説明

マルチパック用包装箱

【課題】 箱内に収納され保持されている容器の保持力の向上が図れ、なおかつ、マルチパック包装箱の展開図の幅方向および長さ方向の長さを短縮させることができ、原紙使用効率を向上させることが可能であるマルチパック用包装箱を提供する。
【解決手段】 側面板の両端部の上面板側には、内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片と抜き止め帯片を有する保持フラップ機構部が形成されており、上面板と側面板との折り線箇所に、少なくとも開口部に近い箇所に位置する両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴であって、収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴が形成されており、上部開口穴と保持フラップ機構部によって、容器の上面の外方が係止されるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等ノンアルコール飲料缶等の一定数量の容器を並列した状態のまま包装するマルチパック用包装箱に関する。なお、本発明でいう「容器」とは、内容物が充填されている製品の形態のものをいう。
【背景技術】
【0002】
従来から、缶ビールや缶ジュース等の複数個の容器を複数個一列あるいは複数列で起立させた状態のまま整列させて置き、つぎに容器の上部、側部および下部を包み込むようにして包装し、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成された紙製のマルチパック用包装箱が使用されている。
【0003】
このようなマルチパック用包装箱の使用により、複数個の缶ビールや缶ジュース等を1個の包装体にまとめて一度にかつ簡易に持ち運ぶことができるようになり、さらに、纏め売りの効果も相俟って当該マルチパック用包装箱の使用が近年急速に拡大しつつある。
【0004】
このようなマルチパック用包装箱においては、容器群の一部の側面が覗く開口部に、内容物の飛び出しや脱落を防止するために、内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片と、この当該押込フラップ片の上下にそれぞれ連接されて上面板の隅部および底面板の隅部にまで至る上部抜き止め片(上部ガゼット)および下部抜き止め片(下部ガゼット)が、それぞれ、連接されて構成されているものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−161337号公報
【特許文献2】USP 6988617 B2
【0006】
このようなマルチパック用包装箱は、上述のごとく容器を纏め、一度にかつ簡易に持ち運ぶことができることが基本であるので、安全面を考慮すれば、押込フラップ片等による容器の保持力はできるだけ高いことが要望されている。また、紙原料の使用量の削減(板紙幅、長さを縮小させて使用面積を小さくする)も含めて製造コストの低減に寄与できる包装箱仕様であることも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような実状のもとに、本発明は創案されたものであって、その目的は、箱強度や保持力等の必要な機能を維持させるとともに、紙原料の使用量の削減を図り製造コストの低減に寄与できる新規なマルチパック用包装箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願に係る発明者が、包装箱の開口部に近い箇所に位置する両端部の容器に対応して形成される上部開口穴と、側面板の両端部の上面板側に形成されて容器を保持する機能を有する保持フラップ機構部と、の双方での協働作用によって、容器を保持させるような仕様変更を試みたところ、箱内に収納されて保持される容器の保持力が格段と向上し、なおかつ、マルチパック包装箱の展開図の幅方向および長さ方向の長さを短縮させることができ、原紙使用効率を向上させることができるということを見出し、本願発明に想到したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、並列に配置された複数個の容器群の上面を覆う上面板と、この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆うように配置された対向する側面板と、これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、前記底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されるマルチパック用包装箱において、前記側面板の両端部の上面板側には、内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片と抜き止め帯片を有する保持フラップ機構部が形成されており、前記上面板と前記側面板との折り線箇所に、少なくとも開口部に近い箇所に位置する両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴であって、収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴が形成されており、前記上部開口穴と前記保持フラップ機構部によって、前記容器の上面の外方が係止されるように構成される。
【0010】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴の中心線は、前記側面板の端に位置して収納されている対応する容器の中心線より、外方にずれて形成されるように構成される。
【0011】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記保持フラップ機構部は、山折り線を介して包装箱の内部に折り込まれる押込フラップ片と、当該押込フラップ片に谷折り線を介して連結され、容器を係止する抜き止め帯片を有して構成されており、抜き止め帯片の一部が前記上部開口穴の開口によって形作られるように構成される。
【0012】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記山折り線の片端および前記谷折り線の片端は、それぞれ、前記上部開口穴に至るまで延設されているように構成される。
【0013】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記山折り線は、前記上面板に向かうにつれて開口部である外側方向側に傾斜したラインとして構成される。
【0014】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記上面板と前記側面板との折り線箇所に、各容器に対応して収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴が形成されるように構成される。
【0015】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記上部開口穴を、前記側面板の開口部側の両端にそれぞれ形成される端部開口穴と、端部開口穴よりも内側に形成されている中部開口穴とに分けた場合において、前記中部開口穴の幅P22の方が端部開口穴の幅P11よりも大きくなるように構成される。
【0016】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記上部開口穴を、前記側面板の開口部側の両端にそれぞれ形成される端部開口穴と、端部開口穴よりも内側に形成されている中部開口穴とに分けた場合において、前記中部開口穴の開口面積S2の方が端部開口穴の開口面積S1よりも大きくなるように構成される。
【0017】
本発明のマルチパック用包装箱の好ましい態様として、前記底面板と前記側面板との折り線を跨ぐように容器底固定片が形成されるように構成される。
【0018】
本発明のマルチパック包装製品は、上記記載のマルチパック用包装箱に容器を収納することによって構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明のマルチパック用包装箱は、包装箱の開口部に近い箇所に位置する両端部の容器に対応して形成される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴と、側面板の両端部の上面板側に形成されて容器を保持する機能を有する保持フラップ機構部と、の双方での協働作用によって容器を保持させるように構成しているために、箱内に収納される容器の保持力が格段と向上するという効果が発現する。しかも、マルチパック包装箱の展開図の幅方向および長さ方向の長さを短縮させることができ、原紙使用効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のマルチパック用包装箱の展開図の一例を示したものである。
【図2】図2は、図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てたマルチパック用包装箱の斜視図である。
【図3】図3は、図1に示される展開された箱オリジナル紙に缶製品を収納した状態で組み立てた斜視図である。
【図4】図4は、図1に示されるA部の拡大図であり、保持フラップ機構部とこれに隣接する上部開口穴(端部開口穴)を主として示した部分拡大図である。
【図5】図5は、上面板とこの上面板の両端に連接する側面板の接合部近傍を示した部分拡大平面図である。当該図面においては、容器として缶容器の図面を追加記載しており、包装仕様と容器との関係をも示している。
【図6】図6は、容器底固定片を2段に折り曲げて容器底ドーム空間内(凹部)に挿着するとともに容器が動かないように固定した状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
【図7】図7は、図1に示されるB部の拡大図であり、容器底固定片の近傍を主として示す部分拡大平面図である。
【図8】図8は、図7に相当する図面であって、容器底固定片の他の実施形態を示す平面図である。
【図9】図9は、容器保持力のテストを説明するための模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のマルチパック用包装箱1の好適な形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明のマルチパック用包装箱1の展開図の一例を示したものであり、図2は、図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図であり、図3は、図1に示される展開された箱オリジナル紙を組み立てた斜視図であり、包装箱の中に缶ビールで代表される缶容器が収納されている状態を示す斜視図である。
【0023】
図4は、図1に示されるA部の拡大図であり、本発明の要部である保持フラップ機構部とこれに隣接する上部開口穴(端部開口穴)を主として示した部分拡大図である。
【0024】
本発明における好適な実施の形態として、缶ビールを6個収納(直列した3缶を2列に並列させて収納)することができる一般的なマルチパック用包装箱1を一例にとって説明する。
【0025】
本発明のマルチパック用包装箱1は、図1に示される展開シート(パック用シート)を組み立てることによって形成することができ、展開シートは、図1に示されるごとく横長の略矩形形状をなしている。
【0026】
本発明では、図1における縦辺1a方向を便宜上、『幅方向(図1の矢印で幅方向と示された箇所を参照)』と呼ぶ。横辺1b方向を『長さ方向』と呼ぶ。
【0027】
図1に示される展開シートにおいて、その中央部は上面板2を構成し、その両端にそれぞれ、側面板3、4が連接されている。そして、側面板3の先端側となる図面の左側部分には底面板5が形成され、側面板4の先端側となる図面の右側部分には底面板6がそれぞれ形成されている。
【0028】
上面板2は、本実施形態においては、直列3個を並列2列に起立状態に整列させた缶ビール6個の上面を覆うように、図面の縦辺1a方向には略ビール缶3缶分、横辺1b方向には略ビール缶2缶分の長さからなる面積を備えている。上面板2の両側には缶ビールの側部を覆うようにその高さに相当する側面板3、4がそれぞれ境界線をなす折り線2aを介して連接されている。
【0029】
底面板5,6には互いに係着し得る係止部7(底面板5側)および係止部8(底面板6側)が、それぞれ形成されている。係止部7の係止孔7aと係止部8の切り込み部分8aとが対になり、また、係止部7の切り込み孔7bと係止部8の係止片部分8bとが対となり双方の底面板5,6が係止される。
【0030】
そして、これらの底面板5、6を係着することにより、缶ビール等の容器群を包むように収納できるマルチパック用包装箱1が組立てられる。その結果、側面板3、4が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部Pが、それぞれ形成されることになる。
【0031】
図1に示されるように、側面板3,4の両端部(開口部P側)の上面板2側には、内部に収納される容器が包装箱の開口部Pから、飛び出したり脱落しないように容器の上部を保持するための保持フラップ機構部90が形成されている。
【0032】
保持フラップ機構部90は、開口部Pの内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片92と、容器の上部を係止して抜き止め作用をする抜き止め帯片91を有して構成される。
【0033】
さらに、上面板2と側面板3,4との折り線2aの箇所には、少なくとも開口部Pに近い箇所に位置する両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴21が形成されている。、この両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴21によって、収納される容器の上部が係止される。ここに言う、折り線2aの箇所とは、厳密には、側面板3,4の箇所が主体となっていることを意味し、大部分の上部開口穴21は、側面板3,4側に形成されている。本発明においては、上記の上部開口穴21と前記保持フラップ機構部90の双方の係止の効果によって、これらと係合される容器の保持力が格段と向上する。さらには、このような仕様により包装箱寸法の幅方向および長さ方向の短縮化が図られ、紙原料の使用量の削減を図ることができる。なお、本発明でいう、『容器の保持力が向上されている』とは、特開2004−161337号公報に開示されている仕様と極めて類似する現行仕様のマルチパック用包装箱を基準仕様として、この基準仕様と比較して保持力の向上が確認できる包装箱をいう。
【0034】
本発明の要部を構成する保持フラップ機構部90について図1および図4を参照しつつさらに詳細に説明する。保持フラップ機構部90の一部を構成する押込フラップ片92は、山折り線92aを介して包装箱の内部に折り込まれる。そのため、山折り線92aの箇所は、包装箱として形成された場合、側面板3,4の開口部P側の端部を構成することになる。容器を係止する抜き止め帯片91は、押込フラップ片92に谷折り線91aを介して連結されており、抜き止め帯片91と押込フラップ片92との境の一部はカット線91bによって、幅方向に切断されている。このカット線91bの存在によって、押込フラップ片92の包装箱の内部への折り込み、および抜き止め帯片91の谷折りの操作が可能となる。
【0035】
また、本発明における抜き止め帯片91の帯状形態の片端部91´は、前記端部に位置する上部開口穴21の開口形態によって形作られている。そして、前記山折り線92aの片端および前記谷折り線91aの片端は、それぞれ、上部開口穴21に至るまで延設されている。
【0036】
図4に示されるように山折り線92aは本実施形態の場合、上面板2に向かうにつれて開口部Pである外側方向側に傾斜したライン(縦辺1a方向に対して傾斜角度θ=1〜5°、好ましくは2〜4°)として構成されている。この傾斜したラインは、収納される缶製品の胴径等に応じて、保持力を最適化できるように適宜設定するようにすれば良い。なお、上面板2との境に位置する抜き止め帯片91の端部における符号91cは、山折り線91cであり、この部分は、容器の上部と係合している。
【0037】
また、本発明において、両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴21の開口形態は、図4に示されるように、略逆三角形形状であって、最下点が側面板3,4の開口部P側にシフトしたような形態(略逆直角三角形形状)とすることが望ましい。
【0038】
また、図5に示されるように、両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴21の中心線G1は、両端部に位置して収納されている容器の中心線B1より、外方(開口部側)にずれるようにすることが望ましい。端部に位置する上部開口穴21の中心線G1は、端部基準線L1に平行となるように引かれた線である。容器の中心線B1も、端部基準線L1に平行となるように引かれた線である。ずれ距離K1(単位:mm)は、0.5〜3.0mm程度に設定すればよい。このようにして両端部に位置する上部開口穴21の中心位置を、缶容器の中心位置に対して、紙幅方向の外側に向けて所望の距離K1のずれを生じさせることによって、缶の保持力が向上する傾向が生じる。なお、図5において、符号Dは、容器胴部の直径であり、符号Doは、容器上蓋口部の直径である。
【0039】
本発明マルチパック用包装箱においては、上述のごとく容器の保持力を向上させるために、開口部Pに近い箇所に位置する両端部の容器に対応して、保持フラップ機構部90と、上部開口穴21とを設けることが必須の要件となる。さらに好ましい態様としては、図1に示されるように上面板2と側面板3,4との折り線2aの箇所に、各容器に対応して収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴22を設けることが望ましい。これによって、さらに容器の保持力が向上するとともに、縦辺1a方向の長さの必要量を低減させることができ、原紙使用効率を向上させることが可能となる。ここに言う、折り線2aの箇所とは、前記同様に側面板3,4の箇所が主体となっていることを意味し、実質的な大部分の上部開口穴22は、側面板3,4に形成されていることを意味している。
【0040】
前述した上部開口穴という文言を、前記側面板3,4の開口部P側の両端にそれぞれ形成される端部開口穴21と、この端部開口穴21よりも内側に形成されている中部開口穴22とに分けた場合、図5に示される中部開口穴の幅P22は、端部開口穴の幅P11よりも大きくなるように形成されることが望ましい。これらの幅の比である(P22/P11)は、1.1〜1.5の範囲、より好ましくは、1.2〜1.4の範囲とされる。さらに、中部開口穴22の開口面積S2の方が端部開口穴21の開口面積S1よりも大きくなるように形成されることが好ましい。これらの開口面積比(S2/S1)は、1.1〜3.1の範囲とされることが望ましい。
【0041】
図1に示される展開図において、符号16は指を挿入して持ち上げるためのフィンガーホール(2箇所)、符号17は切り取り線をそれぞれ表している。上面板2に符号17で示されている切り取り線は、上面引裂き開口片を形成している。図1の符号17a側から上面引裂き開口片の引き剥がし操作が開始できるようになっている。符合30は、容器底固定片であり、底面板と側面板との折り線3a,5aを跨ぐように形成されている。容器底固定片30は、図1や図2に示されるように、その一辺が基部33として底面板3,5に固着されているとともに、容器底固定片30の形態に沿って底面板3,5から切り取られた後、基部33を基線として可動状態にある可動片として構成される。
【0042】
容器底固定片30は、図6に示されるように缶容器100の容器底ドーム空間115内に潜り込ませて、可動片の先端35がリング状の凸状リム部111の内側湾曲部に当接されるように構成される。これによって、容器の固定がアシストされる。
【0043】
好適な容器底固定片30の形態について、以下説明しておく。
【0044】
(1)図7に示される容器底固定片30の形態
基部に近い両側部の幅で規定される基準幅をW0(この部分を『基部端部』と称す)とした場合、前記基準幅W0の基部近傍から、先端部の容器底の固定に必要な設置幅W1に至るまでに、基準幅W0よりも広幅の2つの拡張部38、36が形成されている。鏡像関係にある一対の拡張部38,38又は36,36を纏めて1つの拡張部としてカウントする。片の先端35形状は、図6に示されるように、容器100の容器底110の周縁に形成されたリング状の凸状リム部111の内側湾曲形状に沿った形状とされる。リング状の凸状リム部111の内側に当接させ、保持力を向上させるためである。
【0045】
図7に示される実施形態の容器底固定片30は、基部33から片の先端に向かっていく途中に、外方に脹らむ第1の拡張部38(幅W4)が形成され、さらに先端側に、第2の拡張部36(幅W5)が形成されている。つまり、2つの広幅の拡張部のうち、第2の拡張部36が、容器底の固定に必要な設置幅W1に至る直前に形成されており、第1の拡張部38が第2の拡張部36よりも基部33側に形成されている。第2の拡張部36を形成することにより、容器底固定片の先端における容器底の固定に必要な設置幅W1を増大させることができるとともに、極端な凹凸のない簡易な容器底固定片30の形態が実現でき、高速自動ケーサーによるパッケージングをより確実に行なうことができる。
【0046】
(2)図8に示される容器底固定片30の形態
図8に示されるように基部に近い両側部の幅で規定される基準幅W0よりも広幅W4の拡張部38,38が可動片の先端に向かって両側部に形成されている。なお、鏡像関係にある拡張部38,38を纏めて1つの拡張部としてカウントする。
【0047】
図8の形態においては、基準幅W0の基部近傍から広幅の拡張部38,38に至るまでに、可動片の両側部にそれぞれ括れ部39,39(幅W2)が形成されている。すなわち、容器底固定片30は、基部33から片の先端に向かっていく途中に括れ部39が形成され、当該括れ部39からさらに片の先端に向かう両側部に、それぞれ、外方に脹らむ拡張部38が形成されている。
【0048】
なお、上述してきた容器底固定片30は容器の保持力をアシストするものであり、存在させることが好ましいが、存在させない仕様とすることもできる。
【0049】
上述してきた要部構成を備える本発明のマルチパック用包装箱の中に容器を収納することにより、マルチパック包装製品が完成する。
【0050】
なお、本発明における実施形態では缶ビールの包装を例にとって説明したが、このものに限定されるものではない。例えば、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等のノンアルコール飲料缶などその他の各種缶製品にも適用できることは勿論のことである。
【0051】
以下、具体的実験例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0052】
〔実験例〕
比較例1のマルチパック用包装箱
上記の特許文献1(特開2004−161337号公報)に記載された形態と略同等である現行品を比較例1のマルチパック用包装箱とした。すなわち、上部開口穴(端部開口穴21)が全く形成されていない仕様であって、かつ、押込フラップ片の上下にそれぞれ連接されて上面板の隅部および底面板の隅部にまで至る上部抜き止め片(上部ガゼット)および下部抜き止め片(下部ガゼット)が、それぞれ、連接されて構成されている仕様とした。
【0053】
被包装物として用いた缶容器は、容器胴の直径D=66mm、上蓋口部の直径Do=56.4mmの350mlの缶ビール容器とした。
【0054】
実施例1のマルチパック用包装箱
図1に示されるような6缶入りのマルチパック用包装箱を用いて、中部開口穴22を端部開口穴21,21よりも大きくする仕様、すなわち、開口面積比(S2/S1)=1.39とした。また、所望のずれ量である偏芯量の距離K1=0(偏芯量ゼロ)とした。容器底固定片30は比較例1との比較の公正を期すために使用しなかった。用いた缶容器は、上記と同様の350mlの缶ビール容器とした。
【0055】
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.3%の長さであった。
【0056】
実施例2のマルチパック用包装箱
上記実施例1のマルチパック用包装箱のサンプルにおいて、所望のずれ量である偏芯量の距離K1=2.0とした。それ以外は、上記実施例1のマルチパック用包装箱と同様にして、実施例2のマルチパック用包装箱を作製した。
【0057】
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.3%の長さであった。
【0058】
実施例3のマルチパック用包装箱
上記実施例1のマルチパック用包装箱のサンプルにおいて、所望のずれ量である偏芯量の距離K1=3.0とした。それ以外は、上記実施例1のマルチパック用包装箱と同様にして、実施例3のマルチパック用包装箱を作製した。
【0059】
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.3%の長さであった。
【0060】
実施例4のマルチパック用包装箱
上記実施例1のマルチパック用包装箱において、中部開口穴22を設けなかった。それ以外の仕様は上記実施例1のマルチパック用包装箱と同様にして、実施例4のマルチパック用包装箱を作製した。用いた缶容器は、上記と同様の350mlの缶ビール容器とした。
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.7%の長さであった。
【0061】
実施例5のマルチパック用包装箱
上記実施例2のマルチパック用包装箱において、中部開口穴22を設けなかった。それ以外の仕様は上記実施例2のマルチパック用包装箱と同様にして、実施例5のマルチパック用包装箱を作製した。用いた缶容器は、上記と同様の350mlの缶ビール容器とした。
【0062】
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.7%の長さであった。
【0063】
実施例6のマルチパック用包装箱
上記実施例3のマルチパック用包装箱において、中部開口穴22を設けなかった。それ以外の仕様は上記実施例3のマルチパック用包装箱と同様にして、実施例6のマルチパック用包装箱を作製した。用いた缶容器は、上記と同様の350mlの缶ビール容器とした。
【0064】
図1に示される展開図において、縦辺1a方向(幅方向)の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して92.5%の長さであり、横辺1b方向の最大長さは、上記比較例1の現行マルチパック用包装箱のそれと比較して96.7%の長さであった。
【0065】
上記の各仕様のマルチパック用包装箱サンプルについて、容器保持力のテストを下記の要領で行なった。
【0066】
<容器保持力のテスト>
図9に示されるように、直列した3缶を2列に並列させて収納した各マルチパック用包装箱サンプルについて、2列の左右から入れ違いの状態で互いに押圧センサーP付きの押し込み装置で直列した3缶の高さ中央を押圧し、直列した3缶の群が互いに包装箱の開口部Pから抜け出すまでの最大押圧量を左右それぞれの押圧センサーPで測定した。左右の値の平均値を求め、容器保持力として評価した。サンプル数n=5とした。
【0067】
結果を下記表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
なお、測定データである「容器保持力」は、比較例1を1.00として、この値との関係で、相対評価値として表した。「缶保持力」の値が大きいほど、容器がしっかりと保持されており、容器保持力が高いことを意味する。なお、「容器保持力」測定に際して容器の破損は生じておらず、破損強度にも優れていることが確認されている。
【0070】
また、上記の効果に加えて、本発明のマルチパック用包装箱は、マルチパック包装箱の幅方向および長さ方向の長さを短縮させることができ、原紙使用効率を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のマルチパック用包装箱は、例えば缶ビール、発泡酒缶、チューハイ缶等のアルコール飲料缶や、缶ジュース、缶コーヒー、缶紅茶、缶入り茶等ノンアルコール飲料缶等の一定数量の容器を包装するための包装箱であり、包装産業一般に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…マルチパック用包装箱
2…上面板
3、4…側面板
5、6…底面板
21…上部開口穴(端部開口穴)
22…上部開口穴(中部開口穴)
30…容器底固定片
90…保持フラップ機構部
91…押込フラップ片
92…抜き止め帯片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数個の容器群の上面を覆う上面板と、
この上面板の両側部に連接され並列された各容器の側面を覆うように配置された対向する側面板と、
これら側面板に連接され互いに係着しうる係止部を有する底面板とを備え、前記底面板を係着することにより前記容器群を包むように収納することができるとともに、側面板が存在しない両端部において容器群の一部の側面が覗く開口部が形成されるマルチパック用包装箱において、
前記側面板の両端部の上面板側には、内側に折り込まれて容器を保持する機能を有する押込フラップ片と抜き止め帯片を有する保持フラップ機構部が形成されており、
前記上面板と前記側面板との折り線箇所に、少なくとも開口部に近い箇所に位置する両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴であって、収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴が形成されており、
前記上部開口穴と前記保持フラップ機構部によって、前記容器の上面の外方が係止されることを特徴とするマルチパック用包装箱。
【請求項2】
前記両端部の容器に対応して設けられた上部開口穴の中心線は、前記側面板の端に位置して収納されている対応する容器の中心線より、外方にずれて形成されている請求項1に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項3】
前記保持フラップ機構部は、山折り線を介して包装箱の内部に折り込まれる押込フラップ片と、当該押込フラップ片に谷折り線を介して連結され、容器を係止する抜き止め帯片を有して構成されており、抜き止め帯片の一部が前記上部開口穴の開口によって形作られている請求項1または請求項2に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項4】
前記山折り線の片端および前記谷折り線の片端は、それぞれ、前記上部開口穴に至るまで延設されている請求項3に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項5】
前記山折り線は、前記上面板に向かうにつれて開口部である外側方向側に傾斜したラインとして構成される請求項4に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項6】
前記上面板と前記側面板との折り線箇所に、各容器に対応して収納される容器の上面の外方を係止するための上部開口穴が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項7】
前記上部開口穴を、前記側面板の開口部側の両端にそれぞれ形成される端部開口穴と、端部開口穴よりも内側に形成されている中部開口穴とに分けた場合において、前記中部開口穴の幅P22の方が端部開口穴の幅P11よりも大きくなるように形成される請求項6に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項8】
前記上部開口穴を、前記側面板の開口部側の両端にそれぞれ形成される端部開口穴と、端部開口穴よりも内側に形成されている中部開口穴とに分けた場合において、前記中部開口穴の開口面積S2の方が端部開口穴の開口面積S1よりも大きくなるように形成される請求項6または請求項7に記載のマルチパック用包装箱。
【請求項9】
前記底面板と前記側面板との折り線を跨ぐように容器底固定片が形成される請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のマルチパック用包装箱。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のマルチパック用包装箱に容器を収納してなるマルチパック包装製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−121610(P2012−121610A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274770(P2010−274770)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】