説明

マルチビュー間隔での高速kV変調を用いてデュアルスペクトルCTを実行するための方法及び装置

【課題】単一スキャンの間に複数のエネルギー状態で撮像データを収集する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】CTシステムは、発生器に対してX線源を第1の持続時間(74)にわたって第1の電圧(70)に付勢させること、少なくとも第1の持続時間(74)の間に少なくとも1つのビュー(76)に関する撮像データを収集すること、第1の持続時間(74)の後で、発生器に対してX線源を第2の持続時間(78)にわたって第2の電圧(72)に付勢させること、並びに少なくとも第2の持続時間(78)の間に2つ以上のビュー(80)に関する撮像データを収集すること、を行うように構成された制御器を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には診断用撮像に関し、さらに詳細には、マルチビュー間隔で変調されたマルチエネルギー撮像源を用いて複数のエネルギー域で撮像データを収集する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層(CT)撮像システムでは典型的には、患者や荷物など検査対象や被検物に向けてX線源が扇形状にビームを放出する。以下において「検査対象(subject)」及び「被検物(object)」という用語は、撮像の対象となり得る任意のものを含むものとする。このビームは、検査対象により減衰を受けた後、放射線検出器のアレイに当たる。検出器アレイの位置で受け取った減衰ビーム放射の強度は典型的には検査対象によるX線ビームの減衰に依存する。検出器アレイの各検出器素子は、各検出器素子が受け取った減衰ビームを表す電気信号を別々に発生させる。この電気信号は、最終的に画像作成の解析のためにデータ処理システムに送られる。
【0003】
一般的にはX線源と検出器アレイを、撮像面内で検査対象を取り囲むガントリの周りで回転させている。X線源は、焦点の位置でX線ビームを放出するX線管を含むのが典型的である。X線検出器は、検出器の位置で受け取られるX線ビームをコリメートするためのコリメータと、X線を光学的エネルギーに変換するためにコリメータの近くにあるシンチレータと、近傍にあるシンチレータから光学的エネルギーを受け取りこれから電気信号を生成するためのフォトダイオードと、を含むのが典型的である。
【0004】
典型的には、シンチレータアレイの各シンチレータはX線を光学的エネルギーに変換する。各シンチレータはその近傍にあるフォトダイオードに光学的エネルギーを放出する。各フォトダイオードはこの光学的エネルギーを検出し、対応する電気信号を発生させる。フォトダイオードの出力は次いで、画像再構成のためにデータ処理システムに送られる。
【0005】
CT撮像システムは、EDCT、MECT及び/またはDE−CT撮像システムと呼ぶことがあるエネルギー弁別(ED)型、マルチエネルギー(ME)型、及び/またはデュアルエネルギー(DE)型のCT撮像システムを含むことがある。こうしたシステムは、シンチレータあるいはシンチレータの代わりとなる直接変換検出器材料を用いることがある。EDCT、MECT、及び/またはDE−CT撮像システムは一例では、様々なX線スペクトルに応答するように構成されている。例えば従来の第3世代CTシステムは、放出X線ビームをなす入射フォトンのエネルギーのピーク及びスペクトルを異ならせた様々なピークキロボルト(kVp)レベルで投影を順次収集することがある。検出器に到達するX線光子のそれぞれをその光子エネルギーと共に記録するようなエネルギー感応性検出器が用いられることがある。
【0006】
計測値を得るための技法には、(1)2つの弁別的なエネルギースペクトルを用いたスキャン、及び(2)検出器でのエネルギー預託に従った光子エネルギーの検出が含まれる。EDCT/MECT/DE−CTは、エネルギー弁別及び材料特徴付けを提供する。例えば物体散乱が無ければシステムによって、入射X線スペクトルの低エネルギー部分と高エネルギー部分というスペクトル内の2つの光子エネルギー領域からの信号に基づいた異なるエネルギーでの挙動が導出される。医用CTの所与のエネルギー領域では、X線減衰に対して(1)コンプトン散乱と(2)光電効果という2つの物理過程が支配的である。2つのエネルギー領域からの検出信号によって、撮像対象材料のエネルギー依存性を分解させるのに十分な情報が提供される。さらに2つのエネルギー領域からの検出信号によって、想定した2つの材料から構成された被検物の組成比を決定するための十分な情報が提供される。
【0007】
デュアルエネルギースキャンの主たる目的は、異なるクロマチックエネルギー状態による2つのスキャンを利用することによって画像内部でコントラスト分離を強調した診断CT画像を取得することにある。(1)そのスキャンが検査対象の周りに2回の回転を必要とするような逐次的なバックツーバック(back−to−back)方式か、(2)その管球が例えば80kVp及び140kVpのポテンシャルで動作するような検査対象の周りで必要な回転が1回であるような回転角度の関数とした交互配置方式かのいずれかで2つのスキャンを収集することを含むデュアルエネルギースキャンを実現するために、多くの技法が提唱されてきた。高周波発生器によって、交互のビューに対する高周波電磁気エネルギー投射源のkVpポテンシャルの切り替えを可能とさせている。このため、2つのデュアルエネルギー画像に関するデータは、従来のCTテクノロジーで必要であったように数秒間の離間をとって2つの別々のスキャンをするのではなく、時間交互配置方式で取得することができる。さらに、互いに数秒間の離間をとって別々にスキャンをすると、患者の動き(外部的な患者の動きと内部の臓器の動きの両方)並びに様々な円錐角度に起因してデータ組間で位置整列不良が生じる。また動きのある身体フィーチャに関して詳細部の分解が必要である場合では一般的に、従来の2パス型のデュアルkVp技法は高信頼性に適用することが不可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、患者動きを最小としかつ円錐角度効果を最小限にするような単一スキャンの間に複数のエネルギー状態で撮像データを収集するための装置及び方法を設計することが望ましい。
【0009】
本発明は、単一スキャンの間に複数のエネルギー状態で撮像データを収集する方法及び装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、CTシステムは、スキャン対象を受け容れるための開口部を有する回転式ガントリと、検査対象に向けて複数のエネルギーを有するX線を投射するように構成されたX線源と、X線源を第1の電圧に付勢するように構成されかつX線源を第1の電圧と異なる第2の電圧に付勢するように構成された発生器と、を含む。本システムはさらに、発生器に対してX線源を第1の持続時間にわたって第1の電圧に付勢させること、少なくとも第1の持続時間の間に少なくとも1つのビューに関する撮像データを収集すること、第1の持続時間の後で、発生器に対してX線源を第2の持続時間にわたって第2の電圧に付勢させること、並びに少なくとも第2の持続時間の間に2つ以上のビューに関する撮像データを収集すること、を行うように構成された制御器を含む。
【0011】
本発明の別の態様では、複数のクロマチックエネルギーでCT撮像データを収集する方法は、ガントリ上に装着したX線源を撮像対象の周りで回転させる工程と、ガントリの第1の角度性回転の間に被検物に向けて第1の電圧を有するX線エネルギービームを投射する工程と、第1の角度性回転の間に第1組の計測投影を収集する工程と、を含む。本方法はさらに、第1組の計測投影の収集後のガントリの第2の角度性回転の間に被検物に向けて第2の電圧を有するX線エネルギービームを投射する工程と、ガントリの第2の角度性回転の間に2つ以上の計測投影からなる第2の組を収集する工程と、を含む。
【0012】
本発明のさらに別の態様では、制御器が複数のクロマチックエネルギー状態で撮像データを収集するように構成されており、該制御器は、そのエネルギー源がスキャン対象に向けて第1の電圧ポテンシャルの第1のX線ビームを投射するように構成させてガントリ上に装着されたX線源を付勢すること、該第1のX線ビームから少なくとも1つのビューデータの第1の組を収集すること、検査対象に向けて第2のX線ビームを投射するようにX線源を第2の電圧ポテンシャルに付勢すること、並びに該第2のX線ビームから少なくとも2つの後続のビューデータの第2の組を収集すること、を行わせる命令を有する。
【0013】
本発明に関する様々な別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
添付の図面は、本発明を実施するために目下のところ企図される好ましい一実施形態を図示したものである。
【0015】
診断用デバイスは、X線システム、磁気共鳴(MR)システム、超音波システム、コンピュータ断層(CT)システム、陽電子放出断層(PET)システム、超音波、核医学その他のタイプの撮像システムを含む。X線源の用途は、撮像、医学、セキュリティ及び工業用検査の用途を含む。しかし当業者であれば、ある実現形態は単一スライスや別の多重スライス構成で用いるように利用可能であることを理解されよう。さらにある実現形態はX線の検出及び変換に利用可能である。しかし当業者であればさらに、ある実現形態は別の高周波電磁気エネルギーの検出及び変換に利用可能であることを理解されよう。ある実現形態は、「第3世代」CTスキャナ及び/または別のCTシステムで利用可能である。
【0016】
本発明の動作環境について、64スライスのコンピュータ断層(CT)システムに関連して記載することにする。しかし当業者であれば、本発明が別の多重スライス構成で用いるように等しく適用可能であることを理解されよう。
【0017】
図1を参照すると、「第3世代」CTスキャナに特徴的なガントリ12を含むようなコンピュータ断層(CT)撮像システム10を表している。ガントリ12は、ガントリ12の反対側にある検出器アセンブリまたはコリメータ18に向けてポリクロマチックX線ビーム16を投射するX線源14を有する。ここで図2を参照すると、検出器アセンブリ18は複数の検出器20及びデータ収集システム(DAS)32によって形成されている。複数の検出器20は患者22を通過する投射X線を検知しており、またDAS32は後続の処理のためにこのデータをディジタル信号に変換している。各検出器20は、入射したX線ビームすなわち患者22を通過して減衰を受けたビームの強度を表すアナログ電気信号を発生させる。X線投影データを収集するスキャンの間に、ガントリ12及びこの上に装着された構成要素は回転中心24の周りに回転する。
【0018】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作はCTシステム10の制御機構26によって統御される。制御機構26は、X線源14に電力信号及びタイミング信号を提供するX線発生器28と、ガントリ12の位置及び回転速度を制御するガントリモータ制御器30と、を含む。画像再構成装置34は、サンプリングされディジタル化されたX線データをDAS32から受け取り、高速で再構成を実行する。この再構成画像はコンピュータ36に入力として与えられ、このコンピュータ36によって画像が大容量記憶装置38内に保存される。
【0019】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声起動制御器または適当な別の任意の入力装置などある形態のオペレータインタフェースを有するコンソール40を介してオペレータからコマンド及びスキャンパラメータを受け取る。付属のディスプレイ42によってオペレータはコンピュータ36からの再構成画像その他のデータを観察することができる。コンピュータ36は、オペレータが発したコマンド及びパラメータを用いて、制御信号及び制御情報をDAS32、X線発生器28及びガントリモータ制御器30に提供する。さらにコンピュータ36は、患者22及びガントリ12を位置決めするようにモータ式テーブル46を制御するためのテーブルモータ制御器44を動作させる。具体的には、テーブル46によって図1のガントリ開口48内に患者22を完全にあるいはその一部を通過させている。
【0020】
図3に示すように、検出器アセンブリ18はコリメート用ブレードまたはプレート19をその間に配置させたレール17を含む。プレート19は、X線ビームが例えば検出器アセンブリ18上に位置決めされた図4の検出器20上に当たる前にX線16をコリメートするように位置決めされる。一実施形態では検出器アセンブリ18は、その各々が64×16個の画素50からなるアレイサイズを有する57個の検出器20を含む。このため検出器アセンブリ18は、ガントリ12の各回転によって64個の同時データスライスの収集を可能とするように64の横列と912の縦列(16×57個の検出器)を有する。
【0021】
図4を参照すると、検出器20はDAS32を含んでおり、各検出器20がパック51内に多数の検出器素子50を配列させて含む。検出器20は、パック51内部で検出器素子50を基準として位置決めされたピン52を含む。パック51は、複数のダイオード59を有するバックライト式ダイオードアレイ53上に位置決めされている。一方バックライト式ダイオードアレイ53は多層サブストレート54上に位置決めされている。多層サブストレート54上にはスペーサ55が配置されている。検出器素子50はバックライト式ダイオードアレイ53と光学的に結合されており、バックライト式ダイオードアレイ53は一方多層サブストレート54と電気的に結合されている。多層サブストレート54のフェース57に対してかつDAS32に対して、フレックス回路56が取り付けられている。検出器20はピン52を用いることによって検出器アセンブリ18内部に位置決めされる。
【0022】
一実施形態の動作では、検出器素子50内部に入ったX線はパック51を横断するフォトンを発生させ、これがアナログ信号を発生させてバックライト式ダイオードアレイ53内部のダイオード上で検出される。発生させたアナログ信号は多層サブストレート54を通過しフレックス回路56を通過して、アナログ信号をディジタル信号に変換するDAS32まで送られる。
【0023】
検討したように、従来のデュアルkVp式CTスキャンは、例えば先ずあるkVpでスキャンし次いで第2のkVpでスキャンすることによって実施されることがある。2つのkVpで収集した画像に起こりうる位置整列不良を克服するために、図5に本発明の一実施形態に従ったデュアルkVp機能を有するスキャンシーケンスを図示している。図5は、0.3〜2msecごとなどマルチビュー間隔でkVp変調を実施し、2つのkVpデータ組間の位置整列不良を大幅に低下または排除すると共に、同時に2つのkVpでの画像再構成に十分なデータを提供することができることを表している。
【0024】
ここで図5を参照すると、本発明の一実施形態では撮像データが第1の電圧70と第2の電圧72で収集される。本実施形態及び関連する実施形態では、撮像データのことをビューまたは投影とも呼んでいる。この実施形態では図2のX線発生器28は、制御器26により制御を受けており、時刻71またはその前に開始して第1の持続時間74にわたってX線管14に第1の電圧70を提供すると共に、この第1の電圧70を時刻88まで提供している。第1の持続時間74の間に、X線管14を第1の電圧70とした1つまたは複数のビューデータ76がコンピュータ36により収集されることがある。第1の持続時間74の後にX線発生器28は、時刻79で開始して第2の持続時間78にわたってX線管14に第2の電圧72を提供し、この第2の電圧72は時刻81まで提供される。第2の持続時間74の間に、X線管14を第2の電圧72とした2つ以上のビューデータ80がコンピュータ36により収集されることがある。第2の持続時間78の後でX線発生器28は、再びX線管14に対して第1の電圧70を時刻83で開始して第3の持続時間82にわたって提供し、この第1の電圧70は時刻85まで提供される。第3の持続時間82の間に、X線管14を第1の電圧70として1つまたは複数のビューデータ84がコンピュータ36により収集されることがある。本発明の一実施形態では、X線管14において第1の電圧70は80kVpであり、かつ第2の電圧72は140kVpである。本発明の別の実施形態では、X線管14の電流は加えられた電圧70、72の関数として制御される。
【0025】
容量性効果やその他の効果のために、X線発生器28は第1の電圧70から第2の電圧72に、並びにこの逆方向に瞬時に切り替えることは不可能である。このため典型的には、電圧変更の実現を可能にするには有限の時間が必要である。再び図5を見ると例えば、X線発生器28は時刻73まで第1の電圧70とすることがある。X線発生器28に第2の電圧72を出力させる時点である時刻73において、発生器28の出力はこの後の時刻79まで第2の電圧72に至っていない。したがって、X線発生器28の電圧が2つの電圧70、72の間で遷移状態にある期間である遷移時間75が時刻73から時刻79まで生じる。
【0026】
第1の電圧70でビューデータを収集した後の第2の電圧72によるビューデータ収集の遅延を回避し、ビューデータが第2の電圧72が実際に実現されたときだけに収集されるようにするため、遷移75の間にビューデータを収集することがある。この方式では、第1の電圧70でのビューデータが遷移75の部分で収集されることがあり、また第2の電圧72でのビューデータが遷移75の別の部分で収集されることがある。図5に示すように、第1の電圧70におけるビュー76は時刻89で開始され、遷移75の途中の点89に実質的に対応する時刻90で終了する最終ビュー87を含む。したがってビュー87は、第1の電圧70で収集したビューデータ以外に、第1の電圧70より高くかつ電圧70、72の間の点89の電圧より低い電圧で収集したビューデータを含む。X線管14の電圧が点89を通過した後に、ビュー87は完了し、ビュー80のうちの第1のビュー91におけるビューデータの収集が開始される。このため第1のビュー91は、第2の電圧72の電圧を含んで時刻90で始まり時刻93で終了する。
【0027】
X線発生器28内における信号のタイミングは、患者22に対する線量が最小限となるようにコンピュータ36によって制御されることがある。ビューデータ76は第1の電圧70で収集されることがあり、また第1の電圧70における最終ビュー収集87は、発生器の出力電圧が電圧の遷移状態にある間(すなわち、時刻73と90の間)に収集したデータを含むことがある。さらに、第2の電圧72で収集したデータを含む第1のビューデータ91は、出力電圧により第2の電圧72が実現される前に生じるように時刻90においてトリガを受けることがある。本発明の一実施形態では、図5に示すようなトリガ点89が第1の電圧70と第2の電圧72の実質的に中間で発生している。しかし当業者であれば、そのトリガが2つの電圧70、72の中間点でトリガを受けないことになり、この2つの電圧の間のある別の点に来ることがあることを理解されよう。当業者であればさらに、低電圧と高電圧からなるパターンは様々な回数(したがって、様々なガントリ角度で)反復させ、これによって1つまたは複数のビューが第1の電圧70で取得され、第2の電圧72で2つ以上のビューが取得され、かつ再度第1の電圧70で1つまたは複数のビューが取得されるようにした交互配置のデータパターンを収集することがあることを理解されよう。当業者であればさらに、各持続時間の間に取得するビューの数は必ずしも図示したパターン(すなわち、第1の電圧70で3つのビュー、第2の電圧72で2つのビュー、第1の電圧70で3つのビュー)に限定されるものではなく、その数はもう一方のkVpに切り替え戻す前に各kVpにおいて数10msecにわたる2〜50ビューの範囲とすることがあることを理解されよう。
【0028】
一般に、一方が低kVpでありもう一方が高kVpであるような同じ角度位置からの2つの投影plowとphighを使用する際に、基本材料分解(basis material decomposition)過程を通じて材料特異的情報を取得することができる。この過程では、任意の材料のX線減衰係数を材料がその減衰曲線内にkエッジを有しないようなあるエネルギー領域内における2つの基本材料の加重和として表現することができる。高kVp及び低kVpで計測したX線減衰から基本材料密度線績分を取得するための機械特異的材料分解関数f1()及びf2()(例えば、dm1とdm2をそれぞれ基本材料1と2の密度とした、∫dm1dl=f(plow,phigh)及び∫dm2dl=f(plow,phigh))を導出することができる。材料密度線績分を用いたCT再構成によれば、2つの基本材料からなる密度画像を、定量的で正確かつビームハードニング無く作成することが可能である。したがって高kVpと低kVpの投影データは、2つの収集間で時間遅延を全く無くすか極めて小さくして同じガントリ角度で取得しなければならない。
【0029】
ここで図6を参照すると、本発明の一実施形態に従って、所与のガントリ角度の計測投影を近傍のビューデータから取得することがある。図5に示すようなデータに対応する一例ではプロフィール94は、図5に関連した検討による低kVp及び高kVpで取得した計測投影を含む。本発明の一実施形態では、各電圧における計測投影は、対応する補間済み投影を取得するため、並びに上で検討したようなCT再構成のための基本材料データを提供するために使用されることがある。例えば近傍の計測投影データ98及び100に対する補間によって低kVp投影データ96が取得されることがある。このため補間による低kVp投影データ96及び計測した高kVp投影データ102によって、所与のガントリ角度に関する2つのkVpでのデータが提供される。本明細書に記載した補間方法は別のビューに拡張することができる。したがって補間済みデータ104〜110は、近傍の計測投影データを用いることによって同様の方式で取得することができる。このため計測した投影データは、高kVpと低kVpの交互配置データからなる計測データを提供するのみならず、これによって所与のガントリ角度において対応するデータを補間するための基準が形成され、高kVp及び低kVp投影データを等価的時刻にすることが可能となると共に基本材料分解を実行するためのビューが提供される。
【0030】
ここで図7を参照すると梱包品/手荷物検査システム510は、梱包品や手荷物をその内部に通過させ得る開口部514をその内部に有する回転式ガントリ512を含む。回転式ガントリ512は、高周波電磁気エネルギー源516、並びに図4または5に示したのと同様のシンチレータセルからなるシンチレータアレイを有する検出器アセンブリ518を収容している。さらに搬送システム520が設けられており、該搬送システム520は、スキャンのために開口部514内に梱包品や手荷物品526を自動的かつ連続的に通過させるための構造524によって支持された搬送ベルト522を含む。被検物526は制御された連続方式で、搬送ベルト522により開口部514内にフィードされ、次いで撮像データが収集され、さらに搬送ベルト522によって開口部514から梱包品526が排出される。このため、郵便検査員、手荷物取扱い者、及び別のセキュリティ担当者は、爆発物、ナイフ、銃器、禁制品、その他の有無について梱包品526の内容を非侵襲的に検査することができる。
【0031】
開示した方法及び装置の技術的寄与は、マルチビュー間隔で変調したマルチエネルギー撮像源を用いて複数のエネルギー域で撮像データを収集するコンピュータ実現型の方法がこれによって提供されることである。
【0032】
システム10及び/または510の一実現形態は一例では、電子構成要素、ハードウェア構成要素、及び/またはコンピュータソフトウェア構成要素のうちの1つまたは幾つかなどの複数の構成要素を備える。システム10及び/または510の一実現形態内では、こうした構成要素を数多く組み合わせたり、分離させたりすることができる。システム10及び/または510の一実現形態の例示的な一構成要素は、多くのプログラミング言語のうちのいずれかによって記述または実現させたコンピュータ命令の組及び/またはシリーズを利用するかつ/または備えることは当業者であれば理解されよう。システム10及び/または510の一実現形態は一例では、任意の向き(例えば、水平方向、斜方向あるいは垂直方向)を含む(本明細書の説明及び図面では、説明を目的としてシステム10及び/または510の一実現形態の例示的な向きを示している)。
【0033】
システム10及び/またはシステム510の一実現形態は一例では、1つまたは複数のコンピュータ読み取り可能信号保持媒体を利用する。コンピュータ読み取り可能信号保持媒体は一例では、1つまたは複数の実現形態の1つまたは複数の部分を実行するためのソフトウェア、ファームウェア及び/またはアセンブリ言語を保存する。システム10及び/またはシステム510の一実現形態向けのコンピュータ読み取り可能信号保持媒体の一例は、画像再構成装置34の記録可能データ記憶媒体及び/またはコンピュータ36の大容量記憶装置38を備える。システム10及び/またはシステム510の一実現形態向けのコンピュータ読み取り可能信号保持媒体は一例では、磁気式、電気式、光学式、生物学式及び/または原子式のデータ記憶媒体のうちの1つまたは幾つかを備える。例えば、コンピュータ読み取り可能信号保持媒体の一実現形態は、フレキシブルディスク、磁気テープ、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスクドライブ及び/または電子式メモリを備える。別の例では、コンピュータ読み取り可能信号保持媒体の一実現形態は、例えば電話ネットワーク、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネット及び/またはワイヤレスネットワークのうちの1つまたは幾つかなどシステム10及び/またはシステム510の一実現形態を構成するまたはこれと結合させたネットワークを介して送られる変調搬送波信号を含む。
【0034】
したがって本発明の一実施形態では、CTシステムは、スキャン対象を受け容れるための開口部を有する回転式ガントリと、検査対象に向けて複数のエネルギーを有するX線を投射するように構成されたX線源と、X線源を第1の電圧に付勢するように構成されかつX線源を第1の電圧と異なる第2の電圧に付勢するように構成された発生器と、を含む。本システムはさらに、発生器に対してX線源を第1の持続時間にわたって第1の電圧に付勢させること、少なくとも第1の持続時間の間に少なくとも1つのビューに関する撮像データを収集すること、第1の持続時間の後で、発生器に対してX線源を第2の持続時間にわたって第2の電圧に付勢させること、並びに少なくとも第2の持続時間の間に2つ以上のビューに関する撮像データを収集すること、を行うように構成された制御器を含む。
【0035】
本発明の別の実施形態では、複数のクロマチックエネルギーでCT撮像データを収集する方法は、ガントリ上に装着したX線源を撮像対象の周りで回転させる工程と、ガントリの第1の角度性回転の間に被検物に向けて第1の電圧を有するX線エネルギービームを投射する工程と、第1の角度性回転の間に第1組の計測投影を収集する工程と、を含む。本方法はさらに、第1組の計測投影の収集後のガントリの第2の角度性回転の間に被検物に向けて第2の電圧を有するX線エネルギービームを投射する工程と、ガントリの第2の角度性回転の間に2つ以上の計測投影からなる第2の組を収集する工程と、を含む。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態では、制御器が複数のクロマチックエネルギー状態で撮像データを収集するように構成されており、該制御器は、そのエネルギー源がスキャン対象に向けて第1の電圧ポテンシャルの第1のX線ビームを投射するように構成させてガントリ上に装着されたX線源を付勢すること、該第1のX線ビームから少なくとも1つのビューデータの第1の組を収集すること、検査対象に向けて第2のX線ビームを投射するようにX線源を第2の電圧ポテンシャルに付勢すること、並びに該第2のX線ビームから少なくとも2つの後続のビューデータの第2の組を収集すること、を行わせる命令を有する。
【0037】
本発明を好ましい実施形態について記載しているが、明示的に記述した以外の等価、代替及び修正も可能であり、かつこれらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。また、図面の符号に対応する特許請求の範囲中の符号は、単に本願発明の理解をより容易にするために用いられているものであり、本願発明の範囲を狭める意図で用いられたものではない。そして、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】CT撮像システムの外観図である。
【図2】図1に示したシステムのブロック概要図である。
【図3】CTシステム検出器アレイの一実施形態の斜視図である。
【図4】検出器の一実施形態の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による低kVp及び高kVpプロトコルのプロットである。
【図6】本発明の一実施形態に従って計測kVpデータからの補間済みkVpデータの作成を表した補間方法の図である。
【図7】本発明の一実施形態による非侵襲的な梱包品検査システムで使用するためのCTシステムの外観図である。
【符号の説明】
【0039】
10 コンピュータ断層(CT)撮像システム
12 ガントリ
14 X線源
16 ポリクロマチックX線ビーム
17 レール
18 検出器アセンブリ、コリメータ
19 コリメート用ブレードまたはプレート
20 複数の検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線発生器
30 ガントリモータ制御器
32 データ収集システム(DAS)
34 画像再構成装置
36 コンピュータ
38 大容量記憶装置
40 オペレータコンソール
42 付属ディスプレイ
44 テーブルモータ制御器
46 モータ式テーブル
48 ガントリ開口部
50 画素
51 パック
52 ピン
53 バックライト式ダイオードアレイ
59 複数のダイオード
54 多層サブストレート
55 スペーサ
56 フレックス回路
70 第1の電圧
71 時刻
72 第2の電圧
73 時刻
74 第1の持続時間
75 遷移時間
76 1つまたは複数のビュー
78 第2の持続時間
79 時刻
81 時刻
80 2つ以上のビュー
82 第3の持続時間
83 時刻
85 時刻
84 1つまたは複数のビュー
87 最終ビュー
88 時刻
89 点
90 時刻
91 第1のビュー
93 時刻
94 プロフィール
96 低kVp投影データ
98 計測投影データ
100 計測投影データ
102 高kVp投影データ
104 補間済みデータ
110 補間済みデータ
510 梱包品/手荷物検査システム
512 回転式ガントリ
514 開口部
516 高周波電磁気エネルギー源
518 検出器アセンブリ
520 搬送システム
522 搬送ベルト
524 構造
526 梱包品または手荷物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン対象(22)を受け容れるための開口部(48)を有する回転式ガントリ(12)と、
対象(22)に向けて複数のエネルギーを有するX線を投射するように構成されたX線源(14)と、
X線源(14)を第1の電圧(70)に付勢させるように構成されかつ該X線源(14)を第2の電圧(72)に付勢させるように構成された発生器(28)であって、該第1の電圧(70)は該第2の電圧(72)と異なっている発生器(28)と、
制御器(26)であって、
発生器(28)に対してX線源(14)を第1の持続時間(74)にわたって第1の電圧(70)に付勢させること、
少なくとも第1の持続時間(74)の間に少なくとも1つのビュー(76)に関する撮像データを収集すること、
第1の持続時間(74)の後で、発生器(28)に対してX線源(14)を第2の持続時間(78)にわたって第2の電圧(72)に付勢させること、
少なくとも第2の持続時間(78)の間に2つ以上のビュー(80)に関する撮像データを収集すること、
を行うように構成された制御器(26)と、
を備えるCTシステム(10)。
【請求項2】
前記X線源(14)は、
発生器(28)を第1の電圧(70)に付勢させたときに第1の電流を出力すること、
発生器(28)を第2の電圧(72)に付勢させたときに第1の電流と異なる第2の電流を出力すること、
を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載のCTシステム(10)。
【請求項3】
前記制御器(26)は、
発生器(28)に対してX線源(14)を第2の電圧(72)に付勢させた後で、発生器(28)に対して第1の電圧(70)へのX線源(14)の付勢を第3の持続時間(82)にわたって反復させること、
少なくとも第3の持続時間(82)の間に少なくとも1つのビュー(84)に関する撮像データを収集すること、
を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載のCTシステム(10)。
【請求項4】
前記第2の電圧(72)で計測した2つ以上のビュー(80)は第1の電圧(70)における対応する補間済みビュー(96)を有しており、該補間済みビュー(96)は第1の電圧(70)における第1の持続時間(74)の間の計測ビュー(98)と第1の電圧(70)における第3の持続時間(82)の間の計測ビュー(100)の間の補間によって取得される、請求項3に記載のCTシステム(10)。
【請求項5】
前記補間は線形補間である、請求項4に記載のCTシステム(10)。
【請求項6】
前記制御器(26)は、ガントリ(12)の単一の回転の範囲内で発生器(28)を介した第1の電圧(70)へのX線源(14)の付勢並びに付勢の反復をさせるように構成されている、請求項3に記載のCTシステム(10)。
【請求項7】
前記第2の電圧(72)は前記第1の電圧(70)と比べて規模がより大きい、請求項1に記載のCTシステム(10)。
【請求項8】
前記第1の電圧(70)は概ね80kVpであり、かつ前記第2の電圧(72)は概ね140kVpである、請求項7に記載のCTシステム(10)。
【請求項9】
前記制御器(26)は、発生器(28)の出力電圧が第1の電圧(70)と第2の電圧(72)の間に来るまで第2の持続時間(78)にわたる画像データの収集を遅延するようにさらに構成されている、請求項1に記載のCTシステム(10)。
【請求項10】
前記遅延は発生器(28)が第1の電圧(70)と第2の電圧(72)の概ね中間の電圧を出力するまでの遅延である、請求項9に記載のCTシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−90115(P2009−90115A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260475(P2008−260475)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】