説明

マルチメディア通信システムにおけるデータ共有

移動無線通信システムにおける送信帯域幅の使用を最適化する方法が提供される。この方法は、第1ノードから第2ノードへインタフェースを介して送信されるデータに対して、前記データのコンテンツに対する署名を生成し、前記第1ノードから、前記第2ノードあるいはその送信経路内の中間ノードへ署名を送信し、前記第2ノードあるいは前記中間ノードにおいて、前記署名と、そのノードに記憶されているデータの署名とを比較し、前記受信した署名が前記記憶されているデータの署名と一致しない場合にのみ、前記インタフェースを介して、前記第1ノードから前記第2ノードへ前記データを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、組み合わせマルチメディアサービスに関するものであり、より詳しくは、このようなサービスに関するトラフィック量を最小化する方法に関するものである。
【0002】
本発明の背景
IPマルチメディア(IPMM)サービスは、同一セッション内で、音声、ビデオ、メッセージング、データ等の動的な組み合わせを提供する。基本アプリケーションと、組み合わせることが可能となるメディアの数が増えることによって、エンドユーザへ提供されるサービスの数も増え、また、個人間通信の経験も充実することになる。これは、新世代の、パーソナライズされた、充実したマルチメディア通信サービスをもたらすことになる。このサービスは、以下の詳細説明で考慮される、いわゆる、「組み合わせIPマルチメディア」サービスを含んでいる。
【0003】
IPマルチメディアサブシステム(IMS)は、第3世代パートナシッププロジェクト(3GPP)によって定義される技術(TS 32.225、リリース5)であり、これは、3G移動通信ネットワークを介するIPマルチメディアサービスを提供する。IMSは、サービスの統合と対話を介する、エンドユーザの個人間の通信経験を充実させるための鍵となる特徴を提供する。IMSは、IPベースのネットワークを介する、新規の充実した個人間(クライアント間)通信と、個人対コンテンツ間(クライアント対サーバ)通信を可能にする。このIMSは、セッション初期化プロトコル(SIP)とサービス搬送プロトコル(SDP)を使用して、ユーザ端末(あるいはユーザ端末とウェブサーバ)間の発呼あるいはセッションをセットアップし、かつ制御する。IMSはアクセスネットワークの最上位に位置していて、このアクセスネットワークには、ユニバーサル移動電気通信システム(UMTS)あるいは汎用パケット無線サービス(GPRS/GSM)ネットワークがあるが、例えば、WiFiのような、いくつかの別の技術を使用しても良い。図1は、GPRSアクセスネットワークの場合の移動ネットワークアーキテクチャにIMSがどのように適合しているかを示している。
【0004】
プッシュ−ツー−ウォッチ(Push-to-Watch)は、音声通話中に、ユーザに画像を共有することを可能にするIPマルチメディアサービスに与えられている汎用的な名称である。このサービスは、組み合わせIPマルチメディアサービスをカバーするために汎用化されても良く、このサービスは、IPマルチメディアドメイン(例えば、画像、ビデオ、プレゼンス(presence)、インスタントメッセージ等)を介する、回線交換メディア(例えば、音声)とパケット交換メディアの両方を含みかつ組み合わせる。この汎用化されたサービスは、本明細書では、「WeShare」と称する。このサービスは、別のユーザとの回線交換(CS)音声会話中に、ユーザに、画像、ビデオあるいはオーディオクリップ等を取得することを可能にし、かつこのコンテンツを、他のユーザと(ほぼ)リアルタイムで共有することを可能にする。会話の関係者の一方は、もう一方の関係者へコンテンツの送信を初期化しても良い。画像あるいは他のマルチメディア情報の共有の可能性は、たいていは、より長い電話通話をもたらすことになり、これは、実際のメディアの送信が無料である場合でさえも、ネットワークオペレータの収益は増えることになる。
【0005】
画像共有の場合、WeShareサービスへの関係者は、実質的に同時に同一の画像を参照することを可能にしたいと仮定し、かつ取り得る最高のエンドユーザ経験を保証するために、関係者間で画像を送信するための時間は最小化されるべきであると仮定している。オペレータの観点からは(特に、画像の送信が安いあるいは無料である場合)、送信されるデータ量は、ビット当たりの収益がより高い収益のサービスに対するネットワーク容量を節約するために最小化されるべきである。
【0006】
本発明の要約
本発明の第1の構成に従えば、通信システムにおける送信帯域幅の使用を最適化する方法が提供される。この方法は、第1ノードから第2ノードへインタフェースを介して送信されるデータに対して、前記データのコンテンツに対する署名を生成し、前記第1ノードから、前記第2ノードあるいはその送信経路内の中間ノードへ署名を送信し、前記第2ノードあるいは前記中間ノードにおいて、前記署名と、そのノードに記憶されているデータの署名とを比較し、前記受信した署名が前記記憶されているデータの署名と一致しない場合にのみ、前記インタフェースを介して、前記第1ノードから前記第2ノードへ前記データを送信する。
【0007】
前記通信ネットワークは、移動無線通信ネットワークであっても良く、前記インタフェースは、エアインタフェースである。
【0008】
前記データは、前記第1及び第2ノード間での回線交換音声呼中に送信されるマルチメディアデータであっても良い。
【0009】
本発明の実施形態は、以下の効果を与えることができる。
【0010】
完全なファイルの代わりに署名を送信することは、送信時間を短くし、かつエンドユーザの知覚品質を向上させることになる。
【0011】
完全なファイルの代わりに署名を送信することは、データ送信量を減らし、かつシステム容量を向上させることになる。
【0012】
適切な場合に、プロキシサーバにデータを記憶することは、サーバで利用可能な安価で、かつ高速処理能力を使用する様々なユーザ装置に対して、データ、例えば、画像のカスタマイズを許容することが可能になる。
【0013】
本発明の第1実施形態では、前記第1及び第2ノードはユーザ端末であり、前記中間ノードは、プロキシサーバとして存在し、かつ動作する。このプロキシサーバは、ユーザ端末間で初めて送信されるデータをキャッシュする。受信した署名が記憶されているあるいはキャッシュされているデータの署名と一致する場合には、そのデータは、前記中間ノードによって前記第2ノードへ送信される。
【0014】
本発明の第2実施形態では、前記第2ノードは、ユーザ端末であり、前記第1ノードは、コンテンツが記憶されているノードである。前記署名は、前記第1ノードで生成され、かつ前記第2ノードへ送信される。前記署名の比較に基づいて、前記第2ノードは、前記データが、送信対象として意図されている既に受信しているデータであるかどうかを判定することができる。そのデータが既に送信されている場合、更なる送信が中止可能である。
【0015】
詳細説明
図示のために、本発明の以下の実施形態では、3Gセルラー通信システムの状況で説明する。このシステムは、ネットワーク加入者が、図1に示されるような移動端末を使用する。図示の例では、データの交換は、移動端末間で実行される。この移動端末は、同一のオペレータネットワークあるいは異なるネットワークに「接続」されていても良い。各ネットワークは、「プロキシ」サーバ(例えば、IPマルチメディアシステムであるIMS内に)が提供されている。
【0016】
現在のプッシュ−ツー−ウォッチの提案に従えば、画像は、送信者側の移動装置に記憶されている。これらの画像は、その移動装置(例えば、カメラ付き電話の場合)から直接取得される、あるいはいくつかの別の装置からその移動装置(例えば、デジタルカメラから電話)へ送信される。どちらの場合でも、画像は、送信者側の装置から受信者側の装置へ修正されずに(様々なネットワークノードを介して)送信されることが最も好ましい。
【0017】
通常、だれかが画像を共有しようとすることは特別なことである。この画像は、人の人生の内での一瞬のもの(例えば、新生児の画像等)であったり、あるいは特別に面白い画像(ジョーク等)であったりする。この類の画像は、様々な人に数回に渡って共有されることになる可能性がある。画像が数回が共有される場合(図2の左側のメッセージフローに示されるように)、単一の送信に対して必要とされる送信リソースは、幾重にも消費される。高解像度画像に対しては、消費されるリソースは著しい場合がある(例えば、高品位デジタルカメラを使用して撮影される画像は、おおよそメガバイトのデータを送信することが必要となる)。また、受信機の表示能力に良好に適合させるために、画像を修正する必要がある(例えば、サイズあるいは色数を減らす必要がある)場合、必要とされる処理が、送信側あるいは受信側の移動端末内のどちらかで実行されなければならない。これは、それらの端末の内の一方で、高度な計算処理が必要となる(その結果、処理遅延が発生する)。
【0018】
上述の問題は、ネットワーク内で既に送信されている画像を記憶するためのプロキシサーバを使用することによって解決することができる。プロキシサーバは、送信画像のコピーを保持することで、無線インタフェースを介して、大容量のファイルを数回送信する必要を回避する。また、プロキシサーバは、高度な計算能力を利用可能とすることを容易に構成することができる。この場合、様々な受信端末の能力に、画像を容易に適合させることができる。典型的には、プロキシサーバは、移動オペレータのネットワーク内に存在していて、MRFPと一緒に配置されていても良い。
【0019】
プロキシ動作についてのルールの例を以下に示す。
【0020】
1.ネットワークを介して、少なくとも1回送信される画像はすべて、そのネットワークのプロキシサーバに所定時間記憶される。
【0021】
2.(ユーザあるいは別のパーティで)以前共有されている画像を、ユーザがその別のパーティと共有しようとしていることを、移動端末が検出すると、移動端末は、その画像ファイルのハッシュ(あるいはチェックサム)をプロキシサーバに送信する。このハッシュは、相対的に小さくすることができ、数十バイトの位となる。
【0022】
3.ハッシュを受信すると、プロキシサーバは、そのハッシュを、その画像のキャッシュされているコピーに置き換え、更に、メッセージを受信者に送信する。
【0023】
4.プロキシサーバがその画像のキャッシュされているコピーを持っていない場合、プロキシサーバは、オリジナルの画像をプロキシサーバに送信することを送信者に要求する。これにより、画像を受信者へ送信する前に、そのコピーがキャッシュされることになる。
【0024】
この処理は、従来の方法を例示する図2の左側のメッセージフローに対して、図2の右側のメッセージフローで示される。
【0025】
あるファイル(例えば、フットボールのゴールあるいは面白いコマーシャルのビデオクリップ)がユーザ間でかなり人気があると、他の様々なユーザとの通話中に、そのファイルが相手のユーザへ送信される可能性があることは予測できることである。特定のコンテンツがダウンロードされる前に、自身の電話で利用可能であるかどうかを知ることはユーザにとって難しいことであり、ユーザは、与えられるコンテンツを数回待機しなければならない、あるいは数回支払を行わなければならない可能性がある。
【0026】
この問題の解決策は、送信側の端末で、送信前の画像/ビデオクリップに対して、署名、例えば、チェックサムあるいはコンテンツIDを計算することである。これは、画像データ自身、例えば、データのハッシュから計算されても良い。実際のコンテンツの送信前には、署名のみが送信され、続いて、必要に応じてコンテンツが続くことになる。署名をチェックすることによって、受信側のユーザアプリケーションは、コンテンツを既に受信しているかどうか、また、装置内で利用可能であるかどうかをチェックすることができる。既に受信している場合、ファイルのダウンロードを省略することができる。
【0027】
別の解決策も存在する。
【0028】
1)署名はコンテンツから計算される。ここで、この方法では、ファイル名を含まない。即ち、たとえファイル名が変更されるとしても、デュプリケートとして認識されることになる。
【0029】
2)画像データ自身から署名を計算する代わりに、その署名をデータ固有のものとしても良い。これは、コンテンツが生成される場合に作成される(例えば、乱数)。この解決策は、複雑さをより減らすことができる。
【0030】
本発明は、通常のインターネットメールにも応用される。この場合、同一の文書あるいはファイルは、それが既に利用可能であるかどうかをユーザは知ることなく、数回受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】IMSコアネットワークを備える移動通信システムを示す図である。
【図2】画像を繰り返して送信するためのシグナリングフロー(左)と、画像の代わりに署名を送信するためのシグナリングフロー(右)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システム内の送信帯域幅の使用を最適化する方法であって、
第1ノードから第2ノードへインタフェースを介して送信されるデータに対して、前記データのコンテンツに対する署名を生成し、
前記第1ノードから、前記第2ノードあるいはその送信経路内の中間ノードへ署名を送信し、
前記第2ノードあるいは前記中間ノードにおいて、前記署名と、そのノードに記憶されているデータの署名とを比較し、前記受信した署名が前記記憶されているデータの署名と一致しない場合にのみ、前記インタフェースを介して、前記第1ノードから前記第2ノードへ前記データを送信する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記通信ネットワークは、移動無線通信ネットワークであり、前記インタフェースは、エアインタフェースである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記データは、静止画像、あるいはビデオ画像、あるいは電子メールに対応する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1ノードと前記第2ノードは、ユーザ端末であり、
前記中間ノードは、プロキシサーバとして存在し、かつ動作し、これは、ユーザ端末間で初めて送信されるデータをキャッシュし、受信した署名が記憶されているあるいはキャッシュされているデータの署名と一致する場合には、そのデータは、前記中間ノードによって前記第2ノードへ送信される
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2ノードは、ユーザ端末であり、前記第1ノードは、コンテンツが記憶されているノードであり、
前記署名は、前記第1ノードで生成され、かつ前記第2ノードへ送信され、
前記署名の比較に基づいて、前記第2ノードは、前記データが、送信対象として意図されている既に受信しているデータであるかどうかを判定することができ、該データが既に送信されている場合、更なる送信が中止可能である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記データは、前記第1ノードと前記第2ノード間における回路交換音声通話中に送信されるマルチメディアデータである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−534202(P2007−534202A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525806(P2006−525806)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051741
【国際公開番号】WO2005/027457
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】