる前記内燃機関(10)を制御するために、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項4】
さらに負荷制御装置(30)を有しており、
前記エンジン制御装置(20)は、それぞれ双方向において、前記負荷制御装置(30)と信号によって接続されており、前記負荷制御装置(30)は、前記マルチエンジン設備(1)の現時点での駆動負荷を、前記各内燃機関(10)の前記動作パラメータおよび/または前記定格に基づいて細分化して、複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)または複数の内燃機関(10)に配分するために設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項5】
前記負荷制御装置(30)は、複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)の前記エンジン制御装置(20)によって、該当する前記内燃機関(10)にとって問題があると認識された駆動負荷領域を、該当する前記内燃機関(10)のために残しておくとともに、対応する駆動負荷割合を有する、残された前記駆動負荷領域を、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)に移動させるために設けられていることを特徴とする請求項4に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項6】
前記各エンジン制御装置(20)はそれぞれ双方向に互いに信号によって接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項7】
前記各エンジン制御装置(20)は、それぞれイーサネット(登録商標)接続によって互いに信号で接続されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のマルチエンジン設備(1)。
【請求項8】
複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)を動作させるための動作パラメータを、最適化によって、前記内燃機関(10)の現時点での動作条件に適応させること、および、
前記内燃機関(10)の最適化の結果に基づき、複数の前記内燃機関(10)の少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)を動作させるための動作パラメータの最適化を実施することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のマルチエンジン設備(1)の動作方法。
【請求項9】
さらに、複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)の通常の運転条件におけるアラーム作動および緊急停止に関する情報に基づき、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)を動作させるための動作パラメータの最適化を実施することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
さらに、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも2つの内燃機関(10、10)が、前記2つの内燃機関(10、10)の内1つの内燃機関のエンジン制御装置(20)を用いて、同時に制御され、前記制御は、前記2つの内燃機関(10、10)の内残りの内燃機関において、前記残りの内燃機関(10)の定格を測定する複数のセンサ(21)の内少なくとも1つのセンサ(21)が、動作の障害を有している場合に行われることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記マルチエンジン設備(1)の現時点での駆動負荷を、前記各内燃機関(10)の前記動作パラメータおよび/または前記定格に基づいて細分化して、複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)または複数の内燃機関(10)に配分することを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
複数の前記内燃機関(10)の内1つの内燃機関(10)の前記エンジン制御装置(20)によって、該当する前記内燃機関(10)にとって問題があると認識された駆動負荷領域を、該当する前記内燃機関(10)のために残しておくこと、および、対応する駆動負荷割合を有する、残された前記駆動負荷領域を、複数の前記内燃機関(10)の内少なくとも1つのさらなる内燃機関(10)に移動させることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−501186(P2013−501186A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523202(P2012−523202)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/DE2010/050053
【国際公開番号】WO2011/015198
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510153962)マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー (65)
【Fターム(参考)】