説明

マルチステージシステムにおける増幅器オフセット及びノイズ低減

マルチステージ増幅器システム(200)が、一層良好な整合構成要素及び/又はトリム回路の必要性を低減する、ノイズ及びオフセット寄与を提供する。入力(VIN)を受け取り、出力(VOUT1)を供給する第1の増幅器(106)を有する第1の増幅器ステージ(202)が、第1のオフセット電圧(VOS1)を第1の増幅器ステージに提供し、供給レール(114)に結合される、第1のオフセット電源(110)を含む。出力(VOUT1)を入力として受け取り、出力(VOUT2)を提供する第2の増幅器(108)を有する第2の増幅器ステージ(204)が、第2のオフセット電圧(VOS2)を第2の増幅器ステージに提供する第2のオフセット電源(112)を含む。第2のオフセット電源は、第1のオフセット電圧からのノイズ寄与を低減するように第1の増幅器ステージに結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にマルチステージ増幅器システムに関し、更に特定して言えば、低減されたノイズ及びオフセットを有するマルチステージ増幅器システムに関連する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の2ステージ増幅器システム100を示す。システム100は、一般的に第1のステージ102及び第2のステージ104(これらは一般的各々反転増幅器である)を含む。図から分かるように、レジスタネットワーク(レジスタR1/R2及びレジスタR3/R4)が、それぞれ、演算増幅器106及び108の負の入力端子と出力端子との間に結合され、ステージ102が入力信号VINを受け取ることができ、ステージ104が出力信号VOUT1を受け取ることができるようになっている。また、オフセット電源110及び112が、それぞれ、オフセット電圧VOS1及びVOS2を演算増幅器106及び108に供給する。電源110及び112の各々(これらは、増幅器106及び108の内部オフセットを含む)は、供給レール114(これは一般的に接地される)にも結合される。
【0003】
システム100の構成のため、電源110からのオフセット及びノイズ寄与は、出力信号VOUT2に著しく影響し得る。増幅器ステージ102では、出力信号VOUT1は次のように表すことができる。
(1) VOUT1=−(R2/R1)・(VIN−VOSl)+VOSl
また、増幅器ステージ104、出力信号VOUT2は、次のように表すことができる。
(2) VOUT2=−(R4/R3)・(VOUTl−VOS2)+VOS2
ここで、数式(1)を数式(2)に代入すると、出力信号VOUT2は次のようになる。
【数1】

数式(3)は更に、オフセット電圧VOS1(ここでオフセット電圧VOS2は約0である)の関数として表すこともできる。
【数2】

レジスタR1がブロックキャパシタに結合される(AC結合される)とき、入力信号VINはオフセット電圧VOS1に等しく、次のように数式(3)を変形される。
【数3】

そのため、それぞれ数式(3)から(5)のDC結合された及びAC結合された場合から、オフセット電圧VOS1からの出力電圧VOUT2のノイズ及びオフセット寄与が著しくなり得ることがはっきりとわかる。このため、システム100は、オフセット電圧VOS1からのノイズ及びオフセット寄与を低減させるため、トリム回路の利用又は一層良好なデバイス整合を必要とし得る。
【0004】
幾つかの他の従来の設計は、米国特許番号第3,899,743号、第5,257,285号、第6,642,783号、第7,132,882号、及び米国特許公開番号2006/0279344に説明されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の例示の一実施例が或る装置を提供し、この装置が、入力端子と出力端子とを有し、その入力端子で入力信号を受け取り、第1のオフセット電源を含む、第1の増幅器ステージであって、第1のオフセット電源が、第1のオフセット電圧を第1の増幅器ステージに供給し、供給レールに結合される、第1の増幅器ステージ、及び入力端子と出力端子とを有する第2の増幅器ステージであって、第2の増幅器ステージの入力端子が、第1の増幅器ステージの出力端子に結合され、第2の増幅器ステージが、第2のオフセット電圧を第2の増幅器ステージに提供する第2のオフセット電源を含み、更に、第2のオフセット電源が、第1のオフセット電圧からのノイズ寄与を実質的に低減するように第1の増幅器ステージに結合される、第2の増幅器ステージを含む。
【0006】
本発明の例示の一実施例に従って、第1及び第2の増幅器ステージが、それぞれ、第1の反転増幅器及び第2の反転増幅器を更に含む。
【0007】
本発明の例示の一実施例に従って、第1の反転増幅器が、第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する演算増幅器であって、第2のオフセット電源が演算増幅器の第1の入力端子に結合され、第1のオフセット電源が、演算増幅器の第2の入力端子に結合される、演算増幅器、及び第1の反転増幅器の入力端子、演算増幅器の第1の入力端子、及び演算増幅器の出力端子に結合されるレジスタネットワークを更に含む。
【0008】
本発明の例示の一実施例に従って、レジスタネットワークが、互いに直列に結合される複数のレジスタを更に含む。
【0009】
本発明の例示の一実施例に従って、演算増幅器の第1の入力端子が負の入力端子であり、演算増幅器の第2の入力端子が正の入力端子である。
【0010】
本発明の例示の一実施例に従って、第2の反転増幅器が、第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する演算増幅器であって、第2のオフセット電源が演算増幅器の第2の入力端子に結合される演算増幅器、及び、第1の反転増幅器の出力端子、演算増幅器の第1の入力端子、及び演算増幅器の出力端子に結合されるレジスタネットワークを更に含む。
【0011】
本発明の例示の一実施例に従って、演算増幅器の第1の入力端子が負の入力端子であり、演算増幅器の第2の入力端子が正の入力端子である。
【0012】
本発明の例示の一実施例に従って或る装置が提供される。この装置は、第1の反転増幅器であって、入力信号を受け取る第1のレジスタと、正の入力端子、負の入力端子、及び出力端子を有する第1の演算増幅器であって、負の入力端子が第1のレジスタに結合される、第1の演算増幅器と、第1の演算増幅器の出力端子と第1の演算増幅器の負の入力端子との間に接続される第2のレジスタと、第1の演算増幅器の正の入力端子と接地との間に接続される第1のオフセット電源とを有する第1の反転増幅器、及び第2の反転増幅器であって、第1の演算増幅器の出力端子に結合される第3のレジスタと、負の入力端子、正の入力端子、及び出力端子を有する第2の演算増幅器であって、第2の演算増幅器の負の入力端子が第3のレジスタに結合される第2の演算増幅器と、第2の演算増幅器の出力端子と第2の演算増幅器の負の入力端子との間に接続される第4のレジスタと、第2の演算増幅器の正の入力端子と第1の演算増幅器の負の入力端子と間に接続される第2のオフセット電源とを有する第2の反転増幅器を含む。
【0013】
例示の実施例を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は従来のマルチステージシステムの一例である。
【0015】
【図2】図2は、本発明の例示の一実施例に従ったマルチステージシステムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、本発明の例示の一実施例に従ったマルチステージシステム200を図示する。システム200は、全体として、増幅器ステージ202及び204(これらは、一般的に反転増幅器である)を含む。システム100に比べると、システム200は全般的に同じ構成要素を有する。ただし1つの違いは、電源112が供給レール114ではなく、演算増幅器106の負の入力端子に結合される点である。この変更を行うことにより、出力電圧VOUT1は次のように表される。
【数4】

数式(1)を数式(6)に代入すると次のようになる。
【数5】

数式(7)は更に、オフセット電圧VOS1(ここでオフセット電圧VOS2は約0である)の関数として表すこともできる。
【数6】

また、レジスタR1がブロックキャパシタに結合される(AC結合される)とき、入力信号VINはオフセット電圧VOS1に等しく、次のように数式(7)を変形される。
【数7】

数式(5)を数式(9)と及び数式(4)を数式(8)と比較することにより、出力信号VOUT2のオフセット電圧VOS1からのオフセット寄与が著しく低減され得ることがはっきりと分かる。また、ノイズ寄与について、同じ分析がノイズ分析に当てはまり得、システム100に比べシステム200の低減されたノイズにつながる。
【0017】
一例として、こういったタイプのカスケード配置は典型的にシングルエンドの差動変換に用いられ、ここで差動出力電圧VOUTDiffは次の通りである。
(10) VOUTDiff=VOUT1−VOUT2
数式(1)及び(2)(従来のシステム100用)を数式(10)に代入して差動出力電圧VOUTDiffを得ることができ、これは次のようになる。
【数8】

代替として、数式(1)及び(6)(システム200用)を数式(10)に代入して差動出力電圧VOUTDiffを得ることができ、これは次のようになる。
【数9】

数式(11)及び(12)を比較し、入力信号VIN及びオフセット電圧VOS2寄与が両方に対し明らかに同じであるのに対し、オフセット電圧VOS1寄与が著しく低減される。また、(シングルエンド変換に対する差動において)レジスタR4/R3の比は一般的に1であるため、式(11)及び(12)は、次のように書くことができる(ここで入力信号VIN及びオフセット電圧VOS2寄与は低下している)。
【数10】

システム200は、システム100より優れた性能を有することが明らかである。
【0018】
例示の実施例の文脈で説明したような特徴又は工程のすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明した1つ又はそれ以上の特徴又は工程の異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることも意図している。当業者であれば、他の多くの実施例及び変形も特許請求の範囲に包含されることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
入力端子と出力端子とを有し、その入力端子で入力信号を受け取り、第1のオフセット電源を含む、第1の増幅器ステージであって、前記第1のオフセット電源が、第1のオフセット電圧を前記第1の増幅器ステージに供給し、供給レールに結合される、前記第1の増幅器ステージ、及び
入力端子と出力端子とを有する第2の増幅器ステージであって、前記第2の増幅器ステージの前記入力端子が、前記第1の増幅器ステージの前記出力端子に結合され、前記第2の増幅器ステージが、第2のオフセット電圧を前記第2の増幅器ステージに提供する第2のオフセット電源を含み、更に、前記第2のオフセット電源が、前記第1のオフセット電圧からのノイズ寄与を実質的に低減するように前記第1の増幅器ステージに結合される、前記第2の増幅器ステージ、
を含む、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、前記第1及び第2の増幅器ステージが、それぞれ、第1の反転増幅器及び第2の反転増幅器を更に含む、装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、前記第1の反転増幅器が、
第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する演算増幅器であって、前記第2のオフセット電源が前記演算増幅器の第1の入力端子に結合され、前記第1のオフセット電源が、前記演算増幅器の前記第2の入力端子に結合される、前記演算増幅器、及び
前記第1の反転増幅器の前記入力端子、前記演算増幅器の前記第1の入力端子、及び前記演算増幅器の前記出力端子に結合されるレジスタネットワーク、
を更に含む、装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、前記レジスタネットワークが、互いに直列に結合される複数のレジスタを更に含む、装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、前記演算増幅器の前記第1の入力端子が負の入力端子であり、前記演算増幅器の前記第2の入力端子が正の入力端子である、装置。
【請求項6】
請求項2に記載の装置であって、前記第2の反転増幅器が、
第1の入力端子と第2の入力端子と出力端子とを有する演算増幅器であって、第2のオフセット電源が前記演算増幅器の前記第2の入力端子に結合される前記演算増幅器、及び、
第1の反転増幅器の前記出力端子、前記演算増幅器の前記第1の入力端子、及び前記演算増幅器の前記出力端子に結合されるレジスタネットワーク、
を更に含む、装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、前記レジスタネットワークが、互いに直列に結合される複数のレジスタを更に含む、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記演算増幅器の前記第1の入力端子が負の入力端子であり、前記演算増幅器の前記第2の入力端子が正の入力端子である、装置。
【請求項9】
第1の反転増幅器であって、
入力信号を受け取る第1のレジスタと、
正の入力端子、負の入力端子、及び出力端子を有する第1の演算増幅器であって、前記負の入力端子が第1のレジスタに結合される、前記第1の演算増幅器と、
前記第1の演算増幅器の前記出力端子と前記第1の演算増幅器の前記負の入力端子との間に接続される第2のレジスタと、
前記第1の演算増幅器の前記正の入力端子と接地との間に接続される第1のオフセット電源と、
を有する前記第1の反転増幅器、及び
第2の反転増幅器であって、
前記第1の演算増幅器の前記出力端子に結合される第3のレジスタと、
負の入力端子、正の入力端子、及び出力端子を有する第2の演算増幅器であって、前記第2の演算増幅器の前記負の入力端子が前記第3のレジスタに結合される前記第2の演算増幅器と、
第2の演算増幅器の前記出力端子と第2の演算増幅器の前記負の入力端子との間に接続される第4のレジスタと、
前記第2の演算増幅器の前記正の入力端子と前記第1の演算増幅器の前記負の入力端子と間に接続される第2のオフセット電源と、
を有する前記第2の反転増幅器、
を含む、装置。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−521742(P2013−521742A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−557031(P2012−557031)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061514
【国際公開番号】WO2011/109056
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
【Fターム(参考)】